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(1)

内挿法によるパラジウム金属の電子構造の計算

林英輔

花野芳夫

(昭和47年8月31日受理)

Electronic Structure in Palladium Metal Calculated by

Interpolation Method

EisukeHAYASHI YoshioHANANO        Synopsis  Interpolation method proposed by Hodges and Ehrenreich for the band calculation in transition metals is apPlied to a case of palladium metal. Adjustable parameters in this method are fitted to a results of APW method calculated by MueUer et. a1.. Energy dispersion curve is reproduced with an accuracy discrived by following deviation:root mean square O.00064 ryd. and maximum O.029 ryd. . Desity of states is calculated with amesh of 10569 points in 1/480f the first Brillouin zone.

1.はじめに

 遷移金属のエネルギバソド構造の計算において,内

挿法は,APW法やKKR法のような第一原理からの

計算方法と相補的に用いられる。第一原理からの比較 的厳密で,精度の高い計算方法では,一般の波動ベク トルkについてエネルギ固有値を計算することは,複 雑であり,計算機のマシソタイムも比較的長くなる。 一方,多くの物理量を計算するには,第一Brillouin zoneの中の非常に多くのle点について電子のエネルギ 固有状態の情報が必要である。上記の厳密な方法で, このような物理量を計算することは大変困難な仕事と なるであろう。したがって,比較的計算が簡単である 高い対称性をもつle点について第一原理からの計算を 行ない,この結果に合うように重なり積分等の整合パ ラメータを定め,これを用いる内挿法によって,一般 のk点について固有値問題を解くことがしぽしぼ行な われている。そして,最近は,いくつかの内挿法が提 案され,これらについての研究が行なわれている1””8)。  この論文では,tightly bindin9近似法とpseudo・ ee現在,共和電業株式会社

Potential法を結合したHodgesとEhrenreichによ

って提出された方法(以下H−E法と略す)1・2)を用い て,パラジウム金属について,エネルギ分散曲線E(k) と状態密度n(E)を計算した結果を報告する。この内 挿法で用いる結晶内電子のハミルトニアンの行列要素 が含む14個の整合パラメータの値はs/対称性の高いk

点について計算されたMueller等によるAPW法を

用いた結果9}のエネルギの値によく一致するように決 定した。  パラジウム金属は,いろいろな物理的性質,特に最 近では,磁気的な性質について強い興味が持たれてい る物質であり,この金属およびその合金について,多 くの物理量の測定が行なわれている。そして,これに ついて,特に電子間の相互作用に関して,多くの議論 がなされている。したがって,電子構造から出発した 物理量の計算が,これからの定量的な議論にとって必 要となる。最近,Muellerの提案したcombined in− terPolation法による計算3・9)やemPrical Pseudo・poten・ tia1法による計算10)がこの金属についてなされてい る。われわれは,計算が非常に簡単であるH−E法を この金属に適用し,整合パラメータを決定し,物理量

(2)

の計算のために供することが主たる目的である。  第二節では,H−E法の手続のごくあらましと,特 にこの計算において行なった工夫について説明する。 また,第三節では,計算結果,すなわち,パラメータ の値を示し,E(h)曲線の再現性の近似程度をしら べ,内挿法を用いて計算した状態密度n(E)の計算結 果を示す。

2.計算方法

 H−E法の計算方法を簡単に説明する。方法の大筋 は,EhrenreichとHodgesによる総合報告2}に示さ れているものと同様である。  結晶中の一電子ハミルトニアソは,つぎのようであ る。

  H−一㌃7・+v(r)・    (・)

ここで,第一項は運動エネルギの演算子,V(r)は結 晶場ポテソシャルエネルギである。結晶中の電子のエ ネルギ固有状態は,つぎのSchr6dinger方程式を解く ことによって得られる。   H哲η,為(r)==En(k)哲π,%(r),       (2) ここで,En(h)は,エネルギバソドnに属する,波動 ベクトルkをもつ固有値,そしてT。,k(r)はこれに 属する固有関数である。  (2)式を解くために,ep’。,k(r)を,つぎのように平面 波とtightly binding波動関数(LCAOとも呼ぶ)に よって展開する。   Yn・k(・)一☆萎仇・・ω・畑κ…   +Σ6。,m(le)φm,k(r),       (3)

   m

ここで,α。,x⑭)とbn,m(k)は展開係数であり, K は逆格子ベクトル,mは原子軌道状態を指定する添 字,そして9は結晶の全体積である。遷移金属では, tightly binding波動関数thmek(r)としては, d軌道 の原子軌道関数w。、(r)(m−1,5)を用いてつぎのよう に表わされる。   95・・k(・)一毒召・’㌦(・−R)・ (・) ここで,Rは結晶格子点ベクトル, Nは格子点の総数 である。  (3)式を(2)式に代入して得られる固有値問題の永年方 程式は,つぎのように表わされる。   detlHiゴーEδZ」1=0,      (5) ここで,HiゴはハミルトニアソHの行列要素である が,Hの行列は,つぎのようにブロックに分けられる。

[㌫器き㌫] (6)

ここで,LCAO−LCAOブロックの行列要素は,tightly binding波動関数によるHの行列要素であるが,ここ において,ポテソシャルV(r)と原子軌道関数との重 なり積分において,第一近接格子点までの二中心積分 を考慮する近似を採用すると,つぎのように書き表わ される。   Hn=Eo−4Ai cosξcosη      十4A2 cosζ(cosξ十cosη),   H22=Eo−4A, cosηcosζ      十4A2 cosξ(cosη十cosζ),   H33=Eo−4A, cosξcosζ      十4A2 cosη(cosξ十cosζ),   H44 == Eo−M−4A4 cosξcosη      一4A, cosζ(cosξ十cosη),   H・5−E・+A−9(A・+4A・)…ξ…η      +丁(2A・−A・)…ζ(…ξ+…η)・        (7)   H12=H2、=−4A, sinξsinη,   H13=H31=−4A3 sinηsinζ,   H14=H41=0,   H15−H51−一告A・si・ξ・i…   .H23−H32−−4A, sinξsinη,   H24=H42=−4H, sinηsinξ,         4   H・・=H・2=fTA・sinηsinる   H34=H43=4A, sinξsinζ,   H・・−H・・一壼(A4十.4s)     ×COSζ(COSη一COSξ), ここで・(e…ζ)一号(le・・ le・・kx)・またPW−PW ブロックの行列要素は,平面波による行列要素であ り,κ,一(0,0,0),五,−2π(0,2,0)K,一辺(1,r,1)       a       a そしてKg一互(1, i,1)(aは格子定数)の4個の逆       a 格子ベクトルのみを考慮するならば,つぎのように書 き表わされる。   Z:;:㌶竺霊:((i,元== 6,9)〃)Fゴ(ゐ), (ゴキ∫)}(・) さらに,PW−LCAOブロックの行列要素は,つぎの ように表わされる。

(3)

  H、,ゴーB,元,(IE+K・IB,)F・(k)L・」(酬一Ki)・         (i=6,9;元==1,5)        (9) ここで,元2(z)は階数2の球ベッセル関数,L2プ(p)は, Kubic Harmonicsである。また, F、(k)は, hibridi− zationの効果を表わす関数である。(7).∼(9)式におけ るAp,ぴ,そして,α,βは二中心積分等の量である が,内挿法においては,これらは整合パラメータとし て取りあつかわれる。そして,これらのパラメータが 与えられるならば,(6)式の行列の要素が得られ,した がって,(5)式を解くことにより,エネルギ固有値 En(k),固有関数se.,k(r)の展開係数が求められる。  したがって,問題は,パラメータをどのようにして 決定するか,である。ニッケル金属について,計算し たHodgesとEhr飽reichの場合には2),14個のパラ メータをBrillouin zone内の4個の対称点, L X, L,Kにおける14個の準位のエネルギの値とパラメ ータとの間に存在する14個の独立な関係式を用い,エ ネルギ準位の値に第一原理からの計算結果を入れて決 めている。しかし,パラジウム金属についてのわれわ れの計算では,用いたAPW法による計算結果9)には, これらの準位の中でL21状態のエネルギ値, E(L21) が与えられていないため,B,, B2,α, Vlll, V200を 除く9個のパラメータについては,Hodges等の手読 を踏襲することで,値を決定し得るが,これら5個の パラメータは,同じやり方では決まらない。一方,こ れらの間にはつぎの関係が存在する。   γ,・・一・』Vlli+9E(L・・)−11一β+E(Xの・   α一晶(Vll・+E(L・・)一β)・   B2・=        1[3(2y111一トE(L2’)−E(L11))(Eo−8A3 −E(L11        2{ブ,(画8B1)}2))]百 したがって,どれか一個のパラメータ,たとえば,B, が決まれぽ,他の四個はこれらの関係式よりただちに 決まる。また,αは,伝導バソドの底であるL状態 の有効質量の逆数(適当な単位をとると)に近い値を 持つはずであるから,αの値,したがって,B、をスウ ィープさせる時の値の変域が大体きまってしまう。わ れわれは,このようにして,Biの変域を決め, B,を 与えてエネルギバソドを計算し,結果が各対称軸上で APW法による結果とよく合うようになるよう,試行 錯誤的に,この手続を繰り返して全部のパラメータを 決めた。  伝導バソドとdバソドのhibridizationの効果を表 わす民(k)関数としては,つぎの形を用いた。 表一1Pdのバソド構造のパラメータの値.αとB1を除    き,すべてのパラメー・・一・タは,ryd.を単位とする.   αはディメンジョソレス,また,B1は長さの原子   単位ではかったものである. Eo  ==  0.39316, ∠i  =−0.01487, A1  =  O.03578, A2  =  0.00946, A3  =  0.01607, A」4  =  O.02293, A5  =  0.00482, A6  =  0.01582. β=0.09550, B1   =  3.560758, B2   =  1.38050, B3   =  1.38797, Vln  ==  O.52814, V200 =: O.68815, α==1.41371, F,(h)=1,          Px−PyF7(ゐ)==     P・−P・一・in3后C・S21tP・      321)x−Px2     ×−25る一・

一莞5字,

醐)ユ言互£・

    3  π  . π  . π ∫1=カ⊂豆sin百力・Sm百力・Sln百力・    +:・i・秘si・昔(P・−P・) ・・i・昔(P・+P・)・ ∫・一ρ、+カ・si・晋♪・si・昔(Px−Pz)   ・i遠(P・−P・)・       3  π  . π  . π ∫・=P・+カ・一百sin百ρ・Sm百♪・Sln百ρ・   ÷i・昔力“×・i・‘(P・−P2) ここで, ・i・昔(P・+Pz)・       8a        (lex, ky, lea). (Px,カy,力君)=       π 3. 計算結果と検討  川 パラメータの値  前節で説明した手続により 決定したパラメータの値は,表一1に示してある。  (ii)E(k)曲線  表一1のパラメータの値を用い て計算した対称軸上の〃についてのエネルギの値 En(k)は,図一1に実線曲線で示してある。小円で示 した点は,APW法による結果である。各対称軸ごと

(4)

0.6 室 x5 Wi’ L32 占0.5 o 万、

x

w

o 君2    ° @   o α4 8。 45 L31 45  0 国0.3 W3 o α2 ぷ 。 o o W2 L11 0.1

x

君 君 K2 K, K, K, K1

 1「 ∠ XZWQ L ∠1 1「 Σ K

図一1PdのE(k)曲線。実線は内挿を用いて計算した値。小さい丸   で示した値は,Mueller等によるAPW法による計算値9)。 にその一致程度を調べると,まずd軸上では,d2’, d,,A、の各準位については一致は大変よい。 Asについ ても大体合っているが,この軸上では,この準位が最 も外れていて,最高0.016ryd.の差がある。つぎに, A軸上では大変よい一致を得ている。たとえば,∠3準 位では最高0.008エyd.の差であり,また, Alの準位で は最高0.016ryd.の差である。Σ軸上では,他の軸の 場合に比べて一致の程度は最も悪い。たとえぽ,E1準 位では最高0.029ryd.の差がある。.Σ2準位では最大 0.005ryd.の差がある。 Z軸上では最大0.019 ryd.の 差があり,また,W点のW2r準位は低くなりすぎてい る。Q軸上では最大0.008 ryd.の差であり,ほぼよい 一致が得られている。  全体的にみると,この内挿法による計算結果は,対 称軸上でパラメータの決定に用いたAPW法による結 果をよい一致で再現している。112個の準位について の平均自乗偏差は,0.00064ryd.であり,第一原理か 盲 苫 き 吾40 量 占 芭 St 20  0.4 E(ryd.) 図一2 Pdの状態密度n(E) E O.5 0.6 らのバンド計算において,通常計算精度と 考えられている0.001ryd.から考えてみ て,現段階ではよい一致が得られていると 考えてよいであろう。しかし,部分的には 一致の比較的悪い準位があり,これらは, Z,,A,, X1, E2等である。全体を通した 最大の偏差は0.029ryd.である。  (111)状態密度n(E) Brillouin zone内 の一般のle点について,エネルギ固有値を 内挿法を用いて解くことは第一原理からの 方法に比べてはるかに速やかである。この ことを考えると,状態密度n(E)を計算す るのに内挿法を用いることは便利である。 第一Brillouin zoneの1/48の既約領域中 で,等間隔に10569個のk点を採り,この 点についてエネルギ固有値を計算し,これによって状 態密度n(E)を計算した。図二2にパラジウム金属につ いて計算した状態密度n(E)を示してある。パラジウ ムの状態密度n(E)は,その4バンドが占めるエネル ギの範囲で,数個の高くてせまいピークを持つことが 知られているが,この結果も同様である。同じAPW 法の結果からパラメータの値を決定したMuellerの内 挿法を用いて計算した状態密度の結果9)と比較する と,われわれの結果は,高いエネルギ側のn(E・)のピ ークが前者より高く,そして幅が少しせまくなってい る。RodgersとFongによるempirical pseudo・poten・ tial法による計算結果ユo)と比べても同様な違いがあ る。われわれの計算では,APW法の結果に対しi軸 上の最も低い準位E1の再現性が比較的劣っているた め,n(E)の低エネルギ側のピークの高さが低くなっ  40 盲 言

9

呂20 Lb §      0.2      0.3      0.4      0.5      α6       E(ryd.) 図一3 Pdの状態密度n(E)に対する各軌道成分の寄与。   曲線1は,原子軌道が既約表現T2に属する成分   からの寄与,曲線2は,既約表現Eに属する成分   からの寄与,そして,曲線3は,平面波で表わさ   れた伝導バンドからの寄与を示している。

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ていると考えられる。高エネルギ側のピークが,他の 結果に比べて高くなっている原因は明らかでないが, 少なくとも,このピークのエネルギの領域では,E(k) 曲線の少し変化がn(E)の微細構造に敏感に反映され ると考えられる。したがって,この点に関しては,さ らに注意深いパラメータの決定とさらに瓦点の数を増 したn(E)の計算が必要になる。フェルミ準位におけ る状態密度の値は,48.Oryd−1 per atomである。 3. ま と め  H−E法をパラジウム金属に適用する場合のパラメー タの整合の手続と決定したパラメータの値を示した。 この値を用いて,H−E法で計算したパラジウムの電 子構造は,対称軸上では,パラメータ整合に用いた APW法の結果をよい一致で再現している。しかし, 部分的には,たとえぽi軸のように,一致の程度がバ ソド計算の誤差の三倍程度の偏差を生じるところもあ る。このことは,状態密度の微細構造に影響をもたら す。

4.謝

辞  この研究において,討論,数値計算等でいろいろと 援助をくださった安井勝氏に感謝します。 文 献 1) LHodges, H.Ehrenreich and N. D. Lang:Phys.   Rev. 152(1967)505. 2) H.Ehrenreich and L.}lodges:ed. B. Alder, S.   Fernbach and M. Rotenberg:Methods in Compu−   tational J)hysics, vol.8 (Academic Press, New   York and London,1968)p.149. 3)F.M. Mueller:Phys. Rev.153(1967)659. 4) V.Heine:Phys. Rev.153(1967)673. 5) J.Hubbard:Proc. Phys. Soc.92 (1967)921. 6) R.LJacobs:J. Phys. C 1(1968)492. 7)J.M. Ziman:Proc. Phys. Soc.(London)91(1967)   701. 8)C.Y. Fong and M L、 Cohen:Phys. Rev. Letters   24 (1970) 306. 9)E.M. Mueller, A. J. Freeman, J.0. Dimlnock   and A. J. Furdyna:Phys. Rev. B 1(1970)4717. 10) D.LRodges and C. Y. Fong:Phys. Letters 39   A(1972).345.

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