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全体総括 -アンケート結果を踏まえて-

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Academic year: 2021

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Ⅰ.はじめに

今般,学校の休校期間が長引き,オンライン 授業が開催される学校と,準備もままならない 学校との差が懸念されるなか,日本地理教育学 会と日本地理学会地理教育専門委員会共催のオ ンライン交流会が 5 月 16 日に開催された。地理 学や地理教育の研究会中止が続くなか,29 都道 府県から 145 名の参加者を集めるオンライン交 流会が 5 月 16 日という早い段階で開催された ことは,日本地理教育学会のみならず教科教育 学・地理学関係学会全体から見ても画期的な企 画であった。全体総括である本稿は,オンライ ン交流会の参加者アンケートを分析すること で,交流会の成果や問題点,今後の方向性など を整理するとともに,今後の地理・社会科授業 実践や教材開発などについて若干の展望を試み たい。

Ⅱ.アンケート結果

オンライン交流会の終了後,参加者全員に ネットによる事後アンケート調査 (自由記述・ 3 問) を依頼した。その結果,145 名の参加者 のうち,96 名から回答を得た。事後アンケート 調査の結果を踏まえ,①オンライン交流会の成 果,②オンライン交流会の問題点・課題,③地 新地理

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2020

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全体総括

−アンケート結果を踏まえて−

三橋浩志

*1

,志村 喬

*2 *1 文部科学省  *2 上越教育大 第1図 オンライン交流会に参加した感想 資料:事後アンケート調査 (n = 96) より作成 注:「ユーザーローカル テキストマイニングツール」を用いた分析。文字の大きさは,単語の出現頻度に応じて描かれる。

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理教育界への要望,を整理する。 1.オンライン交流会の成果 「オンライン交流会に参加した感想 (自由記 述)」をテキストマイニング分析した結果,「オ ンライン」「Zoom」「取り組み」等の単語が多 頻度で自由記述内に出現していた。休校が続く なか,オンライン授業への高い関心と,オンラ イン交流会に参加して情報共有できたことを意 義に感じる参加者の感想を読み取ることができ る (第 1 図)。 具体的には, ・ オンラインでの様々な実践を知ることがで き,参考になりました(中高教員)。 ・ オンライン授業の具体的な方法がイメージで きました(高校教員)。 等の声が多数聞かれた。一般的なオンライン授 業の紹介ではなく,地理,社会科のオンライン 授業の実践報告であったため,具体的な授業イ メージにつながっていた。また, ・ 都道府県,校種等によって取組にかなりの差 がある事がわかりました(高校教員)。 ・ 全国の先生方 (しかも普段交流することのな い先生もいました) と交流することができて 貴重な時間でした(高校教員)。 ・ 小中高大,年齢層,都道府県様々な先生方と 交流ができ,とてもエキサイティングでし た。現状を伝え合うことで,お互いに安心感 も得ることができました(中高教員)。 ・ 地方の者にとっては交流会参加のハードルが 下がり,本当にありがたかったです(高校教 員)。 など,多数の地理教育関係者との意見交換が, 地理的な距離を超えて実施できたことを高く評 価していた。そして,「普段の学会でも,この ような参加形態を認めてほしい」との声も多数 聞かれた。 一方,ブレイクアウトセッションというオン ライン上でのグループワークを体験したこと で, ・ 授業という概念が大きく変わろうとしている 中で,どのようなアプローチができるのか, 可能性を探るとともに,学びとはなにかを考 えさせられる貴重な時間にもなりました(高 校教員)。 ・ コロナ禍という事象を地理的な見方・考え方 で捉えることができる生徒を育てていくこと こそ,地理教師に求められる使命だと感じて います(高校教員)。 ・ 資料が手元で鮮明に見ることができ,大教室 で開催される通常のシンポジウムよりも分か りやすかった(中高教員)。 等の,新しい地理教育のあり方を考える契機と もなっていた。 2.オンライン交流会の問題点・課題 アンケートから,オンライン交流会は高い評 価を得ていることが確認されたが,以下のよう な問題点や課題も指摘された。 ・ ブレイクアウトセッションでは,会議に慣れ ていないため,進行役がいない中,話すタイ ミングなどに少し戸惑いを感じた(中高教 員)。 ・ グループワークでは,メンバーの所属,オン ライン授業の取り組み状況・環境があまりに 異なっていたため,有意義な議論や意見交換 にならなかった(中高教員)。 ・ 事前に関心別,学校別にアンケートを取って からのグループ分けすると議論が深まると思 う(高校教員)。 ・ 時間管理が難しかった。「残り何分です」な どをもう少し喚起しても良かった(高校教 員)。 ・ ICT を使って,各セッションの結果を全体で 情報共有する工夫があると良かった(大学教 員)。 対面のワークショップと異なり,ネット内で は事務局による助言等ができなかったため,議 論が停滞したり,逆に議論が拡散したりといっ た点が若干提起されていた。

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します(高校教員)。 ・ 普段の学会のシンポジウムでも,ブレイクア ウトセッションのような対面式の小グループ による意見交換会があってもよいように思い ました(高校教員)。 ・ どのような授業や教材が「with コロナ,post コロナ」に有効なのか,必要なのか。日本全 国の地理教育関係者で知恵を絞ってアイディ アを出し合い,共有化する必要がある(高校 教員)。 ・ with コロナ期で磨かれた ICT 技術が広く広ま り,post コロナ期で確立されるようなアク ションを期待します(高校教員)。 3.地理教育界への要望 「今後取り組むべき課題や要望」を共起キー ワード分析した結果,地理教育に関するオンラ イン授業の取組を深める方向性と,教員間の連 携や交流を深める方向性などに整理された。一 方,フィールドワークを取り巻く懸念も指摘さ れた (第 2 図)。 具体的には以下のような声が聞かれた。 ・ 教員同士で情報共有できる場があり続ければ と良いと感じました(中高教員)。 ・ 地理教育必修化に向けて,教員向けの研修会 を全国レベルと,各地域レベルでやる必要が あると思います。オンラインでの開会も希望 第2図 今後取組むべき課題や要望など 資料:第 1 図と同じ (n = 96) 注 1 :第 1 図と同じツールで,文章中に似通ったケースで出現する単語のつながり (共起キーワード) を分析。    円の大きさは単語の出現頻度,線の太さは共起の程度に応じて描かれる。 注 2 :いくつかのグループにまとめ,各グループの意味を考察し付記した。

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これまで,メール文字上でしか交流のなかった 全国の地理教師が Web 画面上ではあるが初め て対面し,話し合うことができた体験は,地理 教師が相互理解し結束を深める面でも大変意義 があった。 このような意義は,今後の学会活動に関する 要望・提案といった第 2 の内容類型につなが る。オンライン開催のため地方からも参加でき た,今後もこのような地理空間的な障壁を乗り 越えるような学会活動を望みたい,といった回 答は,学会として積極的に検討する必要があ る。さらに,学会活動や各種研修への参加が難 しい産休・育休中の教員も複数参加しており, 学会活動へのアクセスを高める重要性が再認識 された。 そして,第 3 の回答類型は,地理・社会科授 業実践に関するものである。この内容は,数が 多いとともに多岐にわたるが,この多様性こそ が,参加者が置かれた学校現場の状況に応じて 参考になったといえよう。オンライン授業では 「個別指導がしやすい」との報告があったが,

Ⅲ.オンライン交流会の意義 ・ 課題と展望

1.交流会の意義・課題 上記のようなアンケート回答は,参加者が 個々に置かれた状況をもとにしたものである が,いくつかに整理できる。 第 1 は,情報交換ができて有意義であったと いう内容である。そもそも本企画は,各学校現 場の情報共有を図り「学びを止めない」「学び を深める」取組について共に考えることを目的 としていた。この目的は,回答内容からして十 分に達せられていることが分かり,この面での 本交流会の意義は極めて大きかったと言える。 さらに,開催趣旨では,交流会を通して地理 教師の全国的結束が図られ,地理教育の普及・ 向上につながることが期待されていた。結果, 北海道から鹿児島県にいたる全国 29 都道府県 から参加者が集まった (第 3 図)。これは,国際 地理オリンピック日本委員会・実行委員会の組 織はじめ地理教育界が培ってきた様々なネット ワークが,緊急時に活かされた結果といえる。 第3図 都道府県別の参加者数 (n = 145) 資料:申し込み登録リストより作成

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教育実践の場で一般化した現状下,イギリスの 地理授業づくりがどのように変容したかを臨床 的に調査したミッチェル (Mitchell, 2020) は, その影響の「光と影」を生々しくし描いてい る。同書は,地理教材開発のための素材だけで はなく,パッケージ化された教材,さらには指 導案・評価問題集までがオンラインで授業直前 に簡単に入手できるようになっているのが現在 の学校教育現場であると先ず確認する。そし て,この現況下,教科教育に関する確固たる信 念(実践哲学的理念)と専門的力量を擁した教 師は,それら諸情報を批判的に取捨選択し再解 釈・教材化することで,子供・学校に適した創 造的授業実践を行うという。しかし,教科教育 固有の考え方や知識が表層的な教員の場合,教 材・指導案をそのまま適用する授業実践とな り,ICT 等の活用技術は優れているものの(ブ ルックス,2016, p.26),教科教育の観点からみ ると学校教育が担うべき真の意味での生徒の学 力形成の面及び教師の力量形成面の双方で問題 があると指摘するのである。 日本でも,休業による学校での授業時間減に 対して,学校の授業を重点化し,家庭など学校 外での活動と組み合わせて実施することが示さ れた1)。では,「学校の授業で重点化する学び」 と「学校の授業以外の場において行う活動」 は,どのように峻別されるべきか。この問題の 本質は,ミッチェルの指摘する「光と影」に通 じている。そして,この解決に向けた示唆は, 本報告会の報告・討議のなかに様々な形で存在 していた。 with コロナ,post コロナ時代の学校教育で は,子供たちと教員がリアルに対話して協働す る学校での学びと,オンラインなど学校外でも 可能な学びの位置付けを勘案して,人間相互が 学習への動機付けや思考の協働を引き出し,相 互の考えを深め・広げる等の主体的な教育活動 が求められる。地理教育には,そのような期 待・要望に応えられる要素が多い。post コロナ 時代の教科教育実践を先導する地理教育実践の 本交流会でもオンラインの良さが窺われたとい える。 なお,地理教育の独自性を示すフィールド ワークについては,どのようにすべきかとの問 題提起があった。Web 時代におけるフィールド ワークの在り方は,初等中等教育のみならず, 大学の地理学・教員養成でも課題となってお り,地理教育界全体が連携しながら今後取り組 むべき重要な課題である。 2.展望―結びにかえて― 5 月 25 日の「新型コロナウイルス感染症緊急 事態宣言」全国解除以降,感染が少ない地域か ら学校が順次再開された。感染者が増えている 東京でも,6 月 29 日から通常授業に戻った。し かし,授業の遅れのみならず,学級づくり,学 校行事・部活動はじめ様々な課題が改めて顕在 化し,それらへの対応・解決は年度をまたぐ様 相も呈している。これら諸課題をオンラインと いう教育活動を通してみると,学校という場・ 授業という教授活動自体の本質が問われている ようにみえる。 緊急避難的にやむを得ず条件が整った学校で 実践されたオンラインによる地理・社会科授業 の実態・成果・課題を踏まえると,with コロナ 期間の学校教育実践は,学校・教室に子供たち と教員が集まり,リアルに対話する場 (共有す る空間と時間) の意義を再認識させた。同時 に,オンラインで実践された教授学習活動に は,これまでの地理・社会科授業方法の意義の 再確認とともに,オンラインを活用した新たな 授業の可能性が強く示唆された。将来的意義か らして,post コロナ時代になろうとも,地理・ 学校教育実践でのオンライン活用の流れは止ま ることはないだろう。 すなわち,リアルな学校・教室での地理・社 会科授業と,オンライン活用の授業の双方をど のように関連づけ,組み合わせて授業をつくり 実践するかが大きな課題になる。実際,この課 題は日本に限るものではない。Web 活用が学校

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注 1 )『学校の授業における学習活動の重点化に係 る留意事項等について』文部科学省初等中等教 育局教育課程課長・教科書課長通知(令和 2 年 6 月 5 日) 文献 ブルックス,クレア (2016):「今現在」のイギリ ス に お い て 地 理 を 教 え る. 新 地 理,64 (1), pp.22−28.

Mitchell, D. (2020) : Hyper-Socialised; How Teachers

Enact the Geography Curriculum in Late Capital-ism. Routledge, 196p. 協働的開発の端緒として,本交流会は歴史的に 位置づけられるであろう。( 6 月 29 日記) 謝辞  参加者の集計及びアンケートの集計・分析に際 して,筑波大学大学院博士後期課程院生のヤン・ ジャヨン (梁自 ,JaYeon Yang) さんと金久保響 子さんに支援いただいた。感謝いたします。

参照

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