長 野大学紀要 第13巻 第2・3号合併号 169-179頁 1991
労働時間短縮 と国民生活
The Shortening of Working Hours and the People's Life
は じめに
今 、わが国では、労働時間短縮の問題が、大 き な経 済社会問題のひ とつになっている。労働時間 を短縮 し自由時間の拡大 を図 ることは、一人ひ と りの労働者が生活 を豊かにす るための選択の途 を 広げ ることであ り、労働者の福祉 向上の観点か ら も是非 これ を推進す る必要がある。 また、長期的 にみ た雇用機会の確保、あるいは企業の活力の維 持 ・増進のために も必要 とされている。 これ らに 加 えて、最近 では、わが国の長労働時間に対す る 国際社会か らの圧力 も強 まって きている。 そこで本論 では、 こうした情勢 と改正 された労 働基準法の内容 を中心に、 まず第1章で、わが国 企業の労働時間短縮 の動 きを概括 した。 そ して、 第2
章では、企業従業員の職業生活意識が 「仕事 志 向か ら余暇志向-」 と転換 している状況 を、従 業員意識調査 の時系列分析か ら明 らかに し、 さら に、余暇生活 を充実 させ る方法について模 索 した。所
正 文
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第1
章
労働 時間短縮の動 き
A.
日本型 労働 時 間 の特 徴 わが国の労働時間は、昭和35年(1960年)の2,432 時間 をピー クに高度経済成長期 に大幅 に短縮 した。 そして、石油危機によって経済活動が低下 したと はいえ、昭和50年には全産業平均 で2,064時間まで に短縮 した。 しか し、欧米先進諸国に比べれば、 まだまだ長時間労働 であるといわれ る。わが国の 産業界において、長労働時間が定着 している理由 は、次の3点であると考 えられ る。 (1)労働 日数が多いこと 欧米先進諸国 と比べ て、わが国の労働 日数の多 きは群 を抜 いてい る (表1-1 ) 〔1)。各 国に比べ て、 わが国の労働 日数 は平均 して20日程度 多 くな っている。 この差は週休 2日制の導入の立ち後れ であることはい うまで もな く、週休 日数の差がそ の まま労働 日数の差 としてはね返 っている。 年間実労働時間をみて も、ア メ リカ、イギ リス よ り約200時間、 ドイツ (旧西 ドイツ)、フランス よ り500時間程度 多 くなっている。そ して、1980年 代は一貫 して2,150時間程度で推移 してお り、労働 時間短縮が進んでいないことがわか る。 表1- 1 年間労働 日 ・休 日日数 (製造業 ・生産労働者)〔最近時〕 国 計 労働 日数 欠勤日数 】年次有給欠勤日数 休 日日数 週休 日数 日 本 365 251 3 9 105 85 ア メ リ カ 365 233 6 19 113 104 イ ギ リ ス 365 229 11 24 112 104 西 ドイ ツ 365 221 11 29 115 104 フ ラ ン ス 365 227 16 26 112 104 注 欧米の年休 は付与 日数 であ る。ア メ リカ、 イギ リス、 旧西 ドイツにつ いては完全週休2日制 とした。 (資料 出所) 日本生産性本部 「活用労働統計」(1991年版) - 1 17-170 長野大学紀要 第13巻 第2・3号合併号 1991
(2
) 残 業 、休 日出勤 が 多 い こ と 所 定 外 労 働 時 間 に お い て も、 欧 米 先 進 諸 国 よ り か な り多 くな っ て い る (表1-2)。 この 背 景 に は、 日本 的 な雇 用 慣 行 で あ る終 身 雇 用 制 度 が 関 わ って い る とされ て い る 2日 3〕。 す な わ ち、 わ が 国 で は 、 景 気 の動 向 に よ り雇 用 人員 の 増 減 を安 易 に行 うこ とは な く、 好 況 に よ り仕 事 量 が 多 い と きに は、 残 業 や 休 日出勤 、 あ るい はパ ー トタ イマ ー の 導 入 に 表1-2 年 間夷労働時間 (製造業 ・生産労働 者) よ っ て対 応 す る こ とが 多 い。 しか し、 不 況 の と き に も、 欧 米 の よ うに レ イ オ フ (lay-off)が 行 われ るこ とは な く、 連 帯 主 義 的 な賃 金 カ ッ ト等 で切 り 抜 け られ て い る。 これ らの理 由 は、 主 に使 用 者 側 の 理 由 で あ るが 、 労 働 者側 の理 由 と して は、 基 本 賃 金 が安 い ため 、 一 定 量 の 残 業 手 当 を既 に見 込 み収 入 に加 え て い る こ と、 自分 の 業務 は残 業 を して も責 任 を もっ て こ (単位 時間) 辛 日 本 ア メ リ カ イ ギ リ ス 旧 西 ドイ ツ フ ラ ン ス 1975 2,043 1,881 1,923 1.678 1,830 1978 2,137 1,924 1,955 1.719 1,772 1979 2,162 1,919 - -1980 2,162 1,893 1,1,910947 1.1ー656671 1981 2,146 1,888 1,717 1982 2,136 1,851 -1983 2,152 1,908 -1984 2,179 1,937 1,647 1985 2,168 1,929 1,952 1.659 1,643 1986 2,150 (212) 1,930(177) 1,938(161) 1.655(83) 1,643(-) 1987 2,168 (224) 1,940(192) 1,947(177) 1.642(78) 1,645(-) 1988 2,189 (253) 1,962(203) 1,961(187) 1ー642(83) 1,647(-) 1989 2,159 (254) 1,951(198) 1,989(187) 1.638(94) 1,646(-) 注 1. ()内は所定外労働時間である。 2.日本と諸外国との比較を可能にするために、旧西 ドイツ、フランスは1975-1984年についてはEC統計局資料による年 間実労働時間を用い、1985年以降は1984年の数値を各国公表の週当たり労働時間の増減率で延長推計したものを用 いた。また、イギリスについては、1975-1981年についてはEC統計局資料による年間実労働時間を用い、1984年以 降は1981年の数値を公表過当たり労働時間の増減率で延長推計したものを用いた。アメリカは労働実費調査により 遇当たり支払労働時間を実労働時間に換算し、52倍したものを用いた0 3. 事業所規模は、日本が5人以上、アメリカが全規模、その他が10人以上である。 (資料出所) 日本生産性本部 「活用労働統計」(1991年版) 表1- 3 常用労働者1人平均年間実労働時間数 (従 業貞規模別 ) 単位 :時 間 時間 午 絶実労働時間 所定内 所定外 総実労計 働時間 所定内 所定外 絵美労30-99人 働時間 所定内 所定外 給実労100-499人 働時間 所定内 所定外500人以上 労 働 労 働 労 働 労 働 労 働 労 働 労 働 労 働 時 間 時 間 時 間 時 間 時 間 時 間 時 間 時 間 1980(昭55) 2,109 1,947 162 2,134 1,996 138 2,090 1,930 160 2,093 1,883 210 1985(昭60) 2,110 1,932 178 2,117 1,970 147 2,104 1,924 180 2,102 1,872 230 1987(昭62) 2,111 1,922 189 2,118 1,955 163 2,104 1,914 190 2,105 1,866 239 1988(昭63) 2,088 1,898 190 2,086 1,924 162 2,087 1,895 192 2,095 1,849 246 (注)事業所規模30人以上。 (資料出所)労働省 「毎月勤労統計調査報告」
-118-所正文 労働 時間短縮 と国民生活 なす とい う勤労意識が作用 していると考 えられ る。 また、わが国の所定外労働時間は
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年以降、 全産業 で増 えている。 これは大型景気によって 日 本経済が活性化 してい るためである。 そ して、企 業規模別 にみ ると大企業ほ ど所定外労働時間が長 いこ とに気がつ く (表1-3)
〔4〕。週休2
日制は大 企業 ほ ど進んでい るため、大企業の所定 内労働 時 間は少な くなっているが、逆に所定外が多いため、 企業規模別 に実労働時間数 をみ ると、ほ とん ど差 がな くなっている。 (3)年次有給休暇 (年休)の取得率が低 いこと 平成元年(
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年)では、全産業平均 で労働者 一人当た り1
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日の年休が付与 されてい るo Lか し、取得 日数 は7.
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日に留 ま り、消化率 は5
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と なっている。企業規模別 にみ ると1,
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人以上の大 企業 では1
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日の付与に対 し、9.
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日取得 (消化率5
3.
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%)
、
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人の中企業では1
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日の付与に 対 し、7.
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日取得(
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%)
、3
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人の小企業 で は1
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日の付与に対 し、6,4日取得(
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9.
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%)
とな っている。小規模企業ほ ど年休 の付与 日数、お よ び取得 日数が少 ないことがわか る。集団主義的 な わが国企業では、年休 をとるとその分 回 りの人に 仕事 の しわ寄せが くるため、回 りに対す る気兼ね か ら取れないことが 多い といわれ る。 また、人事 考課-の影響 を気 にす る人 も多い ようであ る〔5〕。 因みに欧米では、年休消化率 といった概 念は存 在せ ず、付与 された 日数 は1
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消化す るこ とが、 当然の権利 として受け とめ られている。B.
労働 時 間短 縮 の必 要性 国民生活の豊か さの内容 を決め る大 きな要因 と して、労働時間の短縮がある。 わが国産業界は、 これ まで労働生産性の向上 した分 の9
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%
を賃金に 還元 していた といわれ る〔6)。 しか し、これか らは 賃金 ではな く、労働 時間短縮に対 して成果配分 さ れ るべ きであると考 えられている。労働時間の短 縮 については、次の4
点に意義が求め られている。 (1)労働者の健康の確保 と生活の充実 高齢化時代 には、健康 と能力 を維持 してゆ くた めに も 「ゆ とりの時間」が必要 である。 これは、 「二宮金次郎か ら小原庄助 になれ」 とい うこ とで はな く、 自由時間 を人間 らしく積極的にエ ンジ ョ イす ることを意味 している。特 に、家族 とのふれ1
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1
合 いの時間 を多 くし、家庭生活の充実 を図 ること が重要である(7〕。 (2)経済社会や企業の活力の維持 ・増進 資源少国のわが国は、質の高い労働力によって 経済社会が支 えられている。高度 な能力、知識、 柔軟 で創造的な発想が培われ るためには、 自己啓 発の充実 と十分 な休養の機会 を保障す ることが必 要である。 そ して、労働時間短縮 は、災害防止上 の効果 も期待 で きる。 (3)国際化への対応 「日本人は、 うさぎ小屋に住 んでいるワー カホ リック (働 き中毒患者)である。」と欧米人が言 う ように、わが国は経済先進国ではあって も、労働 時間においては、欧米先進国にはほ ど遠 く、東南 アジア並 であるとされている。 したがって、労働 時間など労働条件面で も先進国 としてよ りふ さわ しい水準 を確保す る必要がある。 また、休 日の増 加 は消費機会の拡大につなが り、内需の持続的拡 大 をもたらす と考 えられている。 これは、貿易摩 擦の対応策になると期待す る向 きもある。(4
)長期的にみた雇用機会の確保 中高年齢者の労働市場-の残留、女性の社会参 加意欲の高 ま りによ り、限 られた労働力のパイを 皆で分 けあうことは、今後 ます ます重要になって くる。 したが って、一人ひ とりの労働者の労働時 間を短縮す ることによって、全体 として雇用者数 の維持、増大 を図るいわゆ るワー クシェア リング の考 え方 を導入 してい く必要がある。 これは、生 産性の向上 を労働時間の短縮 に配分 してい くこと を意味 している。 労働時間短縮 に関す るこうした意義 を受けて、 日本政府 も各種 の審議会 を設け、積極的な議論 を 展開 して きた。 そ して、基本的な方針は、昭和6
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年5
月に報告 された 「経済審議会建議 -構造調整 の指針」 (いわゆ る 「新前川 レポー ト」
)
によって 定め られた とされている。同 レポー トでは、西暦2
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年に向けてで きるだけ早期 に年間実労働時間1
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時間程度 を達成 させ るためには、完全週休2
日制の徹底、年休2
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日間の完全消化が絶対条件で あるとしている。 - 119-1
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長野大学紀要 第13巻第2・3号合併号 1991C.
政府 の基本 的取 り組 み と労基 法 改正 の ポイン ト 新前)lH,ポー トの提言を受けて、政府は基本的 な取 り組 み として次の3点 を掲げ、労働 基準法の 改正に取 り組んだ8、 9 0 ①週休2日制 の徹底 を図る。 そのためには、 1 週40時間労働 とす る必要がある。 ②残業 (所定外労働)時間を減 らす。 そのため には、経営側の コス ト増 を抑 える目的 も含ん だ 「変形労働時間制」 を敷 く必要がある。 ③年休の取得促進 を図る.そのためには、一斉 休暇の設定 など年休制度に関す る改善が必要 である。 労働基準法は昭和22年 (1947年)に制定 されて か ら約40年間、 1日8時間、 1週48時間の労働時 間体制が維持 されて きた。 しか し、国際情勢 をは じめ として、労働時間短縮に踏み切 らざるをえな い状況が急速にできあが り、昭和63年4月に改正 労基法が施行 され るに至った。労基法は刑罰法規 であるため、行政指導などとは異な り、厳 しい態 度で各企業に臨むことになる。そ もそも労働時間 に関す る問題 は、労使関係 に委ね られ るべ きもの であるが、法律改正 をテコにさらに強化 していき たい と労働省は公言 している。改正のポイン トは 次の3点である。 なお、労働時間の具体的基準に ついては、政令、省令によって規定 されてお り、 以下の説明はそれを含めて行 うことに したい。 (1) 1週40時間の法定労働時間 従来の1週48時間を40時間に短縮す ることを最 終 目標 とし、段階的に短縮す るもの とす る。 因み に、最初 の3年 間は1週46時 間 とし、平 成 3年 (1991年)4月以降は 1週44時間 とす るO そ して、 1990年代 のなるべ く早 い時期に1週40時間を実現 す ることを目標 とす る。 これが大原則であるが、一定規模以下の企業、 一定業種 については3年間の猶予措置 をとり、 と りあえずは48時間体制 を容認 した。 この理由は、 わが国の労働時間は、企業規模や業種 によって格 差が大 きいため (図1-1)、週所定内労働時間の 長い事業所が 多い規模、業種 については、ある程 度の猶予期間が必要であると判断 されたためであ る。因みに、一定業種 とは、「鉱業」、「運輸交通 業」、「清掃 ・食肉処理業」である。 しか し、猶予 - 1 20-調 査 産 業計 鉱 業 建 設 業製 造 業
電
気・
ガ
ス・
勲
供
冶・
水
道
業
謹告・
通信業
卸
売
.
小
売
業
、
飲食店
金
持
l
・
保
険
業
不動産業
サービス業
資料出所 労働省 「毎月勤労統計調査」(平成元年) (注) 年平均月間実働時間を12倍 したものである。 図1-1 産業別労働者1人平均の年間総労働時間 (平成元年、事業所規模30人以上) 措置の とられた企業 も、後追い的に1週40時間に 近づけていかなければならない。 なお、猶予措置 の適用単位 は、企業 ではな く事業所 であることに 注意す る必要がある。 こうした大 目標 を掲げた改正労基法 であるが、 現実の情勢はたいへん厳 しい。政府の 「経済運営 5カ年計画」では、1992年度 までに年間実労働時 間を1800時間程度に短縮す ることが 目標 とされて いるが、「それは極めて困難 である」とい う研究 レ ポー トが大手都 市銀行 に よって'91年1月に発表 されている〔10〕。それによれば、'92年 に1800時間 ま で短縮す るには、今後の経済成長率 を年平均1.1% までに抑制す ること (因みに'89年実績は4.8%)、 労働力率 を71%まで引 き上げ るこ と ('89年 は62.9 %)、および技術革新 のテンポの増幅 ('83-'89の 4倍のテンポが必要)の3条件が ク リアされなけ ればならない としている。 いずれの条件の クリア も極めて困難であることは言 うまで もない。大 目 標の実現 に向けて、 さらなる検討が必要 になって いる。 (2)変形労働時間制の採用 (労働時間に関す る法的規制の弾力化) これは、わが国経済におけ る第3次産業の比重所正文 労働 時間短縮 とBl民生活 増大 を考慮 した ものであ り、サー ビス需要 (繁 閑) に合 わせ て、労働時間を弾力的に配分 しようとす るものである。 これには
4
つの メニューがある。 なお、弾力化 の導入に当たっては、労使協定の締 結等一定の要件が義務づ け られているo ①1
カ月単位 の変形労働時間制 従 来は4週単位 で運用 されていたが、 1カ月に 延長 され、 1週 当た りの労働時間が46時間以内に 収 まっていれば問題がないことになった。 これは、 通常 の賃金計算期 間が1
カ月であ り、業務の繁 閑 の周期が必ず しも週単位 ではない事業があること か ら導入 された。 因みに、 1カ月が31日の月であ れば、203.1時間(46/ 7*31-203.1)の枠 内で労 働時間 を配分す るこ とがで きる。 ただ し、各 日、各過の労働 時間 を具体的に定め ておか なければな らない。 そ して、就業規則、労 働協約 を労働基準監督署へ届け出ることが必要 に なる。 ② フ レックス ・タイム制 これは、 旧西 ドイツで発生 した制度 であ り、 1
週、 1月 といった一定の期 間 (清算期 間)の総労 働時間 を定めてお き、労働者はこの範囲内におい て、各 日の始終業時刻 を自主的に決定 してい くこ とが で きるものである (図1-2)
。労働者が 自分 の生活 と仕事 との調和 を図 りなが ら、効率的に働 くこ とので きる制度であるため、わが国で も以前 か ら関心が寄せ られていた。 ただ し、労働時間の管理が非常に重要 になるた め、就業規則、労働協約 に明確 に うたわれ る必要 があ る。 そ して、清算期 間は最大限1
カ月 とす る こ と、 また残業手当については、 1日、 1週間単 位 ではな く、清算期 間 を通算 して法定労働時間 を 超 えた分 に対 して支払われ るとされている。 図1-2にみ る とお り、 フレ ックス ・タイム制 は、 コアタイム とフレックスタイムか ら構成 され 午 前7時 9時 10時 12時 午後1時 3時 5時 9時 図 1-2 フレックスタイム制の例1
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ることが一般的であるが、労使 間協議 で合意すれ ば、 コアタイムが全 く存在 しない制度 もあ りうる とされている。 ③3カ月単位 の変形労働時間制 繁忙期 にはかな りの残業が発生す る反面、閑散 期 には所定内に見合 うだけの業務量 もない といっ た、業務量に季節波動がある業態において適用 さ れ る制度である。例 えば、デパー ト等では12月が 忙 しい反面、11月 と1月は閑散期 になる。 こうい う業態では、12月は1日10時間労働 の週休2日、 11月と1月は1日7時間労働 の週休2日といった 変形労働時間制の方が効率 よい。因みに、 この制 度が導入 され ると12月には残業手当はつか ないこ とになる。 ただ し、 この制度の運用 に当たっては、 次の ような歯止めがかけ られている。 1)1日に10時間を超 える労働時間 を設定 しては いけない 2)1週 に56時間 を超 えてはいけない 3)1週1日の休 日を設けなければな らない 4)18歳未満の年少者、妊産婦に対 しては通用除 外 とす る 5)3カ月間の総労働時間は1週平均 に して40時 間以 内でなければならない 6)3カ月先 を見越 して、各月、各週、各 日の労 働時間を予め設定 しておかなければならない。 この制度は残業手 当を減 らす制度 であ り、経営 者側 に有利な制度 ではないか といった議論がある。 これに対 して労働省 は、捻労働時間 を減 らす こと に意義があ り、労使双方で十分 に議論 した上で導 入す るように と答弁 している。 因みに、導入に当 たっては、必ず労使協定 を行 い、労働基準監督署 への届 出が義務づ け られてい る。㊨ 1
週間単位 の非定型的変形労働時間制 これは、いつ忙 しくなるか、あるいは暇になる かが特定 で きない業種 に対 して、業務の繁 閑を考 慮 し、 さらに労働時間短縮 に も貢献す る制度 とさ れている。通用事業所 は、従業月数30人以下の小 売業、旅館、料理店、飲食店である。 これ らの事 業所 では、 1日10時間以内、 1週44時間以内であ れば、非定型的な変形労働 時間制 とされ、所定 内 労働 として認め られ ることになる。 なお、当該労 働者に対 しては前週に書面で通知 しなければなら ない。 - 121-174 長野大学紀要 第13巻 第2・3号合併号 1991
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)年休制度の改善 改善のポイン トは3つある。 ①勤続2年 目の勤労者に対す る年休の最低付与 日 数 を、従来の6日間か ら10日間に増やす。 しか し、従業員数300人以下の企業には 3年間の猶予 措置 を施す。 なお、勤続3年 目以上の労働者に 対 しては、10日間を最低基準 として、勤続年数 の伸 びに合 わせ て、付与 日数の上限 まで増や し てい く。 ② 「計画年休」 を導入す る。 5日以内の年休 は個 人的な都合 で任意に取得で きるもの とす るが、 5日を超 える部分 については、 5月連休、夏休 み、あるいは年末年始時にまとめて取 るように 労使協定 を結ぶ (一斉休暇の設定)0 ③パー トタイム労働者に も年休 を認め る。付与の 方法は、比例付与 を原則 とす る。例 えば、所定 労働 日数が週 4日の労働者は、フルタイマーの 6分の4の 日数 を付与 されることになる。 この他 に も、年休取得に伴 う不利益扱いの禁止 をうたった訓示規定が付け加 えられ、年休取得 を 促進す るため、 さまざまな配慮がなされている。 労働時間の短縮に向けて、 こうした法的な手 当 がなされ ることになった。 しか し、労基法改正 で ふれ られている点は、いずれ も所定 内労働時間に ついてであ り、残業問題はあまりふれ られていな い。「所定内労働 時間 を減 らして も、残業が減 らな ければ意味がない」 といった議論が当然起 こって くる。因みに、わが国の大企業は、所定内労働 時 間の短縮 は確実 に進んでいるが、その分残業が 多 いため、実労働時間は中小企業 とあま り変わ らな いことを既に示 した。 また、国際的にみて実労働 時間の短縮が極めて進んでいる旧西 ドイツの法定 労働時間が、意外に も1955年以降、一貫 して週48 時間体制 となっている〔8)。 したが って、労働時間 短縮の問題 は、法改正の問題 ではない と指摘す る 声 もある。現在わが国では、残業 を減 らすために 欧米にならって、残業に対す る割増賃金率 を大幅 に上げる必要があるのではないか といった議論 も 出ている。 - 122 -第2
章
ゆ と りを求 め る国 民 生 活A.
職 業生 活 意識 の変化 高度経済成長時代のわが国においては、 自分 の 生活 よ りも会社の仕事 を優先す る、いわゆ る滅私 奉公的なライフスタイルがあま り違和感 を伴 わず 受け入れ られていた。 しか し、 こ ういったライフ スタイルが最近急激に崩壊 しは じめている。職業 人を対象に行 われた種々の意識調査結果に もその 傾 向をみ ることがで きる。 本章 では、全国に組織 をもつ運輸業 を営む大企 業(N社)の労働組合員 を対象 として行 われた 「職 業生活意識調査」のデー タをもとに議論す るこ と に したい 11)0 この調査 は5年 ごとに行 われているため、1985 年11月に行 われた調査 (85調) と1990年11月の調 査 (90調) を比較す ることによ り (ただ し、比較 可能な もの)、5年間に職業人の意識が どのように 変化 したかについて検討 したい。 因みに、調査 の 有効サ ンプル数は、85調が3815、90調が4909であ る。 (1)仕手 と余暇のあ り方 まず最初 に 「仕事」 と 「余暇」において、 どち らを優先す るか をきいてみた。仕事 を優先す る人 は21.7% (「仕事絶対」とす る人 と 「仕事優先」と す る人の割合 の合 計)、余 暇 を優 先す る人が38.5 %、 どちらも同 じ くらいの ウェイ トをお く人が 35.2% とい う結果が示 された。85調 では、仕事優 先派34.1%、余暇優先派31.2%、両立派33.0%で あったため、仕事 を優先す る人が大幅に減少 して いることが読み取れ る (図2-1)。 また、今 回の 調査結果は、同 じ質問形式でNHK (日本放送協 会)世論調査部が1988年に行 った調査 よ りも、 さ らに余暇優先傾向が進んでいるため注 目され る〔12〕。 次にこの質問に対す る回答 を年齢段階別に分析 し てみた。20歳代では、余暇優先46.3%、両立45.5 %、仕事優先8.2% となってお り、仕事 を優先す る 人は10%を切 っている。 これに対 して、50歳代 で は、仕事優先34.0%、両立32.3%、余暇優先33.7 % と3着がほぼ等 しい割合 となっている。年齢段 階別にみ ると、 まだかな りの差が見 られ るものの、 仕事優先派は50歳代 において も3分 の 1程度であ るため、 自分 の生活 よ りも会社 の仕事 を優先す る所正文 労働 時間短縮 と国民生活 わからない ・その他 /;: //II;.二二宍 敗::白二二:二二二二二:II;/-.-妻 妾 ≡誓 蔽 巨 妻 妾妻妾ミここ::I::::徳 :9::.::I-.二二二二::I
42
.
(資料出所 ) 全 日通労組 「第6
回組合 員意識調査」(
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1) 図2-1 仕事と余暇のあり方 滅私奉公的なライフスタイルは、確実 に崩れて き てい るといえよう。 (2)職場の同僚 とのつ き合 い方 次に、「職場の同僚 との人間関係のあ り方」につ いて きいてみた。 日本人は、親戚づ き合 い、近所 づ き合 いよ りも職場の人間関係 を大事 にす るとい われ、終業後に酒 を飲みに行 くときも、あるいは 休 日にゴルフに行 くときも、従来は職場の同僚 と 行 くことが圧倒的に多か った。 しか し、 こうした 人間関係 に も変化が起 きている。職場の同僚 と全 面的 な人間関係 をもとうとす る人は4
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であ り、8
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調の5
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を大 き く下 回っている。 その反面に おいて、部分 的人間関係、形式的人間関係 をもと 形式的つき合い1
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うとす る人の割合が増 えてい る (図2-2)。 これ は、余暇優先志向の拡大 とリンクしていると考 え られ、職業生活に対 して限定的に関与 していこう とす る傾 向 とみ ることができる。 しか し、部分的 人間関係 を志向 とす る人は、2
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歳代4
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%、3
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%、5
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歳代3
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となって お り、年齢段階が上が るにつれて減少す る傾 向に ある。すなわち、減少分 は全面的人間関係 を志向 とす る方へ 回 ってお り、5
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歳代 では依 然 として4
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の人が全面的人間関係 を志向 している。 (3)職業選択の基準 若年層 を中心に職業生活に対 して限定的に関与 しようとす る傾 向が高 まる中で、「職業選択の基 わからない ・その他 (単位 :%) 2.6 (資料 出所 ) 仝 日通労組 「第6回組合員意識調査」(
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1) 図2-2 職場の同僚 とのつき合い万 一 123-176 長野大学紀要 第13巻 第 2・3号合併号 1991 準」は どこにおかれ るのかについて きいてみた。 質問は3つ行 った。 まず第1は、職業 を選ぶ際、「つ まらないけれ ど も給料が よい仕事」 と 「給料は安 いけれ どもお も しろい仕事」の どちらを選ぶかである。結果は、 前者 を選ぶ人が36.9%、後者 を選ぶ人は63.1%で あった。仕事 の中身を重視す る傾 向がはっき りと 示 されている。生活に必要な一定水準の給料が も らえれば、後は仕事 の中身が問題であるとい うこ とであろ う。 この傾 向はどの属性に も共通 してみ られるが、特 に女性において強い。 因みに、仕事 の中身が重要 とす る女性は69.5%に達 している。 第
2
の質問は、職業 を選ぶ際、「規模 は小 さ くて も自分の能力 を活かせ る会社」 と 「能力を発揮 で きるチャンスは少ないが、規模が大 き くて安定 し ている会社」の どちらか を選ぶかである。結果は、 前者 を選ぶ人が58.2%、後者 を選ぶ人が41.2%で あ り、 自分の能力を活かせ る仕事 につ きたい とい う志向が強 く示 されている。 この質問において も 属性間の差が余 りないことが特徴である。す なわ ち、職業選択においては、仕事がお もしろ く能力 を括かせ る仕事 であるか どうかが重要になってい る。 第3の質問は、賃金 と労働時間 との関係につい てである。「総労働時間が増えて も賃金が もっと増 えた方が よい」 とした人は13.5%に過 ぎない。 こ れに対 して 「賃金が増えることよ りも労働時間 を 短 くした方が よい」 とした人は74.5%に達 してい る。 この質問は85調で も行 っているのでそれ と比 較 してみ ると、85調では前者の賃金重視派が25.1 %、後者の労働時間重視派が64.9%なっている。 すなわち、一定の賃金が確保 で きれば、労働 時間 が短縮 した方が よい とす る人が増 えて きている。 これは、労働時間が短縮す ることによって余暇生 活 を充実 させ ようとす る人が着実に増 えて きてい ることを示 している。 因みに、時間外労働が今 よ りも少ない方が よい と答えた人が、85調の43.0% に比べて、今 回は56.3%に増 えていることも注 目 してお く必要があろう。 以上 をまとめれば、仕事 よ りも余暇 を重視す る ライフスタイルが着実に浸透 し、仕事 において も、 給料や会社規模 よ りもその仕事がお もしろいか、 あるいは 自分の能力 を発揮で きるかが重視 されて - 1 24-きている。 そして、余暇生活 を充実 させ るために は、賃金増 よ りも労働時間の短縮が重要 とされ、 職場の同僚 とも、一線 を隔 した人間関係が求め ら れて きている。 こうした傾 向は、特定の年代、世 代のみにみ られ るものでな く、あ らゆる属性 に浸 透 して きているため、「時代効果」として結果 を受 け とめ るべ きであると考 えられ る〔13)0B.
余 暇生活 の充実化 (1)生活時間の中での余暇の位置づ け 勤労観 に変化の兆 しが見 られ、 自由時間の充実 を重視す る傾 向が強 まっている。人生80年時代 で は、生涯時間はお よそ70万時間 とされ、余暇 (自 由)時間は労働時間の3倍以上 を占め ると考 えら れている。 まず、人間の生活時間の構造 を考 えてみたい。 生活時間は、労働時間、余暇時間、および生活必 需時間の3つに区分 できる。労働 時間は、「モノの 再生産」 を行 うための時間であ り、社会的な拘束 を受け る。 また、生活必需時間は、睡眠、食事 と いった 「生物 としての再生産」の時間であ り、生 理的な拘束 を受ける。 これに対 して、余暇時間は、 知的価値 を高め るための主体的な時間であ り、「文 化の再生産」 を行 う時間 として位 置づけ られる。 すなわち、何者によって も拘束 を受け ることはない。
しか し、 こういった生活時間構造が認識 され る ようになったのは、それほ ど古 くはな く、現代的 人的資源管理が定着す るようになってか らである。 因みに、産業革命直後は、労働 時間 と余暇時間が 未分離 な状態であ り、生活時間は、労働時間 と生 活必需時間で構成 されていると考 えられていた。 その後、労働運動の高 ま りによって、生活必需時 間が拡大 していったが、余暇時間の概念はまだ生 まれてこなかった。 そ して、現代 になってようや く、余暇 と労働 とは、 トレー ド・オフの関係 にあ る対立概念 として理解 され るようになった。 これ に加 えて1980年以降、余暇概念の理解 において発 展がみ られ ることに注意 したい。 (図2-3)0 高度経済成長期 のわが国では、労働 だけが価値 を生み出す と考 えられ、余暇は文字 どお り 「余 っ たヒマ」 とい う労働 の従属物 として とらえられて いた。すなわち、 この時代 には、余 っている時間所正文 労働時間短縮 と国民生活 生活必需時間 女=哀史時代 労働運動の高まL)の時代 現 代 図2-3 生活時間配分の変遷 その ものに重点がおかれていたため、 こうした余 暇概念は 「時間概念 としての余暇」 として位置づ け られる。 因みに、時間概 念 としての余暇は、 ラ テン語のオシム
(
ot
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,何 もしていないこと)に 類似 している。 これに対 して、最近におけ る余暇の とらえ方は、 余 って い る時 間 に何 をす るか に重 点 が お か れ る〔14〕。 これは、時間概念 としての余 暇ではな く、 「活動概念 としての余暇」 として位置づ け られ、 ギ リシャ語のスコ- レ (schole,自らを高めてい くこ と ・文化創造活動)に類似 している。欧米で は、もともと余暇の語源 をスコ- レに求め、「人が 自由に 自らの活動 を選択す ることので きる時間の 枠組み」 とい う意味合 いで余暇時間が理解 されて いた。わが国において も、「国家の文化水準は、労 働 よ りも余暇にかか っている」 とい う認識が最近 になってよ うや く高 ま り、余暇時間 を積極的に意 義づけ しようとす る動 きが活発化 している。すな わち、 オシム型か らスコ- レ型へ と余暇概念が、 遅ればせ なが ら変化 しているようである。 (2)余暇の過ご し方 わが国の職業人は、 どの ような余暇の過 ごし方 をしているのか、 オシム型ではな くスコ- レ型の 過 ご し方 をしているのか どうかについて実証デー タか ら検討 してみたい。用 いるデー タは、先に示 した 「職業生活意識調査」である。 最初の質問は、「自由時間 をどの ように過 ごして いるか」 である。結果は、 1
位 「好 きなことをし て楽 しむ」 (47.9%)、 2位 「身体 を休めて明 日に 備 える」 (16.9%)、 3位 「家族 との結びつ きを深 め る」 (10.8%)、 4位 「ぼんや りテレビを見て過 ごす」 (8.1%)となってい る。 この傾 向は85調 と 変わっていない。しか し、85調では、「好 きなこと をして楽 しむ」が41.1%と90調 よ りも低率 となっ 177 てお り、これに対 して、「身体 を休めて明 日に備 え る」が21.3%と高率 になっている。すなわち、余 暇 を積極的に楽 しむス コ- レ型へ徐々に移行 して い ることがわか る。 次に、好 きなこ ととはいったい何 なのかについ て尋ねた。 回答形式は23個の選択肢の中か ら2つ を選ぶ方式である。回答率10%以上の項 目を順位 ごとにあげ ると、1位 「自分 でや るスポーツ」(39.3 %)、 2位 「見 るスポー ツ」 (23.1%)、 3位「釣 り」 (15.4%)、 4位 「ドライブ」 (15,3%)、 5位 「国 内旅行」(14.3%)、 6位 「海外旅行」(12.2%)、 7位「カラオケ」 (10.4%)となっている。 これに ついて も85調 とほぼ類似 した結果 となっている。 しか し、スポーツを自分 でや るか、あるいは観戦 して楽 しむかにおいて差がみ られ る。85調では、 自分 です るが35.7%、観戦 して楽 しむが34.4%と 両者が桔抗 していた。これに対 して90調では、「自 分 です る」 とい う方が明 らかに多 く、主体的に余 暇に対処 してい くスコ- レ型へ と変化 しているこ とがわか る。 また、90調では、国内旅行、海外旅行 を合計す ると26.5%とな り、見 るスポー ツを上 回る。囲み に、85調では 「旅行」に対す る回答は19.8%であ った。 これについて も、 5
年間に国民の所得水準 が向上 し、国民生活が豊かになったことが当然関 係 してい るとはいえ、余暇生活 を積極的に詣歌 し ようとす る現象 として とらえることがで きる。 一方、 こうした 「好 きなこと」 を年齢段階別 に み ると顕著 な差が出ている。20歳代 は、 自分 でや るスポー ツ、 ドライブ、海外旅行、音楽観賞など に よって余暇 を過 ごしているが、40歳代、50歳代 は、見 るスポー ツ、釣 り、カラオケ、国内旅行、 園芸 ・工作 などが多 くなっている。 また30歳代 は、 若年か ら中高年-の過渡期 となっているが、 どち らか とい うと20歳代の人に近 い余暇の過 ごし方 を しているようである。 ただ し、30歳代 はライフス テー ジ的にみて家族形成期、あるいは家族成長前 期 に当たるため、他の年齢段階 よ りも家族 との結 びつ きを深め るこ とに関心が寄せ られている。 (3)余暇充実のための施策 休養や気晴 らしだけでな くクリエイティブな余 暇時間 を過 ごすためには、行政サ イ ドの支援が重 要 になる。すなわち、国民のニー ズに対応 した余 ー 125-178 長野大学紀要 第13巻 第2・3号合併号 1991 暇空間 を既存施 設 を活用 しなが ら、整備 、充実 し てい く必要が あ る15〕。 人生80年時代 は、生涯 にわた って知 的 な活動 を 続 けてい く 「生 涯学習」の重要性が指摘 され てい る。学校 や社会教育施 設におけ る生涯学習の機会 の充実 を図 るため、 これ らの施 設、 お よび人材の 整備 を行 う必要 があ る。特 に、学校 を修 了 して一 定期 間後 の 自由時間 を利用 した再 学習や定年退職 後の生 活設計 を支援す る専 門機関、 人材 の整備 が 重要 であ る。 さらに、生涯学習 だけで な く、趣 味や スポー ツ において も持続性や奥行 きの深 さを求め る傾 向が 強 まる とみ られ る。 そのための設備や 空間 として、 ワープ ロやパ ソ コン、 自動翻 訳機 な どが そろった 書斎 を求め る人 も増 えて くる。創作や鑑 賞 を好 む 人のア トリエ、百科工房 (
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-ルー ム)、オーデ ィオルー ム、ホー ム シア ター な どへのニー ズ も高 まって くる と考 え られ る。 スポー ツ も海岸、 山岳、 空域 と新 しい楽 しみ方 が次々 と開発 されて くるもの とみ られ る。 同時 に、 日常生活 圏で利用 で きる充実 した設備 の整 ったス ポー ツ施 設への ニー ズが一段 と強 くなって くる。 自然志 向や健康 志 向の強い人たちは、都 心か ら多 少触れ た場所 に、庭や テラス、園芸場 な どが備 わ ったゆ った りとした住 空間 を求め るよ うに な る。 そ して、彼 らは新幹線 を利用 して通勤す るこ とに なる。 また、 国内、海外 を含め た旅行 も今後一段 とニ ー ズが高 まるとみ られ る。 その形態 も芸術鑑 賞 ツ アーや スポー ツツアー をは じめ として、歴 史探求 型、 冒険 ・探検 型、海上移動型 な ど、単 な る観光 や買物 な どの 目的 を越 えた多様 な組 み合 わせ が考 え られ、 まさに ス コ- レ型の楽 しみ方が主流 にな って くる とみ られ る。 今後、週休2日制や計画年休 に よって大型 のバ カンスが実現 し、 こ うした国民のニー ズが現実 の もの とな る ときに必要 とな る重要 な余 暇空間 とし て、次 の よ うな ものが考 え られ る〔16〕。 ① 地域社 会 のス ポー ツ .文化施 設 (診滞在 して スポー ツ ・レジャーが楽 しめ る国内の リゾー ト基地 L31家庭 ④ 日帰 りでスポー ツ ・レジャーが楽 しめ る行 楽地 - 1 26-⑤都 心の スポー ツ ・文化施 設 ⑥滞在 してスポー ツ ・レジャー が楽 しめ る海外 の リゾー ト基地 こ ういった余 暇空 間 をすべ て新 設 す る とすれば、 膨大 な コス トがかか るため、既 存 の学校 施設や企 業 の余 暇施 設の閑散期 におけ る一般 開放 を進め る 必要 が あろ うO さ らに、企業 の新 製 品、サー ビス の開発、 そのため のマー ケテ ィン グ戦略 な ども、 ス コ- レ型社会 に対応 した形 に切 り替 えてい くこ とが重要 なポイン トにな る。 また、 わが 国の美術 館 、博物館 は、欧米先進諸 国 と比べ てか な りの差 が あ る といわれ てい る。 したが って、 これ らの施 設 を利用 した芸術 活動や イベ ン トに対 して、公 的 援助 が施 され た り、 あ るいは ソー シャル ・マー ケ ティングの一環 として積極 的 に企業が乗 り出 して くるこ とを期待 したい。 (ところ まきぶ み 非常勤講師) (1991. 9.12受理) 文 献 〔1〕 日本生産性本部編 : 「活用労働統 計 (1991年 版)」 (1991) 〔2〕 藤本武 :「今 日の労働時間問題」、労働科学研究 所 (1987) 〔3〕 所正文 二"運輸産業におけるサー ビスアップ と 労働時間短縮に関す る問題提起 "、輸送展望、No. 204 (1987) 〔4〕 労働省政策調査部編 : 「毎 月勤労調査報告」 (1990)〔5〕
佐野陽子 : "労働時間の諸問題"、三 田商学研 究、Vol.29、No.2 (1986) 〔6〕 勝田浩司 : ``成果配分 と労働 時間短縮 (上 ・ 下)''、労政資料、No.333-334 (1988) 〔7〕 経済企画庁総合計画局編 :「1800労働時間社会 の創造」、大蔵省印刷局 (1989) 〔8〕 労働省労働基準局監督課編著 :「改正労働基準 法の実務解説」、労務行政研究所 (1987) 〔9〕 安西癒、外井浩志 : 「新労働 時間の運用 と実 務」、 日本労働協会 (1988) 〔10〕 労働法令協会編 : "92年 の1800時間達成 は困 難"、労務管理通信、Vol.31、No.1(1991) 〔11〕 全 日通労働組合編 :「第6回組合員意識調査」 (1991)所正文 労働時間短縮 と国民生活 179 〔12〕 NHK世論調査部編 :「現代 日本人の意識構造 めに」、大蔵省 印刷局 (1990) (第3版)」、NHKブックス (1991) 〔15〕 安永武 巳 :"高速社会か らスコー レ社会-''、E] 〔13〕所正文 :"職業生活意識の変化 ''、物流プ ランナ 本経済新 聞経済教室1990年1月24日 (1990) -、No.217(1991) 〔16〕余暇開発 センター編 : 「レジャー 白書 (1987年 〔14〕 経済企画庁 国民生活局編 :「豊か な時 を創 るた 版)」(1988) ー 12 7