氏 名 木村 昌彦 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 医科学 ) 学 位 記 番 号 医工博甲 第 293 号 学 位 授 与 年 月 日 平成26年 9月 25日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 人間環境医工学専攻(生体環境学コース) 学 位 論 文 題 名 武道必修化における柔道の安全性と実施体制の確保 (Ensuring safety and implementation structure of judo in
compulsory educated system in martial arts) 論 文 審 査 委 員 委員長 教 授 松田 兼一 委 員 准教授 猩々 英紀 委 員 講師 星合 美奈子
学位論文内容の要旨
(研究目的)
本研究では、実際に重大事故の背景にはどのような要因や症状があるかを検証し、学校保健の分 野から安全な柔道の授業実施体制を整備するための基礎的資料を提示することである。 具体的な研究目的は柔道授業における傷害発生の現状把握、道場環境と安全との関連性,そして実 際に重大事故の背景にはどのような要因や症状があるかを検証することである(研究方法)
1. 調査対象者 1)調査対象: 政令指令都市の Y 市立中学校で柔道の授業を必修として実施している 145 校から無作為に 36 校を抽出し 12608 人を対象にアンケートを実施した。回答は 32 校 9879 人で回収率は 78.4% であった。その中で有効回答数は 30 校で 8467 人(男子 4342 人、女子 4125 人、有効回答率: 67.2%)であった。 2)調査期間:平成 25 年 2 月~3 月 3)調査内容 教師用アンケートを基に武道必修化における柔道授業の安全面に関する質問等を 24 項目設定し、 質問紙調査法を用いて中学生を対象に調査を実施した。回答方法には評定法形式を採用し、評定法 については1「全くなかった」、2「あまりなかった」、3「時々あった」、4「しばしばあった」、 5「頻繁にあった」のように 5 件法を用いた。また、傷害調査に関しては、医療機関受診の有無、 受傷の原因、傷害名を調査した。2.分析方法 柔道授業の安全面に関しては、5件法により解答された番号をそのまま得点化し、学年別、性別、 学習者の柔道経験別、学校規模、指導者の柔道経験別に集計して平均得点を算出した。検定には 2 群間の平均値の差の検定(t検定)、一元配置分散分析、カイ二乗検定を用いた。 医療機関への受診経験の有無、受傷理由については対象群の割合とオッズ比(OR) 95%信頼区間 〔95%CI〕を求めた。 (結 果) 柔道の授業中もしくは授業後に保健室あるいは医療機関に受診経験のある生徒の割合とオッズ 比について1年生は 2 年生と比べ低い値を示した。2 年生の経験有の生徒は経験なしの生徒と比べ 低い値を示した。性別では男子の方が女子に比べ高い値を示した。学校規模では大規模校が小規模 校に比べ低い値を示した。指導者の柔道経験の有無については経験のある指導者に教わった生徒が 経験なしの指導者に教わった生徒に比べ低い値を示した。専用道場の有無では専用道場ありが専用 道場なしに比べ低い値を示した。特に柔道経験者の指導者に教わった学校の医療機関への受診率の オッズ比は柔道未経験の指導者に教わった学校と比較して有意に低かった(OR 比=0.70;95%CI: 0.58~0.84)。また、専用道場有学校の医療機関への受診率のオッズ比は専用道場無学校と比較し て有意に低くかった(OR 比=0.59;95%CI:0.51~0.684) 生徒の医療機関に受診した受傷理由として「後ろ受け身の失敗」、「前回り受け身を失敗した」、 「投げられた時の衝撃」、「技を掛けて頭から畳に落ちた」、「自分を投げた相手がバランスを崩 した」、施設に関する項目として「畳の隙間に指がひっかかった。」、「壁に激突した」の項目が 高い値を示した。 (考 察) 今回の研究においては柔道授業の傷害とそれを引き起こす要因の実態調査を実施した。これまで は日本スポーツ振興センター(JSC)報告書の事故件数データを基に柔道事故の実態について論じ られてきたが、今回のようなアンケートによる実態調査は全国で初めてである。学習者の柔道経験、 指導者の柔道経験、柔道専用の柔道場の設置の有無によって医療機関への受診率および傷害発生率 は変わっている。学習者の柔道体験、専門的な指導者そして専用の柔道場の設置が柔道授業を安全 に実施するためには重要だと示唆された。また受診を伴わないが潜在的危険につながる「ヒヤリハ ット」体験をいかに見逃さず考えていくのかも重要である。そして授業の中でのリスクマネージメ ントを確立するためにも毎回の授業におけるヒヤリハット報告を活用し情報収集を徹底して行い 対処する事が必要である。 (結 論) 柔道授業における傷害発生の現状を把握した。また、傷害の発生に関連する環境として、生徒の 柔道経験の有無、指導者の柔道経験の有無、道場有無が関連していた。 (2019 文字)