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論文の内容の要旨 氏名:林

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Academic year: 2021

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論文の内容の要旨

氏名:林 佑

専攻分野の名称:博士(医学)

論文題名:腹部大動脈瘤モデルマウスを用いた高血糖の大動脈瘤進展機序への関与の検討

【背景】

腹部大動脈瘤 (Abdominal Aortic Aneurysm: AAA) は腹部大動脈の径が正常大動脈径の1.5倍になった ものと定義されている心血管疾患の1つである。初期には臨床症状がないものがほとんどであり、経過と ともに徐々に瘤径が拡大していき破裂に至ることがある。破裂した症例は生命予後が極めて不良であり、

瘤径拡大が進行する前に予定手術による治療が重要となる疾患である。心血管疾患の危険因子としては糖 尿病・動脈硬化・高血圧・脂質異常症・喫煙などが挙げられるが、近年の研究で高血糖はAAAの進行を抑 制するという逆説的な報告がされている。AAAの病理組織学的変化としては、血管壁への脂質の沈着やリ ンパ球・マクロファージなどの炎症細胞浸潤、中膜弾性線維の構造の破壊、平滑筋細胞 (smooth muscle

cell: SMC) の脱落による中膜の菲薄化やムコ多糖類の沈着、外膜の血管新生が特徴的であり、そのいずれ

かに高血糖が抑制的に作用していると考えられている。

【目的】

本研究ではよりオス4週齢のApolipoprotein E遺伝子欠損マウス(ApoE -/- マウス) を使用し、食餌を使 用し高血糖を呈するマウスを用いてアンギオテンシンⅡ (Angiotensin: Ang) 持続投与による腹部大 動脈瘤モデルマウスを作成し、より実臨床に近い高血糖マウスにおけるAAAの瘤径拡大の病理学的変化を 比較検討する。

【方法】

4週齢のオスのApoE-/- マウスを通常餌 (Control) (MF 飼育用, オリエンタル酵母株式会社) 、高血 糖誘発特別餌 (Hyperglycemia: HG) (HFD-60 60kcal, 1%脂肪含有・オリエンタル酵母株式会社) 2 群を24週齢まで各飼料にて飼育した後に、Ang (1000 ng/kg/min) を充填した持続浸透圧ポンプ (Alzet

® osmotic pumps, DURECT Corporation) を背部の皮下に植え込み、4週間後に開腹し腹部大動脈瘤の存 在の確認、大動脈瘤径の計測、採血を行い、心臓から総腸骨動脈までを採材し、両群6匹ずつを10%中性 緩衝ホルマリン固定し病理切片を作成し各染色を施行し、病理検体を両群間で解析ソフト ImageJを使用 し、t検定を用いてp< 0.05を有意水準とし比較検討した。

【結果】

Control 群に比べて HG 群は 24 週齢時の 12 時間絶食後血糖値が有意に高く( 1)HG 群に比べ Control 群は瘤径拡大率 (瘤最大短径×100 /正常径) が有意に高値であった( 2)。両群間で収縮期血圧、

Total cholesterol (TC), low density lipoprotein cholesterol (LDL-C)に有意差はなかった(1,3)

(2)

病理学的には、Elastica van Gieson (EVG) 染色において、HG群がControl群と比較し有意に100μm2

内の EVG染色陽性面積の複雑さを表すフラクタル次元が高値であった(4)

酸性ムコ多糖類の評価に用いられるAlcian blue (alb) 染色では Control群がHG群より有意に血管中膜 面積 (media area: Med) あたりの alb染色陽性面積 (alb ×100 /Med) が高値であった(5)

免疫組織化学において HG 群が有意に血管中膜内での平滑筋マーカーである α-SMA 陽性面積×100 /Med が有意に高値であり( 6 (g))、中膜内の α-SMA 陽性 SMC における SMC 脱分化マーカーである S100A4陽性面積の占める割合 (S100A4×100 /α-SMA) も有意に高値を呈した(6 (h))。中膜内のα-SMA

(3)

陽性面積に対する、SMC高分化マーカーである smooth muscle myosin heavy chain (SMMHC) の陽性 面積の占める割合 (SMMHC × 100/ α-SMA) は両群間で有意差はなかった(6 (i))。また、血管新生内皮 マーカーであるCD31では外膜面積 (adventitia area: Adv) あたりの CD31陽性面積 (CD31×100 /Adv) Control群はHG群より有意に高値であった (7)

【結論】

4 週齢の ApoE-/-マウスを Control群とHG群に分別し24週齢まで飼育した後に AngⅡ持続浸透圧ポ ンプを植え込み28週齢まで飼育した結果、高血糖状態である HG群はControl群と比較して腹部大動脈 瘤拡大が抑制された。病理学的検討からは、HG 群は中膜内の弾性線維の整合性が保たれており、中膜内 の酸性ムコ多糖沈着が少なかった。更に HG群では中膜SMCは脱分化型の形質を呈し、外膜の新生血管 増生は抑制されていた。

多くの高血糖AAA モデルマウスの研究ではストレプトゾトシン投与等で血糖値 300mg/dL以上を高血 糖として設定しているが、本研究はより生理的条件下で高血糖を呈したモデルマウスが動脈瘤拡大に抑制 的に作用することを明らかにした。今後の更なる研究による AAA と高血糖との関連性の解明によって、

手術以外の治療の選択肢を見出すことができると期待する。

参照

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