道徳
社会とつながり,よりよく生きるための 道徳性を育む指導
―積極的に他者と関わり合い,
物事を多面的・多角的に考える力を育てる授業づくり―
Ⅰ 研究テーマについて
これまでの研究実践では,生徒の様々な意見が生じる場面において,生徒の「共感」(他者の考 えを尊重し,関心をもって他者の感情上の情報を集めている状態:本校道徳部における定義)を促 しながら互いの意見を交流させる協働的な活動を取り入れてきた。その中で,友達の意見と自分の 意見を比較して考えたり,資料の中の登場人物と自分を重ね合わせたりして,道徳的価値に対する 思いを深めていくことができた。特に,ミエルトークや意思表示カード(ババヘラカード),ネー ムプレートの使用により思考を可視化することで,話合いの中で生徒の考えが変容していく様子が 見られた。
今年度から「特別の教科 道徳」(道徳科)となる上で,学習指導要領では,その目標を「より よく生きるための基盤となる道徳性を養うため,道徳的諸価値についての理解を基に,自己を見つ め,物事を広い視野から多面的・多角的に考え,人間としての生き方についての考えを深める学習 を通して,道徳的な判断力,心情,実践意欲と態度を育てる」としている。答えが一つではない道 徳的な課題について,生徒たちは自分自身の問題と捉えて,多様な価値観に触れながら考え,向き 合うことが求められている。
本校研究テーマ「共に未来を切り拓く 開かれた個~批判的思考力の伸長を促す授業改善~」に おいても,予測困難な社会を切り拓いていくために,他者と関わり合いながら課題解決を目指す中 で,多様な考えや新しい価値に触れることで自分自身の考えを高めていくことをねらっている。
道徳科でも本校の研究でも,学習者が多様な価値観に触れながら新たな価値を創造し,今まで体 験したことのない社会の訪れの中でよりよく生きる人を育てることをねらいとしている。そこで道 徳部の研究テーマを「社会とつながり,よりよく生きるための道徳性を育む指導」と設定した。ま た,道徳科の学習指導要領解説に「グローバル化が進展する中で,様々な文化や価値観を背景とす る人々と相互に尊重し合いながら生きることや,科学技術の発達や社会・経済の変化の中で,人間 の幸福と社会の発展の調和的な実現を図ることが一層重要な課題となる。こうした課題に対応して いくためには,人としての生き方や社会の在り方について,多様な価値観の存在を前提にして,他 者と対話し協働しながら,物事を広い視野から多面的・多角的に考察することが求められる」とあ る。「多面的」とは,主として一つの事柄を外側から見すえる発想,「多角的」とは,一つの事柄 について,その原点に立ち,自分の考えの方向を明らかにする発想である(永田繁雄 東京学芸大 学教授による)。新しい社会の中でよりよく生きるために,道徳科で培う力として多面的・多角的 に考える力は必要不可欠と考える。そこで,サブテーマを「積極的に他者と関わり合い,物事を多 面的・多角的に考える力を育てる授業づくり」とした。
本校道徳科における批判的思考力の捉え
様々な事象について他者と語り合いながら,道徳的諸価値の理解を基に多面的・多角的に考 え,主体的に判断する力。
Ⅱ 研究内容について 1 本年度の重点
(1) 多面的・多角的な思考を促す指導方法と発問の工夫
○ 授業の主題やねらいに応じた指導・発問をするための教材研究
○ 生徒の問題意識と協働的な活動を生かせる学習過程の構築
(2) 多様な価値観に触れる話合いの指導の工夫
○ 深まりのある考えを導き出すための,ルールを機能させた話合い活動の充実
○ 生徒の考えやその変容を見取るための,意見の可視化の工夫
2 研究の方法
(1) 多面的・多角的な思考を促す指導方法と発問の工夫
平成31年度から「特別の教科 道徳」になるにあたり,教科書を使用するようになる。教科 書の内容の多くは読み物教材であるが,単なる人物の心情を読み取る学習にならないように,
ねらいを明確にし,そのねらいについて生徒の多様な考えを引き出せるような発問を工夫する。
そのために,十分な教材研究によって,生徒の多様な考えを引き出す発問構成を検討する必要 がある。道徳部が中心になって実践し,教室掲示用に撮影している板書の写真を供覧したり,
主発問や授業展開を教員同士で交換・検討したりするなどして,学年で実践を共有するように したい。
これまでの研究で,読み物教材の登場人物に対する「共感」の状態を促し,その思いを考え る活動を取り入れてきた。平成28年7月に,道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会 議から「『特別の教科 道徳』の指導方法・評価等について」が報告され,三つの指導方法が 例示された。「読み物教材の登場人物への自我関与が中心の学習」「問題解決的な学習」「道徳 的行為に関する体験的な学習」である。これらを必要に応じて組み合わせて学習過程を構築す ることが,多面的・多角的に考える力を育てることにつながると考える。
(2) 多様な価値観に触れる話合いの指導の工夫
本校道徳部では,以前の研究から「ナンデさんの話合い」という名称の,小グループで話し 合うときのルールを独自に設定し,実践研究を続けてきた。前年度研究から「ミエルトーク」
の実践を全校で行ってきたが,生徒一人一人が多様な意見に触れ,考えを構築できるように「ミ エルトークND」(道徳版のミエルトーク)として,道徳科の授業の話合いを指導していく。
「ナンデさん」はこれまでの研究を生かし,友達の意見の根拠を掘り下げていくことが大切な 役割である。「ナンデさん」によって引き出された生徒たちの思考の根拠や変容を可視化して
見つめ直し,分析的に話し合うことで多様な価値に触れる話合いを展開させたい。
また,意思表示カード(通称 ババヘラカード)や心情円を表示したり,自分の意見や立場 をマトリクスに位置付けたりして一人一人の考えが見えるようにする。さらに,学習の流れの 中でどのような意見がどのような理由で発表されたのかが分かるように,生徒の考えの根拠も 板書に残せるようにする。
Ⅲ 令和元年度の実践記録
-実践記録(第1学年)-
1 主題名
「向上心,個性の伸長」 内容項目 〔A-(3)〕
-生徒同士の関わり合いの中で,ねらいとする道徳的価値に迫る-
(1) ねらい 自分にとって充実した生き方とはどのような生き方なのかを考え,追求しようとす る態度を育てる。
(2) 教材名 「螢雪時代 ボクの中学生日記」(抜粋)
2 批判的思考力を磨き合う場面
(1) 「充実した生き方をするためにはどのような決断をすればよいのか」という内容についてグ ループで話合いを行った。自分と友達の考えを比較し,共感したり質問したりすることを通じ て,充実した生き方に対する考えを深められるようにした。
(2) 学級全体でも話し合うことで,より一層の深まりと広がりが見られるようにした。
3 全体計画
【1年生の道徳の時間における指導】 各教科・特別活動等との関連
6月 第3週 4月 第2週 国語
(1) 教材名『グループエンカウンター □単元名『記者会見を開こう』
~Sからの手紙~』〔A-(3)〕
□主発問…「あなたの個性って何だろう。」 5月 第2週 特別活動 題材名『人生の樹』
《事前指導》
さきがけ新聞『ひと旬』の中から心に残った人を選び,ど ういう生き方が印象的だったのかを伝え合う。
11月 第1週 (本時)
(2) 教材名『螢雪時代 ボクの中学生日記』〔A-(3)〕
12月 第1週 総合DOVE
□主発問…「自分の夢を追いかけた矢口さんの生き □題材名『職場体験学習』
方に,なぜ共感できますか?なぜ共感で きませんか?」
《事後指導》
振り返りのハートの付箋を朝道徳で紹介したり,道徳コー ナーに掲示したりして考えを学級で共有する。
1月 第4週
(3) 教材名『どうせ無理という言葉に負けない』
〔A-(4)〕 2月 第4週 学校行事
□主発問…「新しいものを生み出そうとするときに □行事名 『鳩翔の行事』
は,どのようなことが必要だろう。」
【2年生の道徳科における指導】
(4)教材名『『私は十四歳』〔A-(3)〕
(5)教材名『左手でつかんだ音楽』〔A-(4)〕
【3年生の道徳科における指導】
(6)教材名『ぼくにもこんな「よいところ」がある』〔A-(3)〕
(7)教材名『高く遠い夢』〔A-(4)〕
4 授業の実際
過程 学習活動 ■教師の発問等 教師の手立て ○見取った生徒の姿 1 「将来どんな職業に就きたいですか?」
問 「なぜその職業に就きたいのですか?」
い というアンケートの結果を提示し,本時 の のねらいを方向付ける。
練
り ■ 今日は,漫画家になる夢を追い求めた 上 矢口高雄さんの半生に着目して「充実し げ た生き方」について考えましょう。
○「みんな将来のことについて,きちんと考 えているんだな」
○「私の夢は,簡単には叶えられそうにない」
○「充実した生き方ってどんな生き方かな」
2 教材の概要を確認する。
■ 矢口さんは銀行員という安定した職業 を辞めてまで,漫画家になる夢を追い求 めたのですね。
■ 妻子を秋田に残し,漫画家を目指して
上京した時には,30才を過ぎていました。 ○「安定した生活を手放せるなんて,勇気が あるな」
教材のポイントを確認するため,イラス トを掲示してあらすじを可視化していく。
アンケートの結果を活用することで,ね らいとする価値に注目できるようにする。
矢口さんの両親が無理をして高校に通わ せてくれたことや,銀行員が憧れの職業で あったことなどの時代背景に触れる。
朝道徳の時間に,矢口さんの生き方に共 感できるかできないかをネームプレートで 予め意思表示することで,考えの変容を確 認できるようにする。
教材を事前に配付し,内容を理解して授 業に臨めるようにする。
○「30才がひとつの区切りになったのかな」
課 3 充実した生き方をするためには,どの 題 ような決断をすればよいのかを考える。
追
求 ■ 漫画家になろうという決断を,30才に
・ なるまでできなかった理由は何だと思い 問 ますか?
い
直 ○「苦労して高校に入れてくれた両親のこと
し を思うと,簡単には決められない」
○「妻や子供の生活のことも考えなければな らない」
○「安定した生活から,不安定な生活に変わ ってもいいのか」
4 銀行員を辞めてまでも夢を追いかけた 矢口さんの生き方について考える。
■ 自分の夢を追いかけた矢口さんの生き 方に,なぜ共感できるのですか?なぜ,
共感できないのですか?
■ 話合いを通じてどんな意見になりまし たか。自分の言葉でまとめて話してくだ さい。
○「人生は一度きりだから,やりたいことを やればいい」
○「好きなことを大切にする生き方に共感で きる」
○「何事も挑戦してみないと始まらない」
○「危険すぎる選択には共感できない」
○「家族が生活に困ったらどうするの」
ま 5 自分にとって,充実した生き方とはど と んな生き方であるのかを考えて,ハー め トの付箋に書く。
・
振 ■ あなたにとって,充実した生き方とは ○「一生懸命に生きる生き方」
り どんな生き方ですか。ハートの付箋に書 ○「自分も家族も幸せになれる生き方」
返 きなさい。 ○「挑戦から学ぶ生き方」
り
6 本時の話合いで印象に残った友達の言 葉について考え,振り返る。
自分の考えをもって話合いに臨めるよ うに,考えをまとめる時間を保証する。
いろいろな考えを紹介できるように,意 図的に指名する。
考えを深めさせるために,自分にとって の充実した生き方とは何かについて考えを 書かせる。
矢口さんの生き方についての捉え方が様 々であることを確認するため,自分の考え の理由を発表する全体の場を設ける。
グループで考えを深めるために「ミエル トーク」をするように指示する。「なんで さん」の役割の生徒には,発表者の考えを 掘り下げて質問するように指示する。
考えの変容を見取れるように,朝と考え が変わった生徒にネームプレートを動かす ように指示する。考えを共有できるように,
意見が変わった生徒に理由を尋ねる。
今後の参考にできるように,自分の言葉 だけでなく,考えさせられた他の人の言葉 も書き留めさせる。
■ 振り返りカードに,今日考えたことや ○「失敗しても学ぶことがある,という発言 心に残った友達の言葉を書きましょう。 を聞いて,自分も勇気を出して挑戦する生
き方をしようと思った」
○「好きなことを大切に,という意見を聞き,
安定だけが充実ではなく,苦労を乗り越え た時の達成感が,充実だと思った」
≪生徒の振り返りから≫
・ 安定した収入を得て安定した将来が保証されているというのも,充実した生き方かもしれな い。でも,後悔したくないから挑戦してみるというのも,一つの「充実」と言えるのではな いかと感じた。
・ この授業を受ける前までは,充実した生き方とは,賭けのような危ないことをしない生き方 だと思っていた。でも,自分の楽しみのために苦労してみるのもいいと思った。
・ 自分が好きなことをやりつつ,大切なものを守っていくことが大切だと思う。
・ 「もしも失敗したら・・・」と,びくびくしてばかりの生き方はしたくないと思った。
・ 自分の好きなことを思いっきりやって,興味があるものにどんどん挑戦していくけれど,自 分の選択に責任をもてる生き方が,充実した生き方だと思う。
5 省察
(1) 様々な価値を読み取れる教材を活用する上での,発問の工夫
本教材は,「夢や目標に向かって努力することの素晴らしさ」に価値を置くことも可能な内容 である。しかし,生徒の実態を踏まえ,「充実した生き方とは何か」という内容で授業を展開し た。したがって,始めの段階でテーマを明示し,意識をしっかりともたせる必要があった。
授業では「充実した生き方とはどのような生き方か」という発問から始まり,最後には「あな たにとって,充実した生き方とは?」というように,自分の問題として考えられるように工夫し た。そうすることで,登場人物の心情を読みとる学習に留まらないと考えたからである。
振り返りには,主人公である矢口高雄さんの生き方に共感しつつも「自分がそのような生き方 をすることは難しい。」と書くなど,矢口さんの生き方に自分の姿を重ねながら,自身の問題と しても考える生徒が多数いた。また,授業の始めには「充実した生き方とは楽しく満足できる生 き方」などの考えが強かったものの,家族や周囲の人たちの存在についても考えさせたことで,
「自分も家族も幸せになれること」「自分の決断に責任をもてること」など,多面的・多角的な 考え方へ変容する姿が見られた。
(2) 多様な価値観に触れる話合いの指導の工夫
朝道徳の時間に,矢口さんの生き方に共感できるかできないかをネームプレートで予め意思表 示することで,授業後の考えの変容を確認できるようにした。授業の中では,「矢口さんの生き 方になぜ共感できるのか。なぜ共感できないのか。」について話し合った。自分が考える理由を,
自分の言葉で伝えようとする真剣な様子がうかがえた。道徳版ミエルトークでは,一人一人がな んでさんの役割をしてもよいことを普段から意識させている。その積み重ねが,人任せにならな
い話し合いをする姿勢につながっていると感じた。また,なんでさんの問い返しをホワイトボ-
ドに可視化する力も,練習を重ねるごとに身に付いてきている。本時では,可視化された班員の 考えに触れながら話し合いが展開されていた。多様な価値観に気付くための手段として,ミエル トークは有効であると実感できた。
一方,ネームプレートをあえて極端な左側の位置(共感できない)に付けた生徒が複数いた。
その生徒たちは,普段の生活においても,自分の考えを固持しようとする傾向が見られる。授業 を通じてプレートを動かすことはなく,「あまり深く考えず,その時の気分で自分の思うままに 生きることが大切」などといった,浅い振り返りをしていた。道徳を通じて価値を押しつけよう としているわけではない。しかし,多様な価値観に触れながら討論を重ね,「こういう考えもあ るのか。でも自分はこのように考える。」など,広い視野で物事を捉えさせる場面を設けていく ことが必要であると考えた。以上のことから,ミエルトークを教室全体に広げ,より多くの価値 に触れていく授業を構築していくことを,次年度の課題としたい。
特別活動
社会の中で自分の可能性を広げるために,
主体的に行動しようとする態度を育む指導
-互いのよさを生かし,よりよい集団生活を 目指すための話合いと実践-
Ⅰ 研究テーマについて
1 本校特活部として育てたい生徒像
社会の中で自分の可能性を広げるために,自らが所属する集団や社会に所属感や連帯感をもち,
その生活の向上に向けて主体的に行動しようとする生徒
本校特活部では,「人生の樹」の取組を柱に,特別活動での学びを通して,将来就きたい職業の 先にある「目指したい将来の生き方」に気付かせることを重視している。
中学校特別活動において育成を目指す資質・能力の三つの視点が,「人間関係形成」「社会参画」
「自己実現」であることと,「なすことによって学ぶ」という特別活動の基本原則を踏まえると,
「批判的思考力」を伴った特別活動の学びとは,「異なる思いや考えをもつ仲間と尊重し合うこと で初めて,集団の向上が成し遂げられることを実感できる話合いと実践」と考える。更に,生徒が 職業を超えた「目指したい将来の生き方」に気付き,その実現に向けて,自分の可能性を広げるべ く主体的に行動できるようになって欲しいという願いを込めて,この生徒像を設定した。
2 研究テーマおよび研究サブテーマ
社会の中で自分の可能性を広げるために,主体的に行動しようとする態度を育む指導
・「社会の中で自分の可能性を広げる」…生徒が現在と将来の自分の姿を見据え,将来目指す生き 方の実現と現在の集団生活の向上とを結び付けて捉えることで,自分のよさを生かして行動した り,主体的に問題を解決しようとしたりすること
・「主体的に行動しようとする態度を育む」…学校生活において,生徒が集団の向上のために必要 なことを自ら考え,見通しをもって行動に移し,最後まで責任をもってやり遂げようとする主体 的な活動を積み重ねるための支援をする。
2年次サブテーマ:-互いのよさを生かし,よりよい集団生活を目指すための話合いと実践-
1年次サブテーマ:-互いのよさを認め合い,新たな価値を見いだす話合いと実践-
1年次研究では,個における新たな価値の発見に重点を置いて研究を進めた。「ミエルトーク」
による話合いを継続し,役割毎のスキルが意識化され,批判的思考力を高める手立てとして機能し ていることが実感できた。今後は,学校生活や学校行事に関わる切実感のある話合い活動と,その 結果(合意形成・意思決定)の実践を通して,生徒が互いのよさを生かしたよりよい集団生活を作 り上げ,自信をもてるようにすること,また総合的な学習等の学びと有機的に結び付けることで,
自己の成長の確認,自己肯定感,次なる課題への解決意欲につなげることなどが課題と言える。
そこで2年次研究では,なりたい自分の発見を土台に,学校生活で自らが所属する集団やその生 活の向上に向けて,切実感のある題材を設定し,ミエルトークによる話合いと意思決定,実践と振 り返りの充実を図る。その過程を通して,意見の異なる仲間と尊重し合い,互いのよさを生かすこ とが集団生活の向上につながることを実感させ,次なる課題に対しても主体的に解決しようとする 姿勢へとつなげたい。ゴールとして,DOVE ACADEMYでの活発な意見交換を見据え,仲間のよさを生 かした集団生活の向上を目指す話合いを柱とした活動を進めていきたい。
Ⅱ 研究内容について 1 本年度の重点
(1) 「人生の樹」・「人生の森」の活動の定着とポートフォリオの蓄積 (2) 学年集団としての話合いと実践
(3) 話合いの過程と結果の振り返りの充実 2 研究の方法
(1)「人生の森」の継続的活用による「目指したい将来の生き方」の追究
・「人生の樹」~「人生の森」の活動による自己理解,他者理解及び「なりたい自分」の発見 と描き込みを継続し,職業を超えた「目指したい将来の生き方」を追究し続ける。
・「人生の樹」の蓄積と学期に一度の振り返りにより,自己の変容を確認する。
(2) 学年に応じた題材設定による,各学年ごとの集団生活の向上に向けた取組
・「ミエルトーク」による話合いで,合意形成や自己決定の場面を設け,結果を可視化する。
・決定事項の実践と振り返りを確実に行い,自分たちの成長を互いに認め合い,次なる課題解 決への意欲へとつなげる
(3) 批判的思考力の育成を見越した「ミエルトーク」の活用とNES評価の充実
・ミセルさんの記録の力を高める(簡潔に・根拠と反論の聞き取りと明記)。
・「ミエルトーク」の「ミエルボード」に書かれた根拠を,全体の意見交換に生かす働きかけ を継続し,根拠をもった話合いの意義と多様な視点の必要性を実感できるようにする。
・NES評価において,批判的思考力と話合いテーマに関する考えの変容の両面から自己の成 長を振り返ることができるように,話合いの過程(批判的思考)と結果(テーマに対する思 考の深まり)の両方の視点を設けたシートを準備する。
Ⅲ 令和元年度の実践記録
-実践記録(第一学年)-
1 単元名(題材名・主題名)
「人が職業に就く理由とは?」
2 批判的な思考を磨き合う場面
批判的な思考力の育成を見越した「ミエルトーク」の活用
・「ミエルトーク」による話合い過程の可視化の充実,各グループの考えのキーワードを結論 ボ-ドを用いて提示することで,話合いがより活性化する。
・共通点,相違点などの視点を示し分類し,焦点化を図ったり,一般的でない例を提示したり することにより理解を深め,新たな価値に気付くことができるようする。
3 全体計画(総時間数3時間)
教科・領域・総合
指 導 計 画 との関連
事前の指導・活動等・・・学活,短学活等 7月 道徳
・「人生の樹」の制作,鑑賞,コンプリメントレター 「新しいプライド」
・学校行事後の振り返りに対する生徒相互のコメント
8 月 身 近 な 人 の
50 題材名 働くこととは? 職業調べ
分 ねらい 働くことの意義について考え,活動全体に対する課題意識を もつことができる。
主な活動 働くことの意義や目的に触れながら,意見交換を行い,自分 の考えをもつ
評価規準 働くことへの関心をもち,話合ったことや考えの広がりなど について感じたことをまとめている。
事前の指導・活動等・・・放課後 10月
・司会生徒との打ち合わせ 「総合学習発表会」
・「人生の樹」掲示コーナー設置,司会生徒との打ち合わせ
50 題材名 人が職業に就く理由とは? part1
分 ねらい 「職業を選ぶ理由」を考え,活動全体に対する課題意識をも つことができる。
主な活動 役割分担をしながらテーマについての意見交換を行い,根拠 を明確にしながら互いの考えを伝えあう。
評価規準 意見交換による視野の広がりを踏まえ,テーマについて話し 合ったことについて,感じたことをまとめる。
事前の指導・活動等・・・放課後
・司会生徒との打ち合わせ
50 題材名 人が職業に就く理由とは? part2
分 ねらい 職業を選ぶ理由についての意見交換を通して,働くことに理 本 解を深め,望ましい職業観やこれからの生き方について考え 時 ることができる。
主な活動 各グループの考えや「自分を変える勇気を持とう!」の生徒 の感想を聞くことで互いの考えを深め合う。
評価規準 意見交換したことによる視野の広がりを踏まえて,職業を選 ぶ理由とこれからの生き方について,感じたことをまとめて いる。
12月
事前の指導・活動等 職場体験学習
・職場体験学習(12月) 2月鳩翔の行事
4 授業の実際
過程 発問等(■司会) 教師の手立て(枠内)・見取った生徒の姿(○)
問 1 授業の流れを確認する
い ■「前回の授業では,人が職業に就く理由 の についてまず個人で考え,各班でミエル 練 トークを行い,班の考えを結論ボードに り まとめ,その話合いの過程を説明しても 上 らいました。その過程は,教室に掲示し げ ています。今日は,前の時間に引き続き,
・ 人が職業に就く理由について話合いを行 課 いたいと思います。」
題 ■「それでは,前の授業で考えた各班に対 ○「自分の職業があまり好きではない人は,仕 設 する質問をして下さい。」 事によって自分の人生を楽しくすることがで
定 きないのでは」
○「仕事だけを楽しむだけではなく,自分の夢 を叶えるため,趣味をするためにもお金がひ つようなので職業に就くと思います」
○「本当の自分を探すという意味を教えてくだ さい」
○「職業に就くことで,自分ができること,得 意なこと,今まで知らなかった自分を探すと いう意味です」
○「収入がよければ,自分が苦手な職業でも働 くことができるんですか」
○「まず第一に収入を考えて,いろんなことが 含まれてくるので,働くと思います」
2 各グループの考えを分類化する。
■「結論ボードを分類したいと思います。
何か意見がある人はいませんか。」
○「自分のためと学ぶというのがつながってい 前時のミエルトークの話合い過程を模造紙で 掲示し,学級の考えの傾向を確認できるよう にする。
スムーズに話し合いが進めるよう,結論ボー ドのキーワードを用いて,分類化する。
ると思います。自分のためにコミュニケーシ ョンやたくさんのことを学ぶからです」
○「生活のためというのは,自分のためだから,
生活のためと自分のためがつながっていると 思います」
課 3 ラート競技世界チャンピオン髙橋靖彦 題 氏の講演「自分を変える勇気を持とう!」
追 の生徒の感想を紹介し,高橋さんが考え 究 た職業に就く理由について意見交換を行
・ う。
問
い ■「高橋さんが職業に就く理由について, ○「自分の得意なところを伸ばしていきたいと 直 学級全体でミエルトークを行いたいと思 考え,職業に就いたと思います」
し います。黒板がいつも使っているミエル ○「苦手な体操に挑戦しようと考えたと思うの ボードだと考えて下さい。では,意見を ですが,なぜ得意なことを伸ばすためだと思
お願いします ったのですか」
○「野球を経験していたので,スポーツは好き だったのではないか」
○「自分はお金のためだと考えていたんですが,
自分の就きたい職業のために仕事を選んだと 思います」
○「自分の新たな可能性を見出すチャンスだと 考えたと思います」
■「新しいことに挑戦することについてど ○「自分は収入のためだと考えていたのですが,
う考えますか。」 自分の人生を明るくするためだと思います」
○「今後の人生を明るくするためだと言ってい たのですが,今までは暗かったからそれをな くすというニュアンスでいいですか」
○「野球ができなくなってしまったので,自分 も好きだったスポーツに関わる職業につい て,明るくしようと考えたのではないか」
先が見えない進路に進んだ人の講演の感想を 紹介し,本時のテーマの理解を深めるために,
髙橋さんが職業に就いた理由について,話し 合う。
○「職業に就く理由で,仕事に就こうとすると 大変だと思う」
○「挑戦することは大事だと思う」
○「スポーツが好きだったから挑戦することが できたのではないか」
■
「
前の時間や高橋さんの話合いを踏まえ ○「将来生活に困らないようにと考えていたが,
て,職業に就く理由について自分の考え 新しい自分を見付けて,それを自分の生活に を話してほしいと思います。発表をお願 生かしていくことが職業に就く理由と考え
いします。」 た」
○「お金のためだと考えていたが,新しい自分 を探すという思いで,先が見えないことに取 り組むことは悪いことではなく,その過程の 中で職業を好きになっていく,また,自分の 新しい一面に出会うことが大切だと思った」
○「収入が大切だと思っていたが,働くという ことは収入だけではないと思った。新しいこ とを見付け,やりがいが感じられるかが大切」
○「一歩踏み出しみようという勇気が大切だと 思った」
ま 5 本時を振り返る。
と 学習シートによるNES評価,および め 記入内容の発表をする。
・ ■「それでは,振り返り用紙に記入をお願 振 いします。」
り 返
自分のよさや成長に気付くことができるよ うに,観点を明確にした振り返りカードを用 意する。
り
≪生徒の振り返りから≫
・1つや2つの考えしかありませんでしたが,新しい自分をみつけることが職業に就く理由のひ とつ
・生きていくために必要なお金を得るために,職業に就くと考えていたんですが,思いきって何 かに挑戦することも大切
・仕事とは,嫌でもやらなくてはいけないもの,人のため,自分が挑戦したいもの
・働くということは,仕事に就くこと,収入が多いといいという固定観念に縛られることなく,
周りの目を気にすることは大切だと思うが,一歩まず踏み出そうという勇気が大切
・新しいい自分を見付けることで,新しい才能に気付くことができる
・違った考え方に気付くことができた。働くことについては, 自分のためだと考えていが,目 標のために努力したり,達成感を得たりすることが大切。
・好きな職業に就くことが大切だと思っていたが,自分の可能性を探してそれを発揮するものだ 思い,価値観が変わった。
5 省察
〇 「ミエルトーク」による話合い過程の可視化の充実
・各班で行ったミエルトークをホワイトボードではく,模造紙で行うことで,また,全体ミ エルトークを黒板を使って行い,話合い過程の可視化を図った。生徒は,その模造紙や黒板 の言葉や考えを用いながら質問したり,また,確認しながら質問に答えたりする姿があり,
有効的だったと考える。本授業に関わる,個人での思考→班→全体の考えを教室に可視化す ることで,話合い活動の充実にもつながったと考えられる。今後は,ICTを利用しミエルトー クを行う実践を考えていきたい。
○ 一般的でない例を提示したりすることにより理解を深め,新たな価値に気付くことができ るようする。
・自分の就きたい職業はあるが,叶わない時や,働いていた職場が突然なくなり,仕事がで きなくなる時がある。そのような経験をしてほしいと思っていないが,もしもそのような状 況になった時に,どうすればいいのかと考える時間にしたかった。そこで,先が見えない職 業に進んだ高橋さんを紹介し職業に就いた理由を考える場を設定した。一歩まず踏み出そう という勇気が大切,自分の可能性を探してそれを発揮するなどの振り返りがあった。生徒の 考えとは違う実話を紹介することで,さらに考えをひろげることができたと考える。これは,
特別活動の授業だけではなく,他教科にも通じるものがあると考えている。困難な状況に直 面しそれを乗り越えるために,今からどのように学校生活を送り,何を考え,どう準備すべ きかということを話し合う場を設けていきたい。