Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
Influence of experimentally deviated mandibular
position on static standing posture
Author(s)
山崎, 豪
Journal
歯科学報, 116(1): 56-57
URL
http://hdl.handle.net/10130/3947
Right
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 近年,顎口腔系機能と姿勢の関係について様々な報告がなされているが,これらの報告は姿勢の変化を間接 的に評価したものであり,直接的に評価したものはではない。様々な身体の状態,動作を直接的に観察する方 法の一つにモーションキャプチャーを用いる方法があり,測定したデータを筋骨格モデルにあてはめて動作を 解析するモデル解析といわれる手法を用いることで,より詳細な動作解析を行うことが可能とされている。そ こで今回,顎口腔系の状態変化が静止立位姿勢に及ぼす影響について,モーションキャプチャーおよび床反力 計を用いて測定し,モデル解析による3次元的動作解析を行い検討した。 2.研 究 方 法 被験者は,全身的に健康で顎口腔系および耳鼻科的な疾患に関する既往及び現病歴のない成人で,本研究の 主旨を文章にて説明し,同意の得られた男性9名(平均年齢:30.6±5.7歳)を選択した。なお,本実験の測定 実施にあたっては,ヘルシンキ宣言を順守し,東京歯科大学倫理員会(承認番号 No.212)の承認を得て行っ た。下顎の偏位に用いた実験的下顎偏位装置は下顎を一時的,可逆的に上下顎左側犬歯尖頭が一致する位置に 偏位し,上顎にのみ適合させた状態で下顎安静位を保つことができるよう調整されたものである。計測は独立 行政法人産業技術総合研究所・臨海副都心センター研究室内にて,モーションキャプチャー用カメラ12台およ び床反力計2台を用い,共にサンプリングレート200Hz として行った。モーションキャプチャーでは Helen Hays Marker set に準ずる85点に,オトガイ部および左右下顎角の3点を加えた合計88点の座標を計測した。 床反力計では2枚の床反力板を左右の足で踏みわけ,左右足それぞれの足圧重心の座標および3次元の床反力 を計測した。測定は可及的に平衡機能検査法基準化に準じて行った。被験者に偏位装置を上顎のみ適合させ, 下顎安静位を保持した状態で測定位置に閉眼にて起立させ,初期閉眼効果を考慮し,閉眼後20秒後に計測を開 始し計40秒間計測した。計測開始20秒後に下顎を偏位するよう指示し,前半および後半の20秒間をそれぞれ下 顎安静位,下顎偏位とし,計測は各被験者において3回測定した。変化を検討するにあたり3次元動作解析ソ フトにてモデル解析を行った。モデル解析を行うにあたり,頭,顎,体幹,骨盤,左右脛,左右足の8セグメ ント,左右足の床反力ベクトルおよび体重心点に着目した。上記8セグメントについては,各セグメントの重 心座標,カルダン角,重心軌跡長を,床反力については足圧重心の座標,軌跡長および3次元成分量を体重で 氏 名(本 籍) やま ざき ごう
山
崎
豪
(東京都) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 1958 号(甲第1204号) 学 位 授 与 の 日 付 平成24年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Influence of experimentally deviated mandibular position on static standing posture
掲 載 雑 誌 名 International Journal of Sports Dentistry 第7巻 1号 85−93頁 2014年 論 文 審 査 委 員 (主査) 石上 惠一教授 (副査) 佐藤 亨教授 松久保 隆教授 田 雅和教授 中島 一憲講師 歯科学報 Vol.116,No.1(2016) 56 ― 56 ―
割ったものを,体重心については座標および軌跡長を算出した。分析を行うにあたり,下顎を偏位させる指示 による体動の影響を除くため下顎安静位,下顎偏位のそれぞれ最初の5秒間を除いた15秒間について検討する ことにした。統計分析には,統計ソフトエクセル統計を用い SminovGrubbs 検定を行いはずれ値の検討を 行った後,下顎安静位及び下顎偏位について対応のある t 検定(p<0.05)を行った。 3.研究成績および結論 静止立位姿勢下において下顎安静位時に比べて下顎偏位時では頭,顎,体幹,骨盤,左右脛の6セグメント 及び体重心の座標が,それぞれ約4.2,4.4,2.5,1.9,0.9,0.8,2.2mm 左方向に有意に移動し,上部の測 定部位ほど移動量は大きい値を示した。また,顎および右脛のセグメントにおいてはそれぞれ約2.5度後屈方 向,約0.2度左側屈方向に有意に回転した。足圧重心の座標および床反力成分において,体重が左側に偏位す る傾向が認められたが有意な変化は認められなかった。軌跡長に関しては下顎安静位時よりも下顎偏位時に増 加する傾向が見られたがいずれの部位においても有意な差は認められなかった。 今回,下顎を実験的に偏位させたことが,頭部の重心位置に最も大きな影響を与え,それより下部の測定部 位においても影響を及ぼしたものと考えられる。すなわち,下顎を偏位させることにより咬筋や下肢の抗重力 筋,胸鎖乳突筋などを含む頭頸部筋の活動へ影響を与えたことにより緊張性迷路反射など様々な姿勢反射が起 こり,体が左へ移動したものと考えられた。 論 文 審 査 の 要 旨 近年,顎口腔系機能と全身の関連について注目されており,顎口腔の変化が静止立位姿勢に影響を及ぼすと した報告がみられる。しかし,これらの報告は静止立位姿勢について重心動揺計などを用いることにより姿勢 を間接的に評価したものであり,姿勢自体の変化を直接的に評価したものはではない。本論文は,顎口腔系の 状態変化が静止立位姿勢にどのような変化を及ぼすのかについて,モーションキャプチャーおよび床反力計を 用いて測定し,モデル解析による3次元的動作解析を行い姿勢の変化を直接的に観察し報告したものである。 本審査委員会は,1)セグメントのカルダン角及び座標に説明,2)実験の測定条件,3)測定機器の精 度,4)考察および今後の展望について,などの質疑が行われた。山崎大学院生からは,1)に対してカルダン 角とは3次元空間において,基準座標系と対象座標系を一致させるために,基準座標系の xyz の3軸をそれ ぞれ回転中心とし3回の回転を行う場合に使用される3つの回転角のことであり,本実験においては基準座標 系を絶対空間座標系,対象座標系を各セグメントを構成する座標系としたことおよびセグメントの平行移動を 観察することによりセグメントの動きを6自由度として検証した事,2)に対して本実験は閉眼条件のみで あったが,閉眼にて測定を行うことにより顎口腔系の変化が平衡機能与える影響についてより詳細に検討でき るとの事,3)に対して実験機器による測定誤差が0.1mm 以下であるため,本実験結果として提示した値が誤 差の範囲ではない事,4)については座標およびカルダン角の変化量に関する考察や移動方向の人数分布の説 明や今後は静止立位だけでなく歩行を中心とした動作解析についても行っていく事等の説明があり,概ね妥当 な回答が得られたと御判断頂いた。そのほか表現や用語の統一や図表の説明の補足などの加筆修正点が指摘さ れ,訂正を行った。 以上より,本研究で得られた結果は今後の歯学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与に値する ものと判定した。 歯科学報 Vol.116,No.1(2016) 57 ― 57 ―