ミツバ チ科 学22(2):75-78 HoneybeeScience(2001)
アル ゼ ンチ ンプ ロポ リス の フ ラボ ノイ ド含 量
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フラボノイ ド類 は, フェノール酸やそれ らの エステル類 とともに
,
「フェノール化合物」と総 称 され,現在 のところプ ロポ リスの主 な生理活 性 成 分 と して考 え られ て い る (Marcucciet a1.,1995).太陽光 の紫外線領域 を吸収,あるい は反射す ることによって,植物上では,主だ っ た光感受性の組織を太陽光線か ら守 っている物 質群で もある. フラボノイ ドは, シンナモイル基 に連結 した (置換基 と して少 な くとも水酸基 を もつ)芳香 族環 を もっ ことによ り特徴付 けられている.そ の中で も, ア ピゲ ニ ンapigenin, ケルセチ ン quercetin,ケ ンフェロールkaempferol, ピノ セ ン ブ リ ンpinocembrin, ガ ラ ン ギ ン galangin,ヘスペ リジンhesperidinな どはプ ロポ リスと植物 にほとん ど共通 にみ られ る. こ れ らの化合物 は重要 な抗酸化作用を もち,資質 の過酸化や遊離基の影響 を最少 に抑 え,心 (臓) 血管病 (Hertogら,1993)や老化の危険を低 減す る働 きがある. このよ うな特質を人間, あ るいは家畜用の薬品 として応用す るためには, まず最初 に,プ ロポ リスの基準化作業が不可欠 である (Ban kovaetalH2000). セイ ヨウ ミツバチApismellifera は種 々の 植 物 か ら 樹 脂 を 集 め (Vanhaelen and Vanhaelen-Fastre,1979),そ れ らは お そ ら く, ある酵素化学的な転換 を経て,混合 されプ ロポ リスになる (Ghisalberti,1979).それゆ えに, プロポ リスの化学組成 は産地 の植物相 に よ り変動す る (Greenaway eta1.,1990). こ の研究 は, アルゼ ンチ ン各地のプロポ リスのフ ラボノイ ド含有量 を調べ ることを 目的 に,
「ア ルゼ ンチ ンプロポ リスと抽出液の物性および化 学特性」 と題 された事業 の手始 めに行われた. 材料および方法 1.試料 アルゼ ンチ ン全土 の異 なった養蜂場か ら得 ら れた84試料 のプ ロポ リスを分析 した.試料 の ほとん どはEg立農業技術研究所I
NTA
と国立 ブェノアイ レス大学UNCPBA
の事業である, 総合養蜂開発計画PROAP
Iを通 じて集 め られ た もので, それ以外の ものは個 々の養蜂家か ら 送 られて きた ものを用 いた. 各試料 には,養蜂家の住所氏名,収穫方法, 採取時期,養蜂場のデー タ (場所,規模,主 な 植物)を記 したデータ登録表を添付 した.試料 は1999年 と2000年 に採取 され, -15℃で分 析前 まで貯蔵 された,実際の試料採取地 は, チ ャケニア ン公園, カルチ ャキ渓谷,パ ンパス大 草原, クー ヨーおよびパ タゴニア北部である. 各採取地 の特徴 は以下 の通 りである. チ ャケニアンChaquenean公園 東 はブラジル南部,北 はパ ラグアイ,北西 は ボ リビア,南 はコル ドバ山に及ぶ,森林 とサバ ンナに覆われた広大 な平原 にあ り,サ ンタフェ 州 の約半分 の面積 が あ る.気候 的 には亜熱帯 で, 年間平均温度15-23℃である. 降水量 は 400-1000mmで春 と夏 に集中 し,冬 は一般 に 乾季である.植生 は雑多で,拠水杯 とその他の 森林が,背の高 いイネ科植物で覆われたサバ ン ナと交互 に出現す る. 自生 の木本類 としてよ く 見 られ るものには以下 の ものがある.ナツメ属 Zizyphus mistol, キ ョ ウ チ ク ト ウ 属AspidospeTma (white quebrracho), Schinopsislorentzii,ProsoPisalba,P.Nigra,
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ア カ シ ア 属 Acacia caven,Geoffroea decorticans,Bulnesia sarmienti,Piptadenia macrocarPa,Astronium balansae,Tabebuia ice,Schinopsisbalansae,Chorisiainsignis. 草 本 は Panicum, Setaria, Eragrostis, PapPoPhorum,Elionorusなど. この地域 には 棉,柑橘類, トウモロコシ,大豆, タバ コが栽 培 されている, カルチャキ深谷 CalchaquiVallex アルゼ ンチ ンの北西に位置 し,カタマルカ, ツクマ ン,サ ラタ州を南北 に貫 いている,低い ところで1600m,最高標高地で 2900m の高地 である.気候的には年間降水量200mm,平均 湿度56%の乾燥地帯である.年間平均気温 は 16℃で,最高 39℃,最低 -12℃ と差が激 しい. 植生 は潅木主体で,マメ科の種が目立っ.代表 的なものとして, Cercidium Praecox,Larrea divaricata,L. cuneiform, Acacia caven,
Atamisqueaemarginataがある.水源のあると こ ろ で は, Prosopis spp,Acacia aroma,
AcaciaDisco,GeoffraeadecorticanとCeltis talaなどに特徴づけられ る樹木層が発達す る.
ま た,雨 季 にStipa, Aristides, Setaria,
ErlagrOStis属の数種が草本層 として発達する. パ ンパス大草原 PampeamSteppe
草本に覆われた, ほとんど海抜Om で,西東 にほとんど傾斜のない, 巨大な平原である. ブ エノスアイ レス州の全体,サ ンタフェ州南部, コル ドバ州南部, ラパ ンパ州北東部,サ ンルイ ス州の南縁を占めている.気候 は夏暑 く,冬寒 い温暖地帯で,極めて稀 に降雪がみ られる.気 温 はブェノスアイ レスの南部での14℃か らチ ャケニア ン公園 との境界付近での18℃ まで変 動する. 降水量 も西部では500mm,北部では 1000mm と大 きく差があ るが,降雨 日数 はい ずれ も約80日間である. それ も主 に春 と秋 に 集中 し,夏には少な く,冬 にはほとんど雨は降 らない.本来は,木本類を完全 に欠 く,イネ科 植物主体の大草原であったが,今 日では,大 き く変化 して いて,かつて は見えて いた地平線 ち,林によって遮 られて見えな くなっている. 出現頻度 が高 いイネ科 の植物 で は,熱帯性 の Arstide, Eragrostis, Chloris, Sprobulus,
Panicum,Elionurusなどの属がよく見 られる. 一部の地域では トウモロコシ,小麦,大豆,棉 花,大麦, ソルガム, ヒマワリ,果樹類,柑橘 類などが集中的に栽培 されている. クーヨーCuyo ラリオ-,サ ンファン, メンド-サの各州に わた り, アルゼ ンチ ンの西部中央に位置す る一 帯である.全体の約5%が濯慨 され,集約的農 業地帯 となっている.全体 に乾燥,または半乾 燥気候である.西にはア ンデス山脈が位置 し, その標高 と氷河の冷気により,冬には降雪がみ られ,また強い西風が常時吹 く. この西風 は, 山間部で湿気を失 い,暖か く非常に乾燥 した風 として下 って くる.降水量 は中央 と北部 は500 mm で南部では 1000mm に達する. 山麓部で は7月の 5℃か ら 12月の 23℃まで気温の変動 があり, 山間部では1年の半分以上が 0℃ とな る.主な植物相 はLarreasp.で,イネ科の草本 で あ るStipa sp.属 が草 層 を なす.Montea aPhylla,Prosopisstrombulifera,Prosopissp. の よ う な 数 種 の 葉 の な い 木 や Geojfrea decorticans,Bulneciaretamo,Schinussp.な
ど もみ られ る.開発地 に はポプ ラ類Populus sp,ヤナギ類Salixの他,リンゴ,洋梨,マルメ
ロ,プラム,アーモ ンド, モモのような果樹が 普通である.
パタゴニア北部NorthPatagonia
ネウケ ンとリオネグロ両州は,温帯で非常に 乾燥 した地域である.年間平均気温 は13℃,夏 に集中する降水量 は年間100-400mm程度で 非常 に少 ない.植生 は点在す るProsopisの木 と1-3m の高 い薮か らな り,草本 は乏 しい薮 は,代表的な低木Larreadivaricata,L.nitica, L.Cuneifoliaが10-20%を占めている. ま た,Cercidium praecox,Prosopisstriata,P. Argentina,P.AIpataco,P.Strombuliferaと数 種 のAcacia,Bougainvillea,Bulnesiaの他,
Opuntia属 とCereus属の植物が多種み られる. 濯概 された耕作地 には,主 に果樹 と野菜類の栽 培が行われている.
ワ ックスを ソ ックス レー抽 出器 を用 いてヘキ サ ンで抽 出,除去 し,残 った樹脂部分 を 96% エ タノールで抽 出 した(Bedascarrasbureeta1.,
2000).総全 フラボノイ ド量 お よび紫外部 吸収 スペ ク トル は この エ タノール抽 出液 を用 いて測 定 した.総 フラボノイ ド量 (ケルセチ ン相 当量 ) は, メ タノール車での塩化 アル ミニ ウムとフラ ボ ノイ ド類 の錯 体 の,425nmにお け る吸光 度 を,標準物質 と して ケルセチ ン2水和物 を用 い て測定 した (WoiskyとSalatino, 1998).輿 外部 吸収 スペ ク トルは,各試料 の エ タノール抽 出液 を希釈 して測定 した (Markham,1982). 結果および考察 アルゼ ンチ ン各地 か ら採取 され たプ ロポ リス 試料 の総 フラボノイ ド量 はチ ャケニ ア ン公園 の 3.61%か らカルチ ャキ渓谷 の 12.28%まで, 大 きな差 がみ られた (表 1).パ ンパ ス大草原, ク 250 270 290 310 330 350 370 390 410 250 270 290 310 330 350 370 390 410 77 表1 各地域産プロポリスのフラボノイ ド含量 地域 n 総 フラボノイ ド量 平均 ±標準誤差 パ ンパス大草原 33 787±0.39 クーヨー 11 9.44±1.03 チャケニアン公園 21 3.61±0.40 パ タゴニア北部 5 5.91±0.77 カルチャキ渓谷 11 12.28±1.37 *(%W/W) - ヨー, カル チ ャキ渓 谷 の値 はBonheviand Coll(1994)の報告 した ブ ラジル,ウル グアイ, 中国産 のプ ロポ リスよ りもはるか に多 く, チ ャ ケニ ア ン公 園 の フ ラボ ノイ ド含量 で もWoisky andSalatino(1998)の報 告 した同 じ分析技術 で 測定 した ブ ラ ジル 6地 域 の 0.77- 2.69%と い う値 に較 べてわずか に大 きか った. 総 フラボノイ ド量 につ いて統計 的 な検定 を行 うために ノ ンパ ラメ トリック検定 を行 った. こ れ は,各地 のサ ンプル につ いて どの程度 の変動 250 270 290 310 330 350 370 390 410 250 270 290 310 330 350 370 390 410 波長(nm) PPSパンパス大草原 Cuyo クーヨー cHQ チャケニアン公園 PTG パタゴニア北部 CLC カルチャキ渓谷 250 270 290 310 330 350 370 390 410 図1 各地域産プロポリスの紫外部吸収スペク トル
78 があ るかを示す ことにな り, プ ロポ リスの基準 策定 にあた って大変意味のあることで もある. フラボノイ ドを最 も多 く含んでいるプ ロポ リス はカルチ ャキ渓谷産 の ものであ るが, それ はお そ らく標高 の高 い渓谷部で あるこの地域 の植物 が受 けている太陽光線 の質 的な違 いを反映 して いるともいえ るだろ う. もっともこの点 につ い ては,今後 の研究で証明 して いかなければな ら ない. 紫外部吸収 スペ ク トル (図 1) か らは, プ ロ ポ リス中に含 まれ るフラボノイ ドとフェノール 化合物 の組成 の差 に一致す るよ うな異 な ったプ ロフ ァイルが得 られた もの と推論で きる. しか し, ク ロ マ トグ ラ フ ィー分 析 に よ って の み, 種 々の フェノール化合物, とりわ けフラボノイ ドのプ ロフ ァイルに関 して,成分 の同定 を行 う ことがで きる. この予備的な結果か らは, アルゼ ンチ ンプ ロ ポ リスは,生理活性成分,主 にフラボノイ ドを 高 含有率 で含 ん で い る と結論 で きる.各地蟻 間, あ るいは地域内にみ られ る有意 な差 か ら, それぞれ異 な るプロポ リスの タイプ分 けによる 基準化 が必要であると判断 され る. 謝辞 「アルゼ ンチ ンプ ロポ リス と抽 出液 の物性 お よび化学特性」事業 は,国立科学技術振興事業 団の助成 を受 けた. (翻訳 江厚 真 著者の住所は下記参月割 参考文献
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Theflavonoids,togetherwith phenolicacids andtheiresters,areconsideredthemainbioac -tive components of propolis at the moment.
Thesecompoundshaveimportantantioxidant,
antibacterial,antifunglCal,antiviral and anti -tumoral properties. It is known that Apis
melliferacollectstheresinsfrom severalplants, thereforethechemicalcomposition ofpropolis willvaryaccordingtothefloraofeachreglOn. Thisworkwascarriedoutinordertoevaluate thecontentofthesecompoundsin theArge n-tinepropolisfrom differentregionsofthec oun-try in the mark ofthe project"Physicaland chemical characterization of Argentinean Propolis and their extracts". The total flavonoids contentwas located among 3.61% fortheChaquenean Park and 12.28% forthe CalchaquiValley. The values found in the Pampean Steppe,Cuyo and CalchaquiValley weresuperiortothosereportedby Bonvehiet al.(1990)inpropolisfrom Brazil,Uruguayand Chlna.Thevaluesdeterminedinsamplesfrom Chaquenean Park wasslightly superiorto the onereportedbyWoiskyandSalatino(1998)for Brazilian propolis. Different composition of flavonoidsand phenolsin propolisfrom differ -entregionsofArgentineareshownbytheUV spectrum. The preliminary results allow to affirm thattheArgentineanpropolispresentsa high contentofbiologlCally activecompounds astheflavonoids.