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教員養成における稲作実習と生き物調査の実践-総合的な学習の必要性

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Academic year: 2021

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(1)横浜国立大学教育学部紀要(Ⅰ教育科学). 教員養成 におけ る稲 作実習と 生き物 調査 の実践 - 総合的 な学 習の必要 性 松葉口玲 子 Praxis of Rice Cultivation and Biological Research in Teacher Training -Necessity of Integrated Study- Reiko MATSUBAGUCHI. 1. は じ め に 学 校 教 育 に お い て 従 来 か ら 特 別 な 位 置 に あ る も の の 一 つ に 、稲 作 体 験 学 習 が あ る 。近 年 、 バケツによる稲の栽培も見受けられるものの、総合的な学習の時間を中心として、 場合に よっては社会科あるいは生活科等において、田んぼでの稲作体験学習 が実施されることが 多い。またそれとは別に環境教育の一環として、ビオトープを学校内に有するところも増 えている。次期学習指導要領でも、持続可能な社会の構築は重視されているが、子どもた ちの身近な消費行動と生態系の関係をつなげて考えるうえで、コメを主題にすることは重 要 で あ る 。そ の 際 、 「 消 費 」だ け で な く「 生 産 」に つ い て も 学 ぶ こ と に よ っ て 、自 ら の「 消 費」の在り方を省察することができるはずである。 そ こ で 筆 者 は 、 小 学 校 教 員 養 成 用 の 授 業 科 目 「 小 教 専 生 活 科 」( 春 学 期 = 前 期 2 単 位 ) の な か で 、稲 作 実 習 を 2011 年 か ら 実 施 す る と と も に 、2013 年 か ら は 生 き 物 調 査 も 同 時 に 実施してきた。田んぼやコメの多面的機能の重要性とともに、食べ物と対峙する身体性の 獲得という観点から、環境教育、消費者教育、食育といった枠を超えて、 食と農をつなげ (鶴田ほか. 2000)、 食 環 境 教 育 ( 鈴 木 ・ 松 葉 口. 2005) と し て 総 合 的 に 捉 え て 指 導 す る. 価 値 の あ る も の と 考 え て い る か ら で あ る 。持 続 可 能 な 社 会 の 構 築 や ESD( 持 続 可 能 な 開 発 の た め の 教 育 )、 SGDs( 持 続 可 能 な 開 発 目 標 ) の 視 点 か ら も 重 要 で あ る 。 しかしながら、学校現場へ出ることがますます多くなる教員養成系学部における一授業 科目の中で実施するには様々な課題もある。 そこで本稿では、実践を振り返りつつ、その 意義と課題について考察したい。. 2. 稲 作 実 習 と 生 き 物 調 査 の 実 践 概 要 (1) 授業での位置づけ 現時点では総合的な学習の時間に関する授業科目がないため、同授業では、総合的な学 習の時間についても意識して指導している。 学校現場での稲作体験学習も、総合的な学習 の時間で実施されている場合が多い。 同授業において筆者が重視している点は大きく2つある。第一に、生活科の目標が「自 164.

(2) 横浜国立大学教育学部紀要(Ⅰ教育科学). 立 へ の 基 礎 」で あ る こ と と 同 時 に 、 「 総 合 的 な 学 習 の 時 間 」を 含 め た す べ て の 教 科 へ つ な が る ス タ ー ト ・ カ リ キ ュ ラ ム と し て の 重 要 性 。 第 二 に 、 生 活 科 の 英 語 名 が “ Living Environmental Stuies”で あ る こ と に 絡 み 、 カ リ キ ュ ラ ム ・ マ ネ ジ メ ン ト の 視 点 か ら 、 環 境 教 育 に お け る“ in”, “ abour” , “ for”の 理 念 と 重 複 す る 意 味 の 重 要 性( 松 葉 口. 2013). である。なかでも、レイチェル・カーソンのいうセンス・オブ・ワンダーの今日的意義を 一人でも多くの学生たちに気づいてもらいたいと考えている。 稲作実習と生き物調査もこ う し た 延 長 線 上 に あ る 。 つ ま り 、 田 ん ぼ の 中 (“ in” )で 多 様 な 生 き 物 や 空 気 ・ 自 然 を 体 感 す る こ と に よ っ て 感 受 性( セ ン ス・オ ブ・ワ ン ダ ー )を 育 み 、食 べ 物 や 生 き 物 に つ い て( about) 興 味 関 心 を 持 っ て 調 べ 、明 ら か と な っ た 課 題 を 解 決 す る 方 策 に つ い て( for)探 究 す る 力 を 身に付けるうえで、バーチャルな知識ではなく、自らの身体を使った「身体性」を伴う活 動が重要であり、稲作実習と生き物調査をセットで実施することはそれを可能とするので ある。 授業の初回では、生活科イメージ・マップの作成を通して、学生たちが経験してきた生 活 科 の 実 践 を 振 り 返 る と と も に 、生 活 科 へ の イ メ ー ジ を 膨 ら ま せ る 。次 回 以 降 は 、 「まちた んけん」の疑似的体験としての大学内でのキャンパス探検、サウンド・マップ作成、ネイ チャー・ゲームなど、生活科の実践に生かせる諸活動を実体験するほかに、ビオトープも 含めてそれらを用いた授業風景の映像も視聴することによって、学校現場での具体的なイ メージを膨らませたり、他教科との違いや独自性について考えさせたりする。同時に、生 活科や総合的な学習の時間の理論的背景とともに、その前史ともいえる新教育運動(及川 平治の明石師範学校女子部附属小学校、木下竹治の奈良女子高等師範学校附属小学校、澤 柳政太郎の成城小学校、野村芳兵衛の児童の村小学校その他) について調べ学習をした後 にプレゼンテーションする等、さまざまなアクティブ・ラーニングを実践している。 こうしたなかで、稲作実習と生き物調査は大きな特徴として存在しており、授業希望者 も 多 い が 、 50 名 程 度 に 絞 っ て 実 施 し て い る 。 (2) 実践の様子 実習の場は、平塚市郊外にある平塚教場である。すぐ近くには市民病院もあり、いわゆ る 住 宅 地 に 囲 ま れ て い る 。 稲 作 実 習 に つ い て は 教 場 の 技 官 、 生 き 物 調 査 に つ い て は JA 全 農(全国農業協同組合連合会)の協力を得ている。学校教育の現場においても、 教師がす べてできる必要はなく、外部のさまざまな人材や施設の活用を有機的につなぐ学社融合の 視点も重要である。学生たちにはそのことも伝えている。 実習前の授業では、先述の通り、田んぼについてのイメージ・マップの作成をしたうえ で、生物多様性条約のような国際的動向や田んぼの多面的機能につい て、ビオトープや世 界農業遺産といった最近の動向もふまえて視聴覚資料も用いながら理解を深めておく。 イ メ ー ジ ・ マ ッ プ 作 成 時 に は 稲 作 の 経 験 の 有 無 に つ い て も 問 い て い る が 、 例 年 、「 経 験 あ り 」 が 約 4 分 の 3 を 占 め 、そ の 多 く は 学 校 で の 授 業 で あ る 。換 言 す れ ば 、学 生 た ち が 学 校 の 現 場にたった際、何らかの形で稲作体験を実施する可能性が高いということであり、そのう 165.

(3) 横浜国立大学教育学部紀要(Ⅰ教育科学). えでも本実習の意義は大きいといえる。 ① 生き物調査 生 き 物 調 査 は 必 ず 稲 作 実 習 の 前 に 行 う ( 写 真 )。 作 業 が 始 ま る と 、 生 き 物 の 居 場 所 が 変 化してしまうからである。 田んぼでは、特に田植えの頃は、一見何もいないかのように見える。しかし、いざ調査 を 始 め て み れ ば 、お た ま じ ゃ く し や カ エ ル の ほ か 、様 々 な 生 き 物 を 発 見 す る こ と が で き る 。 センス・オブ・ワンダーの感覚もだんだん研ぎ澄まされてくる。そうこうするうち、生き 物を入れた入れ物を、 「 田 ん ぼ の シ ェ ア ハ ウ ス ! 」と 命 名 す る よ う な 表 現 力 も 自 然 と 出 て く る( 写 真 2 )。最 終 的 に は 、今 ま で 聞 い た こ と も な か っ た よ う な 生 き 物 に つ い て 知 る と と も に、田んぼがいかに多くの生き物のゆりかごとなっているか、発見することができるので あ る ( 写 真 3 ・ 4 )。. 写真1. 写真 3. 生き物探し. さまざまな生き物. 写真2. 写真 4. 名付けて「田んぼのシェアハウス」. 田植えの時期でも沢山の生き物. 生き物調査を通して、田んぼが自分たちの「食」だけでなく、ゆりかごとして多くの生 き物の生命をも支えていることを知ったうえで、稲作実習に入る。 ② 稲作実習 5 月の田植えの際には、土の中に入ったとたんに、予期していなかった土の感触や深み で、まずはキャーキャーと大騒ぎとなるが、あっという間に慣れた手つきで作業が進むよ うになる。単調で重労働な作業が続くなか、場合によっては自然と歌を口づさむシーンが 166.

(4) 横浜国立大学教育学部紀要(Ⅰ教育科学). 生ずることもある。その際とっさに、実際に田植え歌というものが存在することを伝える と、非常に納得する。やはり体験は重要である。. 写真5. 写真7. 写真 6. まずは投げ入れ. 最初は慣れずにキャーキャー言いながら. 写真 8. いざ、田んぼの中へ. あっという間に慣れた手つき. 7 月の草取りは、最も暑い時期に延々の草取り作業で、最もつらい作業となるが、生き 物 は 最 も 沢 山 存 在 し て い る 。し か し 、後 述 す る 課 題 も あ り 、こ こ 2 年 ほ ど は 実 施 す る こ と ができず、9 月に稲刈りを行っている。. 写真 9. 稲刈りの様子. 写 真 10. 167. 束ね方1.

(5) 横浜国立大学教育学部紀要(Ⅰ教育科学). 写 真 12. 写 真 11. 束ね方2. 写 真 13. 稲刈り後. きれいに並べる. 3. 学 生 の 意 識 変 化 と 可 能 性 (1)イメージ・マップにみる変化 9 月実施の稲刈り後は授業がないため、学生たちの意識の変化をみることができない が、5 月実施の田植えの後は、授業があるため、学生の意識の変化について調べてみるこ と に し て い る 。 そ の 結 果 に つ い て 、 下 記 ( 図 1) は 平 均 的 な 例 で あ る 。. 図 1. 田んぼイメージ・マップの変化. 168.

(6) 横浜国立大学教育学部紀要(Ⅰ教育科学). こ の 例 で は 、小 学 5 年 生 の 頃 に 、総 合 的 な 学 習 の 時 間 ら し き 時 間 に お い て 田 植 え の 経 験 があるが、 「 経 験 あ り 」の 多 く の 者 は 、小 学 校 で の 授 業 と 書 い て い た 。そ し て 、田 植 え 経 験 の有無の差による全体的な違いを比べてみると、 「 経 験 あ り 」の 方 が「 経 験 な し 」よ り も キ ーワードの数は多い傾向にあった。図1は特に多い例ではなく、あくまでも平均的な数で ある。 イメージ・マップ中、黒字は稲作実習前に書いてもらったものであり、赤字は田植え終 了後の授業に加筆されたものである。もともと「食」と「生物」に2大カテゴリーがあっ たところに、 「 生 物 」へ の 書 き 込 み が 圧 倒 的 に 増 え た こ と が わ か る 。ま た 、田 植 え そ の も の のイメージも、深さや温かさといった「体感」に基づくキーワードとともに、大変さを実 感していることがわかる。それは下記のように、自由記述にも表れていた。. ・以 前 、田 植 え を し た 時 は 、少 し 稲 を 植 え た だ け だ っ た の で 、田 ん ぼ の 中 で 稲 を ひ た す ら 植 え 続 け る の が こ ん な に 大 変 だ と は 思 い ま せ ん で し た 。機 械 化 が 進 む 理 由 が わ か り ま し た 。け れ ど 、 機 械 で 作 業 す る と 、生 き 物 に 気 づ か な い か も し れ ま せ ん 。ま た 、生 き 物 の 数 も 少 な く な る か も しれません。課題は大きいと思いました。. ・ 小 さ い こ ろ か ら 、 親 や 保 育 園 の 先 生 な ど に 「 お 米 は 一 粒 残 さ ず 食 べ な さ い 。」 や 「 ご 飯 を 残 す と ば ち が 当 た る よ 。」 と 当 た り 前 の よ う に 言 わ れ て 大 学 生 ま で 成 長 し て き た が 、 今 回 の 初 め て の 田 植 え 経 験 を 通 じ て 、身 を も っ て こ れ ら の 言 葉 の 意 味・大 切 さ な ど を 理 解 す る こ と が で き た よ う に 思 う 。・・ ( 略 )・・ 「疲れる」 「大変」 「 虫 が 気 持 ち 悪 か っ た 」な ど 、マ イ ナ ス 面 の 一 方 、 達 成 感 も あ っ た し 、楽 し か っ た と 思 う 。稲 作 に 限 ら ず 農 業 に 従 事 す る 若 者 が 不 足 し て い る と い う こ と を 最 近 よ く 意 味 に す る が 、こ う い っ た 体 験 を 小 学 生 の 授 業 に 取 り 入 れ て 、楽 し さ や や り がいなどを分かってもらえれば少しずつ改善されていくのではないかと感じた。. 記述例に出ているように、重労働だったことをあげている学生がかなり多かった。その 多くは、同時に、機械化との関係について言及し、その際、機械化することのメリットと ともに、今回調査によって気づいたような生き物に気づけなくなることや生き物そのもの の命のことを心配していたことが大きな特徴であった。今回、授業では機械化のことには まったく触れていないにもかかわらず、実際に体験することによって、 単に米を効率的に 生産するだけではない田んぼの多面的機能について、自らの思考の広がりをみることがで きたのである。 同時に、教員になった時のことについて考える学生も散見された。. ・学 校 で 稲 作 体 験 を 行 う と こ ろ が 多 い の で 、今 回 こ う し て 体 験 で き た の は よ か っ た 。お 米 か ら い ろ い ろ な 学 習 に つ な げ る こ と が で き る こ と が わ か っ た 。教 師 に な っ た 時 に い か し て い き た い 。. 169.

(7) 横浜国立大学教育学部紀要(Ⅰ教育科学). 稲作体験学習を実施する可能性の高い総合的な学習の時間では、教師の力量が問われる ( 松 葉 口・比 屋 根. 2004)が 、机 上 で 学 ぶ だ け で な く 、自 ら 体 験 し た こ と は 、学 校 現 場 に. たった際の大きな自信につながるものと確信する。 (2)本実践から広がるさらなる可能性 田んぼの生き物は、学校教育における教材とも密接に関連している。 たとえば、かつて カ エ ル の 解 剖 は 、 1958( 昭 和 33) 年 の 小 ・ 中 学 校 学 習 指 導 要 領 改 訂 で 定 着 し て い た が 、 1970 年 代 後 半 頃 か ら 、 自 然 保 護 や 生 命 尊 重 の 考 え 方 を 背 景 に 、 次 第 に 減 少 し て い っ た 。 しかし、解剖せずとも、生き物のゆりかごである田んぼの中でも最も身近に存在するカ エ ル に ま ず は 興 味 を 示 し て 調 べ る こ と ( about) か ら 、 私 た ち に で き る こ と に つ い て 深 く 考 え る こ と が で き る の で あ る 。 た と え ば 、『 カ エ ル の き も ち 』( 千 葉 県 立 中 央 博 物 館 監 修 2000)で は 、カ エ ル の 身 に 起 き て い る こ と と し て 、① 田 ん ぼ の 砂 漠 に な っ た 、② 田 ん ぼ に 出 現 し た U 字 溝 地 獄 、③ ひ か れ た カ エ ル た ち 、④ 奇 形 の カ エ ル 、⑤ カ エ ル の 病 気 、⑥ カ エ ル と 紫 外 線( 紫 外 線 に よ る 身 体 へ の 影 響 )な ど を 紹 介 す る と と も に 、 「 カ エ ル の き も ち 」展 へ の 参 加 者 が 書 き 残 し た メ ッ セ ー ジ を 「 わ た し た ち に で き る こ と 」( for) と し て 紹 介 し て い る( メ ッ セ ー ジ ボ ー ド は 畳 20 枚 分 に も な っ た と の こ と )。そ の な か で は 、① 田 ん ぼ を 増 やす、②溝などを減らす、③錠剤をまかないようにする、といった田んぼのことや、カエ ルと農業の両立の問題など、素朴でありながら深い気づきが示されている。 また、農と自 然の研究所によるデータでは、 「 生 き 物 も ご は ん も 田 ん ぼ の め ぐ み 」と し て 、た と え ば 、ご は ん 1 杯 = 米 粒 3,000~ 4,000 粒 = 稲 株 3 株 = オ タ マ ジ ャ ク シ 35 匹 が 育 っ て い る 。こ の こ とを学生たちに伝えると、非常に興味を持ってくれる。 コメについてみれば、胚芽にはビタミンが含まれ、白米にするために取ったコメの皮の ヌカも栄養価が高く、漬物のヌカ床にしたり、その皮を残して七分づきや五分づきにした り、玄米のまま食したりもする。米をとった残りのモミガラは土間の下に穴を掘ってサツ マ イ モ な ど を 貯 蔵 し た り 、畑 で 野 菜 を 育 て る 時 に 土 に 混 ぜ て 使 用 し た り で き る 。茎 や 葉 は 、 稲ワラとして、さまざまな道具や生活用品に加工されてきた。正月のしめ縄、お飾り、土 壁の中にも使用された。農作業を行う時のムシロや、穀物などを入れて運ぶためのカマス などもある。これらワラでつくったものは、使用後は田んぼに戻せば、 再び土に戻って再 び稲を育ててくれる。まさに循環社会の実現である。 また、筆者は、水田の貯水機能は、気候変動による災害の増加に対する減災・防災 の機 能もはたすことが期待できると考えている。 授 業 の 中 で 稲 作 を 行 う 場 合 、「 田 植 え 」 や 「 稲 刈 り 」 と い っ た 、「 コ メ の 生 産 」 に 直 結 す る「作業体験」が重視されがちである。しかし、畦を歩いたり、メダカやカエルなどの生 き物、周辺に咲く草花などを楽しむことも、田んぼの多面的機能を理解するうえでは重要 なことである。稲作を含めて農業体験が重視される背景には、 現代社会における多くの労 働が近代化されマニュアル化されているなかで、環境の恵みの中で自らの感性と判断力を 磨き身体性を伴う作業が人間にとって重要なことが暗に含まれているはず である。 170.

(8) 横浜国立大学教育学部紀要(Ⅰ教育科学). 田 ん ぼ は そ の ま ま 学 校 と し て の 機 能 を 有 し て い る( 佐 伯. 2007)と い っ て も 過 言 で は な. い。 「 チ ー ム 学 校 」の 中 核 と し て 、保 護 者 や 地 域 の 人 々 を 巻 き 込 ん で 、地 域 文 化 や 自 然 環 境 を保全し、持続可能な地域を各地で作り上げれば、相対しての持続可能な社会が可能とな る。. 4. 今 後 の 課 題 以上のような稲作実習と生き物調査の実践であるが、実施するうえでの大きな課題が主 として2点ある。 一 つ 目 は 、実 習 地 が 遠 距 離 で あ る こ と で あ る 。田 植 え の 時 期 は 6 月 、草 取 り は 7 月 、稲 刈 り は 9 月 で あ る が 、本 学 の 平 塚 教 場 は 、大 学 か ら 離 れ た 平 塚 市 の 郊 外 に あ る た め 、過 密 カリキュラムである教育学部の学生がそこで実習するには、 9 月以外には平日の実施は不 可能である。雨天時の場合の予備日も考えると、土日の二日間を連続して実習日として確 保 す る 必 要 が あ る の だ が 、土 日 は 教 員 側 に 学 会 活 動 等 が 入 る こ と も 多 く 、こ こ 数 年 は 7 月 の草取りは割愛傾向になってしまっている。しかし、本来ならば草取りが一番重労働であ り、生き物調査をするうえではこの時期が最も多くの生き物が存在しているため、なるべ くならば実施したいものである。最も望ましいのは、稲の生長過程や生き物の変化等、プ ロセスを常に観察することができることである。したがって、実習環境が大学の近くにあ ることは非常に重要である。 二 つ 目 は 、半 期 授 業 で の 実 施 の 困 難 さ で あ る 。稲 刈 り 時 期 が 、早 く と も 9 月 下 旬 頃 か ら であるため、どんなに早い時期に稲刈りを設定したとしても、半期授業の成績提出締め切 り日を過ぎてしまう。したがって、まずはいったん成績を提出しておき、その後、稲刈り 直後に修正の必要性が生じた場合に大至急修正するという作業を行わざるをえないが、 年々締め切りが早まるなか、その手法がいつまで通用するかという問題がある。 以上のような課題を抱えつつも、田んぼやコメが有する多様な可能性に気づいてもらえ るような充実した実践となるよう、指導に尽力したいと考えている。. *脱稿後、平塚教場の管理運営変更により本実習は来年度以降停止することとなった。 こ れ ま で 生 き 物 調 査 で ご 協 力 い た だ い た JA 全 農 ( 全 国 農 業 組 合 連 合 会 ) の 皆 さ ま ( 特 に 山 崎敏彦氏)には大変お世話になりました。深く感謝申し上げます。. <引用文献> 国 立 大 学 法 人 宮 城 教 育 大 学( 2012) 『 お 米 か ら 環 境・暮 ら し を 学 ぶ 』平 成 23 年 度 ユネスコパートナーシップ事業. 日本/. お米プロジェクト報告書. 佐 伯 剛 正 ( 2007)『 田 ん ぼ が 学 校 に な っ た 』 岩 波 書 店 鈴 木 善 次 ・ 松 葉 口 玲 子 ( 2005)「 日 本 に お け る 『 食 環 境 』 を め ぐ る 環 境 教 育 に 関 す る 研 究 の 動 向 」『 環 境 教 育 』( 日 本 環 境 教 育 学 会 誌 ) 第 15 号 1 巻 、 62-75. 171.

(9) 横浜国立大学教育学部紀要(Ⅰ教育科学). 千 葉 県 立 中 央 博 物 館 監 修 ( 2000)『 カ エ ル の き も ち 』 晶 文 社 出 版 鶴 田 敦 子 ・ 高 木 直 ・ 福 留 美 奈 子 ・ 金 網 敦 子 ( 2000)『 米 < 食 と 農 > か ら は じ め る 総 合 的 学 習-消費者の視点から-』かもがわ出版 松 葉 口 玲 子・比 屋 根 哲( 2004)「『 総 合 的 な 学 習 の 時 間 』に お け る『 教 師 研 究 』に 関 す る 一 考 察 」 岩 手 大 学 教 育 学 部 附 属 教 育 実 践 総 合 セ ン タ ー 研 究 紀 要 第 3 号 、 55-63. 松 葉 口 玲 子 ( 2013)「 生 活 科 ・ 総 合 的 な 学 習 の 時 間 と 環 境 教 育 ・ ESD と の 関 連 - 「 持 続 可 能 な 消 費 」と の 関 わ り で - 」 『 横 浜 国 立 大 学 教 育 人 間 科 学 部 紀 要( 教 育 科 学 )』97-106. 千 葉 県 立 中 央 博 物 館 監 修 ( 2000)『 カ エ ル の き も ち 』 晶 文 社 出 版. 172.

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