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博 士 ( 歯 学 ) 朱 秀 原 学位論文題名 Analysis of scar tissue distribution on rat palates -A laser Doppler flowmetric study-

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 朱    秀 原

     学位論文題名

Analysis of scar tissue distribution on rat palates     ‑A laser Doppler flowmetric study‑

(レーザードップラー血流計によるラットロ蓋部瘢痕組織の解析)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  【緒言】

  口蓋裂患者に対して、良好な鼻咽腔閉鎖機能の獲得の ためpush‑back法による口蓋形成手術 が広く行われているが、この方法では口蓋部創面に骨が露出し、その創傷治癒の過程で瘢痕組織 が形成されるため、その後の上顎骨の成長発育に抑制的な影響を与えていると考えられている。

このような瘢痕組織の存在は、矯正治療における上顎歯列弓の拡大を困難なものとし、さらには 治療後の後戻りの要因にもなると考えられている。したがって、矯正治療における治療方針の決 定や予後の推定において、口蓋裂患者の口蓋部に存在する術後瘢痕組織の分布を把握することは 非常に重要である。しかしながら、これらの瘢痕組織の分布は個々の患者で多様であり、客観的 にその分布を把握することは困難であった。

  一方、瘢痕組織では正常な結合組織に比べて血管分布が少ないことが知られている。そこで、

当講座では、レーザードップラー血流計を用いて口蓋粘膜の血流を計測することにより、口蓋裂 患者の術後瘢痕組織の分布を解析する方法を考案した。しかしながら、このヒ卜による研究では、

標 本 作 製 が 不 可 能な こと から 、組 織性 状と 血流 計測 値と の対 応に は不 明 な点 もあ った 。   そこで本研究では、ラット口蓋部に実験的に瘢痕組織を形成した後、レーザードップラー血流 計を用いて総頚動脈を圧迫した時の口蓋粘膜血流量を計測し、組織学的観察を加えて本法の有効 性にっいて検討した。

  【材料と方法】

  生 後20日齢 、雄 のWistar系ラット19匹を用い、実験群と対照群の2つのグループに分けて 実験を行った。実験群では瘢痕組織の形成のため、ネンブタール腹腔内麻酔(10mglkg)を施した 後、両側部の第1臼歯前縁から第2臼歯後縁 までの口蓋粘膜骨膜を幅、約Immで臼歯に沿って切 除した。手術の際には大口蓋神経血管束に損傷を与えないように注意し、術後には固形飼料と水 を自由に与えて飼育した。

  術後8週目の 実験群9匹ならびに同齢の対 照群10匹にっいて、口蓋外側部と口蓋内側部、計 4っの領域に各6カ所の計測点を設け、安静 時および両側総頚動脈を一定の圧カで圧迫して5秒 間血流を低下させた際の口蓋粘膜の血流変化をレーザードップラー血流計(Perimed社製、Peri

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Flux PF3およびPF302ニードルプ口ーブ、波長632. 8nm、出力2rriWのHe−Neレーザー光)を用い て計測した。計測の際にはネンブタール腹腔内麻酔(50mg/kg)を施した後、両側の総頚動脈を露 出させて実験台に頭部を固定し、ニードルプローブと粘膜との距離および角度を一定に保っよう にした。

  血流計測の終了後、10%中性ホルマリンで灌流固定を行い、頭蓋骨を切り出して同じ固定液で 1週間浸涜固定した。その後、50%ギ酸と20%クエン酸の混合液で3週 間脱灰、上昇系列のエ タノ ール で脱 水し てパ ラ フイン包埋し、 厚さ7Umの前頭断切片標本を 作製してelastica Van Gieson染色を施して光学顕微鏡で観察を 行った。また一部のラットは10%中性ホルマリンで灌 流固定を行った後、10%gelatinを加えた墨汁を注入し、冷凍庫で5分聞冷却させてgelatinを 硬化させ、同じ固定液で3日間浸潰固定した。その後、口蓋粘膜を切り出して、30%過酸化水素 水と10%ホルマリンの混合液にっけて漂 白し、上昇系列のエタノールで脱水して、ベンゼンを 通した後、サリチル酸メチルと安息香酸ベンジルの5:1、3:1、2:1液に順次っけて透明標本を作 製し、実体顕微鏡で観察を行った。

  血流計測データの解析には、計測開始から総頚動脈圧迫時までを安静時、総頚動脈圧迫時から 解放時までを圧迫時として、それぞれの区間における平均値を安静時の血流量と圧迫時の血流量 とした。実験群ならびに対照群の各計測点において安静時の血流量、圧迫時の血流量、および安 静時に対する圧迫時の血流量の変動比率を算出した後、それぞれのパラメーターについて実験群 および対照群の口蓋内側部と口蓋外側部の4つの領域間における有意差の検定をstudent.t.test により行った。

  【結果と考察】

  切片標本による観察の結果、対照群では、口蓋粘膜は重層扁平上皮に覆われ、その直下では水 平方向に走行する膠原線維が、深部では縦方向に走行する膠原線維が観察され、弾性線維は結合 組織全般にわたって分布していた。また、口蓋粘膜外側部では径の小さい血管が多数観察された。

これに対して実験群では、太い膠原線維からなる緻密な瘢痕組織が観察され、同領域における血 管は対照群に比べて径が小さく、数も減少していた。

  透明標本による観察の結果、対照群では大口蓋動脈から分枝した枝が臼歯に沿って密な血管網 を構成していた。実験群では粘膜骨膜切除を行っていない内側部では対照群と同様であったが、

粘 膜 骨 膜 切 除 を 行 っ た 外 側 部 で は 血 管 網 の 密 度 が 著 し く 減 少 し て い た 。   血流量の計測データを分析した結果、安静時の血流量および圧迫時の血流量にっいては、対照 群ならびに実験群における口蓋内側部と口蓋外側部の間で有意な差が認められた。このことは正 常組織と血管分布が少ない瘢痕組織との間のみならず、正常組織間でも部位による血流量の差が 存在することを意味していると思われる。また対照群と実験群の同一領域間でも有意な差が認め られた。このことは正常組織であっても隣接した部位で粘膜骨膜剥離が行われていることにより 血流量が影響されたものと思われる。一方、血流量の変動比率を比較すると、対照群の口蓋外側 部と実験群の口蓋外側部(瘢痕組織形成部)では有意差が認められたものの、対照群の2領域間 および対照群の口蓋内側部と実験群の口蓋内側部(正常組織部)では有意差が認められなかった。

すなわち、正常組織における血流量の変動比率|まどの領域でもほば一定の値を示したが、瘢痕組

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織ではそれよりも高い値を示すことが明かとなった。このことから、正常組織と瘢痕組織との識 別 に は 血 流 量 で は な く 、 血 流 量 の 変 動 比 率 を 用 い る べ き で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。

【結論】

1.粘 膜骨膜 を切除した領域における瘢痕組織の形成と血管分布密度の減少が確認された。

2.血流の低下した状態にある瘢痕組織では、総頸動脈を圧迫して血流量を減少させた場合、

  そ の 血 流 量 の 変 化 は 正 常 組 織 よ り も 少 な く あ ら わ れ る こ と が 示 さ れ た 。 3.レーザードップラー血流計を用いて安静時と圧迫時における血流量の変動比率を算出する   ことにより、口蓋部における瘢痕組織の分布を非観血的な方法で検索することが可能であ   ることが実験的に確認された。

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学 位 論 文 審 査 の要 旨

     学位論文題名

Analysis of scar tissue distribution on rat palates     ‑A laser Doppler flowmetric study‑

( レ ー ザ ー ド ッ プ ラ ー 血 流 計 に よ る ラ ッ ト ロ 蓋 部 瘢 痕 組 織 の 解 析 )

審 査 は 主 査 、 副 査 が それ ぞ れ 申請 者 と 個 別的 に 会 して 口 頭 でな さ れ 、初 め に 本論 文 の 要 旨 の 説 明 を 求 め 、 申 請 者 か ら 以 下 の よ う な 内 容 に っ い て の 論 述 が な さ れた 。

  口 蓋 裂 患 者 の 口 蓋 形 成 手 術に お け る 瘢痕 組 織 の存 在 は 、矯 正 治 療に お け る上 顎 歯 列 弓 の 拡 大 を 困 難 な も の と し 、 さら にjj治療 後 の 後戻 り の 要因 に も なる と 考 えら れ て い る 。 し た が っ て 、 矯 正 治 療 に おけ る 治 療 方針 の 決 定や 予 後 の推 定 に おい て 、 術後 瘢 痕 組織の分布を把握することは非常に重要である。

  一方、当講座では、レーザードップラー血流計を用いて口蓋粘膜の血流を計測することによ り、口蓋裂患者の術後瘢痕組織の分布を解析する方法を考案したが、このヒトによる研究では、

標 本 作 製が 不 可 能な こ と から 、 組 織性 状 と 血流 計 測 値と の対応に は不明 な点もあ った。

  そこで本研究では、ラット口蓋部に実験的に瘢痕組織を形成した後、レーザードップラー血 流計を用いて総頸動脈を圧迫した時の口蓋粘膜血流量を計測し、組織学的観察を加えて本法の 有効性について検討した。

【 材 料 お よ び 方 法1

  生 後20日 齢 、 雄 のWistar系 ラ ッ ト19匹 を 用 い 、 実 験 群 と 対 照 群 の2つ の グ ル ー プ に 分 け て 実 験 を 行 った 。 実 験 群で は 瘢 痕組 織 の 形成 の た め、 ネ ン ブタ ー ル 腹腔 内 麻 酔 を 施 し た 後 、 両 側 部 の 第1臼 歯 前 縁 か ら 第2臼 歯 後 縁 ま で の 口 蓋 粘 膜 骨 膜を 幅 、 約 Immで 臼 歯 に 沿 っ て 切 除 し た 。 術 後 に は 固 形 飼 料 と 水 を 自 由 に 与 え て 飼 育 し た 。   術 後8週 目 の 実 験 群9匹 な ら び に 同 齢 の 対 照 群10匹 に っ い て 、 口 蓋 外 側 部 と 口 蓋内 側 部 、 計4つ の 領 域 に 各6カ 所 の 計 測 点 を 設 け 、 安 静 時 お よ び 両 側 総 頸 動 脈を 一 定 の 圧 カ で 圧 迫 し て5秒 間 血 流 を 低 下 さ せ た 際 の 口 蓋 粘膜 の 血 流変 化 を レー ザ ー ドッ プ ラ ー 血 流 計 (Peri Flux PF3お よ びPF302ニ ー ド ル プロ ー ブ 、波 長632. 8nm、 出 力2mWの HeーNeレ ー ザ ー 光 ) を 用 い て 計 測 し た 。

  血 流 計 測 の 終 了 後、10% 中性 ホ ル マリ ン で 灌流 固 定 を行 い 、 頭蓋 骨 を 切り 出 し て 同 じ 固 定 液 で1週 間 浸 漬 固 定 し た 。 そ の 後 、 通 法 に 従 っ て パ ラ フ イ ン 包 埋 し 、 厚 さ7u

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郎 光

順 重

田 田

吉 脇

授 授

教 教

査 査

主 副

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mの 前 頭 断 切 片 標 本 を 作 製 し てelastica Van Gieson染 色 を 施 し て 光 学 顕 微 鏡 で 観 察 を 行 っ た ー ま た 一 部 の ラ ッ トは 灌流 固定 を行 った 後、10%gelat,inを加 えた 墨汁 を 注 入 し 、 同 じ 固 定 液 で3日 聞 浸 漬 固 定 し た 。 そ の 後 、 口 蓋 粘 膜 を 切 り 出 し て 、 透 明 標 本 を 作 製 し 、 実 体 顕 微 鏡 で 観 察 を 行 っ た 。

  血 流 計 測 デ ー タ の 解 析 に は 、 計 測 開 始 か ら 総 頸 動 脈 圧迫 時ま でを 安静 時、 総頚 動 脈 圧 迫 時 か ら 解 放 時 ま で を 圧 迫 時 と し て 、 そ れ ぞ れ の 区 間に おけ る平 均値 を安 静時 と 圧 迫 時 の 血 流 量 と し た 。 実 験 群 な ら び に 対 照 群 の 各 計 測 点に おい て安 静時 の血 流量 、 圧 迫 時 の 血 流 量 、 お よ び 安 静 時 に 対 す る 圧 迫 時 の 血 流 量 の変 動比 率を 算出 した 後、 そ れ ぞ れ の パ ラ メ ー タ ー に っ い て 実 験 群 お よ び 対 照 群 の 口 蓋 内 側 部 と 口 蓋 外 側 部 の4つ の 領 域 間 に お け る 有 意 差 の 検 定 を studentt‑testに よ り 行 っ た 。

  【結果と考察】

  切片標本による観察の結果、 対照群では、口蓋粘膜は重層扁平上皮に覆われ、その直下では 水平方向に走行する膠原線維が 、深部では縦方向に走行する膠原線維が観察され、弾性線維は 結合組織全般にわたって分布し ていた。また、口蓋粘膜外側部では径の小さい血管が多数観察 された。これに対して実験群で は、太い膠原線維からなる緻密な瘢痕組織が観察され、同領域 における血管iま対照群に比べて径が小さく、数も減少して いた。

  透明標本による観察の結果、 対照群では大口蓋動脈から分枝した枝が臼歯に沿って密な血管 網を構成していた。実験群では 粘膜骨膜切除を行っていない内側部では対照群と同様であった が 、 粘 膜 骨 膜 切 除 を 行 っ た 外 側 部 で は 血 管 網 の 密 度 が 著 し く 減 少 し て い た 。   血 流 量 の 計 測 デ ー タ を 分 析 し た 結 果 、 安 静 時 お よ び 圧 迫 時 の 血 流 量に っい ては 、対 照 群 な ら び に 実 験 群 に お け る 口 蓋 内 側 部 と 口 蓋 外 側 部 の 間 で 有 意 な 差が 認め られ た。

こ の こ と は 正 常 組 織 と 血 管 分 布 が 少 な い 瘢 痕 組 織 と の 間 の み な ら ず 、正 常組 織間 でも 部 位 に よ る 血 流 量 の 差 が 存 在 す る こ と を 意 味 し て い る と 思 わ れ る 。 また 対照 群と 実験 群 の 同 一 領 域 問 で も 有 意 な 差 が 認 め ら れ た 。 こ の こ と は 正 常 組 織 で あっ ても 隣接 した 部 位 で 粘 膜 骨 膜 剥 離 が 行 わ れ て い る こ と に よ り 血 流 量 が 影 響 さ れ た もの と思 われ る。

一 方 、 血 流 量 の変 動比 率を 比較 する と、 対照 群 の口 蓋外 側部 と実 験群 の口 蓋外 側部 (瘢 痕 組 織 形 成 部 ) で は 有 意 差 が 認 め ら れ た も の の 、 対 照 群 の2領 域 間 お よ び 対 照 群 の 口 蓋 内 側 部 と 実 験 群 の 口 蓋 内 側 部 ( 正 常 組 織 部 ) で は 有 意 差 が 認 め ら れな かっ た。 すな わ ち 、 正 常 組 織 に お け る 血 流 量 の 変 動 比 率 は ど の 領 域 で も ほ ぼ 一 定 の値 を示 した が、

瘢 痕 組 織 で は そ れ よ り も 高 い 値 を 示 す こ と が 明 か と な っ た 。 こ の こ とか ら、 正常 組織 と 瘢 痕 組 織 と の 識 別 に は 血 流 量 で は な く 、 血 流 量 の 変 動 比 率 を 用 い るべ きで ある こと が示唆された。

  本 研 究 は 矯 正 治 療 上 重 要 と な る 口 蓋 裂 患 者 に お け る 瘢 痕組 織の 存在 を、 客 観的 に正 確 に 把 握 す る こ と を 目 的 と し て 、 レ ー ザ ー ド ッ プ ラ ー 血 流計 によ りこ の目 的 を達 成す る た め に 動 物 実 験 を 行 い 、 基 礎 的 な 検 討 を 加 え た も の で ある 。そ の結 果、 総 頸動 脈を 圧 迫 し た 場 合 の 口 蓋 に お け る 血 流 の 変 動 比 率 を 用 い る 事 が最 適な 指標 であ る 事を 見出 し て い る 。 実 際 の 臨 床 に お い て は 大 口 蓋 動 脈 を 圧 迫 す る 事に より 、簡 便に 検 査す るこ と が 可 能 な 手 法 で あ り 、 今 後 の 矯 正 臨 床 の 発 展 に 寄 与 す ると ころ の大 きい 結 果を 提示 し た も の と 、 高 く 評 価 で き る も の で あ る 。 加 え て 、 試 問 の内 容か ら、 申請 者 は臨 床的 な らび に基 礎的 な広 い 学識 を有 して いる と認 めら れた 。従 って 、申 請者 は博 士 (歯 学)

の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 を 有 す る も の と 認 め ら れ た 。

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参照

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