重度知的障害者の遅延見本合わせ : 見本刺激提示法及び遅延時間の検討
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(2) 目次. 1問題と目的・……一……一一一一………・一……一一・・一一・・…1 1 コミュニケーションとしての言語の重要性 一…一一一…一一…一一一1. 2 重度知的障害児(者)の 言語,コミュニケーション手段における研究 一…一一…一一・2 3 見本合わせに関する研究 一一一一一一一…一一…一一…一一一一…一…3. 4 言語と条件性遅延見本合わせおよび本研究の目的 一一…一一一一4. H実験1. 一一・・…一…一…一…一一… @一一一・・一一… 一一・… 一一一… 一一一・一一・9. 1 目的. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・. X. 2 方法. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一. X. 3 結果. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一. P7. 4 考察. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・. Q0. 一顧一一一・一一一隠一一.一ロー一,一・腫一一覇■一一一一一一,一一一褥一一一騨齢一一一一胴一一一一翻一・. Q4. 1 目的. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一. Q4. 2 方法. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一. Q4. 3 結果. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一. R6. 4 考察. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・. U8. 皿実験2. V 要約. ・一一購一一一日一一一日葡一一一隔■r一一・國鱈一一一5■一一一甲一一一日繭一一日旛一一一一,一騨聰一一一・. V7. V[文献……・・・………・一一……・一・…・一……一一・……・…81. 謝辞 資料.
(3) 1. 問題と目的. 1 コミュニケーションとしての言語の重要性 人間の発達とともにコミュニケーションの手書も飛躍的に発達してきた。今 日,人と人との直接的・対面的コミュニケーションのみでなく,電話やパソコ. ンや宇宙通信など様々な機器を駆使したコミュニケーションがなされている (坂口,1991)。. コミュニケーション(Communication)について,広辞苑(岩波書店)では,. (1)社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達・言語・文字 その他知覚・聴覚に訴える各種のものを媒介とする。 (2)動物相互間での身振りや音声などによる心的内容の伝達,と説明している。. 新版心理学事典(平凡社)によれば,「一般的には,人々がいろいろな記号 を用いて,記号システムとしてのメッセージを構成し,それを通路である一定 のチャンネルをとおして伝達あるいは変換する過程と解されている。このよう な過程を心理学的領域においては,変容過程あるいは影響過程としてとらえる ことが多い」と書かれている。. 記号の中でも高度なのは,人間のみが用いる「言語」である。言語といえば 一般的に自然言語,すなわち音声言語を意味している。音声言語は主として任 意の音の,任意の組み合わせにより構成された単語を最小単位とし,この単語 を配列して表出することにより,自己の考えや感情等を他者に伝達したり(言 語の表出の側面),他者のそれを理解したり(言語の理解=受容の側面)する 働きを有している。この言語の働き(機能)はコミュニケーション機能と呼ば れる。. 言語という高度な記号を媒介として,人は社会生活を送っている。言語は, 重要な役割がある。. .1.
(4) 2重度知的障害児(者)の言語・コミュニケーション手段における研究 ヒトは生後にその所属する言語集団の中で単語という音声の信号体系を学 習する必要がある。健常児はほぼ1歳頃までに他者から発せられた音声による 単語の意味を理解し,他者に対して音声による単語を発するようになり,その 後,音声による単語の理解と表出の数を増大させていく。重度知的障害児・者 は,長期にわたる音声言語訓練によっても音声による単語の理解や表出が可能 とならないことが指摘されている(Fulwiler and Fouts,1976;Lovaas, Koegel, Simmons, and Long,1973;Salvin, Routh, Foster, and Lov句oy,1977)。しかも獲得. されたとしても般化,自律性,把持において困難である(Ricks and Wing,1975). ことが示されている。コミュニケーション手段の獲得は生活における必要充足 のためばかりでなく,学習や社会参加の機会を得るための不可欠な条件であり,. 逆に獲得できないまま日常生活に順応することは自立への意欲とカを失わせ, 発達全体の停滞につながる(小島,1987)。そこで,重度知的障害児・者に音声. 言語を補助したり,音声言語を代替したりする補助・代替コミュニケーション ・システムの導入が考えられる(藤田,1993)。. 補助システムは,いくつかすでにスピーチを獲得している場合やこれから獲 得する可能性を持った子どもなどに対して,すでに獲得しているコミュニケー ション手活の機能を高めるために補助的に用いるコミュニケーション手段のこ とであり(野村・伊藤・伊藤1992),絵,写真,文字など(小島,1987;McDodnald. and Schultz,1973)があげられる。代替システムは,スピーチにとって変わるコ ミュニケーション手段のことであり(野村・伊藤・伊藤1992),手話,身振り, 指文字など(小島,1987;Lloyd and Karlan,1984)があげられる。. 補助システムや代替システムである,絵・写真・手話・身振りなどは,訓練 手続きが容易であるため,初期のコミュニケーション技能として獲得させるの に適している(Bonvillian and Nelson,1976)。これらの手段を獲得するとその結. 果として,話し言葉の理解と表出が促進されることも示されている(Romski, Lloyd and Sevcik,1988)。このような補助・代替コミュニケーション手段を獲. 一2一.
(5) 得させる研究は,1970年代後半から欧米や日本で盛んに行われてきた (Beukelman and Mirenda,1992;Bonvillian and Nelson,1976;Franklin,Mirenda and. Phillips,1996;藤田,1978;林・松本・岩立・小島,1989;野呂・山本・加藤, 1992;Remington and Clarke,1993)。. 初期のコミュニケーション手段の獲得にあたり,見本合わせによる方法があ るとされており,Keogh and Reichle(1985)は,具体物と絵や写真の二次元刺激. との関係がわかることが重要であることを示唆している。表出言語・理解言語 を殆ど持たない重度知的障害児(者)に対して,見本合わせは,コミュニケー ション手毅の獲得のための基礎的技能を高めていくのに必要である。. 3 見本合わせに関する研究 見本合わせは,見本刺激と比較刺激との対応関係から同一見本合わせ,象徴 見本合わせ(“条件性見本合わせ”とも言われている。以下“条件性見本合わ せ”という用語を用いる),非見本合わせに分類され,さらに時間的関係から 同時見本合わせと遅延見本合わせに分類される(中島,1995)。. 重度知的障害児(者)に補助・代替コミュニケーション手段を獲得させるた めには,そのシンボルが意味するものを理解したり,表出したりできるように. することが必要であり,見本合わせはその技能の確立に重要な要素である (Romski, Lloyd and Sevcik,1988)。そのため,様々な見本合わせに関する研究. がこれまで数多く行われてきている。 重度知的障害児(者)を対象とした近年の研究では,Heller, Albem and Romski. (1995)によって,音声による指示対象の理解を促進するために「音声」,「物の. 手がかり+音声」,「身振り動作の手がかり+音声」のどの条件が効果的であ るかの比較研究が行われている。しかし,一定の結果は得られなかったことが 報告されている。また小田(1998)は,重度知的障害児に対して,物の名前の理. 解の指導を行っており,「写真」単独モードと「身振り」単独モードではどち らが理解の獲得が早いかを比較した。その結果,小田(1998)は写真の方が早く. 一3一.
(6) 獲得されることを明らかにしている。東(1998)は,見本刺激が「写真と音声」. の同時法の場合と「身振りと音声」の同時法の場合ではどちらの見本合わせが 早く学習されるかを比較した。その結果,「音声+写真」の見本刺激条件の方 が見本合わせ学習が早く成立することを明らかにした。. これらはいずれも同時見本合わせ法による研究であり,選択刺激は,常に参 加者の目の前に置かれた状況であった。日常生活場面において,養育者等から 指示された物が常に目の前にあるとは限らない。目の前にない物であっても離 れた所から指示対象物を持ってこれるようになることが重要であると考えられ る。この状況は,遅延見本合わせに相当する。. 遅延見本合わせが成立するためには,遅延中に見本刺激を忘れないようにす る行動が必要となる。梅津(1967)は,この行動を「中継ぎ行動」とよびこの「中 継ぎ行動」は,言語行動の基礎を成す象徴行動であるという。鹿取(1986)は,. 「遅延見本合わせは,象徴行動の形成を促進するための課題である」とし,遅 延見本合わせの重要性を指摘している。. この遅延見本合わせが成立することは,指示されたものが目の前になくても 持ってこれるようになることを意味しているといえる。このことは,日常生活 の中でも使用できるコミュニケーション手段の一つとなりうると考えられる。. 4 言語と条件性遅延見本合わせおよび本研究の目的 音声で物品の名称を聞いて,それに対応した物品が選択できない(音声理解 言語が獲得されていない)重度知的障害児(者)に対しては,音声名にかわる信. 号として身振りや写真(絵)が導入されてきた(藤i田,1978;小島,1987; Remington and Clarke,1993)。物品の音声名を聞いて,それに対応する物品を選. 択する機能は,音声理解言語の機能である。この機能は,音声名を見本刺激と する条件性見本合わせの機能でもある。音声の代わりに身振り動作や写真(絵). が用いられても,理解言語の機能であることに違いはない。したがって,この 機能は身振り動作や写真(絵)を見本刺激とする条件性見本合わせの機能でも. 一4一.
(7) ある。. 本研究の対象となった参加者は4名ともに物晶に対応した様々な身振り動作 の模倣が困難であり,かつ身振り動作の弁別も困難であった。小田(1998)は,. この4名を対象として,音声に代わる信号として写真と身振りを導入し,理解 の機能と表出の機能,要求の機能と命名の機能の獲得のされ易さを比較した。. その結果,写真を用いた命名の理解(受容)の機能が最も容易に獲得されるこ とを明らかにした。東(1998)は小田(1998)の研究を発展させ,被らが写真 を用いてコミュニケーションができるようになるための前提として,写真を見 本刺激とする条件性(非遅延)見本合わせ学習を行い,写真に音声名を同時提 示する方法の有効性を明らかにした。. 言語の機能の中でも,事物・事象・行為・状態の名称の理解の機能は,それ ら実際の事物・事象・行為・状態等を別の信号(音声,身振り,写真・絵,文 字等)に置換し,その信号によって現前しない(見えない)事物・事象・行為 ・状態等が分かる機能を意味している。「分かる」機能とは,時間と空間が隔 てられていても,置換された信号に対応した行動がとれることを意味している。. 例えば,トイレそのものの所に連れて行かれなくても,音声で「トイレ」と言 われたり,トイレの身振りを示されたり,トイレの写真(絵)を示されたとき,. トイレに行き,排尿(排便)ができる場合のように,実際の刺激が別の刺激に 置き換えられて提示されても,その信号に対応した行動がとれることを意味し ている。ここでいう重要な機能とは,置換された信号が提示され,その信号の 意味する行動を遂行しようとしたとき,実際の刺激が空間的に隔てられていて 見えないこと,換言すれば,置換された信号が提示され,その信号の意味する 行動を遂行するまでに時間がかかることを意味している。この機能はまさに条 件性遅延見本合わせを遂行することができるための精神機能そのものである。. 小田(1998)や東(1998)の研究は,条件性見本合わせの研究であり,実際の 信号を別の信号に置き換えて,その信号の意味する行動を遂行するという機能 を獲得させている。しかしながら,遅延条件が導入されていない。したがって,. 彼らの研究は,言語の機能に含まれる一段高次の「置換された信号に対応する. 一5一.
(8) 行動が時間・空間を隔てても遂行できる」機能を形成させる研究ではなかった。. この機能をここでは遅延機能と呼ぶことにする。こうした言語の「信号置換機 能」と「遅延機能」を検討していくためには条件性遅延見本合わせ課題を用い ることが適している(鹿取,1986)。. 音声言語,特に事物・事象・行為・状態等の音声名(単語名)は見本合わせ における条件性見本刺激と機能的に等価であると言える。条件性見本合わせに おける条件性見本刺激が遅延事態で刺激制御の機能を有したとき(たとえば,. 父親に「新聞」と言われ,ドアの外の新聞受けにある新聞を取りに行って,父 親のところに持ってくることができるようになったとき),この条件性見本刺 激はまさに言語の機能そのものを有していると言えよう。信号置換機能と遅延 機能を有した条件性見本刺激である言語を獲得すると,「さっき」「あとで」, 「昨日」「今日」「明日」「明後日」,「先週」「今週」「来週」,「先,月」「今月」「来. 月」,「去年」「今年」「来年」,「春」「夏」「秋」「冬」といった時間に関する概. 念を信号に置換できるようになる。このような時間に関する概念を信号で置換 できるためには,少なくとも体験した事象を信号に置換し,記憶しておかなけ ればならない。「さっき」体験したことを信号に置換して現在まで記憶できな ければ,「さっき」という概念は獲得されない。したがって,例えば昨日リン ゴを食べたことを記憶しておかなければ,「昨日食べたリンゴは美味しかった ね」とか「昨日食べたリンゴと同じりんご食べたい」といった言語を理解する ことも,表出することも不可能である。よって,このような言語の機能を獲得 できるためには,先ずは,条件性遅延見本合わせにおいて,遅延時間が短期記 憶の限界を超える時間まで延長できることがきわめて重要な課題となる。. 視覚刺激に関する短期記憶の時間は10秒程度であり,最大に見積もって30 秒と言われている。しかし,視覚刺激を言語に置換してリハーサルを行い,長 期記憶の貯蔵庫に転写できれば何日間でも,何週間でも,何カ月間でも,時と して何年でも記憶しておくことが可能となる。しかしながら,重度知的障害児 (者)は信号置換機能にも,短期記憶の欠陥に起因する遅延機能にも欠陥があり,. 表出言語も理解言語も獲得できていないことが多い。このような重度知的障害. 一6..
(9) 児(者)に言語の機能を獲得させるにはどのようにすればよいのかが重要な研究 課題となるが,この領域の研究はまったくと言っていいほど行われていない。. このような状況の中で,江角(1991)は,動作模倣も可能でない重度知的障 害児を対象にして,身振りを見本刺激,実物を選択刺激とする条件性遅延見本. 合わせ学習を行い,遅延時間を20秒まで延長させることに成功している。し かしながら,江角(1991)は遅延時間を30秒以上に延長させることには成功 しなかった。寺田(1992)は江角(1991)の被験者を対象にして,実物と視覚 シンボルの複合刺激を見本刺激,実物を選択刺激とする修正条件性遅延見本合 わせ学習を実施した。この実験で,寺田(1992)は,見本刺激として実物と視 覚シンボルを同時提示した後,遅延期間中には実物は提示せず,視覚シンボル. のみを提示し続けるという方法で遅延時間を40秒まで延長することに成功し ている。しかしながら,寺田(1992)の場合においても,遅延期間中に条件性 見本刺激である視覚シンボルを提示し続けているので,純粋な意味での条件性 遅延見本合わせにはなっていない。寺田(1992)の参加者は,遅延期間中に梅 津(1967)の言う「中継ぎ信号系活動」が自発できなかったので,実験者が参 加者に代わって信号(視覚シンボル)を提示し続けるという援助を行っている。. 例えば,見本刺激に「リンゴ」が提示された場合に,見本刺激が除去された後 の遅延期間中に,音声言語を有する人は口頭で,あるいは頭の中で「リンゴ」 「リンゴ」「リンゴ」「リンゴ」・… とリハーサルし続ける。音声言語は無く. ても,身振りのある人はリンゴの身振りを続ける。遅延期間中に言語または身 振りを自発し,それでリハーサル(中継ぎ信号系活動)を続けられない重度知 的障害児(者)の場合に,第三者がこのリハーサル(中継ぎ信号系活動)を代替. してやる(視覚シンボルを見せ続ける)ことが,言語の有する真の遅延機能を 形成することに繋がるか否かを検討しようとした研究であった。しかしながら,. 現在までのところ,理解言語がほとんどなく,表出言語がまったくない重度知 的障害児(者)を対象とした遅延見本合わせにおいて,見本刺激が実物の場合,. および条件性見本刺激の場合のそれぞれ遅延時間が30秒を超えることができ るのか否かは明確でない。そして,遅延期間中の行動の違い(選択刺激まで歩. .7一.
(10) いて移動する,選択刺激の側で動作をせずに坐って待つ)が遅延見本合わせの 成績にどのように反映されるかは明らかにされていない。さらには,実物を見 本刺激とする遅延見本合わせにおいて,実物の見本刺激を単に見せるだけの場 合に比べて,実物の見本刺激を操作するところを見せたり,あるいは実物の見 本刺激を操作するところを見せ,かっその見本刺激と同一の見本刺激を持たせ て同じ操作を模倣させることが,遅延見本合わせの成績を高めるのかといった 問題が未解決のまま残されている。. そこで本研究では,以下の問題を検討することを目的に2っの実験が実施さ れた。. (1)遅延中に容易に持続できる運動反応を導入した見本刺激提示法を用いてそ の効果について検討する。. (2)見本刺激の具象性(「音声+写真」と「音声+実物」)が,遅延見本合わせ の成績に及ぼす効果を比較検討する。 (3)遅延時間は,どこまで延長できるか限界を明らかにする。. (4)遅延時間を延長していくと,正反応率はどのように変化するのかを明らか にする。. 一8..
(11) ■ 実験:1 1 目的 本実験では,以下の2点について検討する。. ①遅延期間中の行動(動的条件と静的条件)が遅延見本合わせの成績に及ぼす 効果を比較する。動的条件とは,見本刺激の写真カードとその写真カードの物 品名とを同時に提示(以下「音声+写真」と略記する)した後,遅延期間中に 離れた所に置かれた選択刺激まで歩いて行くという運動反応を導入した条件で あった。静的条件とは,「音声+写真」の見本刺激が提示された後,選択刺激 が提示されるまでの遅延期間中椅子に着席した状態で,手は机上か膝の上に置 いたまま動作をせずに待つという条件であった。 ②遅延時間がどこまで延長できるかを検討する。. 2 方法 1)参加者 (1)参加者のプロフィール. 参加者は,知的障害者入所更正施設(U学園)に入所している音声表出言語. が殆どなく,音声理解言語が数語ある生活年齢20歳∼21歳の重度知的障害者 4名である。参加者のプロフィールは,表II−1に示した。 表H−1 参加者のプロフィール 参加者 年齢 性別. 参加者1 男. 21歳. 障害の状態 重度知的障害. コミュニケーション・行動の特徴 他者への自発的関わりや要求は殆どみられ ずコミ・ニケーション手段は確立していない。固執. 傾向が強く行動の自己制御が難しい。. 参加者2 女. 21歳. 重度知的障害. 他者への関わりや要求は少なく,その殆ど は受け身的である。特定のコミ・ニケーション手段. を持たない。失禁頻繁。. 参加者3 男. 21歳. 重度知的障害. 他者へのコミュψ一ション手段を,殆ど持たない。. 自傷,他傷,常同行動,大きな声を出す等 の不適応行動が頻繁にみられる。情緒的に 不安定なことが多い。. 参加者4 女. 20歳. 重度知的障害. 他者への自発的な関わりは殆どみられず, 特定のコミュニケーション手段を持たない。常同行. 動や固執行動がみられ,行動の自己統制が 難しい。. 一9一.
(12) (2)発達検査 実験前の参加者の表出言語・理解言語の発達の様子は,東(1998)の研究時の 発達検査を参考にした。結果は,表1エー2に示している。. 表r卜2 発達検査. 発 達 年 齢 領域. 参加者1. 参加者2. 参加者3. 参加者4. 表出言語. 0:05. 0:05. 0:09. 0:09. 理解言語. 1:09. 0:05. 1:09. 1:10. KIDS鋤饒畝ケール〈KINDER INFANT DEVELOPMENT SCALE;TYPE T:発鳥沢惣育センター,1991>. 2)実験材料(刺激材料) 刺激材料は,東(1998)の研究で「音声+写真」の提示条件に使用した物品の. 中から2物品が選ばれた。選択理由は,①参加者1,2は5肢選択,参加者3,4 は2肢選択で条件性見本合わせを行い,特に正反応率の良かった物品,②物品 の大きさを揃える,③物品名の音節数を揃える,などに着目して選定された。. 東(1998)の研究で使用された物品は表H−3に,また,選定された2物品は 表H−4に示されている。. 表H−3東(1998)の研究で使用した物品. 参加洋. 物. 品 名. 1. 定規・パンチ・メジャー・積み木・ドライバー・刷毛・うちわ・スポンジ・毛糸・ビニールポット. 2. 栓抜き・消しゴム・クリップ・鉛筆削り・財布・ベルト・お玉・カバン・紙・マイティーキャッチ. 3. 時計・ホチキス・綿棒・判子・ボンド・本・メガネ・はがき・封筒・フライ返し. 4. 時計・ホチキス・綿棒・判子・ボンド・本・メガネ・はがき・封筒・フライ返し. 表H−4参回者ごとに選定された束1轍材料の2物品 参加者 物 品 名 1. パンチ. 積み木. 2. ベルト. 3. 時計. 肺 メガネ. 4. 時計. ボンド. 10一.
(13) 参加者1は3セッションで条件性見本合わせの正反応率が100%に達した。 どの物品を用いても差の生じない正反応率の条件であったが,実験に使用する 物品は,大きさ,名称の音節数に着目して選定された。. 参加者2は6セッションで条件性見本合わせの正反応率が100%に達した。 その中で常に90%以上の正反応率であった6物品(栓抜き・鉛鞘り・購・ベルト・紙・マイティキ. ャッチ)から2物品が選定された。. 参加者3は5セッションめで正反応率が90%に達し,その中で常に100%の 正反応率であった3物品(メガネ塒計・嫡)の中から2物品が選定された。. 参加者4は3セッションめで正反応率が最高60%で,それ以降は机上の右 に置かれた物品のみを選択したので,5セッションで条件性見本合わせが打ち 切られた。その中でも左右どちらの位置においても常に100%の正反応率を示 していた2物品(ボンド・メガネ)が選定された。. 3)事前訓練(その1) 〈動的条件〉. 動的(歩くという動作)条件で,見本刺激が写真,選択刺激が物品である条 件性見本合わせを理解するための事前訓練を行った。動的条件での見本合わせ は,選択刺激の置いてある位置まで歩いて移動できるということが前提となる。 そこで次のような手続きで事前訓練が実施された。. (1)物品が見える条件での条件性見本合わせの手続き ①訓練は,実験者と参加者は机を挟んで対面に着席して行われた。 ②選択刺激(2物品)は,机上に横一列に並べられる。 ③「○○くん(さん)」と呼びかけ視線を合わせる。. ④音声で「△△(物品名)」を言い,同時に写真カードを3秒間提示する。 ⑤見本刺激と同じ物品を選択できれば正反応とし,握手と言語賞賛で強化する。. 見本刺激と違う物品を選択した場合を誤反応とし,見本刺激を提示してから5 秒待っても反応がない場合を無反応とする。誤反応,無反応の場合は,「ちが います」と言って次の試行に移る。. 一11.
(14) a.選択刺激の位置を移動していく場合(図H−1). ・選択する物品を参加者の目の前に置く。 ・次に物品を参加者から少しずつ離していく。. 手を伸ばして物品が取れる位置→腰を少しうかして物品が取れる位置→立って 物品が取れる位置→少し歩いて物品を取る位置→かなり歩いて物品を取る位置. →. →. COOT 図n−1選択刺激の位置(Cは参加者・Tは実験者). b離れた場所にある選択刺激まで歩いて行く場合 ・はじめは実験者と参加者は一緒に物品のある場所まで移動する。. ・参加者一人で物品まで移動する。(5メートルまでは一人で移動できるよ にする。). (2)物品が見えない条件での条件性遅延見本合わせの手続き 選択する物品が,見えていないという条件以外は(1)の条件性見本合わせの 手続きと殆ど同じである。音声と同時に写真カードを提示したのち遅延時間(物. 品の置いてある場所まで移動した時間)が計時され,その後,覆いを取り「ど れですか」ときく。ここでは,物品は見えていなくてもその場まで一人で移動 し,選択できるようになるということが目的である。. 〈静的条件〉. 静的(着席した状態で手は机上または膝の上に置く)条件での条件性遅延見 本合わせを理解するための訓練が行われた。. 机上に並べられた物品が見えない状態でも遅延時間経過後,覆いがとられた. 12..
(15) ときに見本刺激と同じ物品がとれるように訓練する。物品を全て隠してしまう. と全く物品を選択できない場合は,物品をまず4分の1隠し,次に半分隠し,. その次に4分の3隠し,最後に全て隠しても選択できるように少しずつ段階を おって訓練が行われた。. (1)条件性遅延見本合わせ課題の手続き ①訓練は,実験者と参加者は机を挟んで対面に着席して行った。 ②選択刺激(2物品)は,机上に並べたのち箱で物品を隠す。 ③「○○くん(さん)」と呼びかけ視線を合わせる。. ④音声で「△△(物品名)」を言い,同時に写真カードを3秒間提示し参加者 から見えないように隠すと同時に,遅延時間が計時された。. ⑤決められた遅延時間がくると,選択刺激が隠されている箱を取りさり選択刺 激が見える状態にされ,「どれでしたか」ときく。. ⑥見本刺激と同じ物品を選択できれば正反応とし,握手と言語賞賛で強化する。. 見本刺激と違う物品を選択した場合を誤反応とし,見本刺激を提示してから5 秒待っても反応がない場合を無反応とする。誤反応,無反応の場合は,「ちが います」と言って次の試行に移る。. 4)事前訓練(その2). 写真と物品の条件性見本合わせと条件性遅延見本合わせ(0秒)を成立させ ておく。. 事前訓練1,2では,動的条件では物品が見えない状態にあっても離れた場所 から歩いて移動し,物品を選択できるようになるまで指導が行われた。静的条 件では机上の物品が見えない状態にあり,再度目の前に見えたときに選択でき るようになってから実験1に入った。. 13..
(16) 5)実験デザイン 実験デザインは,条件交替デザイン(Altemating Treatments Design:ATD)が用. いられた。独立変数は遅延期間中の行動(動的条件・静的条件)および遅延時 間で,従属変数は正反応率であった。. 6)実験手続き (1)動的条件と静的条件を無作為に行う。 〈動的条件〉:距離を1メートルから1メートルずつ延長して5メートルまでと,次に 8,10,15,20,25,30…メートルとさらに延長し,見本刺激を提示された場所から歩い. て行き物品を選択するまでの時間を計時(遅延時間)する。例えば見本刺激が 提示された場所から選択刺激の置かれている場所までの距離を5メートルとする. と,参加者はその選択刺激の置かれた場所まで歩いて行き選択するまでの時間. が,毎試行一定とは限らない。そこで遅延時間を0∼5秒,5∼10秒の範囲 で分け10試行1セッションとし,10試行分の遅延時間を平均しそのセッショ ンの遅延時間を決め正反応率と対応させた。選択肢は,2肢であった。. 〈静的条件〉:椅子に座り,見本刺激を3秒提示後,隠され所定の遅延時間経 過後,机上に置かれ覆いで隠された選択刺激である物品の覆いが取り除かれて. 物品の1つを選択する。遅延時間は,5秒または10秒刻みで延長していく。 2肢選択で10試行を1セッション行う。 (2)時間・回数. 実験は,各参加者とも週4∼5日,1日30∼45分の範囲で行われた。 (3)課題提示の手続き. (図H−2). ①訓練は,実験者と参加者は机を挟んで対面に着席して行った。 ②選択刺激(2物品)は,机上に並べる。 ③「○○くん(さん)」と呼びかけ視線を合わせる。. ④音声で「△△(物品名)」を言い,同時に写真カードを3秒間提示する。 静的条件は,椅子に座って遅延時間中待つ。 動的条件は,遅延時間中歩いて物品まで行く。. 14一.
(17) ⑤見本刺激と同じ物品を選択できれば正反応とし,握手と言語賞賛で強化する。. 見本刺激と違う物品を選択した場合を誤反応とし,見本刺激を提示してから5 秒待っても何の反応もない場合を無反応とする。誤反応,無反応の場合は,「ち がいます」と言って次の試行に移る。. .15一.
(18) 呼名し,視線を合わせる ウ ド. 「音声+写真」刺激提示条件. コ. 【弁l. I別1. 写真カードを3秒間提示すると同時に. [刺1 腿一1. 音声で「○○」と物品名を提示する。 ↓. 遅延時間を計時する。 遅延時間がくると「OOどれですか?」 と言語教示を与える。. 誤反応・無反応. 正反応 1反 し庵. 5秒以内に見本刺激と. 見本刺激とちがう物品を. 同じ物品を指さして. 選択した場合を誤反応,. (手差し・直阿れても良い)答える。. 5秒以上たっても選択し なかった場合を無反応と する。 ↓. 1強 1化. 直ちにことばと握手で. 「ちがいます。」と言って. 賞賛する。. 次の試行に移る。. 図H−2 見本合わせの手続き 7)実験期間 実験:期間は,事前調査および事前訓練を含み平成9年10,月∼10年4,月の約 7か,月間であった。. 8)実験場所 実験場所は,U学園の多目的ホールであった。. 一16一.
(19) 3 結果 1)動的条件と静的条件の比較. 参加者4名とも「音声+写真」を条件性見本刺激とする遅延見本合わせが可 能であることが明らかにされた。しかし,動的条件が静的条件より条件性見本 合わせの正反応率を高めることにはならないことが示された。. 参加者1,2では,遅延時間によって動的条件と静的条件の正反応率の高低 が入れ替わることがあり,一定しなかった。参加者3においては,遅延時問が5. 秒以降では2条件の正反応率に大きな差はなかったものの,どの遅延時間条件 においても常に静的条件の正反応率が若干上回っていた。参加者4では,0秒. ∼30秒の遅延時間条件では(20秒遅延時間は例外として),参加者3と同様 に2条件の正反応率に大きな差はなかったものの,いずれの遅延時間条件にお いても動的条件の正反応率が常に若干高かった。. 2)遅延時間からみた正反応率 参加者1では,動的条件においては遅延時間は150秒まで延長され,静的条 件では160秒まで延長された。. 動的条件では,平均遅延時間が約35秒までは,100%の正反応率が連続して いたが,平均遅延時間が約45秒では,正反応率は70%まで低下し,その後,. 平均遅延時間が約95秒のとき,正反応率は60%に低下したものの,平均遅延. 時間が約150秒で90%まで上昇した。静的条件では,90秒では70%まで正反 応率は低下したが,その後,遅延時間が長くなっても,その正反応率は,80% ∼100%になり,160秒では70%になった。. 以上のことから,遅延期間中の条件が動的条件の場合も静的条件の場合も遅 延時間の限界は,明確にはならなかったがある程度まで延長が可能であること が示された。結果は,図H−3,4,5,6に示されている。. 一17一.
(20) (%) 参加者1. 100. 正 反. 80. 応 60 率. 40. 一一一一一一一. P一△一静的条件一 一一一一『一一一一一一 一一一一一一『…一一一一一一一一一一一一. s三無」一一一一一一一一一一一一一一一…一一一一一一一一一一一一一一一一. 20. 一…一一一 (秒). 0. 0. 20. 40. 60. 80. 100. 120. 140. 160. 180 遅延時間. 図H−3遅延時間の延長にともなう動的条件と静的条件の正反応率の推移(参加者1). (%). 参加者2. 100. 1+静的条件1. 遡. 80 正. 反 応 率. 60 40 20 0. (秒). 遅延時間. 図H−4遅延時間の延長にともなう動的条件と静的条件の正反応率の推移(参加者2). 18一.
(21) (%). 参加者3. 100. 80 正 反. 60. 応 率. 一△一静的条件. 40 20 0. (秒). 0. 10. 5. 15. 25. 20. 30. 35 遅延時間. 図H−5遅延時間の延長にともなう動的条件と静的条件の正反応率の推移(参加者3). (%). 参加者4 100. 80 正 反 応 率. 60 40. +静的条件l. 20. L二墾二鵜」. 0. (秒) 0. 5. 10. 15. 20. 25. 30. 35. 40. 遅延時間. 図II−6遅延時間の延長にともなう動的条件と静的条件の正反応率の推移(参加者4). 19一.
(22) 4 考察 本実験の目的は,(1)遅延期間中の行動(動的条件と静的条件)が条件性遅 延見本合わせに及ぼす効果を比較すること,(2)遅延時間がどこまで延長でき. るかを検討することの2点であった。ここでは,この2っの目的について得ら れた結果を考察する。. (1)遅延期間中の行動(動的条件と静的条件)が条件性見本合わせに及ぼす 結果について. 動的条件と静的条件の正反応率の結果からは,どちらの条件が条件性遅延見 本合わせに対して効果的であるかは,明らかにはされなかった。参加者によっ ては,動的条件の成績がよかったり,静的条件の成績がよかったりして,個人 間でばらつきがみられた。さらに動的条件と静的条件の成績が遅延期間のちが いによって入れ替わっており,遅延期間中の行動が条件性見本合わせの成績に 及ぼす効果は,個人間でもばらつきがみられ一貫した効果が得られなかった。 梅津(1967)は,条件性遅延見本合わせを成立させるためには,遅延中に見本. 刺激を忘れないように物品に対応・分化した運動反応が自発し,持続すること. が必要であることを明らかにしている。しかし,参加者4名ともその見本刺激 に対応・分化した運動反応を自発することはできなかった。そこで参加者達が, 容易に持続できる「歩く」という運動反応が導入された。遅延期間中に「歩く」. という運動反応を導入した動的条件の方が遅延期間中に運動反応させずに座っ て待つ静的条件より正反応率が上回ると考えられたが,結果はどちらが効果的 であるかは明らかにはされなかった。 遅延期間中に梅津(1967)のいう運動反応(歩行)を導入したにもかかわらず,. この運動反応の効果が現れなかったからであろう。すなわち,どの見本刺激に 対しても全て“歩行”動作が導入されたわけであるから,“歩行”動作が1つ1つ. の見本刺激を代表する信号系活動の役割を果たし得なかったものと考えられ る。. .20一.
(23) しかしながら,遅延期間中“移動しない”あるいは,“体を動かさない”とい. う静的な運動を持続すること(じっと座って待つこと)は退屈なことでありこ. の間別のことを考える可能性が高いものと推測された。遅延期間三三動せず体 を動かさずに待っている間に生じた別の考えが,見本刺激の記憶を忘却させた り,あるいは課題を遂行しないといけないということさえ忘却させてしまうの ではないかと考えられた。「中継ぎ行動」と言われる見本刺激である物品に対. 応・分化した運動反応を導入した見本刺激提示法について検討する必要があ る。. (2)遅延時間について. 参加者1では,遅延時間は動的条件においては150秒まで延長され,静的条 件では160秒まで延長された。. 動的条件では,平均遅延時間が約35秒までは,正反応率は100%を続けて いたが,平均遅延時間が約45秒で正反応率は70%まで低下し,その後平均遅. 延時間が約95秒のとき,60%に低下したが,平均遅延時間が約150秒で90% まで上昇した。静的条件では,平均遅延時間90秒で正反応率が70%まで低下 するが,その後80%∼100%に上昇し,遅延時間160秒で70%に低下した。 以上のことから,遅延期間中の条件がどちらの条件においても遅延時間の限. 界は,明らかにはされなかった。実験では,遅延時間が150秒と160秒で打ち 切られたが,遅延時間がさらに延長された場合に正反応率がどのように変化し ていくかは不明であった。. 参加者2では平均遅延時間が25秒∼35秒,参加者3では平均遅延時間が30. 秒∼35秒,参加者4では平均遅延時間が25秒∼30秒で,いずれの条件にお いても正反応率の低下がみられた。参加者2∼4においては,上に示した遅延 時間の前後が遅延見本合わせができる限界である可能性が示唆された。 寺田(1992)は,遅延期間が長くなることによって記憶が困難になるというこ. とを研究で明らかにした。本実験でも,遅延時間の限界に個人差はあるものの 延長されると正反応率は低下し,遅延期間が長くなることによって記憶が困難. 一21.
(24) になるという同様の結果が得られた。. 視覚的刺激に対する短期記憶の限界は最大に見積もっても30秒であると言 われている。参加者1の場合,遅延期間中の行動が動的(歩き)であっても,. 静的(移動せず,体を動かさずに座っている)であっても,30秒をはるかに 越える遅延時間(たとえば,120秒以上)の成績(正反応率〉が80%以上を維 持している。本実験は2肢選択の条件性遅延見本合わせ課題である。したがっ て,参加者がでたらめに反応すれば,正反応率はチャンスレベルの50.0%前後. を推移したはずである。にもかかわらず,参加者1が短期記憶の限界をはるか に越えてもなお高い正反応率を維持できた理由の1っに課題の性質が考えられ る。本実験では,条件性見本合わせ課題が用いられた。条件性の遅延見本合わ せ課題といえども,遅延見本合わせ課題であることには変わりない。遅延見本 合わせ課題であるので,見本刺激が提示され,ついで見本刺激は視野から消え (隠され),その後,所与の遅延時間経過後提示され,視野から隠されていた. 選択刺激が参加者に提示される。そこで,参加者は,複数の選択刺激の中から 見本刺激と同じ(または等価な)刺激を選択することが要求される。このよう にみると,遅延見本合わせ課題は,記憶の再認課題と機能的には同じであると. いうことができる。再認課題では,始めに記憶するべき刺激(普通は1つ)が 参加者に提示され,一定時間経過後に始めに提示した刺激を含む複数の刺激が 再度参加者に提示され“さっきのはどれですか?”という教示後,始めに提示 された刺激を選択することが要求される。再認課題は再生課題よりもはるかに 容易であり,再認課題における記憶の時間は再生課題における短期記憶の限界. である30秒をはるかに越えることも可能である。このように考えると,参加 者1の遅延見本合わせの正反応率が,視覚刺激の再生課題における短期記憶の 限界をはるかに越える遅延時間でも高い水準で維持されたことが理解できる。 第2の理由として,本実験に使用された刺激は,東(1998)の研究で使用した. 物品で既知性が高いと判断され,すでに参加者1にはその記憶痕跡が形成され ており,まったく新規な物品の記憶課題に比べ,記憶が容易であったことがあ げられる。北島(1989)は既知性の高い物品と低い物品の遅延見本合わせ学習. 一22一.
(25) を行い,前者の成績が高いことを明らかにしている。既知性が低い物品を用い た遅延見本合わせが成立していく過程として,見本刺激の弁別,見本刺激の記 憶,選択刺激の弁別,遅延後の選択刺激の弁別,見本刺激と選択刺激の連合の 形成すべてを遂行しなければならない。使用頻度が高いということは,熟知性 (既知性)が高いことを意味している。したがって,新規刺激に比べ,上記の. 認知過程のうち,見本刺激と選択刺激の弁別は形成されており,かつ記憶の負 荷も少ないことになる。以上から,負荷の少ない既知性の高い刺激が用いられ た本実験では遅延時間が長くなっても,高い正反応率が維持されたものと考え られる。. 第3の理由として,参加者1は実験者サイドには観察可能でない何らかの運 動反応を用いて内的リハーサルを行っていた可能性が考えられる。外部の人間 には観察可能でなくとも,すでに自己流の内言を有し,この内言を用いて内的 リハーサル(innert reharsal, covert reharsal)を行っていたのかもしれない。し. かしながら,参加者1が内言を有しているのか,あるいは内的リハーサルを行 っていたのかは現在のところ確かめようがなかった。. 一23.
(26) :皿 実験 2. 1 目的 (1)3種類の実物見本刺激が遅延見本合わせに及ぼす効果を比較検討する。3種 類の見本刺激提示条件とは,以下の提示法をいう。①物品の音声名を聞かせ,. 実物を見せるだけの条件。この条件を「音声+実物のみ」条件と略記する。② 物品の音声名を聞かせ,実験者が実物を操作するところを見せる条件。この条 件を「音声+実物操作提示」条件と略記する。③物品の音声名を聞かせ,実験 者が実物を操作するところを見せ,参加者が実験者の操作する物品と同一の物 品を持って実験者と同一の操作を模倣する条件。この条件を「音声+実物操作 模倣」条件と略記する。. (2)見本刺激の具象性(「音声+写真」と「音声+実物」)が,遅延見本合わせ. の成績に及ぼす効果を比較検討する。目的の(1)で述べられた3種類の実物見 本刺激提示法に対応する写真カードを用いて,「音声+写真」と「音声+実物 のみ」,「音声+写真」と「音声+実物操作提示」,「音声+写真」と「音声+. 実物操作模倣」の遅延見本合わせの成績を,それぞれ比較する。 (3)遅延時間と遅延見本合わせの成績との関係を明らかにする。. 2 方法 1)参加者 参加者は,実験1と同様であった。 実験1では,各参加者の発達に関するデータは東(1998)の研究における事後. 発達検査のデータを参考にしたので,実験2では新たに発達検査を行い発達に 関するデータを入手した。. (1)各参加者の発達の様相. 参加者の発達検査の結果は,表皿一1(KIDS乳幼児発達スケール<KINDER. .24..
(27) INFANT DEVELOPMENT SCALE;TYPE T:発達科学研究教育センター。1991>) 表皿一2(遠城寺式乳幼児分析的発達検査く慶磨通信.1997>),表皿一3(ワトソ ン言語発達検査)に示されている。 表皿一1KIDS発達スケールの検査結果(1998.6実施). 発達年齢. 領域. 参加者1. 参加者2. 参加者3. 参加者4. 運動. 3:10. 3:06. 3:03. 3;04. 操作. 2:06. 1:00. 0:10. 1:02. 理解言語. 1:06. 1:00. 0:09. 1:07. 表出言語. 0:06. 0:07. 0:02. 0:05. 概念. 0:00. 1:08. 0:00. 1:03. 対子ども社会性. 1:06. 1:02. 1:00. 1:00. 対成人社会性. 1:04. 1:03. 0:05. 0:05. しつけ. 4:08. 4:00. 4:02. 4:00. 食事. 3:00. 2:01. 2:03. 2:01. 2:00. 1:08. 1:04. 1:04. 総合発達年齢. 表皿一2遠城寺式・乳幼児分析発達検査(1998.6 実施). 発達年齢. 領域. 参加者1. 参加者2. 参加者3. 参加者4. 運. 移動運動. 3:08∼4:00. 4:00∼4:04. 4:00∼4:04. 4:04∼4:08. 動. 手の運動. 4:00∼4:04. 1:02∼1:04. 2:09∼3:00. 3:04∼3:08. 社基本的習慣4:00∼4:043:04∼3:083:04∼3:083:04∼3:08 会. 性. 対人関係. 1:09∼2:00 2:00∼2:03. 言. 発語. 0:06∼0:07. 語. 言語理解. 1:02∼1:04. 1:06∼1:09. 0:08∼0:09. 1:00∼1:02. 一25. 1:04∼1:06. 0:06∼0:07. 0:05∼0:06. 0:10∼0:11. 1:02∼1:04.
(28) 表D1−3ワトソン言語発達検査の結果(1998.6 実施). 通過率(%). 項目. 参加者1. 1 注意の形成. 参加者2. 100.O. 参加者3. 参加者4. 100.0. 100.0. 100。0. 80.O. 20.0. 20。0. 皿一1聴覚の訓練(衝立無) 66.7. 16.7. 38.9. 389. 皿一2聴覚の訓練(衝立有> 44.5. 445. 0,0. 22.3. 1V 物の弁別. 53.4. 20.0. 26.7. 20.0. V 概念の発達. 46.7. 26.7. 0.0. 20。0. 40.0. 20.0. 20.0. 0.O. 0.0. 0.0. lO.0. 0.0. 0.0. 40.0. 20。0. 20,0. H 身体運動の模倣. 80.0. VI発声・音声模倣. 20.0. 珊 反響語彙の形成. 0.0. ㎜非反響語彙の形成 IX 言語随伴. αO. 20.0. 2)実験材料(刺激材料). 参加者が日常生活でよく目にしたり,触れたりしている物品,あるいは今ま での生活経験の中でよく目にしたり,使用したことがある物品の中から施設の 職員と実験者との話し合いによって,特に参加者全員が共通して既知性の高い. 物品を選定し,選定された14物品を用いて,各刺激提示条件に以下に述べる いくつかの条件を共通に満たした物品が,まんべんなく割り当てられるように するために次のような調査が行われた。. (1)物品を手に持った時の様子や行動 参加者に実験者が「どうぞ」という言語教示と同時に各物品を1つずつ渡し,. 参加者が物品を手にした時どのように操作・動作をするかを観察記録した。評 価の観点は以下の4殺階である。. ⑦実験者が全く何の介助もせず,参加者が物品を持ってすぐその物品に対応し た操作・動作自発的にできるQ ………一一一一一一…一〇. 一26一.
(29) ④物品に対応した操作・動作を行おうとするが上手にできない…一一一…△ ◎全く操作・動作ができない 一一一一一…一一一一一一…一× ㊤無反応 一一一一一一…一一…一一一一一一…一一…一………一一. また,○印の付かなかった物品には,実験者が見本を示し,見本と同じ操作 ・動作ができた場合は,「見本」の欄に○印を付けた。見本を示してもうまく. 操作・動作ができなかった物品には,介助によって見本の動作ができれば「介 助」の欄に○印を付けた。. 物品に対応した操作・動作については,本実験と無関係の大学院生4名にそ れぞれの動作だけを見せ,その動作に対応した物品にふさわしいことを確認し てもらった。. 物品の操作・動作については表皿一4に,物品を手に持った時の様子・行動 の調査結果は,表一一5に示されている。. 表m−4 物品の操作・動作について 物品名. 操作・動作. スリッパ. スリッパを履く。(スリッパを床に置いて提示する). 歯ブラシ. 歯ブラシで歯を磨く。. スフーン. 食べ物をスプーンですくって口に運ぶ動作をする。. 帽子. 帽子を持って頭にかぶる. 本. 本を開いてページをめくって見る。. 鉛筆. 線,文字などを書く。(鉛筆と紙を一緒に渡す). パンチ. パンチに紙を挟んで紙に穴を開ける。(パンチと紙を一緒に渡す). はさみ. はさみで紙を切る。(はさみと紙を一緒に渡す). ホチキス. ホッチキスで紙をパチンととめる。(ホッチキスと紙を一緒に渡す). タンバリン. タンバリンを叩いたり振ったりして鳴らす。. たて笛. たて笛を持って吹く。. 鈴. 鈴を手に持ち振って鳴らす。. マラカス. マラカスを手に持ち振って鳴らす。. カスタネット. カスタネットを叩いて鳴らす。. 一27一.
(30) 表m−5 物品を持った時の様子. 4. 3. 2. 1. κ馴者. 評価. 物品名. 自由見本介助 自由見本介助. 自由見本介助. ホチキス. 0 0 0 0 0 0 0 0 0. タンバリン. 一 〇. O. O. たて笛. 〇. O. O. 鈴. 〇. O. O. マラカス. 〇. O. 一. カスタネット. 〇. △ △ 0 0. スリッパ. 歯ブラシ スフーン 帽子 本. 鉛筆. パンチ はさみ. 自由見本介助. ○. ○. ○. ○. ○. ○. 0. 0. ○. 0. 一. 〇. ×. ○. ○. o O. △ △ o O o. O. △ △ ○. ○. ○. 物品に対応した操作・動作が自発できる ………一一…一一…一…一一一〇. 物品に対応した操作・動作をしょうとするがうまくできない……一・△ 物品に対応した操作・動作が全くできない …一一∵一一……一…一一…一× 無反応 一一一…一一…一…一…一…一一…一一………一一…一…一一一一一…一. 自由 ……一自発的に操作ができる 見本一…一一一提示された見本を見て,見本と同様の操作ができる 介助 …一…・介助されてできる. 一28一. ○. 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.
(31) (2)物品の選定と割り当て. 自発的操作や模倣の調査結果をもとに,施設の職員と話し合いを行い,生活 の中で使用する頻度の高い物品(一既知性の高い)が選定された。その結果,9 物品が選定され,物品A群は,「音声+写真」(以下「音声+写真(A)」という) と「音声+実物」(以下「音声+実物のみ(A)」という)条件で,タンバリン,. 帽子,ホチキスの3物品が割り当てられ,物品B群は,「音声+写真」(以下 「音声+写真(B)」という)と「音声+実物操作提示」(以下「音声+実物操. 作提示(B)」という)条件で,カスタネット,スプーン,本の3物品が割り当 てられ,物品C群は,「音声+写真」(以下「音声+写真(C)」という)と「音. 声+実物操作模倣」(以下「音声+実物操作模倣(C)」という)条件で,マラ カス,歯ブラシ,はさみの3物品が割り当てられた(表m−6)。 表HL6 各刺激提示条件に割り当てられた物品 物品群 見本刺激提示条件 A. 物品. 音声+写真(A). 群音声+実物のみ(A). タンバリン. 帽子. ホチキス. B 音声+写真(B) 群 音声+実物操作提示(B) C 音声+写真(C) 群. 音声+実物操作模倣(C). カスタネット. む スフーン. 本. マラカス. 歯ブラシ. はさみ. 3)遅延時間の設定. 実験1の結果から,参加者1では遅延時間が40秒までは,正反応率は80% ∼100%で安定していることが明らかにされたので,遅延時間は30秒から開 始し,30秒刻みで延長された。また,参加者2∼4においては,遅延時間は5 秒間10秒の間でも正反応率は50%∼70%と低かったので,遅延時間は2秒か ら開始し,2秒刻みで延長された。. 一29一.
(32) 4)実験方法および手続き (1)実験デザイン 実験デザインは,条件交替デザイン(Altemating Treatment Design:ATD)が用 いられた。. 独立変数は,見本刺激提示条件(①実物提示条件:「音声+実物のみ」「音. 声+実物操作提示」「音声+実物操作模倣」の3条件および②見本刺激の具象 性条件:「音声+写真」)と「音声+実物」の2条件)と「遅延時間」で,独立 変数は,「正反応率」であった。 (2)手続き. ①同時見本合わせが形成されているかどうかの確認 実験に用いられる9物品を選択刺激とし,「音声+実物のみ」「音声+写真」 の見本刺激提示条件で,同時見本合わせが行われた。方法は,次の通りである。 はじめに「音声+実物のみ」条件で行った。. ⑦まずはじめに,9物品の中から無作為に3物品抽出し,机上に横一列に並べ る。1試行ごとに,1物品ずつ入れ替え机上に横一列に並べる。このとき物品 の位置も変える。. ⑦呼名し視線を合わせた後,物品を提示すると同時に「∼どれ」と物品名を言 う。. ◎提示された物品を選択(取るまたは,指さし)した場合を正反応とし,握手 と言語賞賛を行った。提示された物品と違う物品を選択した場合を誤反応,提 示後5秒たっても何の反応もない場合を無反応とし,「ちがいます」と言い, 修正試行は行わず次の試行へと移った。. ㊤1セッション10回忌とし,各物品は1回ずつ提示された。 次に,「音声+写真」の条件で,⑦呼名し視線を合わせた後,選択刺激と同 じ物品の写真を提示すると同時に「∼どれ」と物品名をいう以外の方法は「音 声+実物のみ」の条件と同様であった。. 参加者全員,2っの条件で1セッションめに100%を示し,「音声+実物のみ」 と「音声+写真」の同時見本合わせは,成立していることが確認された。. .30一.
(33) ②遅延見本合わせ ⑦各見本刺激提示条件における見本刺激の提示方法 各見本刺激提示条件のうちの実物提示条件の3条件(「音声+実物のみ」,「音 声+実物操作提示」,「音声+実物操作模倣」)に用いられる物品をA,B,C群と. し,各群に3物品ずつ割り当てた(表白一6)。どの物品も1試行ごとに提示位. 置が無作為に変えられ,提示された。また,1セッションごとに,写真カード を用いて提示する「音声+写真」条件と実物を用いて提示する「音声+実物(3 種の提示法)」条件が無作為に入れ替わって提示されるようにした。つまり,. いつも「音声+写真」条件がはじめに提示されないためである。また,見本刺. 激提示条件も,1セッションごとに無作為に入れ替えられた。この無作為化 (Randamization)は,物品群A→B→Cと同じ流れで提示されることによって 生じる提示順序効果を相殺するために行われた。詳しい流れは表皿一7に示さ れている。. 表皿一7 見本刺激提示条件の1セッションごとの流れ セッションごとの流れ 腔=ζ. ☆. 1. A. ☆. 4 ☆. 5. C 音声+実物のみ・音声+写真. 音声+写真・音声+実物操作模倣. A. 音声+実物のみ・音声+写真. 音声+写真・音声+実物のみ. B. 音声+写真・音声+実物操作模倣. B. 音声+実物操作模倣・音声+写真. A. C. 音声+写真・音声+実物操作提示. C. 音声+実物操作提示・音声+写真 音声十実物のみ・音声十写真. A. B. 音声+写真・音声+実物操作提示. A. 音声+実物操作提示・音声+写真. A 6. 音声+写真・音声+実物操作模倣. B. 音声+実物操作模倣・音声+写真. B 3. B. 音声+写真・音声+実物のみ. C 2. C. 音声+写真・音声+実物のみ. 音声+写真・音声+実物操作提示. C 音声+実物操作提示・音声+写真. 音声+実物操作模倣・音声+写真. (A,B,Cは,物品群を示す。☆は,写真使用の見本提示条件が先に提示される。). ④実験 「音声+写真(A)」と「音声+実物(A)」,「音声+写真(B)」と「音声+実. 物操作提示(B)」,「音声+写真(C)」と「音声+実物操作模倣(C)」の6条件に. 一31一.
(34) おいて,3物品がそれぞれ3回提示された。したがって1条件に3物品が割り 当てられ,1物品が3度提示され,そして6条件あるので合計54試行となる。. この54試行を1セッションとした。どの参加者が,どの遅延条件で何セッシ ョン実施したかは,表皿:一8に示されている。表HI−7に示されているような6. パターン全部を実施する予定だったが,2秒遅延時問で12セッション,4秒遅 延時間で6セッション実施したところで,今後の参加者の負担を軽減すること,. および実験終了までのタイムリミットを考え1パターンずつ実施された。この とき遅延時間ごとに同じパターンが連続して実施されないように配慮された。. 正反応には,言語賞賛と握手が行われた。誤反応(違う物品を指さしした場 合),または無反応(5秒待っても反応がない場合)は,「ちがいます。」と声 をかけ,次の試行が行われた。. 参加者4は,18秒と20秒の遅延時間の正反応率が16秒の遅延時間の正反 応率より上昇してきたので,遅延時間を2秒ずつ延長していたところを遅延時 間を20秒以降5秒間隔で延長していった。 表皿一8 各遅延時間ごとのセッション数 遅延時間とセッション数. i 参加者l l. 参加者2. 遅延時間(秒)セッシ。ン数. i遅延時間(秒). 参加者3. 参三者4. セッション数. 30 60. 6. 2. 6. 6. 6. 6. 4. 6. 6. 6. 90. 6. 6. 1. 1. 1. 120. 2. 8. 1. 1. 1. 180. 2. 10. 1. 1. 1. 12. 1. 1. 1. 14. 1. 1. 1. 16. 1. 1. 1. 18. 1. 1. 1. 20. 1. 1. 1. 22. 1. 24. 1. 25. 30 35. 40. .32一.
(35) ③維持テスト. 実験で獲得されたことがどれだけ維持されているかを見るために1か月後に 実験:と同様の手続きで,各参加者の正反応率が低下する直前の遅延時間〈最大. 遅延時間〉(表皿一9)の遅延時間において維持テストが1セッション実施され た。. 表皿一9 参加者の最大遅延時間. 参加者 参加者1 遅延時間(秒) 90. 参加者2 14. 参加者3 参加者4 16 20. (3)時間・回数. 各参加者とも1日に1セッション,または2∼4試行(参加者の遅延時間に よって異なる)の実験が週に4∼5日間実施された。1日の実験時間は,30分 ∼45分の範囲であった。1セッションは,見本刺激提示条件6つ(「音声+写 真(A)」「音声÷実物のみ(A)」「音声+写真(B)」「音声+実物操作提示(B)」「音. 声+写真(C)」「音声+実物操作模倣(C)」)×9試行の計54試行で構成された。. 1条件における9試行は,3物品×3試行で構成された。机上には,選択刺激の3 物品が横1列に等間隔に並べられ,1試行ごとに物品の提示位置が無作為に変え られた。また,見本刺激提示の物品も無作為に提示された。. (4)正反応率の算出方法 正反応率の次の数式の一致率により求められた。. 正反応率 正反応率(%)=. ×100. 正反応率 × 誤反応率 (5)刺激提示手続き. 実験場面では,参加者と実験者は机を挟んで対面に着席して行われた。どの 見本刺激提示条件にも,全て音声が同時提示された。見本刺激提示条件は,セ ッションごとに無作為に提示された。見本刺激提示の具体的手続きは,図皿一1 の通りであった。. .33一.
(36) 呼名し,視線を合わせる 「音声+写真」刺激提示条件 写真カードを3秒間提示すると同時に音声で「○○」と 物品名を提示する。. 「音声+実物のみ」刺激提示条件 弁. 実物を3秒間提示すると同時に音声で「○○」と. 別. 物品名を提示する。. 「音声+実物操作提示」刺激提示条件. 刺. 実物を操作するところを3秒間提示すると同時に「○○」. 激. と物品名を提示する。. 「音声+実物操作模倣」刺激提示条件 参加者と実験者は,同じ実物を持ち実験者が実物を操作 するのを見て,参加者は模倣する。参加者が模倣を始め. てから3秒間提示すると同時に音声で「00」と物品名 を提示する。. 遅延時間を計時する。 遅延下問が経過すると覆い(箱)をとって 「どれですか?」と,言語教示を与える。. 正反応. 圓. 5秒以内に見本刺激と. 各刺激提示条件で提示. 各刺激が提示されても. 同じ実物を指さして(手. されたものに対応しな. 指さしや物に直接触れ. 差しや直接触れても可). い実物を指さしたり. る等の反応が5秒待っ. 答える。. 圃. 無反応. 誤反応. 触れたりする。. てもみられない。. 「ちがいます。」といっ. 直ちに,ことばと握手に よって充分に賞賛する。. て次の試行に移る。. 図皿一1 各見本刺激提示の手続き. 一34一.
(37) 5)実験期間. 実験期間は,事前調査・:事前訓練を含め,平成10年6,月∼12.月の7か,月間 であった。. 6)実験場所. 実験1と同じであった。. 一35一.
(38) 3 結果 1)見本刺激提示条件の比較 (1)見本刺激提示条件の正反応率の比較. 物品A群の「音声+写真(A)」と「音声+実物のみ(A)」,物品B群の「音 声÷写真(B)」と「音声+実物操作提示(B)」,物品C群の「音声+写真(C)」. と「音声+実物操作模倣(C)」の条件によって得られた全ての正反応率が平均 され,その結果が比較された(図純一2,3,4,5)。. 参加者1は,「音声+写真(A)」条件の正反応率は90.7%,「音声+実物のみ (A)」条件の正反応率は91.1%,「音声÷写真(B)」条件の正反応率は87.8%,「音. 声+実物操作提示(B)」条件の正反応率は87.0%,「音声+写真(C)」条件の正 反応率は86.6%,「音声+実物操作模倣(C)」条件の正反応率は41.5%でチャン. スレベルを若干上回るくらいであった。それ以外の条件問には,上に示された 正反応率からもわかるように明確な差は見られなかった(図面一2)。. 参加者2は,「音声+写真(A)」条件の正反応率は67.6%,「音声+実物のみ (A)」条件の正反応率は63.2%,「音声+写真(B)」条件の正反応率は65.3%,「音. 声+実物操作提示(B)」条件の正反応率は58.2%,「音声+写真(C)」条件の正 反応率は69.4%,「音声+実物操作模倣(C)」条件の正反応率は68.9%,という. 結果から「音声+実物操作提示(B)」の提示条件の正反応率が60%より若干低. かったが,60%∼70%間の正反応率としては,明らかな差は見られなかったと 考えられる(図三一3)。. 参加者3は,「音声÷写真(A)」条件の正反応率は70.2%,「音声+実物のみ (A)」条件の正反応率は69.6%,「音声+写真(B)」条件の正反応率は59.3%,「音. 声+実物操作提示(B)」条件の正反応率は69.2%,「音声+写真(C)」条件の正 反応率は67.4%,「音声+実物操作模倣(C)」条件の正反応率は66.3%であった (図心一4)。. 参加者4は,「音声+写真(A)」条件の正反応率は59.4%,「音声+実物のみ (A)」条件の正反応率は62.1%,「音声+写真(B)」条件の正反応率は68.5%,「音. .36..
(39) 声+実物操作提示(B)」条件の正反応率は72.4%,「音声+写真(C)」条件の正 反応率は62.2%,「音声+実物操作模倣(C)」条件の正反応率は60.7%であった. (図皿一5)。参加者3の4っの条件の正反応率が59.3%∼69.6%の範囲にあり若. 干差がみられ,参加者4においては,「音声+実物操作提示(B)」の提示条件 のみが72.4%であり,他の3条件の正反応率より若干高くなっているが,他の3 条件の正反応率は,60.7%∼62.0%と大差はない。参加者1の「音声+実物操 作模;倣(C)」の条件以外の条件問には,明確な正反応率の差はみられなかった。. 一37一.
(40) (%). 参加者1. 100. 一. 80 正. 反 応. 率. 一. 一. 一. 国物品A 日物品B 図物品C. 一. 60. 一. 40. 一. 20. 一. 一. 0 音. 音. 音. 音. 音. 音. 声. 声. 声. 声. 声. 声. 十. 十. 十. 十. 十. 十. 写. 実. 写. 実. 写. 実. 真. 物. 真. 物. 真. 物. A. の. B. 操. C. 操. 条件. 作. み. A. 響. 模. 否. 倣. C. 図皿一2見本刺激提示条件の正反応率の比較(参加者1) (%). 参加者2 一一一一一一一一一一一一一一.一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一. 100. 80 正. 園物品A. 旧物品B. 60. 1」蝿. 反 応 40 率. 20 0 音. 音. 音. 音. 音. 音. 声. 声. 声. 声. 声. 声. 十. 十. 十. 十. 十. 十. 写. 品. 写. 実. 写. 実. 真. 目. 真. 物. 真. 物. A. の. B. 操. C. 操. み. 作. A. 響. 模. 否. 倣. C. 図皿:一3見本刺激提示条件の正反応率の比較(参加者2). 一38一. 条件.
(41) 100. (%)参加者3. 80. 圓物品A 団物品B 図物品C. 正. 反60. 応. 率40 20 0 三. 三. 華. 章. 音. 三. 軍. 軍. 華. 雲. 声. 軍. 十. 妻. 霧. 霧. 署. 写. 霧. 真. A. 男. B. 葎. A. C. 条件. 繹. 葉. 議. B. G. 図皿一4回忌刺激提示条件の正反応率の比較(参加者3). (%)参加者4. 100 80. 一一一一一 鼈黶x一一一一一一『一』一一一一一一『}一』一一一一一一一一一一一一一一一. 一_一一一一.一_一一一一一一一..一一一一一一一一_.一一一一一一一一一一一. u面三 黒ィ品B. [旦物品9. 正 60 反 応 40 率. 20 』0. 童. 三. 叢. 童. 三. 童. 軍. 軍. 雲. 謡. 軍. 軍. 葺. 霧. 置. 義. 箋. 乱. A. 雰. B. 理. C. 雑. 条件. A. 禦. 籏. B. G. 図皿一5見本刺激提示条件の正反応率の比較(参加者4). 一39一.
(42) (2)実物を使用した見本刺激提示条件での正反応率の比較 「音声+実物のみ(A)」「音声+実物操作提示(B)」「音声+実物操作模倣(C)」. の実物を使用した見本刺激提示条件での正反応率の比較が行われた。結果は, 図皿一6,7,8,9に示されている。. 参加者1は,「音声+実物操作模倣(C)」の刺激提示条件の正反応率が明ら. かに低いことがわかる。遅延時間30秒∼180秒全てにおいて低い。しかし, 他の2条件は,180秒遅延時間で少し差が出てきてはいるが殆ど変わらないと 言える(図皿一6)。. 参加者2∼4は,2秒と4秒の遅延時間は6セッションの平均の正反応率,6 秒遅延時間からは,1セッションずつの正反応率が示されている。. 参加者2は,6秒遅延時間で若干条件間に正反応率の差がみられるものの,. それ以後の遅延時間においては,20秒遅延時間まで正反応率の一番よい条件 が入れ替わる。このことからも,どの条件が効果があるとは言えない。しかし,18. 秒遅延時間から「音声+実物操作模倣(C)」は,55.5%と同じ正反応率が示さ. れている。22秒遅延時間では,他の2つの提示条件の正反応率もチャンスレ ベル(33.3%)以下に低下した(図III−7)。. 参加者3においても,2秒∼18秒遅延時間まで正反応率のよい条件が入れ 替わり20秒遅延時間で全ての条件が同じ66.6%の正反応率を示しているので, やはりどの条件が効果があったとは言えなかった(図皿一8)。. 参加者4も参加者2,3同様正反応率のよい条件が遅延時間ごとに入れ替わっ ている。しかし,14秒遅延時間以降「音声÷実物操作提示(B)」の条件が他の 条件よりよい正反応率が示された(図皿一9)。. .40一.
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