Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
「口腔がん専門医養成コース」の教育プログラム
Author(s)
栁澤, 孝彰; 片倉, 朗
Journal
歯科学報, 109(2): 150-152
URL
http://hdl.handle.net/10130/1862
すでに述べたように本年度からスタートした大学 院における「口腔がん専門医養成コース」は,口腔 外科を専攻とする大学院生の中で,将来口腔がん医 療の現場で活躍しリーダーシップを取ることができ る人材を育成することが主な責務である。従来の大 学院は研究者ならびにその指導者の養成を主眼とし たが,本コースは修了後に直ちに医療現場で活躍す ることができる専門性をもった臨床医の育成が目的 である。したがって,カリキュラムは口腔がんにつ いての基礎的知識の習得,診断と治療に関わる臨床 的な知識・技能・態度を身につけることを目的と し,実地修練が中心になる内容で編成されている。 コース修了時には単独で口腔がん患者の診断・治 療・リハビリテーション・経過観察をマネージメン トできる能力の習得を目指す。実地修練の主たる場 は東京歯科大学口腔がんセンターとして,その臨床 修練は口腔外科に留まらず腫瘍病理,麻酔学,放射 線診断学ならびに治療学,消化器外科学,耳鼻咽喉 科学,緩和ケア等を学び,かつ総合病院の中で多職 種とのチームアプローチとその実践法を学ぶ。ま た,大学院生であることから学位取得のために学位 論文の作成もこの実地修練に併行して行う少々ハー ドなカリキュラムである。 併せて数日のセミナー形式のインテンシブコース として後述する歯科衛生士ならびに看護師に対する がん医療における口腔ケア,顎顔面補綴を専門とす る歯科医師ならびに歯科技工士に対する顎顔面補綴 の習熟コースを平成21年度から実施する。 したがって大学院生は実地修練の場を主たる活動 の場としながらも,帰属する講座の研究指導者の下 でも研究を行うことになる。図1に示すように, コーディネーターは大学院生に対してのこの2つの 指揮系統を統括して就学の環境を整え,実地修練の カリキュラムの編成と選択科目の選定,単位認定, 教育用の機器備品の整備等を行うことをその責務と する。 ⑴ 口腔がん専門医養成コース(口腔外科学系講 座に所属する歯科医師の資格を有する大学院 生対象) 大学院4年間における修学内容を図2に示す。1 年次は帰属する講座に付属する診療部で口腔外科全 般にわたる基本知識と手技の習得を行い,5月に学 位論文のテーマを講座主任と相談し決定する。2, 3年次に口腔がんに関する臨床修練を本学口腔がん センターにおいて集中的に行う。本センターの機能
3.教育の観点から
文部科学省「がんプロフェッショナル養成プラン」による人材育成
2)「口腔がん専門医養成コース」の教育プログラム
片倉
朗
1)栁澤 孝彰
2) 1) がんプロフェッショナル養成プラン コーディネーター 2) 大学院歯学研究科長 図1 150 ― 48 ―は前項で記述されているが,本学市川総合病院内に 設置されているので,がん医療に関する様々な知識 と技術を横断的に習得できるところが最大のメリッ トである。(図2,3,4) また,市川総合病院はがん拠点病院にも指定され たことにより,がん医療のためのハード・ソフト両 面からその整備が進み,実地修練にはさらに適した 環境になりつつある。2,3年次は腫瘍病理学,麻 酔学,放射線診断学ならびに治療学,上部消化管の がんを中心にした消化器外科学,耳鼻咽喉科学等の 関連医学,また緩和ケア,栄養サポート,摂食嚥下 のリハビリテーションといったユニットのチームア プローチをローテートあるいは口腔がん患者の担当 医として学んでゆく。その指導には口腔がんセン ター所属の㈳日本口腔外科学会認定制度による口腔 外科指導医ならびに専門医と関連各部門の医師・歯 科医師・看護師・歯科衛生士等があたり,修得単位 の認定は最終的にコーディネーターが行う。 4年次は学位論文の執筆に当てるが,研究テーマ は基礎的研究に偏ることなくその結果を臨床に直ち に還元できるいわゆる Translational research を基 本とすることにしている。 修了時には通常の大学院と同様に学位論文の審査 を受け,審査に合格すれば学位の取得となる。また 図2 図3 図4 歯科学報 Vol.109,No.2(2009) 151 ― 49 ―
本コースの研修内容は㈳日本口腔外科学専門医制度 による口腔外科修練医の要件を満たすので,同時に それを取得するための申請を行うことになる。この 時点で口腔がん患者の治療計画をリーダーとして立 案遂行できることを目指す。大学院修了後は本学な らびに関連病院の歯科口腔外科等で口腔がん治療の 中心的存在となること,またがんのチーム医療の現 場で我々歯科医師がそれを行い得ることを推進して ゆく力となることを目的に修練を積ませる。 ⑵ 歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士のための 「口腔がんインテンシブコース」 a.歯科医師のための「口腔がんインテンシブコー ス」 「㈳日本口腔外科学会認定 口腔外科専門医」の取 得を目指す口腔外科医を対象として,口腔癌の診 断・治療・研究に必要な高度で先進的な知識と技術 の修得と習熟を目指す。重点内容は以下の通りとす る。一次治療後の①口腔がん,頭頸部がんの放射線 診断と治療の習熟,②インプラントによる高度な技 術を要する顎・顔面補綴,③治療による器官欠損に より生じる摂食・嚥下障害の評価とリハビリテー ション,④口腔ケアによる Q. O. L.の向 上 と コ メ ディカルスタッフへの教育技術の習得,以上につい ての知識と技術の習得を到達目標とする。その場は 本学口腔がんセンターや独立行政法人放射線医学総 研究所重粒子治療センターへのローテートによって 行う予定である。 b.歯科衛生士・看護師のための「がん患者の口腔 ケア・リハビリテーションに関するインテンシブ コース」 口腔がんのみならずがん治療全般の化学療法や放 射線療法によって生じる口腔粘膜炎や歯周炎の予防 ならびに粘膜炎発生後の口腔ケア,および口腔がん を含む頭頸部がんの治療後に生じる摂食・嚥下障害 に対するリハビリテーションついての看護計画とそ の実践を習得する。現在,がんに限らず医療・介護 の現場で口腔ケアは必須の存在となってきたが,看 護師・介護士によって実行されることが多く,歯科 的知識と技術が十分に反映されているとは言い難い 場合も多い。さらに口腔がんの場合は治療による組 織欠損によってこれらが生じるため,口腔の機能解 剖と生理について熟知した上で個別の対応が必要で ある。従って,口腔解剖学・口腔生理学の知識の習 熟もこの範疇に含めてプログラムを構成する。短期 間のセミナー形式の実習については,既にこれらの 取り組みを行って成果をあげている本学市川総合病 院での実施を計画している。 c.歯科医師ならびに歯科技工士のための「顎・顔 面補綴に関するインテンシブコース」 欧州では「顎補綴の準備なくして顎切除はあり得 ない」と言われている。顎骨欠損により生じた咀 嚼・発語機能障害,顔面の審美障害はインプラント を含めた顎補綴によって回復することは可能である が,そのためには口腔の機能解剖と生理についての 充分な知識を有し,豊富な歯科補綴の臨床経験と卓 越した技工技術が必要である。本コースはこれらに 対応できる顎顔面補綴を専門としてきた歯科医師の 知識と技術の習熟とそれに関わる歯科技工士の養成 を目的とする。 これらに精通し充分な臨床経験を有する歯科医師 と歯科技工士が所属する本学千葉病院補綴科と口腔 がんセンターが連携し,実際の症例を通してその修 練を行う予定である。また,この分野において国内 外で活躍する識者やエキスパートを外部講師として 招聘したセミナーを開催する予定である。 本学におけるがん治療の取り組みに関する現状と将来 152 ― 50 ―