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Academic year: 2021

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     博士(農学)犬飼    剛      学位論文題名

GENETICAL STUDIES ON BLAST RESISTANCE     IN TROPICAL RICE CULTIVARS

     熱帯イネ品種におけるいもち病抵抗性に関する遺伝学的研究      学位論文内容の要旨

  Pyr icular iagr iseaによって引き起こされるイネいもち病は、世界のほとんど の稲作地帯で発生し、特に熱帯地域においてその被害は著しい。いもち病防除の最 も効果的な方法のーつに抵抗性品種の育成がある。この方法は農家のコスト負担が 少なく、比較的簡単に農家に普及できるため、発展途上国の多い熱帯地域において は非常に有効である。しかし、抵抗性品種を育成するうえで必要な抵抗性遺伝子の 同定、あるいはいもち病菌の病原性レースの同定などについては、日本では体系的 な研究が多いのに対し、熱帯地域においては未だ十分とは言えない。この理由とし て、熱帯地域においてはいもち病菌とその宿主であるイネの遺伝変異が大きいこ と、抵抗性の1品種中に含まれる抵抗性遺伝子の数が多いため個々の遺伝子に対す る分析がほとんどなされていないことなどがあげられる。このため、病原性レース を同定するために必要な判別品種も十分でない。

  本研究は、国際稲研究所で育成されたいもち病抵抗性に関する22種類の準同質 遺伝子系統(NILs)を用いて、熱帯地域の抵抗性品種のもつ抵抗性遺伝子の同 定と、熱帯地域に適した判別品種の確立を目的とした。また、準同質遺伝子系統の 効率的な育成法について考察するとともに、分子マーカーによる遺伝子のマッピン グも行った。

  ま ず 、 こ れ らNILs間 の関 係を 整理す ると とも にNILs中の 抵抗 性遺 伝子 と 既知の遺伝子との異同を明らかにするため、既知の遺伝子を1つずっもつ清沢の判 別 品 種12品 種 とNILs22系 統 と の 交 配を 行 い 、 こ れ ら 雑 種 のF2お よびF3世

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代を 用いて抵抗 性遺伝子間 の対立性を 検証した。 この結果、NILsの多くは同一 遺 伝 子 を 有 す る こ と が 明 ら かと な ,り 、NILs中に 同 定さ れ た遺 伝 子はPi‑l   (t) ,Pj ‑2(t) ,Pi ‑3(t) お よ びPi‑4゜ (t) の4種 の 遺 伝 子 の みで あった。既 知の遺伝子 との対応は 次の通りで ある。

  Pj ‑1(t) は 染 色 体11上 のPi‑た と6.1% の 組 換 価 で 連 鎖 し 、 既 知 の い ずれ の遺伝子と も異なって いた。

  Pf ‑2(t)は 染色体6上のP´‑zと対立関 係にあった 。

  Pi‑3(t) はPi‑iと7.0% の組 換 価で 連 鎖し 、 既知 の い ずれ の 遺伝 子と・

も異 なった。

  Pi‑4゜ ( t) は 染 色 体 12上 の Piー toと 同 一 の 遺 伝 子 で あ っ た 。

  ま た NILsの 1つ で あ る C105TTP― 4L23は Pi‑taと さ ら に 既 知 の い ず れ と も 異 な る 1遺 伝 子 を 有 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。   以上 の結果をも とに、22種のNILsか ら第一次判 別品種とし て抵抗性遺 伝子 型が互いに異なる5系統を選んだ。判別品種の遺伝子構成は以下の通りである。

  Cl01LAC(Pi‑l(t))

  C101A51(Piー2(t))

  C104PKT(Pi‑3(t))

  ClOIPKT(Pi‑ta)

  C105TTP―4L23(Piーto,Pi‑ワ)

  次に 、上述の第 一次判別品 種の病原性 レース判別能カを評価するため、NIL s、清沢の判別品種およぴ国際判別品種を用いてフイリピン菌系46菌系の病原性 レ ー スの 判 別を 行 い、 そ れら の能カを比 較した。NILsを 用いると46菌 系は7 種の病原性レースに判別された。国際判別品種を用k`ると、NILsで判別された 7レースはさらに10レースヘ細分できた。一方、清沢の判別品種ではフイリピン 菌系に対して中間的な反応を示す系統があったため、レースの判別は困難であっ     ー526−

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た 。3種 の判別品種 の比較では 、国際判別 品種の判別 能カが一番 高く、NILsを 判別品種として用いるにはさらに種類を増す必要があると考えられた。清沢の判別 品 種 や 国 際 判 別 品 種 は 今 後 のNiLs育 成 の た め のDonorと して 有 効と 考 えら れる。

  育 成 さ れ た22種 のNILs中 の 遺伝 子 はそ の 多く が 重複 し てい た 一方 で 、Do nor中のいく つかの遺伝子は戻し交雑の過程で欠落していることが判った。この こ と は、Don6rが複 数 の遺 伝 子を も つ場 合 、 従来 の 戻し 交 雑法 のみ によるNI Lsの育 成 が 必ず し も十 分 では な いことを示 していた。 より効率的 にNILsを育 成 するには 、戻し交雑 を始める前 にDonorの抵 抗性に関し ての遺伝子 分析が必 要となる。分離集団をそのまま固定させる組換え近交系や倍化半数体などは遺伝子 分析に複数の菌系の接種が必要ないもち病抵抗性の研究において有用な材料であ る。同一分離集団に複数の菌系を接種することで、その品種に含まれるすべての遺 伝子を検出することが理論的には可能であり、それぞれの遺伝子を1つずっもつ系 統 を 選 抜 、Donorと し て 使 う こ と で 遺 伝 子 の 重 複 、 欠 落な し にNILsを 育成 す ることが可 能となる。 また、RFLP分析を 併用すれば遺伝的背景に関する選抜 も 可 能で あ り、2乃 至3回 の戻 し 交雑を繰り 返したのと 同程度のNILsを 得るこ と が でき る 。筆 者 は以 上 の 方法 により、 新たに同定 されたPi―5(t)、Pi− 7(t) 、Pi‑8(t) に 関 す るNILsを 作 成 し た 。 ま た 、 従 来 ポ リ ジ ー ン に 関 するNILsの育成は 難しいとさ れていたが 、本実験で実際にポリジーン支配の いもち病圃場抵抗性に関するNILsを得ることができた。

  NILsの も つ 抵 抗 性 遺 伝 子 の う ちPi‑3(t) は 座 乗 染 色体 が 決 定さ れ てい な か っ た が 、DNA多 型 検 出 法 の1つ で あ るRAPD法 に よ りPi‑3(t) と 連 鎖 する標識マ ーカーを作 出し、この マーカーをRAPDハイブ1Jダイゼーション法 に よ り 既 存 のRFLPマ ッ プ に乗 せ るこ と がで き る。Piー3(t) は 作出 さ れた RAPDマ ー カ ー OPS一 08800と OPU― 09400に そ れ ぞ れ 12.4% と 0% の 組 換 価 で 連 鎖 し 、OPS―08800は 染 色 体 3のRFLPマ ー カ ーRG179とRG 910の 間 に あ る と 推 定 さ れ た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、Pi‑3(t) は 染色 体3の

‑ 527 ‑

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RFLPマ ー カ ーRG179あ る い はRG910の 近 傍 に 位 置 す る こ と が 推 定 さ れ た。

  熱帯地域におけるいもち病抵抗性の体系的研究は現在始まったばかりとぃえる。

栽培品種中の抵抗性遺伝子を同定するとともに、いもち病菌の病原性レースの分布 を知ることは抵抗性育種をすすめる上できわめて重要であり、熱帯地域においてこ れらの研究をさらに押し進めるべきである。本研究では熱帯地域に適した判別品種 を確立すべくNILsの遺伝子分析を進め、新たな抵抗性遺伝子を同定するととも に、第ー次判別品種を確立した。また、NILs.の効率的な育成方法を考案するこ とで第一次判別品種拡充のための方向を示した。

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学 位 論 文 審 査の 要 旨

     学位論文題名

GENETICAL STUDIES ONBLAST RESISTANCE     IN TROPICAL RICE CULTIVARS

     熱帯イネ品種におけるいもち病抵抗性に関する遺伝学的研究

  イネ いもち病 は、世界 のほとん どの稲作 地帯、特 に熱帯地域においてその被害が著 しい 。本研究 ではいも ち病抵抗 性品種育 成の基礎 として重要な抵抗性遺伝子やいもち 病菌 の病原性 レースの 同定に関 して、熱 帯地域に おけるイネ品種とぃもち病菌を用い て 解 析 し 、 さ ら に 病 原 性 レ ー ス を 同 定 す る た め に 必 要 な 判 別 品 種 を 作 成 し た。

  本論 文は英文 で6章より 成り、79頁 で表21と図8を含む。

  まず 、 国 際稲 研 究所 で 育 成さ れ たい も ち 病抵抗性 に関する22種類の準 同質遺伝子 系 統(N ILs) を 用い て 、抵 抗 性 遺伝 子 の同 定と 、熱帯地 域に適し た判別品 種の確立 を 試 み た 。 ま た 、 分 子 マ ー カ ー に よ る 遺 伝 子 の マ ッ ピ ン グ を 行 っ た 。   供 試 し たNILs中 の 抵 抗 性遺 伝 子 と既 知 の遺 伝 子 との 関 係 を調 べ るた め 、 清沢 の 判 別 品 種12品 種 とNILs間 で 交 配 を 行 い 、F2集 団 とF3系 統 を 用 い て 遺 伝 子 分 析 を行った。その結果、NILs中にはPi.i(t)、Pi.2(t)、Pi.3(t)およびPi‑4 (t)の 4遺 伝 子 が含 ま れて お り 、Pi‑ヱ (t)は 染 色体11上のPi ‑たと6.1%の組換 価で連鎖 し、 他の抵抗 性遺伝子とは異なっていた。また、Pi.2(t)は染色体6上のPi.zと対立 関係にあった。Pi,3(t)はPi,jと7.O%の組換価で連鎖し、他の抵抗性遺伝子とは異 な っ て い た 。Pi4°(t)は 染 色 体12上 のPi ‑taと 同 一 の 遺 伝 子 で あ っ た 。 ま た NILs 1つ の C105TTP4L23Pi 4 t) と と も に 新 し い 抵 抗 性 遺 伝 子 を有していた。

     

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  NILsを 判 別 品 種 と し て 用 い る 場 合 に は5系 統 、 す な わ ち 、Cl0 1LAC (Pi ‑ヱ (t) ) 、 C101A51(Pi‑2(t) ) 、 C104PKT (Pi‑3(t) ) 、Cl0 1PKT (Pi ‑ ta)、C105TTPー4L23(Pi‑ta,Pi‑め を 用 い る の が 適 当 で あ っ た 。 こ れ らの 第 一 次 判 別 品 種 の 病 原 性 レ ー スの 判別 能カ を評 価し た結 果、46菌 系は7種の 病 原 性 レ ー ス に 判 別 さ れ た 。 も し 国 際 判 別 品 種 を 用 い る と 、NILsで 判 別 さ れ る7 レー ス は10レー スに まで 細分 でき た。 一方 、清 沢の 判別品 種で はフ イリ ピン 菌系 に 対し て 中 間 的 な 反 応 を 示 す 系 統 が あ っ た た め 、 レ ー ス の 判別 に は 適さ なか った 。   22種 のNILs中 の 遺 伝 子 は 上 述 の 如 く そ の 多 く が 重 複 し て い る 反 面 、 抵 抗 性 遺 伝子 を 戻 し 交 雑 の 過 程 で 欠 落 し た 場 合 も あ っ た 。 し た が って 、 よ り効 率的 にNILs を育成 する ため には 、分 離集 団をそのまま固定させた組換え近交系を使い、複合型い もち 病 抵 抗 性 系 統 を 育 成 す る と よ ぃ こ と が 判 っ た 。 ま た 、RFLP分 析を 併用 する な ら ば 遺 伝 的 背 景 を 斉 一 化 し たNILsを 容 易 に 得 る こ と が で き た 。 以 上 の 方 法 に よ り、新 たにPi.5(t)、Pi ‑7 (t)、Pi.8(t)に関 するNILsを得た。また、実際にポリ ジ ー ン 支 配 の い も ち 病 圃 場 抵 抗 性 に 関 す る NILsも 作 る こ と が で き た 。   NILsの も つ 抵 抗 性 遺 伝 子 の う ちPi.3(t) と 連 鎖 す るRAPDマ ー カ ー を 作 出 し、RFLP地図ヘ乗せることができた。すなわち、Pi.3(t)はOPS ‑ 08800やOPU‑ 09400 に そ れ ぞ れ12.4% と0% の 組 換 価 で 連 鎖 し 、 染 色 体3のRFLPマ ー カ ー で あ る RG179もしくはRG910の近傍に位置することが判った。

  熱帯 地域 にお ける いも ち病 抵抗性の体系的研究は現在始まったばかりであり、栽培 品種中 の抵 抗性 遺伝 子を 同定 することや、いもち病菌の病原性レースの分布を知るこ とがで きた 事は 抵抗 性育 種を 進める上できわめて重要であった。また、熱帯地域に適 した判 別品 種の 確立 や、 新た な抵抗性遺伝子を見い出したことで、イネいもち病抵抗 性育種に大きな貢献をした。

  よ って 審査 員一同は別に行った学力確認試験の結果と合わせて.、本論文の提出者 犬 飼 剛 は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。

参照

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学位授与番号 学位授与年月日 氏名

雑誌名 博士論文要旨Abstractおよび要約Outline 学位授与番号 13301甲第4306号.