143
第26回全国大会報告
(開催日時:2019年9月15日~16日,会場:小樽商科大学) アジア経営学会第26回全国大会は2019年9月15日,16日の両日,小樽商科大学におい て小樽商科大学地域研究会との共催で開催された。実行委員長は本稿を執筆した穴沢眞 (小樽商科大学),大会事務局長は林松国氏(小樽商科大学)が務め,さらに学会員であ る王力勇氏(小樽商科大学)も全国大会の運営に携わった。また,プログラム委員会委 員長である風間信隆氏(明治大学)をはじめとするプログラム委員会に統一論題のテー マ設定と運営を担って頂いた。 本大会には全国から95名の会員が参加し,ゲストスピーカーの参加もあった。また, 全国大会の前日,9月14日には理事会が,大会期間中の15日には評議会,会員総会が開 催された。最終日の9月16日には総会決定を受けて理事会が開催された。 9月15日には自由論題の報告が行われ,合計28本の報告が6か所の会場に分かれ進め られた。これらの報告のうち10本が大学院生によるものであった。各会場においては司 会者,討論者,参加者の協力もあり活発な議論が繰り広げられた。 自由論題終了後には家具の町旭川を代表する企業であり,中国や欧米にも進出を果た したカンディハウスの渡辺直行会長による記念講演が「旭川家具の戦略~デザインと国 際化~」というテーマで行われた。 9月16日には統一論題のテーマ「アジアにおける第4次産業革命と企業の課題と展望」 に沿って議論が進められた。まず,藤澤武史氏(関西学院大学)の司会のもと風間信隆 プログラム委員会委員長からの趣旨説明と第1報告が行われた。その後,吉野文雄氏(拓 殖大学)の司会のもと第2,第3報告が行われた。各報告のタイトルと報告者は下記の とおりである。 第1報告 「第4次産業革命と中国自動車産業」 李澤建氏(大阪産業大学) 第2報告 「インド製造業と企業競争力」 上野正樹氏(南山大学) 第3報告 「タイの物流システムと第4次産業革命」 石川雅啓氏(JETRO) 李氏は中国の第4次産業革命の主要政策である中国製造2025に言及し,さらに代表的 な産業である自動車産業を取り上げて議論を進めた。中国製造業のこれまでの成長を要 素投入依存型成長と位置づけ,このようなキャッチアップ型の成長の限界を示し,さら に,今後の成長の方向性として中国製造2025のもとでは全要素生産性の向上に転換すべ第26回全国大会報告 144 きとした。また,自動車産業では,これまでの外資系企業からのスピルオーバーに依存 した成長から中国企業,特に民族系企業の成長を重視すべきとし,かれらのイノベーショ ンが成長のカギとなるとの認識を示した。深刻化する環境問題を意識しつつ,さらに, マーケティング的な観点といえる中国テーストや政府による規制緩和が中国自動車産業 の新たな成長にとって重要であることにも触れている。 上野氏はインドの製造業における企業競争力を分析し,これらをもとに第4次産業革 命について考察を加えた。まず,インドの製造業の現状に言及し,GDPに占めるシェ アが17%ほどであり,成長率は高くなく,低生産性という特徴を持ち,第4次産業革命 以前の段階にあるとしている。また,耐久消費財15品目を取り上げ,そのうち9品目に おいて外資系企業が優位にあるとしている。その後,ケーススタディとして,マルチス ズキとダイキンを取り上げる。マルチスズキは市場シェア50%を超えるが,その要因を 商品開発力の高さに求めている。また,ダイキンの現地工場におけるIoT化について考 察し,日本のマザー工場からモジュール化された生産ラインが導入されていることを明 らかにした。 石川氏はタイを取り上げ,まずタイランド4.0(20年間長期国家戦略2017~2036)に 言及した。いわゆる中所得国の罠に陥っているタイは今後の成長の方向性としてデジタ ル化と新世代産業の育成を標榜する。換言すればイノベーション主導型の成長路線の追 求である。政府は第4次産業革命と関連付け,イノベーション,生産性向上,サービス 貿易に重点を置き,次世代自動車やスマート・エレクトロニクスなど10産業が重点産業 となった。さらに物流にも触れ,通関業務の改革や東部経済回廊(EEC)開発構想を 取り上げ,そこでのデジタル・パークや電子商取引や物流の効率化についても言及した。 午後は小阪隆秀氏(日本大学)の司会でパネルディスカッションが行われた。3名の 報告者のほかに討論者として田中宏氏(立命館大学),穴沢が登壇し,まず,討論者が 午前の報告に対して意見を述べた。その後,統一論題のテーマに即してアジアにおける 第4次産業革命についてフロアーからの質問を交えながら活発な議論が進められた。 今回の全国大会では,まず,自由論題でアジア経営に関連する多岐にわたるテーマが 議論され,また,統一論題においては第4次産業革命のアジアでの多様な受け止め方と 進展を議論することができた。改めてアジアの多様性を認識するとともに,普遍性と特 殊性という問題意識を喚起するものであったといえる。 最後に全国大会開催にご協力頂いたプログラム委員会の皆様,自由論題の報告者並び に司会,討論者を務めて頂いた会員の皆様,統一論題の報告者,討論者,司会者の皆様, そしてすべての参加者の皆様に心よりお礼を申し上げたい。 アジア経営学会第26回全国大会実行委員長 穴沢 眞