研 究 資 料
コケ植物における仮根からの水分吸収を確認する生徒実験の開発
吉田 英史
1)・米澤 義彦
2)1)姫路科学館・2)鳴門教育大学
Yoshida, E. and Yonezawa, Y. (2020) Development of a laboratory work for confirming that water is absorbed through rhizoids of Bryophyte. Jpn. J. Biol. Educ. 62(1): 29–34.
Laboratory work for confirming whether rhizoids of bryophytes to can absorb water or not was developed using a riboflavin (vitaminB2) solution and UV light (352 nm) for science classes in lower secondary schools. After newly elongated rhizoids of bryophytes, Pogonatum inflexum, Plagiomnium acutum, Marchantia polymorpha and Conocephalum conicum, were immersed in a 0.05% riboflavin solution for several hours, both the top of stem of Pogonatum and Plagiomnium and the top of thallus of Marchantia and Conocephalum became fluorescent under UV-light. These results indicate that riboflavin solution was absorbed through their rhizoids, and reached the top of the plant body. In current science textbooks in lower secondary schools in Japan, only the function of rhizoids of bryophyte, “Adhesion to substrates”, is described, while learners can confirm by themselves another function of rhizoids, “Absorption of water”, through the simple laboratory work described in this paper.
Key words: absorption of water, bryophyte, laboratory work, rhizoid, riboflavin
Author for correspondence: Eishi YOSHIDA, Himeji City Science Museum, 1470-15 Aoyama, Himeji City, 671-2222 Hyogo, Japan
Ⅰ はじめに
平成 29 年 7 月に告示された『中学校学習指導要領(平 成 29 年告示)』(以下,新学習指導要領という.)にお いて,理科第 2 分野の「生物の体の共通点と相違点」の 単元で,植物に関してはおもに「花のつくりを中心に扱 う」ことになっているが,「種子をつくらない植物が胞 子をつくることにも触れること」にもなっている(文部 科学省 2018).この扱いは現行の学習指導要領と同様で あるので,新学習指導要領に準拠した教科書においても, 現行の教科書と同じような記述がなされるものと考えら れる. すなわち,種子をつくらない植物としてシダ植物とコ ケ植物を取り上げ,両者ともに「胞子をつくる」ことは 共通しているが,「シダ植物には根・茎・葉の区別があ り維管束が発達しているが,コケ植物では根・茎・葉の 区別がなく,維管束がない.コケ植物には,根に似た仮 根があるが,そのはたらきはおもに基物に付着するだけ で,水分は体の表面全体で吸収している」という相違が あることが記述されると予想される. このコケ植物の「おもに基物に付着する」という仮根 のはたらきについては,調べた 5 社の教科書(平成 28 年度用)すべてにおいて記述(表 1)され,水や水に溶 けた養分の吸収に関しては否定的に捉えられている.し かし,「コケ植物では,根の代わりに仮根が存在する」 のであれば,「コケ植物の仮根が維管束植物の根と同様 に水分吸収を担っているのではないか?」という疑問が 生ずる.この疑問に対して,米澤(2015, 2017)は一部 の専門書では仮根が水分の吸収を行っているとの記述が あり,また仮根からの水分吸収が行われていることを示 す先行研究があることを指摘した. また,中学生が「仮根からの水分吸収」を確認するた めの観察実験についての先行研究は,わずかに畦(1998) の授業実践の報告があるのみである.彼は,乾燥したセ [連絡先]〒 671-2222 姫路市青山 1470-15 姫路科学館 吉田 英史 E-mail: [email protected] 出版社(発行年) 仮根のはたらきに関する記述 大日本図書 (2015)体を地面に固定するはたらきをしている 東京書籍 (2015)からだを土や岩に固定させるように変形したからだの一部 教育出版 (2015)おもに体を地面に固定するはたらきをしている 学校図書 (2015)地面に付着するためのつくり,水分を吸収するはたらきはほとんどない 啓林館 (2015)おもに体を地面などに固定する役目をしている 表1 中学校理科の教科書における「仮根のはたらき」につい ての記述 ※米澤(2015)を改変ン類のネジクチゴケ Barbula unguiculata Hedw. の植物 体全体を水に浸した場合は「葉のようなものが開いた」 が,仮根だけを浸した場合には「葉のようなものは開か なかった」ことを生徒が記述し,「仮根は水分を吸収し ない」ことを生徒が確認したことを報告している.しか し,この観察実験では乾燥したネジクチゴケを使用して おり,仮根の細胞が「枯死」していた可能性は否定でき ない.したがって,「生きている」仮根が水分吸収を行 わないで,基物に付着するはたらきしかもっていないか どうかについては,曖昧なまま残っている. 新学習指導要領における教科「理科」の目標には,(1) 自然の事物・現象についての理解を深め,科学的に探究 するために必要な観察,実験などに関する基本的な技能 を身に付けるようにする,(2)観察,実験などを行い, 科学的に探究する力を養う,(3)自然の事物・現象に 進んで関わり,科学的に探究しようとする態度を養う, の 3 つが掲げられている.したがって,理科の授業で はできる限り生徒の観察・実験を取り入れた主体的な授 業を展開していくことが求められていると考えられる. そこで,「コケ植物の仮根のはたらきを確認する」こ とを課題として生徒実験を構成することができれば,「科 学的に曖昧な事項」について生徒自身が確認する観察実 験を行うことによって,新学習指導要領で求められてい る「理科」の目標に一歩近づくことができると考えられ る. 米澤(2017)の報告によれば,仮根から水分吸収が 行われることを示した実験は,Trachtenberg と Zamski (1979)のスギゴケを使った実験や,Clee(1943)のジャ ゴケを使った実験などが例示されているが,中学校で行 う「仮根からの水分吸収」を確認する観察実験では,中 学校の理科室に備え付けられている機器や薬品を使用す ることが前提となる.また,理科室に常備されていない 機器や薬品であっても,例えば理振法で定められている 機器やいわゆる教材屋から容易に入手できる薬品を使用 して観察実験が可能であれば,普遍的な観察実験として 授業の中に取り入れることができると考えられる. 佐々木ら(2011)は,植物の生葉に UV ライトを照 射することによって,生葉中のビタミン B2 が定量でき ることを報告しており,また,筆者のうちの一人(吉田) が所属する姫路科学館では,小学校低学年を対象に「UV ライトで遊ぼう」という講座を行っている.これは,ビ タミン B2 などのフラビン化合物を含む液体などに UV ライト(ブラックライト)を照射すると蛍光を発する現 象を使用して,市販の飲料水やキャンディなどのなかか らビタミン B2 を含むものを見つけるという「遊び」を 伴った科学体験教室である.このフラビン化合物の存在 を,フラビン化合物が紫外線を吸収して可視域の蛍光を 発するという性質を利用して確認する観察実験は,イン タ ー ネ ッ ト 上 に 多 数 紹 介 さ れ て い る(https://www. mirai-kougaku.jp/laboratory/pages/160906.php 国立大 学 56 工学系学部ホームページ). ま た, 北 川(2017) は, ヒ ョ ウ タ ン ゴ ケ Funaria hygrometrica Hedw.に蛍光物質を溶かした溶液を与え て,一定時間後に蛍光顕微鏡で観察し,溶液がどこを, どのような速度で移動するかということを調べた実験が 行われていることを紹介している.この実験は出典が明 記されておらず,その詳細は不明であるが,茎の上部の 中心束に蛍光物質が見いだされたことを記述している. このような姫路科学館での活動や北川の報告を参考に して,野外から採集したコケ植物を室内で培養すること によって新しい仮根を伸長させ,この仮根をリボフラビ ン水溶液に浸して一定時間後に UV ライトを照射したと ころ,コケ植物の葉が蛍光を発することが確認された. この実験は,コケ植物を栽培する容器と UV ライト以外 には特別な機器を必要としないので,仮根のはたらきを 確認する実験として,中学校でも実施可能であると判断 されたので報告する.
Ⅱ 材料と方法
1.材料 実験に用いたコケ植物は,次の 4 種である.学名は, 岩月(2001)に従った.なお,それぞれの採集地は括 弧内に示した. (セン類) ス ギ ゴ ケ 科 コ ス ギ ゴ ケ Pogonatum inflexum (Lindb.) Sande Lac.(兵庫県姫路市)チョウチンゴケ科 コツボゴケ Plagiomnium acutum (Lindl.) Kop.(兵庫県姫路市) (タイ類) ゼニゴケ科 ゼニゴケ Marchantia polymorpha L.(徳 島県徳島市) ジャゴケ科 ジャゴケ Conocephalum conicum (L.) Lindb.(兵庫県姫路市) これらは,いずれも植物体に付着しているゴミなどを よく取り除いた後,直径 90 mm のろ紙を敷いたプラス チック製のペトリ皿で 2 週間以上培養し,仮根が 5 mm 以上伸長した植物体を実験に用いた. また,リボフラビン水溶液は,キシダ化学製のリボフ ラビン(特級)を用いて調製した.濃度は予備実験の結 果から 0.05%とした. 2.方法 内側の一辺が 5 cm の立方形のアクリルケース内に 0.05%リボフラビン水溶液を満たし,セン類の場合は中 央に直径 3 mm の円形の穴をあけたものに,タイ類の 場合は中央に 3 × 10 mm の穴を開けたものに,それぞ れ UV カットフィルム(ヤック株式会社,FB-11)を貼 り付けたものをフタとして置いた(図 1).穴には植物 体の仮根だけを差し込み,それ以外はフタの上部に出る ようにして,確実に仮根がリボフラビン水溶液に浸るよ うにした.植物体に UV ライト(TOSHIBA FL10BLB 10ワット,ピーク波長 352 nm)を照射し,処理開始か ら 10 分間隔で Canon50D(UV フィルター装着)を用 いて暗室で写真撮影を行った.
暗室内の室温と湿度はそれぞれの実験で異なるため, 実験条件は結果と合わせて表記した.
Ⅲ 結果
1.コスギゴケ 実験条件:室温 19.5°C,湿度 45% (図2) 実験に用いたコスギゴケは葉の縁に微細な毛があるこ とが確認できた(図 2B).実験開始直後はリボフラビン による蛍光反応は見られなかったが,24 時間後には茎 葉体が乾燥することなく,植物体上部まで蛍光反応が見 られた. 2.コツボゴケ 実験条件:17.3°C,湿度 52%(図 3,4) コツボゴケでは,実験開始から 1 時間後に茎葉体の 基部に蛍光が確認でき(図 3D),2 時間後にはさらに上 部まで蛍光が広がっていた(図 3E).このとき,リボフ ラビン水溶液に浸した仮根近くの葉は水分を多く含んだ 状態であったが,茎葉体先端部は乾燥のため縮れ始めて いた.3 時間後には約 3 cm の茎葉体の半分近くまで蛍 光が上ってきていることが確認できた(図 3F). また,24 時間リボフラビンを取り込ませた後の茎葉 体下部の葉を室内照明および UV ライトを照射して,マ クロレンズを装着した iPhone を用いてルーペを通して 観察したところ,細胞層が薄い葉の縁あたりに結晶化し 固体となった淡い黄色を呈したリボフラビンが多く見ら れた(図 4A).UV ライトのみで観察した場合では,完 図1 仮根のはたらきを調べるために用いた実験装置.a:セ ン類用のフタ(中央に直径 3 mm の穴が開いている).b:タイ 類用のフタ(中央に 3 × 10 mm の穴が開いている).c:内側 が 50 × 50 × 50 mm の水槽(容器内にリボフラビン水溶液を 満たす).手前はスケール.全て 3 mm 厚のアクリル製. 図2 実験に用いたコスギゴケとその変化.A:実験に用いた コスギゴケ.B:葉の表面における微細な毛.スケールは 0.1 mmを示す.C:実験開始直後(リボフラビン水溶液が取り込 まれておらず,蛍光を発していない.)D:24 時間後(リボフ ラビン水溶液が茎葉体の先端まで取り込まれ,蛍光を発してい る.) 図3 実験に用いたコツボゴケの時系列における変化.A:実 験に用いたコツボゴケ.B:実験開始前.C:実験開始直後(右 の蛍光は植物体と実験装置のフタの穴からもれた蛍光で,以下 同じ).D:1 時間後(茎葉体の基部から蛍光が見られる.)E: 2時間後(さらに上部まで蛍光が広がり,茎葉体の基部の蛍光 も強まる.)F:3 時間後(茎葉体中央部付近まで蛍光が見られる.) 図4 実験に用い,リボフラビンを取り込ませた後のコツボゴ ケの葉(マクロレンズを装着した iPhone を使って,ルーペを 通して撮影.)スケールはいずれも 0.5 mm を示す.A:室内照 明および UV ライトを照射した葉の正面.(右上の葉の先端等 に結晶化したリボフラビンが見られ,淡い黄色を呈している.) B:UV ライトのみを照射した葉の正面.(細胞層が薄い葉の縁 などが蛍光を発しているようすがわかる.)C:室内照明および UVライトを照射した葉の先端部分.(リボフラビンが結晶化し, 点在しているようすが見られる.)D:UV ライトのみを照射し た葉の先端部分.(リボフラビンの蛍光を発しているようすが 見られる.)全な暗室で撮影した場合よりも弱いが,蛍光が確認でき た(図 4B).葉の先端側から葉縁を観察すると,結晶化 したリボフラビンが明確に確認できた(図 4C,D).また, 本種ではコスギゴケのように茎葉体に微細な毛は確認で きなかった. 3.ゼニゴケ 実験条件:室温 24.8°C,湿度 69%(図 5) 実験の前後で乾燥による葉状体の大きな変化は見られ ず,実験開始 1 時間後では目立った変化は確認できな かった(図 5D)が,4 時間後に葉状体の先端部に蛍光 が確認でき(図 5E),12 時間後には葉状体先端部まで 蛍光を強く発していることが確認できた(図 5C-F).し かし,葉状体の中央部付近は蛍光が確認できなかった. 4.ジャゴケ 実験条件:室温 23.3°C,湿度 61%(図 6) 実験の前後で乾燥による葉状体の大きな変化は見られ ず,実験開始 1 時間後には葉状体側面に蛍光が見られ, 2時間後には葉状体の側面の蛍光が強くなり,先端部に かけて確認できた(図 6E).12 時間後は腹鱗片の基部 側まで強く蛍光が確認でき,先端部分は淡い蛍光が確認 できた(図 6F).一方で,葉状体中央部付近には蛍光が 確認できなかった.
Ⅳ 考察
実験に用いたセン類 2 種(コスギゴケ,コツボゴケ) およびタイ類 2 種(ゼニゴケ,ジャゴケ)において,植 物体内に吸収されるまでの時間に差があるものの,いず れも仮根からリボフラビンが植物体に吸収されているこ とが確認された. コスギゴケのように植物体の表面に仮根や毛葉と呼ば れる微細な毛を有するものでは,その間を伝うように毛 管現象が生じて水分が上昇し,茎や葉から吸収されるこ とが知られている(北川 2017).しかし,植物体の表面 に毛葉などをもたないコツボゴケにおいても植物体内に リボフラビンの吸収を確認できたため,コツボゴケでは リボフラビンは仮根から吸収されたものであると考えら れる. 維管束植物では,山田ら(2014)がすでに指摘して いるように,傷ついていない(切断されていない)根の 細胞は色素のような大きな分子を透過しないので,コケ 植物の仮根もリボフラビンの分子(モル質量:376.36 g/mol)を透過させないと考えられるが,仮根が傷つい ていた(切断されていた)場合には,リボフラビン水溶 液が仮根の傷ついた部分から植物体内に吸収されたと推 察される. また,コスギゴケの場合,茎の表面の仮根や毛葉を通 じてリボフラビン水溶液が上昇したとしても,茎や葉が 明らかに傷ついていることは確認されていないので,茎 や葉の表面からリボフラビンが植物体内に吸収されたと は考えにくく,少なくともリボフラビンは仮根から吸収 されたものと推定される.すなわち,培養した植物体を 実験容器に移す際に仮根の一部が切断され,そこからリ ボフラビン水溶液が吸収されたものと考えられる. 葉状体のタイ類では,葉状体の裏面に腹鱗片があり, これを利用して水分が運搬されるが(Clee 1943),今回 の実験ではこの腹鱗片はリボフラビン水溶液とは接して おらず,リボフラビンは新しく伸長した仮根を通じて葉 状体内に吸収されたと推察される. 維管束植物の根とコケ植物の仮根が同じような構造と 図5 実験に用いたゼニゴケの時系列における変化.A:実験 に用いたゼニゴケ.B:実験開始前.C:実験開始直後(中央部 の蛍光は植物体と実験装置蓋の穴からもれた蛍光.以下同じ). D:1 時間後.E:4 時間後(葉状体の先端部分に蛍光が確認で きる.)F:12 時間後(葉状体上部まで蛍光が強く見られる.) 図6 実験に用いたジャゴケの時系列における変化.A:実験 に用いたジャゴケ.B:実験開始前.C:実験開始直後(中央 部の蛍光は植物体と実験装置蓋の穴からもれた蛍光.以下同 じ).D:1 時間後(葉状体の縁に蛍光が確認できる.)E:2 時 間後(葉状体の縁の蛍光が強くなり,先端部分にかけて蛍光が 確認できる.)F:12 時間後(葉状体先端部まで蛍光が強く見 られる.)機能を有しているか否かについての先行研究を見つける ことができなかったが,維管束植物のシロイヌナズナ
Arabidopsis thaliana (L.) Heynh.の根毛の発生を調節 す る 遺 伝 子 が, コ ケ 植 物 の ニ セ ツ リ ガ ネ 属 の 一 種
Physcomitrella patens (Hedw.) Brush & Schimp.の仮根 の発生を調節する遺伝子によって代替することができる ことが報告されており(Jones と Dolan 2012 参照),コ ケ植物の仮根の構造と機能は維管束植物の根毛と機能に 相同性があると考えられる. タイ類の葉状体の中央は細胞層が厚いために蛍光反応 の確認は困難であったが,縁の細胞層が 1 層になって いる部分を中心に蛍光反応が確認できた.このことから, セン類と同様に,傷ついた仮根からリボフラビンが吸収 されて葉状体まで運ばれたものと考えられる. 以上のことから,コケ植物の「仮根のはたらき」につ いては,教科書で記述されている「基物への付着」のみ ならず,「水分吸収」も行っていると考えられる.ただ, 前述のように傷ついていない仮根からは,色素分子のよ うな大きな分子は吸収されないと考えられるので,植物 体を移動したリボフラビンは傷ついた仮根から吸収され たものであろう.切断されたあるいは傷ついた仮根から 吸収されたリボフラビン分子をもって,「仮根から水分 吸収が起きている」ことを結論づけることは「正しい」 ことではないが,小学校理科における「水の通り道」の 観察実験の中で米澤ら(2019)が指摘しているのと同 様に,中学校理科における「仮根による水分吸収」を確 認する観察実験としては許容されるべきものであると考 えられる. ただ,教科書にセン類の代表として例示されているコ スギゴケなどのスギゴケ科のセン類は,前述のように, 茎葉体部の表面に仮根や毛葉があるため,仮根の表面に 付着したリボフラビン水溶液がこれを伝って茎葉体の上 部に移動する可能性があり,生徒実験では,茎葉体の表 面に毛葉などがないコツボゴケなどのチョウチンゴケ科 のセン類を用いる方がよいと考えられる.また,観察に UVライトを用いるため,生徒用の保護眼鏡には紫外線 カット率 99%以上のものを準備するなど,安全性に配 慮する必要がある.
文献
Clee, D.A. (1943) The morphology and anatomy of
Fegatella conica in relation to the mechanism of
ab-sorption and conduction of water. Ann. Bot. N. S. 7: 185–193.
Jones, V.A.S. and Dolan, L. (2012) The evolution of root hairs and rhizoids. Annals of Botany 110: 205–212.
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