f 専士(水産学)境 学位論文題名
オホー`ソク沿岸におけるホタテガイ漁業の . 漁業管理について
学位論文内容の要旨
こ の論文 では, 近年 著しい 成長を遂げた北海道オホー.ソク沿岸地帯におけるホタテガイ漁業の 発 展が, 戦前, 戦後の 過程に おい て,同 地帯に 蓄積さ れて きたホ タテガイの資源培養型漁業技術 と 漁業の 共同化 を基礎 とした 漁業 管理に よヮて 実現し たこ とに着 目し,同地帯のホタテガイ漁業 に おける 漁業管 理の成 立過程 とその現状を述ベ,現在のオホー`ソク沿岸のホタテガイ漁業にっい て ,二三 の課題 を提起 しよう とし た。
@ 序章 で は , 漁 業管 理は, 資源と それを 利用 する人 間の関 係,並 びに 資源の 利用を めぐる 人 と 人の関 係の両 面から 成り立 っ概 念であ るとし て,資 源培 養型漁 業のホタテガイ漁業の漁業管理 の 内容を 次のよ うに整 理する 。す なわち ,第一 は,種 苗管 理と漁 場造成管理を内容とする資源の 積 極的増 大を図 る増殖 的資源 管理 ,第二 は,漁 業権行 使と 操業時 の調整を図る漁場利用管理,第 三 は,管 理主体 として の共同 企業 体の経 営管理 である 。
@ 第一 章 で は , 戦前 におけ るホタ テガイ 漁業 の発展 過程を 考察し ,近 年のホ タテガ イ漁業 に お ける資 源培養 技術や 漁業の 共同 化が, 戦前に おける 漁協 の漁業 管理のなかで試みられたもので あ ること を明ら かにし ている 。オホ一゛ソク沿岸のホタテガイ漁業は,明治期以来石川県小樽など の 入稼漁 船によ り続け られて きた が,昭 和期に 入り, 地元 漁協で はホタテガイ漁業を専用漁業権 に 組み人 れるこ とによ ヮて組 合の 直接管 理下に おき, 小樽 海産商 による仕込金融支配の排除と昭 和 恐慌期 におけ 経済的 困難に 対処 するた め,組 合員の 共同 意識を 高めホタテ貝柱の共販運動を展 開 した。 この中 で漁業 過程の 共同 化や稚 貝採取 ,放流 など の増殖 事業が行われるようになった。
◎ 第2章 で は , 戦後 に お け る ホタ テ ガ イ 漁 業 の発 展 過 程 を 次の3期に区 分し, 各期の 特徴 と 資 源培養 型漁業 ホタテ ガイ漁 業の 形成過 程にっ いて述 べて いる。
第 一期は ,昭和40年ま での期 間で, 専ら 天然資 源を対 象にし ていた 時期である。第二期は,50 年 ま で の 期間 で ,40年 代末に 開発さ れた養 殖技 術が, 青森県 の陸奥 湾か ら北海 道の噴 火湾, サ
口マ湖 に普及 し, 養殖生 産が全 面的に 展開し た時 期であ る。第 三期は ,51年 以後現在に至る期間 で, 養 殖 生 産 の 発展 に よ っ て 可能 に な っ た 椎貝 の 大 量 供給と4輪 採制に 基づく 漁場利 用方 式に よって ,資源 培養 型ホタ テガイ 漁業が オホ一`ソク海沿岸地帯に展開した時期であり,生産量が飛 躍的に 増大し た。
第 三 期 の 資源 培 養 型 ホ タテ ガ イ漁 業の技 術体系 は, 次の4分野 から成 り立っ 。1)種苗 生産技 術(大 型健苗 の大 量生産 ),2)漁 場造成 技術( 害敵′ (ヒ トデ) 駆除) ,3)種苗放流技術,お よび4)採 捕技術 (4輪採制 による 漁場 利用) などで ある。 これら はオ ホー・ ソク沿岸各地で戦前 から行 われ, かっ 継承さ れてき た技術 を基礎 とす るもの で,資 源培養 型ホ タテガ イ漁業の事業主 体とな る共同 企業 体は, 紋馴漁 協や常 呂漁協 など で,漁 獲規制 の実施 過程 で進め てきた共同経営 の経験 によっ てい る。猿 払漁協 では, 先の栽 培漁 業技術 とこれ ら共同 化の 経験に 学び,技術的に はヒ ト デ 駆除 と椎貝 の大 量放流 ,4輪採制 を採用 し,経 営的に は共 同企業 体方式 を取り 入れ ,資 源培養 型ホタ テガ イ漁業 の企業 化に成 功した 。
@ 第3章 にお い て は , 現在 ホ タ テ ガ イ漁 業 を 営 む 猿 払村, 紋別, 常呂漁 協など の事 例を紹 介 し,各 漁協の 漁業 管理の 特徴を 明らか にして いる 。
まず, 現在 のホタ テガイ 漁業の 漁業 管理において主導的彳殳剖を果たした猿払漁協では,事業開 始当初 から, 共同 企業体 を組織 して, 構成員 全員 の共同 責任の 下に, 統一 的漁場 の利用・管理と 漁獲物 の加工 販売 に当た り,構 成員に は,漁 脇や 共同企 業体の 事業に 対す る貢献 度に応じた点教 制に基 づき利 益配 当を実 施して いる。
紋別漁 協は ,ホタ イガイ 漁業の 共同 化にお いては 先駆的 経験を もち ,昭f041年,資源保護と生 産性の 向上を 図る 目的で ,動力 船の導 入と同 時に46隻の漁 船を10隻に減 じ,着 業者全目を各船毎 の 共 同 経 営 に 参 加 さ せ , 段 階 的 に 統 合 し て 単 一 の 共 同 企 業 体 を 組 織 し た 。 常呂漁 協は ,サロ マ湖内 に漁場 をも ち,戦 前より 種苗生 産の実 績を もち, 紋馴漁協と同様に段 階的に 共同化 を進 めてき た。単 一の共 同企業体設立彳裘は構成員に湖内における椎貝生産を義務付 けてい る。
この他 の事 例とし て,宗 谷漁協 の事 例があ るが, 漁業管 理には 直接 漁協が 当たり,漁船毎に共 同経営 を組織 して 漁獲ノ ルマを 与え, 構成員 には 漁業従 事と漁 獲ノル マの 達成を 義務付けている 点に特 徴があ る。 また, 関係す る漁協 が単一 の管 理機構 (管理 委員会 )を っくり 漁業管理に当た る例と して, 根室 湾5単 協の 共有漁 業権に 基づく 共同管 理の 事例がある。従来この海域の操業は,
5単 協 の 共 同管理 の下に 許容量 の範 囲内で 組合別 に実施 してき た。 しかし 多数の 漁船が 操業 した 結果艦 獲状態 に陥 り,全 面禁漁 を余儀 なくさ れた 。新た な共同 管理に おい ては, 管理委員会が事
業全般 を統括し,大きな 成果をあげている。
@終 章 にお いて は ,現 在のオホ一・ソク 沿岸地帯における資 源培養型ホタイガ イ漁業の漁業管 理にっ いて検討を加え, 今後の課題を提起し た。
現在 の ホタ テガ イ 漁業 における共同企業 体を主体とする統一 的な漁業管理は, 資源の積極的増 大 と経 営 の安 定化 , さら には漁業所得の大 幅な向上を実現した という点で,資源 管理型漁業の成 功例と して評価すること ができよう。
しか し ,共 同企 業 体へ の参加資格を特定 の組合員に限定し, 新規の加入を抑制 していることに っいて ,組合加入の自由 と漁業権の平等行使 を保障する現行法 制度に矛盾するという指摘がある。
だ が, 現 在の ホタ テ ガイ 漁業においては, ヒトデ駆除,椎貝の 大量放流など,多 額の投資と労働 投 下に よ って ,人 為 的に 再生産される資源 を対象にしているの であって,この点 で,資源の再生 産 に 直 接 た ず さ わ る 者 の 資 源 に 対 す る 帰 属 関 係 を 法 的 に も 見 直 す 必 要 が あ る 。 また 上述のことに関連して,構成員の事業参カ[1と利益配当にっいて,加入制限を言殳けて,高額 の 配当 金 を受 ける こ とは ,構成員が,「地 代に寄生する特権階 級」とされるので はないか,とす る 懸念 が 表明 され て いる 。組合内部の所得 の均衡を図る上で, 先の加入制限問題 ともに考慮すべ き問題 である。
この 他 には 漁場 の 環境 収容カの問題があ る。近年生産の拡大 に応して,ホタテ ガイの小型軽量 化と天 然貝の異常発生が 恒常的にみられるよ うになり,漁場の 利用サイクルに混乱が生じている。
こ れは , 環境 収容 量 を上 回る密植の影響と もみられ,従来の増 産志向の生産体制 の見直しが求め られよ う。
さら に ホタ テガ イ の貝 毒問題があるが, 出荷規制により水揚 が一時的に集中す る結果,産地の 価 格形 成 や計 画的 出 荷が 著しく阻害されて いる。食品としての 安全性にっいては いうまでもない が , 貝 毒 問 題 に 対 す る 対 応 は , 今 後 の ホ タ テ ガ イ 漁 業 に と1て 最 も 重 要 な 課 題 で あ る 。
学位論文審査 の要旨 主査
副査 副査
教授 教授 助教授
鈴 木 中 尾 増 田
旭 繁 洋
この 論文は ,近年 ,北 海道オ ホーツ ク沿岸 地帯 におい て飛躍 的成長 を遂げ たホ タテガイ漁業に おけ る漁業 管理の 成立過 程と 現状を 考察し ,現在 の資源 培養 型ホタ テガイ 漁業の 特徴と今後のホ タ テ ガイ 漁 業の漁 業管理 の課題 にっ いて論 じてい る。本 論文は5章 からな り, 別に参 考論文14編 が添 えられ ている 。
論 文 で は , @は じ め に 漁 業 管理の 意義 にっい て従来 の諸説 を検 討し, ここで とりあ げた資 源 培養 型漁業 の漁業 管理は ,放 流用の 種苗生 産や漁 場造成 を内 容とす る増殖 的資源 管理と漁場の適 正利 用を図 るため の漁場 管理 ,及び 漁場を 利用す る経営 主体 の経営 管理の 三分野 から成り立つ概 念で あるこ と,漁 業管理 の目 的は, 資源の 維持保 全,及 び漁 場の利 用調整 に止ど まらず,漁業者 の所 得の向 上,な いしは 漁業 経営の 安定をも実現するものでなければならないことを述べている。
@ 第1章 では, 明冶期 以降の オホ― ・ソ ク沿岸 におけ るホタ テガ イ漁業 の発展 過程を 考察し , 現 在 同地 帯 のホタ テガイ 漁業で 行わ れてい る種苗 放流と 外敵駆 除及 び輸採 制は, 第2次大戦 前に 試み られて いた増 養殖技 術を 継承し たもの であり ,漁場 の利 用と経 営の主 体とし ての共同企業体 は, 昭和恐 慌以後 に進め られ た漁協 への漁 業権の 集中, 海産 商の仕 込金融 支配の 排除を目的にし た 漁 協の 共 販 運 動 を契 機 に 組 織さ れた共 同操 業が基 礎にな ってい ること を明 らかに してい る。
◎ 第2章 で は, 戦 後 の ホ タテ ガ イ 漁 業 の 発展 過 程 を3期に 分 け , 資 源培 養 型ホ タテ ガイ漁 業 の 形 成過 程 を明ら かにし ている 。す なわち ,第1期は ,昭和40年ま での期 間で, 専ら天 然資源 に 依 存 した 時 期。第2期 は,50年 までの 期間 で,こ の間に 開発さ れた 養殖技 術が, 全国的 に普及 し て 養 殖生 産 が全面 的に展 開し, 第3期とな る51年 以降, 養殖生 産の 発展に より可 能にな った椎 貝 の 大 量供 給 と4輪 採制 の導入 によっ て資源 培養 型ホタ テガイ 漁業が 軌道に 乗り ,飛躍 的生産 拡大 を遂 げたこ とが述 べられ てい る。
@ 第3章 は ,現 在 ホ タ テ ガイ 漁 業 を 営 む 猿払 村 , 紋 別,常 呂漁 協など の事例 を紹介 し,漁 業 管理 の主体 になる 共同企 業体 の組織 ,運営 にっい て検討 し, 共同企 業体の 特徴と 事業の成果につ いて の評価 をあた えてい る。 各地区 の共同企業体は,いずれも法人格をもたない任意法人であり,
構成 員全員 の平等 参加の 下に 運営さ れていることに特徴があること,これは,ホタテガイ漁業が,
制度的 には, 漁協の 管理 漁業権 (共同 漁業権 )に属 し, 漁業権 行使者 は,一定の資格要件を充た す組合 目に限 られ, かっ 漁業権 の平等 行使が 制度的 に保 障され ている ことによるもので,これら 企業体 の構成 員は, 等し く事業 資金, あるい は椎貝 の拠 出,労 力提供 なとの義務を負うが,同時 に,企 業体の 事業運 営に 参画( 事業計 画の決 定,役員選挙など)し,共同事業による和J益の配当 を受け る権利 をもっ こと などが 述べら れてい る。
企業体 の事業 にっ いては ,外敵 駆除, 稚貝 放流, 漁獲な どの海 上作業を主とするが,漁穫物の 加工, 製品の 販売を 漁協 が担当 するこ とによ ヮて, 資源 ,漁場 運営, 販売に至る管理を一貫した 共同管 理が可 能にな った こと, その結 果資源 と漁場 の有 効利用 が図ら れ,漁業所得の大幅な増加 が実現 したこ とを指 摘し て,オホ一・ソク沿岸のホタテガイ漁業の漁業管理を,資源培養型漁業の 成功事 例とし て評価 して いる。
◎最後 に,現 在の オホ一 `ソク 沿岸地 帯の ホタテ ガイ漁 業の漁 業管理に検討を加え,今後の課 題を提 起して いる。 まず ,共同 企業体 の構成 員の資 格が 特定組 合員に 限定されていることが,組 合加入 の自由 と漁業 権の 平等行 使を保 障する 現行法 制度 に矛盾 すると いう問題にっいて,現在の ホタテ ガイ漁 業は, 外敵 駆除, 椎貝の 大量放 流など 多額 の投資 と労働 投下によって人為的に再生 産され る資源 を対象 にし ており ,この 点で, 資源の 保存 と再生 産に直 接たずさわる構成員の資源 に対す る帰属 関係を 法的 に明確 にする こと, また, 構成 員の事 業参加 と高額配当にっいて,構成 員以外 の組合 員との 就業 機会と 所得の 均衡を 図るた めの 調整が 必要で あること,資源管理の面で は,環 境収容 カを上 回る 密殖化 傾向の 防止対 策や貝 毒に 対する 食品と しての安全対策を講ずるこ となど を重要 ,課題 とし てあげ ている 。
以上, 本論文 は, 近年北 海道の 沿岸漁 業に おいて 最も重 要な地 位をしめるホタテガイ漁業にお ける漁 業管理 の特質 を解 明しよ うとし たもの だが, 同漁 業に内 在する 検討課題を提起するととも に,現 在我が 国の漁 業政 策にお いて重 要課題 とされ てい る資源 管理型 漁業問題に対して貴重な知 児を提 供した ことが みと められ る。
よヮて 審査員 一同 は,先 の学力 認定試 験の 結果と ともに ,申請 者が博士(水産学)の学位を受 ける資 格を有 するも のと 認定し た。