一 は じ め に 二
仲 裁 人 と 仲 裁 鑑 定 人 三
プ ロ イ セ ン 最 上 級 裁 判 所
( 以 上
、 二 八 巻 一 号 一 頁
) 四
ラ イ ヒ 高 等 商 事 裁 判 所
( 以 上
、 二 八 巻 二 号 九 一 五 頁
) 五
ラ イ ヒ 裁 判 所
( 以 上
、 本 号
) 六
自 由 仲 裁 七
ま と め
五 ラ イ ヒ 裁 判 所 鯉 ライ ヒ裁 判所 の判 例 ヴィ ンタ ー説 の引 用す るラ イヒ 裁判 所の 判例 はい ずれ も保 険契 約法 の領 域の 事件 であ
先に ライ ヒ高 等商 事裁 判所 の 判 例 で確 認し た のと 同 様の 傾向 が ここ でも み られ る
(修 道 二八 巻 二号 九三 九 頁)
。 現 在の 議論 で は、 こ れ らの 事件 は 権利 確認
(狭 義) 型の ケー スに 位置 づけ られ る。 そし て判 旨の 特徴 とし て、 仲裁 人と 仲裁 鑑定 人の 区別
、そ れか ら生 ずる 法律
( 1
り)
、
─ ─
(
)
─ ─ 1
ド イ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成 ( 三 )
豊 田 博
昭
一
〇
〇
〇 四 九 六
効 果の 違い につ いて もは や論 じな くな るこ とが 指摘 でき る。
「arbitrator
」( シー ズマ ン、 仲 裁鑑 定人
)は
、当 然 に承 認さ れ た 制度 と して 判 例上 扱 われ てい る。 しか し同 時 に、arbitrator
の 判断 は
、訴 訟に お いて
、ロ ーマ 法源 で あるDig.17,2,75 –
80 お よびDig.38,1,30
の原 則( 公 平性 の判 断と 取消 しの 可能 性) の 適用 によ って 審査 され 排斥 され る。 その 限り で、 ライ ヒ 高 等商 事裁 判所 の判 例を 変更 させ たと みら れる
【7
】一 八七 九年 判決 の考 え方 が継 承さ れて いく
(修 道二 八巻 二号 九二 一 頁 以下
、九 四〇 頁)
。 判例 年代 順に
、各 判旨 を個 別的 に検 討し てみ るこ とに する
。
⑴
【
】 ラ イ ヒ裁 判所 一 八八 二年 三 月九 日判 決
(RGZ6,S.190ff.
) 保 険会 社 の火 災保 険 約款 中に 定 めら れた 損 害査 定 10 条 項に 基づ く査 定に 対し
、保 険契 約者 がそ れを 不服 とし て訴 訟を 提起 した 事案 であ る。 薬き ょう やコ ルク セン の製 造業 者 X は
、 機械 室の 備 品を 含む 自 らの 動産 につ き
、 被告
・ Y保 険 会社 の火 災保 険 に加 入し た
( 一八 七九 年 一月
)。 Y社 の保 険 約 款に よる と、 動産 の損 害は
、二 名の 専門 家の 査定
、必 要が あれ ば審 判人 の特 別な 査定 によ って
、双 方当 事者 に対 して 拘 束 力を もっ て、 出訴 の途 を排 除し たう えで
(unterAusschlußdesRechtsweges
)認 定す る旨 の定 めが あっ た( 九条
、一 一 条 四文
)。 X の製 造工 場で 火災 が発 生し
(一 八八
〇年 五月 一二 日)
、X は生 じた 損害 とし て三 万八 八八 四ラ イヒ マル クの 保 険 金を 請求
、鑑 定人 によ る損 害査 定が 実施 され たが
、両 者の 交渉 は決 裂し た、 そこ でX は第 一審 に保 険金 請求 訴訟 を提 起 し た。 Yの 告訴 によ って Xに 対す る放 火罪 の嫌 疑に よる 捜査 が開 始さ てい たが
、右 訴訟 の係 属中 は中 止さ れた
。第 一審 は、 X の請 求の 一部
(一 万九 三五 一ラ イヒ マル ク等
)を 認容 する 判決 を下 した
、Y の控 訴は 棄却
、Y は上 告し た。 判旨 の論 点 は 複数 にわ たる が、 以下 の検 討は 損害 査定 につ いて の判 旨部 分に 限定 する
。
(
ⅰ) 判 旨に よる と、 審判 人の 査定 に関 して
、普 通契 約約 款七 条の 原則 によ って 探知 すべ き損 害は
、九 条お よび 一一 条 に より
、二 人の 鑑定 人に よる
、そ して 必要 があ ると きは 審判 人に よる 特別 な評 価に よっ て、 出訴 の途 を排 除し たう えで
、
─ ─
<
論 説
>
修 道 法 学 三 六 巻 二 号
(
)
─ ─ 2
九 九 九 四 九 五
双 方当 事者 に対 し拘 束力 をも って
、認 定さ れる ので あり
、本 件で は実 際に その 査定 が行 われ た、 した がっ てX は、 少な く と も審 判人 の算 定額 七二
〇〇 ライ ヒマ ルク の損 害金 を受 け入 れる 義務 を自 ら負 って いた
、し かし それ に反 し、 Y自 ら審 判 人 の査 定を 承認 せず
、ま たX も、 査定 人は 査定 に当 たり
、火 災時 ない し検 証期 日に おけ る機 械の 減価 価格 を鑑 定の 基礎 に お き、 しか もそ の後 の価 格の 減価 につ いて はY が責 任を 負う べき こと を斟 酌し てい ない 点で
、誤 った 事実 上の 要件 を前 提 に して いる とし て、 右査 定に 不服 を申 し立 てた
。控 訴審 は、 Xの 右申 立て は理 由が ある と認 定し てい る。
(
ⅱ) ラ イ ヒ裁 判所 はこ の よう に判 示し た うえ で、
「選 任さ れた 専門 家 は、 仲 裁人 で はな く、 シ ー ズマ ン
(arbitrator
) と み な さ れ な け れ ば な ら な い
」 と す る
。 そ し て 本 件 の よ う に、 契 約 者 が
「契 約 の 履 行 に 関 し て、 価 額 の 調 査 を 評 価 人
(Schätzer
) の 裁量 に委 ねて いる 場合
」は
、「l.30pr.Dig.deoper i slib.38,1
によ ると
、疑 わし いと きは
、契 約者 は、 専門 家 の 鑑定 は法 およ び公 平に 従っ て行 われ たも ので ある
」と いう 前提 での み、 右「 鑑定 人の 鑑定 に服 する 意思 であ る」 と考 え な け れば なら な い。 し たが っ て、
「 損 害を 被っ た当 事 者が
、 鑑定 は 恣意 的な 行為 で ある
、 明ら か に不 当で あ る、 ま たは 高 度 に 不公 平 であ るこ と を証 明で き ると きは
」、 その シ ーズ マン の 判断 を 排除 する た めに
「 裁判 官 に救 済 を求 める こ とは 適 法
」 であ る
。 判旨 はこ こで
、 ラ イヒ 高等 商事 裁 判所 の前 掲
【5
】 七 一年 判決
(ROHGBd.3S.74ff.
修 道二 八巻 二号 九一 六 頁 以 下)
、 お よび
【 9】 七 二年 二月 二 三日 判決
(ROHGBd.4S.S.421ff.,428.
修 道二 八 巻二 号九 二八 頁以 下) を 引用 す る。
(ⅲ
) そし て
、「Arbitrium
が誤 った 事実 上の 要 件を 前提 にし てい る 場合
」 も同 じこ と がい える とす る。 つま り、 鑑 定人 が 契 約 によ って
、 債 務者 の履 行遅 滞 が加 わっ たと き はそ の拡 張に よっ て
、「 鑑 定 人に 対し 引か れ た物 的な
(sachliche
) 限 界 線 をこ え た場 合」 で ある
。 法律 効果 の点 で はも っと 厳格 な原 則に 従っ て判 断さ れる 和解
(Kompromiß
)( 仲 裁判 断) で さ え も、 そ の理 由で 取り 消さ れる の であ るか ら( そ のよ うに 考え る こと がで きる
)。l.32§§15.18.19.l.46Dig.derecept.4,8.
こ
─ ─
ドイ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 三
)( 豊 田
)
(
)
─ ─ 3
九九 八 四 九 四
の よう に判 示し て、 ライ ヒ裁 判所 はY の原 判決 批判 の論 旨は 正当 でな いと する
。 ヴィ ンタ ー説 の指 摘す るよ う
右 八二 年は
、普 通保 険契 約約 款( 火災 保険 契約
)上 の評 価人 およ び審 判人 の損 害額 の 査 定条 項に 関し て
、端 的に そ れを シ ーズ マ ンで ある と法 的性 質決 定を して いる
。あ わせ てロ ー マ法 源(l.30pr.Dig.deoper i s
lib.38,1
)を 引 用す る。 それ によ ると
、( 当 事者 の意 思が
)疑 わ しい とき は、 契 約者 は、 法お よび 公平 に従 った 鑑定 にの み 服 する 意思 であ る、 した がっ て、 損害 を受 けた とす る当 事者 は、 出訴 の途 は排 除さ れる 旨定 めら れて いる とき であ って も、 鑑 定が それ に反 する こと を主 張立 証し て、 裁判 所に 訴え を提 起す るこ とが でき ると して いる
。 右判 旨が 引用 する ライ ヒ高 等商 事裁 判所 の判 例は
、ヒ ョウ 災保 険の 保険 約款 中の 損害 査定 条項
(【 5
】判 例)
、お よび 海 難 救 助契 約中 の 海難 救助 料の 確 定合 意条 項
(【 9
】 判 例) の 法的 性 質が それ ぞれ 問 題に なっ た 事案 であ る。
①前 者は
、 損 害 査定 を行 う鑑 定人 は仲 裁鑑 定人 であ ると 解し て、 その 法的 性質 を、 条件 を定 めた 合意 とみ てい る。 そし てプ ロイ セン 法 の 適用 事件 にお いて
、仲 裁人 との 違い を分 析し たう えで
、無 効抗 告を 容れ て仲 裁人 と解 した 原判 決を 無効 と判 示し てい る。
② これ に対 して 後者 は、 ブレ ーメ ン法 が適 用さ れた 事案 であ り、 専門 家と 審判 人に よる 海難 救助 料の 確定 を仲 裁合 意と 解 し てい る。 しか し同 法の もと では
、仲 裁判 断に よっ て侵 害さ れた とす る当 事者 は、 普通 法と は異 なり
、第 二審 に不 服申 立 て をす るこ とが でき る。 判旨 は、 右判 示に いた る前 提部 分に おい て、 普通 法ま たは ブレ ーメ ン法 が適 用さ れる 場合 に、 仲 裁 人あ るい は仲 裁鑑 定人 の選 任に よっ てど のよ うな 違い が生 ずる かを 検討 して いる
。同 事件 の解 決と して は、 いわ ゆる 傍 論 部分 かと 思わ れる が、 普通 法に よれ ば評 価人 また は仲 裁鑑 定人 によ る仲 裁鑑 定( 善き 人の 裁断
)も
、一 般的 に拘 束力 を 有 する
、 しか しロ ーマ 法源
(l.30pr.Dig.deoper i slib.38,1
)に より
、 高度 に不 公平 な善 き人 の判 断が なさ れた とき は、 侵 害 され た当 事者 は裁 判所 に訴 訟を 行う こと がで きる と解 して いる
。
( 2
に)
、
─ ─
<
論 説
>
修 道 法 学 三 六 巻 二 号
(
)
─ ─ 4
九 九 七 四 九 三
ライ ヒ裁 判所 が 本件 で これ ら二 件 のラ イヒ 高 等商 事裁 判 所の 判例 を 引用 し た主 旨を 考 える と、 第一 に、
【5
】判 例に 従っ て、 火 災保 険 約款 上の 損 害査 定条 項 をシ ーズ マ ンな いし 仲 裁鑑 定の 合意 と 解す るこ と
、 第二 に、
【9
】 判 例の 右傍 論 部分 に従 って
、仲 裁鑑 定は
、出 訴の 途を 排除 する 条項 があ ると きも
、ロ ーマ 法源 によ って
、高 度に 不公 平な 仲裁 鑑定 に対 して は、 通常 裁判 所に 訴訟 を提 起す るこ とが でき ると する
、ラ イヒ 高等 商事 裁判 所の 判例 法理 に従 う意 図で あっ たと 解す るこ とが でき よう
。し かし そう だと すれ ば、 先例 とし て引 用す べき 判例 は、 むし ろラ イヒ 高等 商事 裁判 所の
【7
】一 八七 九年 六月 判決 の方 がよ り適 切で はな かっ たろ うか
。七 九年 判決 は、 本件 と同 じ火 災保 険上 の損 害額 の査 定合 意を 仲裁 鑑定 と解 し、 しか も仲 裁判 断( 仲裁 を「 和解
」と 性質 決定
)の 取消 しと の対 比で
、仲 裁鑑 定が 誤っ た事 実上 の要 件に 基づ いて いる 場合 に訴 訟の 可能 性を 肯定 して いる 点で も共 通性 が 認め られ るか らで ある
。
⑵
【
】 ライ ヒ 裁判 所一 八八 三年 一〇 月一 一日 判決
(RGZ10,S.130ff.
) 事 案の 内 容は 判例 集か らは 明ら かで ない
。(
ⅰ
) 11 判 旨に よる と、 保険 証書 の定 めに つい て、 保険 契約 の当 事者 の明 確な 意思 によ ると
、普 通保 険約 款第 九条 にあ げら れた 鑑 定 人 の査 定
(Abschätzung
) が、 中 立か つ専 門 知識 を有 する 者の 裁 量の 結果 であ ると は いえ ず、 明 らか に 高度 に誤 った
、 か つ不 当な 価額 の確 定で ある とき も、 その 査定 は当 事者 の法 律関 係に 基準 にな ると いう 趣旨 に解 する べき かと いう 問題 つ い て、 控訴 裁判 所は そ れを 否定 した
。 ラ イヒ 裁判 所は
、 こ の判 断を 正 当と する
。(
ⅱ) ラ イヒ 裁 判所 によ ると
、 ロ ーマ 法 源
(l.79Dig.prosocio17,2
) は
、 原則 とし て、 特定 の法 律関 係に 関し て、
「重 要な 要素 の確 定 につ き、 専 門知 識を もっ た シ ーズ マン の確 定を 基準 にし よう する 者」 に、
「確 定が 重大 な侵 害(manifestainiquitas
)を 含む とき
」、 すな わち
、「
(法 律 の 意味 で) 当該 契約 者を 侵害 する 悪意 の確 定が なさ れた とき
」だ けで なく
、シ ーズ マン の確 定の
「結 論は
、明 らか には っ き りと
、適 正な 評価 原則 を適 用し たと きに 得ら れる 結果 とは 客観 的に 乖離 して おり
、そ のよ うな シー ズマ ンの 確定 基準 を
─ ─
ドイ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 三
)( 豊 田
)
(
)
─ ─ 5
九九 六 四 九 二
適 用す ると
、当 事者 の法 律関 係の 規制 はま った く事 実に 反し 不公 平な もの にな るよ うな とき
」も
、そ の確 定に は服 さず に、
「裁 判官 に事 件を 提示 する 権限 を認 めて いる
」。
(ⅲ
)ま た、 ロー マ法 源(l.76Dig.prosocio17,2
)に よ ると
、「 事前 に無 条 件 で シー ズマ ンの 確 定に 服す る こと は禁 止さ れ ない
」 が、
「そ の意 思 が明 確な も のと 認め る」 には
、 特に
「説 得力 のあ る 理 由
」 がな けれ ば なら ない
。「 保険 の 目的 物の 損 害額 は、 定め られ た方 法 で選 任さ れ た専 門家 の 評価 によ り、 当事 者に 対 して 拘束 力を もっ て、 出訴 の途 を排 除し て確 定さ れる
」と 保険 証書 に定 めら れて いる だけ では
、そ の理 由に 当た らな い。
「相 互の 誠実 さを 基礎 にお く保 険契 約関 係」 では
、「 契 約者 は、 出訴 の途 を排 除す ると の合 意に よっ て、 法律 関係 の通 常の 手続 のみ を 命じ てい る
」 ので あ り、
「 明 らか に事 実 に反 する 鑑 定人 の評 価 を無 条件 で 固定 的 に通 用 さ せる 意思 は ない
」 と 考 えな けれ ばな らな い。
(
ⅳ) ロ ーマ 法源 の原 則(l .79Dig.prosocio17,2
お よび
、l .137§2Dig.deV.O.45,1
)に よ ると
、法 律 の規 定だ け を考 慮 す る限 り、 専門 知識 をも った シー ズマ ンが 明ら かに 不公 平な 確定 をし た場 合、 不服 のあ る当 事者 から 請求 を受 けた 裁判 官 は
、 そ の確 定を 基 準に しな い と判 断し て、
「別 の シー ズマ ン の選 任を 命 ずる
」 のみ な らず
、 裁判 を する 際に 必 要な 場合 に は
「専 門家 を審 尋」 して 専門 知識 を介 して
「事 実上 の評 価」 を自 ら行 うこ とが でき る。 この 種の 保険 約款 で、 裁判 官の 権 限 を前 者に 限定 する とい う意 思は 考え られ ない
。判 旨は
、控 訴裁 判所 はそ のよ うな 正し い原 則に 立っ てい る、 と結 論づ け て いる
。 本件 判旨 は、 保険 契約 の損 害査 定条 項に つい て、 前掲
【
】八 二年 判決 と同 旨の 考え 方に 立っ てい る。
①判 旨は
、こ れ 10 を シー ズマ ンの 確定 と解 した 理由 につ いて は、 特に 論じ てい ない
。そ こか ら、 ロー マ法 源に よっ て、 契約 当事 者は 無条 件
─ ─
<
論 説
>
修 道 法 学 三 六 巻 二 号
(
)
─ ─ 6
九 九 五 四 九 一
で シー ズマ ンの 確定 に服 する こと はで きる が、 その
「確 定が 重大 な侵 害」 にな る場 合は
、裁 判所 に不 服申 立て がで きる と す る
。「 重 大 な侵 害」 の 具 体的 事例 とし て、 判旨 は、 悪 意 の確 定と
、 評価 原 則の 誤っ た適 用 によ り、 事 実 に反 した 法律 関 係 の 規制 をあ げて いる
。 す でに ライ ヒ高 等 商事 裁判 所の 七九 年 判決
(【 7】 判 例) が
、 ま た七 二年 判決
(【 9】
) も 傍論 部 分 でそ の具 体化 をし てい る
本 件判 旨は さら に「 悪意 の」 確定 をこ れら に加 えた もの とい えよ う。
②つ ぎに 本件 判旨 の 特 徴 とい える が、
「保 険契 約 関係 の相 互 の誠 実さ
」 を 根拠 にし て、 出訴 の途 の排 除 条項 は
「通 常 の手 続」 を 示 した もの で あ り、 その 種の 条項 があ ると して も、 事実 に反 する 鑑定 人の 評価 を無 条件 に通 用さ せる とい う当 事者 の意 思は 直ち に認 め ら れな いと 指摘 する
。本 判決 から 三年 後の 一八 八六 年、 改訂 普通 保険 約款 にお いて 出訴 の途 の排 除条 項は 削除 され るこ と に なる ので ある
判旨 はロ ーマ 法源 に加 えて
、さ ら に保 険契 約に おけ る「 相互 の誠 実さ
」を 指摘 して いる 点は 興味 深い とこ ろで ある
。そ こに は保 険契 約者 を保 護す る考 え方 がう かが え
③ また 判旨 は、 裁判 所の 事後 的な 審判 方法 とし て、 別の シー ズマ ンを 選任 する か、 専門 家を 審尋 して 自ら の事 実認 定に 基づ いて 判決 する とい う二 つの 選択 肢を 指摘 する とと もに
、保 険契 約約 款に おい て裁 判官 の権 限を 前者 に限 定す るこ とは あり えな いと して
、裁 判官 自身 によ る判 決の 途を 指摘 する
。
⑶
【
】 ラ イ ヒ裁 判所 一八 八 四年 一〇 月 三日 判決
(SeuffArch40,S.161
) 火 災 保険 会社 Y 社は
、 火災 の 発生 後に
、 保 12 険 契約 者X との 間で
、損 害額 は二 名の 専門 家に より
、必 要な 場合 には
、審 判人 によ り認 定し
、当 事者 に対 して 無条 件の 拘 束 力を 有し て基 準に なり
、か つ、 査定 結果 に対 して はあ らゆ る抗 弁を すべ て排 除す る旨 の合 意を した
。審 判人 が損 害額 を 七 五四 八ラ イヒ マル クと 査定
、こ れに 対し Xが 裁判 所に 一万 二〇
〇ラ イヒ マル クを 請求 する 訴え を提 起し たと いう 事案 で あ る。
( 3
が)
、
( 4
が)
、
( 5
る)
。
─ ─
ドイ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 三
)( 豊 田
)
(
)
─ ─ 7
九九 四 四 九
〇
(
ⅰ) ラ イヒ 裁判 所は
、当 事者 が法 律関 係に とっ て重 要な 点に つい ての 認定 を第 三者 の確 定に 委ね る旨 の契 約は
、第 三 者 が
「 自由 な随 意
(Willk
ü r
)」 に よっ て確 定し
、 当事 者が その 判断 を承 認す ると の条 件を 含む こと がで きる こと
、 他方
、 普 通 法に よる と
、( 当 事 者の 意思 が) 疑わ しい と きは
、 そ の種 の合 意は
、 当 事者 は 第三 者の 公 平な 裁量 だけ に 依拠 する 意 思で あり
、「 判断 は明 ら かな 不公 平 を含 まず
、 一 方当 事者 を重 大 に侵 害し ない
」 こ とを
「黙 示に
」 前提 に して いる とい う 趣旨 に解 され ると する
。(
ⅱ) ライ ヒ裁 判所 は、 本 件 合意 が
「自 由仲 裁
(arbitriummerum
)」 の 趣旨 と解 しう ると する Y の 主 張は 認め ら れな い とす る。
「審 判人 の 判断 は無 条 件で 拘束 力 を有 し て、 基 準と し て当 事者 に 適用 され る
」 とい う 意思 表示 は、
「善 き人 の裁 断(arbitriumboniviri
)」 より も「 自 由仲 裁(arbitriummerum
)」 と解 する 方が 相当 かと も思 われ る が
、 選 択さ れ てい る表 現 は必 ずし も 右解 釈を 要 請す る もの では な い。 む しろ 付 随的 な事 情 によ る と、
「 損 害額 につ い て鑑 定人 また は審 判人 の随 意の 評価 に委 ねる
」 とい う意 図は なく
、 その 意思 表示 は、
「査 定は
、 善き 人の 裁断 viri (arbitriumboni
)の 枠内 に ある 限り
、す べて のい かな る抗 弁も 排 除し て、 無 条件 に 拘束 力を もつ
」と いう 意味 に解 釈し なけ れ ばな らな い。 Yは
、専 門家 によ る損 害の 認定 につ き、 査定 を仲 裁判 断と 同様 に通 用さ せて
、不 服申 立て はで きな いと いう 要件 で行 うと いう 意思 であ った なら ば、 その 意思 にふ さわ しい
、い かな る疑 いも 生じ ない 表現 にす るこ とは
、取 引行 為上
、難 しい こと では ない はず であ る。
(ⅲ
)「 仲裁 鑑定 人(arbitrator
) の査 定が きわ めて 不公 平で
、一 方 当事 者の 重大 な侵 害を 理由 に 不 服申 立て がで きる
、( か つ) 裁判 官が それ を是 正で きる
」と いう 点に 争い はな く、
「い つ重 大な 侵害 が生 じて いる かは
、 重 要な 事実 問題 であ る」
。 控訴 審が
、審 判人 の査 定は 三〇
〇〇 ライ ヒマ ルク 低い とし て、
「明 らか に不 公平 であ る」 と判 断 し た点 に、 法的 な誤 りは 認め られ ない
。
─ ─
<
論 説
>
修 道 法 学 三 六 巻 二 号
(
)
─ ─ 8
九 九 三 四 八 九
本件 で問 題に なっ た合 意は
、火 災発 生後 に個 別的 に締 結さ れた
、鑑 定人
・審 判人 によ る損 害査 定の 合意 であ り、 この 点 で 他の 契約 約款 上の 合意 ケー スと は異 なっ てい る。
①そ して 本件 判旨 は、 第三 者の 確定 に委 ねる 合意 につ いて
、仲 裁と 仲 裁 鑑定 では なく
、第 三者 の「 自由 な随 意」 によ る「 自由 仲裁
」と
、第 三者 の「 公平 な裁 量」 によ る「 善き 人の 裁断
」の 二 種 類が ある こと を指 摘す る。
②そ して ヴィ ンタ ー説 が指 摘す るよ うに
、判 旨は
、当 事者 は「 黙示 的」 に公 平な 裁量 によ る 確 定 を合 意し て いる こ とを 強調 す
また 合意 の 解釈 に 当た って
、「 合意 の 明示 的な 表 現」
(本 件合 意 では
、「 無条 件の 拘 束 力」
、「 い かな る抗 弁も 排除
」が 用い られ てい る) があ るに もか かわ らず
、判 旨は
「付 随的 な事 情」 を斟 酌す る考 え方 を 明 ら かに して い る。 そ れに 加 えて
、 仮 に自 由仲 裁 を採 用す る意 思 であ った な らば
、「 いか なる 疑 いも 生じ な い表 現」 に す るこ とは
、 保 険会 社で ある Y 社に とっ て 取引 上、
「困 難で はな か った
」 はず で ある と強 調す る。 ヴィ ンタ ー 説は
、 国家 の 裁 判権 以外 の選 択肢 とし て当 事者 には 仲裁 と仲 裁鑑 定の 可能 性が ある にも かか わら ず、 ライ ヒ裁 判所 は、 事実 上、 仲裁 の 選 択の 余地 を認 めな かっ た具 体例 とし て、 右判 示部 分を 指摘 する
。判 旨は
、当 事者 の「 明確 な」 意思 を逆 転さ せた ので あ し たが って 本判 決は
、仲 裁、 しか も自 由仲 裁で はな く、 仲裁 鑑定 を認 定す るこ とで
、契 約者 に対 して 裁判 所へ の訴 訟 の 途を 開い たこ とに なる
。③ 最後 に判 旨は
、査 定の 重大 な侵 害の 問題 は、 事実 審が 判断 すべ き事 実問 題で ある と解 して い る
。別 のシ ーズ マン の選 任( 前掲
【
】八 三年 判決
)は
、も はや 指摘 され てい ない
。 11
⑷
【
】 ラ イヒ 裁判 所一 八九 一年 九月 一六 日判 決
(SächsArch1,S.661
) 事 件の 内容 は明 らか でな い。
(
ⅰ) 火 災保 険 13 会 社Y 社の 普通 保険 契約 約款 によ ると
、発 生し た火 災の 損害 額は
、出 訴の 途を 排除 した うえ で、 二名 の専 門家 によ る特 別 な 評価
、必 要が あれ ば審 判人 の評 価に より
、双 方当 事者 に対 する 拘束 力を もっ て、 認定 され ると 定め られ てい る。 各当 事 者 はそ れぞ れ専 門家 を選 任し
、二 名の 専門 家の 意見 が一 致し ない とき は、 二名 の専 門家 の選 任し た審 判人 が、 その 評価 の
( 6
る)
。
( 7
る)
。
─ ─
ドイ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 三
)( 豊 田
)
(
)
─ ─ 9
九九 二 四 八 八
限 度 内で 判断 を 行う
。(
ⅱ) 当 該ラ ン ト法 に規 定が な いと きは
、 そ のよ うな 契約 規 定は
、 専門 家 が
「関 係を 支 配す る善 意
(bonafides
)」 によ って
、損 害 の調 査 を誠 実に
(善 き人 の裁 断 boniviriarbitratu
によ って
)行 わな けれ ばな ら ない
、専 門 家 はそ のよ うに して
、火 災に より 損害 を被 った 物件 の真 の損 害を 調査 しな けれ ばな らな いと いう 意味 に解 釈し なけ れば な ら ない
。保 険契 約約 款に 従っ て行 われ た査 定手 続が
、明 らか に不 当か つ不 公平 な結 果に なっ た場 合、 侵害 され た当 事者 か ら 救済 を 求め られ た裁 判官 は、 専 門家 が 誠実 でな く、 善 き人 の裁 断
(boniviriarbitratu
) と はい えな いよ うな 査定 をし て い る、 つま り、 専門 家が 委ね られ た機 能を まっ たく 行使 して いな いと 判断 する こと がで きる
。そ して 裁判 官は
、意 図さ れ た 査定 手続 が結 果を もた らさ なか った とい う理 由で
、必 要な とき は証 拠調 べ手 続を 実施 して
、自 ら損 害を 確定 して よい
。 本件 判旨 は、 火災 保険 契約 の損 害額 の評 価条 項に つい て、 ライ ヒ裁 判所 の前 掲【
】 八二 年判 決や
【
】八 三年 判決 の 10
11 よ う にロ ーマ 法 源を 引 用す るこ と はな く、
「関 係を 支 配す る善 意
」 に基 づ く善 き人 の 裁断 であ る と解 して い る。 保 険 関係 の
「善 意」 に着 目す る点 では
、【
】 八三 年判 決と 共通 性 があ る。 裁 判所 の 審査 手続 につ いて
、 判 旨は
、 証拠 調 べに 基づ 11 き裁 判所 自身 が損 害を 確定 する とい う方 法の みを あげ てい る点 で、
【
】八 四年 判決 と共 通性 があ る。 12
⑸
【
】 一八 九九 年一
〇月 二七 日判 決(RGZ45,S.350ff.
) 原 告 Xは 被告
・保 険 会社 Y社 の傷 害保 険に 加入 して いた が、 14 事 故に より 保険 金請 求訴 訟を 提起 した とこ ろ、 被告 Yが 保険 契約 約款 第一 二条 を援 用し た。 同条 によ ると
、保 険契 約者 は、 傷 害の 有無 に関 する 会社 の決 定に 納得 でき ない とき は、 右問 題に 関し て設 置さ れる 委員 会の 判断 を求 める こと がで きる
、 委 員会 の判 断は 双方 当事 者を 拘束 し、 出訴 の途 は排 除さ れる 旨規 定さ れて いる
。委 員会 は、 多数 決に より Xの 傷害 は事 故 に よる もの では ない との 鑑定 結果 を下 した
。こ れに 対し てX は、 委員 会の 判断 は拘 束力 がな いと 主張 した
。保 険事 故を 否
─ ─
<
論 説
>
修 道 法 学 三 六 巻 二 号
(
)
─ ─ 10
九 九 一 四 八 七
定 した Yの 判断 はB 博士 の鑑 定に 基づ きな され たも ので ある が、 B博 士は 委員 会に 加わ るべ きで はな かっ た。 また Xは
、 委 員会 の構 成の 違法 を指 摘す る。 約款 第一 二条 は、 各契 約者 が選 任す る二 名の 信頼 でき る人 物以 外に
、第 三者 とし て、 市 の 医師 か、 傷害 者の 住所 地の 地域 医師
、ま たは 会社 の申 立て に基 づき
、公 的医 療施 設か 大学 の医 学の 権威 者が 加わ るべ き で ある と規 定し てい る。 しか し、 B博 士は 右約 款に いう 市の 医師
、地 域医 師、 医学 の権 威者 のい ずれ にも 該当 しな い。 控 訴 裁判 所は Xの 請求 を認 容し た。 Yの 上告 に対 し、 ライ ヒ裁 判所 はつ ぎの よう に判 示し て上 告を 棄却 した
。
(
ⅰ) 判 旨に よる と、 委員 会は
、傷 害が 存在 し、 それ が事 故の 直接 的な 結果 とみ なし うる かと いう 問題 につ いて のみ
、 判 断し なけ れば なら ない
。そ の判 断は
、裁 判官 の判 断の よう に法 的紛 争に 尽き るも ので はな く、 当該 事実 に関 して 仲裁 鑑 定 人(arbitrator
)の 鑑定 とな るに すぎ ない
。こ こで 判旨 は、 脚 注に おい て後 掲【
】 ラ イヒ 裁判 所一 八八 九年 一〇 月一 六 15 日 判決
(RGZ24,S.411ff.
) を参 照判 例と して 引用 して いる
。し たが って
、そ の 判断 が内 的な 理由 また は形 式的 な違 反を 理 由 に取 り消 され た場 合に
、い かな る効 果が 生ず るか は、 仲裁 契約 に関 する 民事 訴訟 法の 規定
(八 五二 条以 下) では なく
、 当 事者 の契 約に よる 合意 自体 のみ から 推認 され ると する
。
(
ⅱ) そ して 控訴 審判 決は
、約 款第 一二 条を
、委 員会 は一 回だ け事 件を 扱い
、そ の判 断が 何ら かの 理由 から 無効 なと き は
、「 双方 当事 者 には
、完 全な 範囲 で、 再び 出訴 の途 が 開か れる
」も のと 解し て いる
。ま たB 博士 が 委員 会に 加わ っ た点 を、
「 保険 関係 を支 配す る契 約上 の信 義に 対す る重 大な 違反
」と みて
、「 委 員会 の判 断は Xを 拘束 しな い」 との 効果 を認 めて い る
。B 博士 が実 施し た鑑 定に 基づ き委 員会 の否 定判 断が なさ れて いる 以上
、Y はB 博士 を関 与さ せる べき では なか った
。 ま たB 博士 は「 契約 規定 にい う医 師で も権 威者 でも な」 く、
「 第一 二条 に定 めら れた 審判 人の 資格 を欠 いて いる
」。 その よ う な 事情 にお い てX が Yに 対す る 防御 を考 え よう とす る 場合
、 X は、
「 委 員会 の判 断 に拘 束力 を 付与 する 契 約上 の 要件 が
─ ─
ドイ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 三
)( 豊 田
)
(
)
─ ─ 11
九九
〇 四 八 六
欠 けて いる
」と して
、「 悪 意の 再抗 弁(replicadoli
)の 類推 によ って 対抗 する
」こ とが でき る。
(
ⅲ) Y は、 出訴 の途 は開 かれ てな く、 Xは 別の 委員 会の 招集 の権 利し かも たな い、 約款 第一 二条 を根 拠に
、委 員会 が 反 対の 判断 をす るま で、 会社 の判 断は 維持 され るも のと 考え てい る。 これ に対 しラ イヒ 裁判 所は
、Y は当 事者 であ り、 X に 対し 拘束 力の ある 判断 を下 すこ とは でき ない
、当 事者 とし ての 意思 表示 しか でき ない こと を看 過し てい ると 非難 する
。 Y が保 証を 拒絶 し、 委員 会が 鑑定 に即 して 終局 的判 断を 下し たの であ る。 しか し委 員会 の判 断が 効力 をも たな い点 につ い て Y自 身に 責任 があ ると き、 契約 の定 めは
、保 険金 請求 権を 再び 新た な委 員会 に提 出す るよ うに
、X に強 要す るも ので は な い。
「 疑わ しい とき は、 保険 契約 者の 利益 とな るよ うに
」、 それ は否 定し なけ れば なら ない
。そ のよ うな 制限 的合 意は
、 保 険関 係に 基づ く民 事上 の法 的紛 争に つい て、 出訴 の途 が開 かれ てい る原 則の 例外 だか らで ある とす る。 本件 は傷 害保 険契 約約 款の 委員 会に よる 鑑定 条項 が問 題に なっ た事 案で ある が、 判旨 は、 傷害 の存 在お よび 事故 との 因 果 関係 の問 題に つい て判 断す る委 員会 を「 仲裁 鑑定 人」 と性 質決 定し てい る。 ここ でも 仲裁 人と の区 別論 議は なく
、判 旨 は 法的 紛争 を判 断す る裁 判官 との 違い を端 的に 述べ るに とど まる
。判 旨が その 脚注 で引 用す るラ イヒ 裁判 所一 八八 九年 判 決
(【
】判 例) は、 後に 取り 上げ る(
⑺参 照)
。そ して 委員 会の 判断 が取 り消 され た場 合の 法的 効果 につ いて
、判 旨は
、 15 仲 裁規 定で はな く、 当事 者の
「合 意」 自体 から 推認 する とす る。 原審 は、 保険 契約 上の 信義 違反 を理 由に 委員 会の 判断 の 拘 束力 を否 定し たの に対 し、 判旨 は、 契約 当事 者で ある Y自 身は 拘束 力の ある 判断 を自 ら下 すこ とは でき ない ので あり
、 約 款 第一 二条 の 定め は、
「保 険 契約 者の 利 益」 に 解釈 す べく
、 保 険契 約者 X に委 員会 へ の再 度の 申 立て を強 要 する もの で はな いと して いる
。民 事の 法的 紛争 は、 通常 裁判 所へ の出 訴が 原則 であ り、 鑑定 条項 のよ うな 制限 的合 意の 解釈 は保 険契
─ ─
<
論 説
>
修 道 法 学 三 六 巻 二 号
(
)
─ ─ 12
九 八 九 四 八 五
約 者に 有利 とな るよ うに 解釈 すべ きこ とを 判示 して いる もの と解 され
ヴィ ンタ ー説 は、 右判 旨に ライ ヒ裁 判所 の判 例 を 支配 する 考え 方が 現れ てい ると 指摘 す
⑹ 小 括 以 上み た ライ ヒ裁 判 所の 判 例か らは
、 つ ぎの よ うな 点を 確 認す る こと がで き よう
。(
ⅰ) 各 種 の保 険契 約 約款 また は個 別的 な保 険契 約中 の合 意に 基づ き保 険事 故の 存否
、損 害額
、事 故と の因 果関 係の 問題 を判 断す る専 門家 ない し鑑 定人
(そ の種 の委 員会 など 名称 はさ まざ まで ある
)の 法的 性質 につ いて
、判 例は これ を仲 裁人 では なく
、仲 裁鑑 定人
(arbitrator
) であ ると み なし
、 その 判断 は一 般的 に
「 善き 人の 裁断
」 であ るこ と を前 提に して いる
。 確か に、 ライ ヒ高 等 商 事裁 判所 の判 例で みら れた 仲裁 人か 仲裁 鑑定 人か とい う区 別論 議は 判旨 から 消え て、 ライ ヒ裁 判所 はこ の種 の損 害査 定 条 項の 性質 につ きそ の点 を特 には 重視 しな くな った こと がう かが える
。そ して 当該 合意 条項 につ いて の当 事者 意思 の解 釈 に 当 たっ て、 判 例は 二つ の 解釈 基準 を持 ち出 して いる
。
① 当初 の判 例
(【
】 八二 年 判決 や
【
】 八 三年 判決
) は、 ライ 10
11 ヒ高 等商 事裁 判所 の判 例と 同様 に、 ロー マ法 源お よび 普通 法を 援用 して
、「 法お よび 公平
」に 反す る鑑 定(
【
】 八二 年判 10 決)
、「 重大 な侵 害の 確 定、 明 らか に不 公 平な 確定
」(
【
】 八 三年 判決
) に 対し ては
、「 善き 人の 裁断 か らの 救済
」 を許 容 11 す る、 つま り当 事者 には 裁判 所へ の法 的救 済が 当該 合意 中に 織り 込み 済み であ ると する
。② 他方 で、 その 少し 後に 登場 し た 判例
(【
】 八三 年判 決、
【
】九 一 年判 決) は
、保 険契 約の 当事 者間 の「 相 互の 誠実 さ」
(【
】 八三 年判 決) や「 善意
」 11
13
11
(【
】 九一 年判 決) とい う観 点を あ げて
、 それ に反 す る
「善 き人 の 裁断
」( 専門 家の 判断
) に 服す る意 思は 契 約当 事者 に 13 は ない とす る。 そう する とど ちら の基 準に よっ ても
、合 意中 で法 的救 済を
「排 除す る条 項」 があ って も、 前者 の判 例は 同 じ くロ ーマ 法源 の適 用に より
、後 者の 判例 はそ れを
「原 則的 な手 続」 合意 と解 して
(【
】八 三年 判決
)、 通常 裁判 所に よ 11 る 法 的救 済を 可 能と する 途が 開 かれ る。
(ⅲ
) 仲裁 鑑 定に 対す る不 服 事由 とし て、 判例 は、 鑑 定 が恣 意的 行 為で ある
、 明
( 8
る)
。
( 9
る)
。
─ ─
ドイ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 三
)( 豊 田
)
(
)
─ ─ 13
九八 八 四 八 四
ら かに 不当 ま たは きわ めて 不 公平 であ る
、誤 っ た事 実 上の 要件 に基 づ いて いる 場 合(
【
】 八 二年 判 決、
【
】八 三年 判決
)、 10
11 一 方当 事 者を 重大 に 侵害 する 鑑定 の 場合
(【
】 八 四年 判 決)
、 明 らか に不 当 かつ 不公 平な 結 果に なっ た場 合
(【
】 九 一 12
13 年 判決
)を あげ る。 保険 契約 者の 利益 とい う観 点も みら れる
(【
】九 九年 判決
)。 不当 性・ 不公 平が
「明 らか な」 場合 に 14 引 き上 げ られ た こと で、 不 服 申立 てに 対 する 一定 の 制限 が 加え られ た と解 され る
( この 点は 後 述す る)
。 不 服 事由 の主 張 立証 責任 は、 裁判 所に 不服 申立 てを する 当事 者が 負う
(【
】 八二 年判 決(
ⅱ) 部分
)。 10
(
ⅳ)
第三 者の 給付 の確 定の 種類 とし て、 仲裁 や仲 裁鑑 定以 外に も自 由な 随意 に基 づく
「自 由仲 裁」 があ るこ とが 指摘 され てい る
(【
】 八 三年 判決
(ⅲ
) 部分
、【
】 八 四年 判決
(
ⅰ) 部 分)
。 そし て
【
】 九九 年判 決が 引用 する
、 つ ぎの 11
12
14 ライ ヒ裁 判所 一八 八九 年一 二 月一
〇日 判決
(RGZ24,S.357ff.
) は法 的救 済排 除条 項か ら「 自由 仲裁
」と い う当 事者 意思 を 導 いて おり
、こ の点 では ライ ヒ裁 判所 の多 数判 例の なか では
「孤 立的 な」 存在 とい え
そ こで
、こ の八 九年 判決 をみ る こ とに する
。
⑺
【
】 一 八八 九年 一二 月一
〇日 判決
(RGZ24,S.357ff.
) 原告 Xは
、生 命 保険 会社 Y社 の傷 害保 険に 加入 して いた が、 15 そ の傷 害保 険契 約約 款に 従っ て、 労働 能力 の全 部ま たは 一部 を喪 失す る事 故が 発生 した 場合 には
、湯 地費 用(Kurkosten
) の 補償 およ び定 期金 の承 認に よる 損害 補償 を請 求し なけ れば なら ない
。労 働能 力を 喪失 した 期間 およ びそ の程 度に つい て は
、当 事者 の選 任し た委 員会 が、 法的 救済 の途 を排 除し て、 判断 する
。委 員会 がY 社に 有利 な判 断を 下し たの に対 し、 X は
、よ り高 額な 保険 金請 求の 訴え を裁 判所 に提 起し たと いう 事件 であ る。 第一 審は
、委 員会 の判 断は 明ら かに 不公 平で あ る とし て、 Xの 請求 認容
、控 訴審 は、 委員 会の 判断 が明 らか に不 公平 であ るこ との 証明 がな いと して
、X の請 求を 棄却 し た
。X 上告
、ラ イヒ 裁判 所は 上告 を棄 却し た。
(
)
る10
。
─ ─
<
論 説
>
修 道 法 学 三 六 巻 二 号
(
)
─ ─ 14
九 八 七 四 八 三
(
ⅰ) ラ イヒ 裁判 所は
、保 険契 約約 款第 一三 条に より 労働 能力 の喪 失の 認定 を委 ねら れ、 当事 者の 選任 した 専門 家委 員 会 の 判断 が 明ら かに 不 公平 で ある とし て 不服 申立 て がで き るか とい う 問題 に つい ては
、「 いか な る法 律 が適 用に な るか
」 を 考え なけ れ ばな ら ない とす る
。「 ライ ン法 で 適用 され る 原則 は
、普 通 法に よ り基 準と な る原 則 と一 致し な い」 か らで あ る。 控 訴裁 判 所は
、「 ライ ン法
」 の 適用 を考 え たよ うに も みえ るが
、 判 決で は
「 ライ ヒ裁 判 所第 一民 事 部一 八八 三年 一
〇月 一 一 日判 決(RGZBd.10,S.130flg.
)」 を引 用し てい る( 前掲
【
】 判例 であ る( 筆 者)
)。 八 三年 判決 は、 ロ ーマ 法 の規 定を 考 11 え る と、 損 害は 法 的救 済の 途 を排 除し て
、 専門 家 のシ ーズ マ ンが 査定 す ると いう 保 険契 約 の条 項は
、「 契約 当 事者 が事 前 にシ ーズ マン の評 価に 無条 件で 服す る」 とい う意 義は なく
、む しろ
「普 通法 の適 用領 域で 適用 さ れる 法律 規定 によ ると
、 関 係 者に は、 通 常
、『 重 大 な侵 害が ある
』 と きは
、 と りわ け評 価結 果 が、 適 正な 評 価原 則を 適 用し たと きに 得 られ る結 果 と 乖離 し、 シー ズマ ンの 確定 を基 準に する と、 法律 関係 の規 制が まっ たく 事実 に反 し不 公平 にな るほ どに 顕著 であ ると き は
、 裁 判官 の 判断 を求 める こ とが でき る
」 旨判 示 して いる
。 し かし 本件 判 旨は
、「 右原 則が ラ イン 法の 適用 領 域で も基 準 にな ると 考え るの は法 的に 誤り
」で ある と判 示す る。
(
ⅱ)
ライ ン ヘッ セン で適 用 され る民 法 典に は、 シー ズマ ン( 仲 裁鑑 定 人arbitrator
)に よる 事 実関 係の 認 定に 関す る 一 般 的規 定は なく
、売 買価 格( 一五 九二 条) およ び組 合持 分( 一八 五四 条) の確 定を 第三 者に 委ね る旨 の規 定が ある のみ で あ る。 後者 は、 その 確定 が明 らか な不 公平 を理 由に 取り 消し うる と規 定し てい るが
、一 五九 二条 はそ のよ うな 定め をし て い ない
。「 事 実関 係の 認定 を第 三者 また は複 数の 第三 者に 委ね る旨 の合 意が
、別 の領 域、 とり わけ 労働 能力 の喪 失の 存在
、 期 間、 程度
、損 害額 につ いて 適法 であ る」 こと は疑 いな い。 右合 意は
、裁 判所 に特 定の 証拠 方法 の使 用を 命ず るま たは 禁 止 す る
「証 拠 契約
」 とみ る べき では な く、
「 実 体法 の領 域 に属 し、 契 約 の目 的物 に 関す る当 事 者の 処分 権限 を その 基礎 に
─ ─
ドイ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 三
)( 豊 田
)
(
)
─ ─ 15
九八 六 四 八 二
お く契 約」 であ る。 しか し組 合持 分の 確定
(一 八五 四条
)か ら、 契約 に基 づく 認定 が明 らか に不 公平 であ ると して
、直 ち に 取 り消 しう る と考 え るこ とは で きな い。
「ラ イン 法 は、 疑 わ しい 場合
、 契 約を その 趣 旨に 解 釈す ると の 法律 上の 推 定を 認め てい ない
。つ まり
、事 案毎 に契 約解 釈の 方法 によ って
、当 事者 の意 思を 探知 しな けれ ばな らな い( 民法 一一 三四 条、 一一 三五 条)
」。
(
ⅲ)
判旨 は続 け て、 裁 判 所へ の出 訴お よ び審 理方 法 につ いて 判 示す る。
「契 約自 体
、 また は事 件 の事 情」 から
、 関係 者の 意思 によ れば
、「 第三 者の 公 平な 裁量
( 善き 人の 裁断
arbitriumboniviri
)」 を基 準と し、 評価 が「 明 らか に不 公平 であ れば
」裁 判所 に提 訴で きる こと が明 らか な場 合に は、 訴訟 にお いて 評価 が右 要件 を満 たし てい るか につ いて 裁判 官の 判断 を受 ける こと が でき る。 右要 件を 欠 いて いる とき は
、 裁判 所 は自 ら必 要 な認 定を しな け れば なら ない
。 し かし
、「 当事 者 が 無条 件に 第三 者の 判断 に服 する
( 自由 仲裁merumarbitrium
)」 意 思で ある とき は、
「 当事 者は その 意思 表示 に従 って 基 準 とな る判 断」 に、
「 服さ なけ れば なら ない
(民 法一 一三 四条
)」
。「 契 約上
、裁 判所 に出 訴で きな い旨 が明 示的 に定 めら れ て いる 場合
、当 事者 の意 思に よる と、 原則 とし て、 第三 者の 認定 は無 条件 で基 準に なる
」と 結論 づけ なけ れば なら ない と す る。
(
ⅳ) 判 旨は さら に加 えて
、こ れは フラ ンス でも 最近 承認 され た原 則で ある とす る。 支配 的見 解は
、第 三者 によ る売 買 価 額の 認定 は、 明ら かな 不公 平を 理由 に取 り消 すこ とは でき ない と解 して いる
。ま た事 実関 係、 とり わけ 労働 能力 の喪 失 の 期間 と程 度、 また は損 害額 につ いて
、当 事者 が専 門家 の判 断( い わゆ るexpertiseamiable
)を 基準 にす ると 合意 して い る 場合 も、 同様 であ る。
─ ─
<
論 説
>
修 道 法 学 三 六 巻 二 号
(
)
─ ─ 16
九 八 五 四 八 一
本件 は、 ライ ン法 が適 用に なっ た事 案で あり
、判 旨は
、原 判決 がロ ーマ 法に 従っ た【
】 ライ ヒ裁 判所 八三 年判 決を 引 11 用 して 審理 して いる のは 法的 に誤 りで ある とす る。 判旨 は、 組合 持分 の確 定( 民法 一八 五四 条) から
、一 般的 に明 らか に 不 公平 な認 定の 取消 しを 考え るこ とは でき ず、 ライ ン法 では
、事 案毎 に契 約解 釈の 方法 で当 事者 の意 思を 探知 しな けれ ば な らな い( 民法 一一 三四 条、 一一 三五 条) とす る。 そこ で当 事者 が「 無条 件で
」第 三者 の判 断に 服す る意 思で ある と推 認 で きる 場合 には
、当 事者 はそ の判 断に 直ち に服 する 意思 であ ると 解さ れる
。判 旨は これ を「 自由 仲裁
」と 解し て、 法的 救 済 の排 除条 項を 定め た本 件合 意に その よう な当 事者 意思 を推 認し てい る。 この 点で
、ヴ ィン ター 説が いう よう に、 約款 が 法 的救 済の 排除 条項 を定 めて いる 場合 であ って も、 それ を排 して 裁判 所へ の訴 訟を 許容 する 多数 判例 とは 異な り、 本件 判 旨 は右 条項 に表 われ た当 事者 意思 をそ のま ま表 示通 りに 受け 取っ たも のと 解す るこ とが でき よ
【
】 八四 年判 決も 自 12 由 仲裁 の可 能性 に言 及し てい た( 判旨 の(
ⅱ) 部分
)が
、保 険契 約法 の領 域に おい て本 判決 は自 由仲 裁を 認容 した 最上 級 審 の判 例と して の意 義を 有す るも のと 思わ れる
。 交 当時 の学 説の 議
⑴ ヴィ ンタ ー説 が引 用す る前 掲ラ イヒ 裁判 所の 判例 は、 一九 世紀 末か ら二
〇世 紀初 頭の 保険 契約 法の 分野 にお ける 事 件 であ った
。仲 裁鑑 定の 法的 性質 に関 して 条件 説を 説い たキ ッシ ュ説 は、 その 著書
『保 険法 にお ける シー ズマ ン』 一頁 以 下
(一 九二 四
で 自ら の所 説を 展開 して いる
。キ ッシ ュ説 を若 干詳 しく 跡づ けて みる こと にす
(
ⅰ) 最 初に
、シ ーズ マン 契約 に基 づく シー ズマ ンの 仲裁 鑑定 の発 展が 指摘 され る。 保険 関係 の当 事者 間に おい て保 険 会 社の 給付 義務 の存 否や 範囲 につ いて
、義 務の 存否
・額 の要 件の 疑問 に基 づく 争い や不 確実 な問 題が 生ず る。 これ らの 問
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ドイ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 三
)( 豊 田
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九八 四 四 八
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題 につ いて
、当 事者 を拘 束す る専 門知 識の ある 第三 者の 判断 が望 まし い。 第三 者の 判断 に服 する とい う当 事者 の合 意は 和 解 以上 の意 義を 有す る。 時間
、労 力、 そし て費 用の かか る裁 判手 続は
、当 事者 の関 係を 先鋭 化し
、そ の関 係の 継続 を難 し く する し、 裁判 は保 険会 社の 業務 上の 評判 を損 ない
、サ ーヴ ィス の欠 如と いう 批難 も生 じか ねな い。 右の 問題 は法 的知 識 が なく とも 解決 可能 な純 然た る事 実問 題で あっ て、 裁判 官よ りも むし ろ専 門家 の私 人の 方が 良い 判断 をす るこ とも ある
。 こ のよ うな 理由 から
、す でに 従前 から 中立 の専 門知 識の ある 第三 者に よる 個別 的な 係争 点の 判断 を対 象と する 契約 上の 定 め が常 態化 して いる
。そ うし た定 めは 最初 に火 災保 険契 約で 登場 し、 つい でヒ ョウ 災保 険契 約、 そし て傷 害保 険契 約で 重 要 に なっ た。 現行 の私 的保 険 法は この よ うな 発展 に 基づ くも の であ り
(六 四 条・ 一 八四 条)
、 こ れ によ りそ う した 契約 上 の 合意 の原 則的 有効 性に つい ての 疑い は除 かれ る。 しか し、 それ がな くと も当 事者 は私 法関 係を 自己 の裁 量で 形成 でき る。 第 三者 は通 常は シー ズマ ンと いわ れる が、 専門 家や 仲裁 鑑定 人、 海法 では 海損 清算 人と も称 され
、そ の判 断は 仲裁 鑑定 と 呼 ばれ る。 合意 はシ ーズ マン 契約 また はシ ーズ マン 条項 とい われ る。
(
ⅱ) 仲 裁鑑 定契 約( キ ッシ ュ説 だけ でな く当 時の 学説 は、 これ を仲 裁鑑 定人 契約
(Schiedsgutachtervertrag
)」 と称 す る
。 以 下は これ に 従う
) の 法的 性質 をど う みる かは
、 当 時の 学 説の 関心 事の 一 つで ある
(修 道一 四 巻一 号四 六頁 参 照)
。 当 事者 間の 争い や不 確実 部分 を、 拘束 力を もっ て排 除す る点 に機 能的 類似 性を 認め て和 解契 約( 民法 七七 九条
)と みる 説
(コ ーラ
、当 事者 の意 思に より 法律 関係 の存 否・ 範囲 の争 いが 解決 され る点 で、 債務 の承 認契 約と みる 説( 民法 七八 一 条
)が あっ たが
、キ ッシ ュ説 はこ れら の説 をつ ぎの よう に批 判す る。
①和 解は 不確 実ま たは 争い のあ る法 律関 係に 係る の に 対し て、 シー ズマ ン条 項は 法律 関係 の事 実上 の要 件( たと えば 損害 額) に係 る。 和解 の有 効な 締結 によ り、 法律 関係 は 当 事者 の定 めた 形で 有効 にな るこ とが 確定 する
。し かし 仲裁 鑑定 によ って 請求 権の 個別 的要 件が 肯定 され ても
、そ の他 の
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論 説
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修 道 法 学 三 六 巻 二 号
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成 立要 件を 欠く と、 請求 権自 体は 必ず しも 存在 しな い。 さら に和 解は
、当 事者 自身 が自 らの 意思 行為 で法 律関 係を 規制 す る のに 対し
、仲 裁鑑 定に おい て当 事者 は、 第三 者が する 行為
(こ れは
、意 思表 示で はな い) にそ の規 制を 係ら せて いる の で ある
。和 解が 法律 関係 の直 接的 かつ 無条 件の 形成 を行 うの に対 し、 シー ズマ ン条 項で は、 個別 的要 件の 確認 は、 間接 的、 条 件付 きの もの であ り、 当事 者は 専門 家の 見解 に服 する ので ある
。そ の見 解が 正当 だと して
、し かし 和解 のよ うに それ を
「互 譲」 と は いわ ない
。 当 事者 は仲 裁 鑑定 を用 い て、 権 利 への 到達 を期 待 して いる の であ って
、 そ の請 求権 や 防御 を放 棄 する こと はな い。 した がっ て、 和解 は法 形成 的な 当事 者意 思に よっ て効 力を 生じ
、真 実の 権利 状態 に一 致し てい るか とは 関係 ない
。こ れに 対し 仲裁 鑑定 は、 真実 の法 律状 態と 顕著 に乖 離し てい ると きは
、拘 束力 をも たな い。 和解 の認 定は 原則 とし て任 意的 であ るが
、仲 裁鑑 定の 認定 は原 則と し て正 しく なけ れば なら な
②ま た債 務の 承認 は原 則と して 片面 的な 効果 を有 し、 承認 した 者を 拘束 する
。し かし シー ズマ ン契 約は
、当 事者 双方 に 拘 束的 な効 力を 生ず る。 債務 の承 認は 原則 とし て法 律関 係自 体( たと えば 契約 当事 者の 損害 賠償 請求 権) に係 わる のに 対 し
、シ ーズ マン 契約 は法 律関 係の 個別 的要 件に 係わ る。 承認 され た法 律関 係は
、定 めら れた よう に存 在す るが
、シ ーズ マ ン によ り個 別的 要件 を肯 定さ れた 請求 権は
、そ の他 の要 件が なけ れば 有効 性を 失う こと にな る。 また 条件 付き 承認 契約 と い う見 方も 正し くな い。 当事 者は シー ズマ ンが 定め た損 害に 応じ た金 額を 負担 する 旨承 認し たも ので はな い。 もし そう な ら ば、 承認 した 当事 者は 定め られ た損 害賠 償義 務を もは や争 うこ とが でき なく なる が、 実際 は、 損害 は存 在し ない
、ま た は もっ と少 額に しか 存在 しな いと いう 異議 を除 き、 異議 を申 し立 てる こと がで きる
。シ ーズ マン 条項 は、 請求 権の 要件 を 無 条件 で認 定す る。 承認 契約 では
、法 律関 係の 存在
・内 容を 直接 的に 定め るの は当 事者 の意 思で ある が、 シー ズマ ン契 約 で は、 専門 知識 をも った 第三 者の 見解 であ る。 承認 契約 は法 形成 的な 性質
、仲 裁鑑 定は 確認 的な 性質 を有 する
。承 認契 約
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ドイ ツ 仲 裁 鑑 定 法 の 形 成
( 三
)( 豊 田
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