ヴ ォル プラム ・ヘ ンケル
「 破産債権雁定手続の対象」
河 野 憲一郎 訳
【訳者前注】
本稿 は,
Wo l f r amHe nc k e l ,De rGe ge ns t a ndde sVe r f a hr e nsz urFe s t s t e l ‑ 1 ungYo nKo nkur s f o r de r unge n, i n: Pa wl o ws ky/Wi e a c ke r( Hr s g. ) , FSf t l rKa r l Mi c ha e l i s ,1 9 7 2 , S.1 51 ‑ 1 7
2の全訳である。破産債権 は破 産手続 で行使 しなければな らないが,そのためには届 出 ・調 査 ・確定 とい う手続順序 を経な くてはな らない。破産債権の調査 において異議 が提 出されなかった ことによ りそのまま確定 される場合であれ,異議が提 出さ れた結果 として裁判所の裁判 によって確定 される場合であれ,破産債権 の確定 の 目的は (配当) に向け られている。 この点に通常の訴訟手続 とは異なる基本 的な特色がある。そ こで,確定の対象たる債権 とは,破産者 に対す る債権のこ とを意味するのか,それ とも破産手続の参加権限 としての破産債権 のことを意 味するのかが さらに問題 となる。
この間題は,わが国 (旧)破産法の母法であった ドイツ破産法上,古 くか ら 比較的詳細 に論 じられて きた。そこではエー リッヒ ・プライの提唱 した見解が 今 日まで通説の地位 を占めてお り, これによれば破産債権確定手続の対象は破 産者 に対する債権 とされて きた。 しか し, これに対 しては手続参加権限 として の破産債権 こそが確定の対象だ とする見解 も有力 となって きてお り, ここに紹 介するヘ ンケルの見解 はこうした有力説 を代表す るものである (なお
,1 9 9 8
年 に ドイツ破産法お よび和議法は,倒産法 に置 き換 わったが, ここでの問題の議 論状況 については連続性が保たれている。今 日の ドイツでの議論状況 について は,例 えばKi r c hho f / Lwo ws ki / St t l r ne r / Sc huhmac he r ,Mt i nc he ne rKo mme n‑
〔 2 9
1〕t a rz url ns o l ve nz o r dnungBd. 2 . , 2 0 0 7 , S. 1 3 6 9f f . 【 Rdnr . 7
】を参照)。目を転 じてわが国の議論状況 について見てみると, この間題は必ず しも十分 には論 じられてはこなかった。すなわち学説は,旧法下で も破産債権確定訴訟 の性質論 との関連で (訴訟物〉の問題 についてわずかに触れた ものがあるにと どま り, しか も,通説は訴訟物が 《債権≫であるとは述べてはいる ものの (さ しあた り,拙稿 「破産債権確定手続の基本構造」商学討究
6 0
巻2・3
合併号1 7 7
頁参照),それ以上 に踏み込んで詳細 を論 じている論者はほ とん どいなかった。ヽ ヽ ヽ
ヽヽこうした中でおそ らく最 も詳細 な検討 を加 えているのは
1 9 3 8
年 に出された小野 木常 「破産債権の確定」同 『破産理論の研究』 (弘文堂)2 3 4
頁以下 (特 に,2 81
貢以下)であるが,同書は上記 プライの見解 にしたがっている。そ こでは当然 の ことなが ら,同書の刊行後 に主張 された ドイツの有力説は紹介 ・検討 されて はいない。 しか し,破産手続が く配当〉 に向け られた手続であることに着 目す るな らば, ドイツの有力説の説 くところはきわめて示唆 に富 む もの とも思われ る。 ドイツの有力説 とその解釈学的帰結 について,なお仔細 に検討する必要が あ りは しないだろうか。た しか にわが国破産法は平成
1 6
年改正 によ り装いを新たに し,破産債権査定 決定手続の導入に見 られるように,債権確定手続のあ り方 に も大 きな変更が加 えられた。 したがって,た しか に ドイツ法 との間の相違 はます ます大 きくな り つつあるともいえよう。 しか し, この ような外形上の相違 にかかわ らず,わが 国の破産債権確定手続は旧法の修正であ り,その基本において手続構造 に根本 的な変更があるわけではない。ドイツ法の理解 に一石 を投 じたヘ ンケル理論は, 今 日のわが国において もなお検討 に値するもの と思われる。翻訳 にあたって御快諾 をいただいたヘ ンケル教授お よび仲介の労 を執 ってい ただいたボ ン大学ゲルハル ト・ヴァ‑グナ一教授 に心 よ り感謝 申し上げる。
Me i nDa nkg i1 tHe r r nPr o f e s s o rD r .Wo l f r amHe nc k e lf t l rdi ef r e undl i c he
Ge ne hmi gung, s e i ne nTe xti ns J a pa ni s chet l be r s e t z e nz udt l r f e n. Ft l rdi e
ヴオルフラム ・ヘ ンケル 「破産債権確定手続の対象
」 293 Ve r mi t t l unga nHe r r nPr o f e s s o rD r . Z Ie nc k e lm6 cht ei chmi chbe iHe r r nPr o ‑ f e s s o rD r .Ge h a r dWa gne rbe da nke n.
* * *
i I
ドイ ツ破 産 法 (以 下
「 KO
」 とす る。)1 38
条 以 下 (訳注1)の調 査 手 続 お よびKO1 46
条 (訳注2)に よる 「通 常 の手 続」, す な わ ち管 轄権 を有 す る各 受 訴 裁 判 所 での通 常 訴 訟手続 にお け る破 産債権 の確 定 は,破 産手続 とい う 〔手続 〕構 造 において は,手 続参加 のた めの届 出人 の権 限 を解 明す る とい う 目的 に奉 仕 す る。 参加権 限 は,二 つ の観点 にお い て意味 を持 つ。 す なわち,一方 で債権 者‑ の財 団 の配 当 に とっての意味 で あ り,他 方 で債権 者 自己管理 に参加 す る こ とに とっ て の意味 であ る。た しか に届 出の な された債権 で争 い のあ る もの は, そ れが有名義 の ものであ る場 合 又 は債権 者 が確 定訴 訟 を提 起 し もし くは破 産 開始前 に係属 してい た手続
(訳注
1)KO1 3 8
条以下 には,いわゆる破 産債権の届 州 ・調査 ・確 定に関す る諸規 定が置かれている。表題 は 「債務財団( Sc hul de nma s s e )
」 となっている。(訳注
2)KO
第1 4 6
条 【確定訴訟】 ① 争いのある債権の債権者 は,異議者 に対 してその確定 を求めることがで きる。裁判所 はこのために債権者 に認証ある債権 表の抄本 を交付 しなければな らない。② 確定については通常の手続 により訴えを提起 しなければな らない。訴 えは 破産手続が係属す る区裁判所の管轄に属 し,訴えの 目的物が区裁判所の管轄 に属
しないときは,破産裁判所の区域 を管轄する地方裁判所の専属管轄 とする。
③ 破産手続開始の当時,債権 につ き訴訟が係属す るときは,その確定は訴訟 の受継 によってこれを行 なう。
⑥ 確定は届州叉は調査期 日に表示 した原因及び債権額についてのみすること がで きる。
⑤ 第 1項,第
3
項及び第4
項の規定は,確定すべ き債権が特別裁判所,行政 官庁叉は行政裁判所の管轄に属す る場合にこれを準用する。⑥ 執行文の付 された債務名義,終局判決叉は執行命令 を有す る債権に対する 異議は,異議者 よ りこれ をしなければな らない。
⑦ 勝訴の当事者は,債権表を更正 させなければな らない。
を受継 した とい うこ とを証 明 した場合 には,配当 に際 して考慮 され る (
KO1 5 2
秦 (訳注3
))
。 しか しこの こ とは,第‑ にはその ような債権 が配 当表 に記載 され る とい うことしか意味 しない。債権者 は 自己の債権 が確 定 された場 合,叉 は少 な くとも執行名義が存 在 し, これ に対 して異議者 が訴訟 で対抗 しない場 合 にはじめて支払 い を受 け取 る
( KO1 68
条1
号 (訳注4) )
。届 出債権 の順位 は,確 定 された優 先権 を基準 とす る。優 先権 につ き争 いがあ るな らば,債権者が優 先権 の確 定 を破 産の 中で行 なった とい うことを証 明すれ ば, た しか に配 当表 にお いて ほ承認 され る
( KO1 5 2
条)。 しか し,優 先権 をめ ぐる訴訟が債権者 の有利 に判 断 されない限 りは,優 先権 あ る債権 に もとづ いて 支払 いはな され えない( KO1 6 8
条1
号)1)
。債権 の確 定 は, さ らに議 決権 に とって意味があ る。確 定 された債権 の債権者 のみが,疑 う余地 の ない議 決権 者 であ る
( KO9 5
条1
項1
文 (訳注5))
。争 いの あ る債権 の債権者 の議決権 は,異議者 による同意叉 は破 産裁判所 の裁判 によっ て,暫定 的 に規律 され る( KO9 5
条1
項2‑4
文 (訳注6))
。(訳注
3) KO
第1 5 2
条 【除斥期間】 未確定の債権及び執行文の付 された債務名義, 終局判決叉は執行命令のない債権の債権者は,公告後2
週間の除斥期間内に管財 人に対 して確定訴訟の提起の有無及び額叉は従前係属 した訴訟手続の受継の有無 を証明 しなければならない。証明が適時になされないときは,債権は実施される べ き配当に掛酌されない。(訳注
4)KO
第1 6 8
条 【留保部分】 次に掲げる配当部分は,これを留保する。1
調査の 際,申し立てられた異議により訴訟 となった債権2‑4
〔略〕1)債権者は,優先権のみが確定されない場合に,単純破産債権者 として帰属 してい る配当の支払いを受けるか どうかという問題については,下記
1 6 7
頁 〔本稿308頁〕以下 を見よ。
(訳注
5)KO
第9 5
条 【議決権】 ① 確定 した破産債権は,議決権に参加する権限 を有する。争いのある債権については,調査の際にこれに議決権 を与えるべ きこ との可否及びいかなる金額につ きこれを与えるかについて当事者 と協議する。協 議が調わないときは,破産裁判所がこれを裁判する。裁判所 は,当事者 よりさら に申立てのあるときは,その裁判 を変更することがで きる。②および③ 〔略〕
(訳注
6)
(訳注5
)参照。ヴオルフラム ・ヘ ンケル 「破産債権確定手続の対象
」 295
Ⅰ.
1
.
債権確 定手続 で は,最終 的 に参加権 限が争 われて い る とい うこ とは, こ れ 自体 が手続 の対 象 で なけれ ば な らない とい うこ とを, もち ろん必 然 的 には意 味 しない。 それ はむ しろ,参加 権 限の要件 に関連 した確 定 の法律 上 の効 果 か もしれ ない。 それ ゆ え, われ われ は まず 第一 に この要件 か ら出発 す る。 そ れ は 3 つ の範晴 に分 け られ る
2)
。 す なわ ち‑a)届 出債権 が存 在 しな けれ ばな らない。 この こ とは,届 出債権 が,届 出 に お いて特 定 され た債権 者 に帰属 し,債 務者 に対 して向 け られ てい る とい うこ と を含 んで い る。
b)
届 出債権 は,破 産手続 にお いて追求可 能 で なけれ ばな らない。 したが っ て, そ れ はKO 3
条1
項 (訳注7)
の意味 で の財 産上 の請 求権 に数 え られ なけれ ば な らず ,既 に破 産 開始 の時点 で現存 して い なけれ ばな らず ,破 産手続 か ら排 除 され る債権( KO 3
条2
項, 5条2
項,63条 (訳注8
))
又 は財 団債権( KO57
2
) これについては,J a h rZZP 7 9,377
参照。(訳注 7
)KO第 3
条 【破産債権者】 ① 破産財団は,手続開始の当時に発生 して いた破産者に対す る財産上の請求権 を有する人的債権者 (破産債権者)の集団的 満足 に奉仕す る。②
BGB
第13 51
条,同第1360
条,同第1361
条,同第157 8
条乃至第15 83
条,同 第15 86
条,同第16
01条乃至同第161 5
条,同第17 0 8
条乃至同第17
14
条の規定により 破産者 に対 して生ず る扶養請求権並 びにBGB
第171 5
条及び同第171 6
条の規定に よ り生ず る請求権 は,破産者が義務者の相続人として責任 を負 う場合 に限 り,将 来のためにこれを主張す ることがで きる。(訳注
8) KO第 3
条2
項 については, (訳注 7) を参照。KO第 5
条 【外国債権者】 ① 〔略〕② 連邦参議院の同意 に基いて,帝国宰相の命令により外国国家,その国民及 びその権利承継人に対 して報復権
( Ve r g e l t u ng s r e c h t )
を定めることがで きる。同第63条 【除外債権】 次 に掲げる債権は,破産手続 においてこれを主張 す ることがで きない。
1
手続開始後の利息2
手続に参加 したため各債権者に生 じた費用3
罰金,過料,秩序金及び強制金並 びに金銭の支払いを義務付けるよう な可罰行為又 は秩序違反の付加的制裁4
破産者の生前又は死後の処分によって生 じた債権条 ‑
59
条 (訳注
9))
に属 して ほな らず,債権 者 が破 産手 続 にお け るその主張 を 放棄 していてはな らない。C)参加権 限 は, さ らにその範 囲 に よれ ば,債権 につ いて破 産上 の優 先権 が 存 在す るか,お よび どの よ うな順位で これが認 め られ るか に依存 してい る。
2.
確 定手続 の対 象の特 定 に とって決定 的なの は, これ ら3
つの範晴 が どの ような関係 を持 ってい るか であ る。a)破 産手続 では,債権 の存 在それ 自体 の独 自の確 定 (
Ila)
に とっての 余地 はない。破 産 にお ける債権 の追求可能性 (I 1b)が破 産管財 人又 は債権 者 によって争 われ,確 定訴訟 において否定 され るな らば3)
,債権 それ 自体 は存 在す るか もしれ ない として も,届 出債権者 の確 定訴訟 は棄却 されなけれ ばな ら ない。破 産 にお ける債権 の追求可能性 を否定 しなが ら, 同時 に債権 それ 自体 は 存 在す る ことの確 定 をす る ことは,破 産手続 に とって無 意味 であろ う。 なぜ な ら,それ は破 産参加権 限 を解 明す る とい う破 産手続 の 目的 に有益 た りえないで あ ろ うか らであ る。た しか に債権 の存 在 自体 の確 定 は,破 産者 に対 す る債務名義 としての意味 を 持 つか も しれ ない
( KO1 64
条2
項 (訳注10))。 なぜ な ら,破 産終結 後 の破 産者(訳注
9) KO第57
条 【優先的満足】 財団費用及び財団債務は,他の権利に優先 し て,破産財団よりこれを支払 うものとする。同第5
8
条 【財団費用】 次に掲げるものは財団費用 とする01
共同の手続のために要する裁判上の費用2
財団の管理,換価及び配当に関する費用3
破産者及びその家族に給与する扶助料同第
5 9
条 【財団債務】 次に掲げるものは財団債務 とする。1
破産管財人の法律行為又は法的行為により生 じた請求権2
破産財団のために履行すべ きことを請求 した双務契約より生 じた請求権 叉は手続開始後の時期において履行すべ き双務契約より生 じた請求権3
〔略〕4
財団の不当利得により生 じた請求権3
)この間題が確定訴訟の中で解決されなければならないということおよび例えば破 産裁判所の事前審査( vor pr t i f ung)
の対象た りえないということをフリー ドリヒ ・ ヴェ‑バー( J aeger
‑Weber§1 41Ann.3. )は正当にも強調 している。
(訳注1
0)KO第1 6 4
条 【満足 を受けなかった破産債権者 ;執行名義 としての債権者 表の抄本】 ① 破産手続終結後は,弁済を受けない破産債権者はその債権 を債ヴオルフラム ・ヘ ンケル 「破産債権確定手続の対象
」
297 に対 す る債権 の貫徹 に とって は,債権 が破 産 にお いて追 求可 能 な もので あ るか ど うか は, もはや 問題 とは な らな いか らで あ る。 しか し, KO1 6 4
条2
項 の事 後 効( Fol ge wi r kung)
は, 第一 次 的 には破 産手 続 に向 け られて い るKO1 3 8
条 以 下 の調 査 ・確 定手 続 とい う形 態 に とって は決 定 的 た りえ ない。 KO1 6 4
条2
項 は,利 用 で きる限 りにお いて,破 産手続 の結果 を破 産終結 後 の破 産者 に対 す る権 利 追 求 の ため に利用 してい るにす ぎないので あ る。 その結果 ,破 産外 での 破 産者 に対 す る権 利 追求が容易 化 され るで あ ろ うこ とを理 由 に,破 産 にお いて 追 求 しえない債権 の存 在 を独 自に確 定 す る こ とへ の届 出債権 者 の利益 が ,保護 に値 す る とみ な され うる わ けで は ない。 む しろKO1 6 4
条2
項 は,確 定 が債権 表 に記載 され うる と きには じめ て,債 権 の確 定 を破 産者 に対 す る債 務名 義 と し て作 用 させ るにす ぎないだ ろ う。 しか し,債権 表 は単 に破 産‑ の参加 につ いて の情報 を与 えるべ き もの にす ぎず,債権 の存 在 につ いて の情 報提 供 で は ない。そ れ ゆ え,債権 の存 在 も,破 産 にお け るそ の追求可 能性 も (なお) 争 いが ない と きに限 り, あ る債権 は
KO1 45
条2
項 (訳注11)ぉ よぴ1 6 4
条2
項 の意味 にお い て確 定が な され るにす ぎない4)
。務者に対 して無限に主張することがで きる。
② 債権が確定 し,かつ破産者が調査期 日に債権 を明 らかに争わなかった とき は,債権者 は債務者 に対 して,債権表の記載 に基づ き
ZPO
第7
24
条乃至第7 9 3
条 を準用 して強制執行 をす ることがで きる。③ 執行文17j与の訴え及び債権 自体 に関する異議 を主張する訴 え又 は債権表の 記載によ り執行 をなすに必要 にしてかつ執行文付与の時証明 した と認め られる事 実の到来若 しくは発生 した と認め られる権利の承継 を争 う訴 えは,本法第
1 4 6
条2
項 に掲 げた裁判所がこれを管轄する。* * *
わが旧破産法 も,破産者か ら異議 を述べ られた債権者が破産手続終了後に破産 者 に対 して迅速に強制執行がで きるように配慮 した規定を置いていたが (旧法
2 4 0
条2
項,同2 4 4
条2
項),免責手続 との関連でこうした諸規定 を削除 した。なお,ドイツ倒産法 も部分的にではあるが,免責制度 を採用 している
( I ns O2 8 6
条以下) が,この こととの関連での破産者の取 り扱いについては,なお検討 を要する。(訳注
1 1 )KO
第1 4 5
条 【債権表への記載】 ① 〔略〕② 債権表の記載は,確定 した債権についてはその額及び優先権について破産 債権者の全員に対 し,確定判決 と同一の効力 を有する。
4)J a e ge r ‑ We be r § 1 6 4Ann. 3 .
異議のある破産者 との訴訟 については,債権 の存在 に争い を限定す ることが 望 ま しい。破 産者 の異議権 は,単 に
KO1 6 4
条の事後効 を顧慮 して認 め られて い るにす ぎない。破 産者の異議 は債権表‑ の記載 の確定 を妨 げず,債権者が破 産手続‑参加 す ることを阻止す ることはで きない。破産者 は,管理か ら排 除 さ れているので,債権者の破産参加 の調査 と確定 に影響 を与 えることが許 されな い。それゆえ,当該債権が破産手続 においては追求不能であ るとい うことだけ を理 由 とした破産者 の異議 は重要ではない5)0b)債権 の存在 と同様 に,破産 にお けるその追求可能性 は,独 自に, KO1 38
条以下の手続で確定 されえない。 けだ し,債権 それ 自体が存 在 しなければ, こ の確定は無意味 になるであろ うか らである。た しか に,異議者が債権それ 自体 を攻撃 しないのであれば,確定訴訟 における争いは,債権 の追求可能性 に限定 される。 しか し,他 の債権者が異議 を述べ なかったのであれば,債権 それ 自体 は確定 に熟す る。その追求可能性が積極 的に確定 されることによって,債権が 存 在 し,破産の中で追求で きる とい うことが,最終的に確定 される。多数の関係 人が異議 を述べた場合 に も,紛糾 は生 じえない。 この うちの一人 が債権 の存在のみ を争い,他 の者が破 産 における追求可能性 のみ を争い,かつ 異議が別個の手続で処理 されるのであれば,届 出者 に有利 な裁判 は,そのつ ど 債権が存 在 し,それ 自体追求可能であ るとの確定 を含む。他 の確定訴訟が係属 している限 り, この確定は当事者 間でのみ効力 を有す るにす ぎない。 けだ し, 全 ての異議が克服 されて は じめて,届 出人の有利 に
KO1 47
条 (訳注12)
の既判 力が確定的に生ず るか らである (訳注13)0
5)J a e ge r ‑ We be r § 1 4 4Ann. 3 .
(訳注
1 2 )KO 第 1 47
条 【既判力の範囲】 判決により,債権が確定 し叉は異議が理 由あ りと言い渡されたときは,その判決は破産債権者の全員に対 してその効力を 有する。訴訟が個々の債権者に対 してのみなされたときは,その債権者は,破産 財団が判決により利益を得る限度で,破産財団より訴訟費用の償還を請求することができる。
(訳注
1 3 )KO1 47
条の解釈 として,通説は,届出債権者の勝訴判決の効力は拡張さ れず,敗訴判決の効力のみが拡張されるとしてきた (この点については,五十部
ヴオルフラム ・ヘ ンケル 「破産債権確定手続の対象
」 299
C)
KO1 3 8
条以 下 の調査 ・確 定手続 にお い て,債権 の独 自の確 定 も,破 産 手続 にお ける追求可 能性 の確 定 も意味 を有 しないのであれば, この手続 は,存 在 し,かつ破 産 にお いて追求可 能 な もの としての債権 の確 定 のみ を,その対象 とす るこ とがで きるのであ る。届 出債権者 の権利保護 の要求 を手がか りに手続 の対象 を定式化す るな らば,破 産 にお いて追求可 能 な債権 が一定の名 目額 で存 在す る との権 利主張 と して定義 しなければな らない6)
。債権 の存 在 と破 産 にお け る追求可能性 に関 しては,一緒 に判 断が な され な くて はな らない。したが って,届 け出 られた債権 は,‑ 破 産者 の異議 の余地 を度外視 すれば
‑ 債権 の存 在 も,破 産手続 にお けるその追求可 能性 も争 われてい ない場合 に は じめて,裁判外 で確 定 された もの と して記載 され る。異議 が提 出 されれば, 届 け出た者 の訴 えは,債権 が存 在 し,かつ破 産手続 にお いて追求可 能 と確 定 さ れては じめて認容 され うる。
関係 人が債権 の存 在のみ を,叉 は破 産 にお ける追求可 能性 のみ を争 った場合
ち,訴訟物 は統一的であ る。一部否認 は,債権 の追求可 能性 叉 は存 在 に とって 重要 な事実が争 われていない とい うこ とを意味 してい るにす ぎない。 それゆえ 受 訴裁判所 は,債権 の存 在 だけが争 われ る場合 には,当該債権 が,争 いのない 事実 陳述 のみ に よれ ば,当該破 産手続 の中で追求可能であ るか どうか を も審査
豊久 「破産債権の確定と共同訴訟」兼子博士還暦記念 『裁判法の諸問題 〔下
〕
』(有 斐閣,19 7 0
年)42 2
頁注 7)参照)。そこか ら ドイツの通説は,複数異議者のいる 場合の債権確定訴訟は,訴訟上の原因による必要的共同訴訟 (類似必要的共同訴 訟に対応)であるとする。現行倒産法の下で もこの点は変わ らない。 これに関し て,Ros e 7 1 b e r g /Sc hwab /Go t t wal d,Zi vi l pr o z e s s r e c ht ,1 7 .Au
f1 . ,2 01 0 ,S. 2 4 6
は, 次の ように言 う。「しか し,請求棄却判決の既判力のみが第三者に及び,認容判 決の既判力は及ばない事例 もある。複数異議債権者に対する債権者表のための債 権の確定 を求める倒産債権者の訴えの場合( I ns O1 7 9
条,183
条1
項)がその よ うな事例である。なぜなら,請求の棄却は全債権者のために作用するが,異議者 に対 して認容 された訴 えはその異議 を除去す るにす ぎないか らである」, と。Sc hi l k e
7l ,Zi vi l pr o z e s s r e c ht , 5 .Au
f1 . , 2 0 0 6 ,S. 3 7 0も同旨
.6)J ahr ( ZZP79 , 38 2)が提案 しているように,‑
立法論上‑ 債権の存在の確 定と破産における追求可能性の確定について別々の管轄 を承認するのであれば,紘 一的な訴訟物は分裂するであろう。しな くてはな らない。追求可能性だけが争 われているのであれば,債権 それ 自 体が首尾一貫 して
( s chl t i s s i g)理 由づ け られ るか どうかが,審査 されな くて
はな らない。争いのない陳述 によ り法的根拠か らは債権が存在 しないのだ とい う結論 に至 る場合 には,ある債権が破産において追求可能であるとの確定がな されることはあ りえない。これに対 して,調査手続の関係人 と確定手続の当事者 は,ある債権 を成立 し た とみ なすか否か についての処分権 限を もつはずだ とい う抗弁 はな され えな い。 これ らの者はそのような処分 にとって適切 なパー トナーではなかろう。破 産管財人 と異議権 を有する債権者は,破産において追求で きない と争 っている ある債権が確定 されるとい うことに保護 に値する利益 を有 してはいない。けだ し,財団はその ような債権 によって減縮 されないか らである。 したがって,破 産管財人お よび異議権 を有する債権者の利益 は, これ らの者が破産 によって追 求で きない とみなす債権 とは無関係であるので, この者たちには債権の成立 に ついての処分権限 も欠けている。その ような処分が許容 されるな らば, もっぱ ら異議 を唱えていない破産者の負担 となって しまお う。 しか し, このことは破 産 において追求可能 と証明 された債権 のみが, KO164条2項 によって破産者 に対 して作用するとい うことを見落 としているに違いない。
請求が棄却 される場合は,債権 は破産において追求可能な もの としては存在 しない とい うことが確定 される。訴訟 において,債権が存在するか どうかの争 いだけでな くて,破産において追求可能であるか どうか も争いがあるな らば, 不存在 と追求不能は,裁判所が選択す ることので きる選択的な請求棄却事由で ある。選択的な請求棄却事由の一方が確定 されるや否や,事件は裁判 に熟す る。
もう一方の棄却事由が さらに審査 されてはな らない。具体的な棄却事由は,‑ 選択的棄却事 由の場合 に常 にそ うであるように
7)
‑ 既判力を生 じない。債権 がそ もそ も成立 していないか,破産手続の中で追求不能であるがゆえに,それ が破産において追求可能な もの として存在 しない とい うことのみが,既判力 を7)He nc ke l . Pr o z e L S r e c htundMa t e r i e l l e sRe c ht . S.1 5 0f f .
ヴオルフラム ・ヘンケル 「破産債権確定手続の対象
」
301 もって確定 される。これ と異なるのは,最終 口頭弁論終結時点の事実状態お よび紛争状態 によれ ばただ一つ棄却事由だけが考えられるにす ぎず, したが って,例 えば破産にお ける追求可能性 にとって重要である事実だけが争 われている場合である。提 出 された証拠 にもとづいて,裁判所が,例 えば債権が破産開始後 に成立 したので, それは破産において追求不能であるとい う結論 に達 した場合 には, この具体的 棄却事由は既判力 を生 じる
8)。
ある異議権者が,破産における債権 の追求可能性だけを争い,かつ この異議 に対 して向け られた届出債権者の確定訴訟が棄却 された場合 には,債権 の存在 のみを争 う別な異議 に対 しての訴えは不適法である。けだ し,届出債権 は,そ れが破産債権 に属 さないので,破産において追求可能な もの としては存在 しな い とい うことが,既判力 をもって確定 されているか らである。こうした確定は,
KO1 47
条 によって,全 ての異議権者 の有利 に作用す る。 これ らの者の誰一人として債権の不存在 も独 自に確定 されることへの保護 に値す る利益 をもたない し,届出債権者 もまた追求不能 と判断 された債権が破産手続 に関連する訴訟に おいて独 自に存在す ると確 定 され るとい うことを期待 し得 ないので, K
O1 47
条の既判力はさらなる異議 に対 してのあ らゆる訴 えを排除す る。許容 されるのは,破産者 に対する訴 えのみである。 この場合 も,破産者の異 議 を争 うことには奉仕 しない。 けだ し,破産債権者の異議は,債権が破産管財 人叉は破産債権者の異議の奏功 を理由 として債権表 に確定 されない場合 には, 無意義 となるか らである。 しか し,債権者 には,破産者 に対 して給付 を訴求す る可能性が残 るに違いない。けだ し,破産における債権の追求可能性のみが否 定 され,叉は債権それ 自体が存在 しないことの確定が選択的な請求棄却事由と して既判力を生 じないのであれば,債権者 は破産者の 自由財産を要求す ること を妨げ られるはずはないか らである
9)
。8)He nc ke l ,a aO. , S.1 5 8 .
9)J a ege r ‑ Webe r § 1 4 7Anm. 3も同様であるが,そこでは具体的な請求棄却事由が
d)債権の存在の主張 と破産 におけるそれの追求可能性が統一的な訴訟物 を な しているのであれば,優先権 を有す るもの として届け出 られた債権の場合 に も同様の ことが妥当するのは当然である。 けだ し,優先権 は破産における追求 可能性の特殊な態様 を意味 しているにす ぎないか らである。 しか し, このよう な問題が もっぱ ら回答 され うるとして も, さらに付加的な観点が検討 されな く てはな らない。すなわち,優先権 を有する債権者 は,責任法上は優先権 をもっ ている。破産上の優先権 と関連 した問題の解答 を準備す るために,そこか らい か なる手続的な帰結 を引 き出すか とい うことが, まず第一 に他 の優 先的責任
( vor zugs ha f t ung)の事例 を手がか りに検討 されな くてほな らないであろう
。Ⅲ.
1.届 出債権者の確定の訴えが棄却 されることによって,破産において追求 可能な債権 は存在 しない とい うことが既判力 をもって確定 された場合であって ち,選択的な棄却事 由が問題 となっているため,債権それ 自体が存在 しないこ との確定 も, もう一つの,債権が破産 において追求可能でないことの確定 も既 判力 に包含 されない とすれば, このことは付従的な担保権 にとっての広範な帰 結 をもた らす。すなわち,その ような権利か ら満足 を受 けるつ もりの権利者 に 対 して,被担保債権が認め られず,それゆえこの者は担保権 をも持 ち得 ない と の異議 を唱えることはで きない。けだ し,債権それ 自体が存在するか どうか と い う問題 は,選択的な棄却事 由が存在 した場合 には, KO1
46
条の確定訴訟で の判断によっては先決 されないか らである。担保権 はまた被担保債権が破産に おいて追求可能であるとい うことを前提 とするものではないか ら,破産 におい強調されている。しかし,最終口頭弁論の終結時点の紛争状態によれば選択的棄却 事由が顧慮 されなかった場合にはじめて,このことは妥当しうる。異なるのは
BOhl e‑ St ams chr ader 9 § 1 47Ann.1 ; BGHWM 1 958,696f . ;KuhnWM 1 959,1 05
で,これらは届州債権者の確定訴訟が棄却されることによって常に債権が既判力をもって否定され,これが債権者を破産者に対しても拘束するということを承認 して いる。
ヴオルフラム ・ヘンケル 「破産債権確定手続の対象
」 30 3
て追求可能な債権が存在 しない とい うことの確認 は,担保権 にとっては前提問 題ではない。
しか し,被担保債権が破産においての追求可能性 を欠 くとい うのは,比較的 稀有な事例である。たいていそのような債権の場合 にはその存在のみが争われ てお り,破産における追求可能性 まで もが争われているわけではない。そ うだ とするといったい選択的な請求棄却事 由は存在 しない。 この事例 においては, 届 出債権者の確定訴訟は,届出債権が存在 しない場合 にのみ棄却 され うる。そ の ように判断がなされるな らば,債権 それ 自体が既判力 をもって否定 される。
しか し,そのことは債権が付従的な担保権 の基礎 として役立つ限 りはこうした 確定が拘束力 を持つ とい うことまで も意味するわけではない。その ような拘束 は,む しろ関係人の保護 に値す る利益 を顧慮 させ ないことになって しまうので はないか。
物的 に担保 された債権 を債権表 に届 け出た債権者 は, ここでは この ことに よって別除的満足 に際 して不足 を生 じた金額 についての配当をめ ぐって争 う。
ある債権者が,保証 によって担保 された債権 を届 け出るな らば, この者 は債権 の うちの保証人によって満足 を要求で きない部分 についての配当へ の利益 を追 求 している。 したが って債権の確定に対する債権者の利益 は,多かれ少 なかれ 減縮 される。いずれにせ よ,それは本質的に十分 な付従的担保か らの満足 に対 す る利益 よ りも乏 しい。それゆえ,考 えうる不足額 を獲得 しえたか もしれない わずかな配当額の喪失 とともに非常 に多 くの価値ある付従的な担保 をも失 うと されることが,債権者 に課せ られてはな らない。破産外で一般 に承認 される債 権 を否定する判決の既判力 を物的担保 をめ ぐる争いに拡張す ることは,そこで は債権の経済的価値 と担保の経済的価値が同一 とみなされるとい うだけの理由 で妥当である。 この ことは,た しかに関係人の観念に必ず しも一致するもので はないか もしれない。たいていは担保 を債権 よ りもよ り価値が高い とみなすで あろう。 しか しこうした観念は,付従的な権利が破産において保障 している優 先的な責任 に基づいている。債務者が支払能力 を有する限 りにおいて, この者 に対する債権が担保 よ りも僅少 な価値 しか持たないわけではない。 しか し,既
判力の基準 としての経済的価値 の評価 にとっては,破産状態 にない債務者 は支 払能力 を有す る とい うことか ら出発 されな くてはな らない。 けだ し,そ うでな ければこの者の債権者が破産開始の申立てをす るはずだか らである。
債権 の経済的価値が既判力の限界の決定 に とっての決定的な基準 であ るとい うことは
1 0)
, まず 第一 に,債権 が争 われてい る限 りにおいては じめて,当事 者 たちが裁判の既判力 に拘束 されるとい うことを示 している。一部金額 のみ を 訴求す る者 は,残額 については拘束 されない。 この ことは,既判力 は当事者 に とっては矛盾す るあ らゆる事実 の判断 を排 除す るが,事実の陳述 は また訴訟結 果 についての当事者 の責任領域 にある とい うことに もとづいている。当事者が この責任 に向け られ る緊張度は, もとよ り何が当事者 に とって訴訟で争 われて い るか に依拠 してい る。当事者が訴訟 において債権 を対象 としない限 りは,そ れ を失 うこともあ り得 ない。経済的価値 とい う基準が既判力の限界 にとって重要である とい うことが もっ と明確 に判明す るのは,前訴の請求 とは質的に異 なる内容 を持つ請求 に対す る 当事者の拘束が問題 となってい る場合 である。 ここでの関心 のある状況 は,そ の ような事例が問題 である。破 産債権者の債権 は,破産財団 に対 して,その数 量 的金額 の支払 い以上 の ものではない
11)
。 それはむ しろ清算財 団であ り,磨 則 と してそ の管 財 人 の運 用 活動 に よって成 長 しない責任 を負 った特 別財 産( Ha f t ungs s onde r ve r m6ge n)か らの持 ち分 に応 じた満足 に向け られてい る
。全 ての債権者の満足 に十分 ではな く,かつ運用活動 によって十分 な金額 にされ
1 0 )これについて詳細は,He nc ke l , Pr o z e L S r e c htundMa t e r i e l l e sRe c ht , S.1 71f f
.を 見よ。ll)破産者の債権が破産者に対 して存在 し続けているということは,本文において選 択された定式に矛盾 しない。けだし,このことは債権者が財団から完全な額の支払 いを要求しうるであろうということを意味しないか らである。責任 を負った財産と の関係で債権をみるならば,破産の開始によって分裂が生 じる。一方で,財団が責 任を負っているのだが,それは通例,債権を完全にはカヴァ‑せず,かつそれとの 関連において支払請求権が存在せず,債権者は責任の実現のための特別な手続を指 示される。他方で,破産者はそのほかの財産,特に新得財産によって責任を負 う。
その限 りでは責任は無制限である。
ヴオルフラム ・ヘンケル 「破産債権確定手続の対象
」
305 ることはないため,責任持 ち分 は法律上限定 される。破産開始前 に存在する無 制限の支払請求権か ら,財団 との関係では,責任 を負 った特別財産の限定 され た換価金への参加 を求める権利 になる。手続法上 は, もはや給付訴訟によって 債権の支払いが戦い とられ うるのではな く,債権が破産 において追求可能な も の として存在するとい うことの確認が得 られな くてほな らないが, このことは その後 に責任財団か ら得 られるべ き配当へ の参加 のための要件である。しか し, 債権が付従的な担保権の基礎である限 りにおいて,それは破産 とは何 ら関係 し ない。担保権 は,債権の中に表象 された利益の満足のために,破産開始後 も無 制限に存在する。責任対象は,‑ 物的担保の場合‑ 相変 わ らず債権者 に帰 属 したままである。担保権の基礎 としての債権の経済的価値 は, したが って破 産 によって減縮 されることはな く,その結果,破産債権の経済的価値 と担保の 基礎 としての債権 の間に少 なか らざる差が生 じる。 この差が, KO146条 に も とづいた手続 において行われた債権が もはや存在 しない とい うことの確認の既 判力 を,担保権 をめ ぐる争いに拡張す ることを禁 じる。2.
異議が提 出されなか ったか らであれ,提 出された異議が訴訟で一掃 され たか らであれ,破産債権が確定 されると,破産において追求可能な債権が確定 された額 において存在するとい うことが,既判力 をもって確定する。 しか し, そ こか ら債権者の債権が,別除権の基礎 として も,疑 う余地 な く確定 した とい う帰結は引 き出されてほな らない。けだ し, ここで もまた経済的価値が異なる か らである。ここでは債権 と抵 当権
( Hypo t he k)
の関係 についての承認 された基本的な 原理 についての矛盾が解消 されるように見える。 もし債務者が債権全額の給付 を命 じられているのであれば,その者 は,一般 に認め られた理解 によれば,責 任 を負 った担保物の所有者 として,物権的な訴 え( di l l gl i c heKl a ge )
に対 して 債権が存在 しない との異議 を出す ことはで きない。 しか し, この原則は破産の 外 で しか妥当 しない。 けだ し,給付判決 における債権 の確認 は, KO138条以 下 による調査 ・確定手続 における債権 の確定 とは異なった意味を持つか らであ る。給付判決は,債務者が支払 わなければな らない金額 を特定する。債権者が当該債権 を理由 として担保 として責任 を負 った債務者の対象物か ら満足 を受け ようとす る場合 にも債務者 は給付判決 において命 じられた債権の確定に拘束 さ れるとい うことは,付加的な経済的負担 を意味 してほいない。けだ し,確定 さ れた債権額 を債務者 はいずれにせ よ完全 に調達 しな くてほな らないか らであ る。担保責任
( Pf a ndha f t ung )
は支払能力のあ る債務者の債権者 に債権以上 の もの,む しろ特別な もっぱ らこの者 に割 り当て られた責任対象を示 している0これに対 して,債権確定手続 においては,確定 された債権額 は債権者が財団か ら受け取 るべ き額 を示 しているわけではない。む しろ確定 された債権 は,債権 者が責任財団の分配 に際 して取得する割合の決定のための計算単位であるにす ぎない。それゆえ債権は,単純破産債権 として,それが基礎 においている物的 担保 よ りもわずかの経済的価値 を有 しているにす ぎない。
破産参加のために確定 された債権が別除権の基礎 として主張 される場合 に, 経済的価値の同一性が欠如 しているため当該債権が疑問の余地な く確定 しては いない とい うことは, この領域 において生 じる紛争の適切 な解決に資す るであ ろう。債権者が別除権 を援用す ることな しに債権 を無制限に届け出, このこと が破産管財人に もその他の債権者 にも表明されていないな らば, これ らの者は おそ らく債権 を争 う利益 を もたないであろう。 このことは単純破産債権 に関 し て配当が期待 されてほな らないか,配当が債権 をめ ぐる争いに催 しないほどわ ずかにしか不足 しないであろう場合 には,常 に当てはまる可能性がある。届出 債権者が後 になってか ら別除権 を主張 し, これによって財団か ら単純破産債権 の価値 をはるかに超過する価値 を引 き出そ うと試みる場合 に,関係人が十分な 経済的利益が欠けているために債権の存在を争 っていなかった とすれば,既判 力ある確定には拘束 されえない。 とりわけ優先的債権者の うちで,財団がいま や この者 にとってす ら十分ではない場合 には,その弁済が別除権の主張 によっ て もしか した ら危険に陥る可能性のある者 は,別除権 を打破するために,疑わ しい債権 に対 して異議 を述べ ようとす るだろうが, これに対 して, この者の優 先的責任 に抵触 しないか ら,債権確定手続 において単純破産債権 を争 うことに はほとん ど関心がなかったであろう。
ヴオルフラム ・ヘ ンケル 「破産債権確定手続の対象
」
307 しか しまた,調査 ・確 定手続 において得 た債権 の確 定 に対 す る拘 束 は,届 出 債権者が は じめか ら別除権 を援 用す る場合 に も問題 とはな らない。 た しか にそ の場合 には関係 人は,‑ 債権 者が別 除権 の実現 では不足 し,又 は事後 的 にこ れ を放棄 してい る限 りは‑ 債権者が配当 を要求 してい るだ けではな く,債権 に もとづ いて別除的満足 とい う方法 で債権 者 に責任法上示 された対 象の優 先 的 責任 を実現 しうる とい うこ とを知 ってい る。しか し,債権確 定手続 において は, 別 除権 が争 われてい るので はない。 ここで は,優 先 的責任 の処理 に よ り財 団から達成 されなければな らない配 当の分 配 に とっての基礎 のみが問題 であ る。確 定 を別除権 の主張 のため に も拘 束力 のあ る もの とみ なす のであれば,既 に調査 手続 において別除権 が存 在す るか どうか について明瞭性 を得 てい る ことが破 産 管財 人 とその他 の債権者 には要 求 され るのではなか ろ うか。 けだ し,債権確 定 紛争 に対 す るこれ らの者 の利益 は, この ことに依存 してい るか らであ る。別除 権 が存 在 した とすれ ば, これ らの者 は異議 を唱 えな くて ほな らないであ ろ う。
別 除権 が存 在 しなか った とすれ ば, これ らの者 はいずれ にせ よ単純債権 が何 ら 配 当 を期待 で きない ときには,異議 の主張 を とどめ るであろ う。 この種 の考慮 に よって債権 確定手続 の関係 人 に負担 を諜 すべ きではない。 それは この手続 の 目的 とは何 らかか わ りはない し,関係 人が手続 の この段 階で過大 な要求 をな さ れた ことになろ う。 これ に加 えて,別 除権 者 の存 在 を調査す ることは,異議権 を有 す る債権 者 の問題 で は な く,破 産 管財 人お よび債権 者 委員 会
( KO1 33
条2 号 ( 訳注 14
))
の問題 であ る12)
。(訳注14)
KO 第 1 3 3
条 【債権者委員会の許可】 管財人は,債権者委員会を置いた 場合において,次に掲げる行為 をなすにはその許可を受けな くてはならない。1 〔略〕
2
破産者の法律行為の履行を請求 し,訴訟を係属させ,その受継 を拒絶 し,和解又は仲裁契約 を締結 し,取戻梧,別除権又は財団債権を承認 し,質物 を受戻 し又は債権が譲渡 されるべ き場合で,かつ3 0 0
マルク を超える価値物が問題 となっている場合12)確定が別除権の主張に関 して も拘束するか どうか という問題は,訴額の決定に関 して も意味を持つ。 これを肯定するのであれば,確定訴訟における訴額は ZPO 6 条によって定め られ, KO148条によるのではない。 このことはいずれにせ よ争わ
Ⅳ.
既判力 にとって重要 な経済的価値の差 は,単純破産債権 と優先権 のあ る破産 債権 の関係 において も生 じる。
判例 ・通説 は今 日,ある債権 を単純破産債権 として確定す ることによって, 債権 の存 在 は疑 問の余地 のない もの とな る とい うこ とを承認 してい る。後 に なって優 先権 が届 け出 られた場合 には,それゆえなお優先権 に限っては争 うこ とがで きるが,債権 がそ もそ も存在す るか どうか については もほや争 うことは で きない, とい う。 こう した理解 は, 〔しか し〕落 ち着 きの悪 い帰結 に至 る。
届 出債権が単純破産債権だ として排 除 され叉はわずかな配当 しか与 え られない 場合 には届 出債権 に対 してほ とん ど利害関係 を もちえない ような関係人が,倭 先権 の事後的届 出の場合 には,債権が優先権 のあ る債権 として他 の債権者のた め に残 された財団を著 しく侵害す る場合であって も,届 出債権 に対す るわずか な利害関係 しかない との動機でなされた処分がなお拘束力 を持つべ きだ とい う ことをその後 もその まま維持 されな くてほな らないのであろ うか。単純破産債 権 のわずかな経済的価値 をめ ぐるこの争いは,本質的な価値 のある優先 的債権
をめ ぐる争いの前提 となるのであろ うか。
反対 に, 自らにとっては取 るに足 りない配当 しか影響 を受 けないため,単純 破 産債権 と しての債権 をめ ぐる争 い をほ とん ど熱心 に追行 しなか った債権者 は,単純破産債権 としての債権 のいいかげんな行使が,事後 になって発見 され た優先権 に もとづいてその債権 が示 している高い経済的価値 を もこの者か ら奪
れている
( J a ege r ‑ Webe r § 1 4 8Ann,2
およびBGHNJW 1 9 6 4 ,1 2 29 = KTS1 96 4
,1 7 0
参照)。しかし,ZPO 6
条の適用に反対 し,KO1 4 8
条の適用に賛成する議論は, さらに本文で述べておいた。例えばBGH ( a aO. )は,届出債権者が破産配当を超
える利益をもつかどうかおよびこの利益が具体的事件においてどの程度の高さなの かは確定の争いの中で審査されるべ きではないということを強調 している。* * *
KO
第1 4 8
条 【訴額】 債権の当否叉は優先権に関する訴訟の 目的の価額につい ては,受訴裁判所が破産配当財団と総債務との関係を掛酌 して,自由な裁量により これを定める。ヴオルフラム ・ヘ ンケル 「破産債権確定手続の対象
」 30 9
い取 った とい う帰結 に直面 してい る とはた して考 えるだ ろ うか。この よ うに不利益 扱 いの な され る債権者 に対 して,通説 はおそ ら く, この者 は優 先権 を気 にか け るべ きであ り,それゆえ後 になってか ら優 先権 が発 見 され た場合 に生 じる不利益 に値 す る, とい うことを持 ち出 して反論す るか もしれな い。 しか し,債権者 に法 の不知 の危 険が課 されて はな らない。破 産手続 におい て も通用 され るべ き
( KO7 2
条 (訳注1 5) ) zpo1 39
条 (訳注16)に よれ ば,裁判所 は,届 出 をな した者 に対 して考 え られ る優 先権 を指摘 し,それ を要 求す るか ど うか を釈 明 しな くて は な らない13)
。裁 判所 が この任 務 を果 たす の であ れ ば, た しか に優 先権 が後 になって届 け出 られ る事例 は稀有 になるであろ う。しか し, それが全 く排 除 され るわけではない。 む しろ裁判所 もまた優 先権 を見過 ご したとい うまさに不 当な事例 は残 る。 自らの法 の不知 の責任 を負 わせ られ るべ きで ない債権 者 が, もっ とも保護 に値 す る場 合,す なわち優 先権 がほ とん ど認識で きなか った ことか ら裁判所か らも看過 された場合 に, したが って通説 によればこ れにあたることになるのだろうか。
ここで挙 げ られた事後 的 に優 先権 の届 出が な された場合 の単純破 産債権 の確 定 また は否定へ の拘 束 に反対す る観点 を ドイツ大審 院 (以下
「 RG
」 とす る。) は1 4)
既 に認識 してお り,判 決理 由 と して援 用 した。 もちろ んRG
が こ う した 理 由付 けに よって得 た結論 は,承認 されてはな らない。す なわちRG
は事後 的 な優 先権 の届 出 を直裁 に排 斥 しようと した。正 当 に も変更 されてい るこの判例 の詳細 な点 に, ここで は立 ち入 る必要 は もはや ない15)
0RG
が最終 的 に優 先 権 の事後 的な届 出を許容 した とき, しか しこの実 際上重要 な放棄 された判 断の 観 点が考慮 され ない ままであ った。債権者 が事後 的 に優 先権 を届 け出るこ とに( 訳注 1 5 )KO 第
72条【 ZPO
の適用】 ZPO
の諸規定は,本法に別段の定めのない 限 りにおいて,破産手続に準用される。( 訳注 1 6 )
裁判所の釈明義務に関する規定である。1 3 )J ege r ‑ Webe r § 1 3 9Ann. 4 ,§ 1 4 0Ann. 2 . 1 4) RGZ 1 4 3 , 3 5 5( 3 5 9
f.).1 5 )Er ns tJ a ege r( KO, 6. und7 .Auf 1 . , § 1 3 9Ann. l l ,Ko nk.Tr e uH.1 9 3 6 , 81 )
は,こ れについて必要な事柄 を述べていた。よって著 しく大 きな取 り分 を財 団か ら獲得 しようとす る場合 に,調査 ・確定手 続 の関係 人には優先権 な しに届 け出た債権 の確定へ の拘束が課 され えない とい う観点が 同 じく残 されてい る。 この ことを事後的な優先権 の届 出を直裁 に排斥 しようとす ることで阻止す るとい うのは誤 った措置であ る。 この ことを認識す ることによっては,やは り問題 は解決 されない。
エル ンス ト・イェ‑ ガ‑ (
Er ns tJaege r )
は, この間題 は実際上何 の役割 も 果 た さないため,無視 してか まわない との見解 であ った16)
。事後 的な優 先権 の届 出が ないか,又 は調査 ・確 定手続 の関係人が考 えうる事後的優 先権 の届 出 を顧慮 して単純破産債権 を既 に積極 的 に争 ったはずであ り,その ような優先権 が は じめか ら届 け出 られている場合 にのみ, この ことは正 しいのではないだろ うか。両者 はまた優 先権が明々白々であ り,全ての人によって認識 され るであ ろ うことを前提 としている。 しか し, この ことは残念なが ら当ては まらない。けだ し,ある優先権 が存在す るか どうか とい う問題 は,常 に問題 となるか らで あ る
17) 0
事後 になって債権 のため に優 先権が届 け出 られた場合 に関係人が届 け出 られ た単純破 産債権 の積極 的又 は消極 的確 定 に拘束 されるか とい う問題 の回答 は, 別除権 の主張 を顧慮 して債権確 定へ拘 束 されることに反対 して主張 された同 じ 観点 に還元 されな くてほな らない。 この還元 は,破産法上の優先権 と別除的満 足 が一定の範囲で互換可能 な,いずれ にせ よ近 しい法形象であるとい うことか ら既 に正 当化可能である。破産優先権 と別除権 は,同 じや り方でその所持者 に 優 先的満足 を作 り出 してい る。両者 は責任法の特 別な形態である。本質的相違 は,優先権 を与 え られた債権 に関 しては全体財団叉は特別財 団が責任 を負い,
1 6 )この見解は, RG ( RGZ1 4 9 , 2 5 7 , 2 6 9)によって引用されている,残念なが らも
はや入手できないイェ‑ガ‑の鑑定意見の中にあるにす ぎない。裁判の中での再録 は非常に乏 しいため,いかなる観点がイェ‑ガ‑をこの見解へ と規定したのかは, もはや再構成されえない。1 7 )例えば, SGDt i s s e l do r fKTS1 9 6 8 ,1 21 ;OLGBr e me nKTS1 9 6 9 ,1 0 2 ;OLGCe l l e KTS1 9 6 9 ,1 0 3 ;BAGBe t r i eb1 9 6 9 ,1 2 5 2;OLGKa r l s r uheMDR1 9 6 9, 1 5 2
.滞納処分に関する租税優先権をめぐる争いをも参照。すなわち