インターネット利用における中学生の安全意識を高
める親の役割 : 技術的理解が支える情報モラルを
背景に
著者
松村 真木子
雑誌名
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇
巻
13
ページ
207-218
発行年
2013-12-01
URL
http://id.nii.ac.jp/1354/00000296/
学生は、2013年に52%であり、そのうち26% がスマートフォンを利用している[3]。スマー トフォンは、携帯電話でありながらインター ネット利用を容易にしているため、限りなく パソコンの端末と近いものとなっている。そ のため、中学生が親の目が届かないところで インターネット利用におけるトラブルに巻き 込まれるリスクは高いと懸念される。 2004年に誕生した「mixi」以降、2005年「前 略プロフィール」、2006年に「モバゲータウン」、 2007年 に「Twitter」、2008年 に「Facebook」、 1.はじめに インターネットはもはや社会生活において 欠かせないツールとなった。インターネット を利用する人は、2005年に6歳以上の全人口 の7割を超え[1]、インターネットは社会生 活において当たり前に利用する道具となった。 中学生の利用者は、2010年に80%を上回り [2]、中学生にとっても、インターネットは もはやなくてはならない存在と言っても過言 ではない。「自分専用の携帯電話を持つ」中 キーワード : 中学生、インターネット、親、安全、技術的理解
Key words : middle-school students, internet, parents, safe, information technical skills
安全意識を高める親の役割
─ 技術的理解が支える情報モラルを背景に ─
Parental Roles in Keeping Middle-School Students Safe on the Internet
in the Context of Parental Information Ethics Raised by Technical Skills
松 村 真木子
MATSUMURA, Makiko 中学生がインターネットを安全に利用する意識を、親子の関係から検討する。中学生 の親子を対象とした調査結果(699票)についてパス解析を実施し、「インターネット利用 における親子の安全意識モデル」を構築した。その結果、親の安全意識については、技 術的な理解が親自身の情報モラルの認識を高め、子どもの安全なインターネット利用に より高い関心を持つことがわかった。こうした親の見守りのもとで子どもはインターネッ トを利用する際、安全に注意を払うようになり、困ったことがあると親に相談すること が検証された。すなわち、親が技術的な知識に裏打ちされた情報モラルを獲得している ことが、インターネットを巡る危険から子どもを守ることにつながる。子どもがインター ネットを安全に使うためには、親が、PCやインターネットの仕組みを技術的に理解し情 報モラルを高め、子どもの安全に気を配るという親役割が「かぎ」となることが明らか となった。2.研究目的 本稿は、インターネット利用における親の 危機管理意識を検証し、子どもの安全利用意 識との関連を検討する。 先行研究により、中学生はインターネット の仕組みを理解すると安全に使うようになる ことが明らかとなっており[12]、大学生に おいても、技術的理解の必要性が指摘され ている[13]。本稿では、安全な利用のために、 親が技術的にPCの設定を理解していること が情報モラルを下支えする効果を検証する。 そして、技術的理解に下支えされた親の情 報モラル理解が、子である中学生のインター ネットの安全利用意識に影響を与える、とい う仮説を検証する。 3.調査及び分析の方法 S市で実施した調査を再分析する。 3-1 調査概要 ① 調 査 対 象 者 中 学 2 年 生( 有 効 票 数 911:男子432;女子413 性別記入なし 66)および親(有効票数700) ② 回収率(中学2年生 911/1008=90%; 親 700/1008=69%) ③ 調査方法 中学校5校で配布・回収 ④ 調査時期 2009年1~2月1) ⑤ 家族番号により親子の票を統合(有効票 数699)して分析 なお、父親18%母親76%と偏りがあるため 区別せずに「親」とする。 3-2 分析方法 「インターネット利用における親子の安全 意識モデル」を構築した。 調査項目は、セキュリティ意識が高いほう が高得点になるよう、逆転項目の処理を行っ 2011年「LINE」など、現在多くの若者が利
用 す るSNS(Social Networking Service) が 次々と提供されている。情報発信の道具であ るブログ(プロフ)は、2005年から利用者が 増加している[4]。 このような背景のもとで、個人のユーザ間 の連絡のやり取りが容易となり、面識のない 人との交流が可能となった。警察庁の調査[5] によると、7.5%の中学生が、「ブログやゲー ムサイトで知り合った人とやり取りしたこと がある」と回答し、「プロフなどに自分や他人 の情報(名前や写真・メールアドレスなど) を書きこんだことがある」生徒は、4.3%で あった。出会い系サイトによる犯罪は減少し ているが、コミュニティサイト(情報の送受 信が可能なサイト)を介して18歳以下の青少 年が巻き込まれた犯罪は、統計を取り始めた 平成22年度1541件、平成23年度1421件、平成 24年度1311件となっている[6]。その他、イ ンターネットを利用する子供たちに懸念され ることは、性的な表現など有害情報に接する ことやネットいじめなどである。 親たちは、子どものインターネット利用に 関して、個人情報の書き込み、暴力的な内容 や性的な内容など反社会的な内容を含むサイ トへのアクセス、詐欺や児童買春などの犯罪、 インターネット上の言い争いや誹謗中傷に巻 き込まれることを心配している[3]。この状 況はアメリカ、カナダ、イギリスをはじめヨー ロッパ諸国においても同様であり、子どもが インターネットを利用するリスクが懸念され て い る[7][8][9][10][11]。 す な わ ち、 インターネット上で子どもの安全を守ること が世界中の課題となっている。各国からの報 告によると、親の見守りの重要性が指摘され ている。
た。事前研究から得られた因果関係の方向性 が認められる項目から、仮説に当てはまる因 子を想定し、潜在変数を設定した。親は、「親 のPC携帯歴」「技術的理解」「親の安全モラ ル理解」「子供の安全への関心」と、子どもは、 「子どもの安全意識」「子どものSNS利用度」 とした。 各潜在変数を構成する観測変数は以下のと おりである2)。「親のPC携帯歴」は、PCと携 帯電話の利用期間の長さ3)、「技術的理解」は、 セキュリティソフトの導入、各ソフト(セキュ リティソフト、OS、ワープロなどよく使う ソ フ ト、Adobe Reader) の アップ デート 実 行4)、無線LANの設定5)、ファイル交換ソフ トの利用、Javaスクリプトの制限、ActiveX の制限、cookieの制限、利用しない無線LAN を無効にする6)、「親の安全モラル」は、情報 セキュリティに関心がある7)、メールに添付 された不審なファイルは開かない、心当たり なのいメールは開かない、個人情報を公開し ない、ネットカフェ・空港・ホテルなどの公 共 のPC利 用 時 に 個 人 情 報 を 入 力 し な い8)、 「子どもの安全への関心」は、家庭で、子ど ものPCや携帯電話の利用について、安全上 ルールが必要である9)、具体的にルールを決 めている10)、「子どもの安全意識」は、PCや携 帯電話でインターネットを使うときに安全に 気をつける11)、PCや携帯電話で安全な使い方 がわからない時に調べるか12)、「子どものSNS 利用度」は、SNS、モバゲーサイトの利用状 況、ブログを読んでいる、ブログを書いてい る13)である。 上記潜在変数に、観測変数「PCや携帯電 話で困った時に親に相談」14)「子どもの携帯 歴」(携帯利用年数)を加えて、共分散構造 分析によるパス解析を実行し、「インターネッ ト利用における親子の安全意識モデル」を決 定した。なお、Amos17を使用し、最尤法に より有意ではない項目を削除し、欠損値があ る場合には分析から除外した。 本調査の先行研究[15]から、インターネッ ト利用は、男女により違いが確認されている ので、モデルによる親子関係は男女別に検証 する。 4.「インターネット利用における親子の 安全意識モデル」による分析結果 1-a群(男子生徒)、2-a群(女子生徒)、2-b 群(女子生徒のなかで、「インターネット上で 知り合った友達がいない」と回答した)群と する。なお、1-b群(男子生徒の中で「インター ネット上で知り合った友達がいない」と回答 した)群については、モデル適合度が低く有 意な結果が得られなかったので割愛する。 4-1 1-a群(男子生徒) モデルで検討した1-a群(男子生徒)結果は、 図 1 に 示 す。 適 合 度 指 標 は、CFI=0.897, RMSEA=0.061, χ²=592.935, p<0.001であった。 観測変数および潜在変数のパス係数(推定値) は表1参照。 4-1-1 1-a群(男子生徒)の親 潜在変数「親のPC携帯歴」から「技術的 理解」へのパスが有意であった。すなわち、 PCおよび携帯電話の経験が長い親は、PCを 安全に設定する技術的な知識があることがわ かった。潜在変数「技術的理解」から「親の 安全モラル理解」へのパスが有意であった。 PCおよびインターネットを技術的に理解し ていると、インターネットを利用するにあた り、メールに添付された不審なファイルを開 かないなど、情報モラルの理解が高まること が確認された。「親の安全モラル理解」から「子
向がわずかであるが認められた。親のその他 の潜在変数および「子どもの安全意識」から 「子どものSNS利用度」へのパスは、有意で はなかった。 4-2 2-a群(女子生徒)の結果 モデルで検討した2-a群(女子生徒)の結 果は、図2に示す。適合度指標は、CFI=0.886, RMSEA=0.060, χ²=592.532, p<0.001で あっ た。観測変数および潜在変数のパス係数(推 定値)は表1参照。 4-2-1 2-a群(女子生徒)の親 潜在変数「親のPC携帯歴」から「技術的 理解」へのパスが有意であった。すなわち、 PCおよび携帯電話の経験が長い親は、PCを 安全に設定する技術的な知識があることがわ かった。男子生徒の親よりも強い影響が確認 された。潜在変数「技術的理解」から「親の 安全モラル理解」へのパスが有意であった。 PCおよびインターネットを技術的に理解し ていると、情報モラルの理解が高まることが 確認された。男子生徒の親と同程度の影響が どもの安全への関心」へのパスが有意であっ た。インターネット利用において、情報モラ ルを理解している親は、家庭で子どもが安全 にインターネットを利用するようにと関心を 示している。 4-1-2 親から「子どもの安全意識」への影響 親の「子どもの安全への関心」から「子ど もの安全意識」へのパスが有意であった。男 子生徒は、親からインターネットを安全に利 用してほしいという関心を受けて、安全に気 をつけるように影響されていた。「子どもの 安全意識」から「親に相談」へのパスが有意 であった。男子生徒は、安全に気をつけよう という意識があると、PCやインターネット で困った時に、親に相談している。 「子どものSNS利用度」へは、「親のPC携帯 歴」からの負のパスが有意であった。また、「子 どもの携帯歴」から負のパスが有意であった。 親がPCや携帯電話を長く利用していると、 さらに、生徒自身が携帯電話を長く利用して いると、男子生徒はSNSの利用を抑制する傾 図1 「インターネット利用における親子の 安全意識モデル」1-a群(男子生徒) -.07* 親の安全 モラル理解 技術的理解 親のPC 携帯歴 子供の安全 への関心 子どもの 安全意識 子どもの SNS利用度 親に相談 子どもの 携帯歴 .29*** .27*** .35** -.13* .54** .23*** χ2=592.935,df=270,p<0.001 CFI=.897,RMSEA=.061 *p<0.1,**p<0.5,***p<0.001 観測変数と誤差項は省略 R2=.137 R2=.147 R2=.164 R2=.037 R2=.056 R2=.214 図2 「インターネット利用における親子の 安全意識モデル」2-a群(女子生徒) 親の安全 モラル理解 技術的理解 親のPC 携帯歴 子供の安全 への関心 子どもの 安全意識 子どもの SNS利用度 親に相談 子どもの 携帯歴 .13** .32*** .40*** .15** .88** .16** χ2=592.532,df=270,p<0.001 CFI=.886,RMSEA=.060 *p<0.1,**p<0.5,***p<0.001 観測変数と誤差項は省略 R2=.222 R2=.214 R2=.081 R2=.081 R2=.107 R2=.069
ネット上で知り合った友達がいるのは、男子 生徒は17%、女子生徒は32%であり、このよ うな生徒たちは、ブログ(プロフ)などSNS を利用して、「面識のない人と知り合う」ので ある[12][15]。 本稿では、「インターネット上で知り合った 友達がいる」生徒の分析を試みたのであるが、 欠損値が多く「インターネット利用における 親子の安全意識モデル」で有意な結果が得ら れなかった。そのため、「インターネット上で 知り合った友達がいない」と回答した生徒に ついて親子の安全意識の関係を、「インター ネット利用における親子の安全意識モデル」 を用いて検討した。いわば、2-b群は、女子 生徒の中でも安全意識が高い生徒であるとい える。 モデルで検討した2-b群の結果は、図3に 示す。適合度指標は、CFI=0.859, RMSEA= 0.069, χ²=592.869, p<0.001であった。 認められた。「親の安全モラル理解」から「子 どもの安全への関心」へのパスが有意であっ た。インターネット利用において、情報モラ ルを理解している親は、家庭で子どもが安全 にインターネットを利用するようにと関心を 示している。しかし、影響は、男子生徒の親 よりもかなり低い。 4-2-2 親から「子どもの安全意識」への影響 親の「子どもの安全への関心」から「子ど もの安全意識」へのパスが有意であった。女 子生徒は、親からインターネットを安全に利 用してほしいという関心を受けて、安全に気 をつけるように影響されていた。男子生徒よ りも、かなり強い影響が認められた。「子ど もの安全意識」から「親に相談」へのパスが 有意であった。女子生徒は、安全に気をつけ ようという意識があると、PCやインターネッ トで困った時に、親に相談している。しかし、 男子生徒よりも影響は低い。 「子どものSNS利用度」へは、「親のPC携帯 歴」からのパスが有意であった。親がPCや 携帯電話を長く使っていると、女子生徒は SNSを利用する方向に影響が認められた。男 子生徒とは異なる傾向を示した。しかし、「子 どもの携帯歴」からのパスは有意ではなかっ た。親のその他の潜在変数および「子どもの 安全意識」から「子どものSNS利用度」への パスは、有意ではなかった。 4-3 2-b群(女子生徒のなかで、「インター ネット上に知り合った友達がいない」と回答 した群) 近年、インターネットを利用した犯罪に巻 き込まれる青少年が懸念されている。そこで、 本調査では、「あなたはインターネット上で知 り合った友達がいますか」という項目をあえ て調査項目に入れた。その結果から、インター 図3 「インターネット利用における親子の 安全意識モデル」2-b群(「インターネッ ト上で知り合った友達がいない」と回 答した女子生徒) 親の安全 モラル理解 技術的理解 親のPC 携帯歴 子供の安全 への関心 子どもの 安全意識 子どもの SNS利用度 親に相談 子どもの 携帯歴 .13** .26*** .51*** .21** 1.04** .17** χ2=592.869,df=270,p<0.001 CFI=.859,RMSEA=.069 *p<0.1,**p<0.5,***p<0.001 観測変数と誤差項は省略 R2=.326 R2=.174 R2=.059 R2=.074 R2=.214 R2=.065
携帯電話を長く利用していると、2-b群は SNSを利用する傾向が認められた。女子生徒 よりも影響は強い。親が、PCや携帯電話を 長く利用していると、SNSを利用しているの であるが、「インターネット上で知り合った友 達はいない」のであり、自分で個人的なやり 取りをしないように気をつけているのであろ う。 安全意識が高い女子生徒は、SNSを活用し ても、インターネット上で面識ない人と友達 にならない。PCや携帯経験が長い親は、安 全に利用するための技術的理解や情報モラル を認識し、かつ、子どもが安全に使うように との関心が高くなり、その見守りの影響が強 いので、子どもは安全な意識が育つ。子ども の安全利用については、親の役割が大きく影 響することが実証された。 「子どもの携帯歴」からのパスは有意では なかった。親のその他の潜在変数および「子 どもの安全意識」から「子どものSNS利用度」 へのパスは、有意ではなかった。 4-4 親の「技術的理解」から「情報モラル」 への影響 「インターネット利用における親子の安全 意識モデル」は、男子生徒、女子生徒および 2-b群それぞれにおいて、親の「技術的理解」 が、親の「情報モラル理解」へ直接効果があ ることを検証した。すなわち、インターネッ トを安全に使うためにPCの設定方法を理解 していることは、情報モラルの理解を高める 影響力を持つ。パス係数の総合効果を表2に 示す。 特に、インターネット上で、SNSを利用し ているが、面識のない人と友達にならない 2-b群では、親が技術的に理解していると、 親の「情報モラル理解」への直接効果を介し 4-3-1 2-b群(「 イ ン ターネット 上 で 知 り 合った友達がいない」と回答した女子生徒) の親 潜在変数「親のPC携帯歴」から「技術的 理解」へのパスが有意であった。すなわち、 PCおよび携帯電話の経験が長い親は、PCを 安全に設定する技術的な知識があることがわ かった。前述の男子生徒や女子生徒の親より も強い影響が確認された。潜在変数「技術的 理解」から「親の安全モラル理解」へのパス が有意であった。PCおよびインターネット を技術的に理解していると、情報モラルを認 識していることが明らかとなった。前述の男 子生徒や女子生徒の親と同程度の影響であっ た。「親の安全モラル理解」から「子どもの 安全への関心」へのパスが有意であった。イ ンターネット利用において、情報モラルを理 解している親は、家庭で子どもが安全にイン ターネットを利用するようにと関心を示して いる。しかし、影響は、女子生徒の親と同程 度であり、男子生徒の親よりもかなり低い。 4-3-2 親から「子どもの安全意識」への影響 親の「子どもの安全への関心」から「子ど も の 安 全 意 識 」 へ の パ ス が 有 意 で あった。 2-b群は、親からインターネットを安全に利 用してほしいという関心を受けて、安全に気 をつけるように影響されていた。男子生徒や 女子生徒よりも、格段に強い影響が認められ た。「子どもの安全意識」から「親に相談」 へのパスが有意であった。2-b群は、安全に 気をつけようという意識があると、PCやイ ンターネットで困った時に親に相談する。し かし、女子生徒と同程度あり、男子生徒より も影響は低い。 「子どものSNS利用度」へは、「親のPC携帯 歴」からのパスが有意であった。親がPCや
の責務と定めている[5]。しかし、子どもの 年齢が低いうちはフィルタリングを利用する ことで機械的に制限できるが、年齢が上がる につれてそれが難しくなる傾向がある[3]。 さらに、年齢が上がるにつれて、インターネッ トを利用する頻度や利用方法が多様化する [3][11]。日本をはじめ、アメリカ、カナダ、 イギリス他ヨーロッパ諸国において親が心配 している主な有害事象は、面識のない人との 友達づきあいやインターネット上で知り合っ た人に会うこと、性的なサイトの閲覧、ネッ ト上でのいじめである。 ところで、親のモラルの低さが、子どもの インターネット利用上よくない方向へ影響し ている場合がある。親が、インターネットで リスクのある行為、たとえば、性的な表現の サイトを閲覧したり面識のない人との交流や 攻撃的な行為をすると、子どももまた同様な 傾向にあるとDowdellは報告した[7]。親が、 よくない役割モデルとなっているのである。 また、寺戸は、ネットいじめの加害生徒の親 子関係について、子が親に抱く信頼感が低い と報告している[17]。 本稿は、中学生の親子関係を、パス解析に よる「インターネット利用における親子の安 全意識モデル」で分析した。その結果、親の 安全意識が高く、子どもがインターネットを 安全に使うように関心を抱いていると、子ど もは安全に使うようになることが検証された。 て、「子どもへの関心」へとりわけ強い効果が 認められた。すなわち、2-b群は、インターネッ トを積極的に利用しているが安全意識が高い 子どもたちである。そして、この群の親は、 子どものインターネット利用への関心がかな り高い。そこでは、親の技術的な知識が、親 自身の情報モラルや子どもがインターネット を安全に利用することへの関心を下支えして いた。そして、親の技術的な知識は、わずか ではあるが、子どもの安全意識にも影響を与 えていることが実証された。 5.考察 子どものインターネット利用において、親 たちは、トラブルに巻き込まれることを心配 している。それは、日本にとどまらず世界的 な傾向である。子どもが有害事象に出会わな いよう、フィルタリングによる規制が提唱さ れている[5] [10][11]。 日本では、青少年インターネット環境整備 法により、平成21年4月以降、インターネッ トが接続できる機器を製造する事業者はフィ ルタリングを提供することになった。親が設 定することを奨励されているが、親が申し出 れば解除できる。この法律では、子どもに携 帯電話を買い与える場合には、子どもが利用 することを申し出ることを保護者の義務と、 インターネット上に有害情報があることを認 識して子どもをしっかり見守ることを保護者 表2 技術的理解の総合効果 親の安全 モラル理解 子どもの安全への関心 子どもの安全意識 親に相談 1-a群 (男子生徒) 0.265 0.076 0.041 0.009 2-a群 (女子生徒) 0.318 0.040 0.036 0.006 2-b群 (女子ネット友達いない) 0.259 0.340 0.035 0.006
した使い方をしていることが明らかとなった。 SNSなど、コミュニティサイトの利用は、 トラブルの温床になるとの見方がある。しか し、SNSの利用をすべて悪いと断定して制限 するのではなく、親がともに安全に気をつけ て使うのであれば、子どもが安全な使い方を 学習する機会となることを指摘しておきたい。 ところで、情報モラルの認識を強化するた めには、PCの設定やインターネットの仕組 みなど技術的な理解が必要である[13][18] [19]と指摘されてきた。そこで、本稿では、 パス解析の結果から、技術的な理解の効果を 測定した。その結果、技術的な理解があると、 情報モラルの理解が高まることが実証された。 技術的な理解とは、PCの仕組みやインター ネットの仕組みを理解したうえで、ウィルス 対策のためセキュリティソフトの導入、利用 するOSやソフトのアップデート、遠隔操作 を防ぐための設定である。このような知識が あると、メールに添付された不審なファイル は開かない、心当たりなのいメールは開かな い、個人情報を公開しないなど危険性の認識 が高まる。モラルとして覚えるのではなく、 その根拠を知ることこそが、情報を安全に使 える力となる。それは、子どもがインターネッ トを安全に利用することや、困った時に親に 相談することにつながるのである。 6.結論 中学生がインターネットを安全に利用する 意識を、親子の関係から「インターネット利 用における親子の安全意識モデル」を用いて 検討した。その結果、親がインターネットを 安全に使うことを認識していると、子どもへ の関心が高まり、子どもは親から見守られて いると感じて、安全に気をつけて使う、困っ そして、子どもはインターネット上で困った ときに、親を頼り相談するのである。さらに、 女子生徒やその中でも特に安全意識が高い 2-b群では、親の関心が子どもの安全意識へ 与える影響力が、どの群よりも格段に強い。 上記Dowdellや寺戸らの研究は、親の負の 要因が子の負の行為に与える影響を対象とし ているが、本稿は、親の正の要因が子の望ま しい行為に与える影響を数値的に検証してお り、この点に独自性を有するものである。 ところで、子どもがインターネット上で SNSを利用していることは、親の安全意識や 子どもの安全意識と直接の関係は認められな かった。男子生徒は、親のPCや携帯電話の 経験が長いほど、自身の携帯電話の経験が長 いほど、SNSを利用していない。男子生徒の ほうが、SNSを利用している生徒が少ないこ とが影響しているのだろう[15]。一方、女 子生徒は、親のPCや携帯電話の経験が長い ほど、SNSを利用している。女子生徒のほう が、積極的にブログ(プロフ)の読み書きを 行っている[15]ためであろう。 親が仕事にインターネットをよく使うとき、 同じように子どもは学習に使う[7]。親子が 同じように活動しているのである。とするな らば、親がPCや携帯電話を長く使っている 場合、女子生徒がSNSで情報のやりとりを積 極的にしているのは、親も同様に活動してい ると推測されるのではないだろうか。また、 女子生徒や特に安全意識が高い2-b群では、 親の関心が子どもの安全意識へ与える影響力 が、男子生徒よりも格段に強かったのである。 このことから、情報モラルを理解しつつ子ど もが安全に気をつけるように気を配っている 親のもとで、子どもは、SNSを活発に利用し ていても、インターネット上では安全に配慮
ため、親向けの情報提供が望まれており、政 府、学校、情報機器を提供する事業者、子ど もの安全を考える民間団体の連携が求められ ている[7][10][11][14]。また、フィル タリングによる制限ばかりではなく、子ども がインターネットを安全に利用する判断力を 養うことが必要である[12][14][20][21]。 そのため、親子で話し合いながら判断力をつ けることができるように、プログラムを構成 することが今後の課題である。 現在、独立行政法人情報処理推進機構、総 務省、経済産業省、警察庁をはじめ多くの団 体が安全教育プログラムを提供している。し かし、その内容は、多岐にわたり、知りたい ことがすぐに探せるものではない。さらに、 多くのサイトは、なぜ危険なのか、技術的な 解説にまでは至っていない。親子が話し合っ て理解力を高められるように、技術的な解説 を含めて、各サイトを利用しやすいように、 道標を提示することを今後の課題としたい。 注 1)調査時期と比べると、昨今スマートフォンの導 入により、安全を懸念する状況はより過酷となっ ているが、親の心配と生徒の安全意識の関係は基 本的には変わらないと考える。 2)潜在変数と観測変数との関係を表1に示す。 3)PCおよび携帯電話について、それぞれ利用期 間を、1年未満(1ポイント)、5年未満(2ポイ ント)、10年未満(3ポイント)、10年以上(4ポ イント)と設定した。 4)各ソフトそれぞれについて、わからない(0ポ イント)、したことがない(1ポイント)、あまり しない(2ポイント)、月に1回(3ポイント)、 常に実施(4ポイント)と設定した。 5)無線LANについて、わからない・購入時のまま たことがあると親に相談することが検証され た。さらに、安全な利用のために、親が技術 的にPCの設定を理解していることが親の情 報モラルの理解を下支えし、子どものイン ターネットの安全利用意識につながるという 仮説が検証された。すなわち、親が技術的な 知識に裏打ちされた情報モラルを獲得してい ることが、インターネットを巡る危険から子 どもを守ることにつながる。 子どもがインターネットを安全に使うため には、親が、PCやインターネットの仕組み を技術的に理解し情報モラルを高め、子ども の安全に気を配るという親役割が「かぎ」と なることが明らかとなった。 7.おわりに 多様なSNSが登場し、個人が簡単に情報発 信できるようになった。その中で、面識のな い人との交流が生まれ、犯罪やネットいじめ に巻き込まれることを、親たちは懸念してい る。子どものインターネット利用は、今や世 界的に大きな課題となっている。子どもを守 るためには、家庭でルールを作ることが推奨 され、親の背を見て子は育つと親の役割が大 きいことが指摘されている[7][10][11][14]。 親は、技術的な知識に裏打ちされた情報モ ラルを獲得していると、子どもが安全にイン ターネットを利用できるように見守る姿勢を 持つようになる。そして、具体的な問題解決 策を持ち合わせることが、子どもの信頼を得 ることになり、困った時に相談をしやすくす る。 それでは、親は、どのように技術的な知識 を高めることができるのだろうか。子どもの ほうがインターネットを使えると嘆く親がい ることも、日本ばかりの状況ではない。その
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10.Byron T.: Safer Children in a Digital world: The Report of the Byron review. Department for Culture, Media and Sport (2007)
11.Sonia Livingstone, Leslie Haddon, Anke Görzig and Kjartan Ólafsson, with members of the EU, Risks and safety on the internet: The perspective of European children. Full findings and policy implications from the EU Kids Online survey of 9-16 year olds and their parents in 25 countries, (2011) 12.松村真木子「技術的理解が高める子どもの安全 意識─中学生を対象とした事例研究─」『埼玉 (1ポイント)、ルーターまたはLANカードを利用 (2ポイント)、ルーターまたはLANカード+パス ワードで利用(3ポイント)と設定した。 6)このことを知らない(1ポイント)、注意して いない(2ポイント)、多少注意している(3ポ イント)、十分注意を払っている(4ポイント) と設定した。 7)全く関心がない(1ポイント)、あまり関心が ない(2ポイント)、少し関心がある(3ポイント)、 とても関心がある(4ポイント)と設定した。 8)6)と同じ。 9)そう思わない(1ポイント)、あまりそう思わ ない(2ポイント)、そう思う(3ポイント)、と てもそう思う(4ポイント)と設定した。 10)決めていない(1ポイント)、決めている(2 ポイント)。 11)わからない(0ポイント)、気をつけない(1 ポイント)、あまり気をつけない(2ポイント)、 気をつける(3ポイント)、とても気をつける(4 ポイント)と設定した。 12)わからない(0ポイント)、調べない(1ポイ ント)、気になるが特に調べない(2ポイント)、 少し調べるがわからなければそのままにする(3 ポイント)、わかるまで調べる(4ポイント)と 設定した。 13)知らないので使ったことがない(0ポイント)、 よく使う(1ポイント)、たまに使う(2ポイント)、 使ったことはあるが今は使っていない(3ポイン ト)、知っているが使ったことがない(4ポイント) と設定した。 14)「親に相談しない」(0ポイント)、「親に相談す る」(1ポイント)と設定した。 謝辞 本研究は、平成20年度科学費補助金(奨励研究)(課 題番号20909036)の成果である。また、本研究の調 査にあたって、さがみはら市都市みらい研究所より 多大なるご協力を得た。ここに謝意を表したい。
学園大学紀要人間学部編』第11号pp.199-209 (2011) 13.松村真木子「情報セキュリティに敏感な一般エ ンドユーザ養成へ向けて─情報セキュリティ意 識調査を事例として─」『情報処理学会論文誌』 第48巻第9号pp.3183-3192(2007) 14.松村真木子「年齢に応じたITセキュリティ教育 の構築に向けて─インターネット利用における 小中学生と親と学校との関係─」『浦和大学論 叢44号』pp.51-65(2011) 15.松村真木子「パソコンおよび携帯電話の技術的 知識を中心とした情報セキュリティ学習プログ ラム─中学生を核とした家族への情報セキュリ ティ知識の伝達─」『平成21年度 自主研究報 告書』さがみはら都市みらい研究所, pp.111-154(2010) 16.文部科学省『子どもの携帯電話等の利用に関す る調査』平成21年 (2009) 17.寺戸武志「ネットいじめと親子関係及び道徳規 範意識との関連について」『伊丹市 平成22年 版研究収録第51報』(2011) 18.梅田恭子・江島哲郎・野崎浩成「情報技術の知 識の高低を考慮した情報モラル指導方略の提 案」『愛知教育大学研究報告』59, pp.075-079 (2010) 19.森幹彦・池田心ら「情報教育に関する大学新入 生の状況変化─京都大学新入生アンケートの結 果から─」『情報処理学会論文誌』vol.51,No.10, pp.1961-1973 (2010) 20.唯野 司『ネット犯罪から子どもを守る』毎日 コミュニケーションズ(2006)
21.Sharples, M. et al. : E-safety and Web 2.0 for children aged 11-16, Journal of computer assisted learning, vol.25, pp.70-83 (2009)
表1 パス係数 1-a 群(男子生徒) 2-a 群(女子生徒) 2-b 群(ネットで知り合った友達いな い女子生徒) 推定値 標準化 推定値 標準誤 差 検定統 計 確率 推定値 標準化 推定値 標準誤 差 検定統 計 確率 推定値 標準化 推定値 標準誤 差 検定統 計 確率 技術的理解 <---親の PC 携帯歴 0. 346 0. 370 0. 139 2. 489 ** 0. 396 0. 471 0. 109 3. 624 *** 0. 511 0. 571 0. 122 4. 199 *** 親の安全モラル理解 <---技術的理解 0. 265 0. 383 0. 048 5. 571 *** 0. 318 0. 462 0. 045 7. 051 *** 0. 259 0. 417 0. 052 4. 985 *** 子どもの安全への関心 <---親の安全モラル理解 0. 286 0. 405 0. 061 4. 655 *** 0. 127 0. 285 0. 047 2. 687 ** 0. 13 0. 243 0. 063 2. 051 ** 子どもの安全意識 <---子どもの安全への関心 0. 540 0. 236 0. 229 2. 355 ** 0. 884 0. 326 0. 325 2. 723 ** 1. 038 0. 463 0. 377 2. 753 ** 子どもの SNS 利用度 <---親の PC 携帯歴 -0 .129 -0 .143 0. 079 -1 .645 * 0. 145 0. 265 0. 052 2. 772 ** 0. 211 0. 271 0. 078 2. 698 ** 子どもの SNS 利用度 <---子どもの携帯歴 -0 .071 -0 .130 0. 039 -1 .832 * -0 .037 -0 .102 0. 023 -1 .584 -0 .011 -0 .019 0. 046 -0 .231 親に相談 <---子どもの安全意識 0. 230 0. 463 0. 058 3. 987 *** 0. 158 0. 263 0. 056 2. 84 ** 0. 174 0. 256 0. 077 2. 243 ** PC 利用歴 <---親の PC 携帯歴 1 0. 803 1 0. 929 1 0. 886 携帯電話利用歴 <---親の PC 携帯歴 0. 351 0. 391 0. 137 2. 566 ** 0. 283 0. 352 0. 081 3. 507 *** 0. 4 0. 476 0. 094 4. 27 *** セキュリティソフトの導入 <---技術的理解 0. 141 0. 309 0. 031 4. 596 *** 0. 177 0. 444 0. 026 6. 793 *** 0. 144 0. 398 0. 03 4. 834 *** ソフトのアップデート <---技術的理解 0. 964 0. 605 0. 115 8. 355 *** 0. 841 0. 581 0. 101 8. 319 *** 0. 871 0. 621 0. 123 7. 067 *** 無線 LAN の設定 <---技術的理解 0. 439 0. 417 0. 072 6. 071 *** 0. 383 0. 409 0. 063 6. 112 *** 0. 436 0. 451 0. 082 5. 35 *** ファイル交換ソフトの利用 <---技術的理解 1 0. 660 1 0. 734 1 0. 713 Java スクリプトの制限 <---技術的理解 1. 391 0. 961 0. 106 13 .082 *** 1. 289 0. 965 0. 08 16 .05 *** 1. 331 0. 963 0. 11 12 .138 *** ActiveX の制限 <---技術的理解 1. 379 0. 953 0. 106 12 .998 *** 1. 307 0. 959 0. 082 15 .942 *** 1. 325 0. 952 0. 11 12 *** cookie の制限 <---技術的理解 1. 376 0. 946 0. 106 12 .925 *** 1. 299 0. 956 0. 082 15 .865 *** 1. 339 0. 948 0. 112 11 .955 *** 利用しない無線 LAN を無効 <---技術的理解 1. 090 0. 728 0. 105 10 .334 *** 1. 066 0. 771 0. 085 12 .475 *** 1. 192 0. 833 0. 114 10 .465 *** 情報セキュリティに関心 <---親の安全モラル理解 0. 424 0. 383 0. 067 6. 293 *** 0. 445 0. 431 0. 06 7. 409 *** 0. 61 0. 501 0. 088 6. 899 *** 不審添付ファイル開かない <---親の安全モラル理解 1 0. 906 1 0. 93 1 0. 905 心当たりなのいメールは開かない <---親の安全モラル理解 1. 068 0. 928 0. 050 21 .177 *** 0. 897 0. 915 0. 041 21 .798 *** 0. 888 0. 887 0. 062 14 .28 *** 個人情報を公開しない <---親の安全モラル理解 1. 104 0. 748 0. 075 14 .770 *** 0. 894 0. 678 0. 069 12 .979 *** 0. 821 0. 601 0. 097 8. 432 *** 公共 PC 利用時注意 <---親の安全モラル理解 1. 111 0. 548 0. 120 9. 250 *** 0. 968 0. 577 0. 095 10 .174 *** 0. 988 0. 529 0. 141 7. 03 *** 子どもにルール必要 <---子どもの安全への関心 1 0. 702 1 0. 507 1 0. 532 ルールあり <---子どもの安全への関心 0. 703 0. 528 0. 192 3. 668 *** 1. 104 0. 623 0. 378 2. 924 ** 1. 026 0. 646 0. 37 2. 772 ** 安全に気をつける <---子どもの安全意識 0. 564 0. 465 0. 140 4. 025 *** 0. 651 0. 541 0. 197 3. 299 *** 0. 682 0. 519 0. 24 2. 849 ** 安全な使い方調べる <---子どもの安全意識 1 0. 789 1 0. 728 1 0. 656 SNS <---子どもの SNS 利用度 1 0. 498 1 0. 392 1 0. 491 モバゲーサイト <---子どもの SNS 利用度 1. 405 0. 735 0. 166 8. 449 *** 1. 295 0. 556 0. 215 6. 038 *** 1. 314 0. 725 0. 2 6. 582 *** ブログを読む <---子どもの SNS 利用度 1. 884 0. 936 0. 203 9. 288 *** 1. 283 0. 657 0. 2 6. 424 *** 0. 982 0. 624 0. 16 6. 124 *** ブログを書く <---子どもの SNS 利用度 1. 989 0. 947 0. 214 9. 303 *** 2. 238 0. 949 0. 351 6. 384 *** 1. 651 0. 934 0. 245 6. 746 ***