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低開発国貿易の反省*義ノ

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(1)

一189一

低 開 発 国 貿 易 の 反 省*

長 期 交 易 条 件悪 化 論 ・窮 乏化 成 長 論 ・ 輸 入 需 要不 足 論 一

麻 田 四 郎

低 開発 国 問題 に 関す る これ まで の理 論 に は,往 々,低 開発 国 の経 済 発 展 を

(1)

工業 化 と同一 視 す る傾 向,あ るいは 工 業 化 を当 然 の方 向 ときめ 込 む傾 向 が あ った 。 また そ こに は,低 開 発 国 の主 要 産業 た る第1次 産業(特 に 農 業)の 展 や そ の 貿 易 の 重 要 性 が 軽 視 され る傾 向が あ った 。 しか し最 近 の文 献 に は,

(2)

そ の よ うな論 調 に反 省 の き ざ しが あ らわ れ て き た よ うで あ る。本 稿 は,そ れ らの 最近 に お け る文 献 を参 照 しつ つ,低 開 発 国第1次 生 産 物 貿 易 を 悲観 視 す る三 つ の理論 一一長 期 交 易 条件 悪化 論 ・窮 乏化 成 長論 ・輸 入 需 要 不 足 論 一 を再 吟 味 し よ う とす る も の で あ る 。 も と よ り本 稿 は 決 して オ リジ ナ リテ ィー

ee本 稿 は,別 稿 「後 進 国 開 発 ゼ ミ ナ ー ル 」 『講 座 ・ 国 際 経 済 』 第5巻,有 斐 閣,

昭37,251〜253頁 の 論 旨 を 拡 充 ・ 深 化 し た も の で あ る 。

(1)低 開 発 国 発 展 を 工 業 と 同 一 視 し た 典 型 と し て,H.W.Singer,"The MechanicsofEconomicDevelopment,"IndianEconomicRevietv,Vo1。1,No.2、

1952,citedinAgarwalaandSillgh(eds.)TheEconomicsofUnderdevelopntent,

Oxfo「dUniv・Press,1958が あ げ ら れ る 。 こ れ に つ い て は,拙 稿,商 学 討 究

第5巻 第4号,昭30;ア ジ ア 協 会 編 『後 進 国 開 発 の 理 論 』 昭31,日 刊 工 業 新 聞 社

お よ び 申 西 市 郎 『国 際 経 済 論 と 日 本 」 有 斐 閣,昭36,177〜179頁 参 照 。

(2)本 稿 で は ふ れ な い が,農 業 発 展 の 重 要 性 を 強 調 す る 最 近 の 文 献 と し て,次 の も の を あ げ て お き た い 。 ま た こ の よ う な 農 業 発 展 の 重 要 性 の 強 調 は,多 く の 低 開 発 国 工 業 化 政 策 の 実 際 経 験 か ら 示 唆 さ れ て き た も の と 理 解 し て よ い で あ ろ う 。T.

Balogh,"AgriculturalandEconomicDevelopment,"OxfordEconomicPapers, Feb.1961;B.EJohnstonandT.w.Mellor,"TheRoleofAgriculture

inEconomicDevelopment,"AmericanEconomicReview,Sept.1961;B.C.

Swerling,"SomeInterrelationshipsbetweenAgriculturalTradeandEco‑

nomicDevelopment,"K7ktos,Vol.14,Fasc.3,1961;P.R.Brahmananda,

"AgriculturalversusIndustrialDevelopment ,"inH.S.Ellis(ed.),Economic DevelopmentforLatin伽8励 α,London,Macmillan,1961・

(2)

を 主 張 す る もの で は な いが,お そ ら く,以 下 の反 省 は,低 開 発 国貿 易(特 第1次 生 産 物 輸 出)の 重 要 性 が 一・層 強 調 され る必要 の あ る こ と,ま た,低 発 国 の経 済 発 展 が,決 して 「工 業 化 」 とい う簡 単 な用 語 で は 表 現 され な い 複 雑 な構造 その複雑 さ こそ が低開発 国問題 の真髄を形成す る を もつ も

の で あ る ことを示 唆す るで あ ろ う。

1.長 期 交 易 条 件 悪 化 論

(3)

周 知 の よ うに,戦 後 多 くの実 証 研究 に よ って,低 開 発 国の 対 先 進 国 交 易 条 件(第1次 生 産 物 の対 工業 品 交 易 条 件)に 長 期 的 な(特 に1870年 代 か ら第2 次 大戦 前 に か け て)悪 化 傾 向が 指 摘 され た 。 そ して,こ の傾 向 は今 後 も継 続

され る と思わ れ るか ら,低 開発 国 の第1次 生 産 物 輸 出は 今 後 次 第 に不 利 化 す る とい う推 論,さ らに,低 開 発 国 は 発 展 方 向 を 「工業 化 」 に 求 め るべ きだ と い う政 策論 が 打 ち 出 され て きた 。 また,そ の よ うな見 解 を 基 礎 づ け る理 論 と

ほ ラ

し て,プ レ ビ ッ シ ュ ー シ ソ ガ ー 命 題 が 提 出 さ れ た 。 い う ま で も な く,こ こ で

い う交 易条件 とは,商 品交 易条件す なわ ち 輸 出単価指数/輸 入単価指 数

(3)低 開 発 国 交 易 条 件 の 実 証 研 究 と し て は,次 の も の が 代 表 的 で あ る 。 (a)LeagueofNations,1ndustn'aliZationandForei8nTrade,Geneva,1945;

(b)U.N.DepartmentofEconomicAffairs,RelativePricesofExportsand

ImPortsofUnder‑developedCountries,1949;(c)B.W.Schlote,B吻 渤Overseas Tradefrom1700tOthe1930's,Oxford,1952;(d)C.P.1(indlel)erger,・Terms

ofTrade;AEuropean(7aseStud■,1956;(e)P.L.Yates,1勉 吻Yearsof

ForeignTrade,London,1959.ま た,こ ら を 要 領 よ く 紹 介 ・ 批 評 し て い るB・

Higgins,EconomicDevelopment,1959,pp.359〜366お よ び 小 島 清 『交 易 条

件 』 勤 草 書 房1956年,第3篇 第3章 が 便 利 で あ る 。 以 下 に 紹 介 す る ハ ー バ

ー の 議 論 は 前 述(b)を 念 頭 に お い て い る 。 (4)U.N.EconomicCommissionforAsiaandtheFarEast,TheEconomic

Developmentt〜fLatinAmericaanditsP75卿 α1Problems,1950,ch.2;]Raoul Prebisch,"TheRoleofCommercialPoliciesinUnderdevelopedCountri。

es,"AmericanEconomicRevieω,May1959,〔 吉 野 昌 甫 訳 「低 開 発 国 に お け る 通 商 政 策 」 ア メ リ カ ー ナ1961年3月 〕;HansSinger,"TheDistributionofGains

betweenInvestingandBorrowingCountries,"AmericanEconomicR8吻 拶, May,1950〔 邦 訳 「投 資 国 と 借 入 国 へ の 利 益 の 分 配 」 世 界 経 済1950年11月 号.

(3)

.一低 開 発 国 貿 易 の 反 省(麻 田) 一191一

(5)

で あ り,そ れ は,一 国 に帰 属 す る貿 易利 益 の 大 き さの変 動 を示 す 。 な お問 題 とな る期 間 は,2〜3年(短 期)あ るいは10年 程 度(中 期)以 上 の長 期 の そ れ で あ る。

(6)

長 期 交 易 条 件 悪化 論 に は 早 くか ら有 力 な学 者 の批 判 が あ った こ とは よ く知 ち れ て い るの で,以 下 で は,こ れ まで行 なわ れ て きた 批 判 の総 整 理 と して,

くり

最 近 の ハ ーバ ラ ーの議 論 を 紹 介 した い 。た だ し,こ れ を 紹 介す る筆 者 の意 図 は,決 して,批 判 者 と被 批 判 者 との いず れ か に軍 配 を あげ よ うとす る もの で な い こ とを 断 わ って お きた い 。批 判 者 は 必 ず しも長 期交 易 条件 悪 化 論 に か わ る 別 の積 極 的 命題 を持 ち 出 して い るの で な く,単 に,長 期 悪 化 論 に正 当 な根 拠 が な い,と 消 極 的 に批 判 す るに 止 ま って い る。 しか し疑 わ しい 点を 疑 わ し

〜・と明確 に 認 識す る こ とは重 要 で あ ろ う。 早急 な理 論化 とそれ に導 か れ る政 策 策定 にか られ る前 に,一 度 ふみ 止 ま って足 も とを 見 直す 慎重 さが 現 段 階 で は 必 要 と思わ れ るか らで あ る。

ハ ーバ ラ ーの批 判 は ,実 証 研 究 につ い て の批 判 と理論 的 基礎 につ いて の二 つ に 分 け られ る。

実 証 研 究 に つ い て 。 ハ ーバ ラ ー はU.N.,RelativeP痂 卵ofExPortsand

くの

ImPortsofUnder・deVetoPedCoztnties,1949を 念 頭 に し て 批 判 す る 。 実 証 研 究 の 基 礎 と な っ た 資 料 の 信 愚 性 や ウ エ イ ト の 取 り 方 と い っ た 技 術 的 問 題 は お く

(5)交 易 条 件 の 諸 概 念 に っ い て は,J・Viner・StudiesintheTheo「Ptoflntematienal

、Trade,1937,PP・555〜570が 古 典 で あ る 。 な お,前 小 島 清 『交 易 条 件 」 第1

第5章 参 照

く6)長 期 交 易 条 件 悪 化 論 に 対 す る こ れ ま で の 批 判 と し て は,J.Viner,lntemational

TradeandEconomicDeveloPment,1953・ch・6〔 相 原 光 訳 「ヴ ァ イ ナ ー ・ 国 際 貿 易 と 経 済 発 展 』 昭34,巌 松 堂 出 版 〕 が 代 表 的 で あ る 。 そ の 他 にP・T.Bauerand

B.S.Yamey,7▼heEconomicsofUnderdevelopedCountn'es,1957,CambridgeU.P., ch.15;C.P.Kindleberger,op.cit.,p.263;R.E.Baldwin,"SecularMove‑

mentsintheTermsofTrade,"オ η 漉6α ηEconomicRevdeω,Mayl955〔 小 島 ・ 花 輪 訳 「交 易 条 件 の 長 期 変 動 」 ア メ リ カ ー ナ,1956年3月 〕 が あ る 。 邦 語 文 献 と

し て は 小 島 清 「交 易 条 件 』227〜230頁 が 傑 出 し て い る 。 く7)G.Haberler,"TermsofTradeandEconomicDevelopment,"inH.S.

Ellis(ed),Economie1)evelopmentforLatinAmerica,London,]Macmillan,1961.

<8)注 く3)の(b)。

(4)

と して も,は た して,い うと ころの 長期 交 易 条件 悪 化 傾 向が事 実 を正 確 に反 映 した もので あ ろ うか,が 問 題 に な る。 少 な くと も3つ の 反 対論 が あ り うる。

第1に,交 易条 件 の年 次指 数 に は,品 質 向上 や 新 製 品導 入 が正 し く考 慮 され て い な い。工 業 品に は年 々品質 向上 が 行 なわ れ,ま た 同 時に,新 製 品が 付 加 され るけ れ ども,多 くの第1次 生 産 物 に お い て は,そ(pよ うな事 態 は 発 生 し な い 。 この 点 を 考慮 す れ ば,た とえ計 算 上 の 交 易条 件 が 第1次 生 産 物 に と ウ て 悪 化 した と して も,そ れ を 真 の 悪 化 とみ なす こ とは危 険で あ る。 第2に, 交 易 条件 の動 きが 輸 送 費 の変 動 に よ って歪 曲 され てい る危 険 があ る。通 常, 低 開発 国交 易条 件 の 動 きは,英 国(も し くは 米 国)の 工 業 品 輸 出価 格指 数 と 英 国 の第1次 生 産 物 輸 入価 格指 数 に よ って推 定 され るが,そ の 輸 出 価 格 に は,運 賃 ・諸 掛 りを含 まないf・o・b価 格 が 用 い られ,ま た 輸入 価 格 に は そ れ らを 含 ん だc・i・f価 格 が用 い られ る。そ の 結 果,運 賃 ・諸 掛 りの 低 落(そ

れ が 観 察期 間 に 大 巾に 発 生 した こ とは 明 らか で あ る)が,第1次 生産 物 交 易 条 件 の悪 化 と して 表 現 され る こ とは 自明 であ る。 も し輸入 価 格 を もf・o・b価 格 で 算定 す る な らぽ,交 易 条 件 は イギ リス に と って不 利 化 した とさえ い え る

く ラ

の であ る。 第3に,英 国に つ い て の 実証 研 究 か ら,直 ち に現 在 の低 開 発 国 交 易 条件 を うん ぬ んす る こ とは,あ ま りに も大 き な飛 躍 で あ る。 た とえ,先 進 工 業 国全 体 の 交 易 条 件 有利 化 とい うこ とか ら,低 開 発 国交 易 条 件 の悪 化 を推 論 す る こ とが妥 当 だ と して も,英 国 を もって 先 進 工業 国全 体 を 代 表 せ しめ る

く の

こ とは 妥当 で な い 。 キ ン ドル パ ー ガ ーが 示 して い る よ うに,英 国の 交 易 条件 と他 の ヨ ー ロ ッパ工 業 国の そ れ とで は,そ の 間 に 大 き な相違 が あ るσ英 国交 易 条件 有利 化 → 工 業 国交 易 条 件 有利 化 → 低 開発 国交 易 条件 不 利 化 とい う直 線 的 な推論 は危 険 であ る。

(9)ハ ー バ ラ ー は そ の 証 拠 と し て,P.T.Ellsworth,"TheTermsofTrade

betweenPrimaryProducingandIndustrialCountries,"1漉 勉 膨 励 απEconomic

Afjairs,Vo1.X,Summer1956,PP.55〜56を あ げ て い る 。

(10)C.P.Kindleberger,TermsofTrade;∠4EuropeanCaseStud■,NewYork,

1956,PP.26〜27.書 小 島 清 「キ ン ド ル バ ー ガ ー ・ 交 易 条 件 一 欧 洲 工 業 国 に っ い て の ケ ー ス ・ ス タ デ ィ ー 」 世 界 経 済 評 論,1956年1月 号 。

(5)

低 開 発 国 貿 易 の 反 省(麻 田) 一193一

以上 の 批 判 はそ れ 自体 決 して 目新 しい もの で は ないが,こ の 種 の 実 証 研究 を利 用 す る場 合,用 心 が肝 要 だ とす るハ ーバ ラ ーの主 張 は充 分 傾聴 さ るべ き で あ ろ う.な お,先 へ勘 前 に,̲.・ ラー と 同 じ叛 を撒 ヒギ ンス の 言 葉 を 引 用 して お こ う。 ヒギ ソス は,同 じ国 連 報 告 を 用 い て,44力 国 の 低 開 発 国(も し くは 地 域)の 交 易 条 件 を 第2次 大 戦 の 前 と後 と に つ い て 比 較 して, 有 利 化 した も の19力 国,不 利 化 した もの19力 国,不 変 と 考 え られ る も の6カ

くユリ

国 を検 出 した後 に いわ く。 「明 らか に,現 在 入手 可 能 な資料 は,低 開発 国交 易 条件 の趨 勢 を理 論 化 す る基 礎 と しては,ど ち らか とい え ば不 満 足 な もの で

あ る。」

理 論 的 基礎 につ い て 。低 開発 国 交 易 条 件 の 長期 的 悪 化 傾 向を 説 明す る何 ら か の 先 験 的 理 由があ るだ ろ うか 。理 由あ りとす るの が プ レピ ッシ ュと シ ソガ

ーであ る。 か れ らは

,技 術 進歩 は工 業 国 では 生 産 要 素所 得水 準 の上 昇 を もた らす け れ ど も,低 開 発 国 で は生 産 物 の価 格 低 下 とな る傾 向のあ る こ とを指 摘 し,そ れ が 交 易 条件 悪化 の原 因だ と主 張 す る。そ して,こ の 傾 向は,農 業 と 工 業 との 間 に 見 られ る独 占力 の 相 違,組 合 の力 の 相違,需 要 弾 力性 の 相違(

く 

典型 的 に は エ ソゲル 法 則)に よる もの と考 え るの で あ る。 しか し,ハ ーバ ラ ーは 反 論 す る。工 業 が独 占的で 農 業 が 自由競 争 的 だ とは 必ず し もい え な い け れ ど も(工 業 国 相互 の熾 烈 な競 争 を考 え てみ よ),か りに プ レ ピ ヅシ ュー シ ンガ ーの い う非対 称 性 を認 めた と して も,低 開 発 国 の技 術進 歩 は決 して生 産 要 素所 得 水準 を低 下 させ る もの で は ない 。工 業 国 に お け るほ どで は ない にせ よ,技 術 進歩 に と もな って低 開 発 国 の 要 素所 得水 準 も上 昇 す る と見 るべ きで あ る。 した が って,も しプ レピ ッシ ュー シ ンガ ー命題 が,交 易 条件 の悪 化 か

(11)B.Higgins,EconomicD60ψ ρ膨 肱1959,Table15‑3.pp.362〜363.

(12)Ibid.,p.366.

(13)注(5),最 近 プ レ ビ ッ シ ュ の 議 論 に 対 す る 賛 成 論 と 反 対 論 と が 発 表 さ れ た 。 賛 成 論 はW.Baer,"TheEconomicsofPrebischandECLA,"Eαanomic

1)evelopmentandCulturalChange,vol・x,No・2,Pt.1.Jan・1962.反 対 論 はR.E Gemmi11,"PrebischonCommercialPolicyforLess‑DevelopedCountries,"

TheReviewofEconemicsandStatistics,Vol.XLIV,No.2May1962.

(6)

ら低 開 発 国要 素所 得 の 低下 を予 想 して い る とす れ ぽ,そ れ は 絶 対 価 格 と相 対 価 格(交 易 条 件)と を 混 同 した議 論 とい うこ とに な る。す なわ ち,交 易 条 件 の 悪 化 は 必 ず しも低 開発 国第1次 生 産 者 の 所 得 水 準 を 低下 させ る もの で は な

ロの

い の で あ る。 この ハ ーパ ラーの 議論 は,ヌ ル クセ の 次の 議 論,す なわ ち,も し交 易 条 件 の悪 化 が,第1次 生 産 者 を害 す る もの で あ る な らば,生 産 要 素 は 他 産 業 へ 流 出 し,第1次 生 産 物 供 給 の 減 少 を通 じて,交 易 条 件 の 悪化 そ の も の を 食 い 止め,あ るい は逆 転 せ しめ るで あ ろ うとい う議論,に よって 補 強 さ れ るであ ろ う。

さ らに ハ ーバ ラ ーは エ ソゲル 法 則 の援 用 に も反 論 す る。 エ ソゲル 法則 は 食 料 需 要 に は妥 当す るが,原 料 用 第1次 生 産 物 に は 妥当 しな い 。 また,エ ソゲ ル 法 則 を もち 出す とす れ ば,交 易 条 件 に対 して逆 の効 果 を もつ 収 穫i逓減 法 則 を もち 出 して は な らぬ とす る理 由 も な くな る。 いず れ に せ よ,交 易 条 件 の長 期 変 動 とい う複 雑 な現 実 を エ ソゲル 法 則 とい った 単一 の理 論 で説 明す る こ と は も とも と無 理 であ る。

こ う批 判す るハ ーバ ラ ーの 立 場 は 自ず と明 らか で あ る。 交 易 条 件 は 本 来 的 に 多 種 の 複 雑 な原 因 生 産 方 法 ・運 送手 段 ・人 口 ・生 活 水 準 ・生 活 様 式 ・ 各 国 の 政 策 等 々 一に よ って 左右 され る もの で あ るか ら,将 来 交 易 条 件 がど

うな るか を予 見す る こ とは現 段 階 で は 不可 能 で あ る。 した が って,長 期 交 易 条 件 悪化 論 か ら低 開発 国 の工 業 化 政 策 や 保 護 貿 易 政 策 を根 拠 づ け る こ とは, 必 ず し も妥 当 で は ない 。わ た くしは 以上 の よ うなハ ーバ ラ ーの反 論 に 適 確 な 解 答 が 与 え られ ぬ 限 り,長 期 交 易 条件 悪 化 論 に懐 疑 的 な態 度 を と らざ るを え

くエ

な い の で あ る 。

(14)R.Nurkse,PatternsoJTradeand1)evelopment,Stockholm,1959,pp.60〜61.

〔大 畑 弥 七 訳 「ヌ ル ク セ ・外 国 貿 易 と経 済 発 展 』 昭35.ダ ・fヤモ ン ド社,86頁 (15)念 の た め に 附 言 す る が,以 上 は 交 易 条 件 の 長 期 変 動 に っ い て で あ っ て,短 期 の

そ れ に つ い て で は な い 。』短 期 変 動 は,長 期 変 動 とは 別 に 考 察 され な け れ ば な ら な い 。 そ れ に つ い て の ハ ー バ ラ ー の 意 見 は こ うで あ る 。 短 期 変 動 が 大 き い こ とは, 事 実 と し て 認 め な け れ ば な ら な い 。 しか し,変 動 の 巾 や そ の 周 期 性 が 過 度 に強 調 さ れ る き らい が あ る 。交 易 条 件 の 短 期 変 動 は 低 開 発 国 の 国 際 収 支 に 悪 影 響 を 与 え*

(7)

低 開 発 国 貿 易 の 反 省(麻 田) 一195一

皿 窮 乏 化 成 長 論

(16)

第2の 論 点,窮 乏化 成 長 論immiserizinggrowthに 進 も う。 窮乏 化 成 長 之 は,次 の よ うな事 態 を い う。 か りに低 開発 国 に経 済 発 展(生 産力 増 大)が 泡 こ り,そ の 輸 出 品(第1次 生 産 物)の 生 産 が増 大 した とす る 。も し先 進 国側

の そ れ に対 す る輸入需 要 が,低 開 発 国 か らの 輸 出供 給 の増 大に 見 合 った 増 大 を示 さ なけ れ ば,交 易 条件 は 低 開 発 国 に と って 悪化 す る。交 易 条件 の 悪 化 は 実 質 所 得 の 低 下 を 意 味す る。 も し交 易 条 件 の 悪化 が 大 き く,始 め の経 済 発 展 に もとつ く実 質所 得 の 増 大を 上 廻 わ る程 で あ る な らば,そ の経 済 発 展 は差 引 き低 開 発 国 の実 質所 得 を 引 き下 げ る結 果 に な ろ う。そ れ が 窮乏 化成 長 とい わ れ る事 態 で あ る。 長 期交 易 条 件 悪 化 傾 向 が極 度 に作 用 した 場 合に 起 こ り うる

.(17)

ケ ー ス で あ る 。 わ れ わ れ は,窮 乏 成 長 論 の 提 唱 者 の 一 人 で あ る ・ミグ ワ ッチ の 定 式 化 に よ って 以上 の論 旨を確 認 し,つ い で そ の 批 判 に 進み た い 。

ゴ 国(A・B),二 財(X・y),不 完 全 特 化,X(第1次 生 産 物)をA国 く低 開 発 国)の 輸 出 品,Y(工 業 品)をB国(先 進 国)の 輸 出 品 と し,A国 経 済 成 長,B国 経 済 の 不変 を 仮 定 す る。A国 の経 済 成 長 は い ろ い ろ な経 路 を

菅 る も の で あ る が ,国 際 収 支 に と っ て は 交 易 条 件 の 変 動 よ り も,む し ろ 輸 出 量 の 変 動 の 方 が 大 き く 影 響 す る 点 が 看 過 さ れ て い る 。 短 期 変 動 へ の 対 策 は,国 際 商 品 協 定 や バ ッ フ ァー ・ ス ト ッ ク の 他 に,国 際 資 本 移 動 の 復 活 や ガ ッ ト,IMFを

じ て の 自 由 貿 易 拡 大 の 方 向 で 考 え ら れ な け れ ば な ら な い 。G.Haberler,"Terms ofTradeandEconomicDevelopmn七,"op.磁,pp.289〜295.

〈16)窮 乏 化 成 長 論 の 基 本 文 献 。J・Bhagwati,"ImmiserizingGrowth:AGeomet‑

ricalNo七e,"RevieωofEconomicstudies,June1958;J.Bhagwati,̀̀Inter‑

na七ionalTradeandEconomicExpansion;'血8痂 απEconomicRevieω,Dec.

1958;H.G.Johnson,"EconomicExpansionandInternationalTrade,"

ManchesterSchoolefEconomicandSocialStudies,May1955,citedinH.G.

Johnson,InternationalTradeandEconomicGroωth,1958,ch.3〔 小 島 清 監 修 ・柴 田 裕 訳 『ハ リ ー ・ジ ヨ ン ソ ン ・外 国 貿 易 と 経 済 成 長 』 昭35・ 弘 文 堂 〕。 な お 本 節 の 叙 述 は 村 上 敦 氏 の 次 の 二 論 文 に 負 う と こ ろ が 大 き い 。 「窮 乏 化 成 長 と 工 業 化 の 理 論 」 国 際 経 済 研 究 会(神 戸 大 学)編 『国 際 経 済 理 論 の 新 展 開 』1960年8月(謄 写 版 刷)お よ び 同 題 論 文,国 民 経 済i雑 誌 第103巻 第5号

〈17)本 文 の 定 式 化 は,Bhagwati,"lnternationalTradeandEconomicEx噂 pansion,"op.魔 診,に よ る 。

(8)

経 て貿 易 収 支 に影 響 す る。 そ の 結 果,も しA国 が入 超 に な る な らば,A国 交 易 条件 は 悪化 す る。そ こで,ま ず,経 済成 長 の交 易 条件 へ の影 響 を 吟味 し

なけれ ば な らない 。

A国 の経 済成 長 は 次 の6つ の経 路 を経 て交 易 条 件 へ 影響 す る。

L経 済成 長 に もとつ くY財 の 国 内産 出量 の 変 化 。 δy

δK・dK■Y●E・r・ π(1)

た だ し,Y・ … 成 長前 のYのA国 内産 出量

K・ …A国 生産 能 力(全 資 源 をXに 投 入 し た 場 合 のXの 可 能 生産 量 で示 す)

・K= ̲dK

E鯉 一 了 ●'δκ(不δY 変 価 格 の 下 に お け るY供 給 の 産 出 量

(生 産 性)弾 力 性) 2.経 済 成 長 に も とつ くY財 需 要 の 変 化 。

δo

δκ ・dκ一c・EDV・ 天(2)

た だ し,C… 成 長 前 のYのA国 内 需 要 量

Eρr=万 ●騙 「(不 変 価 格 の 下 に お け るY需δo 要 の産 出量

(所 得)弾 力 性)

(1)と(2)は交 易 条件 不変 の下 に お け るY財 に対 す るA国 の 国 内 供 給 ・需 要 の 変 化 を 示す 。 も し(1)〈② な らば,A国 のy財 輸 入 は増 加 し,交 易 条件 はA

に とって 悪化 す る。 この交 易 条件 の変 化 は さ らにYの 需 給 に 影 響 す る。

3.交 易 条 件 の変 化 に もとつ くY財 需要 の変 化 。 δcc

Pt一 ●dP‑=‑7'ε ●dP(3)

た だ し,P・ … 交 易 条件(yL単 位 の獲 得 に要 す るXの 単 位 量,し

(9)

低 開 発 国 貿 易 の 反 省(麻 田)‑197一

た が っ て 交 易 条 件 の 悪 化 はdP>0で 示 され る)

た だ し・ ・一 一音 ・」券(交 易条 件 の変 イヒに よる 齪 代 替 に関 す るY需 要 弾 力 性,y需 要 の交 易 条 件 弾 力 性 と考 え て よい 。)

4.交 易 条件 の変 化 に も とつ くY財 供 給 の変 化 , δYY

δP'dP‑一'7・a・dP(4)

ただ し・ 一 一金 ・一窒(Y供 給の蜴 条件弾 力性)

5・ 交 易 条 件 の変 化 に と もな う実 質 所 得変 動 に もとつ く1ハ 財 需 要 の変 化

一 廠δOo一 ●M'dP ‑一 敦 『 ・M・E

ρ〆 ・dP(5)賜

た だ し,MEC‑‑Y(Yの 初 期 輸 入 量)

E・r・ ・器(交 易条件 の変化 に と もな う実蜥

変 動 に 関 す る.Y需 要 弾 力 性) 6.交 易 条 件 の変 化 に も と つ くB国 のY供 給 の変 化

δ5勧

δP●dP‑‑P'rm・dP(6) た だ し,5魏 ≡M

一 診 驚(交 易条件の変化と鋤Bのy輸 出の

総 変 化 の弾 力 性,BのY輸 出 の交 易 条 件

く   

総 弾 力 性 と よ ん で よ い 。)

さ て,以 上6つ の 要 因 の うち,(1),(4),(6)はYに 対 す るA国 の 供 給 変 動 を 示 し,(2),(3),(5)は そ の 需 要 変 動 を 示 す 。 と こ ろ で,均 衡 に お い て は,Yの

(18)総 弾 力性の 「総 」 とい うのは,交 易条 件の変 化が,B国 にお いて も,価 格 効 果 と所 得効 果 とを もち,そ の両者 の総 結果 としてのB国 のy輸 出量変化 を考 えて い る ことを示 す 。

(10)

〔‑pY‑・a+」 ・rm+号 ・ ε+‑z‑・M・EDr・

(7)式の 分子 は交 易 条件 不 変 の下 に お け る経 済成 長 の 】『輸 入 の所 得 効 果 で あ

く  ラ

る か ら,こ れ をdMと お き,さ らにEmr‑ED・ ノ と お い て(7)式 を 書 き か え れ ば ⑧ 式 が え られ る 。

ψ 一(8) P・mf

〃(Y(]δo■『 ●σ+髭 鵬+万 ●ε+か δκ)

こ こで 明 らか な よ うに,A国 の交 易 条件 が 悪 化(dP>0)す るた め に は,(7)お よび(8)の分子,分 母 が と もに 正 で な けれ ば な らない 。

次 に,交 易条 件 悪 化 が 窮乏 化 成 長 を もた らす 条 件 を確 定 し よ う。交 易 条 件 不変 の下 に お け る経 済 成 長に よ る実 質 所 得 の 増 大を 菰 で あ らわ し,ま た, 交 易 条件 の悪 化 に も とつ く実 質所 得 の減 少 をM・dPで あ らわ そ う。す る と.

dK<M・dPに(8)式 を代 入 して,(9)式 お よび ⑩ 式 が 成 立 す る な らば,窮 化成 長 が 実 現す る こ とに な る。

ρ・躍(9) 菰 く

需 要 と 供 給 は 一 致 せ ね ば な らず,し た が っ て 交 易 条 件 は そ の 一 致 を 実 現 す る よ うに 変 化 せ ね ぽ な ら な い 。 均 衡 実 現 に 必 要 な交 易 条 件 の 変 動 は,〔(1)+(4>

+(6)〕 一 〔(2)+(3)+(5)〕=・Oと お い て,dPを 求 め れ ぽ よい 。 そ の 結 果 は(7>

式 お よ び(8)式 で 示 され る 。

((7・EDr‑Y・Esr)7ヒ

ψ = … …(7)

〔Yoδoπ'σ怖+万 ●ε+ρ ●一万π 〕 δY

(9)を ■=P・ δK と し て 整 理 す れ ば,⑩ が え られ る 。

〔Yo万●σ+万 ●ε+ク+伽 〕<・

(19)EDr=EDrノ とす る の は,実 質 所 得 の 変 動 は,そ れ が 交 易 条 件 の 変 動 に よ る も の で あ れ,ま た 経 済 成 長 に よ る も の で あ れ,そ の 原 因 の 如 何 に か か わ らず,輸 需 要 に 対 して 同 じ影 響 を もっ,と 仮 定 す る こ とで あ る 。

(11)

低 開 発 国 貿 易 の 反 省(麻 田) 一一一199一 さて ⑩ 式 を見 よ う。 これ が成 立 す る可 能 性 は ど うか 。 σ お よ び εは,通 常 の場 合(原 点 に 凹 の生 産 無 差 別 曲線 と原 点に 凸 の 消 費 無差 別 曲線 を想 定 す

る限 り),そ れ らは 正 の値 を とる。 した が って窮 乏化 成 長 は,塩 が 負値 を と り(す なわ ちX{面 格 の 相対 的下 落 にか か わ らず,B国 のX輸 入 需 要 が 伸 び ず,そ の た めB国 のy輸 出量 が減 少 す る場 合),あ るい は ク が 負 値 を と り (A国 の経 済 成 長がYの 国 内生 産 を 減 少 せ しめ る場 合),し か もそ の 負 値 が σ項 お よび ε項 の合 計 値 を上 廻 わ る程 度 に 大 きい と きに のみ 発 生 す る。

さて,窮 乏化 成 長論 の 批 判 へ進 む 。実 の と ころ これ を正 面 か ら批 判 した文

 の く り

献 は 少 な い。 筆 者 は ヌル クセの 批 判 を 知 るだ けで あ る。 まず ヌル クセ の批 判 を 紹 介 し,つ い で筆 者 の意 見 を つ け加 えた い 。

ヌル クセ の批 判 の要 点 は こ うで あ る。 なぜ 窮乏 化 成 長が 発 生 す るのか 。そ れ は,交 易 条件 の 悪化 に もか か わ らず,生 産 資 源 増 加 分 の一 定 割 合が,従 か らの輸 出産業 に振 りむ け られ る と仮定 して い るか らで あ る。 この 仮定 を体 現 して い る のが 「供 給 の産 出量 弾 力性 」 とい う概 念 で あ る。 しか し,供 給 面 に お い て は(需 要 面 で は と もか く),そ の よ うな価 格 シス テ ムの作 用 か ら独 立 した弾 力 性 を 想定 す る こ とは 正 し くない 。 も し交 易 条件 が が 輸 出 品に と っ て 悪化 す る な らば,生 産 資 源 の流 れ は 長 期 的 に は(短 期 に は と もか く)輸 出 産 業 か ら他 産業(輸 入 品 競合 産 業 ・国 内市 場 向 け産 業)へ と方 向を 変 え るで あ ろ う。 そ の結 果,交 易 条件 の悪 化 は 停 止 し,窮 乏 化 発 生 の危 険 を未 然 に 防

ぐで あ ろ う。

ヌル クセ の論 旨を前 述 の 数 式 に よって確 認 し よ う。(7)式の 分 子 は経 済 成 長 の い わ ば 所 得 効 果 を 示す 。そ の 第2項E.,・yが 輸 入 品Yの 国 内 供 給 の 産 出量 弾 力 性 で あ った 。 も し ヌル クセ の い うよ うに,交 易 条 件 の悪 化 が 生 産 資 源 を 斡 出産業(濁 か ら輸 入競 合 産 業(め へ 向か わ せ る とす れ ば ・そ の こ とは ・

(20)窮 乏 化 成 長 論 に 対 す る 批 判 の 少 な い こ と は,多 く の 学 者 が こ れ を 重 視 し て い な い こ と を 意 味 し て い る の で は な か ろ う か 。

(21)R.Nurkse,PatternsofTradeandDevelOpment,ApPendixIII・IV,邦 80〜89頁

(12)

しか らざ る場 合 に くらべ て,Esrの 値 が 大 き く な る こ とを意 味す る。 そ れ は,均 衡 実 現 に 必要 な交 易条 件 悪 化(dP>o)の 程 度 を緩 和 す る作 用 を もつ 。

さ らに こ の こ とは ⑩ の クの値 を正値 に,し か も大 き な正 値 に す る 作 用 を も つ 。か くして 窮乏 化成 長 の 発 生 は そ れだ け 困難 とな る。

つ ぎ に ヌル クセ の批 判 の延 長 と して,筆 者 の意 見 を加 え よ う。

まず ⑩ 式 の 伽 お よび ク が 負値 を とる可 能 性 に つ い て 。 翫 が 負 と な る の

く  ラ

は,バ グ ワ ッチ 自身 い うよ うに,X価 格 の 相対 的 下 落 に か か わ らず,濁 こ対 す るB国 の輸 入需 要 が 伸 びず,そ の結 果B国 がX輸 入 の代 価 と してA国 へ 引 渡 すYの 量 が減 少す る こ とを 示 す 。rmの 負 値 が σ 項 と ε項 の 合 計 値 を 上 廻 わ る大 き さを と るに は,お そ ら くXがB国 で 劣 等財 で あ る こ と を 必 要 と

し よ う。 しか し,現 実 の 先進 国 が低 開発 国 か ら劣 等 財 の み を輸 入す る とい う 想 定 は,あ ま りに も非 現 実 的 で あ る。 さ らに クが 負値 と な る こ と(経 済 成 長

の結 果 輸 入 品 の国 内 生 産 が減 少す る こ と しか も交 易 条 件 不変 の も とで)

く の

も 一 般 に は 考 え られ な い と こ ろ で あ る。

さ らに2つ の 超 越 的 批 判 が 可 能 で あ る。 ま ず,経 済 成 長 が 低 開 発 国 だ け に 起 こ っ て,先 進 国 が 停 滞 を 続 け る と い う仮 定 が 非 現 実 的 で あ る 。 事 実 は そ の 逆 で あ る 。 低 開 発 国 の 成 長 と と も に 先 進 国 の 成 長 も行 な わ れ る な らば,窮 化 成 長 は さ らに 発 生 しに く くな る 。 先 進 国 の 成 長 率 が 低 開 発 国 の そ れ を 上 廻 わ る な らば,窮 乏 化 成 長 は む し ろ先 進 国 に 発 生 しそ うで あ る 。 しか し,そ 場 合,先 進 国 の.ア や 筋 が 負 値 を と ろ う とは ほ と ん ど考 え ら れ な い で あ ろ う。 次 に,も う一 つ の 疑 問 が 浮 ん で くる。 か りに 窮 乏 化 成 長 発 生 条 件 が 成 立 した と して も,そ れ は 必 然 的 に 実 現 せ ざ る を え な い もの な の で あ ろ うか 。 窮 乏 化 成 長 は 自 国 の 経 済 成 長 に よ っ て 始 発 さ れ る も の で あ り,他 国 か ら押 し つ

(22)Bkagwati,̀̀lmmiserizingGrowth:AGeometricalNote,"ψ.ぬ,p.205.

(23)y<0と な るケー スは理論 的 には 考 え られ うる。 それ は,y財 が 資本集約 的,X 財 が労働集 約的 で,経 済成 長が 労働力増 加に よる もので あ り,さ らに完 全雇用が 仮 定 され る場 合であ る。Bhagwati,"InternationalTradeandEconomicExpan‑

sion,"op.cit.,P.952.

(13)

低 開 発 国 貿 易 の 反 省(麻 田) 一201一

け られ る もので は ない 。 自分 に 不 利 な事 態 を 自 分 に 押 しつ け る とい うこ と は,経 済 合 理 性 に反 す る。 もち ろん,窮 乏 化 成 長 に似 た事 態 が ない わ けで は ない 。 「豊 作 貧 乏 」 とい わ れ る事 態 が そ れ で あ る。 しか し,そ れ は あ くまで も一 時 的 現 象 で あ って,永 続 す る もの で は ない 。 窮 乏化 成 長 は 長期 の 問題 で あ った はず で あ る。 さ らに,一 時的 均 衡 の際 で も,生 産 者 は,生 産 物 破 棄 と い う非 常 手 段 で,自 己 防 衛 の 方 法 を 知 って い る。

か くて われ わ れ の結 論 は 明 らか で あ り,そ れ は ヌル クセ の次 の 言葉 に最 も よ く表 現 され るで あ ろ う。 「この理 論 は,理 論 的 こ けお ど しと して は疑 い も な く有 用 で あ ろ うが,経 済 的 決定 論 と して の 不 可 避 的 必 然 と受 け取 る必 要 は

 の

毫 も な い の で あ る 。 」

輸 入 需 要 不 足 論

く の

第3に,ヌ ル クセ の輸 入需 要 不 足 論 にみ られ る低 開 発 国貿 易 に 関す る悲 観 論 を取 り上 げ た い 。そ の 議論 は周 知 の とこ ろで あ るか ら,詳 説 す る必 要 は な い が,便 宜 上 そ の 大要 を述 べ る こ とか ら始 め よ う。

低 開発 国の 貿 易 が そ の 国 の経 済 発 展 に対 して もつ 意義 が,20世 紀 に 入 っ て か らは,19世 紀 に くらべ て格 段 に 低 下 した こ とを,ヌ ル クセは 強 調す る。19 世 紀 に お いて は,世 界 貿 易 は,単 に 国際 分業 利 益 の 実 現 手 段 た るに止 ま ら ず,先 進 国 の経 済 発 展 を,第1次 生 産 物 に 対す る先 進 国 の輸 入需 要 の増 大 を 媒 介 と して,低 開発 国に 伝波 させ,も って低 開発 国 に雇 用機 会 の 拡 大 と労 働

・資本 の流 入 を 促 進 させ る とい った,い わ ば 「成 長波 及 エ ン ジ ン」 で あ っ た 。 ところが20世 紀 に 入 るや(1914年 以降),貿 易 のそ の よ うな ダイ ナ ミッ

クな作 用 は な くな った 。第1表 か ら知 られ る よ うに,1928年 か ら1958年 まで の 期 間 の世 界 貿 易 の 増 加 は57%に 過 ぎな い が,IOO年 前 の増 加 率 は,そ の 約5 倍 で あ った ◎ さ らに19世 紀 と20世 紀 中期 とで は 貿 易商 品構 造 に 大 きな変 化 が

(24)'R.Nurkse,Patterns,P.58.邦 訳82頁

(25)RNurkse,弼 払,Lectures1〜2.

(14)

(第1表)世 界 貿 易 量 の 変 動 (第2表)輸 出 量 指

・85(ト ・88・1・88・‑19131192S‑‑19SS

+270% +170% +57%

1・・2SI・95511957

工 業 国 の 輸出 非工業国の輸出

1。。 ・3gl・62

・。Q・381・5・

Nurkse,Patterns,P.19.邦 訳23頁Nurkse,ihid.,P.20.邦 訳24頁

(第3表)世 界 貿 易 額 に 占 め る 非 工 業 国 の 比 率

(石 油 輸 出 国 を 含 む) 19281957

33.831.3 28.035.0

(石 油 輸 出 国 を 除 く) 1928ユ957

32.224.4 26.930.4

Nurkse,ihid・,p・21,邦訳25頁

み られ る。1914年 以前 に は第1次 生 産物 輸 出 は,工 業 品輸 出 よ りもは るか に 急速 に 増 加 した が,20世 紀 中期 で は食 料 ・原 材 料 輸 出が 製 品輸 出 に遅 れ る傾

向 が み られ る(第2表)。20世 紀 の ブt‑一一ム商 品 で あ る石 油 を 除 く な らば,こ の 傾 向は ます ます は っき りす る(第3表)。

とこ ろで,こ の よ うな世 界 貿 易 の 伸 び悩 み(特 に第1次 生 産 物 貿 易 の 伸 び 悩 み)は,貿 易 の 「成 長波 及 エ ソジ ソ」 と して の 機 能 低下 を意 味 す るぼ か り で ない 。 そ れ は,第1次 生 産 物 輸 出 に 大 き く依 存 す る低 開 発 国 に と って,そ の 増 大す る 自国 の 生産 資源 を どの よ うな産 業 部 門 に 振 りむ け るべ きか,と

う低 開 発 国 の発 展 方 向 に かか わ る重 大 問題 を提 起 す る。 そ して,こ れ に 対 す る ヌル クセの 解 答 は,低 開発 国 は輸 出 向 け工 業 化 よ りも国 内市 場 向け工 業 化 の方 向 を辿 るで あ ろ う(あ るい は 辿 るべ きだ),と い うの で あ る。

ヌル クセの 議 論 は,そ の 広 い歴 史 的 視 野,明 解 な論 旨,巧 み な統 計 利 用 に よって,学 界 の一 大 収 穫 と して高 く評 価 され た の で あ るが,筆 者 は,そ れ で も なお,安 心 して つ い て行 け ない もの を感 じた 。す なわ ち,低 開発 国 貿 易 を あ ま りに も悲 観 視 しす ぎ るの で は なか ろ うか,低 開発 国 の 国 内市 場 向 け 工 業 化 政 策 の 基礎 づ け と して充 分 で あ ろ うか,と い う疑 問 を払 拭 しえ なか った の

(15)

低 開 発 国 貿 易 の 反 省(麻 田)一 一203一

にの

で あ る 。

最 近 発 表 さ れ た ケ ア ン ク ロス の ヌ ル クセ 批 判 が 筆 者 の 同 感 を そ そ った 。 そ れ は ・ヌル ク セ と は 正 反 対 の 発 想 に 立 っ た,あ ま りに も ま と も な ヌル ク セ 批 判

で あ り,ま た,わ が 国 で は ま だ よ く紹 介 され て い な い よ うに 思 わ れ るの で ,

く り

次 に,そ の 所 論 を や や 詳 し く紹 介 し よ う。

ケ ア ソ ク ロス の 論 旨 を 要 約 して お くの が 便 利 で あ る 。 まず,か れ は ,ヌ ル ク セ を 次 の3点 で 批 判 す る 。(1)成 長 波 及 エ ン ジ ンが20世 紀 に 入 っ て 急 に 弱 ま っ た と 見 る こ と は 正 し く な い 。 ② 第1次 生 産 物 貿 易 の 伸 び が 工 業 品の そ れ に く らべ て 遅 い と い う一般 化 は 尚 早 で あ る 。(3)第1次 生 産 物 に 対 す る先 進 国 輸 入 需 要 不 足 を 説 明す る ヌ ル ク セ の 根 拠 は 薄 弱 で あ る 。 こ う論 じた 後 で,ケ

ア ン ク ロス は 自 己 の 積 極 的 構 想 を 展 開 す る 。 す なわ ち,第1次 生 産 物 貿 易 の 20世 紀 に お け る 伸 び 悩 み は,ヌ ル ク セ 流 の 輸 入 需 要 不 足 論 に よ る よ り も,供 給 構 造 の 世 界 的 変 動 と価 格 要 因 に よ っ て 説 明 せ られ る べ き で あ る と す る 。 そ

して,そ の 考 え 方 は,現 在 の 低 開 発 国 に と っ て の 貿 易 の 重 要 性 を 示 唆 す る の で あ る 。

まず,「 成 長 波 及 エ ン ジ ソ」 が 弱 ま っ た と い う見 方 に つ い て 。 ヌ ル ク セ の い う19世 紀 の 「エ ン ジ ン」 は,経 済 発 展 を ど こ か ら ど こ へ 波 及 させ た と い う の か 。 端 的 に い っ て,そ れ は 西 欧(特 に 英 国)か ら米 ・加 へ の 波 及 で あ ・) て,現 在 の 低 開 発 国 へ の 波 及 で は な か っ た 。19世 紀 に お け る西 欧 の 発 展 が ア

フ リ カ の 経 済 発 展 を 促 進 し た と は と う て い 言 え ま い 。 た し か に,19世 紀 の イ

ン ド や ア ル ゼ ン チ ン は 「エ ン ジ ン 」 の 作 用 を う け た で あ ろ う 。 し か し,20世

(26)ハ ー バ ラ ー も ま た,ヌ ル ク セ は 低 開 発 国 貿 易 の 将 来 に っ い て あ ま り に も 悲 観 的 す ぎ る の で な か ろ うか,と い う 感 想 を も ら し て い る 。G.Haberler(ed.),

EquilthriumandGrozvthintheWorldEconom2:EconomicE∬ays妙RagnarNurkse, HarvardUniv。Press,1961,pp.xi‑xii.

(27)A.KCairncross,"lnternationalTradeandEconomicDevelopment,"

Kyklos,Vo1.13,Fasc.4,1960;"lnternationalTradeandEconomicDevel‑

oPment"'Economica・Vol・28,No・3・Au9・1961・ こ の 二 論 文 は 同 じ 表 題 だ が 別 個 の 論 文 だ か ら 混 合 し な い よ う に 注 意 を 要 す る 。

(16)

紀 に お け る イ ソ ドや ア ル ゼ ソチ ソか らの 輸 出 の 伸 び の お くれ は,そ の 経 済 構 造 の 変 動(工 業 化,人 口増 加,生 活 水 準 の 変 動 等)を 論 外 と し て は 説 明 で き な い で あ ろ う。 も し,イ ン ド,ア ル ゼ ンチ ソ,ア フ リカ 諸 国 を 除 外 し,さ に 別 の 理 由 か ら石 油 産 出 国 を 例 外 とす る な らば,ヌ ル ク セ の 主 張 は ほ とん ど 無 意 味 と な っ て し ま う。19世 紀 に お い て も 「エ ン ジ ソ」 は 西 欧 と現 在 の 低 開 発 国 との 間 で は 弱 か った 。 した が っ て,19世 紀 の 英 米 間 「エ γ ジ ソ」 の 強 か った とい う事 実 か ら,現 在 の そ れ が 弱 ま っ た と主 張 す る こ とは で き な い の で

   

あ る。

つ ぎに,ヌ ル クセ の よ うに,第1次 生 産 物 貿 易 の伸 びが 工 業 品の それ よ り も遅 い と推 論 す る こ とも危 険 で あ る。 第1次 生 産 物 輸 出額 と工 業 品輸 出額 と の 比率 は,1870年 代 か ら1914年 に か け て は,ほ とん ど変 化 してい ない 。 また 第1次 生産 物 輸 出量 の 伸 び率 と工 業 品輸 出量 の 伸 び率 を 比 較 し て み れ ば,

1896年 以後 の期 間 で は,第1次 生 産 物 の方 が お くれ た けれ ど も,1914年 か ら 1937年 の期 間(特 に1929〜37年)で は,逆 に,第1次 生 産 物 の方 が工 業 品 よ りも大 き く伸 びて い る6工 業 品輸 出が 異 常 に 伸 び,第1次 生 産物 輸 出 が伸 び 悩 んだ の は,第2次 大戦 以後 の こ とで あ る 。 この よ うに,大 戦 の前 と後 とで は 正 反 対 の 傾 向 が 見 られ るので あ るか ら,い まの 段 階 で両 者 の これ か らの 消 長 に つい て 予 断す る こ とは危 険 で あ る。 また,ヌ ル クセ は,1928年 と57年 を 比 較 して,世 界 貿 易額 に お け る低 開発 国 の比 率 が石 油 産 出 国 を 除 外 した 場 合 顕 著 で あ る とい うが(第2表),石 油 産 出 国 を含 む 場 合 の33.8%か ら31.3%

へ の 低下 は,そ れ ほ ど大 きい とは い え ない 。事 実,石 油 産 出国 を除 外す べ き 理 由 も ない ので あ る。石 油 輸 出 は19世 紀 的 発 展波 及 エ ソジ ソの 作 用 を存 続 せ

しめ て い る重 要 な要 因で あ る。そ れ を 除 外 して,「 エ ンジ ソ」 の 機 能 が 低下 した と推 論 す る こ とは正 し くない 。石 油輸 出 を 除 外す る な らば,石 油 産 出国 へ の 工業 品輸 出 を も除外 す べ きで あ ろ う。 また 石 油 を例 外 とす るな らぽ,コ

(28)A.C.Cairncross.ibid.,K2klos,pp.546〜7,p.551.

(17)

.$

低 開 発 国 貿 易 の 反 省(麻 田) 一205一

一 ピ ー ・ コ コ ア ・鉱 石 等 も 除 外 さ る べ き で あ る

。 そ う す る と,ヌ ル ク セ の 考

え る低 開 発 国 とは,一 一体 どこ なの か とい うこ とに な る。く   

第3に,第1次 生 産物 輸 出の 遅 れ(輸 入需 要 不 足)の 原 因 に つい て 。 ヌル クセ は 次 の6点 をあ げ る。(i)輸 入 原 料節 約型 重工 業 の 発 展 ,(ii)先 進 国工 業 の附 加価 値 率 の 増 加,(iii)農 産 物 消費 需 要 の 低 弾 力性,(iv)先 進 国 の 農 業 保 護 政 策,(V)ス ク ラ ップ利 用 に よる原料 節 約,(vi)合 成 原 料 の 発 展 。

さて,こ の いず れ もが あ ま り説 得 的 とは い え ない 。(ii)と(iii)と は,な に も20世 紀 に 入 ってか ら急 に作 用 した もの で は ない 。 もし(v)が 近 年 に な って 強 くな った とす れ ぽ,そ れ は非 鉄 金 属 の価 格 騰貴 とい う経 済 的 理 由に よ る。(iv)に つ い て は,熱 帯 農 産物 に は 妥 当 しない ばか りで な く,工 業 品に つ いて も保 護 政 策が と られ てい る とい う理 由か ら,ヌ ル クセ 自身 も重 視 して い ない 。(i)に つ い ては こ うい え よ う。先 進 国が 重 工 業 化す る と して も,決

して 軽工 業 が 地 球 上 か ら消滅 す るわ けで は な く,単 に軽工 業 が 低 開発 国 に移 転 す る こ とを意 味 す るにす ぎ ない 。 そ れ が 原料 品の貿 易に どの よ うに影 響 す るか は,そ れ に附 随す る もろ もろの 影 響 を考 慮 す る こ と な くして は,に わ か に 推 論 しえ ない 。(vi)に つ い て 。 た しか にそ れ は第1次 生 産 物 貿 易 を 阻 害 す る。 しか し,合 成 品の発 展 が み られ た の は,高 価 な原料 ば か りで な く,戦 前 に くらべ て大 巾 に価 格 が 騰 貴 した 原 料 に お い て であ るこ とが 見 逃 が され て

は な らない 。 この こ とは(v)に つ い てい え る 。価 格 変 化 と 無 関 係 に(v) (vi)を 考 え るわ け には い か ない 。要 す るに ヌル クセ は価 格 要 因の 作 用 を 見

くお

落 と して い るの であ る。

こ う批 判 した 後 で,ケ ア ソク ロは,以 上 の 批 判 の よって 立 つ かれ 自身 の考 え方 を展 開す る。

ケ ア ン ク ロス に よれ ば,19世 紀 に おけ る第1次 生 産 物貿 易 のす ば らしい 伸 長 を 説 明す るの は,決 して,先 進 国側 の輸 入 需 要 の 増 大 で は な く,価 格 変動

(29)1bid.,」KPtklos,pp.547〜8.

(30)Ibid.,Kyklos,pp.54・8〜549,

(18)

を 含 む 供 給 構 造 の 世 界 的 変 動 で あ る。 端的 に い って,19世 紀 に お け る第1次 生産 物 の供 給 は,そ の主 要 生 産 者 た る米 ・加 が安 価 な第1次 生 産 物 を西 欧(

特 に 英 国)市 場 に 供 給 して,市 場 占拠 率 を拡 大 し,そ の反 面,西 欧 の 生 産 者 は 第1次 産 業 か ら第2次 産業 へ転 換す る とい う形 で発 展 した 。そ して,そ 転 換 過 程 に お い て,ヌ ル クセの 指 摘 す る労 働 ・資 本 の 第1次 生 産 国 へ の移 動 が行 なわ れ た ば か りで な く,第1次 生 産 国 が そ の利 益 を 資 本 蓄積 に 向 け る こ

とに よ って,そ の 後 の発 展 の 基 盤 が 養わ れ た 。 さ らに,西 欧 諸 国 の第2次 業 の拡 大 は,第1次 生 産 物 の 輸 入需 要 を 増 大せ しめ て,こ の傾 向 に拍 車 を か け た 。1850年 か ら1880年 にか けて,世 界 貿 易量 が3倍 近 くに 増 加 した事 実(

第1表)は,そ の よ うな ダイ ナ ミックな構 造 転 換 の 結 果 なの で あ る。 で は, なぜ,20世 紀 に お い て,構 造 転 換 が停 止 した の で あ ろ うか 。理 由 は 明 らか で あ る。第1次 生 産 物 と工業 品 との 交 換 とい う形 で の国 際 特 化 は 無 限 に は 続 き え ない 。工 業 国 の 第1次 生 産 活動 の 消滅 が 一つ の 限界 を 劃す 。 しか し,そ れ 以前 に お い て も,収 穫 逓 減 法 則 と人 口増 加 が 第1次 生 産 国 の 生 産 費 の 面 で の 優 位 を 弱 化 させ る。 過 度 の 特 化 に対 す る政 治 的 ・軍 事 的 ・社 会 的抵 抗 が 強 ま る(関 税 賦課)。 そ の結 果,価 格 面 で 先 進 国 を圧 倒 し うる第1次 生 産物 の範 囲 は,現 在 の 低 開 発 国 に は そ れ ほ ど多 く残 され て い ない 。 また,残 され た有 利 な第1次 生 産物 とい え ど も,た とえ ば,コ ー ヒ ー と紅 茶 の よ うに,限 られ た 西 欧 市 場 で 低開 発 国 同 志 が競 争 せ ねば な らぬ事 情 に あ る。 さ らに,低 開 発

く  ラ

国 の 工 業 化 政 策が,第1次 生産 の拡 大 を 阻 害 す る。

第1次 生 産 物貿 易 の 消 長 に は価 格 要 因が 大 き く影 響 した と考 え るべ き証 拠

くむ

が あ る 。第4表 は 第1次 生 産 物輸 出量 の動 きを 示す 。1913年 と1937年 との期 間 に,工 業 国 か らの第1次 生 産物 輸 出量 は若 干減 少 した け れ ど も,低 開発 国

(31)1屍 紘,K■ktos,pp.550〜551.

(32)第4表 に お い て は 工 業 国 の 定 義 は 与 え ら れ て い な い が,も う一 つ の 論 文 に よ れ ば,そ れ は ヨ ー ロ ノ パ,北 米,オ セ ア ニ ア 諸 国 を 意 味 す る 。A.KCairncross,

ψ.cit・,Economica,Aug.1961.P.246.

(19)

低 開 発 国 貿 易 の 反 省(麻 田)

(第4表)第1次 生 産 物 輸 出 量1899〜1957(1gl3・100)

一207一

liS991・913il92gll9371・95・119S51・957

非 工 業 諸 国

(R)7̀(◎(

100 100

113 144 ユOOI132

96 157 134

801

2 3 1 3 2 1

141 183 ユ67

163 198 185 A.K.Cairncross,̀̀InternationalTradeandEconomic

Developmen七,"、 め 物 ∫,Vo1。13,Fasc.4.1960.p.552.

か らの そ れ は57%増 加 した 。 そ の 期 間 の 輸 出 価 格 は,工 業 国 か ら の 第1次 産 物 輸 出 に つ い て10%の 騰 貴,ま た 低 開 発 国 の そ れ に つ い て は,僅 か の 下 落 が 見 られ る 。1937年 と1950年 との 間 に は,大 き な 変 動 が 見 られ る 。 工 業 国 か ち の 輸 出 が 増 加 した の に 対 して,低 開 発 国 か らの そ れ は 大 巾 に 減 少 した 。 し か も,そ の 期 間 の 輸 出 価 格 は,前 者 に つ い て は2倍,後 者 に つ い て は3倍, そ れ ぞ れ 騰 貴 して い る の で あ る 。1950年 か ら1957年 に か け て は,両 者 の 輸 出 量 は と もに50%程 度 伸 び て い る が,両 者 の 価 格 は1950年 当 時 と ほ と ん ど変 わ っ て い な い 。 だ か ら,こ うい え るで あ ろ う。1937年 に く らべ て,戦 後 に お い て は,低 開 発 国 の 第1次 生 産 物 輸 出 価 格 は 先 進 国 の 第1次 生 産 物 輸 出 価 格 に く らべ て1.5倍 の 騰 貴 を 見 せ て い る こ とを 考 え る な らば,低 開 発 国 輸 出 の 伸 び 悩 み,先 進 国 側 に お け る第1次 生 産 物 の 国 内 生 産 へ の 努 力,輸 入 原 料 の 節

(s8)

約,合 成 品 の 開 発 は,決 して 不 思 議 で は な い,と

い ま や ケ ア ン ク ロス と ヌ ル ク セ の 見 解 が 正 反 対 な こ とは 明 らか で あ る。 第 1次 生 産 物 貿 易 の 伸 び 悩 み を,ヌ ル ク セ が 先 進 国 の 需 要 構 造 の 側 面 か ら把 握 し よ う とす る の に 対 して,ケ ア ソ ク ロス は 供 給 面 か ら説 明 し よ う とす るわ け で あ る 。 しか し,す で に 述 べ た よ うに,両 者 の い ず れ が 正 しい か とい うこ と は,本 稿 の 目 的 で は な い 。 ケ ア ソ ク ロ ス を 正 し い と す る に は,な お 一 層 の 実 証 を 必 要 と し よ う。 ま た,ケ ア ン ク 冒ス 自 身,必 ず し も ヌ ル ク セ に か わ る 別 の 命 題 の 定 立 を 意 図 して い る わ け で も な い 。 ケ ア ソ ク ロス の 狙 い は,「 こ の

(33)A.C.Cairncross,Opcit・,K2klos,P・553お よ びEeonomica,P.245.

参照

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