次世代衝突ダミー
THOR の 2 次元縮退モデルの構築
*倉野 優太郎1) 疋田 和樹1) 米本 涼1) 檜原 慎弥1) 川村 康1) 前原 一範1) 成川 輝真2)
The Development of Two-dimensional Degenerated Model of Next-generation Crash Test Dummy THOR
Yutaro Kurano Kazuki Hikida Ryo Yonemoto Shinya Hibara Yasushi Kawamura Kazunori Maehara Terumasa Narukawa
To perform simplified study of occupant displacement and chest deflection of THOR dummy under full width frontal crash test,
two-dimensional degenerated model was created. The model was constituted from four rigid bodies, which represents head, upper body, sternum, and lower body. The translational spring was used between upper body and head, and same between upper body and sternum. The rotational joint was used between upper body and lower body. As a result, as for chest deflection and displacements of head, upper body, and lower body, similar results were obtained comparison with actual test results.
KEY WORDS: safety, passive safety, crash test dummy, computer aided engineering, THOR, (C1) 1. は じ め に 前面衝突性能に関わる車両の諸元は,クラッシュストロー ク,乗員拘束荷重,室内の部品配置など,多岐にわたる.諸 元の一部を図1 に示す.これらは,衝突乗員保護性能のみな らず,車両全体の商品力に大きな影響を及ぼすため,車両開 発の初期構想段階で適切な諸元を決定する作業は,魅力ある 商品作りを行う上で重要である.検証手法としては,部品の 詳細形状を作成した上で3 次元的な計算を行うことが可能な MADYMO や詳細 FEM モデルが知られているが,計算は大規 模となる.初期構想段階においては,短期間に数多くの設計 案を検証する必要があるため,より高速に計算を行うことが できる縮退モデルが求められる.
Fig.1 Dimensional Specifications on Frontal Crash Safety
乗員保護における縮退モデルとしては,上西ら(1)によって, Hybrid III ダミーを頭部,胴体,下体部の 3 剛体に縮退したモ デルが提案されているが,胸部減速特性の検討を主目的とし *2018 年 10 月 30 日受理.2018 年 10 月 18 日自動車技術会秋季学術講 演会において発表. 1)(株)本田技術研究所 (321-3393 栃木県芳賀郡芳賀町下高根沢 4630 番地) 2) 埼玉大学 (338-8570 埼玉県さいたま市桜区下大久保 255) たものであり,胸たわみの検証は考慮されていない.一方, 前面衝突用として,Hybrid III よりも人体忠実性を向上させた 次世代衝突ダミーTHOR が開発されており(2),各国衝突アセ スメントにおいても THOR の導入が検討されている (3). Parent ら(4)は,THOR の胸部人体忠実性検証の実施過程で,胸 骨部と上体部の2 つの剛体に縮退した Lobdell モデルを用いて, 胸部インパクタ試験におけるTHOR ダミーの胸骨部と上体部 の結合特性を同定している.しかしながら,同試験の条件は, 先端が円柱状の負荷子をダミー胸骨中央部付近にインパクト させる条件であり,ショルダベルトによって胸骨部が拘束さ れる前面フルラップ衝突とは条件が異なっている.他方,成 川ら(5)は,高齢者の胸部傷害に着目し,高齢者人体FE モデル より,胸骨部,上体部,下体部の3 剛体に縮退したモデルを 構築し,低エネルギ衝突における胸部変形の検証を行った(図 2).この時,頭部と胴体部の相対変位の寄与は少ないと仮定 して頭部と胴体部を1 個の剛体としてモデル化している.衝 突アセスメント等の比較的高エネルギ衝突では,頭部と胴体 部の相対変位が首の変形により発生するため,これら2 つを 分離したモデル化が必要となる.
Fig.2 Human Reducted-order Model in Frontal Crash
本研究では,THOR の前面フルラップ衝突において,胸た
わみも含めた乗員保護性能を検討するために,頭部,上体部,
胸骨部,下体部の4 剛体で構成される 2 次元縮退モデルを構
築する.縮退モデルにおける胸骨部と上体部の結合特性の作 成では, 2 種類の特性で計算を行い,胸たわみ最大値の実験 値との差異が少ない方の結合特性を選定する.また,縮退モ デルの胸骨部質量の設定方法を考察する. THOR のスレッド 実験結果と,縮退モデルの計算結果を比較し,室内移動量の 最大値と胸たわみの最大値の再現性を確認する. 2. モ デ ル 構 築 手 法 2.1. モデル構築方法の選定 衝突速度56km/h,エアバック有り条件で実施したスレッド 実験における,THOR の頭部,上体部,下半身の移動軌跡を 図3 に示す.スレッド実験は,前面フルラップ衝突を,高速 で打ち出される台車上で模擬した実験である.これにより, 40ms までは,頭部,上体部,下体部が並進運動に近い形で前 方移動した後,上体部が下体部を中心に前方回転運動をして いることが分かる.また,頭部は上体部よりも前方に移動し ており,頭部と上体部で相対変位が発生していることが分か る.そこで本研究では,上体部と下体部の間は,成川ら(5)の 人体縮退モデルと同様にヒンジで結合し,頭部と上体部は分 離してバネにより結合する手法で,縮退モデルを構築を行う.
Fig.3 Motion Trajectory of Three Bodies of THOR on Frontal Sled Test
2.2. 縮退モデルの構成 縮退モデルは,頭部,上体部,胸骨部,下体部の4 剛体で 構成した.上体部と頭部,胸骨部の間は並進ばねによって結 合し,上体部と下体部間の結合はヒンジで結合した.下体部 は前後方向のみの自由度とし,ダミーを拘束する外力は,剛 体の水平方向変位に対する荷重の関数で表現した. 剛体の配置と自由度の模式図を図4 に,重心位置と慣性力 の模式図を図5 に,これらの図中で使用しているパラメータ の説明を表1,表 2 に示す.剛体重心位置については,股関節 中心を基準とし,THOR ダミーを車両に搭載した初期姿勢を 再現するよう配置した.また,胸骨部の変位方向については, 初期姿勢にて水平から𝜃𝜃𝑡𝑡0の方向とし,上体部の回転運動と同 じ量だけ変位方向が回転するように構成した.慣性力は常に 水平方向に作用するとし,車両の減速度と各剛体の質量の積 により求めた. 拘束装置からの外力と,外力作用点の位置の模式図を図6 に,図中のパラメータの説明を表3 に示す.各外力は,外力 作用点の水平方向変位に対する関数として定義した.肩拘束 荷重fsについては,THOR の前腕とインストパネルの接触に より肩部に伝達される荷重とし,左右合算の値とした.ラッ プベルト荷重については,左右合算の荷重とし,THOR では ベルトが掛かる腰骨が上半身に追従して前方回転することか ら,下体部ではなく,上体部側に作用させた.下体部拘束荷 重については,左右の膝とインストパネルの接触荷重に加え, シートが腰部下面を拘束する荷重も合算して与えた.外力の 関数を求めるにあたり,スレッド実験では計測が容易ではな い項目が複数有る.そこで,MADYMO の THOR モデル(6)を 使用し,室内移動量と胸たわみが実験と同様となるモデルを 作成して,外力特性の推定を行った.MADYMO ソルバのバ ージョンはR7.6 を使用し,THOR モデルはモデルバージョン 1.0 をベースとし,外表面の形状再現性について独自に調整し たモデルを使用した.
(i) Initial Posirition (ⅱ)Position during collision Fig.4 Schematic of Position of Rigid Bodies and Dgree of Freedom
Table 1 Parameters of Mass, Moment of Inertia, Displacement, and Stiffness of Internal Restraint
Fig.5 Schematic of Center of Gravity and Inertial Force Table 2 Parameters of Position of C.O.G. and Inertial Force
Fig.6 Schematic of External Force and Positon of Load
Table 3 Parameters with respect to External Force
一例として,下体部の拘束荷重を図7 に示す.縦軸の荷重を 実験の最大値で割ることで,実験の最大値が1.0 となるように 正規化してある.左右の膝とインストパネル,および,腰部 とシートについて,それぞれの接触荷重の水平方向成分を MADYMO で出力し,合算したうえで,下体部の前方移動量 に対する関数を作成した.
Fig.7 Restraint Characters of Lower Body
胸たわみは,胸骨部と上体部の距離が縮むことで発生する
相対変位量である. THOR では, 図 8 に示す IR-TRACC
(InfraRed - Telescoping Rod for Assessment of Chest
Compression) を用いて胸たわみが測定される.両端がそれ ぞれ胸骨部と上体部に接続されており,胸たわみを3 次元 で測定する構造である.胸たわみの測定箇所は,図9 に示 すように上下左右の計4 か所ある.実物では 4 か所の計測 で異なる値が得られるが,多くの実験において最大となる のは,ベルト通線に最も近い,上側かつ車両内側の測定箇 所である.そこで本研究では,この位置の測定箇所のみを 縮退モデルの胸たわみとしてモデル化した.また,実物の IR-TRACC は 3 次元の変位量が得られるが,前面フルラッ プ衝突ではダミーの上体部は主に前方の水平方向に運動す ることから,胸たわみも主に水平変位していると仮定し, 縮退モデルでは胸たわみを水平変位としてモデル化した. 次世代衝突ダミー THOR の 2 次元縮退モデルの構築
Fig.8 IR-TRACC
Fig.9 Position of IR-TRACC in Thorax
以降,胸骨部と上体部の間のばね特性を"リブ剛性"と呼ぶ. 本研究では,2 種類のリブ剛性で縮退モデルの計算を行い,そ れぞれのリブ剛性における胸たわみ計算結果と実験結果の比 較を行った上で,縮退モデルで使用するリブ剛性の選定を行 った.2 種類のリブ剛性をそれぞれケース 1,ケース 2 とする. ケース1 では,スレッド実験での胸骨部に働くショルダベ ルト荷重と胸たわみの関係性から,リブ剛性を作成した.図 10 に,ショルダベルトの張力と,張力の水平方向成分の模式 図を示す.張力の水平方向成分は,張力ベクトルの水平方向 への射影である.実験における張力ベクトルの方向は正確な 測定が容易ではないため,前述のMADYMO を用いて,方向 ベクトルの推定を行った.図11 の縦軸に,ショルダベルトア ッパとロアのベルト張力の水平方向成分の合算値を示す.横 軸には,胸たわみを示す.縦軸と横軸の値に対しては,それ ぞれを実験の最大値で割ることで,実験の最大値が1.0 になる ように正規化を行ってある.ケース1 のリブ剛性は,ベルト 張力の水平方向成分と胸たわみの関係を, 簡易的にトレース する形で作成した.
Fig.10 Schematic of Horizontal Element of Shoulder Belt Force
Fig.11 Stiffness Characteristic of Rib
ケース2 では,前述の Parent ら(4)によって,胸部インパク
タ試験からLobdell モデルを用いて同定されたばね特性を,リ
ブ剛性として使用した.THOR ダミーの新旧種類別に異なる
リブ剛性の値が掲載されているが,本研究では一番新しい THOR Metci with SD3 Shoulder でのリブ剛性を用いた.このリ
ブ剛性を図12 に示す.ケース 1 のリブ剛性とケース 2 との比
較を容易にするために,ケース1 で用いた実験の最大値が 1.0
になるように正規化してある.同一の胸たわみ量におけるリ
ブ荷重は,ケース1 のほうが大きい傾向にある.
Fig.12 Stiffness Characteristic of Rib of THOR Metric with SD3 Shoulder
縮退モデルの胸骨部と上体部の間に,粘性要素が必要か否 かの検証を行った.以降,粘性要素を”リブ粘性”と呼ぶ.前 述のParent ら(4)による研究は,静止したTHOR に対して初速 度を持つインパクタを当てる条件である,胸部インパクタ試 験を対象としている.この条件では,胸たわみ速度の最大値 が,インパクタの初速度とほぼ同じになる.そのため,Parent ら(4)によるLobdell モデルでは,胸骨部と上体部の結合におい てリブ粘性の影響を考慮している.一方で,本研究にてモデ ル化対象としている前面フルラップ衝突の条件では,シート ベルトはTHOR に対して相対初速度ゼロの状態から荷重を負 荷するため,Parent ら(4)による胸部インパクタ試験と比べると 胸たわみ速度は遅い.そのため,前面フルラップ衝突条件で は,胸部インパクタ試験条件より,リブ粘性の影響は少ない と考えられる.そこで,スレッド実験でのリブ荷重全体に占 めるリブ粘性荷重の割合を確認した.リブの粘性荷重は,胸 たわみ速度にリブ粘性係数を乗じることにより求めることが できる.胸たわみ速度は,スレッド実験の結果を用いた.リ ブ粘性係数は,Parent ら(4)による研究で同定された値を用いた. 次世代衝突ダミー THOR の 2 次元縮退モデルの構築
このリブの粘性荷重と,ショルダベルトアッパとロアのベル
ト張力の水平方向成分の合算値の比較を図13 に示す.縦軸に
示すリブ荷重と横軸に示す胸たわみは,実験の最大値が1.0
になるように正規化してある.
Fig.13 Rate of Damping Force in Rib Force これによると,胸たわみ最大値付近において,ショルダベル トアッパとロアのベルト張力の水平方向成分の合算値と比べ ると,リブ荷重の粘性成分は10%以下であり,リブ荷重は剛 性成分が支配的であることが分かった.ここで,本縮退モデ ルは,車両開発の初期構想段階で高速に検討を行うことを主 眼としている.本縮退モデルで検討を行った後はMADYMO や詳細FEM モデルを用いてより詳細な検討を行うことから, 縮退モデルは詳細検討に対して多少精度が落ちたとしても, 図1 に示すような基本的な諸元を高速に検討できれば役割を 果たすことができる.リブ粘性を考慮しなくても,初期構想 段階で縮退モデルに必要とされる計算精度は実現できると考 え,縮退モデルの胸骨部と上体部の間にはリブ粘性を入れて いない. 3. 結 果 衝突速度56km/h,エアバック有り条件で実施した,スレッ ド実験の結果と,同条件における縮退モデルでの計算結果を 比較する.図14~16 に,頭部,上体部,下体部の室内移動量 と時間の関係を,図17 に胸たわみと時間の関係を示す.各グ ラフの縦軸は,スレッド実験の室内移動量及び胸たわみの最 大値が1.0 になるように正規化してある.また,表 4 に,室 内移動量と胸たわみの最大値の,スレッド実験と計算結果と の比較を示す
Fig. 14 Time History of Head Displacemrnt
Fig.15 Time History of Upper Body Displacement
Fig.16 Time History of Lower Body Displacement
Fig.17 Time History of Chest Deflection Table 4 Difference of Maximun Displacement and Maximum Chest Deflection between Sled Test and Degenerated Model
ケース1 とケース 2 の室内移動量は同等であり,有意な差は 見られない.いずれの計算ケースでも,室内移動量の最大値 の実験との差異は5%以内であり,概ね実験の結果を再現して いる.胸たわみの最大値は,ケース2 では実験値に対して 2 倍になっているのに対して,ケース1 では 18.3%小さい値と なった. Degenerated
Model (Case1) Model (Case2)Degenerated
Head Displacement
-3.5%
-3.1%
Upper Body Displacement
-0.9%
-0.6%
Lower Body Displacement
-1.3%
-1.4%
Chest Deflection
-18.3%
+200.0%
4. 考 察 ケース1 の計算結果のほうが,ケース 2 の計算結果よりも, 胸たわみの実験との差異が少ない理由について考察する.図 18 に,THOR のリブ一覧及び,ショルダべルトと胸部インパ クタによって荷重が負荷されるエリアを示す.リブA~D は, 左右のリブの先端が,人体の胸骨を模擬した部材で相互につ ながっている.そのため,左右いずれかのリブに荷重が加わ った場合に,もう片方のリブにも荷重が伝わると考える.一 方で,リブE~D は,左右のリブの先端が,人体の腹部の肉を 模擬した部材で相互につながっている.そのため,左右いず れかのリブに荷重が加わっても,もう片側のリブには荷重が 伝わらないと考える.ケース1 では,幅 47mm のショルダベ ルトがリブに荷重を負荷する.ケース2 では,接触エリアφ 127 のインパクタがリブに荷重を負荷する.表 5 に,それぞれ のケースで荷重が伝わるリブの本数を示す.荷重が伝わるリ ブの本数は,ケース1の方がケース2 より多いため,胸部か らの接触反力は,ケース1のほうが大きいと考えられる.そ のため,ケース1 のリブ剛性は,同じ胸たわみ量においてケ ース2 よりも反力が大きいと考えられる.ケース1のリブ剛 性で計算した縮退モデルの計算結果のほうが,ケース2 のリ ブ剛性で計算した結果よりも,実験との胸たわみの差異が少 ないため,ケース1のリブ剛性のほうが,本縮退モデルに適 していると考えられる.尚,THOR において,各リブがどれ だけの反力を発生しているかの詳細解析は,今後の課題であ る.
Fig.18 Loaded Area on Thorax under Belt and Impactor
Table 5 Sum of Number of Loaded Ribs
次に,ケース1 での胸たわみ計算結果の最大値が実験に対 して18.3%小さい理由について考察する.図 19 に,ケース 1 において,縮退モデルの胸骨部質量として設定したTHOR の 胸部エリアを示す.ケース1 では,全てのリブが一体として 変形すると考え,縮退モデルの胸骨部の質量として全てのリ ブを構成する部品の前側半分の質量を設定した.しかし,ス レッド実験でショルダベルトが胸骨を拘束する範囲はベルト 通線部分のみであることから(図20),縮退モデルの胸骨部 に相当する質量は,より少ない値であるという仮説が考えら れる.この仮説を検証するため,ケース3 の計算を行った. ケース3 では,胸骨部の質量は,前方視でショルダベルト荷 重負荷エリアと重なる部分のみ(図21)で算出した.ケース 1,ケース 3 ,および実験結果の,胸たわみと時間の関係を図 22 に示す.ケース 3 における胸たわみ最大値の実験と計算と の差異は,+2.2%であり,ケース 1 より差異が小さくなってい る.この結果より,縮退モデルにおける胸骨部の質量は,ケ ース3 で設定したショルダベルト通線部分周辺のほうが適し ていると考えられる.尚,100ms 以降で胸たわみの振動が発 生しているが,本モデルでは胸たわみの最大値を評価対象と しているため,問題としない.
Fig.19 Weight Estimated Volume of Sternum (Case 1)
Fig.20 Belt Loading Area of THOR
Fig.21 Weight Estimated Volume of Sternum (Case 3) Sum of Number of Loaded Rib Belt Loading Area(Case 1) 11 Impactor Loading Area( Case 2 ) B,C,D B,C,D 6 Loaded Rib
of Right Side Loaded Ribof Left Side A,B,C,D,E,F,G A,B,C,D
Fig.22 Time History of Chest Deflection
5. ま と め 本研究では,次世代衝突ダミーTHOR に対し, 前面フルラッ プ衝突時の室内移動量及び胸たわみの検討を行うことを目的 として,2 次元縮退モデルを作成した.縮退モデルは頭部,上 体部,胸骨部,下体部の4 剛体で構成し,上体部と頭部,胸 骨部の間は並進ばねにより,上体部と下体部の間はヒンジに より結合した.縮退モデルの計算条件及び,室内移動量と胸 たわみの最大値の,実験と計算結果との比較を表6 に示す.
Table 6 Difference of Maximun Displacemen and Maximum Chest Deflection between Sled Test and Degenerated Model
縮退モデルのリブ剛性は,ショルダベルト荷重負荷条件で作 成した方が,胸部インパクタ荷重負荷条件で作成するよりも, 実験に近い胸たわみの計算結果が得られることが確認された. 縮退モデルの胸骨部質量は,ショルダベルト通線付近の質量 を設定したほうが,胸部前半分の質量を設定するよりも,実 験に近い胸たわみの計算結果が得られることが確認された. 縮退モデルのリブ剛性をショルダベルト荷重負荷条件で,胸 骨部質量をショルダベルト通線付近の質量で設定したケース 3 条件において,室内移動量と胸たわみの最大値を計算結果と 実験で比較すると,差異は5%以内であり,概ね実験の結果を 再現していることが確認された.これらの結果から, THOR の前面フルラップ衝突の室内移動量と胸たわみを,2 次元縮退 モデルで再現できることが確認された. 参 考 文 献 (1) 上西ほか : 自動車正面衝突時における乗員力学モデルの 構築,日本機械学会論文集C 編,Vol.71, No.704, p1231-1237 (2005)
(2) HUMANETICS Innovative Solutions : THOR 50th Male (Metric), http://www.humaneticsatd.com (参照 2017.5.30) (3) NHTSA : New Car Assessment Program Request for Comments 2nd , Docket No. NHTSA-2015-0119 (2015)
(4) Parent, D.P. et al. : Thoracic Biofidelity Assessment of the THOR MOD KIT ATD, 23rd ESV Conference, Paper No. 13-0327 (2013)
(5) 成川ほか : 人体 FE モデルに基づく車両前面衝突時の胸 部変形に着目した低次元力学モデルの構築,日本機械学会論 文集C 編,Vol.78, No.795, p3677-3687 (2012)
(6) TASS International : MADYMO Model Manual, VERSION 7.6, p. 117-130 (2015) Degenerated Model (Case1) Degenerated Model (Case2) Degenerated Model (Case3) Create Method of Stiffness Characteristic of Rib Shoulder Belt Loading Impactor Loading Shoulder Belt Loading Estimated Volume of
Sternum Mass Front Halfof Chest Front Halfof Chest Belt PathAround Head Displacement -3.5% -3.1% -4.1% Upper Body Displacement -0.9% -0.6% -2.0% Lower Body Displacement -1.3% -1.4% +1.2% Chest Deflection -18.3% +200.0% +2.2% Model Condition Difference between Sled Test and Degenerated model 次世代衝突ダミー THOR の 2 次元縮退モデルの構築