死刑 囚の人権 と刑 の時効 につ いて
‑ 東京地裁 6 0 . 5. 3 0 決定を素材 として‑
結城洋一郎
目 次 は じめに
‑ 「 帝銀事件」をめ ぐる事実経過 二 東京地裁決定の概要
三 決定 に示 された時効不完成説の検討 むすび
は じめに
死刑の確定判決を受 けた死刑囚が,その後死刑の執行を受 けることな く 3 0 年 の長 さに亘 って拘置され続けるという事態 は,本来立法者 の予想 しなか った1 ) 異常な事態 と思われるが,いわゆる 「 帝銀事件」の犯人 とされた平葎貞通氏 に つき,この稀有な事例が発生 した。
これを契機 として,拘置された死刑囚 ( 以下,これを収監死刑囚 と呼ぶ こと にする)に対す る刑の時効の成否をめ ぐり,様々な法律問題が提起 され ること となった。その最大に して最終的な論点 は,いうまで もな く,刑法三二条 の法 意が収監死刑囚に対 して も死刑が執行 されずに満 3 0 年が経過すれば時効の完成 を認める趣旨か否かということであるが,これに付随 して,い くつかの憲法問 題が不可避的に生 じることになる
。もし,刑法三二条の法意が,収監死刑囚 に 対 し時効の進行 ・成立を認めぬ趣旨であると解すれば( 以下, このように解す る
1) 大谷賓教授 は,こうした事態 は 「いわば法律の予想 しなか った事実」であるとされ る 。参考文献表⑭論文67 頁。なお,本稿1 9 貢参照。
〔 1 〕