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社会的インパクト評価に関する研究

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Academic year: 2021

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博士( 国際広報メデイア)八幡耕一

学 位 論 文 題 名

オ ル タ ナ テ イ ブ ・ メ デ イ ア の

社会的インパクト評価に関する研究

一カナダの先住民族テレビを事例とした内容評価分析に基づく      社会空間変容の検証―

学位論文内容の要旨

1. 研究目的

  本 研究の目的は、先住民族に よるメディア実践(先住民族 メディア)を題材に、オル タナティブ・メ デ ィ アの 社会 的イ ンパ ク トを 評価 する理論的・ 方法論的枠組みを提示するこ と、ならびに、新たな学 術領 域である「先住民族メディ ア論」の基盤を形成すること である。

2. 背景および意義

  放 送メディアは、20世紀を通 じて主要な社会的コミュニケ ーションの媒体として定着 したが、情報の 送り 手と受け手が分化した伝統 的なメディア環境では、エスニック・マイノリティなどの社会的弱者は、

他 者 の視 点で 表象 され る こと が多 く、ステレオ タイプがもたらす有形無形の 不利益を被ってきた。ー 方 で 、技 術革 新や 社会 情 勢の 変化 を背 景と す るメ ディ ア環 境 の今 日的 変容 は、 オ ルタナティブなマ ス. コミュニケーションの地平 を拡大しており、例えばカナ ダでは、先住民族によって 運営される放送 局が 既に存在する。

  こ うした代替的たメディア実 践は、社会の変容を促すと主張されてきたが、概してオルタナティブ・メ デ ィ アの 研究 は、 先駆 的 な実 践事 例の 実態 分 析、 ある いは 記 述的 な分 析に 著し く 偏重してきた。特 に 先 住 民 族 メ デ ィ ア の 研 究 は 、 移 民 や一 時的 な越 境労 働 者な ど、 歴史 背 景や 集団 的到 達点 が 異な る他 のエスニック・マイノリテ ィと同列に論じられ、体系化や理論化には程遠い状況にあった。また、社 会 変 容の 意味 やそ の過 程 に関 する 理論的説明や 実証分析も十分ではなく、さ らに、オルタナティブ・

メ デ ィ ア の コ ン テ ン ツ に 関 す る 体 系 的・ 実証 的な 研究 も 、実 質的 に皆 無 であ った とい って よ い。

  以 上を 踏ま えた 本研 究 は、 メデ ィア 研究 に おけ る新 たな 視 座と 手法 を提 供す る 学術的意義、そし て 「 メデ ィア 利用 によ る 社会 デザ イン」の考え を発展させる上で不可欠な、 理論的・方法論的枠組み を提 供する社会的意義の双方を 併せ持つ研究である。

3. 研究内容

  本 研究 では 、第1章 から 第5章に 該当 する 以 下の 作業 を通 じ 、研 究目 的の 達成 を 図るものである。

@ メ デ ィ ア 社 会 学 的 観 点 か ら 、 オ ル タ ナ テ ィ ブ ・ メ デ ィ ア の 意 義 ・ 影 響 等 を 検 討 す る 。

◎ 「 先 住 民 族 メ デ ィ ア 論 」 と い う 、 新 た な 学 術 領 域 を 確 立 す る 意 義 と 必 要 性 を 確 認 す る 。     ―1407ー

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◎ オ ル タ ナ テ ィ ブ ・ メ デ ィ ア が も た ら す 社 会 的 イ ン パ ク ト の 評 価 枠 組 み を 提 示 す る 。

@ カ ナ ダ の 先 住 民 族 テ レ ビ を 事 例 に 、 内 容 分 析 に 基 づ く 実 証 分 析 を 実 施 す る 。

◎ メ デ ィ ア 環 境 の 今 日 的 変 容 の 意 義 や 含 意 を 、 社 会 空 間 概 念 に 基 づ い て 考 察 す る 。 4.研究方法

  本研究は、理論的考察と実証分析から構成される。理論的考察は、メディア論を中心に関連分野 の先行研究を再検討し、オルタナティブ・メディアの社会的インパクト評価に係る理論的側面を整理・

体系化することで行った。なお、本研究の理論的考察を経て提示される理論的・方法論的な枠組み は、メディア政策や社会・文化政策といった公共政策へのフイードバックを念頭に置き、理論と実践の 架橋を強く意識している点でも特徴的である。

  実証分析は、第4章で行うニュース番組の比較内容分析(comparative content analysis)である。そ の目的は、理論的考察から仮説として導かれる、メディアのオルタナティブ性をコンテンツから検証す ることにある。比較内容分析は、それぞれカナダを代表する、先住民族テレビ局(APTN)と商業放送 局(CTV)のニュース番組を対象に行った。

5.研究結果と考察

  第1章では、メディア環境の今日的変容に至る歴史的背景や、メディアと社会変容の関係を再考 し、メディア環境の今日的変容が社会的弱者にとって有益であること、社会空間モデルからその変容 を把握・分析する意義等について明らかにした。

  第2章では、社会的弱者としての先住民族に焦点を当て、メディアと先住民族の関係性を再検討 し、先住民族メディアの社会的機能モデル、エスニック・メディア研究の枠組み等を提示し、先住民族 メディア論の理論的基礎の確立に資する考察を行った。

  第3章では、メディアの政策的利用の現状と、その理論的支柱であるメディア効果研究の系譜を概 観し、十分な説明を欠いてきたコミュニケーションと(社会的弱者の)エンパワメントの相関を明らかに しつつ、社会的インパクト評価の基本的な枠組みを提示した。

  第4章の比較内容分析結果から、APTNニュース番組のフレーミングおよびフオーマット上の特性 が明らかにされた。例えば、全国ニュースながら特定地域・集団を反映する傾向、また、先住民族の 市民的立場からの表象や相互作用的な表象の増加、時間的余裕のある制作スタイルなど、いずれも C rvとは好対照の結果を示し、本研究の範囲内では、APTNコンテンツに顕現する独自(オルタナ ティブ)性が確認されたと結論付けられる。

  第5章では、コンテンツの質的差異に関する追加的な比較内容分析も踏まえ、オルタナティブ・メ ディアの社会的インパクトと、その評価を巡る意義・含意等を総合的な見地から考察した。また、先住 民 族 メ デ ィ ア 論 の 諸 側 面 を 改 め て 整 理 し 、 そ の 課 題 と 展 望 に っ い て 検 討 し た 。 6.結論

  本研究では、オルタナティブ・メディアの社会的インパクトを、新たな社会的コミュニケーションの存 立がもたらす「社会空間の変容」と捉え、さらにそれが内容分析から検証可能であることを結論として 導き、実際に試行的な内容分析も行った。

  本研究の論述過程で考案・提示された諸概念(社会空間モデル、先住民族メディアの社会的機能 モデル、エスニック・メディア研究の枠組み、社会的インパクト評価の基本的枠組み等)は、批判主義 的な研究アプローチ、あるいは記述分析に偏重してきたオルタナティブ・メディアやエスニック・メディ

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アの研究蓄積に対し、その視座と手法の再構築を迫るものであり、一定の学術的成果を示すことが できたと考えられる。

  また、本研究が提示した理論的・方法論的枠組みは、「先住民族メディア論」の基盤形成に資する と同時に、地域振興や人間・社会開発における放送メディアの利用、すなわち「メディア利用による社 会デザイン」の推進に重要な示唆を与えるものである。この点、本研究は、現代社会が直面する諸課 題の解決に、メディア研究の立場から貢献するものであり、社会的意義も併せ持つ研究として、ー定 の成果を提示するに至ったと結論付けられる。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査    助 教 授    伊藤直哉 副 査    教 授    野 坂 政 司 副 査    教 授    吉 田 徹 也

学 位 論 文 題 名

オ ル タ ナ テ イ ブ ・メ デ イ ア の 社 会 的 イ ン パ ク ト 評 価 に 関 する 研 究

―カナダの先住民族テレビを事例とした内容評価分析に基づく      社会空間変容の検証一

く学位論文の内 容〉

    本研究は、先住民族によるメディア実践(先住民族メディア)を題材に、オルタナティブ・

  メディアの社会的インパクト 評価に係る理論的・方法論 的枠組みを提示すること、な らび   に、新たな学 術領域である「先住民族メデ ィア論」の基盤を形成することを目的とした実証   研究である。

    本 研究 は、 理論 的 考察と 実証分析の全5章から成る。 理論的考察では、メディア論 を中   心に関連分野の先行研究が再 検討され、オルタナティブ ・メディアの社会的インパク ト評   価や、先住民族メディアに関 する理論的側面が整理・体 系化されている。また、実証 分析   では、仮説として導かれたメ ディアのオルタナティブ性 をコンテンツの内容分析から 検証   す る た め 、 そ れ ぞ れ カ ナ ダ を 代 表す る、 先 住民 族テ レビ 局(APTN)と 商業 放送 局(CTV)   のニュース番 組の比較考察が行われた。

《研究の 成果》

  本 研 究 で の 考 察 と 分 析 の 結 果 、 以 下 の 具 体 的 研 究 成 果 が 提 出 さ れ て い る 。     第1章 では 、メ デ ィア 環境の今日的変容 に至る歴史的背景や、メデ ィアと社会変容の関   係が検討され 、近年のメディア環境を巡る 構造変容の社会的弱者にと っての有益性、そし   て社会 空間モデルによる把握・分 析の意義等が明らかにされた 。

    第2章 では 、社 会 的弱 者としての先住民 族とメディアの歴史的・現 在的関係性が考察さ   れ、メデイア 環境の変容を踏まえた先住民 族メディアの可能性やその 社会的機能、さらに   エスニ ック・メディア研究での位 置付けに関するモデルが提示され、先住民族メディア論の 理論的基 盤の構築が図られた。

    第3章 では 、メ デ ィア の政策的利用を巡 る課題や、その理論的背景 となるメディア効果

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研 究 が概観さ れ、過去十分な説明を欠い てきたコミュニケーションと 社会的弱者のエンパ ワ メ ントの相 関が論理的に説明され、社 会的インパクト評価の基本的 な枠組みが提示され た 。 な お 、 こ の 枠 組 み は 理 論 と 実 践 の 架 橋 を 強 く 志 向 し た 点 で も 特 徴 的 で あ る 。 第4章 では 、比 較 内容 分析 の結 果 から 、APTNの フレ ー ミン グお よび フオ ー マッ ト上の特 性 が 確認され た。例えば、全国ニュース ながら特定地域・集団を反映 する傾向、また、先 住 民 族の 市民 的立 場・ 相 互作 用的 な表 象、 時 間的 余裕 のある制作ス タイルなど、いずれ もc‑rvとは好 対照の結果を示し、本研究 の範囲に限っては、独自(オ ルタナティブ)性に 関す る仮説が立証された。

  第5章では、コンテンツの質的 差異に関する分析も踏まえ 、オルタナティブ・メディアの 社会 的インパクトと、その評価 を巡る意義・含意等が総合的見地から考察された。また、先 住 民 族 メ デ ィ ア 論 の 諸 側 面 も 改 め て 整 理 さ れ 、 そ の 課 題 と 展 望 が 明 らか とな った 。

《質 疑応 答》

    審査 委員 から 、 以下 のよ うな 指 摘・ 質疑 等が なさ れ、論文執筆者からは明確な 解答が   得 られ 、審 査委 員 の了 承を 得た 。

  1) 様 々な 学問 領域 にお け るエ ンパ ワメ ント 概 念の 多様 性と 学 位論 文内 での取り 扱いに     つ い て 質 問 が な さ れ 、 論 文 内 で の 概 念 特 性 に 関 し て 説 明 が あ っ た 。   2) 論 文 内 で 使 用 あ る い は 提 示 さ れ た諸 概念 ・ モデ ルの 捉え 方や 背 景等 につ いて 質問     がな され 、解 答 があ った 。

  3) 新 たな 情報 メデ ィア 形 態を 踏ま えた 本研 究 の今 後の 展開 と その 方向 性につい て質問     がな され 、解 答 があ った 。

  4) 公 共 圏 概 念 に 関 す る 社 会 学 理 論 上 の 射 程 に 関 し て 質 問 が あ り 、 解 答 が あ っ た 。   5) 評 価理 論に 関し 、メ デ ィア の社 会的 イン パ クト 評価 に応 用 する 妥当 性や有効 性につ     いて 質問 がな さ れ、 解答 があ っ た。

  6) 本 研 究 が も た ら す 学 術 的 ・ 社 会 的意 義の 詳 細に つい て質 問が な され 、解 答が あっ     た。

《論文評価の総評》

    オ ルタナティブ・ メディアの研究は、先駆的 な実践事例の実態分析、ある いは記述的な   分 析 に著 しく 偏重 して き た。 特に 先住 民族 メ ディ アの 研究は、歴史背景や 集団的到達点   が異なる他のエス ニック.マイノリティと同 列に論じられ、体系化や理論化には程遠い状況   に あ った 。ま た、 社会 変 容の 意味 やそ の過 程 に関 する 理論的説明や実証分 析も十分では   なく、さらに、オルタナティブ・メディアのコンテンツに関する体系的・実証的な研究も実質   的 に 皆無であったと いってよい。以上を踏まえ た本研究は、メディア研究に おける新たな   視座と手法を提供 する学術的意義、そして「 メディア利用による社会デザイン」の考えを発   展 さ せ る 上 で 不 可欠 な 、理 論的 ・方 法 論的 枠組 みを 提供 す る社 会的 意義 の双 方 を併 せ   持 つ 研究として高く 評価されるものである。よ って論文執筆者は、審査委員 会の総意によ   り 、 北海道大学博士 (国際広報メディア)の学 位を授与される資格があるも のと認める。

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参照

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