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クリーンエネルギー研究センター 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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クリーンエネルギー研究センター

渡辺政廣 平岡賢三

 ここでは,表記センターの設置の背景や,その部 門の研究活動の概要を紹介させて頂く.詳細につい ては,ホームページhttp://www.clean.yamanashi. ac.jpをご参照頂きたい.

1.センターの概要

 クリーンエネルギーに関する研究を推進し,省エ ネルギー,地球環境問題の解決に貢献することを目 的に,研究2部門(燃料電池,太陽電池・環境科学 (教授2名,助教授2名))と,共同研究部門(客 員教授1名)で平成13年4月に新設された.  人類は,この僅か20年間に有史以来の消費量に匹 敵する化石エネルギー資源を消費して来た.その量 は50年後には更に数倍にもなると予測されている. 現在既に,この大量消費が原因で,地球の温暖化や 酸性雨などによる環境汚染が顕在化している.他 方,先進国の多くが大きく依存している原子力は, 核事故の懸念と核廃棄物処理の問題を抱えている. それ故,発展途上国を含む今後のエネルギー消費拡 大に対応する新たな省エネルギー・無公害技術の開 発が,人類焦眉の課題となっている.  ところで,渡辺政廣教授らは,三十数年来,各種 燃料電池の触媒,電極,電池材料の設計などの基礎 研究を行い,この分野で世界をリードする研究成果 を挙げ,また産業界の技術発展にも貢献してきた. 他方,平岡賢三教授らは,同じく永年の低温プラズ マ反応や星間反応のシミュレーション実験により, 星間反応が低温トンネル化学反応で進行することを 新たに発見した.また,それが太陽電池などの材料 であるアモルファスシリコンの大型,低コスト製造 につながることを明らかにし,大きく注目されてい る.本学は,このような国内外に誇る研究成果を, 今世紀の最大課題であるエネルギー・環境問題の解 決に役立てるため,クリーンエネルギー研究セン ターを新設した(図1).  燃料電池は,天然ガス,石油などをクリーンな水 素燃料とし,その化学エネルギーを高効率・無公害 に直接電気エネルギーに変換する手段である.電気 自動車,家庭用電熱併給システム,或いは携帯機器 などの電源として活発な開発が行われ,次世代基幹 産業への発展が期待されている.特に,数10年後の 水素エネルギー時代には,水素をそのまま使える理 想的な発電手段となる.他方,太陽電池は再生可 能,無尽蔵な自然エネルギーの利用手段である.将 来の大量普及の鍵は大面積・低コスト化にある.将 来は,日中に太陽電池で水電解により水素を作り, これを用いた燃料電池で,何時でも何処でも電気を 得ることが出来る理想的な循環型社会が実現される (図2).これに加えて,バイオマス利用研究もク リーンエネルギー利用社会を構築する上で重要な課 題である.  本学には,バイオマス利用研究やナノ材料設計分 野で国際的に活躍する研究者や,熱利用の専門研究 者も多い.そこで,今回設置された特色有るクリー ンエネルギー研究センター・一・一・を中核として,更に,こ れらの分野も加え,クリーンエネルギー研究全般の COE(研究所)に発展させていきたいと熱望して いる.

2.燃料電池部門の研究

 専任の渡辺政廣教授,宮武健治助教授と,研究協 力者の内田裕之教授(工学研究科自然機能開発専 攻)のこれまでの研究成果の概要を以下に示す.  燃料電池は,水素などの酸化しやすい燃料物質と 空気中の酸素とを間接的に反応させ,直接電気を得 る発電装置である.この電池は,図3に示すよう に,イオンを通す電解質と,アノード,カソードと 呼ばれる2つの電極から構成され,これ1個(単セ

ル:厚さは高々1mm以下)で約0.5∼1Vの電圧

がえられる.通常,数百個直列に繋いで使う.その 中で使われる電解質の種類によって,運転温度(室 温∼1000℃)と用途(携帯用電源∼発電所規模)が

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負荷    罐㎡癒輔講灘癖難齢鍮輪〉

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       基礎研究レベルの向上       w燃㍊蘂漉叢寧

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      、        人材育成 鮒墨械 図1 センター設置目的と期待される効果

一θ

麗力  熱 費沓磯蔦・総灘〉

d曇燃料電一

図2 新技術によるゼロエミッション未来社会 異なる.  従来の火力発電では,原理的に出来るだけ温度を 上げないと高効率が得られない.しかし,発電用 タービンの耐熱限界から効率改善に限界があり,そ の上,温度を1300℃以上にすると,酸性雨源となる 燃焼排気中のNOxが急増してしまう.ところが, 燃料電池は発電原理が異なり,高温でなくても高効 率(CO2の排出低減)が得られ,しかも運転温度が 低いためNOxなど公害物質の排出が皆無となる. これが,世界的に国を挙げて自動車用や家庭用の電 源としての研究開発が行われている所以である.  燃料電池の原理は,既に百数十年前の1839年に発 明されたにも拘らず,特殊用途を除き,今日まで実 用化出来なかった.その主な理由は,図4に模式的 に示した単セルにおいて,役者や機能が揃わなかっ 蒙燃難 H,O

  空気

  一〇2

        電解質  多孔質アノード     多孔質カソー“一一一ド H、→2H++2・e− QH++t/。0、・2百謝、O   全電池反応:H2+’/2 02→N,O     図3 燃料電池の原理図   撚㌶物.磁鐵物=ボール処理    雛纒触蝶=プレーヤー 當縫携耀=ゴール前フォーメー一シ$ン     電解質:フイー・一・一一ルド 図4 理想の燃料電池に求められるもの た事に起因する.即ち,燃料電池は,そのサイズの 大小を問わず,化学,物理,機械,電気,制御工学 などの総合的な工学を必要とする化学プラントであ るが,このプラント性能が実は厚さ僅か1mm以下 の単セルの材料・設計・製造に関係するナノテクノ ロジーに握られていて,それらの学問,技術が未成 熟であったためと言える.  渡辺等は,この点をいち早く認識し,原子分子レ ベルの学問的な解析・設計(ナノテクノロジー)研 究と,企業との積極的な共同研究による知見の実用 化研究に,過去三十数年来,一貫して取り組んでき た.これらを通じて,以下に要約する新たな概念の 提案や,新しい発見など,燃料電池の実用化に向け て重要な貢献をしてきた.その論文の大部分は評価 の高い国際誌に発表され,引用回数が最高二百四十 数回のものを筆頭に,100回以上のものが多数あ り,学術的評価も極めて高い.その内容は,各種燃 料電池の電極触媒,ガス拡散電極,電解質の設計や

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現象解明,燃料精製などの研究である.例えば,こ れらを背景に平成15年度から本学が5年間国から受 託するリーディングプロジェクト「次世代型燃料電 池」は,国の「燃料電池実用化戦略研究会」が,2001 年8月,産学官の協力の下に国家的戦略を以て推進 すべき最重要技術課題として提言している次世代技 術に全く合致している.  荷変動に対応でき,そのインパクトは極めて大  きい. ⑤非フッ素系,高温作動炭化水素系電解質の開発   これまでに,室温から120℃の領域で従来膜  の10倍の導電率を示す電解質を開発し,大幅な  コストダウン,高温作動によるシステム簡素  化,高効率化の可能性が示されつつある. (1)アドアトムによる触媒設計と触媒機構解明  我々は,近年のナノテクムードに先立つこと25年 以上前に,触媒表面を原子レベルで修飾すると新機 能が発現できることを発見,以来,広範な触媒研究 方法に発展させ,近年の化学・物理分野の活発なア ドアトム研究の先駆けをなしている. (2)リン酸形燃料電池(PAFC)用触媒,および電   極の設計,寿命評価法の確立

 我々のPAFCの基礎研究成果が, PAFC工業化

過程で多く活かされている.また,これを基礎に産 学官の大型共同研究を実施し,加速寿命評価法を確 立した.現在,JIS及び国際標準化に向けた検討が なされている. (3)高分子形燃料電池(PEFC)の実用化に向けた   5大課題の抜本的解決研究  ①燃料ガス中の被毒ガス(CO)の完全除去ゼオ   ライト触媒を開発(企業評価中)    システムのソフト・ハードの大幅なコンパク   ト化と,効率の5%以上の向上を可能にする.

 ②新規耐CO被毒Pt一卑金属合金の発見と新触

  媒機構の提案    燃料電池実用化ネックの一つは,運転中の触   媒被毒である.低コスト,耐久性触媒に道を開   く.現在,燃料電池試作車に広く使われている   Pt−Ru触媒は20年前に我々が提案したもの.  ③Pt一卑金属合金高活性酸素極触媒の開発と新触   媒機構の提案    燃料電池実用化ネックの一つである,触媒コ   ストまたは効率アップで,1/20コスト化また   は10%効率向上の可能性を示してきた.  ④完全無加湿電解質膜の開発(膜トップ企業に技   術移転する共同研究中)    膜への外部加湿を要しないので,水分制御シ   ステムが不要で電池の低コスト化,コンパクト   化(2/3)ができ,氷点下の発進,急激な負 (4)低温作動固体酸化物形燃料電池(SOFC)の研  究  セラミックス主体の1000℃運転燃料電池を,10年 以上前,独自に,700−800℃で運転できる新概念を 提案し,材料選択幅増,低コスト化の可能性を実証 してきた.近年,より高効率発電,電気自動車電源 などを睨み,世界中でこの研究が活発化している.  以上の成果は,多くの卒業生の献身的研究,前燃 料電池実験施設,電気化学エネルギー変換研究室の 運営費,科学研究費補助金,産学官共同研究費, NEDO(提案公募研究)やJST(戦略的基礎研究) その他エネルギー関連の大きな委託研究費に支えら れ,今日までの積み重ねにより達成されたものであ る.これら多くの支援に心から感謝すると共に,今 後の更なる社会への貢献を誓うものである.

3.太陽電池・環境科学研究部門の研究活動

 現職の平岡賢三教授,佐藤哲也助教授が,これま でに本学で行ってきた研究活動を以下に紹介する.  「トンネル現象」は量子力学に基づく「原理的揺 らぎ」により発現する.量子力学は「微視的世界の 物理化学法則」として,1930年前後に物理学および 化学における重要な概念として誕生した.これを 「トンネル現象の第一期」とみなすことができる. この時期,原子核物理学の分野でα崩壊や原子核 分裂がトンネル現象として説明された.この約30年 後,1960年前後に「トンネル現象の第二期」が訪れ る.これは言うまでもなく「固体内電子トンネル現 象」であり,電子工業における一大分野として発展 を遂げた.そして,1990年前後から誕生したのが 「原子および原子集団のトンネル現象」である.こ れは,空間的な多自由度をもつ原子および原子集団 のトンネル現象を対象とする点で,第一期,第二期 とは大きく異なる.この原子および原子集団の揺ら ぎに由来する量子効果の研究はこの10年間に大幅な 進展を見せている.これは,「トンネル現象の第三

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期」の到来を告げるものである.  物理化学の分野では,これまで,種々の分光法に よって,分子内および分子間におけるトンネル現象 の解明が着実に進んでいる.しかし,トンネル反応 を合成化学へと展開した例はこれまで見られなかっ た.平岡賢三教授らは,10Kという極低温における 物質合成研究を開始し,以下のような従来の化学反 応の常識を覆す多くの新しい研究成果を上げてい る. (1)宇宙における物質進化の解明:星は暗黒星雲か   ら生まれる.光が射し込まない暗黒星雲の温度   は10Kという極低温にある.この暗黒星雲にお   いて,活発な物質進化が起ることが電波望遠鏡   による観測で明らかになった.暗黒星雲におけ   る物質進化は水素原子が関与する星間塵上での   極低温固相トンネル反応によって引き起こされ   るという仮説が立てられた.しかし,この仮説   は検証されることなく,今日に至った.平岡教   授等は,極低温における原子トンネル反応によ   る物質合成を世界で初めて開始し,宇宙で起る   トンネル現象の重要性を確認した.生命の進化   に必須な基本分子,ホルムアルデヒドは,宇宙   にあまねく存在する一酸化炭素(CO)が宇宙   塵に吸着し,これが水素原子と反応することで   合成されることをはじめて明らかにした. (2)彗星の謎を解明:百武彗星やヘール・ポップ彗   星において,アセチレン(C2H2)とエタン(C2   H6)が観測されるにも拘わらず,両者の中間   生成物であるエチレン(C2H4)が観測されて   いない.また,地球惑星系でも,同様の観測結   果が得られている.平岡教授らは,この天文学   の謎を水素原子とアセチレンの極低温トンネル   反応の観測で解き明かした.すなわち,初期反   応,H+C2H2→C2H3が律速となり,後続反応が   はるかに速く起り,最終生成物のエタンになる   からである.このように,トンネル反応は極め   て高い選択性を有し,多彩な特性を有する. (3)低温ほど進むトンネル反応:平岡教授らは,こ   れまでに取り扱った全てのトンネル反応が低温   ほど速く進むことを発見した.通常の化学反応   は,温度の上昇と共に速く進むので,得られた   結果は従来の化学反応論の常識を覆すものであ   る.この実験結果は大きな反響を呼び,科学雑   誌,サイエンス誌に招待論文として掲載され ・ 水素原子 ・・水素分子 蜘シラン分子 真空蒸着法による シラン薄膜の形成  ㍗十李

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  膜

  た. (4)薄膜半導体の合成:低温ほど速く進む原子トン   ネル反応の性質を利用して,薄膜半導体の合成   に着手した.10Kのシラン(SiH4)やゲルマン    (GeH4)固体薄膜に水素原子を照射したとこ   ろ,アモルファス半導体薄膜が迅速に合成され   た.現在,大面積TFT,フレキシブルフィル   ム上への薄膜半導体などの合成を行い,太陽電   池や液晶基板製造に関する基礎技術の蓄積と工   業化への展開を図っている.    以上の太陽電池関連の研究に加えて,以下の   ような環境科学に関する研究を広範に行ってい   る. (5)超高感度環境分析法の開発:超高感度環境ガス   分析用として,パルス電子線型高圧質量分析   法,およびペニングイオン化法,また液体中の   イオンの分析法としてレーザーイオン化法を開   発している.レーザーイオン化法は,ノーベル   賞の対象となったエレクトロスプレーよりも高   感度を有することが明らかとなり,新しい環境   試料,生体試料の分析法として世界的に注目さ   れている. (6)地球環境負荷化合物の分解と有効利用法の開   発:平岡教授らは,セラミック担体に担持した   メゾスコピッククラスター金属触媒にマイクロ   波を照射することにより,金属触媒のみを選択   的に局所加熱して,環境負荷化合物を水素還元   あるいは部分酸化して無害化し,さらに分解生   成物を資源として再利用する方法を開発した.   この方法によれば,従来法に比べて消費電力を   桁違いに軽減でき,また資源として再生できる   という画期的特徴を有する.現在,工業化に向

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  け,実験プラントを立ち上げている. 研究成果   1.原著論文:約180報   2.国際会議等招待講演多数

  3.学会賞受賞4件

  4.新聞,テレビ報道等多数  以上の成果は文部省科研費ならびに通産省関係プ ロジェクト4件(総額約4億円)により達成された ものである.

4.客員教授部門

本部門は,学外の優れた研究者,技術者を期限付 きの教授として招聰し,学部,大学院生を対象とし て,研究や技術開発の面白さ,重要さを講演や講義 を通して教授し,さらに,共同研究課題を通じて, ニーズ,シーズの共同発掘,研究成果の実用化を促 進し,併せてこれに参加させる大学院生のフィール ドリサーチ指導にも参画してもらう事を意図して設 置された.現在,トヨタ自動車㈱技監 中村徳彦氏 が教授を併任し,期待された成果を着実に挙げてい る.  以上,新設のクリーンエネルギー研究センターの 概要と研究活動を紹介した.読者の今後のご支援, ご鞭燵を切にお願い申し上げます.

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