この記事はクリエイティブ・コモンズ[表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。 https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja © 2021 日本小児外科学会 I は じ め に 小児における肝芽腫では,しばしば肺転移を来すこと が知られている.前方視的研究がないため,肝芽腫の肺 転移巣に対する切除術の有効性には十分な根拠がないも のの,肺転移巣の切除後に長期生存を得たという報告も 少なくない1)2).近年,画像診断技術の進歩によって肺の 微小な転移巣の発見精度は飛躍的に向上している.成人 における呼吸器外科領域では,肺の微小病変に対して術 前に CT ガイド下にマーキングする方法が考案され,そ の有用性はほぼ確立されているが,小児における肺の微 小病変に対する応用例はいまだ少ない.我々は肝芽腫の 微小肺転移が疑われる 3 症例に対して,色素注入による CTガイド下マーキング(以下 CT 法)を行った.うち 2症例では,インドシアニングリーン(以下 ICG)が肝 芽腫に取り込まれる3)という特性を利用して,ICG 蛍光 法を用いた術中ナビゲーション(以下 ICG 蛍光法)を 併用した.そこで,小児における肝芽腫の微小肺転移に 対する CT 法および ICG 蛍光法の有用性について,自験 例に文献的考察を加えて報告する.本研究は,当施設の 倫理委員会による承認を得て行った(承認番号 1348). II 症 例 症例 1:4 歳 7 か月.男児. 現病歴:腹部腫瘤を主訴に来院し,精査にて肝右葉 に 12 cm×11 cm×14 cm の腫瘤を認めた.アルファフェ トプロテイン(以下 AFP)は 80 万 ng/ml に上昇してお り,PRETEXT II の肝芽腫と診断した.CITA4) 1コース と 98newA15) 1コースによる化学療法を施行後,肝右葉 切除を施行した.術後に 98newA1 を 3 コース施行し, 1 大阪府立病院機構大阪母子医療センター小児外科 2 同 放射線科 責任著者:山道 拓 〒594-1101 大阪府和泉市室堂町 840 大阪府立病院機構大阪母子医療センター小児外科
当院における CT ガイド下マーキング
および ICG 蛍光ナビゲーションを併用した
肝芽腫の微小肺転移切除の経験
山道 拓
1,西川 正則
2,牧野 克俊
1,安部 孝俊
1,金 聖和
1,
田山 愛
1,正畠 和典
1,曹 英樹
1,臼井 規朗
1 要 旨 肝芽腫の微小肺転移巣を,染色法による CT ガイド下マーキング(以下 CT 法)を行って切除 した症例を経験したので報告する.症例 1 は肝芽腫が右葉に原発した 4 歳男児例.肝右葉切除後 に出現した 1 か所の右肺転移巣に対して CT 法を行ったのち胸腔鏡下肺部分切除を施行した.症 例 2 は肝芽腫が右葉に原発した 1 歳男児例.化学療法後も残存する右肺の 2 か所の微小結節性病 変に対して CT 法とインドシアニングリーン蛍光法を用いた術中ナビゲーション(以下 ICG 蛍 光法)を併用して肺部分切除を行ったのち,全肝を摘出して肝移植を施行した.症例 3 は肝芽腫 が左葉に原発した 3 歳男児例.肝左葉切除,化学療法後に残存する 7 か所の肺の微小結節性病変 に対して CT 法と ICG 蛍光法を併用して両側肺の部分切除を施行した.CT 法と ICG 蛍光法を併 用することで,肉眼でも触診でも確認できないほど微小な肝芽腫の肺転移巣を確実に切除できる と考えられた. 索引用語:肝芽腫,転移性肺腫瘍,CT ガイド下マーキング,ICG 蛍光ナビゲーションdl,CRP 0.06 mg/dl,AFP 16.6 ng/ml(L3 分画 38.5%)と, AFPが上昇している他には血液生化学検査所見に明ら かな異常を認めなかった. 術前胸部 CT 検査所見(図 1):右中葉(S4)の末梢 に径 3 mm 大の結節状陰影を認めた(図 1A). CT法:仰臥位で 5 mm 間隔のスケールを体表に置き (図 1B,C),CT ガイド下に 22G 針を用いてインジゴカ ルミン 1 ml を注入して結節状陰影部をマーキングした (図 1D). 手術所見:全身麻酔下に CT 法にてマーキング後,3 ポートで胸腔鏡を行って肺表面を観察した.中葉の青く 染色された部位を中心に EndoGIA 30 mm を 2 回用いて 肺を部分切除した(表 1#1). 組織所見:切除標本内に viable な肝芽腫細胞を含む転 移巣を認めた.断端は何れも陰性であった. 術後経過:術後は合併症を生じることなく退院した. 現在術後 7 年経過したが再発を認めていない. 症例 2:1 歳 4 か月.男児. 呼吸音清明,腹部は平坦・軟. 手術時検査所見:WBC 9,200/μl,RBC 357×104/mm3,
Hb 10.8 g/dl,Plt 21.4×104/mm3,AST 52 IU/ l,ALT 27
IU/ l,T-BIL 0.7 mg/dl,BUN 13.4 mg/dl,Cr 0.24 mg/dl, Na 138 mEq/ l,K 4.6 mEq/ l,Cl 104 mEq/ l,T-P 7.2 mg/ dl,CRP 0.02 mg/dl,AFP 94.4 ng/ml(L3 分画 16.9%)と, AFPが上昇している他には血液生化学検査所見に明ら かな異常を認めなかった. 術前胸部 CT 検査所見(図 2):第 3 肋骨の内側の胸 膜下の右肺 S3 に長さ 3 mm の線状結節像を認めた(図 2A,B,表 1#2).また S4 の葉間胸膜に接する部分に 4 mmの円形結節像を認めた(図 2C 表 1#3). CT法:S4 の病変は微小ではあるが葉間の肺表面に存 在するため,術中に視認または触知が可能と判断して マーキングを行わないこととし,S3 の病変のみマーキ ングを行った.超音波検査で確認した肋間動脈を刺入 しない部位から 22G 針を穿刺してインジゴカルミンを 1 ml注入した(図 2D). 図 1 症例 1 A.術前胸部 CT 横断像.中葉(S4)の体表近くに,径 3 mm 大の円形の結節状陰影を認めた.B.C.5 mm 間隔 で体表に平行に置いたスケール(B)と,スケールが CT 横断像に写る様子(CD).D.22G 針にて結節状陰影部を 穿刺しているところ.
手術所見:開胸後,KARL STORZ 社製近赤外線カメ ラシステムを用いた ICG 蛍光法によって肺表面を観察 したところ,S4 の病変部は胸膜部の膨隆とともに発光 が認められた(図 3A,B).S3 の病変は ICG 蛍光法に よる発光は認めなかったが,青く染色されていた.S3, S4の病変部をそれぞれ部分切除した. 組織所見:いずれの切除標本内にも viable な肝芽腫細 胞を含む転移巣を認めた.切除断端はいずれも陰性で あった(図 3C,D,E). 術後経過:術後 SIOPEL-4 に基づいた化学療法を行 い,2 か月後に他院にて全肝摘出のうえ母をドナーとし た生体肝移植を施行した.術後再度 AFP が上昇して左 肺 S10 に転移巣を認めたため,肝移植後 6 か月に左肺 の転移巣に対する肺部分切除術を施行した(表 1#4). この時の結節は径 6 mm 大であり,胸膜から 1 mm 以内 の箇所に局在していたため,触知できると判断して CT 法を行わずに開胸手術によって触診によって局在を同定 して切除した.さらに ICG 蛍光法を使用して CT で同 定できていない病変を検索したが,同結節以外の箇所に 蛍光は認めなかった.術後補助化学療法を施行し,現在 経過観察しているが再発の徴候は認められない. 症例 3:3 歳 2 か月.男児. 現病歴:腹部膨満を主訴に来院し,精査にて肝左葉に 多発する腫瘤を認めた.両肺にも多発する転移巣を認 め,肝芽腫(PRETEXT III,肝外性因子 E,R,M)と 診断した.SIOPEL-4 に基づいた化学療法を施行した後 に,肝左葉切除を施行した.術後,SIOPEL-4 に基づい た化学療法を実施したが,術前より存在した右肺の結節 性病変 5 箇所と左肺の結節性病変 2 箇所は,微小ながら 残存していた.微小結節部に悪性細胞が残存している可 能性は否定できないと判断し,診断的治療目的で切除術 を行うこととした.CT 法および肺部分切除術について は,まず右肺について行い,12 日間のインターバルを おいて左肺について行った. 家族歴:父が家族性大腸ポリポーシスと診断されている. 手術時身体所見:身長 94.0 cm,体重 12.8 kg,体温 36.5°C,脈拍 81 回/分,血圧 108/53 mmHg,心音整,呼 吸音清明,腹部は平坦・軟. 手術時検査所見:WBC 2,900/μl,RBC 324×104/mm3,
Hb 9.2 g/dl,Plt 16.3×104/mm3,AST 63 IU/ l,ALT 90
IU/ l,T-BIL 0.3 mg/dl,BUN 5.2 mg/dl,Cr 0.26 mg/dl, Na 137 mEq/ l,K 4.5 mEq/ l,Cl 104 mEq/ l,T-P 6.6 mg/ dl,CRP 0.15 mg/dl,AFP 1.8 ng/ml と,軽度の貧血所見 と肝逸脱酵素の上昇を認めたものの,AFP は正常範囲 内であった. 術前胸部 CT 検査所見(図 4):両肺に径 1∼2 mm の微 小結節が計 7 個所認められた.それぞれの局在は以下の 図 2 症例 2 CT 画像 A.術前胸部 CT 横断像.B.術前胸部 CT 冠状断像. 上葉(S3)の胸膜下に長さ 3 mm 大の線状結節像を認め た.C.術前胸部 CT 横断像.第 5 肋骨内側で中葉(S4) の葉間胸膜に接する部分に径 4 mm 大の円形結節影像を 認めた.D.色素注入後の CT 横断像.S3 の病変の近傍 に注入した色素による変化が認められた. 図 3 症例 2 術中画像と病理画像 A 右肺上葉を胸腔鏡で観察したところ,肺表面に穿 刺注入した色素を認めた.B 右中葉表面に触知する 結節に近赤外線を照射したところ発光が確認できた.C 右 S3 の結節の断面.肺表面に淡く色素が残っている. D, E 切除結節の病理写真.微細なクロマチンパターン の小円形核を有し,類縁形の肝細胞に類似した異形細胞 が気管支血管束において柵状に増殖している.切除断端 に腫瘍細胞は及んでいない.
臥位で上肢を挙上した肢位とした.肩甲骨を動かすこと で穿刺ルートを確保して,背側から #5,#6 を 22G 針 で穿刺してインジゴカルミン 1 ml を注入した(図 5C, D).このとき #9 のみ注入後の透視 CT で,肺内に注入 液が貯留している陰影を認めた. 1回目手術(右肺),手術所見:左側臥位,第 5 肋間 うに #10 を 22G 針を用いて穿刺した(図 5E).インジ ゴカルミンを 1.5 ml 注入したところで CT を用いて病変 付近の液体貯留像を確認した.肩甲骨を外側に変位させ た腹臥位で #11 を 22G 針を用いて穿刺してインジゴカ ルミン 2 ml を注入した(図 5F,G).しかし CT では結 節周囲の濃度上昇が弱く,再度穿刺してインジゴカルミ 図 4 症例 3 術前画像 右葉 A.上葉(S3)の背側(表 1#5),B.下葉(S6)背側(表 1#6),C.下葉(S8) の中葉との葉間(表 1#7),D.中葉(S5)の上葉との葉間(表 1#8),E.下葉(S8) の胸膜近傍(表 1#9).左葉 F.上葉(S3)外側(表 1#10),G.下葉(S6)外側(表 1#11).
ン 0.5 ml を注入し,CT で濃度上昇を確認した. 2回目手術(左肺),手術所見:右側臥位,第 5 肋間 で開胸した.直視下に #10,#11 のマーキングによる 染色を確認できた(図 6A,B).また ICG 蛍光法によっ て肺表面の発光部位を検索したところ,#10,#11 とも に発光を認めなかった.染色されている部位を中心に #10,#11 を切除した. 組織所見:#5∼ #8 いずれも viable な腫瘍細胞組織 や,腫瘍の消失した痕のヘモジデリン沈着などの所見は 認めなかった.#9 にも腫瘍細胞を認めず,肺胞が虚脱 している 1 mm 程度の領域を認めたが,無気肺であるか 標本未進展固定によるアーチファクトか判断できなかっ た.#10 は小葉間隔壁内に小型リンパ球が集簇しており 肺内リンパ節と考えられた.#11 は含気が乏しい部分 を 1.1 mm の範囲で認め,微少な無気肺と考えられた. #10,#11 いずれにも腫瘍細胞の残存は認めなかった. 術後経過:術後は合併症なく退院した.術後 CT では #5,#6,#7,#8 と考えられる小結節は切除されずに 残存していた.穿刺痕や推定部位の視診や触診では,目 的とした部位が切除できていなかったと思われた.しか し,腫瘍マーカーの再上昇を認めず,結節性病変が切除 できた #9,#10,#11 のいずれにも腫瘍細胞の残存を 図 5 症例 3 マーキング後の CT 透視画像 #5,#6,#8,#9,#10,#11 はそれぞれ本文中の結節番号に対応.A∼G は穿刺した順番に準じた.右肺 #8(A), #5(C),#6(D)は色素注入後も肺内に明らかな液体貯留像を認めなかった.#9(B)は結節周囲に液体貯留を考 えられる新たな陰影の広がりを認めた.左肺 #10(E)は結節周囲に液体貯留像を認めた.#11(F.矢状断 G. 冠状断)では結節周囲に帯状の液体貯留による濃度上昇を認めた. 図 6 症例 3 術中のマーキング写真 A 左上葉の肺表面に穿刺注入した色素が確認された. B 左下葉の肺表面に穿刺注入した色素が確認された.
認めなかったため,再手術を行わずに経過観察すること とした.現在,術後 7 か月経過するが腫瘍マーカーの増 大は認めていない. 症例 1∼3 で切除した結節ごとの情報を表 1 にまとめた. III 考 察 肝芽腫の治療の原則は腫瘍の完全切除であり,化学療 法と組み合わせて行う腫瘍の摘除が重要である.我が国 の小児がん診療ガイドライン8)では,肝芽腫の肺転移巣 に対しては化学療法を行ったのちに,病変が切除可能で あれば外科切除を行うことが推奨されている.一方で, 肺転移巣に対する外科的切除の適応は施設ごとの外科医 の判断に委ねられている. 肺転移巣の外科的切除に際しては,術前の画像検査に 加えて術中の視診と触診に基づいて病巣を同定すること になる.しかし本症例のように,CT 画像において胸膜 から少し離れた深部に存在し,微小結節として捉えられ るような病変では,術中に視認や触知が困難で,局在を 同定できないことがある.そのような肺の微小病変の同 定法として,成人では CT ガイド下にマーキングを行う 報告が散見されるが,肺腫瘍切除症例の少ない小児例に おいてはいまだ報告例が少ない.一方で,肝芽腫に特 異的に応用できる方法として ICG 蛍光法を用いたナビ ゲーション手術によって微小な肺転移巣を発見できると する報告も散見される9)10). CT法の適応として,病変のサイズが径 5 mm 未満と する報告11)がある.また,フックワイヤーを用いた方法 では,病変が胸膜面から 10 mm 以上離れていることを 条件としている報告12)もある.その他,穿刺経路と肩甲 骨や肋骨との位置関係からくる技術的な問題や,長い経 路の穿刺によって肺や血管を損傷するリスクも考慮する 必要がある.われわれは,症例ごとに麻酔科,放射線科, 腫瘍科と合同で検討した上で CT 法を用いた肺部分切除 術の適応を判断している.特に上肺野の病変は肋間が狭 いうえ,胸骨や肩甲骨,腋窩に存在する脈管が妨害して 刺入経路に制限が加わりやすい13).症例 2,3 では術前 の CT だけでなく,マーキングを行う CT 時にも全身麻 酔下に体位を変換し,呼吸性変動を制御することによっ て穿刺が可能かどうかと穿刺経路を最終的に決定した. 我々の CT 法では,22G のカテラン針を用いて穿刺 し,インジゴカルミンを注入する染色法を行っている. 小児における肺の微小病変に対してフック型ワイヤーを 用いてマーキングした報告11)もあるが,肺実質の脆い小 児例においてはワイヤーが逸脱する恐れがあるため確実 にワイヤーを留置することは困難とされている.症例 3 では右肺の切除時には色素を注入したはずの箇所に染色 を認めない部位も認められた.染色から 3 時間以内に結 節を観察するべきという報告14)がみられるが,本症例で は全身麻酔下に CT 室でのマーキングを施行したのち, 直ちに手術室に移動して手術を開始した.染色液が吸収 されたとは考えにくく,胸腔内に明らかな色素の漏出を 認めなかったことから,リンパ管が穿刺されてインジゴ カルミン液が流出した可能性が考えられた.そこで,1 週間後の対側の肺切除時には CT 上で染色液の貯留像を 確認したうえで開胸したところ,染色が確認できた. CT法による合併症として,気胸,肺出血,悪性細胞 播種,空気塞栓などが報告されている.気胸に関して は CT 室と手術室の移動中に脱気を要する状況になる可 能性を考慮して,移動中もドレナージの器具を準備して 備えた.悪性細胞の播種については肝芽種肺転移の穿刺 マーキングでは報告がないが,成人の肺癌では報告が散 見される.空気塞栓については稀ではあるが死に至る合 併症である.発生機序としては穿刺による気管支肺静脈 瘻が形成された状態で咳嗽などにより肺胞圧が肺静脈圧
より高くなることがもっとも考えられる15).治療として はバイタルサインに応じて救命処置を行うべきであり, そのリスクについては術前に説明して同意を得る必要が ある.さらに穿刺そのものの適応について術前,術中に 関連各科で十分に検討することで,必要でない穿刺を避 けることも重要であると考えられた. 手術のアプローチには開胸下と胸腔鏡下があるが,北 河ら10)は肝芽腫における多発肺転移巣切除では,切除範 囲が大きくなるのに加え,術後の画像検査でアーチファ クトの原因となる自動縫合機は使用せず,開胸下に手縫 いで最小範囲を切除することを推奨している.我々は, 症例 1 では原発巣切除後の再発が 1 箇所であったため, 整容性と低侵襲性を重視して胸腔鏡下の肺切除を選択し たが,症例 2,3 では術後に,再度転移巣が発生するリ スクを考慮して開胸を選択した. 近年では ICG 蛍光法を用いたナビゲーション手術の 有効性が報告されており9)10),我々も症例 2,3 では CT 法に加えて,術中に微小肺転移巣を検索するために ICG 蛍光法を併用した.ICG 蛍光法では CT で描出できない 微小肺転移巣を検出できることがあると言われている. しかし,症例 2 では CT で同定できた S3 胸膜下の腫瘍 細胞は ICG 蛍光法で検出できなかった.したがって, 我々が切除した結節には CT 法によって染色され,かつ ICG蛍光法で陽性であった病変はなかった.ここでイン ジゴカルミンが ICG による発光を阻害した可能性が考 えられる.しかし,我々の症例は過去の報告に従って手 術 24 時間前に ICG を注射しているため,ICG が肝芽腫 組織に取り込まれる時間は十分にあると考えられる. さらに乳がんのセンチネルリンパ節生検においては ICG とインジゴカルミンを同時注入して染色と蛍光発光が得 られている16).肝芽腫においても同様に後から注射した インジゴカルミンが ICG の取り込みを阻害するとは考 えにくい.以上によりインジゴカルミンによる染色が ICG蛍光法の発光を阻害することはないと考えた.した がって ICG 蛍光法で偽陽性となれば過剰手術となる危 険性があるものの,我々は根治性を重視して肝芽腫肺転 移巣の手術の際は,全例で ICG 蛍光法を併用している. もし術中に陽性を示す結節性病変を認めた場合は切除す ることを原則としていている. 我々の治療経験では肝芽腫の微小肺転移巣切除におい て,CT 法は径 3 mm 以下の触診で同定できない結節を 対象として行った.その結果,染色できなかった結節も 経験したが,これらは元来 CT 法がなければ切除が難し い病変である.術後合併症がなかった点も考慮して, 小児においても CT 法は有効であったと考える.さらに CT法に ICG 蛍光法を併用することで,それぞれ単独で 行うよりも微少な肺転移巣をより早期に切除できると考 えられた.今後は症例を重ねることで,安全性と有用性 をさらに検討していきたい. 本論文について著者全員に申告すべき利益相反状態は ありません. (本論文作成にあたり,ご助言をいただきました大阪母子医 療センター病理診断科の竹内真先生,血液腫瘍科の岡田洋介先 生には感謝申し上げます.) 文 献
1)Perilongo G, Brown J, Shafford E, et al: Hepatoblastoma presenting with lung metastases: Treatment results of the first cooperative, prospective study of the International Society of Paediatric Oncology on childhood liver tumors. Cancer, 89: 1845-1853, 2000.
2)Meyers RL, Katzenstein HM, Krailo M, et al: Surgical resection of pulmonary metastatic lesions in children with hepatoblastoma. J Pediatr Surg, 42: 2050-2056, 2007.
3)北河徳彦:肝芽腫・肝細胞癌に対する ICG 蛍光 法を用いたナビゲーション手術.日小児放線会誌, 35: 84-89, 2019.
4)Hishiki T, Matsunaga T, Sasaki F, et al: Outcome of hepatoblastomas treated using the Japanese Study Group for Pediatric Liver Tumor (JPLT) protocol-2: Report from the JPLT. Pediatr Surg Int, 27: 1-8, 2011. 5)Kaneko M, Tsuchida Y, Mugishima H, et al: Intensified
chemotherapy increases the survival rates in patients with stage 4 neuroblastoma with MYCN amplification. J Pediatr Hematol Oncol, 24: 613-621, 2002.
6)井上雅美,安井昌博,澤田昭久,他:小児難治性 固形腫瘍に対する irinotecan,etoposide,carboplatin 3剤併用療法(IREC)の有用性について.小児が ん,44: 135-142, 2007.
7)Jozef Z, Laurence B, Penelope B, et al: Dose-dense cisplatin-based chemotherapy and surgery for children with high-risk hepatoblastoma (SIOPEL-4): A prospective, single-arm, feasibility study. Lancet Oncol, 14: 834-842, 2013.
8)日本小児血液・がん学会 編:小児がん診療ガイ ドライン 2016 年版.金原出版,東京,2016. 9)Yamamichi T, Oue T, Yonekura T, et al: Clinical
Experience with a system using a short hookwire and suture. AJR Am J, 170: 332-334, 1998.
(2020年 6 月 2 日受付) (2021年 1 月25日採用)
Preoperative and Intraoperative Localization of Metastatic Pulmonary Lesions
of Hepatoblastoma by Computed Tomography-Guided Dye Marking
and Intraoperative ICG Fluorescent Imaging
Taku Yamamichi1, Masanori Nishikawa2, Katsutoshi Makino1, Takatoshi Abe1, Kiyokazu Kim1,
Ai Tayama1, Kazunori Masahata1, Hideki Soh1, and Noriaki Usui1
1 Department of Pediatric Surgery, Osaka Women’s and Children’s Hospital 2 Department of Radiology, Osaka Women’s and Children’s Hospital
With advances in high-resolution computed tomography (CT), small, sub-centimeter pulmonary nodules frequently require resection of the lesion for diagnosis and treatment. Preoperative localization of pulmonary nodules is sometimes necessary when the target nodule is too small or too far from the pleural surface to be detected intraoperatively by inspection or palpitation by surgeons. We marked small lesions with an injecting dye by CT fluoroscopy for the preoperative localization of metastatic pulmonary lesions of hepatoblastoma and combined this procedure with intraoperative indocyanine green (ICG) fluorescent imaging to identify small viable lesions. We herein report three cases of resection of minute pulmonary nodules preoperatively localized by CT-guided dye marking. Case 1: A 4-year-old boy with hepatoblastoma in the right lobe (PRETEXT II) underwent right hepatectomy. After chemotherapy, a pulmonary metastatic nodule was
observed. Pulmonary wedge resection was performed via video-assisted thoracoscopic surgery on the basis of preoperative CT-guided dye marking. Case 2: A 1-year-old male infant with hepatoblastoma (PRETEXT III, V, R, M) was scheduled to undergo liver transplantation. To remove two extrahepatic metastatic lesions before transplantation, pulmonary wedge resection of the right lung was performed on the basis of preoperative CT-guided marking combined with ICG fluorescent imaging. Case 3: A 3-year-old boy with hepatoblastoma (PRETEXT III, E, R, M) in the left lobe underwent left hepatectomy. After postoperative chemotherapy, seven residual nodules in the lungs were resected on the basis of CT-guided marking and ICG fluorescent imaging findings. CT-guided marking, especially combined with ICG fluorescent imaging, is feasible and useful for identifying small metastatic pulmonary lesions of hepatoblastoma.
Key words: hepatoblastoma, metastatic pulmonary nodule, CT fluoroscopy, marking, indocyanine green fluorescent imaging
Correspondence to: Taku Yamamichi, Department of Pediatric Surgery, Osaka Women’s and Children’s Hospital, 840 Murodo-cho, Izumi, Osaka, 594-1101 JAPAN