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右鎖骨 MRSA 感染性偽関節の1症例

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Academic year: 2021

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右鎖骨 MRSA 感染性偽関節の1症例

札幌医科大学 保健医療学部 青 木 光 広

札幌医科大学 整形外科 辻 英 樹 織 田 崇 村 瀬 正 樹

Key words:Clavicular fracture(鎖骨骨折)

Osteomyelitis(骨髄炎)

MRSA infection(MRSA感染)

要旨:閉鎖性鎖骨骨折の骨接合術後に難治性の MRSA 骨髄炎を発症し、鎖骨切除により沈静化し た健常成人1症例を報告する.

は じ め に

鎖骨骨折の多くは保存的に治療される.骨折 部の転位が大きい場合や粉砕がある場合,偽関 節の発生率が増加するため手術的に治療される 傾向にある7)近年の骨接合材料の進歩により,

鎖骨骨折に対してチタン製プレートによる内固 定術が数多く行なわれるようになり2,8),粉砕骨 折の偽関節発生率は低下している.しかし,同 時に骨接合術後に生じる骨髄炎が問題となり,

そ の 発 生 率 は0.5% か ら 7% に わ た っ て い 2,8).さらに,菌交代現象によりMRSAが常 在菌となり,術後に骨髄炎を発生することが問 題となっている.今回は,閉鎖性鎖骨骨折の骨 接合術後に難治性のMRSA骨髄炎を発症し,

鎖骨切除により沈静化を得た健常成人症例を報 告する.

症例は46歳男性,組合職員である.自転車で 転倒し,右鎖骨中央の小さな第三骨片を伴う閉 鎖性骨折を生じた(図−1).軽度のアルコー ル性肝臓機能障害を認めるが,糖尿病,膠原病,

胃潰瘍,心疾患,肺疾患を認めなかった.受傷 3日後に全身麻酔下にKirshner鋼線と巻ワイ ヤーによる骨接合術が行われ,整復固定は十分

であった(図−2).術後3日目から術創の発 赤と腫脹,7日目に排膿を認め,MRSA感染 と判定された.感受性のあるバンコマイシン投 与にても感染は沈静化せず,当科に紹介・入院 した.

入院後,離開した創の洗浄と感受性のあるタ ゴシット,ハベカシンを順に2週間投与したが 排膿はおさまらず,K鋼線とワイヤーを除去 した.鎖骨バンド固定にもかかわらず骨折部は 異常可動性が生じ,近位骨片が手術創より突出 し排膿した(図−3).受傷から2ヵ月後に創 と骨周囲のデブリドマンと鎖骨の創外固定を 行った.骨折部の十分な固定性が得られ,創は 開放にして毎日洗浄した(図−4).バンコマ イシン,ハベカシン,タゴシットを順に3週間

図−1 受傷時の X 線像 北整・外傷研誌 Vol.2. − 87 −

(2)

投与したが排膿は持続し,血沈,CRPも高値 が持続した.

その後も排膿と創の発赤が持続し,近位の創 外固定ピン周囲にも発赤と排膿を認めた(図−

5).受傷より4ヵ月後に,創外固定を抜去し,

病巣部の徹底したデブリを行い,一時的に創を 閉鎖した.その結果,右鎖骨の中央3分の1が 欠損となった(図−6).バンコマイシン投与 を行い,術後1ヵ月間は創部の発赤が持続し,

血沈,CRPも高値であった.その後,発赤が 消退し始めたため,内服に変更し,肩関節はバ ンドと三角巾で安静を保持した(図−7).最 終手術の後,5ヵ月で血液所見が正常近くまで 回復したため,内服を中止した.現在,受傷か ら9ヵ月を経過し発赤は消退したが骨癒合の傾 向は無く,肩関節の挙上は10度,外旋は50度 であり,疼痛は少ない(図−8)

初回の手術を行った20床の病院では,この3 年間に手術によるMRSA感染は無く,患者も compromised hostではなかった.本症例発症 後 , 1 ヵ 月 以 内 に さ ら に 1 例 の 骨 術 後 MRSA感染症が発症している.その病院では,

金属抜去後の骨の突出

図−2 術後 X 線像 図−3 受傷後1ヵ月

創外固定による固定と創の開放と洗浄 図−4 受傷後2ヵ月

発赤と排膿の持続 図−5 受傷後3ヵ月

− 88 − 北整・外傷研誌 Vol.2.

(3)

手術器具,手術室,手洗いの無菌化を徹底し,

患肢の皮膚の消毒を2回以上行なうことで,そ の後の感染症の発生を経験していない.

鎖骨骨髄炎の発生は,骨接合術ばかりではな く,心臓カテーテル操作,長期の中心静脈栄 養,頭頚部悪性腫瘍切除後の再建手術後にしば

感染骨の切除とデブリドマン 図−6 受傷後4ヵ月

術創に発赤の持続 図−7 受傷後5ヵ月

発赤の消退と肩関節の挙上頚部に脂漏性皮膚炎が存在する 図−8 受傷後9ヵ月

北整・外傷研誌 Vol.2. − 89 −

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しば発生し難治性となる.その際には,鎖骨の 切除術が行われており,感染の沈静化とともに 肩関節可動域の改善が得られている1,3,4).我々 が経験した症例でも感染の沈静化が得られな かったため,鎖骨切除術を行い,感染治癒と可 動域の回復を得ることが出来た.

鎖骨骨接合術後の骨髄炎の発症は0.5%から 7%となっており,決して少なくはない2,8).最 近では骨接合術後にMRSA感染が多発してお り,今回の症例の様にcompromised hostでは ない健常人に発生する場合もある.いったん MRSA感染が発生すると,感受性のある抗生 剤を投与しても沈静化が得られない場合が多 く,骨折部の切除術が行われることがある.

鎖骨切除後に生じる肩関節機能は予想より良好 で可動域はほぼ正常である1,5,6).本症例でも良 好な肩関節可動域と機能を回復した.問題点 は,肩関節の内転時に違和感が存在することで ある.MRSA感染で生じた鎖骨欠損に対して

血管柄付腓骨移植や有茎肩甲骨移植を行うとい う報告もあるが,MRSA感染の難治性と術後 の長期にわたる外固定期間を考慮すると,我々 は骨欠損再建術には消極的である.

感染症発生の原因として,巻きワイヤーを併 用したピン固定が,鎖骨の血流を阻害するため という意見も存在する.鎖骨は皮質骨が存在せ ず,骨内には豊富な微細血行が保たれているた め,問題は少ないと考えられる.本骨折は閉鎖 性骨折であるため,感染の可能性の多くは汚染 された皮膚からもたらされたものと推測され る.事実,本症例は合併症のない健常症例であ るが,頚部から顎にかけて,脂漏性皮膚が分布 していた.

術後感染の予防には,手術器具,手術室,手 洗いの無菌化を徹底し,患肢の皮膚の消毒を複 数回行なうことで,細菌に対する暴露を最低限 に抑える必要があると考えられる.

参 考 文 献

1)Alessi DM, et al. : Osteomyelitis of the clavicle. Arch Otolaryngol Head Neck Surg8;

114:10−12.

2)Bostman O, et al. : Complications of the plate fixation in fresh displaced midclavicular frac- tures. J Trauma17;43:78−73.

3)Granick MS, et al. : Chronic osteomyelitis of the clavicle. Plast Reconstr Surg19;84:8

−84.

4)Hunter D, et al. : Osteomyelitis of the clavicle after Swan-Ganz catheterization. Arch In- tern Med13;143:13−14.

5)Kochhar VL, et al. : Anatomical functional consideration in total claviclectomy. Clin Orthop 6;118:19−21.

6)Lewis MM, et al. : En block clavicular resection : operative procedure and postoperative testing of function. Case reports. Clin Orthop15;193:24−20.

7)Robinson CM, et al. : Estimating the risk of nonunion following nonoperative treatment of a clavicular fracture. J Bone Joint Surg24;86−A:19−15.

8)Shen WJ, et al. : Plate fixation of fresh displaced midshaft clavicle fractures. Injury9;

30:47−50.

− 90 − 北整・外傷研誌 Vol.2.

参照

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