就労を継続している潰瘍性大腸炎患者の生活調整
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(2) 24. 河野,ほか:就労を継続している潰瘍性大腸炎患者の生活調整. も自分らしい生活の実現に向けた支援の充実が必要であ. た.面接は,同意を得たうえで IC レコーダーに録音した.. る.. データ収集は,2019年1月~2019年10月に行った. 4.調査内容 インタビューガイドの内容は,①これまでの経過と現在. Ⅱ.目的. の日常生活について,②病気を抱えながらの就労について. 潰瘍性大腸炎患者が充実した生活を維持するための看護. とし,面接開始時に,年齢,性別,雇用・勤務状況,現在. 支援への示唆を得るために,潰瘍性大腸炎患者が就労を継. の症状や治療などについて,研究者が作成した自記式基礎. 続する過程で自らの生活をどのように調整しているのかを. 情報用紙に記入してもらった.. 明らかにする.. 5.分析方法 面接により得られたデータから逐語録を作成し,文脈に 沿って意味のまとまりごとにコードを作成した.意味内容. Ⅲ.用語の定義. の類似性に基づいてコードをまとめ,共通する意味を示す. 就労の継続:これまでに就業経験があり,現在も何らかの 仕事に従事している状況.. サブカテゴリーを抽出した.次に,サブカテゴリーの意味 内容が類似するものを集め,さらに抽象度を上げてカテゴ. 潰瘍性大腸炎患者の生活調整:潰瘍性大腸炎の患者が,不. リーとして名称を付けた.抽出されたカテゴリー間の時間. 確かさのある病気を抱えていることにより生じる身体・. 的経過も考慮して分析を行い,就労を継続している潰瘍性. 心理・社会的な状況に対して,日常生活活動や他者との. 大腸炎患者の生活調整の特徴を明らかにした.カテゴリー. 関係性,病気管理・療養法の実行,価値観などの側面に. 化においては,常にデータを確認しながら現象をありのま. ついてうまくつり合いをとろうとする営み.. まに捉えることに配慮した.データの分析過程では,慢性 看護学および質的研究に精通した研究者から継続したスー パーバイズを受けながら分析を繰り返すことで,信頼性・. Ⅳ.方法. 妥当性の確保に努めた.. 1.研究デザイン. 6.倫理的配慮. 半構成的面接による質的記述的研究. 本研究は,聖隷クリストファー大学倫理委員会(承認番. 2.対象. 号18060) お よ び A 総 合 病 院 の 倫 理 委 員 会( 研 究 番 号. 対象は,A 総合病院に外来通院している20~59歳の潰瘍. 18-56)の承認を得て実施した.研究対象者には,参加は. 性大腸炎患者で,受診時に何らかの仕事に従事している状. 自由意思で,研究途中であっても辞退でき,それによって. 況にある者とし,A 総合病院の消化器内科医師に研究対象. 不利益を被ることがないこと,プライバシー,個人情報の. 者の選定を依頼した.なお,潰瘍性大腸炎は手術によりス. 保護について説明し,文書にて同意を得た.また,面接中. トーマを造設した場合,身体障害者手帳の交付を受けるこ. の対象者の表情や反応を観察し,面接の途中で対象者に体. とができるが,身体障害者手帳の交付を受けている者は,. 調悪化の兆候がみられたら直ちに中止するように配慮し. 手帳を持っていない者に比べ,雇用の機会や生活調整の内. た.. 容が異なる可能性が考えられるため,本研究では身体障害 者手帳を持っている者は除外した.. Ⅴ.結果. 3.データ収集方法 インタビューガイドと自記式基礎情報用紙に基づいた半. 1.対象者の概要(表1). 構成的面接を行った.面接は,対象者の都合や希望に合わ. 対象者は10名(男性4名,女性6名)であり,平均38.5. せた時間と場所で設定し,30分程度の面接を1~2回行っ. 歳(23~52歳)であった.罹患期間は平均8.2年(2~22. 表1 対象者の概要 対象者. 年齢. 性別. 配偶者. 子ども. 罹患期間. 職業. 勤務状況. 排便回数. A. 20代前半. 男性. 無. 無. 4年. 看護師. 不規則. 2回/日. B. 20代後半. 女性. 有. 無. 8年. 検査技師. 不規則. 5回/日. C. 50代前半. 女性. 有. 無. 21年. 介護士. 日勤のみ. 3回/日. D. 50代前半. 女性. 有. 有. 4年. 製造業. 日勤のみ. 4回/日. E. 40代前半. 男性. 有. 有. 5年. 看護師. 不規則. 3~6回/日. F. 20代前半. 女性. 無. 無. 2年. 会社員. 日勤のみ. 2回/日. G. 20代後半. 女性. 無. 無. 10年. 会社員. 日勤のみ. 1回/日. H. 50代前半. 男性. 有. 有. 4年. 会社員. 日勤のみ. 1回/日. I. 40代前半. 男性. 有. 有. 2年. 会社員. 日勤のみ. 2回/日. J. 40代前半. 女性. 有. 有. 22年. 看護師. 不規則. 1回/日.
(3) 25. 日本慢性看護学会誌 第15巻 第1号 2021年. 年)であった.職業は会社員4名,製造業1名,医療福祉. 折り合いの模索】という経過を経ていた.そして,対象者. 関係5名であった.雇用形態は9名が常勤,1名は非常勤. は,自分の仕事を見つめ直す,やりたいことに積極的に取. であったが,平日は常勤と同様にフルタイムで働いてい. り組むなど【病気を抱えた生活への価値の転換】に向き合. た.勤務形態が不規則である者は4名であった.7名が既婚. いながらも,不確かな病気のために【将来への不安を抱え. で,未婚3名のうち2名は一人暮らしであった.排便回数. ながらの就労継続の希望】をもっていた.対象者は,潰瘍. は1日1~6回,現在下痢,血便,腹痛などの症状がある. 性大腸炎をずっと付き合っていく病気と捉え,病いをもっ. 者は3名であった.全員内服による治療を行っており,そ. た生き方を再考して病気を抱えた生活が自分にとって普通. のうち1名は抗 TNF- α抗体製剤の自己注射も行ってい. になるように【病気と共存した自分らしい生活の維持】を. た.患者会に参加したことのある者はいなかった.. 希望していた.. 2.就労を継続している潰瘍性大腸炎患者の生活調整 就労を継続している潰瘍性大腸炎患者の生活調整は,9. 以下にカテゴリーについて具体的に示す.なお,本文中 ではカテゴリーを【 】 ,サブカテゴリーを《 》 ,対象者. つのカテゴリーで構成されていた(表2) .対象者は,腹痛. の語りを「 」に斜体で示した.. や下痢などの【腹部症状による生活への影響の自覚】から,. 1) 【腹部症状による生活への影響の自覚】. 体調が悪くなった食材を避ける,身体が冷えないように準. このカテゴリーは, 《病気の症状には波がある》 《切迫し. 備するなど【経験に基づく症状を悪化させないための行. た便意のためにトイレに間に合わない》 《食事によって腹. 動】をしていた.また,通勤途中の便意に備えて出勤や起. 痛や下痢が起こる》 《体調が悪いときには疲れやすい》で構. 床の時間を早めたり,トイレの場所を自然と気にかけるな. 成されていた.. ど【切迫した便意を想定した準備】といった療養法を含む 日常生活の調整を行っていた.同時に,就労を継続するた. 《切迫した便意のためにトイレに間に合わない》では, 「やっぱ無理に我慢した時は,家に帰ってからと思って,途. めに【病気を職場に伝えるか否かの選択】とともに,病気. 中コンビニとか寄らずにくると,ほんとにね,恥ずかしい. のために負い目を感じつつ職場内で協力し合うことを意識. 話だけどパンツ下すか下ろさないくらいに限界に達するっ. する,家族に支えられながらもできることは自分で行うな. ていうこともあって,ひとり寂しくパンツ洗わないといけ. ど【周囲の人と協力し合える関係性の構築】も行っていた.. (E ないっていう状況になったことが何回かあるんで.」. 対象者は,体調が悪くても仕事を優先する一方で,無理を. 氏)や通勤や仕事中にも症状が出現し,トイレまで間に合. せず,できる範囲で仕事に取り組むなど【病気と就労との. わないことがある状況が語られた.. 表2 就労を継続している潰瘍性大腸炎患者の生活調整 カテゴリー. サブカテゴリー. 腹部症状による生活への影響の自覚. ・病気の症状には波がある ・切迫した便意のためにトイレに間に合わない ・食事によって腹痛や下痢が起こる ・体調が悪いときには疲れやすい. 経験に基づく症状を悪化させないための行動. ・体調が悪くなる経験をした食材を避ける ・身体が冷えた後に症状が出た経験から,身体が冷えないように準備しておく ・これまでの経験から体調が悪化する前兆を判断して対応する. 切迫した便意を想定した準備. ・通勤途中の切迫した便意に備えて出勤や起床の時間を早める ・安心して出かけるためにトイレの場所を自然と気にかける ・トイレに間に合わないことを想定して行動する ・電車とバスはトイレがなく途中で降りられないために利用を控える. 病気を職場に伝えるか否かの選択. ・仕事を続けていくために周囲の理解を得る必要があり自分の病気を打ち明ける ・病気のことをうまく説明できない ・働きづらくなると考えて病気のことを言わないようにする. 周囲の人と協力し合える関係性の構築. ・仕事中は周囲からの気遣いがあり,体調に応じて自ら周囲の人を頼る ・病気のために負い目を感じつつ職場内で協力し合うことを意識する ・家族に支えられながらも,出来ることは自分で行う. 病気と就労との折り合いの模索. ・職場に迷惑をかけないように体調が悪くても仕事を優先させる ・症状が出たときに休息をとれるように工夫する ・仕事は無理をせず出来る範囲で取り組む. 病気を抱えた生活への価値の転換. ・病気の経験が仕事に生かされる ・病気を抱えたことで自分の仕事を見つめ直す ・病気になってから,やりたいと思うことに積極的に取り組む. 将来への不安を抱えながらの就労継続の希望. ・この先もずっと働き続けられるか不安を感じる ・病気をもちながら働くうえで挑戦と安定で悩む ・経済的な不安から働き続けることを望む. 病気と共存した自分らしい生活の維持. ・病気についてあまり考えず,何とかなると思いながら過ごす ・ずっと付き合っていく病気であると捉え,現状の維持を望む ・病気を抱えた生活が自分にとって普通になる.
(4) 26. 河野,ほか:就労を継続している潰瘍性大腸炎患者の生活調整. 2) 【経験に基づく症状を悪化させないための行動】. が語られた.. このカテゴリーは, 《体調が悪くなる経験をした食材を 避ける》 《身体が冷えた後に症状が出た経験から,身体が冷. 5) 【周囲の人と協力し合える関係性の構築】 このカテゴリーは, 《仕事中は周囲からの気遣いがあり,. えないように準備しておく》 《これまでの経験から体調が. 体調に応じて自ら周囲の人を頼る》 《病気のために負い目. 悪化する前兆を判断して対応する》で構成されていた.. を感じつつ職場内で協力し合うことを意識する》 《家族に. 《これまでの経験から体調が悪化する前兆を判断して対 応する》では, 「お腹が張ったり鳴り出したりするとやっぱ. 支えられながらも,できることは自分で行う》で構成され ていた.. り悪くなる前兆なので,まぁそういう時には食べ物なんか. 《仕事中は周囲からの気遣いがあり,体調に応じて自ら. も,あまり多く摂らないようにしたり.コーヒーとかお茶. 周囲の人を頼る》では, 「立ち仕事をちょっと代わって,座. とか,あまりカフェインがあるようなもの飲まないとか,. り仕事にしてもらうとかは,こう周りの人が気を遣ってく. あとはもうやっぱり早めに切り上げて帰ったり早めに休む. ださって,代わってあげるよ,とか言ってもらったりはし. (H 氏)と,自分の身体の状況から,体調が とかですね.」. (G 氏)が語られた.また, 「調子悪いかな,どう ました.」. 悪化する前兆を判断して症状が出ないように行動する様子. かな,ちょっと怪しくなってきたかなっていうときは,よ. が語られた.. り深く他の人の動きとか,状況とかまぁ自然と見てるか. 3) 【切迫した便意を想定した準備】. な.そろそろトイレ行きたくなってきたなって思ったら,. このカテゴリーは, 《通勤途中の切迫した便意に備えて. ちょっと見渡して,今の(仕事)状況と,相手の人みて頼. 出勤や起床の時間を早める》 《安心して出かけるためにト. むし,まぁ間を見ながら. (中略)誰の手が借りられそうか. イレの場所を自然と気にかける》 《トイレに間に合わない. な,あっちは待たせられるかなっていうのは常に考えてる. ことを想定して行動する》 《電車とバスはトイレがなく途. (E 氏)と,自分の体調に応じて周囲を見渡して, かな.」. 中で降りられないために利用を控える》で構成されてい. 自ら頼ることのできる人を探していると語る者もいた.. た. 《トイレに間に合わないことを想定して行動する》では,. (途中でトイレに行くことが)できる業務と,できない業 「. 《病気のために負い目を感じつつ職場内で協力し合うこ とを意識する》では, 「受診とかで休まなきゃいけないのは. 周りに申し訳ないなって思いますけど,でも別に病気じゃ. 務もあって.でもまあ行きますよ,行きますけど.でも間. なくても誰にでも体調悪いときはあるし,そういう時に逆. に合わないこともいっぱいあります.その今やっててどう. に自分がカバーできればなって.そう思いながら(休みを). しても手が離せないときもあるし,そういうときはもう. (F 氏)と,病気に関わらず,体調が悪い もらってます.」. (B 氏)と,トイレ (パッドに)出すしかない,みたいな.」. ときには職場内で支え合うことができるように意識してい. に間に合わないことを想定してあらかじめパッドを当てて. る様子が語られた.. おくようにしていた.. 6) 【病気と就労との折り合いの模索】. 4) 【病気を職場に伝えるか否かの選択】. このカテゴリーは, 《職場に迷惑をかけないように体調. このカテゴリーは, 《仕事を続けていくために周囲の理. が悪くても仕事を優先させる》 《症状が出たときに休息を. 解を得る必要があり自分の病気を打ち明ける》 《病気のこ. とれるように工夫する》 《仕事は無理せずできる範囲で取. とをうまく説明できない》 《働きづらくなると考えて病気. り組む》で構成されていた.. のことを言わないようにする》で構成されていた. 《仕事を続けていくために周囲の理解を得る必要があり. 《職場に迷惑をかけないように体調が悪くても仕事を優 先させる》では, 「やっぱり人数が少ないんで,ひとり休む. 自分の病気を打ち明ける》では, 「あんまり言いたくない. と結構周りに負担がかかるので…. (病気のことを周りに). な っ て い う の も 正 直 あ っ た け ど, ま ぁ 一 応 課 長 に は,. (I 氏)と,体 言っててもなかなか休むに休めないですね.」. ちょっとどういう症状がでるのか,いまいちその時はわか. 調が優れない状況でも,自分が休むことで職場の人の負担. んなかったので,急に休むこともでてくるかもしれない. が増えてしまうことを気にしてしまい,休むことができず. し,例えば入院とかって話になると,あれだもんで,一応. に仕事をしている様子が語られた.. 課長には言っておこうかなって(思い)課長には報告はし. 《仕事は無理せずできる範囲で取り組む》では, 「病気に. (E 氏)と,職場では周囲の理解を得る必要があ ました.」. なって(仕事を)すぐに辞めようと思ったけどやめられな. ると考え,自身の病気について上司に伝えていた.. かったので, (中略)普通に無理せずに,頑張ろうかなって. 《働きづらくなると考えて病気のことを言わないように. (F 氏)や「なんか基本的にすごい体調悪 思ってました.」. する》では, 「たぶん周りも何となくは体調悪いんだろうっ. い時を経験したあとだったので,もうとりあえず元気でい. ていうのは,その定期的に病院に行ってるっていうのは何. ることが一番だなと思ったので. (仕事は)できる範囲でや. となくわかっている感じなんで,ただどういう病気かって. (G 氏)と語られた. ろうっていう風に思いました.」. いうのは伝えてないですね.言ってもぴんと来ないと思い. 7) 【病気を抱えた生活への価値の転換】. ますし. (中略)なんかあったとき,こう病気だからちょっ. このカテゴリーは, 《病気の経験が仕事に生かされる》. とあれ,みたいな感じで思われちゃうのは嫌だなっていう. 《病気を抱えたことで自分の仕事を見つめなおす》 《病気に. (I 氏)と,病気についての情報が広まることで働 のは….」. なってから,やりたいと思うことに積極的に取り組む》で. きにくくなると考え,他者に伝えないようにしていること. 構成されていた..
(5) 27. 日本慢性看護学会誌 第15巻 第1号 2021年. 《病気になってから,やりたいと思うことに積極的に取. ですけど,薬もそんなに飲みたくなかったし.そんなずっ. り組む》では, 「逆に病気になって,今まではあぁこういう. と飲み続けるってどうなんだろうって思ってましたけど,. ことやりたいな,とかいろいろあっても,まぁいいかって. もう何十年にもなるので,飲み続けるのも普通だし,受診. いうのはあったんですけど,病気になってから,逆にそう. (C 氏)や「別に普通に学校生活も するのも普通なので.」. いうことを,やりたいことがあったら必ずやるようには,. 終えられて,普通に卒業出来て,普通に就職できて,今ま. (H 氏)と,病気になった そういう風にはなりましたね.」. で普通に,一応普通に仕事してこれたんで,だからこそそ. ことで様々なことに挑戦するようになったと語られた.ま. (B 氏) んなに特別な,普通に病気のひとつ,くらいな.」. (中略)病気のときに一 た, 「私スポーツが本当は好きで,. と,長い経過のなかで,療養生活が自分にとって普通のこ. 回辞めたんですけど,社会人になってからもう一回やっ. とであると認識していた.. て.なんか,やれるとき,元気なときに楽しんでおきたい なって思って,社会人になったときにもう一回全国目指し (G 氏)と,元気なときに楽しんで て出場したんですよ.」 おこうという心境に至ったと話す者もいた. 8) 【将来への不安を抱えながらの就労継続の希望】. Ⅵ.考察 1)就労を継続している潰瘍性大腸炎患者の生活調整につ いて. このカテゴリーは, 《この先もずっと働き続けられるか. 対象者は,症状をもちながら就労していく上で,朝食後. 不安を感じる》 《病気をもちながら働くうえで挑戦と安定. に腹痛や下痢などの症状が起こりやすいことを認識し,通. で悩む》 《経済的な不安から働き続けることを望む》で構成. 勤の途中でトイレに寄ることができるように時間に余裕を. されていた.. 持って出勤したり,起床時間を早めて,朝食を摂取した後. 《病気をもちながら働くうえで挑戦と安定で悩む》では,. にトイレを済ませてから出勤できるようにしていた.安酸. 「いろいろやりたいとか,これから就職してこれをやって. (2015)は,病気による症状や特徴に自分自身でうまく対. いきたいとかあったときだったので,特に挑戦しようと. 処していくことをセルフマネジメントであると定義してお. 思ったときに(病気に)なっちゃったから,いやもう安定. り,就労している潰瘍性大腸炎患者は,自分の症状に合わ. をとった方がいいんじゃないの?って思いました.なんか. せたセルフマネジメントを獲得することによって,療養法. 挑戦してこう身体を壊してくことになっちゃうのかなっ. を含む日常生活をうまく調整していると考えられる.ま. (G 氏)と,病気を抱えて就職をする際に,自分のや て.」. た,潰瘍性大腸炎の主な症状は腹痛や下痢,血便であり,. りたい仕事に就くか安定した仕事を選ぶかという選択で悩. 周囲からは症状があることを認識されにくい.本研究の結. んでいた.. 果から,病気のことを職場に伝えるか否かの選択は個々の. 《経済的な不安から働き続けることを望む》では, 「自分. 病状や病気に対する考え方,就労状況などが影響している. を養わなきゃいけないので, (仕事を)やらないといけない. ことが考えられた.Larsson et al.(2016)は,病気による. と思います. (中略)普通に病気を差し引けばいろいろな経. 症状を恥ずかしいと感じ,黙ったまま暮らしたいと語る者. 験ができるとかあると思うんですけど,病気を抱えてだ. がいる一方で,社会的支援を受けるために家族や友人,同. と,やっぱり自分の治療費ですよね.そのくらいは働かな. 僚に病気に関する情報を共有することの重要性について語. (G 氏)と,病気を抱えた生活では,治療費のため いと.」. る者がいたことを報告している.黒江ら(2011)は,これ. に仕事を続けていく必要があるという思いが語られた.. を慢性の病いにおける「言いづらさ」と表現しており,潰. 9) 【病気と共存した自分らしい生活の維持】. 瘍性大腸炎患者は病気の「言いづらさ」を抱えながらも,. このカテゴリーは, 《病気についてあまり考えず,何とか なると思いながら過ごす》 《ずっと付き合っていく病気で あると捉え,現状の維持を望む》 《病気を抱えた生活が自分 にとって普通になる》で構成されていた.. 就労を継続するために職場で伝えるか否かを選択している という状況が示された. 潰瘍性大腸炎は再燃と寛解を繰り返し,将来的に大腸が んのリスクも高くなるため,体調が落ち着いていても定期. 《ずっと付き合っていく病気であると捉え,現状の維持. 的な外来受診や数年ごとの内視鏡検査が必要となる.ま. を望む》では, 「まぁ付き合っていくしかないので,今ずっ. た,体調によっては頻回な便意に加え,疲労感も強く,就. とコントロールできているっていうところで,そんなに重. 労をしている者は,休暇の取得や業務内容などに配慮を必. 症感っていうのか,そういうのは感じてないので,定期的. 要とする場合もある.しかし,本研究の対象者は,その場. にフォローしてもらえばいいかなって.やっぱ症状みなが. その場でただ周囲から気遣いを受け,支えてもらっている. ら,それで様子見ていければ,とりあえずはキープしてい. のではなく,対象者自らが周囲の状況を見ながら頼ること. (E 氏)と,潰瘍性大腸炎 ければいいかなって感じです.」. や職場内で協力し合うことを意識するなど,支え合う関係. がずっと付き合っていく病気であると捉え,コントロール. 性を構築していた.これは,潰瘍性大腸炎を抱えて就労を. が出来ている現在の状態を維持していくことを望んでい. 継続していくためには職場や家族など周囲の人との関係性. た.. が重要であることを示している.牧ら(2019)は,炎症性. 《病気を抱えた生活が自分にとって普通になる》では,. 腸疾患患者にとって,近しい友人や職場の同僚,上司は,. 「うまく共存してる感じですかね.きっと病気だって診断. 適度な距離感と親密性を保ちつつ,つながりを持っていた. された頃は,治そうとか,っていう思いもあったと思うん. い存在であると報告している.潰瘍性大腸炎患者は,病気.
(6) 28. 河野,ほか:就労を継続している潰瘍性大腸炎患者の生活調整. を抱えて就労を継続するなかで,病気のことを周囲の人に. 患者会に参加する時間的な余裕がないことなどから,患者. 伝えるか否かに関わらず,自ら周囲の人とのつながりを求. 会に参加したことのある者がいなかったと考えられる.し. め,相互に支え合うことのできる関係性の構築に取り組む. かし,対象者のなかには,患者会の存在自体を知らなかっ. ことで就労を継続していることが考えられた.. たと語る者もおり,患者が自己にて選択して意思決定でき. 本研究の対象者は就労を継続するうえで,いつ症状の再. るように患者会などのセルフヘルプグループを含む社会資. 燃が起こるのか予測できないために新しい仕事への挑戦を. 源についての情報を提供していくことも看護師の役割であ. 躊躇したり,体調が悪くても仕事を優先させざるを得ない. ると考える.. などの悩みを抱えていた.冨田ら(2016)は,炎症性腸疾. 3)本研究の限界と今後の課題. 患患者の「不確かさ」がネガティブな心理状態や食生活,. 本研究は,対象者が10名と少なく,A 総合病院の外来通. 社会生活上の困難さと正の相関関係であることを明らかに. 院中患者に限られていたため,就労を継続している潰瘍性. しており,就労を継続している潰瘍性大腸炎患者は,就労. 大腸炎患者の生活調整として一般化することはできない.. に関する困難などにより「不確かさ」が大きい生活を送っ. また,本研究の対象者は,発症後数年経過しており病状も. ていることが考えられる.しかし,本研究の対象者は, 「不. 安定していたため,就業上の困難が比較的少ない対象で. 確かさ」を抱えた生活をマイナスに捉えるだけでなく, 「病. あった可能性が考えられる.さらに,研究に同意の得られ. 気の経験が仕事に生かされる」 , 「病気になってからやりた. た10名の対象者のうち医療福祉関係の職業に就いている. いと思うことに積極的に取り組む」などプラスに捉えてい. 者が5名おり,職場において病気の理解が得られやすい状. る者も多く,病いを抱えた生活に新たな価値を見出してい. 況であった可能性も考えられる.今後の課題として,研究. た.また,潰瘍性大腸炎は学生の時期や社会に出て間もな. 結果の信頼性と妥当性を高めていくためには,職種別に対. い時期に病気を発症することも多く,働くことに対する自. 象者数を増やしてデータを収集するとともに,発症後早期. 分なりの意味についても確立できていないことがある.対. や病状の不安定な患者を対象とした研究も実施し,本研究. 象者の中には,学生の時からやりたい仕事があったが病気. の結果を比較検討していく必要がある.. のために諦めなければならず,やむを得ず別の仕事を選択 し,そこで新たにやりがいを見つけて就労を継続している と語る者や,病気が悪化して入院してしまったことを機. Ⅶ.結論. に,仕事はやるべきことのみを行い無理しないことを心が. 外来通院している20~59歳の潰瘍性大腸炎患者で仕事. けていると語る者もいた.若年で発症することの多い潰瘍. に従事している者10名を対象として半構成的面接を行い. 性大腸炎患者は,病気の症状から生活への影響を実感する. 質的帰納的に分析した.就労を継続している潰瘍性大腸炎. ことで仕事に就く前に抱いていた働くことの価値を見直し ており,変更した仕事や働き方に新たにやりがいを見出す ことで,将来に対する不安を抱えながらも,病気と共存し. 患者の生活調整は, 【腹部症状による生活への影響の自覚】 【経験に基づく症状を悪化させないための行動】 【切迫した 便意を想定した準備】 【病気を職場に伝えるか否かの選択】. た現在の生活が“普通”であるという考えに変化している. 【周囲の人と協力し合える関係性の構築】 【病気と就労との. 状況が示された.就労を継続している潰瘍性大腸炎患者. 折り合いの模索】 【病気を抱えた生活への価値の転換】 【将. は,療養法を含む日常生活や周囲の人との関係性の調整を. 来への不安を抱えながらの就労継続の希望】 【病気と共存. 経て,自らがどうありたいかについて考え,自分らしい生. した自分らしい生活の維持】という9つのカテゴリーで構. 活を維持したいと希望していることが考えられた.. 成されていた.潰瘍性大腸炎患者が充実した生活を維持す. 2)看護への示唆. るためには,就労の継続に向けて実施している生活調整の. 就労している潰瘍性大腸炎患者が医療者と関わるのは主 に外来受診時である.しかし,多くの患者を診察している. 取り組みを把握し,本人のセルフケアを維持・促進する看 護支援の必要性が示唆された.. 外来において,看護師は患者と関わる時間が限られてお り,目に見える症状のない潰瘍性大腸炎患者は,本人から. 謝 辞. の訴えがなければ問題がないと判断され,看護師が関わる. 本研究にご協力いただいた対象者の皆様,A 総合病院の. 場面は少ないと思われる.本研究の結果から,就労を継続. 看護部長,外来看護課長ならびにスタッフの方々に心から. している潰瘍性大腸炎患者は,病気の症状のために日常生. 感謝申し上げます.本論文は聖隷クリストファー大学大学. 活に影響が生じていたり, 「言いづらさ」や「不確かさ」を. 院修士論文の一部を加筆・修正したものである.本研究. 抱えながらも,病気とともに自分らしく生活することを目. は,第14回日本慢性看護学会学術集会において発表した.. 指していることが明らかになった.潰瘍性大腸炎患者が充 実した生活を維持するためには,より患者の生活に即した 援助が必要であり,患者の実施している生活調整の取り組. 利益相反 本研究における利益相反は存在しない.. みを把握し,その行動が維持できるように本人の努力を認 め,フィードバックするなどのセルフケア支援が重要であ. 文 献. ると考えられる.. 春名由一郎(2015) .難病の症状の程度に応じた就労困難 性の実態及び就労支援のあり方に関する研究.高齢・. また,本研究は就労している者を対象としていたため,.
(7) 29. 日本慢性看護学会誌 第15巻 第1号 2021年. 障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター, 17-180. 小松喜子,前川厚子,神里みどり,他(2004) :潰瘍性大 腸炎患者とクローン病患者の実態と保健医療福祉ニー ズ(1)共通点と相違点,日本難病看護学会誌,9 (2) , 109-119. 厚生労働省(2016) :事業場における治療と仕事の両立支 援のためのガイドライン,1-39. 厚生労働省:衛生行政報告例,2019-12-20, https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/36-19.html 黒江ゆり子,寳田穂,市橋恵子,他(2011) :7つのライ フストーリーに描き出された他者への「言いづらさ」 , 看護研究,44 (3) ,298-304. Larsson K., Lööf L., Nordin K.(2016) : Stress, coping and support needs of patients with ulcerative colitis or Crohn’s disease: a qualitative descriptive study, Journal of Clinical Nursing, 26, 648-657. 牧千亜紀,菅原京子(2019) :壮年期の消化器系難病者が 望む周囲とのつながり,日本難病看護学会誌,23 (3) , 239-252. 那須文実,山田和子,森岡郁晴(2016) :潰瘍性大腸炎に おける就業上の困難と生活の質,和歌山県立医科大学 保健看護学部紀要,12,7-15.. 杉村芳美(2009) :人間にとって労働とは─「働くことは 生きること」─,橘木俊詔(編) ,働くことの意味,30-34, ミネルヴァ書房,京都. 富田真佐子,片岡優実(2016) :炎症性腸疾患患者におけ る病気の不確かさの特徴と関連要因の探索,日本慢性 看護学会誌,10 (1) ,2-10. 富田真佐子,片岡優実,矢吹浩子(2007) :クローン病患 者において病状の不安定さがもたらす日常生活への心 理社会的影響,日本難病看護学会誌,11 (3) ,198-208. 安酸史子(2015) :セルフマネジメントとは,安酸史子, 鈴木純恵,吉田澄恵(編)ナーシング・グラフィカ成 人看護学3─セルフマネジメント,13-28,メディカ 出版,大阪. 吉田礼維子(2003) :成人初期の炎症性腸疾患患者の生活 実態,日本難病看護学会誌,7 (2) ,113-122. Self-Regulation of Working Ulcerative Colitis Patients Takahiro Kono*, Yukiko Toyoshima* School of Nursing, Seirei Christopher University. *. Key words: Ulcerative Colitis Patients, Self-Regulation, Work.
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らぽーる宇城 就労移行支援 生活訓練 就労継続支援B型 40 名 らぽーる八代 就労移行支援 生活訓練 就労継続支援B型 40 名
同研究グループは以前に、電位依存性カリウムチャネル Kv4.2 をコードする KCND2 遺伝子の 分断変異 10) を、側頭葉てんかんの患者から同定し報告しています