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女性活躍およびジェンダー平等を推進する法実践 : 日欧の比較

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女性活躍およびジェンダー平等を

推進する法実践

――日欧の比較――

大 西 祥 世

目 次 は じ め に 1 男女共同参画社会基本法制定後の,日本における法実践 ⑴ 女性に対する暴力の規制 ⑵ 労働におけるジェンダー平等 ⑶ 男女平等教育の推進 ⑷ スポーツ,農業・農村における女性の地位向上 2 女性活躍推進法の活用 ⑴ 公表される情報の広がりと深化 ⑵ 公共調達による促進 ⑶ 経営層におけるダイバーシティの推進と投資の影響力の活用 3 さらなる推進に向けて――欧州各国の法実践からの示唆 ⑴ 禁止される差別の明示とインクルージョン ⑵ 職業生活における女性の活躍推進 ⑶ 取締役等への女性の登用促進 お わ り に

は じ め に

日本では男女平等が十分に達成されていないといわれている。政治,経 * おおにし・さちよ 立命館大学法学部教授

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済,教育,健康の⚔つの分野で,スイスの民間団体「世界経済フォーラ ム」が毎年発表している男女の格差の大きさに関する国際的な指数である 「ジェンダーギャップ指数(GGI)」によると,2017年度の日本の順位は世 界の144か国中114位である1)。各分野での日本の順位は,政治が123位, 経済が114位,教育が74位,健康が⚑位である。日本は世界の他の国と比 較して,政治と経済の分野において男女の格差が著しいことがわかる。 これほどの大きな格差や不平等な状態を解決するには,日本国憲法第14 条第⚑項「すべて国民は,法の下に平等であつて,人種,信条,性別,社 会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別 されない。」,第24条第⚑項「婚姻は,両性の合意のみに基いて成立し,夫 婦が同等の権利を有することを基本として,相互の協力により,維持され なければならない。」,同条第⚒項「配偶者の選択,財産権,相続,住居の 選定,離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては,法律 は,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して,制定されなければならな い。」,第44条「両議院の議員及びその選挙人の資格は,法律でこれを定め る。但し,人種,信条,性別,社会的身分,門地,教育,財産又は収入に よつて差別してはならない。」(下線筆者)を「政治的,経済的,社会的に 差別され」ず「平等」という軸で総合的に理解した人権保障の具現化,す なわち,性別による経済的・社会的差別を撤廃してジェンダー平等および 女性のエンパワメントを推進する法制度の実効性の確保がカギとなる。 第二次大戦後,新しい民主的な日本社会を構築するための,日本国憲法 に期待された立憲政策のトータルデザインは,今の言葉でいえば「女性の エンパワメント」であった2)。日本国憲法の施行にあわせて,選挙法,刑 法,民法,労働法等さまざまな法制度が新設・改廃された。これらの法制 度の整備によって憲法上の「法の下の平等」は達成されたと見えたよう で,多くの憲法学説ではたとえ現実の社会や労働において差別があったと しても,それは男女の差異に基づく「合理的区別」であるとして正当化さ れて,憲法に違反する事態が生じているとはみなされてこなかった3)。そ

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のためか,固定的な性別役割分担意識に根ざした職場,地域,家庭等の不 平等や差別は十分に解消されなかった。そこで,これらに直面した女性た ちは,日本国憲法や女性差別撤廃条約を旗印に用いて,裁判を提起した り,国や自治体に法律・条例の制定や政策の策定を求めたりして,自らの 政治的,経済的,社会的な権利を獲得しようとした4)。しかし,「合理的 区別」の壁は厚かった。 この閉塞した状況を打ち破る最初の大きな契機は,1980年代の,女性差 別撤廃条約を批准する際に必要となる国内法の整備であった。同条約第⚒ 条 ⒜ ⒝ では,締約国に男女平等および女性差別禁止に関する立法措置が 求められたが,日本にはそうした法律が制定されていなかったので,新法 の制定に向けて動き出した。その結果として,1985年に,勤労婦人福祉法 (昭和47年法律第113号)が全面改正されて,雇用の分野における男女の均等 な機会及び待遇の確保等女性労働者の福祉の増進に関する法律(昭和60年 法律第45号。以下,「均等法」という)が制定された。同法は,総合職に女性 が採用される等社会に大きな影響を与えたが,「合理的区別」の壁はやは り厚く,女子学生の就職差別,女性社員の労働条件等の差別,セクシュア ル・ハラスメント等は十分に解消されなかった。 次の大きな契機は,21世紀を目前にした1999年に,「男女が均等に政治 的,経済的,社会的及び文化的利益を享受することができ,かつ,共に責 任を担うべき社会を形成」することを目的に男女共同参画社会基本法(平 成11年法律第78号。以下,「基本法」という)が制定されたことである。同法 は,こうした不平等や差別が強く残る状況を打ち破る起爆剤となることが 期待された。しかし,「合理的区別」の壁を崩すまでには至らず,それ以 降も改善のペースはゆるやかである。世界の他国では,政治および経済に おける男女間の格差の縮小が目覚ましい進展をみせていることもあり, 2005年に開始された(公表は2006年)GGI における日本の順位は,先述の とおり,向上の兆しが見えない。 そして,「三度目の正直」になるであろうか,2015年に制定された女性

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の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号。以下, 「女性活躍推進法」という)は,男女の格差が大きい経済分野におけるジェ ンダー平等と女性のエンパワメントの推進をめざして制定された5)。いわ ば70年ぶりに立憲政策のトータルデザインが法律として具体化した,とも いえよう。 そこで本稿は,1999年に制定された基本法以降の,女性活躍およびジェ ンダー平等の推進に向けた法実践をもとに,女性活躍推進法の意義につい て,近年の欧州各国における法実践と比較しながら検討したい。したがっ て,家庭内や夫婦間に今なお残る性差別的な制度や慣行,あるいはとくに 取り組みが遅れている政治面での女性活躍の推進などについては別稿に譲 ることとした6)。

1 男女共同参画社会基本法制定後の,

日本における法実践

基本法は,男女共同参画社会の実現のために,男女の人権の尊重(第⚓ 条),社会における制度または慣行についての配慮(第⚔条),政策等の立 案および決定への共同参画(第⚕条),家庭生活における活動と他の活動の 両立(第⚖条),国際的協調(第⚗条)という⚕つの理念を定め,国,自治 体,国民の責務を規定した(第⚘条~第10条)。性差別や男女の不平等に対 する規制や制裁に関しては定められていない7)。 責務の規定について,基本法では,国,自治体,国民の三者に対して設 けられたが,実は,その制定過程においては,国民一般とは分けて事業者 の責務を独立して規定すべきであるという意見が有力に主張された8)。男 女共同参画社会の実現には,雇用・労働分野での推進が不可欠だからであ る。しかし,政府は,国民の中に事業者が含まれると解釈して9),個別の 条文は設けられなかった。そこで,衆参両院の委員会は,各会派の議員の 共同提案により同法の附帯決議を採択して10),この立法者意思を明示した。

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しかし,基本法が施行されても,依然として雇用・労働分野での男女間 の格差の大きさは十分に改善しなかった。そこで,その推進をさらに加速 させるために,2015年に女性活躍推進法が制定された(同法については,次 章で扱う)。女性の職業生活における活躍の推進をめざして,国,自治体, 事業者の責務を規定して(第⚓条,第⚔条),基本法の制定過程において積 み残した課題に取り組んだ法律といえよう。 同法のほかにも,1999年以降に女性活躍・ジェンダー平等推進の根幹と なる法律は多数制定されている。そこで,これらの法律を,女性に対する 暴力,労働,教育,農業等の⚔つの柱に整理して概観し,法制度および法 実践について検討する。なお,法実践に関するデータのうち,出典の記載 がないものは,2001年以降毎年発行されている内閣府編『男女共同参画白 書』による。 ⑴ 女性に対する暴力の規制 ① 法制度の発展 基本法と前後して,セクシュアル・ハラスメント,ストーカー,ドメス ティック・バイオレンス(以下,「DV」という)等,女性に対する暴力を規 制する法律が相次いで整備された。 第一に,セクシュアル・ハラスメントへの対応は,当初は規定がなかっ たものの,1997年の均等法改正(平成⚙年法律第92号)11)の際に新たにセク シュアル・ハラスメント防止のための事業主の配慮義務が追加された(第 21条第⚑項)。2006年の改正(平成18年法律第82号)により一歩進んで,事業 主の措置義務とされるとともに,被害者は女性労働者だけではなく,男性 労働者も対象となった(第11条第⚑項)。調停および違反した企業名の公表 の対象にも加えられた(第30条)。2016年の改正(平成28年法律第17号)によ り,事業者の義務として,妊娠・出産,育児を理由とした女性に対する不 利益取扱い(マタニティ・ハラスメント)への防止措置をとることが新たに 定められた(第12条の⚑第⚑項)。

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第二に,ストーカーへの対応は,1999年の埼玉県桶川市で起きた元交際 相手が加害者であったストーカー殺人事件をきっかけに,2000年にストー カー行為等の規制等に関する法律(平成12年法律第81号。以下,「ストーカー 規制法」という)が制定された。⚘つのつきまとい等の行為を同一の人物 に行うことをストーカー行為と定め(第⚒条第⚑項第⚑号~第⚘号),警察本 部長等が警告し(第⚔条第⚑項),従わない場合には都道府県公安委員会が 禁止命令を出す(第⚕条第⚑項)。禁止命令に違反した場合は,⚑年以下の 懲役または100万円の罰金が科される(第14条第⚑項)。その後,2012年の 神奈川県逗子市で起きた元夫が加害者であったストーカー殺人事件を契機 に見直しの必要が提起され,2013年に改正され(平成25年法律第73号),つ きまとい等の対象が拡大されてメール送信も追加された(第⚒条第⚑項第⚕ 号)。さらに,加害者がアイドル活動をしていた女性にツイッター等を用 いたつきまとい行為を執拗にくりかえした上で,2016年に東京都小金井市 で起きたストーカー殺人未遂事件を受けて,同年に改正され(平成28年法 律第102号),SNS の書き込みや住居付近をうろつくことも規制の対象とさ れた(第⚒条第⚑項第⚑号,第⚕号,第⚘号,同条第⚒項第⚒号)。さらに,急 に加害者の行為が激化して重大事件に発展するおそれがある場合等は,警 告をしていない事案でも,直接に禁止命令等をすることが可能となった (第⚕条第⚓項)。 第三に,DV の問題は,1995年に開催された国連の第⚔回世界女性会議 (北京会議)を契機に,各地で問題意識が急速に高まり,自治体の政策課題 としても位置づけられて,市民への啓発,被害者の一時保護,NGO への 財政的な支援等が施策として取り組まれた。DV への対応はこうした市民 と自治体の動きが国に先行したが,2001年に,衆参両院の主に女性議員の 間で急速に立法化の機運が盛り上がって,超党派の議員立法によって,配 偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(平成13年法律第31 号。以下「DV 法」という)が成立した。同法は,被害者の保護・支援の中 間となる施設として配偶者暴力相談支援センターおよび婦人相談所を位置

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づける(第⚓条)とともに,裁判所は被害者の申立てによって保護命令, すなわち,加害者に対して⚖か月間の接近禁止命令や⚒週間の住居からの 退去命令を出すことができることになった(第10条)。命令に違反した場合 は,⚑年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される(第29条)。さら に,2004年に改正されて(平成16年法律第64号),暴力の定義が身体的暴力 に限定されていたものが,精神的暴力にも拡大された(第⚑条第⚑項)。ま た,保護命令が拡大されて,元配偶者もその対象に含まれるとともに,退 去命令の期間が最長⚒週間から⚒か月に延長されて,再度の申立てと取消 制度が新設された(第10条第⚒項,第⚓項)。2007年の改正(平成19年法律第 113号)では,保護命令の内容として電話やメールを禁止することが加え られるとともに,接近禁止命令で保護される対象が,本人およびその子ど ものほか,親族等に拡大された(第10条第⚒項,第⚔項)。2013年に東京都 三鷹市で起きた加害者が元交際相手でリベンジポルノをくりかえした上で のストーカー殺人事件等を契機に,2013年の改正(平成25年法律第72号)で はその対象が同居する交際相手からの暴力および被害者に拡大された(第 28条の⚒)。なお,同事件は,リベンジポルノを処罰する私事性的画像記録 の提供等による被害の防止に関する法律(平成26年法律第126号)の立法化 のきっかけでもある。 第四に,性犯罪事件の凶悪化,顕在化により,刑法(明治40年法律第45 号)が改正された。 まず,2004年の条文の口語化にともなう刑法の大改正(平成16年法律第 156号)において,集団強姦等に関する罪が新設され(第178条の⚒),罪を 犯した者は⚔年以上の懲役刑が科されることとされた。また,強姦および 準強姦罪の法定刑は,「⚒年から⚗年」であったのが,「⚓年から10年」の 懲役となった(第177条,第178条)。あわせて刑事訴訟法も改正されて,法 廷で性犯罪被害者が証言する際の遮へい措置や別室でのビデオリンク方式 による証人尋問も新たに認められた(第157条の⚓,第157条の⚔)。 ついで,2017年に,性犯罪処罰にかかわる規定が明治時代に刑法が制定

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されて以来110年ぶりに大改正された(平成29年法律第72号)。強姦罪を見直 して,強制性交等罪に改正された(第177条)。これにより,構成要件の性 別の片面性を改めて,女性に限定されず,かつ,処罰の対象である性交 に,それまで強制わいせつ罪に該当するとされていた肛門性交,口腔性交 も含まれるとされるとともに,法定刑は⚕年以上の懲役刑が科されること とされた。この改正にともない,集団強姦等罪は廃止された。また,地位 や関係性を利用した子どもに対する性暴力を処罰するため,18歳未満の者 に対する監護者わいせつ罪および監護者性交等罪が新設された(第179条第 ⚑項,第⚒項)。加えて,性犯罪を非親告罪とした(旧第180条を削除)。 ② 法実践の発展 上記の⚔つに類型化した暴力の被害について,対応する国の機関へ相談 件数はどのくらいであろうか。2017年に刑法が改正された直後であるので 最新の状況が把握できない性犯罪を除く⚓つの暴力について,法実践が始 まった直後の⚑年間と,件数が2018年⚔月⚑日現在で把握できる最新の⚑ 年間の件数を比較して,法実践の発展を検討したい。 第一に,セクシュアル・ハラスメントの相談件数は,2016年⚔月に相談 に対応する都道府県労働局の組織が改められたため,その前後の件数を単 純に比較することができなくなった。改組前の雇用均等室はセクシュアル・ ハラスメント等の相談・指導を担当していたが,雇用環境・均等部(室) となった後はそれまで別の部局が担当していたパワー・ハラスメントの相 談および企業への啓発指導とあわせて対応することになったからである。 しかし,参考のため件数を挙げると,セクシュアル・ハラスメントに関 して,事業者に防止する配慮義務が課された改正均等法施行直後の1999年 度は9,451件と多く,2000年度は8,614件,2001年度は7,633件に減少した。 その17年後の2016年度は7,526件の相談があった。経年の推移をみると, 2007年度の相談件数は15,799件で,改正された均等法が施行された直後で あり,大きく増加する傾向であった。また,2016年度に雇用管理の実態を

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把握した7,257事業所のうち,セクシュアル・ハラスメントに関する是正 指導を行ったのは3,860件であった。 なお,2015年に労働政策研究・研修機構が行った調査によると,セク シュアル・ハラスメントの被害を経験した労働者の割合は28.7%であった が,従業員1000人以上の企業の正社員に限ると39.6%に跳ね上がった12)。 非正規社員よりも正社員,規模が小さい企業よりも大きい企業の方が,被 害経験率が高い傾向が見受けられる。 第二に,DV について,配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数 は,2002年度の35,943件から2016年度は106,367件となり,DV 法が施行 されてからの14年間に相談件数は約⚓倍に増加した。警察における配偶者 からの暴力事案等の相談件数は,2002年の14,140件から2016年の69,908件 と約⚕倍に増加した。最初の相談先として,警察が機能していることがわ かる。また,夫等の暴力を理由とした婦人相談所における一時保護件数 は,2002年度は4,642件,2015年度は4,577件であった。一時保護が最も多 かったのは2007年度の5,529件,2008年度の5,532件,2009年度の5,535件 であったが,経年の推移をみると大きな変化は見られない。さらに,DV 法に基づく保護命令が発令された件数は,2002年の1,128件から,2016年 は2,082件となり,約1.8倍に増加した。 なお,近年では,殺人事件の被害者と加害者の関係について,面識のな い者同士は約10%であり,ほとんどが顔見知りの間である。なかでも,親族 間で生じたものが半数を超える13)。2016年に殺人罪で検挙された901件14)の うち,夫婦間で起きた事案は158件であった。傷害や暴行の事案において妻 が加害者である比率は⚑割以下(それぞれ6.5%,8.1%)であるが,殺人事件 は妻が加害者になる比率が著しく高い(87件(55.1%))という特徴がある。 第三に,警察におけるストーカー事案の相談件数は,2001年の14,662件 から,2017年は23,079件と約1.6倍に増加した。ストーカー規制法による 警告や禁止命令等を受けた件数を2004年と2016年で比較すると,警告は 1,221件から3,562件と約⚓倍に,禁止命令等は24件から173件と約⚗倍に

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なり15),重大で深刻な事案が増えていることがわかる。 このように,基本法制定以降では,女性に対する暴力の件数をみると, いずれも増加している。これは,暴力の事例が増加したというよりも,暴 力が女性の活躍やジェンダー平等の推進を阻害する重大な人権侵害である という認識が深まり,潜在していた事案が顕在化しやすくなったという事 情にも支えられている。被害者に対応する法制度が拡充され,実際に活用 されていることがわかる。 ⑵ 労働におけるジェンダー平等 ① 法制度の発展 男女平等賃金の原則は,日本国憲法施行後いち早く,労働基準法(昭和 22年法律第49号)に盛り込まれた。 女性も男性と平等に働く権利を保障することをめざして16),日本政府が 女性差別撤廃条約を批准することにともない,1985年に均等法が制定され て,教育訓練,福利厚生,定年・退職・解雇に関する女性に対する差別が 禁止された。同法は1997年に改正されて,募集・採用,配置・昇進に関す る女性に対する差別が禁止された。また,ポジティブ・アクションに取り 組む事業主への国の援助が規定された。2006年には女性に対する差別のみ を禁止していた片面性を改めて,男女双方に対する「性別」を理由とする 差別が禁止された。ポジティブ・アクションは,国の援助の内容として実施 状況の開示が加えられるとともに,女性に対する有利な取扱いを妨げないと された。均等法は,1985年の発足時から実効性の弱さが指摘されてきたが, おおむね10年ごとに改正がくり返されてゆるやかではあるが発展してきた。 また,妊娠,出産,介護といったケアワークを担いながら労働者が仕事 を継続することの困難さが,女性活躍およびジェンダー平等の推進を阻害 している認識が高まり,1991年に育児休業等に関する法律が制定された (平成⚓年法律第76号)。同法は1995年に介護休業制度が加えられて育児休 業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成

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⚗年法律第107号)に改正された。その後もたびたび改正されて,さまざま な制度が拡充した。たとえば,2009年の改正(平成21年法律第65号)では, 父親あるいは母親が育児休業を取得する場合は子どもの年齢が⚑歳まで取 得できる制度を,父母の双方がおのおのに取得する場合に「パパママプラ ス」として延長されて子どもが⚑歳⚒か月まで取得できるとされた(第⚙ 条の⚒)。さらに,再申請により最長⚒歳まで延長できる(第⚕条第⚔項。 平成29年法律第14号)。2016年の改正(平成28年法律第17号)では介護休業が 取得できる93日間を,それまでの一括で取得する制度から,⚓回まで分割 して取得できるように変更された(第11条第⚒項)。また,それまでも妊 娠,出産,育児,介護を理由とした不利益取扱いは禁止されていたが,新 たにそうした不利益取扱いを防止するよう事業者に義務づけた(均等法第 11条の⚒第⚑項)。このように,法制度は発展してきた。 2003年に,国,自治体,一定の規模以上の企業に対して,おのおのが仕 事と育児の両立を推進するための行動計画を策定することを求めたり,政 府が法律上の要件を満たした企業を認定(くるみん)したりする次世代育 成支援対策推進法(平成15年法律第120号)が制定された。同法は2014年度 末までとする10年間の限時立法であったが,さらに10年間延長されて2024 年度末までとされた(平成26年法律第28号)。 また,非正規社員で働く女性が増えたことから,短時間労働者の雇用管 理の改善等に関する法律(平成⚕年法律第76号)が改正(平成19年法律第72 号,平成26年法律第27号)されたり,労働者派遣事業の適正な運営の確保及 び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)が改正(平成24 年法律第27号,平成27年法律第73号)されたりした。こうした非正規社員と して働く女性に関する法制度は,とくに後者の派遣労働者に関して,女性 活躍推進と逆行する改正であるという批判17)がある。 ② 法実践の発展 このようにさまざまな法制度が整備されているにもかかわらず,労働分

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野における男女平等は十分には実現されていない18)。 男女の賃金格差は,男性一般労働者を 100 とした場合の女性の一般労働 者の給与水準である一般労働者の男女間所定内給与格差の推移をみると, 均等法が施行された1986年では 59.7 から,基本法が施行された1999年で は 64.6 であり19),その後の2016年は 75.1 となり,数値はだんだんと改善 してきた。しかし,諸外国と比較すると,依然として格差は大きい。 また,2001年と2016年の,15歳から64歳の生産年齢人口を男女で比較す ると,男性は80.5%から82.5%に微増したが,女性は57.5%から66.0%と なり,上昇率は女性の方が高い。ただし,2016年になっても,男女の就業 率には16.5ポイントの差があり,女性が低い。管理職の女性比率につい て,1999年と2016年を比較すると,民間企業の部長級は2.1%から6.6% に,同課長級は3.4%から10.3%,同係長級は8.2%から18.6%とそれぞれ ⚒~⚓倍に増えているが,上昇率は低い。厚生労働省の調査20)によると, 2010年の段階で,10年前に採用された総合職の女性がすでに全員離職した 企業は48.9%であり,10年前に採用された総合職の女性の離職割合は男性 の⚒倍以上に当たる65.1%であった。すなわち,均等法が制定・改正され ても,女性が仕事を続けることが困難な状況は大きく改善されず,管理職 として活躍する女性も十分に増加しなかった。 企業の経営者における女性の割合も低い。役員における女性比率は, 2006年の1.2%から2016年は3.4%とわずかに増加した。 他方,女性が結婚,妊娠,出産で会社を退職するケースは少なくなっ た。女性労働者が出産により退職して数年後に復職するので労働力率の年 齢別の折れ線グラフが「M字型」になるカーブの底の深さは,徐々に浅く なっている。夫婦共働きの世帯数が片働き世帯数を上回った1997年以降, 両者の差は徐々に広がり,2016年では共働き世帯が1,129万世帯,片働き 世帯は664万世帯である。 他方,女性労働者のうち,育児休業を取得した比率は2007年度に前年度 より17ポイント上がって89.3%となったが,その後はおおむね80%台で推

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移している21)。他方,育児休業を利用して仕事をつづけた女性労働者は, 2000年~2004年は15.3%であったのがその10年後の2012年~2016年では 28.3%と13ポイント増加した。しかし,出産により退職した割合は40.4% から33.9%と若干の減少が見受けられるものの,言いかえれば依然として ⚓分の⚑以上の女性労働者は出産により退職しており,仕事とケアワーク の両立が困難であることがわかる。 男性労働者の育児休業取得率はほとんど変化がなく,1999年度は0.42% で,女性と同様に2007年度に前年度から急上昇して⚑ポイント高い1.56% となったが,2016年度は3.16%と依然としてたいへん低い。 このように,基本法制定以降,労働における女性の活躍やジェンダー平 等の推進は,法律上の課題と位置づけられてくりかえし法制度が改正され てきたものの,固定的な性別役割分担意識に基づく働き方は男女ともに大 きく変わらず,実効性が十分に上がっているとは言い難い。 ⑶ 男女平等教育の推進 ① 法制度の発展 教育の分野では,第⚒次大戦後に制定された教育基本法(昭和22年法律 第25号)に,教育の機会均等(第⚓条)と男女共学(第⚕条)22)が定められ, 学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づいて文部省が定める学習指導要領 に沿って,男女平等の教育が行われてきた。 教育基本法は2006年に全面的に改正されて(平成18年法律第120号),教育 の機会均等は内容の変更なく第⚔条に移り,男女共学を定めた第⚕条は削 除された。また,改正法第⚒条に新たに「教育の目標」に関する規定が設 けられて,「男女の平等」等を重んじるとされた(同条第⚓号)23)。 ② 法実践の発展 教育における女性活躍・ジェンダー平等は,2016年度の進学率は,高校 では男性96.3%,女性96.6%と,ほとんど同じであり,高校進学までは達

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成されているといえよう。 他方,大学では男性55.6%,女性48.2%であり,⚗ポイント以上男性の 方が高い。大学等高等教育在学率は,先進国の多くの国においては男性よ りも女性の方が高いため,この格差が先述の GGI の順位が低い要因の一 つである。ただし,2000年度と比較すると,高校進学率はほとんど変化が ないが,大学進学率は男性が47.5%,女性が31.5%であったので,女性の 上昇率の方が高い。 なお,2016年度の大学生の女性割合は44.5%であるが,専攻分野によっ て男女の偏りが見られる。女性割合が高いのは薬学・看護学等の67.5%, 人文科学の65.4%であり,逆に,女性割合が低いのは工学14.0%,理学 27.0%である。 ⑷ スポーツ,農業・農村における女性の地位向上 ① 法制度の発展 国による法律の整備は遅れたが,重要な課題に「スポーツ」や「農業・ 農村」がある。これらの課題は,近年,市民が自らの生活をより充実させ る活動の推進という新たな視点が加わって,さまざまな法律が制定された。 第一に,1977年に国が女性政策を推進するために策定した「国内行動計 画」によると24),スポーツに関しては,「母性の尊重及び健康の増進」と して,女性が地域スポーツクラブ等の活動に積極的な参加を促すこととさ れた。2002年に制定された健康増進法(平成14年法律第103号)第⚗条に基 づく基本的方針として2003年に策定された「健康日本 21」では,女性の 生涯にわたる健康について,性差に応じた配慮が必要とされた。 また,スポーツ振興法(昭和36年法律第141号)が2005年に改正されて, スポーツ基本法(平成23年法律第78号)とされた。ただし,同法には当時の 「オリンピック憲章(2011年版)」に IOC の使命と役割25)として定められて いたスポーツにおけるジェンダー平等の推進については盛り込まれなかっ た。最近は,国際競技大会等での女性のスポーツ選手の活躍が目立つ反

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面,選手およびコーチング・スタッフへ指導や監督と称したパワー・ハラ スメントやセクシュアル・ハラスメント,性暴力の事例が国内外で多数報 告されている。2020年の東京オリンピック,パラリンピック大会の開催が 間近に迫っている今日では,その改善が強く望まれている。 第二に,農業・農村に関しては,女性が農業生産と生活の向上とその調 和を図ることをめざすこととされた。農業分野では,1995年から家族経営 協定26)の締結を促進して,農家における女性の参画促進と地位向上が図ら れてきた。1999年に,基本法の施行直後にその理念をいち早く実現させる 食料・農業・農村基本法(平成11年法律第106号)が制定されて,女性の農 業経営における役割を適正に評価するとともに,女性が自らの意思によっ て農業経営およびこれに関連する活動に参画する機会を確保するための環 境整備を推進するものとされた(第26条)。これに続いた水産基本法(平成 13年法律第89号)では,水産業における男女共同参画の推進が求められた (第28条)。2001年に改正された森林・林業基本法(旧林業基本法。昭和39年 法律第161号)は,第20条に基づき2006年に策定された「森林・林業基本計 画」で,女性の林業経営への参画,女性林業者によるネットワーク化,森 林組合の女性役員の参画を推進するとした。さらに,農業委員会等に関す る法律(昭和26年法律第88号)および農業協同組合法(昭和22年法律第132号) があわせて改正されて(平成27年法律第63号),農業委員および農業協同組 合の理事の任命にあたっては,年齢や性別等に著しい偏りが生じないよう に配慮しなければならないとされた(農業委員会法第⚘条第⚗項,農業協同組 合法第30条第13項)。このように,農林水産業の意思決定過程における女性 の参画と主流化が強く求められている。 ② 法実践の発展 スポーツ基本法には,女性活躍およびジェンダー平等に関する規定はな いため,法実践について十分に検討することはできない。 農業分野の職業の女性たちは,仕事と家庭生活の線引きがあいまいで,

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労働時間や給与が決まっておらず,家族内で無償労働(アンペイドワーク) が当然視されることもある。その地位が低いことが多い。他方,かつて女 性は「三ちゃん農業(じいちゃん,ばあちゃん,かあちゃん)」と称されたほ ど農業就業者の主流であり,その人数も多く,たとえば1975年の農業就業 人口791万人のうち女性は⚖割以上の493万人(62.3%)を占めていた27)が, 最近では人数も比率も減少している。2000年と2016年における農林漁業就 業者に占める女性の割合を比較すると,農業は55.8%から46.8%に,漁業 は17.0%から12.7%に,林業は1999年の14.3%から2013年では13.2%に, おのおの女性比率が減少している。これに対して,農業委員,農協役員, 漁協役員に占める女性の割合を比較すると,農業委員は1.82%から8.1% に農協役員は0.58%から7.5%に,漁協役員は0.24%から0.5%(2015年度) にそれぞれ上昇している。 このように,基本法制定以降,農業分野における女性は,就業者に占め る割合が減少しながらも,意思決定過程への参画率は上昇している。この 分野における女性の活躍やジェンダー平等の推進が重要な課題であるとい う認識が深まり,ポジティブ・アクションの法制度が拡充され,実際に活 用されていることがわかる。

2 女性活躍推進法の活用

2015年に制定され,翌2016年⚔月⚑日に施行された女性活躍推進法は, 企業に対して情報公開を求めて,それにより,女性活躍・ジェンダー平等 の具体的な推進をめざすことが特徴である。同法は施行されてから現在ま で⚒年あまりと短いが,さまざまな法実践が見受けられる。そこで,同法 をエンジンにして女性の活躍をどのように推進することができるのかにつ いて,検討したい。

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【表⚑】 情報公開が求められる項目 *下記のうち⚑項目以上の公表を義務づけ 1 採用した労働者に占める女性労働者の割合 2 採用における男女別の競争倍率または採用における競争倍率の男女比 (男性の倍率を⚑としたときの女性の倍率) 3 労働者に占める女性労働者の割合 4 男女の平均継続勤務年数の差異または男女別の採用10年前後の継続雇用割合 5 男女別の育児休業取得率 6 一か月当たりの労働者の平均残業時間 7 雇用管理区分ごとの一か月当たりの労働者の平均残業時間 8 年次有給休暇の取得率 9 係長級にある者に占める女性労働者の割合 10 管理職に占める女性労働者の割合 11 役員に占める女性の割合 12 男女別の職種または雇用形態の転換実績 13 男女別の再雇用または中途採用の実績 ⑴ 公表される情報の広がりと深化 女性活躍推進法に基づき,従業員301人以上の企業は,① 自社の女性の活 躍に関する状況把握・課題分析,② その課題を解決するのにふさわしい数 値目標と取り組みを盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表,③ 自 社の女性の活躍に関する情報の公表を行うことが義務づけられた(第⚘条)。 上記②の,計画を策定して届け出たのは,2018年⚓月末までに行動計画 の策定等が法律上義務づけられている従業員301人以上の企業16,100社の うち,16,035社(99.6%)であった。なお,従業員が300人以下の中小企業 は努力義務であるが,自主的に公表している企業も多い。実際,届け出た 中小企業は4,567社であった。 上記③の,「自社の女性の活躍に関する情報公表」とは,次の13項目(表 ⚑)うち⚑つ以上の内容について企業の情報を公開することが求められる。

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情報公開の方法は,企業の CSR 報告書やウェブサイトによる公表のほか に,企業が自ら登録することによって厚生労働省のウェブサイト「女性の 活躍推進企業データベース」28)を用いることもできる。また,同サイトで は,この13項目とは別に設けられた自由記述欄等⚕項目を記入して公表す ることができる。このデータベースの利用は無料で,誰もが簡単に,個別 の企業の情報はもちろん,業種別に比較して閲覧することができる。 2016年12月末現在で,公表の義務がある企業のうち,上記ウェブサイト に登録した企業の割合は⚕割程度であり,公表する手段として活用されて いる。また,同データベースによって「行動計画の公表」「情報の公表」 のいずれかを行った企業は7,706社であった。他方,「行動計画の公表」と 「情報の公表」の両方を行った企業は3,875社で,情報を公表した項目は平 均で5.2項目であり,企業規模が大きいほど,公表項目数が多くなる傾向 にある。13項目のすべてを公表した企業は192社(5.0%)であったが,従 業員5,000人以上の企業に限ると15.8%となり,企業規模が大きいほど公 表する情報が増える傾向がある。 公表する情報として選択された項目を多い順にみると,① 男女の平均 継続勤務年数の差異,または,男女別の採用10年前後の継続雇用割合,② 採用した労働者に占める女性労働者の割合,③ 管理職に占める女性労働 者の割合,④ 一か月当たりの労働者の平均残業時間,⑤ 労働者に占める 女性労働者の割合,であった。 また,行動計画の策定・届出をした一般事業主のうち,女性の活躍推進 に関する取り組みの実施状況等が優良な事業主は,都道府県労働局への申 請により,厚生労働大臣の認定(えるぼし)を受けることができる。その 評価項目は,「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」 「多様なキャリアコース」の⚕つであり,評価項目の基準を満たす項目数 に応じて⚓段階で認定される。⚕つの評価項目の全てを満たす場合は,評 価が最も高く「認定段階⚓」,⚓~⚔の評価項目を満たす場合には「認定 段階⚒」,⚑~⚒の評価項目を満たす場合には「認定段階⚑」である。認

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定は,従業員300人以下の企業も受けることができる。 認定を受けた企業数は2018年⚓月末現在で579社である。最も評価が高 い「⚓」は393社(うち,従業員300人以下は98社),ついで「⚒」は183社 (うち,同29社),「⚑」は⚓社(うち,同⚐社)である29)。中小企業において も熱心に取り組まれていることがわかる。 ⑵ 公共調達による促進 公共調達とは,政府がある政策目的を推進するために自らの契約を用い ることである。政府契約に関する会計法上の「経済性の原則」の例外で, 女性の活躍を推進する企業と契約してその取り組みを促そうという趣旨で 行われる。その際には独自にチェックシートを用いて事業者の登録を促し たり,女性の活躍促進に関する認定制度とリンクさせたり,入札にあたっ て評価を加点する場合がある。国は「女性の活躍推進に向けた公共調達及 び補助金の活用に関する取組指針」(平成26年⚘月⚕日男女共同参画推進本部 決定)に基づき,2016年に国の各機関の契約において公共調達を導入する こととなった。 女性活躍推進法に基づく「えるぼし」認定企業,次世代育成支援対策推 進法に基づく「くるみん」認定企業,若者雇用促進法に基づく「ユース エール」認定企業は,総合評価落札方式・企画競争方式において加点の対 象となった。加点する配点の割合は⚑%から10%までであり,各府省庁に よって異なる。たとえば,物品役務等の総合評価落札方式と企画競争をあ わせた44件の評価項目の配点割合について,最も多かったものは「⚓%」 で 17 件(38.6%),つ い で「⚕%」が 12 件(27.3%),「10%」が ⚕ 件 (11.4%)であった30)。 2016年度中に国のすべての26機関31)がこうした取り組みを開始した。同 年度の取り組み状況は,予算規模が大きい国土交通省,防衛省において段 階的に実施されている影響からか,約8,500件(対象となる調達全体の約 20%)の約6,200億円(同約15%)の調達にとどまった32)。

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⑶ 経営層におけるダイバーシティの推進と投資の影響力の活用 性別や国籍等多様な属性や経歴を持つ人々が企業経営を担うダイバーシ ティの推進が,ビジネスの持続可能な発展をもたらすことは,すでに国内 外を問わず共通の認識となっている。日本では,2014年に企業内容等の開 示に関する省令(昭和48年大蔵省令第⚕号)が改正されて(平成24年内閣府令 第64号)33),2015年度以後の事業年度に関する有価証券報告書において, 企業は,各役員の氏名,生年月日,略歴等とともに,役員の男女別人数お よび女性比率の記載が義務づけられて34),これを後押しした。さらに, 2017年⚕月に,金融庁に設置されたスチュワードシップ・コードに関する 有識者委員会は,「『責任ある機関投資家』の諸原則 日本版スチュワード シップ・コード」を公表した。これを受け入れた機関投資家は,投資先企 業の社外取締役の割合および取締役会の構成等,多様性を尊重し,女性が 活躍する経営を行う企業を重視することが期待される。 そこで,機関投資家向けに投資の指標を作成する企業である MSCI(本 社:アメリカ)は,女性活躍推進法に基づいて公表された情報を活用して, 「MSCI 日本株女性活躍指数」(WIN)を開発した。すなわち,時価総額上 位500銘柄の,各業種から性別多様性(ジェンダー・ダイバーシティ)のスコ アが高い上位半数の銘柄を選定して投資を行う。女性の活躍が進んでいる 企業は中長期的な利益を生み出し,投資のリターンが得られやすいからで ある。2017年⚖月現在で212銘柄が選定されている35)。日本の年金積立金 管理運用独立行政法人(GPIF)は2016年から,WIN を含む⚓つの ESG36) 指数に,運用資金約150兆円のうちの⚑兆円規模での投資を開始した。 GPIF の資金の規模からみれば少額であるが,投資の指標として非財務情 報である女性の活躍やジェンダー平等の推進が不可欠な性別多様性を組み 入れたことは,その取り組みが中長期的に企業の利益を生み出すという考 え方を明らかにしたことになり,意義は大きい。 この性別多様性スコアは,女性活躍推進法に基づいて企業が情報を登 録・公表する厚生労働省のデータベースを用いて算出されている。「新規

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採用における女性比率」「男女の平均勤続年数の差」「管理職・取締役にお ける女性比率」等,女性が活躍する度合いの高い上場会社を選び,その会 社の株式に投資をするための指数である。活躍する度合いの数値だけでは なく,公表する項目数の多寡も評価に影響する。すなわち,同法では,先 述のとおり,定められた13項目のうち⚑つ以上を公表していれば法律上の 義務は果たしていることになるが,それを逆手にとって,公表している項 目数がより多く,かつ,女性活躍の度合いが高い企業が,投資先として高 い評価を得られるしくみである。この課題に取り組む企業の積極性および 消極性も「見える化」する女性活躍推進法のしくみを活用した好例といえ よう。

3 さらなる推進に向けて

――欧州各国の法実践からの示唆 日本における社会的,経済的な男女間の格差や不平等が縮小されて,女 性活躍およびジェンダー平等を具体的に推進するにはどのような方策がカ ギとなるであろうか。先行している欧州各国の法実践を例に,検討する。 ⑴ 禁止される差別の明示とインクルージョン 欧州35か国の女性活躍・ジェンダー平等の推進に関する法実践を取りま とめた報告書37)によると,各国憲法では,憲法典の明文により性差別 (sex discrimination)を禁止しているのはイギリス,デンマーク,リヒテン シュタインの⚓か国を除くすべての国である。また,21か国38)では男女間 の平等(equality between men and women)について規定している。ラトビ ア以外のすべての国では,男女均等待遇(equal treatment)を定めた法律 を定めているが,それが差別禁止法(Anti-Discrimination Act)39)やジェン ダー平等法(Gender Equality Act)40)に発展した国もある。

法律上,性(sex),ジェンダー(gender),トランスジェンダー (trans-gender)の定義を区別している国は限られる。性自認(gender identity)を

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規定するのはフィンランドおよびマルタである。「性(sex)」と「ジェン ダー(gender)」を区別して規定するのは,セルビア,ルーマニア,ス ウェーデン,イギリスである。さらに,判例法により,性別変更による差 別を禁止する国も多く,こうした国々では性自認に基づく差別に対象を広 げて禁止しているところもある41)。 また,直接差別はすべての国で禁止される。間接差別も,すべての国で 明示的に禁止されている。判例法理も各国で確立している42)が,裁判に なったときに間接差別の立証は困難であることはすべての国に共通してお り,18か国では統計的証拠の採用が認められる43)。他方,法律上,複合差 別を禁止しているのは15か国である44)。 差別的指示(instruction to discriminate)も差別の一形態であり,すべて の国で禁止される。差別的指示とは,第三者に差別的行為をさせること で,たとえば,上司が部下に対して,ある特定のポストに女性を就けない ように指示することである。 また,すべての国で,法律上,性別を理由としたハラスメントおよびセ クシュアル・ハラスメントは禁止されている。 このように,欧州各国45)は,禁止される性差別を法律上明示すること で,差別を受けた被害者が適切な救済が受けられるように対応されてい る。これは,差別や不平等の被害を受けやすいマイノリティを社会から排 除するのではなくインクルージョン(包摂)して,多様性が尊重される社 会の構築がめざされていることがわかる。 ⑵ 職業生活における女性の活躍推進 企業におけるジェンダー平等の実現や性差別の解消を実効性をもって推 進するために,「差別の規制」から,企業および地域のさまざまなステー クホルダーと連携した「エンパワメントの推進」に法制度を転換している 国が2010年以降に数多くみられるようになった。そうした各国の法制度の 特徴は,次の⚓点に整理できる。

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第一に,社員への女性の採用や管理職登用に関するポジティブ・アク ションの導入を求めることである。欧州35か国のうち,ラトビアを除くす べての国において,法律上,ポジティブ・アクションが認容されている。 第二に,女性の活躍の促進や,障がい者,外国人等ダイバーシティを推 進する企業行動計画の策定と,その進捗状況の公表を法律上の義務とする ことである。企業は,採用や勤続年数,管理職数や賃金等,男女別のデー タを公表して,男女間の格差を「見える化」する。政府は,公表された情 報をもとに,女性のエンパワメントの推進に障壁となる課題を共有して, 企業が自ら取り組む解決策のヒントとともに,政府や自治体の政策や事業 の不十分な点をあぶりだして,その解決をめざす。 欧州各国ではとくに,男女の賃金格差の固定化が,女性の活躍が進まな い要因の一つとなっていることが問題視されている。そこで,近年,イギ リスとドイツにおいて,企業に対して男女平等賃金に特化して情報公開を 求める法制度が整備された。 まず,イギリスでは,2010年に「同一賃金法」を定め,男女の賃金格差 をなくすために政府と企業が協働して取り組んでいる。イギリスの賃金格 差は,1997年の27.5%から2016年には18.1%と圧縮し,かなり改善され た。実際に,1999年と2016年の年間収入額を比較すると,男性の1.54倍に 比べて,女性は1.7倍に伸びた。しかし,同国は,依然として賃金格差が 大きな要因は,女性が家庭責任をより多く担うために有償労働の時間が短 くなり,かつ,その能力が発揮されず,昇進せず,仕事で十分に活躍でき ないからであるとして,2016年12月に実態を「見える化」するため,業種 別に男女の賃金格差が一覧できるウェブサイトを立ち上げた46)。これによ り,最も男女間の格差があり差別的な業種は格差が45.4%(男性の賃金水 準を 100 とした場合女性は 54.6 となる)の建設監督者であることが一目瞭然 になった。 さらに,同法に新たに「男女賃金格差情報公開規則」が制定されて, 2017年⚔月から,約8,000社に対し,次の⚔つの男女別データを公表して

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「見える化」するよう義務づけた47)。従業員250人以上の企業に対して,イ ギリス法上の雇用契約による従業員の ① 賃金の中央値,② 社内におけ る低い賃金層と高い賃金層に男女の社員がどのくらい分布しているのかを 明らかにする賃金の平均値,③ 女性の活躍が進んでいない領域を明らか にする賃金構造における男女の分布,④ ボーナスの賃金格差の公表であ る。該当する企業は,2018年⚔月以降,12か月分のデータの情報を当該企 業および政府のウェブサイトにて公表しなければならない。同国による と,賃金格差がなくなって女性が活躍した分が賃金に反映されれば,2025 年までに,GDP が1,500億ポンド(約210兆円),女性の雇用が84万人増え るという試算から,女性活躍およびジェンダー平等の推進だけではなく, 国の経済成長戦略としても,企業のビジネスチャンスとしても,最も重要 な課題と位置づけられた。EU 離脱にともない,イギリスでは労働力人口 の増加が見込めないため,賃金格差をさらに圧縮することが差別的な労働 慣行を改善することにつながり,その結果,国内の人材のプールを最大限 に活用し,企業および国の経済の成長をめざしている。 また,ドイツでは男女同一賃金法により,従業員201人以上の企業の従 業員に対して,基本給および賃金の構成要素について情報提供を求める法 的権利を付与した。2018年⚑月以降,従業員501人以上の企業に対して, 男女同一価値労働同一賃金への取り組み状況の報告を義務づけた48)。取り 組まない場合は,その理由について説明・報告を義務づける,いわゆる 「遵守か説明か」のルールである。報告書は,当該企業の経営報告書に添 付して公表することが求められる。 ⑶ 取締役等への女性の登用促進 企業の取締役等に女性がより一層参画することを目的に,その割合を法 律で定めるクオータ制を導入する国もある49)(表⚒)。民間企業の意思決 定過程に男女がともに参画することがビジネスも国の経済も発展する,と いう考え方に基づく50)。民間企業の経営層を女性が担う割合が極端に低い

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のは,これまでの性差別や不平等,あるいは,企業経営は男性が担うもの といったジェンダー・バイアスの結果であるため,それらを解消すること が公正で豊かなより良い社会をつくる,という趣旨である。 【表⚒】 各国の取締役クオータ制度とその進捗51) 国 名 目標値 施行年 法的枠組み 取締役の女性比率 2011年 2015年 ノルウェー 40% 2005 制裁あり 40.2% 38.7% スペイン 2007 遵守か説明か 10.6% 18.8% フランス 2011 制裁あり 18.2% 34.4% イタリア 33% 2011 制裁あり 4.2% 24.6% ベルギー 2011 制裁あり 10.8% 27.0% オランダ 30% 2011 遵守か説明か 16.2% 24.4% ドイツ 2016 制裁あり 13.2% 22.6% デンマーク 自主目標 2013 遵守か説明か 14.0% 26.5% 各国の目標値をみるといずれも30%以上であることがわかる。「30%」 という取締役の女性比率は,多様性が尊重される企業文化をつくる基準と なる数値である。この目標値は「クリティカル・マス」と呼ばれ,1990年 の「国連ナイロビ将来戦略勧告」によって世界的に妥当なものだと確認さ れた。目標値がこの基準に達しない企業や市場も世界にはまだ多くある が,女性の役員,管理職,社員が存分に力を発揮して活躍できる企業文化 を真剣に作り出すには「クリティカル・マス」の考え方を企業経営の知恵 に取り入れることが重要である。 法律によるクオータ制には,企業がその取締役等に法定の割合以上に女 性を登用できない場合,制裁がある国とない国がある。いち早くこれを導 入したノルウェーでは,裁判所で法人登記が取り消される可能性があり, 制裁はかなり厳しい。この結果,企業の取締役における女性の割合が, 2003年は⚖%であったが,2010年は44%と大幅に上昇した。ただし,それ

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以降は若干下がっている。フランスやベルギーでは,取締役の報酬の支払 いが停止される。他方,「遵守か説明か」ルールが適用されるオランダ等 では,企業には法律を守ることが当然求められるが,違反しても直接の制 裁はない。他方,実行できなかった場合は,その理由を説明しなければな らない。各国のクオータ制の強制力の度合いは異なるが,導入された国で は取締役の女性割合が大幅に増えており,国が法律で定めて企業の努力を 後押しする効果の大きさがわかる。

お わ り に

男女共同参画会議の民間議員を長年勤めた鹿嶋敬は,男女共同参画社会 と女性活躍推進について,男女共同参画と女性活躍は親子の関係である, および,「女性活躍促進はプロセス,ゴールは男女共同参画社会の形成」52) と指摘し,両者を分けてとらえている。しかし,欧州各国の法実践の例の とおり,性差別(sex discrimination)の規制および女性の活躍(women’s empowerment)とジェンダー平等(gender equality)は,三位一体のものと して推進されてこそ,実効性が確保できるだろう。 その際には,欧州各国の法実践,すなわち,直接差別だけではなく,間 接差別,性別に基づくハラスメント,セクシュアル・ハラスメントを法律 上禁止した上でインクルージョンと女性のエンパワメントをめざすこと, 具体的には男女の賃金格差の公表と取締役への女性の登用促進の取り組み が参考になる。法律で実施を義務づけるクオータ制を採用する場合は,違 反企業に対して直接的な制裁を課すよりもむしろ,「遵守か説明か」原則 に基づく情報公開を推進して,社会的な対話を広く促して好循環を生み出 す方が,実効性が確保されるのではないだろうか。また,本稿では紙幅の 都合により十分に扱えなかったが,欧州各国では法律に違反する差別や人 権侵害を救済・解決する裁判外紛争処理制度(ADR)である国内人権機関 が法実践の活性化に大きく寄与していることも付け加えておきたい。国内

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人権機関は,EU 等の地域機関,国連等の国際機関,国内外の NGO 等 と,権利の多元的・多層的な実現プロセス53)を構築しており,こうした連 携・協働も,法実践の発展には重要である。 さらに,近年では,固定的な性別役割分担に基づく差別的行為だけでは なく,無意識のバイアス(unconscious bias)を解消してこそ,女性活躍と ジェンダー平等が実現できる,と考えられている。日本の基本法や女性活 躍推進法には,性差別や性に基づく差別に対する定義が十分に明記されて いない54)。そこで,差別の規制,女性活躍およびジェンダー平等の推進に 無意識のバイアスの撤廃を加えた⚔点を同時並行で,かつ,女性に対する 暴力,労働,教育,スポーツ,農業の分野を総合的,横断的に取り組んで 推進することが期待される。 * 本稿におけるインターネット資料の最終アクセス日は2018年⚔月20日である。

1) World Economic Forum, The Global Gender Gap Report 2017, (2017).

2) 大西祥世「『政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない』の保障――憲法 普及における男女同権の進展と停滞――」立命館法学361号(2015年)⚓頁。 3) 大西祥世『女性と憲法の構造』(信山社,2006年)49-50頁。同「ジェンダー法学から見 た憲法学の再構築」ジェンダーと法⚕号(2008年)112頁。 4) 大西・同上『女性と憲法の構造』,225-275頁。 5) 同法の制定過程は,小畑史子「女性活躍推進法の制定」ジュリスト1494号(2016年) 50-55頁,皆川満寿美「女性活躍推進法の成立――『成長戦略』から『ポジティブ・アク ション』へ」国際ジェンダー学会誌14巻(2016年)5-31頁に詳しい。 6) 2018年⚕月に,政治分野における男女共同参画の推進に関する法律(平成30年法律第28 号)が制定・施行された。 7) 辻村みよ子『概説ジェンダーと法〔第⚒版〕』(信山社,2016年)44頁。 8) 内閣府男女共同参画局『男女共同参画社会基本法逐条解説』(ぎょうせい,2004年) 50-61頁。 9) 佐藤正紀政府委員の発言。第145回参議院総務委員会議録第⚙号(平成11年⚕月18日) 10頁。 10) 参議院の附帯決議では「各事業者が,基本理念にのっとり,男女共同参画社会を形成す る責務を自覚するよう適切な指導を行うこと」(参議院総務委員会平成11年⚕月21日),衆 議院の附帯決議では「各事業者が,基本理念にのっとり,男女共同参画社会形成に寄与す る責務を有することを自覚して,男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の推進を図

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るよう,適切な指導を行うこと」(衆議院内閣委員会平成11年⚖月11日)と決議された。 11) 法律の名称の後半が削除されて「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保 等に関する法律」に変更された。 12) http://www.jil.go.jp/press/documents/20160301.pdf 13) http://www.moj.go.jp/content/000112398.pdf 14) https://www.npa.go.jp/toukei/seianki/h28hanzaizyousei.pdf 15) http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/64/nfm/n64_2_4_6_3_1.html 16) 自治体でいち早く女性行動計画を策定した東京都では,女性の働く権利を最も大きく制 約しているのは企業の採用時における男女差別であるとした(東京都『婦人問題解決のた めの東京都行動計画』(1978年)41頁)。 17) 浅倉むつ子『雇用差別禁止法制の展望』(有斐閣,2016年)610頁。 18) その要因を日本の雇用慣行にあると分析するものとして,山口一男『働き方の男女不平 等』(日本経済新聞出版社,2017年)。均等法や育児介護休業法の実効性に関する課題につ いて,季刊労働法260号掲載の「特集性差別禁止法のエンフォースメント(2018年)2-60 頁。 19) http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/dl/s0323-9b.pdf 20) 厚生労働省「コース別雇用管理制度の実施・指導状況(平成22年度)」。 21) http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-28r-07.pdf 22) 第⚕条には「男女は,互いに敬重し,協力し合わなければならないものであって,教育 上男女の共学は,認められなければならない。」とある。 23) 改正教育基本法第⚒条第⚓号には「正義と責任,男女の平等,自他の敬愛と協力を重ん ずるとともに,公共の精神に基づき,主体的に社会の形成に参画し,その発展に寄与する 態度を養うこと。」とある。 24) 総理府「国内行動計画」(1977年)7-10頁。 25) 「男女平等の原則を実行するための観点から,あらゆるレベルと組織においてスポーツ における女性の地位向上を奨励,支援すること」とある。 26) 家族経営協定は,農業経営に参画する個人,とくに女性の地位及び役割を明確化し,そ の意欲と能力を十分に発揮できるようにするため,農家の経営の方針や家族一人ひとりの 役割,働きやすい環境づくり等について,家族の話し合いにより取り決めるものである。 1995年に農林水産省から「家族経営協定の普及推進による家族農業経営の近代化につい て」(平成⚗年⚒月⚗日付け⚗農改B第103号構造改善局長,農蚕園芸局長)が通知され て,全国に普及した。2017年⚓月31日現在,57,155戸で締結されている(農林水産省経営 局就農・女性課「家族経営協定に関する実態調査結果について」(2018年))。 27) http://www.maff.go.jp/j/keiei/kourei/danzyo/d_cyosa/pdf/jyosei_date_2707.pdf 28) 女性の活躍推進企業データベース http://www.positive-ryouritsu.jp/positivedb/ 29) http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000129028.html。女性活躍推進法 の手法や活用について,小畑史子「女性活躍推進法の意義」日本労働法学会誌130号 (2017年)100-112頁。 30) 内閣府男女共同参画局「調達におけるワーク・ライフ・バランス等推進企業評価の推進

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に関する調査研究報告書」(2018年)。 31) 衆議院,参議院,内閣官房,内閣法制局,人事院,内閣府,宮内庁,公正取引委員会, 警察庁,個人情報保護委員会,金融庁,消費者庁,復興庁,総務省,法務省,外務省,財 務省,文部科学省,厚生労働省,農林水産省,経済産業省,国土交通省,環境省,防衛 省,会計検査院,最高裁判所の26機関。 32) 内閣府男女共同参画局・前掲注30。なお,段階的に実施するのは両省のほか,衆議院, 参議院,法務省,農林水産省である。 33) 2001年⚑月の中央省庁改革により,内閣府の外局として金融庁が設置された。 34) 内閣府男女共同参画局のウェブサイトにて最新の「有価証券報告書に基づく上場企業の 女性役員の状況」が一覧できる。http://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/ya-kuin.html 35) https://www.gpif.go.jp/operation/pdf/esg_selection.pdf 36) 投資プロセスに,財務情報だけではなく,非財務情報である E(環境),S(社会),G (ガバナンス)を考慮すること。中長期的なリターンが期待されている。2006年に国連が 主導して発足した「責任投資原則(PRI)」においても重視されている。https://www.un-pri.org/

37) Alexandra Timmer and Linda Senden, A Comparative Analysis of Gender Equality Law in Europe(EC, 2017). 同報告書は,2017年⚑月現在の,EU 加盟国28か国のほか, ⚓か国(アイスランド,リヒテンシュタイン,ノルウェー)と EU 加盟候補国の⚔か国 (マケドニア,モンテネグロ,セルビア,トルコ)を加えた合計35か国の男女平等法制に ついて網羅的に調査・研究をしたものである。 38) オーストリア,ブルガリア,クロアチア,フィンランド,フランス,ドイツ,ギリ シャ,ハンガリー,イタリア,リヒテンシュタイン,リトアニア,マケドニア,マルタ, モンテネグロ,ポーランド,ポルトガル,ルーマニア,セルビア,スロバキア,スペイ ン,トルコの21か国である。 39) たとえば,チェコ,ハンガリー,アイルランド,ポーランド,ルーマニア,スロバキ ア,スウェーデン,イギリスの⚘か国である。 40) たとえば,ベルギー,ブルガリア,クロアチア,デンマーク,フィンランド,ギリ シャ,リトアニア,モンテネグロ,オランダ,ルーマニア,セルビアの11か国である。 41) たとえば,性別変更および性自認に基づく差別を禁止するのは,ベルギー,チェコ, フィンランド,ハンガリー,マルタ,ポルトガル,スウェーデンの⚗か国であり,性別変 更に基づく差別を禁止するのは,ブルガリア,ギリシャ,モンテネグロ,スロバキア,イ ギリスの⚕か国である。 42) 辻村みよ子『憲法とジェンダー』(有斐閣,2009年)137頁。 43) ベルギー,チェコ,デンマーク,エストニア,フィンランド,フランス,ギリシャ,ハ ンガリー,アイルランド,リトアニア,マルタ,オランダ,ノルウェー,ポーランド,セ ルビア,スペイン,スウェーデン,イギリスの18か国である。 44) オーストリア,ブルガリア,クロアチア,デンマーク,ドイツ,ギリシャ,アイルラン ド,イタリア,マケドニア,マルタ,モンテネグロ,ポーランド,ルーマニア,セルビ

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ア,トルコの15か国である。 45) EU の性差別禁止法について,黒岩容子「性平等に向けての法的枠組み:EU 法におけ る展開を参考にして」日本労働研究雑誌56巻⚗号(2014年)60-69頁,同「EU 性差別禁 止法の展開」日本労働法学会誌126号(2015年)170-182頁。 46) https://www.gov.uk/government/news/new-website-reveals-gender-pay-gap-by-profession 47) https://www.gov.uk/guidance/gender-pay-gap-reporting-overview 48) https://www.bmfsfj.de/blob/113464/d05130bed5ec6f90a37d2c340f898d2f/gesetzentwurf-lohngerechtigkeit-data.pdf 49) 各国の取締役クオータ制は,大西祥世「ポジティブ・アクションによる女性のエンパワ メントと平等推進」法學志林109巻⚑号(2011年)18-20頁,柴山恵美子「欧州連合の『ク オータ2020戦略』」渡辺峻、守屋貴司編『活躍する女性会社役員の国際比較』(ミネルヴァ 書房,2016年)220-226頁に詳しい。 50) 大西祥世「企業・国連・政府の協働による人権の実現」法學志林110巻⚑号(2012年) 77-79頁。 51) 大西祥世「女性の経済的エンパワメント・各国の取組⑥ 女性取締役を⚓割超に」共同 参画2016年10月号(2016年)。 52) 鹿嶋敬『男女平等は進化したか』(新曜社,2017年)69-71頁。 53) 江島晶子「権利の多元的・重層的実現プロセス――憲法と国際人権条約の関係からグ ローバル人権法の可能性を模索する」公法研究78号(2016年)62-64頁。 54) 女性差別撤廃委員会「日本の第⚗回及び第⚘回合同定期報告に関する最終見解」(2016 年)(CEDAW/C/JPN/CO/7-8)。

参照

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