レーダ画像およびGANを用いたコンクリート内部欠陥の位置・寸法情報の可視化に関する基礎的検討
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(2) 識別だけでなく,位置,寸法,材質情報を含む断面画像を直 接出力する手法を提案している.地中埋設物の識別を対象と. 2. 内部欠陥可視化手法. した既往の手法のうち,園田らが提案している pix2pix を用い. コンクリート内部欠陥情報の識別・可視化は,以下のよう. た手法は,現状の技術では実現できていない,コンクリート. な手順で行う.まず,実験およびシミュレーションにより,. 内部のひび割れ詳細情報の識別・可視化のための手法として. Fig.1(a)に例を示すようにレーダ画像を取得する.さらに,. 応用できる可能性がある.. Fig.1(b)のように,レーダ試験において走査した断面の,内部. 一方,深層学習の実務への応用においては,学習データセ. 欠陥位置,形状,寸法情報を含む供試体断面画像を作成する.. ットの不足が重要な課題の一つである.園田ら は,前述の. ここで,供試体断面画像は,青色が空気層,緑色がコンクリ. 地中埋設物の識別の問題において,有限時間領域差分法. ート層を表したビットマップ画像であり,既知の内部欠陥の. (FDTD 法)を用いたシミュレーションにより有用な学習デ. 位置,寸法情報に基づいて描画する.このレーダ画像と供試. ータセットを大量生成することで上記課題を克服することを. 体断面画像のペアを実験およびシミュレーションにより多数. 試みている.. 生成する.この学習データセットを,GAN の応用技術の一種. (9). 以上のような背景から,本研究は,コンクリート構造物を. である pix2pix に学習させる.ここで,入力側をレーダ画像,. 対象としたレーダによる内部ひび割れの位置,寸法,形状等,. 出力側を供試体断面画像とする.学習済みのネットワークモ. 詳細情報の識別・可視化手法として,園田らが提案している. デルに検証用のレーダ画像を入力して,欠陥情報を含む供試. px2pix を用いた手法の適用を試み,その基礎的段階として,. 体断面画像を出力する.以下では,電磁波レーダ法および. 人工欠陥を有するコンクリート供試体を対象に同手法の適用. GAN の一種である,pix2pix について簡単に説明する.. 性の検証を行ったものである.園田らの研究では,地中媒質. 2.1 電磁波レーダ法. 電磁波レーダ法は,電磁波をコン. の不均質性を作り出す散乱体に比べて埋設物自体が十分に大. クリート表面に向けて放射し,コンクリート中の誘電率が変. きい場合を想定している.一方,本研究は,欠陥に比べて骨. 化する面,例えば,鉄筋や空洞等との境界面で生じる反射波. 材が大きく複雑な反射もある状態で欠陥の推定ができるかを. を再びコンクリート表面で観測するものである.この電磁波. 検証する.こうした条件下でも,レーダ画像から対象断面の. の送信から受信に到るまでの時間から,コンクリート中の対. 復元,画像化ができれば,欠陥の位置・寸法・形状がそのま. 象物までの距離を知ることができる.この送受信アンテナを. ま再現されるため,利用者にとって分かりやすい欠陥識別機. コンクリート表面上で移動させることによりコンクリート中. 械になる.なお,本研究でも,画像から画像への変換に特化. の断面に相当するレーダ画像が得られる.具体的には,Fig.2. した,現在のモデルの中でも変換性能が高いことが知られて いる pix2pix を利用する.さらに,本研究では,FDTD シミュ レーションによる学習データの生成およびその利用の可能性 についても検証する.具体的には,まず,異なる位置および 寸法で埋め込んだ欠陥を有するコンクリート供試体を作成し, この供試体を対象に電磁波レーダ試験を行う.これにより学 習データセットとなる,欠陥情報を含むコンクリート断面画 像および対応するレーダ画像のペアを取得する.この学習デ ータセットを pix2pix に学習させた後,検証用データを用いて 学習したネットワークモデルの欠陥位置・寸法情報の識別・ 可視化精度の検証を行う.さらに,FDTD 法を用いたシミュ. Fig.2 Overview of electromagnetic wave radar のように送信アンテナから電磁波を放射し,受信アンテナが 反射波を計測する.その反射波が返るまでの時間 tから深度 d は式(1)のように表される.. レーションにより電磁波レーダ試験を再現してレーダ画像を 生成するとともに,実験により得られたレーダ画像と比較し て,モデルの妥当性の確認を行う.また,実験と同様にシミ. 𝑑=. 3 × 108 𝑡 2√𝜀𝑟. (1). ュレーションにより得られたレーダ画像から学習データセッ. ここで,d:深度(m),t:跳ね返り時間(s), r :比誘電率であ. トを作成して pix2pix に学習させ,位置・寸法情報の識別精度. る.すなわち,反射時間を誘電率を介して深さに変換できる. を検証するとともにシミュレーションによる生成データ利用. ことから,横軸に移動距離,縦軸に反射時間,反射波の強度. の可能性について考察する.. をその位置の色で表すことによって,上記のように,コンク リート内部の断面に相当するレーダ画像が作成できる. 2.2 敵対的生成ネットワーク GAN および pix2pix. 本研究. では,画像から画像へ変換が可能な代表的な手法の一つであ (a) Radar image. (b) Cross section of specimen. Fig.1 Example of radar image and cross section of specimen. る pix2pix を適用した.pix2pix は GAN の一種であり,ここで は,まず GAN について説明する.Fig.3(a)に GAN のネットワ.
(3) Table.2 Concrete mix table. (a). Unit amount(kg/m3). cc. Slump (cm). W/C (%). s/a (%). W. C. S. G. Ad. 10. 52. 42.1. 168. 324. 734. 1030. 3240. Example of conversion from line drawing to color image(11). (b) Application example of the proposed method Fig.3. Application example of GAN Fig.4 Overview of specimen. Photo.1 State of measurement. ークの概要を示す.このネットワークでは,入力 x から生成 器(Generator)G で,描写像 G(x)を生成し,識別機(Discriminator)D. を実現している(11).なお,本研究では,GitHub の画像から画. で真の画像 y か生成した画像 G(x)かを判定する.生成器 G は. 像への変換が可能な pix2pix-tesorflow (12)リポジトリを利用した.. 識別器 D が生成画 像 G(x)を真と判定するように学習し,一方,. 本研究では,前述のように,実験と FDTD シミュレーショ. 識別器 D は 真偽を正しく判定するように競合させて繰返し学. ンにより,レーダ画像および供試体断面画像のペアを多数用. 習する ことで,より本物に近い画像を生成させる手法である.. 意し,pix2pix に学習させる.すなわち,Fig.3(b)に示すように,. 通常のGANでは,一様分布あるいは正規分布からサンプリン. 入力をレーダ画像とし,欠陥情報を含む供試体断面画像を出. グしたノイズベクトルを生成器 G への入力とするが,pix2pix. 力するネットワークモデルを構築する.. では,画像 x を生成器 G への入力とする.すなわち,入力も. 3. 学習用画像データセット. 画像,出力も画像であり,任意の画像のペアの変換を学習す るネットワークである.具体的に, 生成器 Gは,識別器 Dが. 3.1 実験による学習用データセットの取得. 人工欠陥と. 生成画像 G(x)を真と判定するよ うに学習し,また,真画像. して,形状・寸法を変化させた発砲スチロールを所定の位置. (正解画像)y と生成画像 (推定画像)G(x)との差が最小にな. に埋め込んだ供試体を作製し,同供試体を対象に電磁波レー. るように学習を繰返 す.識別器 D は,通常の GAN と同様に. ダ試験を行いレーダ画像を取得した.なお,電磁波レーダに. 正しく真偽判定 ができるよう学習を繰返す.pix2pix では,例. は,KEYTEC 製の鉄筋探査機(型番:SIR-EZ HR,中心周波. えば Fig.3(a)のような線画からカラー画像への変換,航空写真. 数:2.6GHz,アンテナタイプ:半波長ダイポールアンテナ,. から地図画像への変換など,様々な画像変換に関するタスク. 計測種類:時間領域計測)を用いた. Table.1 に人工欠陥パラメータの一覧,Table.2 にコンクリー. Table.1. List of experimental specimen parameters. トの配合,Fig.4 に供試体概要,Photo.1 に測定の様子を示す. 図に示すように,コンクリート供試体の寸法は. Specimen number. Length b (mm). 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12. 25 50 100 125 150 200 25 50 100 125 150 200. Depth d (mm). Thickness t (mm). 500×500×100mm である.図中の赤色で囲んでいる箇所は欠陥 位置を示しており,青色の点線で囲んでいる領域は電磁波レ ーダの測定範囲(270×270mm)である.人工欠陥は,Fig.4 中 の欠陥の深さ方向の長さ t(以降,欠陥厚さ),欠陥の水平 2 方向の長さ b,h,欠陥の深さ位置 d(以降,欠陥深さ)をそ. 30. れぞれ変化させている.本検討での人工欠陥の寸法 b×h は, 5. 25×125, 50×200, 100×200mm の 3 ケースである.なお,Table.1 中および以降では,レーダ走査方向の欠陥の水平長さを欠陥 長さ b と呼ぶ.人工欠陥の寸法は 3 ケースであるが,測定方. 65. 向を x方向から y方向に変える事で hを bと置き換え,欠陥長 さ b=25, 50, 100, 125, 150, 200mm のレーダ画像を取得した.また, コンクリートは非均質材料であり,レーダ走査線を x 方向お よび y 方向に平行にずらすことで欠陥位置,形状,寸法が同.
(4) じでも電磁波の反射性状が異なるレーダ画像を取得できる.. 軸も同様である.供試体断面画像およびレーダ画像のサイズ. 本研究では,供試体に依るが,供試体中央から 5~10mm 間隔. は,走査距離 270mm あたり 256 ピクセル,深さ距離(画像の. ずつ,走査線を供試体端部に向かってずらして計測し,レー. 縦軸)100mmあたり118ピクセルである.すなわち,1ピクセ. ダ画像を合計 228 枚取得した.. ルあたりのサイズは,走査方向に 1.05mm,深さ方向に. 取得したレーダ画像の一例を Fig.5 に示す.なお,データ点. 0.85mm である.供試体断面画像内の欠陥のサイズも,上記に. は走査方向 1.25mm ピッチ,深度方向 1.5×10-11 s ピッチである.. 概ね合せて作成している.なお,レーダから得られる電圧値. Fig.5 中の供試体断面画像とは,欠陥を含む供試体の断面画像. の波形に対して,マイグレーション処理,サイドロープ低減,. であり,前述のように,緑色がコンクリート層を,青色が欠. アップサンプリング等の信号処理を行っていない.また,カ. 陥部分を表している.なお,供試体断面画像(のちに出てく. ラー画像はグラフ描画用のアプリケーションソフト gnuplot を. る推定画像および正解画像)の横軸および縦軸は mm,レー. 用いて作成している.以下に適用した RGB各成分への変換式. ダ画像の横軸の単位は mm,縦軸は ns である.以降の図中の. を示す.. Cross section of specimen 0. 1. 50 100 150 200 250. 2. 50 100 150 200 250. 3. 50 100 150 200 250. 4. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 6. 50 100 150 200 250. 7. 50 100 150 200 250. 8. 50 100 150 200 250. 0 30 60. 10. 30 60. 0. 0. 11. 50 100 150 200 250. 12. 30 60. Fig.5. d = 65mm のケースでは,d = 30mm のケースと比較して,反射 波の振幅が小さく,また,レーダ画像において欠陥位置より もやや上方で反射波が生じているように見える.反射波の振. 50 100 150 200 250. 幅が欠陥位置が深いほど小さくなる理由は,電磁波の電波距 離が長くなるにしたがって減衰の影響が大きくなるためであ ると考えられる.レーダ画像に見られる反射位置の差異は,. 50 100 150 200 250. 水分などの要因でコンクリート内部の誘電率が想定から若干 ずれたため電波の伝搬速度が変わり深さ方向の換算にずれが 50 100 150 200 250. 生じたためである.. 0. 3.2 シミュレーションによる学習用データセットの取得 レーダ画像を作成するためのシミュレーションは,マクスウ. 50 100 150 200 250. ェル方程式を離散化する手法である FDTD 法を用いた.解析. 0. コードは,既に妥当性が確認されている園田が開発したもの を用いた (10) (13) (14).Fig.6 にシミュレーションモデルおよび供試. 50 100 150 200 250. 0. 体パラメータを示す.空間セルのサイズは 1mm,解析領域は 512×512×128mmであり,時間間隔Δtは1.5×10-11s,ステップ 50 100 150 200 250. 数は4096とし,吸収境界条件は16層の完全吸収境界(PML). 0.5 1.0 1.5. 50 100 150 200 250. 0. (15)とした.アンテナからの電波の送信は,点状電流源(Fig.6 50 100 150 200 250. 50 100 150 200 250. 0. z x 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5. 50 100 150 200 250. 0. Rx. Tx. 0.5 1.0 1.5. 30 60. 0. 明確な反射が生じていることが確認できる.一方,欠陥深さ 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5. 30 60. 9. 0. (4). Fig.5 より,欠陥深さが浅い d = 30mm のケースでは,比較的. 0.5 1.0 1.5. 30 60. 0. 0. B = 2(1 - v) - 0.84. すレーダ画像の色は電圧値の高低を表している.. 0.5 1.0 1.5. 30 60. 0. 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5. 30 60. 0. 0. (3). ここで,vはレーダにより得られた電圧値を 0から 1の範囲. 0.5 1.0 1.5. 30 60. 5. 0. (2). に正規化したものである.すなわち,Fig.1(a) および以降で示. 0.5 1.0 1.5. 30 60. 0. 0. R=3v-1 G = sin (180 v). 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5. 30 60. 0. 0 0.5 1.0 1.5. 30 60. 0. Radar image. 1.0. y. d. 0.5. t 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5. Examples of radar images obtained from experiments. (x,y). 0.0. b -0.5 -1.0. Fig.6 Overview of simu-. Fig.7. lation model. tion model. Example of simula-.
(5) Table.3 Specimen number 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16. List of simulation model parameters Length b (mm) 25 50 100 125 150 200 25 50 100 125 150 200 50 200 50 200. Depth d (mm). Cross section of specimen. Thickness t (mm). 0. 1. 2. 5. 3. 30 60. 4. 30 60. 65. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 50 100 150 200 250. 0. 0. 5. 0.5 1.0 1.5. 6. 0.5 1.0 1.5. 7. 0.5 1.0 1.5. 8. 0.5 1.0 1.5. 9. 0.5 1.0 1.5. 10. 0.5 1.0 1.5. 11. 0.5 1.0 1.5. 65. 0. 0. 動させその都度シミュレーションを行い,点状電流源から x. 0. 方向に 60mm 離れた点(Fig.6 中の Rx)における電界を出力す ることでレーダ画像を作成する.解析モデルの例を Fig.7 に, 解析シリーズを Table.3 に示す.なお,本研究では,コンクリ ートを,粗骨材およびモルタルの 2 相材料としてモデル化し. 0. た.図中の中央付近の緑色の四角形は人工欠陥を示しており, その周りにある橙色の要素はモルタルマトリクスおよび粗骨 材の材料特性を表している.青色は空気層である.粗骨材は,. 0. コンクリート標準示方書の粒度分布曲線を参照して,25~. 0. 30mm のものが 12 個,15~25mmのものが 583 個,5~15mm の ものが 4422 個存在するものと仮定し,この条件下で骨材の粒 径および位置を一様乱数を用いて決定して配置した.また, 骨材の形状は全て立方体状であると仮定した.コンクリート. 0. 12. の比誘電率は,モルタルを 6.0,骨材を 5.0~7.0,欠陥を 1.0 と 仮定した.また,Table.3 に示すように,シミュレーションに おける人工欠陥サイズは,実験と同条件のものに加え,実験. 13. では実施していない欠陥厚さ 1mmのケースも追加した.なお, シミュレーションにおいても実験と同様に走査線位置をずら すことで同一条件内で複数のレーダ画像を取得している.シ. 50 100 150 200 250. 50 100 150 200 250. 像において,欠陥位置における明確な反射のピークが確認で. 15. きる.また,欠陥厚さが 5mm および 1mm のケースを比較す ると,1mm のものでは反射の振幅が小さくなっている様子が 確認できる. 3.3 シミュレーション画像および実験画像との比較に関す Fig.9 には,実験およびシミュレーションにより得. 16. 50 100 150 200 250. 30 60. 50 100 150 200 250. 50 100 150 200 250. 50 100 150 200 250. 50 100 150 200 250. 50 100 150 200 250. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5. 30 60. 0. 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5. 30 60. 0. 0. 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5. ミュレーションでは,合計 331 枚のレーダ画像を取得した. 取得したレーダ画像の一例を Fig.8 に示す.図より,レーダ画. 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5. 30 60. 0. 14. 50 100 150 200 250. 30 60. 0. 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5. 1. 励振することでモデル化した.この点状電流源を少しずつ移. 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5. 中の Tx)から中心周波数 2600 MHz のウェーブレットパルスを. る考察. 0. 0. 30. 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5. 30 60. 0. 0 0.5 1.0 1.5. 30 60. 0. 30. 50 100 150 200 250. Radar image. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5. Fig.8 Example of radar image obtained from simulations.
(6) られたレーダ画像の比較の一例を示す.図より,実験とシミ. 料種の供試体の分布に加え,供試体の乾燥状態を制御してお. ュレーションには乖離が見られる.特徴的な乖離の一つとし. らず,また含水量およびその空間分布等を計測していない.. て,まず供試体表面近傍の反射波が挙げられる.この原因は,. 上述のシミュレーション結果と実験結果の乖離の問題を解決. シミュレーションにおいて市販のアンテナの特性(シールド. するためには,粗骨材,細骨材,セメントペースト等の材料. 等の配置,特性を含む)が未知であり,十分再現できていな. の空間分布に加え,含水量の分布を定量的に計測,制御した. かったことが挙げられる.また,実験結果の方が,骨材等の. 実験を実施,さらに実測に基づいたシミュレーションモデル. 供試体内部の非均質性に起因する欠陥以外からの不要な散乱. の作成が必要である.一方で,園田ら(14)は,非均質性を変化. 波が顕著になっている様子が確認できる.シミュレーション. させた非均質土壌における不要散乱波を含む地中レーダ画像. では,骨材の分布までモデル化したが,レーダ試験時の実測. と均質な媒体から得られた不要散乱波なしの地中レーダ画像. に基づいたものではなく,非均質性のモデルが十分でなかっ. のペアを pix2pix で学習することにより不要散乱波を除去する. たことが考えられる.本研究の実験では前述したように各材. ことに成功している.本手法においても,この手法が適用で きる可能性もあるがこの検証も今後の課題とする. ここで,前述のように FDTD シミュレーションの目的は,. Experiment image. Simulation image. 実験のみでは収集が困難な,有意なデータを大量に生成する ことであり,当初は実験およびシミューレションにより得ら. 0. 1. 0.5 1.0 1.5. 2. 0.5 1.0 1.5. 0. 0. 3. 4. 0.5 1.0 1.5. 5. 0.5 1.0 1.5. 6. 0.5 1.0 1.5. 0. 0. 0. 7. 0.5 1.0 1.5. 8. 0.5 1.0 1.5. 0. 0. 10. 0. 12. 50 100 150 200 250. れた学習データセットは同時に学習および検証に使用するこ. 0. とを想定していた.しかしながら,現時点では,実験で使用 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 0. した電波の波形が一致しておらず,結果として,実験画像と 50 100 150 200 250. 0. 在して使うのと同じであり,pix2pix の学習に混乱をきたす可 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5 50 100 150 200 250. 0. 0. 0. 0. 50 100 150 200 250. 0. 0. 証では,全てのデータセットを𝐾分割し,そのうち𝐾 − 1セ 度検証に用い,これを𝐾回繰り返すというものである.ここ. 50 100 150 200 250. では,𝐾 = 4とした.すなわち,228個のデータを 57個ずつ 4 つに分割し,学習用データ 171 個,検証用データ 57 個とし, これを 4 回繰り返した.ただし,精度の評価に関して,定量. 50 100 150 200 250. 的な評価は今後の課題として,ここでは pix2pix により推定さ れた供試体断面画像(以下,推定画像),あらかじめ分かっ. 50 100 150 200 250. ている供試体断面画像(以下,正解画像)を並べて定性的に, 位置,サイズの識別・可視化精度を評価する.なお,本研究. 0.5 1.0 1.5 50 100 150 200 250. クモデルに,検証用の実験レーダ画像を入力して推定精度を. ットのデータを学習に用い,残り1セットのデータを推定精. 0.5 1.0 1.5 50 100 150 200 250. ここでは,. 検証する.検証は,K 分割交差検証を用いた.K 分割交差検. 0.5 1.0 1.5 50 100 150 200 250. 4. 内部欠陥情報の可視化および検証 実験により取得したデータセットのみを学習したネットワー. 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5 50 100 150 200 250. 証および考察を行う.. 4.1 実験データを用いた学習および可視化. 0.5 1.0 1.5 50 100 150 200 250. 能性がある.よってここでは,実験画像とシミュレーション 画像は別々に取り扱って,内部欠陥の識別・可視化精度の検. 0.5 1.0 1.5 50 100 150 200 250. シミュレーション画像の乖離は大きくなっている.そのため, これらを混在させると,異なるメーカーのレーダの画像を混. 0.5 1.0 1.5 50 100 150 200 250. した,前述の市販レーダのアンテナ,シールド等の詳細情報 を把握できていないため,実験とシミュレーションでは発射. 0.5 1.0 1.5. 0.5 1.0 1.5. 0.5 1.0 1.5. 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5. 0.5 1.0 1.5 0. 11. 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5 0. 0 0.5 1.0 1.5. 0.5 1.0 1.5 0. 9. 50 100 150 200 250. では,2.2 で示した pix2pix のコード(12)を,ネットワークの層 50 100 150 200 250. 0.5 1.0 1.5. Fig.9 Comparison of experimental image and simulation image. 数や学習率等を変更せずそのまま用いている. Fig.10 に,学習済みの pix2pix に入力した推定精度検証 用のレーダ画像,推定された供試体断面画像および正解 画像の代表的な例を示す.図より,欠陥深さ d が小さい.
(7) d=30(mm) Input image. Estimated image. d=65(mm) Correct image. Input image. 1. 7. 2. 8. 3. 9. 4. 10. 5. 11. 6. 12. Estimated image. Correct image. Fig.10 Comparison of the estimated image with the correct image ( case using experimental results ). Scan position from the center (mm). Input image. Estimated image. Correct image. 10. 30. 100. Fig.11 Comparison of estimation results when the scanning position is different ( specimen number 8) 30mm のケースでは,欠陥長さ,深さともによく推定で. 別できなかったためと考えられる.. きていることが分かる.一方,深さが大きい d が 65mm. Fig.11 に d が 65mm のケースのうち,同一条件の供試. のケースでは,正解画像との,位置および寸法のずれが. 体に対して走査位置を変えたレーダ画像を入力し,一部. やや大きくなっていることが分かる.紙面の都合上,こ. に欠陥の誤検出が見られたケースの,入力画像,推定画. こでは掲載を省略するが,Fig.10 以外の推定画像も全体. 像および正解画像を示す.図より,同じ供試体でも骨材. 的に欠陥深さが小さいケースは良く推定できているが,. の配置等の非均質性の影響により推定結果が異なること. Fig.10 中に示すように,欠陥深さが大きくなるほど推定. が確認できる.すなわち,精度の良い推定のためには骨. 精度が低下する傾向が見られた.これは,欠陥の深さが. 材等からの不要散乱波を除去する必要があり,これに対. 大きくなるにつれて欠陥からの反射波の応答が小さくな. しては,さらに非均質性を制御した実験を実施すること,. り,したがってその他の不要な散乱波との差を明確に識. あるいは前述のようにシミュレーションの精度を上げる.
(8) d=30(mm). Input image. 0. 1. 0.5 1.0 1.5. 2. 0.5 1.0 1.5. 3. 0.5 1.0 1.5. 4. 0.5 1.0 1.5. 5. 0.5 1.0 1.5. 6. 0.5 1.0 1.5. 13. 0.5 1.0 1.5. 14. 0.5 1.0 1.5. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 50 100 150 200 250. Estimated Image. 0. 50 100 150 200 250. 30 60. 50 100 150 200 250. 0. 0. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 0. 0. 0. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 0. 0.5 1.0 1.5. 9. 0.5 1.0 1.5. 10. 0.5 1.0 1.5. 11. 0.5 1.0 1.5. 12. 0.5 1.0 1.5. 15. 0.5 1.0 1.5. 16. 0.5 1.0 1.5. 0. 0. 0. 0. 50 100 150 200 250. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 30 60. 0. 0. 50 100 150 200 250. 30 60. 30 60. 8. 50 100 150 200 250. 30 60. 30 60. 50 100 150 200 250. 0. 0.5 1.0 1.5. 50 100 150 200 250. 30 60. 30 60. 50 100 150 200 250. 0. 0. 7. 50 100 150 200 250. 30 60. 30 60. 50 100 150 200 250. 0. Input image. 50 100 150 200 250. 30 60. 30 60. 50 100 150 200 250. 0. 30 60. 30 60. 50 100 150 200 250. Correct image. 30 60. 30 60. 50 100 150 200 250. d=65(mm). 50 100 150 200 250. Estimated Image. 0. 50 100 150 200 250. 30 60. 50 100 150 200 250. 0. 0. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 30 60. 50 100 150 200 250. 0. 50 100 150 200 250. 30 60. 30 60. 50 100 150 200 250. 0. 30 60. 30 60. 50 100 150 200 250. 50 100 150 200 250. 30 60. 30 60. 50 100 150 200 250. 0. 30 60. 30 60. 50 100 150 200 250. 50 100 150 200 250. 30 60. 30 60. 50 100 150 200 250. 0 30 60. 30 60. 50 100 150 200 250. Correct image. 50 100 150 200 250. 30 60. 0. 50 100 150 200 250. 30 60. Fig.12 Comparison of the estimated with the correct image (case using simulation results). ことや,不要散乱波のみ除去するネットワークモデルを. 視化手法の確立に向けた基礎的な検討を行ったものである.. 介在させることなどが考えられる.. 具体的には,まず,人工欠陥の位置・寸法を変化させて埋め. 4.2 シミュレーションデータを用いた学習および可視化. 込んだコンクリート供試体を対象にレーダ試験を行った.同. Fig.12 にシミュレーションデータを用いた場合の,入力. 実験により,異なる欠陥情報を含む断面画像,および対応す. 画像,推定画像および正解画像の代表的な例を示す.図. るレーダ画像からなる学習データセットを多数取得した.そ. より,シミュレーションによるレーダ画像から推定する. の後,取得したデータセットを学習して得られたネットワー. ケースでは,位置,大きさともに推定できることが確認. クモデルのひび割れの識別・可視化精度の検証を行った.さ. できた.特に,欠陥厚さ 1mm と 5mm の結果を比較する. らに,本研究では,FDTD 法によって実験を再現し,シミュ. と,反応値の違いから欠陥の厚さまで識別していること. レーションにより生成した学習データセットの利用の可能性. が分かる.以上のことより,非均質性の再現など,精度. についても検証した.本研究により,次の知見が得られた.. 向上が必要であるが,提案手法は,欠陥の厚さの違いも. (1). 識別・可視化できる可能性がある.. 5. 結論. 実験により得られた学習用データセットを使用したケ ースにおいて,提案手法は,人工欠陥の位置・寸法情 報を概ね識別・可視化できていた.具体的には,欠陥 位置が比較的浅いケースで,欠陥からの反射波と,不. 本研究は,電磁波レーダ法およびGANの応用技術の一種で. 要散乱波との違いが明確になり,欠陥位置,寸法を精. ある pix2pix を利用した,コンクリート構造内部のひび割れ可. 度良く推定していた.一方,欠陥が深いケースでは,.
(9) 欠陥からの反射波と不要散乱波の差が小さくなるため,. (2). (3). (6). T. Yamaguchi, T. Mizutani, M. Tarumi, D. Su, K. Belli, C.M. Rappaport,. 推定精度が低下する傾向が見られた.. H. Zhan and S. Wadia Fascetti, Sensitive Damage Detection of Rein-. FDTD 法を用いて実験を再現した結果,現状では,シミ. forced Concrete Bridge Slab by Time-Variant Deconvolution of SHF-. ュレーションにより得られたレーダ画像と実験により. Band Radar Signal, IEEE Trans. Geosci. Remote Sens., vol.57, no.3,. 得られたレーダ画像との間には乖離が見られた.乖離. pp.1478-1488, 2019.. の理由として,送受信アンテナのモデル化およびコン. (7) 秋山靖浩,服部英春,柿下容弓,定来剛,山下善弘,深. クリートの非均質性のモデル化の精度が十分でないこ. 層学習を用いた路面下空洞識別アルゴリズムの開発,第. とが分かった.よって,実験画像の不足を補うための. 17 回情報科学術フォーラム概要集,vol.3,H-022,pp.133-. シミュレーション画像の混在利用のためには,レーダ. 134,2018.. の発射波形,供試体内の骨材分布,含水率の分布など. (8) 水谷司,山口貴浩,坂口綾佳,垂水稔,地中レーダによ. をより詳細に評価して,精度の高いシミュレーション. る実橋梁データからの全自動・高速以上検知アルゴリズ. 画像を生成する必要がある.. ムの構築と実証,土木学会第73回年次学術講演会概要集,. シミュレーションレーダ画像を学習用データセットに. I-422,pp.843-844,2018.. 用いた場合には,提案手法は,内部欠陥の位置,水平. (9) 園田潤,木本智幸,ディープラーニングによる地中レー. 方向の長さに加え,欠陥の厚さの違いまでを精度良く,. ダの物体識別におけるシミュレーションレーダ画像と転. 識別・可視化できることが分かった.このことは,本. 移学習による実験画像の識別,人工知能学会全国大会論. 手法がひび割れの厚さ情報までを推定できる可能性を. 文集,vol.3Z2-03,2018.. 示しているが,一方で,シミュレーションがコンクリ. (10) 園田潤,木本智幸,敵対的生成ネットワークを用いた地. ートの材料非均質を十分再現できていないために,不. 中レーダ画像からのモデル推定,信学技報,vol.118,. 要散乱波の影響が小さくなり,結果として推定精度が 向上したとも考えられ,さらに詳細に検討を進める必 要がある.. no.249,pp.115-119,2018. (11) P. Isola, J. Y. Zhu, T. Zhou and A. A. Efros, Image-to-Image Translation with Conditional Adversarial Networks, arXiv : 1611.07004v1, 2016. (12) Github-affinelayer/pix2pix-tensorflow,https://github.com/a/fine-. 今後は,コンクリート中の骨材や水分量の分布が及ぼす非 均質性の影響も考慮し,より広範な条件下における学習用デ. layer/pix2pix-tensolflow. (13) 園田潤,昆太一,佐藤源之,阿部幸雄,FDTD 法による. ータを増やすとともに,シミュレーションモデルの精度を向. 地中レーダを用いた鉄筋コンクリート下の空洞検出特性,. 上させる必要がある.同時に,現場データ画像からの欠陥識. 電子情報通信学会論文誌,vol.J100-C,No.8,pp.302-309,. 別精度を向上させるための不要散乱波を除去する等の機能を 持つネットワークモデルの適用も検討していく予定である.. 2017. (14) 園田潤,木本智幸,敵対的生成ネットワークを用いた深 層学習による地中レーダ画像からのクラッタ除去,信学. 参考文献. 技報,2018.. (1) P. Shangguan and I. L. Al-MIDI, Calibration of FDTD Simulation of. (15) J. P. Berenger, APerfectly Matched Layer for the Absorption of Electro-. GPR Signal for Asphalt Pavement Compaction Monitoring, IEEE. magnetic Waves, J.Computational Physics, vol.114, pp.185-200, 1994.. Trans. Geosci. Remote Sens., vol.53, no.3, pp.1538-1548, 2005. (2) S. Zha and I. L. Al-Qadi, Super-Resolution of 3D GPR Signals to Estimate Thin Asphalt Overlay Thickness Using the XCMP Method, IEEE Trans. Geosci. Remote Sens., vol.57, no.2, pp.893-901, 2019. (3) J. Xiao, L. Liu, X. Wei and Y. Zhang, Suppression of Clutters Caused by Periodic Scatterers in GPR Profiles With Multibandpass Filtering for NDT&E Imaging Enhancement, IEEE J. Sel. Topics Appl. Earth Observ. Remote Sens, vol.10, no.10, pp.4273-4279, 2017. (4) K. Belli, C.M. Rappaport, H. Zhan and S. WadiaFascetti, Effectiveness of 2-D and 2.5-D FDTD Ground-Penetrating Radar Modeling for Bridge Deck DeteriorationEvaluatedby3-DFDTD, IEEE Trans. Geosci. Remote Sens., vol.47, no.11, pp.3656-3663, 2009. (5) X. Wei and Y. Zhang, Interference Removal for Autofocusing of GPR Data From RC Bridge Decks, IEEE J. Sel. Topics Appl. Earth Observ. Remote Sens, vol.8, no.3, pp.1145-1151, 2015..
(10)
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