研究報告
「母親 の心 の健康 チ ェ ックシー ト」 を用 いた
訪 問 に よる育児相 談 にお ける母親 の語 り
清水
嘉子
宮原美知留
長野県看護大学
佐 々木美 果
小 川
赤 羽
洋子
阿部
紀子
正子
塩澤
藤原
綾乃
聡子
抄 録 本研 究 は,「母親の心 の健康チ ェクシー ト」 を用 いた家庭訪間による育児相談 を行い,相
談 時の母親の話 りを明 らかにす ることを目的 とした。相談員 は7人
であ り,協
力 した母親は11.95 (SD3.91)か月の子 どもを持つ20人であった。母親 は専業主婦が80%で
あ り,子
ども数は一人 が90%で
あった。分析 では,相
談時の母親の 215コ ー ドの話 りを質的帰納的に,語
りの意味に 着 目しカテゴリーにまとめ命名 した。母親の語 りは,【自分に対する思い】が最 も多 く,<子
ど もへの影響を意識する><育
児中の時間><子
育てすることで感 じる自分の成長>他
4カテゴ リーに封応 した18サブカテゴリーであった。次いで,【夫や周囲の人に姑する思いIで
は,<夫
や周囲の人の育児に封する態度><夫
に対する折 り合い><育
児による新たな変化>に
封応 し た9サ
ブカテゴリーであった。【子どもに紺する思い1で
は,<子
どもの存在><子
どもに対す る不安>に
紺応 した 8サ ブカテゴリーであった。育児相談時にチェックシー トを用いることで, 相談員は母親に多 くの語 りを引き出すことができた。また,母
親に語 らせることによって母親が 気持ちに気づき,受
け止められる,認
められる,安
心するなどの有効な支援に支えられているこ とが示唆された。 キーワー ド:乳幼児をもつ母親,健
康チェックシー ト,育
児相談,語
り,家
庭訪問I.は
じめに 子育て支援 は,次
の親世代の支援に通 じる重要 な課題である。近年,少
子高齢化 にあって高鈴者 支援 に注 目が集 まっているが,女
性が産み育てる といった生殖の営みに着 日した支援 を軽視するこ とはで きないと考える。なぜ ならば,子
育ては親 か ら子に世代間の連鎖 をす ることが明 らかにされ てお り,母
親への子育て支援 によって,次
世代の 親世代 を育てていると考えられる。子育て してい る母親が孤立化 しやすい現代 にあって,専
門職が 良 き相談相手 となることが求め られている。育児 相談の効果 には “子育 ての助 けが得 られた"“ 楽 な気持 ちになれた"“ 子育 てに肯定的 になれた" “子育ての価値が高 まった"な
ど良い評価が得 ら れている1)。 特 に, コ ミュニケー シ ョンが苦手, 外 に出ることがおっ くうなどの理由か ら,公
的な 健診や教室に参加することな く,密
室での育児 を 行 ってい る母 親が お り,こ
う した姑象へ の支援 には訪間による個別相談 は欠かせ ない と考 える。 中には,訪
間 に戸惑 いや不安 を感 じる封象者 も いるが,母
親の4人
に一人は困 り事があると認識 しなが ら育児 をしている現状 にあって,育
児困難 感 を抱 いている人は “生活が疲れる"“ イライラ す る"“ 育児が負担である"と
感 じる傾 向が強い ことか らも2),有 効な支援が期待 されるところで ある。 平成 26年3月 17日受付,平
成 26年10月 29日受理平成
27年4月 (2015)〕 研究者 は育児 をネガテ ィブな側面のみならずポ ジティブな側面が多 く存在 していることを母親が 気づ き,そ
の気持 ちを大切 にす ることによって, 母親の育児幸福感を高める支援の必要性 を提案 し ている °。 こうしたことか ら,相
談に活用す るた めの「母親の心の健康チェックシー ト」を作成 し た (以下 チ ェ ックシー トとす る)4)。 そ こで相談 員のかかわ りを分析す ることによ り,相
談員が母 親の気持 ちの受け止めや気づ くこと,安心 させる, 考 えを認 め るな どの関 わ りが 明 らか に されてい る。相談員は,母
親に子育てが今のままで良いこ とに気づかせ,子
どもが成長過程にあることを伝 えることで安心 させ,子
育てに対す る母親の考 え 方 を認めていた。つ ま りは,相
談員が母親の思い の語 りを受けて,子
育てによる心身の大変さ,時
間に制限が生 じる大変 さ,子
どもの成長に伴 う不 安,子
育てで感 じたさみ しさ,子
どもが大切な存 在だ と思 う,子
どもがほめ られて嬉 しい,子
ども の様子か ら安心 した,子
どもを叱ることで葛藤す る,夫
や周囲の人の育児支援に対する感謝,夫
の 子育てに対す る想い, こうした様々な気持ちを表 出させ なが ら受け止めていた。 さらに,子
どもを かわいい と思 う気持ちが大切であること,夫
婦で 協力す る子育てが子 どもによい影響 を与 えている こと,夫
や周囲の人の育児支援が受け られている こと,子
育てが よくで きていること,子
どもを理 解 で きているこ とに気づかせ る関わ りがあった。 加 えて,子
どもが成長 していること,子
どもの成 長には個人差があること,子
どもの成長が順調で あること,子 どもが母親 を大切 に思っていること, 他の夫 も同様であることを伝 え安心 させる,子
ど もへ の関わ り方や子 どもの長所 を伸 ば したい気持 ちを認めていた。これ らの関わ りは,チェックシー トを活用 しなが ら母親の語 りを導 き出 し,そ
の思 いに対 して行われていた。 これ らの結果について は,別
途報告す る。今回,本
研究では,相
談員の 関わ りによ り導かれた母親の語 りを明 らかにす る ことを目的 とする。母親の様々な思いを知ること によ り,今
後の育児相談において相談員が母親ヘ の理解 をより深めるとともに,チ
ェックシー トの 活用 の可能性 と課題について検討する一助 とした い と考える。 147 Ⅱ.研
究方法 家庭訪間では,母
親が子育て している生活の場 で,ゆ
った りした気持ちで話 をすることができる と考え,チ
ェックシー トを用いた育児相談 を訪問 によって行った。1.研
究期 間 平成24年2月 ∼25年2月 に行われた。2
研究参加者 研究参加者は,乳
幼児期 にある子 どもの育児 を しているA市
内在住の母親20人である。対象の 抽 出は,本
研究 に先行 して3か
月の子 どもをもつ 700人を対象 とした質問紙による縦断調査か ら本 研 究の依頼の対象者を抽出した。依頼の時点で回 収の得 られている150人の育児幸福感の分析 を行 い,育
児幸福感 に高い値の傾向にあるこ とを確認 した。研究協力の依頼は,依
頼文 によって便宜上 育児幸福感値の低値か ら50人に行 った。その理 由は,低
値 の回答者の傾向 として, “子 どもとの 絆"の
3項目に回答がないものが多いが,他
2つ の下位項 目 “育児の喜 び"は
23点 , “夫か らの支 援"は
17点と上位の母親 と同 じ値の傾向にあっ た。そ こで本研究 において,“子 どもとの絆‖に ついて回答のなかった母親か ら,チ
ェックシー ト を用いた相談の中で確認することにした。3.研
究参加への依頼方法 研究の 目的や方法,倫
理的配慮に関す る内容 を 記 した依頼文 を送 り同意の返信の得 られた者に文ヽJ して,具
体的な 日程調整の電話 を入れた。家庭訪 間による育児相談時には,再
度説明 し同意書にサ インを求めた。4.相
談員の背景 相談 員 は大学 の研 究代表者 と同 じ看護分野 に 所属す る共同研究者である教員7人である。教員 は訪問地区のバ ランスを考慮 して2∼ 3名の母親 を担 当 した。教員 は,研
究 の趣 旨を十分 に理解 し,助
産師 としての臨床経験 は5年以上 を有 して いる。5
介入方法1)訪
問時期 と回数 訪 問は平成24年 2月 に行 った。訪聞回数 は3 回であったが,今
回の母親の語 りの分析 は1回目 の訪間とした。2)母
親の心の健康チェックシー トについて 育児 ス トレス と育児幸福感の状況 を知 るため 29項 目で構成 されるチェックシー トを作成 したり。 このチ ェ ックシー トは,育
児 ス トレス短縮版16 項 目 (“育児 の喜 び"4項
目,“ 子 どもとの絆"4
項 目,“ 夫か らの支援"4項
目か ら構成 される)9
と育児幸福感短縮版 13項 目(“心身の疲労"6頂 日, “育児不安"6項
目,“夫の支援 の なさ"4項
目か ら構 成 され る)° に対す る基 本統計量 と α係数 を確認 し,各
下位尺度得点を,パ
ーセ ンタイルに 変換す るための個人プロフイール表 とした。母親 の育児ス トレスや育児幸福感を測る両尺度の信頼 性・妥当性 は検証 されている。チェ ックシー トに は数値 を解釈す るための個人プロフィール表を配 置 している。得点の高 さの意味的な理由,す
なわ ち,乳
幼 児期 の子 どもを もつ母親の心 の健康 は, 母親の育児 ス トレスが低 く,育
児幸福感が高いこ とが,「 母親の心の健康」の状態が良い と仮定 し ている。このことか ら個人プロフイール表の値 は, 育児幸福感は最大値か ら始 ま り,育
児ス トレスは 最小値か ら始 まるように した。つ ま り,上
部に個 人の得点がプロットされているほど心理的に健康 的であると解釈で きる。3)相
談の内容 と進め方 訪 問時の相談では,チ
ェ ックシー トを用 いて チ ェ ックシー トにある29項目に対す る評価 と項 目に対す る事情 を確認す る。 また,先
行研 究分 に よ り,育
児幸福感 を高 め るプログラムの中で 実施 した “母親 が頑 張 って い る と思 う ところ" や “自分のいい ところ"に
ついて相談の最後に尋 ねた。 相談員の共通認識 として,母
親の体験 を引 き出 しなが らチ ェックシー トを用い,①
項 目に対す る 母親の認識 を確認 し,気
持 ちに共感 しなが ら尋ね ること,②
母親が気づいていない育児幸福感に気 づかせ,そ
の気持ちを大切にする関わ りをするこ ととした。たとえば,“質問項 目を読み上げ,母
親が答えたのちに, どのようなことからそう思い ますか,そ
の気持ちはどのような時に感 じます か,・ ・などと聞きなが ら,そ
うなんですね。私 もそのことは良 くわか ります。 と,相
談員の気持 ちを伝えなが ら共感する。"加
えて,①
チェック シー トとは別に母親が感 じている心配や不安につ いて相談にのった。相談時は許可を得て録音機 を 用 いて相談時の母親の語 りを録音 した。6
分析方法 逐語録に起 こされたデータを母親の語 りに着 目 して,語
りの意味別 に分類 し,下
位サ ブ カテ ゴ リー,サ
ブカテゴリー,カ
テゴリー として命名 し た。分類 を進めてい く上では,研
究者 と育児に関 す る研究の経験のある共同研究者 1名 により行 っ た。一致 しない項 目は,議
論 による検討 を深め一 致する内容を採用 した。7.倫
理的な配慮 平成23年度 (承認番号 2011-22.23)のN看
護 大学倫理委員会の審査で承認を得た後,倫
理的な 配慮 に基づいた依頼文 を用い,自
由意思 による参 加や個人情報 の厳守,研
究開始後 の辞退 の 自由, 相談中の中止の保証 と相談に要す る時間は1時間 程度 とす ることについて説明 し,協
力の同意は同 意書 にサ インを得た。 Ⅲ.結
果1.研
究協力者の属性 研 究 に協 力 の同意 を得 たのは20人(40%)で
あった。母親の年齢は,相談時で30.8■4.78歳 (最 大41歳,最
小26歳),子
どもの人数は1人が18 人(90%),2人
と3人
が そ れ ぞ れ1人
(0.5%) で あ っ た。 子 ど もの 末 子 の年 齢 は 11.95か 月 (SD3.91か 月)で
あった。就労状況では専業主婦 が16人(80%)で
あ り,家
族形態 では核家族が 17人(85%)で
あった。2
育児相談時の母親の語 り結果では
,領
域は 【
】
,カテゴリーは
< >,
サブカテゴリーは「
」で示し
,コー ドである
ローデータは “"に
示 した(図 1)。 末尾の( ) 内の数字は,母 親の事例番号 (1か ら20)で
ある。 特 にローデー タを解釈す るために研究者が文脈か ら言葉 を│ │に
補 った。なお,分
析 に用いた語 りの コー ドは合計215件であった。健康チェックシートを用いた
,育 児相談で母親
は
,〔自分に姑する思い】で
,コード数
118件,【夫
や周囲の人に対する思い】で
,コード数
60件,【子
どもに対する思い】で
,コード数
37件の
3つの
領域があった
(図1)。〔子どもに支、すする思い】 (37) て子 すてすることて康 と心自分の成長>r/妙 [子どもとの良い薦係性が保てる](■) [育児を講向 きに考えられる](1) [子ともの気持ちを読み取れるよ うになった](2) [専円職者に助け られた](2) 脚ど・鵜 方ヽうβう″ιた喜び>r [子ども力 “ よめられると盛しい](91 [出産できてよかった〕(7)│ [妊振てきたことの喜ぴ](3) [子ともには個性がある](11) [子どもだか ら仕方ない3(3) へ の理 解 の 簾 ま ク <夫の育用 による 新 たな変化>(5) 子 ど もに対す る考 え方 が 変化 して きた](3) [行動 の 変 化 に 気づ い た5(2, て子 どbへの影字 を産溝 する>鬱夕 ' [自分 の育 児態 度 を振 り返 る](7) [夫婦 の仲 の 良 い姿 を子 ど もに 見せ た い]0 [接し方が子 ともへ彰等 す る こ とを 意識 す るX6) [子育 て で大切 に して い る こ と を 大事にする,(3) て,tや風諷 のス の斎メgに 'チ する 態度>r訂ブ :育児への協力3(14) [育児への夫の関だヽ](10, [育児の大変 さへの理解](8, :l申弓囲の人に助けられている](4) てテ ど もにオ す る不 夕 >(′0' [子ど もの成長に不安が ある](1) [子ど もの態 度 に′ぃ配 が あ る](1) 子どもが親に似ていること て子 ど もの 存「在>につ [子ど もの存在 は喜 びだ](8) [子どもと過ごす時間は大切だ](6) [子どもがいるから頑張れる](5) [子どもはかわいい存在だ](4) [子どもの存在1ま希望だ](4) <えF_‐ 'チ すち 万 ク台い>rノ 9, [夫が や って い る こ と い ら立 ちを感 しる](12, [自分の 生活 を中心 に 考 え る こ とは 仕 方 ない](4) [Iヨ分 の よ う `こ 育 児 が できなくても仕方ない](3) て斎刀 の大変 さや不身>r′′ ' [育児が大変だ](7) 〔将来への育児の不安]③ [自己アイデンテイティのゅら手](1) て自″ 錬 にガ ナあ章臓 >r′ィ, [以前 より疲労を感 しな くなった](3) [身体症状がある](3) 【健康の気づかい と対応](3) て斎″ 申の好阿>rrθ) [自分の時間を持てない](8) [息抜 きする時間力〔ある](7) [自分の時間を持てないことへの折 り合い](2) [仕事に戻 りたい](2) 【夫や周囲の人に ',Iす る思い】 (60) 【自分に対す
平成
27年4月 (2015)〕 1)自分 に対す る思 い 【自分 に対す る思 い1に
は,7つ
の カテゴリー があった。<子
どもへの影響 を意識する>で
は, “自分の都合で怒 ると可哀そ うなことした と思っ てごめんねって。お母 さんこんなん じゃいけない なって意味で (4)"などの「 自分の育児態度を振 り返 る」,“ 親が仲良 くしているか ら子 どもも嬉 し そ うだ (2)"などの「夫婦の中の よい姿を子 ども に見せたい」,“子 どもに言 って もわか らないか ら, 出来るだけそんなに叱 らないように自分が工夫出 来るところは工夫 してやっているんですけ ど(1)" などの「接 し方が子 どもに影響す ることを意識す る」, “褒め られたことを伸 ば してあげたいなって い うのはあ りますね (13)"などの「子育てで大 切 に していることを大事 にす る」があった。 次に多かった<子
育てす ることで感 じる自分の 成長>で
は,“ 怒るとやっば り可哀そ うなことを した と思 うので,そ
の後何 もなかったように抱 き 149 く>は カテゴリ,E]は
サブカテゴリ,()は
コード数を示すn=20
図1
育児相 談 にお け る母 親 の思 いの話 り つ い て来 られ る と嬉 しいです (20)"などの「 子 どもとの良 い関係性 が保 て る」,“ そん なに 自分 で 考え込む必要 もない し,周
りも同 じように悩んで いるのだなってい うの もわかった し…不安だけど それを1人で抱 え込 まな くていい状況がまわ りに あるか ら安心で きるとい う感 じですかね (5)"な どの「育児を前向 きに考えられるJ,2件
ではあっ たが,“ 最初 は生 まれた時 とかは泣いていて どう やった ら泣 き止むんだろうって。で も今はそんな にないかな (11)"な どの「子 どもの気持 ちを読 み取れるようになった」,“夜寝 る前の大泣 きがす ご くって…さすがにまいっちゃって。無料で相談 で きるところに電話 して どうした らいいか分か ら ないって… 1助言 して もらって1楽
にな りました (17)"な どの「専 門職者 に助 け られた」があった。 さらに,<妊
娠 ・出産・育児か ら得 られた喜び>
では,“出かけた時 にお世辞で もかわいいねって 言 われた らやっぱ り親 としては嬉 しいか ら (14)"などの「子 どもがほめ られると嬉 しい」,“子 ども がで きるか心配なのがあって本当に良かったなと (17)"などの「出産で きて良かった」, “不妊症の 方 とか多い し本当に授かっただけで もあ りがたい ことなのだなって感 じますね (14)"な どの「妊 娠で きたことの喜び」があった。
<育
児 中の時間>で
は, “時間が空いた ら離乳 食の レシピを調べた り, とか…旦那 とビデオ見る 時間はで きたので。そ うい う時間 もだいぶで きた け ど,育
児中心かなってい う印象の方が強いです ね (10)"な どの「 自分の時間を持てない」,“ 自 分の した ことをで きている方なのだろうな。 自分 のや りたい ことは減 りましたけ どね (11)"な ど の「息抜 きする時間がある」, “自分の したことが で きないことに姑 して今の時期は しょうがないっ て割 り切 っているので (6)"などの「 自分の時間 を持てないことへの折 り合い」, “今 まで仕事 をし ていたので 自分でお金 を稼 げないってい うのが, うん と苦痛 だったのです よ。内職なんて本当にこ んなん何千円単位に しかならないですけど,そ
れ で も…だいぶ気持 ちの面 で違 い ますかね (12)" などの「仕事に戻 りたい」があった。<子
どもへの理解の深 まり>で
は, “この子な りの成長が見 えているので,不
安 に思 うことはな か ったです (12)"な どの「子 どもには個性があ る」,“子 どもの行動 に対 して仕方ないかって思っ ているか ら,面
白がっている方なので,や
ってい て も何かやっているって (2)"などの「子 どもだ か ら仕方ない」があった。<自
分の健康に対する 意識>で
は,“ 夜 も授乳 している段階か ら5∼6 時間 しっか り寝 ていて くれた もので私 も寝 られる じゃないですか。他のお母 さん達 と比べると私は す ご く寝ているよなって (6)"などの「以前 より 疲労を感 じな くなった」,“ 育児のせいなのかよく わか らないのですけど,た
まに肩が凝 ってた りと かはある (16)"な どの「身体症状がある」, “(疲 れは)た
まっていると思います。で もバ ランスが 悪 い中で もバ ラ ンスを取 ってい こうって思 って (5)"などの「健康の気づかい と対応」があった。<育
児の大変 さや不安>で
は, “忘れたころに ぎゃあっと泣いてみた りして, とか…私 自身良 く 寝 る方 なので,そ
うい う面 で は睡 眠不足 って感 じる時 はあ りますね (3)"な どの「育児が大変 だ」,“ まだ子 ども欲 しいのですけど,産
んで もい いのかなって十分に育て られるか しらと思います (19)"などの「将来の育児への不安」, “自分が全 部子 どもにいってそれをまっているのは どうなの か と私は思 うので…別にそれが希望 じゃない とい う訳で もな く (7)"な どの「 自己アイデンテ ィティ のゆらぎ」があった。2)夫
や周囲の人に対する思いの語 り 〔夫や周 囲の人 に対す る思い】では,3つ
の カ テ ゴ リーが あった。<夫
や周囲の人の育児 に対 す る態度>で
は “本当にいろいろやって くれて, や りたがって くれて可愛がって くれるので (15)" な どの「育児への協力」, “今 日うるさかった ?と か泣いた ?と か聞いて くるので,安
心することは あ りますね (16)"な どの「育児へ の夫の関心」, “わかって くれる範囲はわかって くれていると思 い ます (18)"などの「育児の大変 さへ の理解」, “出産時 も育児 もみんな大丈夫だか ら大丈夫だか らっていって,お
疲れ様って言って くれたの もす ご くあ りがたかった (19)"な どの「周 囲の人に 助 けられた」があった。 また,<夫
に姑す る折 り 合 い>で
は “俺 は (子ども)を
見てい るって言 うけど, 自分のことが最優先なのでそうい う所が イライラします (9)"などの「夫がやっているこ とにい ら立ちを感 じる」, “休みの 曰くらいゆっ く りしたいだろうなって…休みの 日しかそういう自 由な時間はないか ら,そ
れ も取 り上げちゃうと可 哀そ うかなって思 って (14)"などの「 自分の生 活 を中心 に考 えることは仕方 ない」“うんち1つ 替 えるの も,見
ると言いた くなっちゃうってか ら もう任せるっていう気持ちに (3)"などの「 自分 の ように育児がで きな くて も仕方ない」があった。 さらに,<夫
の育児による新たな変化>で
は,“旦 那が元 々子 ども嫌いで結婚 もしない,子
どもも作 らないだったのが,結
婚 もして くれてす ごいと思 うし子 どもかわいがって くれている時点です ごい と思 うし (10)"な どの「子 どもに対す る考え方 が変化 して きた」, “旦那 さんもそ ういう思い 1子 どもその ものが希望であること│で仕事 をした り, 勉強 した りってい う姿が見えた (20)"な どの「行 動の変化 に気づいた」があった。平成27年4月 (2015)〕
3)子
どもに対 す る思 いの語 り 【子 どもに対す る思い〕では,2つ
の カテゴリー があった。<子
どもの存在>で
は “子 どもがい ると嬉 しいなとか幸せだなと思 うことが結構多い (14)"などの「子 どもの存在は喜びだ」,“子 ども と散歩に出るだけで も楽 しい (1)"などの「子 ど もと過 ごす時間は大切だ」, “生 きなきゃいけない です もんね,子
どものためにね (7)"などの「子 どもがいるか ら頑張れる」, “何 を していて もかわ いいなって(10)"な どの「子 どもは可愛い存在だ」, “とにか く顔だけ見ていて も,本
当に 1子どもは 希望だ と1思
い ます (9)"などの「子 どもの存在 は希望だ」があった。 また,<子
どもに対する不 安>で
は “個人差 ってい うのはわかっているの だけど,そ
うい うの │ママ友達の子 どもがみんな で きるのに自分の子 どもだけがで きない│を
目の 当た りに しちゃうと大丈夫かなって不安になった りして (8)"な どの「子 どもの成長に不安がある」, “気 に入 らない と泣 くよね。わが ままなん じゃな いかって思 って心配 (16)"な どの「子 どもの態 度 に心配がある」,“私肌が弱いのです よ。だか ら この子が同 じ風になるとかわいそうだなってい う のはち ょっ とあって (18)"な どの「子 どもが親 に似ていることでの不安」があった。 Ⅳ.考
察 育児相談 は,約
1時間程度で行 われ,母
親 は, 「心の健康チェ ックシー ト」に従 った項 目に姑 し て 自由に語 っていた。中で も母親は自分 自身のこ とについて多 くを語っていた。<子
どもへの影響 を意識す る>語
りは,母
親 としての 自覚 と行動 か ら生 じる思いであ り,同
時に<子
育てすること で感 じる自分の成長>や ,<子
どもへの理解 の 深 ま り>な
どの語 りによって自分な りに母親 とし ての評価 を していた。 こうした語 りは,<妊
娠・ 出産 。育児か ら得 られた喜 び>に
よって支 え ら れていることが伺 えた。妊娠出産の看護の重要性 を改めて実感すると共に,育
児 中の母親の気持ち の中に しっか りと位置づいていることが明 らかに された。 また,<自
分の健康 に対す る意識>を
向けなが ら<育
児中の時間>や ,<育
児の大変 さや不安>を
抱 いていた。育児中の母親 に対 し て,こ
の視点に対する看護が大切だ と考える。 151 夫や周 囲の人に対す る思いは<夫
や周囲の人 の育児 に対す る態度>に
つ いての語 りが多 く, よい意味で も悪い意味で も関心の高い事柄である ことがわかる。 このことは,夫
や周囲の人の育児 態度の影響の大 きさ,す
なわち協力や関心,大
変 さの理解 という点において重要であると考えられ る。 また,<夫
に対する折 り合 い>の
思 い を抱 くとともに,<夫
の育児による新たな変化>を
感 じていた。夫の努力や変化 を感 じ取る中で,夫
への感謝や評価の思いが伺 えた。一方では,不
満 やイライラの想い も見 られてお り,な
かなか変わ らない夫に対する現状にどう向き合った ら良いの か戸惑 った り,あ
きらめ た りしている様子があ る。 最 も少なかった子 どもに対する思いでは,<子
どもの存在>を
意識す るこ とで,愛
情やや りが い,幸福感に近い感情が生 まれている。一方では,<子
どもに対す る不安>の
思 い を持 ってお り, 子育て中の母親の抱 く思いとしては常にあるもの だが,語
りの中では少なかった。母親にチェック シー トとは別に不安なことについて確認 している に もかかわ らず不安が少なかったことは,チ
ェッ クシー トを用いて相談 を進めてい く中で,新
たな 気づ きや安心感を得て行 くことで,不安 なことは, 大 きな問題ではな くなったのではないか と推察さ れ,不
安 なことは,や
り取 りの どこかで解決 され ていた とも考えられた。 母親は,同
様の対象者への先行研究か ら,相
談 後の感想で, 自分や子育てへの気づ きや相談の満 足感を得ていた。 自分に対 しては,客
観的に自分 を見つめ られた,
自分の変化 を確認で きた, 自分 の気持ちに気づけた,意
識 していないことを考え られた と実感 していた。子育てに対 しては,子
ど もへの思いを確認で きた,客
観的に子育てを見 ら れた,子
どもに愛情 をそそげた,子
どもの成長を 確認で きていた。相談 に汁す る満足感では,話
し やすかった,楽
しい時間だった, うれ しい,安
心 した,心 強かった,救 われたなどが聞かれていた°。 こうしたことか ら,育
児相談の時間が母親にとっ て意義のある時間であったと考えられた。 育児評価が気 になる,育
児 に自信のない母親が 増 え,健
診 は合否判定の場 とな り,子
どもの体重増加や介入に偏 りのある祖母 との関係
,人
との関 係の希薄 さや子 どもとの関わ りの経験の少 なさな どが現代家族の育児様相か ら明 らかに されてい る9。 こうした特性 をみてみると,育
児相談 によ る個別の対応 によって,育
児幸福感を高めるため に も母親 自身が 自らの子育てに気づ くことが重要 である。ポ ピュレーションアプローチにおいて重 要視 されてい るエ ンパ ワー メ ン トを高め る関わ りにおいて もЮ),楽しい育児,親
としての 自信, 母親 としての実感,明
るい気持ち, これで良いと 思 えることなどが注 目されている。育児相談の中 で母親に多 くの思いを語 らせたことは特筆すべ き 点であ り,シ
ー トの項 目に従い,相
談員が語 りを 引 き出す ことにより,チ
ェックシー トを用いて育 児相談 を進めてい くことの有効性が示 された もの と考える。 しか し,今
回文、す象 とした母親の末子の 子 どもの年齢が低 く,“ 子 どもの絆"に
関す る項 目では,注
意深 く聞き出す ことの言果題があったこ とか ら,相
談員はあ らか じめ子 どもとの愛着を感 じる言葉かけを準備 したが,言
葉 による子 どもの 反応 を確認す る3項
目は,う
ま く語 りを引 き出せ ない場面があった。相談員の姑応力にも左右 され る項 目と考えられ,子
どもの言葉が見 られない時 期の “子 どもとの絆"の
項 目に対す る母親の語 り の引 きだ し方について課題が残 された。 母親が,育
児 に関連 した多 くの思いを専門職者 に聞いて もらい,そ
の思いを受け止め られること によ り,母
親の可能性 を引 き出す支援 に通 じるも の と考える。気持ちを共感することにより,喜
び は分かちあうことで倍 にな り,悲
しみは分かちあ うことで半分 になると考 え られる。心の内にある さまざまな思いである不安や イライラ,苦
悩や怒 りといった感情 を吐 き出す ことで浄化 を促 し, 自 分 に気づ き自分 自身か ら解放 されて, 自分の本当 の姿に向い合 うことでその姿 を自分が受け入れる ことに通 じる。母親の育児支援の原点 ともいえる こうした関わ りにより,母
親 に生 きてい く力,勇
気,元
気,安
心感 を可能 とす ると考 え られた11)。 ナ ラテ イブでは,人
間が実感 を込めて経験的に理 解で きることの範囲 とい うのは実は限定 された も ので,私 たちはそのままでは理解 しがたい事態を, すでに慣れ親 しんだ話へ と移 しかえ,そ
れを展開 してい くことで,そ
の ままではなかなか理解で き ない ような事態を,理
解で きるものへ と変えてい く姥)。 チェックシー トを用いた育児相談によって, 母親がこうした語 りを繰 り返 して語 られることに よ り,ナ
ラテ イブ・セラピー としての効果に通 じ てい くもの と期待 される。 V。 結 論 チェックシー トを用いた育児相談で,母
親は 【自分に封する思い】【夫や周囲の人に対する思い】 【子 どもに姑する思い」を語っていた。また,チェッ クシー トを用いたことで,母
親に多 くの思いを語 らせる関わりに通 じていると考えられた。 なお本研究は,平
成 23年 度から27年 度学術研 究助成基金(基盤研究C23593310)研
究課題名「母 親の健康チェックシー トの開発と評価―育児相談 への活用と縦断調査の試み一」による助成を受け て行われた。 文 献1)石
川麻衣,小
澤若菜,時
折美希 エ ンパ ワメ ン トを意図 した乳児家庭全戸訪間における支 援 の効果 自由回答式ア ンケー トに記載 され た利用者の意見の質的分析か ら,高
知県立大 学紀要 (看護学部編)2012,61,13-24
2)小
澤若菜,石
川庁林衣,川
上理子,他
高知市 との連携活動強化事業 (第2報
)乳
児家庭全 戸訪問か ら把握 した母子の健康 と子育ての実 態,高
知県立大学紀要 (看護学部編)2012,
61, 25 - 363)清
水嘉子 母親の育児幸福感 を高めるための 取 り組みへの発展 として 保健師ジャーナル. 2013, 69 (3), 224-230,4)清
水嘉子.乳
幼児 を育児 している「母親の心 の健康チェックシー ト」,母性衛生.2014,54
(4), 580-587
5)清
水嘉子,関水 しのぶ.母
親の育児 ス トレス 尺度―短縮版作成 と妥当性の検討―.子
ども の虐待 とネ グ レク ト .2010,12(2),261-270.6)清
水嘉子,関水 しのぶ,遠藤俊子 母親の育児 幸福感尺度の短縮版尺度開発,日
本助産学会 邑志. 2010, 24 (2), 261-270,平成
27年4月 (2015)〕7)清
水 嘉 子,関
水 しの ぶ,遠
藤俊 子,他.母
親 の育児幸福 感 を高め るコース プログ ラムの実 施 と評 価.日
本 助 産 学 会 誌.20■
,25(2),
215 - 224.8)清
水 嘉子,佐
々木美香,塩
澤綾乃,他
「母親 の心理健康チ ェックシー ト」 を活用 した育児 相談研究,母
性衛生 第54回母性衛生学会総 会・学術集会抄録集.2015,54(3),343.
9)永
谷智恵,笹
木葉子,村
田亜紀子 母子保健 相談員か らみ た現代家族の育児様相,北
海道 153 文教大学研 究紀要。2012,36,93-102
10)野 島佐 由美,中
野綾美.家
族エ ンパ ワーメ ン トを もた らす看護実践.東
京,ヘ
ルス出版, 1966. 11)東山絃久綿著 来談者 中心療法 (心理療法 プ リマーズ).東
京, ミネルボア書房,2003.12)McNamee S,Gergen」
.Therapy as SocialConstruc■
on.野
口裕二,野
村直樹訳.ナ
ラ テ イヴ・セラピー,社会構成主義の実践 東京,金剛出版,1997.
Home‐
宙
sit childcare consultttions by using mothers'psycholoJCal healh check sheet :Mothersi narraivesYoshiko Shirnlzu VIichiru Miyahara
Nagano Colege of Nursing
Mika Sasaki Noriko Ogawa
Hiroko Akahane ふ/1asako AbeAyano Shiozawa
Satoko Fuiihara
Abstract
This study conducted home―visit childcare consultations, using the ふ/1others' Psychological Health
Check Sheet and analyzed mothersi narratives gathered fro■ l these consultations.Participants、vere 7 counselors and 20 mothers witt a child or children aged ll.95(SD=3.91 years).80%of the mothers
are ful卜tirne homemakers,and 90%have only one child.In our analysis,215 of the mothersi narratives
、vere classined into categories,using a quahtadve induction method、vith a special lbcus on meanings.
The categories were then appropriately named,VIothersl narratives most often pertained to Thoughts about Themselves, 、vhich comprises 4 categories, including ‖Awareness of inauences on the child," Wfrirne Of chnd careギ
and ‖Personal gro、vth resulting from child care,W From these 4 categories, 18 corresponding subcategories were identined, Next, Thoughts about the Husband and People around hiln consists of 3 categoriesi ttHusbandis and People around him attitude toward ch工d care,I WTerms
、vith the husband,W and‖ Ne、v changes resulting from child care";9 corresponding subcategories were identified, Under Thoughts about Chユ dren, 8 subcategories correspond to the categories ‖Presence
of the chndW and‖ worries about the chld」I Using the check sheet,the counselors、vere able to obtain
more narrat市esとom the mothers Furthermore,encouraging mOthers to talk seemed effect市 e in helping them reattze their feeings and also feel accepted,ackno、 vledged,and reassured
Key words:mothers caring for infants and toddlers, health check sheet, chldcare consuitation,