博 士( 獣医学 )マ ブル クアテ イア アブ ドゥ ルダイ ムア ブドゥカティロ
学位論文題名
A novel regulatory role of retinoid in lipid metabolism in mammalian cells
(哺乳動物細胞の脂質代謝におよぼすレチノイドの新たな作用)
学位論文内容の要旨
ビタ ミンA (VA)は 視 覚、 免疫 機能 、繁 殖、 胚発 生、 さら には 細胞 の増 殖や 分 化 など多岐に渡る生理現象やその過程に重 要な役割を果たす。
本研 究で は先 ず反 芻 類に おける主要な血中VAであるレチノールお よぴその輸送体 であ るレ チノ ール 結合 タ ンパ ク質RBP4の動態を明らかにするため、様 々な生理的、病 態生 理学 的条 件に ある 牛 の血 漿、初乳および乳中レチノール濃度とRBP4濃度を測定し た。 非妊 娠、 非泌 乳期 の 牛血 漿RBP4濃 度は 大凡45 yg/mlであ り、 牛に60時 間、 餌 を 与え なか った 場合 でも そ のレ ベルは維持されたが、LPS投与実験では投与後4時間で有 意な減少が見られた。非妊娠、非泌乳期 の牛血漿レチノール濃度は約30 Lxg/dlであり、
非 給 餌60時 間 後 に は 対 照 群 の3分 の1に 、LPS投 与 後8時 間 で は 対 照 群 の2分 の1に 減少 した 。出 産3−6日 前 の血 漿RBP4濃度およぴレチノール濃度は非妊 娠、非泌乳期の それ らとほぼ同程度であった。しかし、出 産直後に両者は有意な減少を示し、その2週 間後 に元 の水 準に 復帰 し た。 興味深いことに、RBP4は初乳中に検出さ れ、その濃度は 16.4土5.6 yg/mlで あ っ た 。 し か し 、 出 産 後7日 あ る い は15日目 の乳 中か らは ほ と んど 検出 され なか った 。 初乳 中のレチノール濃度は血漿の約10倍であ り、乳中の濃度 は血 漿と ほば 同程 度に ま で減 少した。これらの結果は牛において血中VAとRBP4の濃度 が、生理的あるいは病態生理学的条件下 で独立して調節されていることを示しており、
またRBP4がレ チノ ール 同 様に 母体から子牛に初乳を介して輸送、移動 することを示し た。
レチ ノー ルは 細胞 に 取り 込まれるとレチノイン酸(RA)に代謝され 、強い生物活性 を持っようになる。その生物活性のーっ として脂肪細胞分化の抑制が知られるが、逆に RAが 脂肪 分化 を促 進す る との 報告もある。そこで本研究ではRAの脂肪 蓄積に及ぼす作 用を む汀troの 培養 系で 再評 価した。牛筋 問脂肪細胞とマウス3T3―Ll細胞に正常なグ ルコ ース 濃度(NG,5.5mM)で 培養し、RAを添加すると脂肪蓄積が抑制 された。一方、
高グ ルコース濃度(HG,217.5mM)ではRAは何れの細胞においても脂肪蓄 積を促進した。
グル コー スに 代え 酢酸(lOmM)を脂肪合成基質として添加してもRAの作 用の反転は見ら れな かっ た。RAの 脂肪 蓄 積へ の作 用は 脂肪 酸合 成酵 素(FAS)遺伝子発 現と並行して起 こり 、ア セチ ルCoAカル ポキ シラ ーゼ 遺伝 子発 現と は 解離した。またFAS mRNAの転写 を促 進することが知られる転写因子SREBP―1遺伝子発現もFASの発現と パラレルに変化 したが、SREBP−2遺伝子発現は異なる変 化を示した。活性化型SREBPーla cDNAの3T3−L1 細 胞 へ の 強 制 発 現 はFAS遺 伝 子の 発現 増強 を伴 いNGにお けるRAの 脂肪 蓄積 抑制 作 用 を解 除し た。 一方 、SREBP−1siRNAの 添加 はFAS遺伝 子の 発現 を阻 害し 、HGにお け る
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RAの 脂肪蓄 積促進作 用を阻 害した。 っまり、RAの脂肪 蓄積に及 ぼす作 用はグル コース 濃 度によ って促進 あるいは 抑制と 反転し、 それは 転写因子SREBP一laの発現を変化させ てFAS遺伝子の転写量を調節することに因ると考えられた。
RAに よる グ ル コ ース 濃 度 依存 性 のSREBP―laの発 現 調 節機 構 を 明 らか に す るた め、先ず最初に酸化ストレス剤H202の作用を検討した。NGにおいてH202 (211M)で3T3ーLl 細 胞を刺 激すると 高分子量 膜結合型SREBP−laの分解促進(核内活性化型SREBP―laの増 加 )とも にFAS遺 伝子の発 現亢進 と脂肪蓄 積の増 加が見ら れた。しかし、酸化ストレス 剤H202に よ るSREBPーla活性 化とRAによ るその 転写抑制 は独立 して起こ ったの で、HG で 生 じ る 酸 化 ス ト レ ス は RAに よ る 転 写 亢 進 に は 寄 与 し な ぃ と 考 え ら れ た 。 次 に、核 内受容体 のSREBP一laの発現 調節へ の関与を 調べた 。NGにおい て3T3一Ll 細 胞 をRAで 刺 激す る とretinoic acid receptor (RAR)aとRARy遺伝 子 の 発現 増 加と SREBP―la, retinoid X receptor (RXR)(X, peroxisome proliferator−activated receptor (PPAR)y,PPARI3/6,韜よ ぴliverXreceptor (LXR)a遺伝子 の発現抑 制が観 察 された 。一方、HGにおい てRAはSREBPーla,RXRp,PPARI3/8,およ びLXRI3遺伝子の 発 現を亢 進させた が、RARa遺 伝子の発 現を減 少させた 。興味深 いこと に、同様 の変化 は脂肪分化誘導後6日目のみならず1日目でも観察された。
通 常 、3T3―Ll細 胞 を 脂肪細胞 に分化 させるた めには、 コンフ ルエント になっ た 後 、分化 剤[insulin,isobutylmethylxanthinおよびdexamethasone (Dex:合成グルコ コ ルチコ イド)] で2日 間処理 する。各 成分に ついて検 証したところ、NGにおいては分 化 剤 で 刺激 し な かっ た 細 胞に おいてもRAによるSREBP―la発 現抑制 が観察さ れた。HG に おいてRA単独ではSREBP−la発現亢進 は見ら れず、Dexを作 用させた 細胞にお いての み 、 そ の亢 進 作 用が 見 ら れ た。 っ ま り、 グ ル ココ ル チコイ ド(GC)がHGに おけるRAの 応答性を与えることが示された。
次 にHGに お け るGCお よ びRA依 存性SREBP−1a発 現 誘導 に 対 す る核 内 受 容体 の 関 与について調べた。細胞をRA、9−CIS―RA (RXR刺激剤)、troglitazone (PPARy刺激剤)
あ るいはT0901317 (LXR刺 激剤)で処理するとGC依存性にSREBP−1a発現が亢進したが、
TTNPB (RAR刺激剤) とGW0742 (PPARp/6刺激剤 )では見 られなかった。HX531 (RXR阻害 剤 ) やT0070907 (PPAR‑阻 害 剤 )処 置 、 およ ぴLXR[3あ るい はPPARyに対 す るsiRNA の 細 胞 内へ の 導 入はGCお よびRA依 存性SREBP一la発現 誘導を 阻害した が、LXRaあ るい はPPARp/6に 対するsiRNAの細 胞内への 導入は それらに 影響を 与えなか った。さ らに、
LXRp siRNAの 導 入 はPPARyお よ びRXRI3遺 伝 子 のRAとDexに よる 発 現 亢進 を 抑 制し た のに対 し、PPARy siRNAの導入 はRXR[3遺伝子の 発現亢進 を阻害したが、LXRI3遺伝子 の 発 現 に は 影 響 し な か っ た 。 これ ら の 結果 はLXRp,PPARyお よ びRXRがHGに お け る GCお よびRA依 存性SREBP―la発現 誘導に中 心的な 役割を果 たすこ とを意味 し、LXRI3が PPARlr遺伝子の発現を調節しうることを示唆した。
以 上のよ うにRAは細 胞外液 のグルコ ース濃 度に依存 して細 胞の脂質 代謝を抑 制あ る いは亢 進きせる ことが新 たに見 いだされ た。こ のRAの相反 する作 用の鍵と なる分 子 はSREBP―laであり、その遺伝子のRAによる発現変動は脂肪分化の初期段階から見られ、
HG、GCお よ ぴRA依 存 性 に 核 内 受 容 体LXRI3,PPARyお よ びRXRが 誘 導さ れ る こと で SREBP−la遺 伝子発現 が亢進 すること が明ら かとなっ た。LXRpは細胞内グルコースセン サ ーとし て知られ るので、 この核 内受容体 がRA作用 の細胞外 グルコ ース濃度 依存性 に 関わると考えられる。
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