心筋血流 SPECT による心血管イベント発症予測 における年代別差異とリスク層別化に関する検討
日本大学大学院医学研究科博士課程 内科系循環器内科学専攻
峯木 隆志
修了年 2019 年
指導教員 廣 高史
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目次
1. 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
2. 緖言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
3. 研究目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
4. 研究方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
5. 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
6. 総合考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23
7. 結語・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
8. 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
9. 図・表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29
10. 図説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42
11. 引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46
12. 研究業績・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51
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1. 概要
【目的】
人口の高齢化が著しい我が国において、虚血性心疾患の既往または疑いにて 心筋血流 SPECT ( single-photon emission computed tomography )を施行した患者の 予後を調査し、追跡期間中の心血管イベント発症に関する年代別差異と、心臓核 医学に基づくリスクの層別化について検討すること。
【対象と方法】
2009 年 4 月から 2013 年 3 月の間に日本大学板橋病院にて、虚血性心疾患の既 往または疑いにて、安静時
201Tl - 負荷時
99mTc-tetrofosmin dual isotope 心筋血流
SPECT を施行した 2974 例を対象とし 3 年間の予後追跡を行った。 20 歳未満の
者、肥大型心筋症もしくは拡張型心筋症の既往のある患者、重症心不全の患者、
重症弁膜症を有する患者、急性心筋梗塞発症後 90 日以内の患者、 SPECT 検査前 後 90 日以内に血行再建を行った患者は対象から除外した。 2974 例中、追跡期間 内に調査脱落した 98 例を除いた 2876 例を予後解析対象とし、後ろ向きに解析 を行った。
対象患者は 65 歳未満を若年群( n = 829 ) 、 65 歳以上 80 歳未満を高齢群( n =
1595 ) 、 80 歳以上を超高齢群( n = 452 )と定義し、年代別に 3 群に区分した。追
跡期間内の primary endpoint は複合心血管イベント「心血管死、非致死性心筋梗
塞、非致死性脳梗塞」と規定し、 secondary endpoint は「心血管死」および「非致死
性心筋梗塞、非致死性脳梗塞」と規定した。 SPECT 血流画像は、 20 セグメント 5
段階評価法を用いた視覚的スコアリングにて summed stress score ( SSS ) 、 summed
rest score ( SRS ) 、 summed difference score ( SDS )を算出して虚血評価を行い、心
血管イベント発症と年代別差異との関係性について検討を行った。
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【結果】
追跡期間内に 158 例( 5.5% )の心血管イベント発症を認め、その内訳は心血 管死が 84 例、非致死的心筋梗塞が 33 例、非致死的脳梗塞が 41 例であった。超 高齢群の 3 年間の心血管イベント発症率および心血管死発症率は若年群、高齢 群と比較して有意に高値であった。多変量解析の結果から年齢の他、慢性心房細 動、糖尿病、 SSS 、負荷時の左室駆出率( Stress left ventricular ejection fraction : Stress LVEF ) 、推算糸球体濾過率( estimated glomerular filtration rate : eGFR )が独 立した心血管イベント発症予測因子であった。心筋血流 SPECT から算出した SSS の重症度区分を用いたカプランマイヤー解析の結果、超高齢群における心 血管イベント発症リスクの層別化が可能であった。 SSS < 4 の SPECT が正常で ある超高齢群の 3 年間の心血管イベント発症率は 6.1% であったが、慢性心房細 動と糖尿病がなく、 Stress LVEF が 45% 以上で eGFR が 60 ml/min/1.73m
2以上で ある場合には 3.4% に低下し、カプランマイヤー解析において若年群および高齢 群の予後と同等に良好であることが示された。
【結語】
SSS < 4 の心筋血流 SPECT 正常の場合でも超高齢者は心血管イベント、心血
管死ともに高値であった。このような患者の予後を推測する上で重要な因子は
慢性心房細動、糖尿病、 Stress LVEF 45% 未満、 eGFR 60 ml/min/1.73m
2未満であ
り、これらのリスクを有する場合は SSS < 4 であっても心血管イベント発症率が
上昇するため、慎重な経過観察が必要であると考えられた。
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2. 緒言
はじめに
本邦では生活習慣の欧米化、医療技術の進歩により高齢化社会が深刻となっ ており、中でも高血圧、脂質異常症、糖尿病といった動脈硬化の危険因子を有す る高齢者が増加している。平成 27 年の厚生労働省の人口動態統計では [1] 、脳卒 中を含む心血管疾患が悪性新生物に次ぐ第 2 位の死因として報告され、死亡年 齢は悪性新生物より 10 歳高い 85 歳にピークを認め、年間 7 万人以上が死亡し ている(図 1 ) 。また、死亡に至らなくても、介護が必要となった主要疾患の 24.1%
を脳心血管疾患が占めることが報告されている(図 2 ) 。こうした背景から、日 本人の高齢者における脳心血管疾患リスクの削減を検討することは極めて重要 であり、最適な診断治療戦略を提供し、高齢者の健康寿命を延伸することが必要 不可欠である。さらに健康寿命の延伸により、高齢者の医療費や介護保険料の削 減が可能となり、限りある医療財源を日本国民全体の健康を守るために有効活 用するために、高齢者の脳心血管疾患対策は我が国が取り組むべく課題である。
以上の背景から、日本循環器学会と日本脳卒中学会が、健康寿命社会を実現す るために「脳卒中と循環器克服 5 か年計画ストップ CVD (脳心血管疾患)健康 寿命を達成するために」を平成 28 年に策定し標榜している [2] 。この計画は脳卒 中と循環器病による年齢調整死亡率を 5 年で 5% 、 10 年で 10% 低下させること、
健康寿命を延伸させることを目的としている。脳卒中を含む循環器疾患は生活 習慣病を原因とする動脈硬化を基に発症する疾患群であるが、高齢者では無症 候性に進行することが多いため、早期診断や発症予防をいかに行うかが重要と なるが、未だ完全には解明されていない。
脳心血管疾患( Cerebral Cardio Vascular Disease : CVD )
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脳心血管疾患は虚血性心疾患と脳卒中の総称であり、前述の通り、動脈 硬化をもとに発症する疾患群である。
1) 虚血性心疾患とは
虚血性心疾患は、動脈硬化を原因として冠動脈に狭窄や閉塞が生じることに より、心筋血流の灌流障害が発生し心筋虚血が起こる病態であり、成因により狭 心症と心筋梗塞に大別される。狭心症は冠動脈狭窄に伴う血流低下により、心筋 酸素需要に対して十分な酸素供給能が失われることにより発症する胸痛や胸部 圧迫感、息切れを主訴とした疾患である。狭心症による心筋虚血は可逆性であり、
心筋壊死は生じないため心機能は正常に保たれる。狭心症は労作性狭心症、不安 定狭心症、冠攣縮性狭心症の 3 つに大別される。冠攣縮性狭心症は冠動脈に器 質的な狭窄病変を認めないが、冠血管攣縮により冠動脈の血流低下をきたし狭 心症発作を起こす疾患である。攣縮による冠動脈の機能的狭窄が原因であるた め、薬物療法による攣縮予防が主な治療法である。一方、冠動脈の動脈硬化によ る器質的狭窄を原因とするものには、安定労作性狭心症と不安定狭心症がある。
安定労作性狭心症は階段昇降や坂道歩行などの労作により胸部絞扼感や息切れ などの狭心痛を呈する疾患で、労作時に胸部症状が出現するが、症状の強度や頻 度は安定しており、安静にて速やかに改善する。不安定狭心症は Braunwald の分 類により、①新規発症の重症もしくは増悪型狭心症、② 1 か月以内に安静狭心症 を認める亜急性安静狭心症、③ 48 時間以内に安静時狭心症を認める急性安静狭 心症に大別される [3] 。不安定狭心症は不安定性プラークを原因に発症すること から、後述する急性心筋梗塞に移行する可能性がある。そのため、冠疾患集中治
療室( coronary care unit : CCU )に入室させ管理するのが望ましい。
心筋梗塞は不安定性プラークの破綻や冠動脈内皮細胞のびらんによって生じ
た血栓形成により冠動脈血流が完全に遮断され、閉塞部位より末梢への酸素供
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給が途絶えることにより心筋壊死が起こる疾患である。梗塞部位の心筋は壊死 に陥るため、不可逆性に心機能が障害される。心筋梗塞は発症からの時間で分類 され、発症から 24 時間以内のものを急性心筋梗塞( acute myocardial infarction : AMI ) 、発症後 24 時間以上経過し、 1 か月以内のものを亜急性心筋梗塞( recent myocardial infarction : RMI ) 、発症後 1 か月以上経過しているものを陳旧性心筋 梗塞( old myocardial infarction : OMI )という。また、急性心筋梗塞は心電図波形 から ST 上昇型心筋梗塞と非 ST 上昇型心筋梗塞に分別される。急性心筋梗塞と 不安定狭心症に心臓突然死を含めた急性心筋虚血を呈する症候群は急性冠症候
群( acute coronary syndrome : ACS )として一括され、発症から冠血流再開までの
時間が患者予後に大きく影響するため、的確な診断が重要である [4] 。 2) 脳卒中とは
脳卒中は虚血性脳卒中と出血性脳卒中に大別され、虚血性脳卒中はその成因 から血栓性と塞栓性に分類される。脳血管に閉塞が生じることにより、支配血管 からの血流が途絶え、強い虚血から壊死に陥った領域を虚血中心という。虚血中 心の周囲には他からの血流供給により、壊死には陥っていない領域が存在し、こ れをペナンブラと呼ぶ。虚血性ペナンブラは脳梗塞巣周囲の可逆的な障害部位 であり治療により回復しうる領域と定義され、脳梗塞急性期の治療としては速 やかに再灌流療法を行うことによりペナンブラを梗塞から救済することを目的 としている [5] 。
脳梗塞の原因の一つとしてアテローム血栓性脳梗塞がある。動脈硬化により
血管内膜にプラークが形成され、内部に脂質成分や壊死成分、新生血管が多いも
のが破綻しやすいプラークである。頸動脈に形成されたプラークが破綻するこ
とにより、血小板血栓が形成されアテローム血栓性脳梗塞を引き起こす。このア
テローム血栓性脳梗塞の予防には虚血性心疾患と同様に動脈硬化危険因子のコ
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ントロールが重要である。
もう一つの原因として心原性脳塞栓症があり、原因としては心房細動による 左房内・左心耳血栓、人工弁などに付着した血栓塞栓、感染性心内膜炎による感 染性疣贅による塞栓、左室内血栓による血栓塞栓、左房粘液腫による腫瘍性塞栓 などが原因となり、最も多い原因は慢性心房細動による血栓塞栓である。慢性心 房細動では左心房収縮不全により血液の滞留が生じ、赤血球とフィブリンに富 んだ赤色血栓が形成されやすく、心原性の塞栓源となる。慢性心房細動患者の脳 塞栓の予防は抗凝固療法が主体であり、古典的にはワルファリンが使用される が、現在は直接経口抗凝固薬の使用が主流となっている。心原性脳塞栓症の発症 を予測するリスクスコアとして CHA
2DS
2-VASc スコアが用いられている。慢性 心不全、高血圧、血管系疾患の既往、年齢 65 –74 歳、性別(女性)のスコアを 1 点、脳卒中もしくは血栓塞栓症の既往、年齢 75 歳以上のスコアを 2 点とし、 0 点から 9 点の合計スコアで評価を行う。 CHA
2DS
2-VASc スコアが 2 点になると 年間 2% の脳梗塞発症率となるため、抗凝固療法の適応となる [6] 。
動脈硬化危険因子と脳心血管疾患イベント発症リスク
虚血性心疾患と脳梗塞は動脈硬化を基礎に発症する疾患群であることはすで
に述べたが、本邦にて脳卒中を含む心血管疾患の発症ついて検討した代表的な
研究として久山町研究がある。この研究は 1961 年から福岡県久山町で行われた
疫学調査であり、 1961 年、 1974 年、 1983 年、 1993 年、 2002 年の 5 集団に対し
て行った健康診断の成績から、心血管疾患の危険因子や発症率の推移について
検討している。 脳梗塞の発症は調査開始から 50 年の間に減少しているが 1970 年
代以降の減少率は小さくなっている。一方、急性心筋梗塞の発症率は調査開始か
ら大きな変化を認めることなく推移している。時代の変遷により高血圧の罹患
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率や喫煙率が改善しているものの、ライフスタイルの変化から、耐糖能異常、脂 質異常症、肥満などの代謝危険因子を有する比率が増加している。日本人の虚血 性心疾患と脳梗塞の関連については、 LDL コレステロールの上昇とメタボリッ クリックシンドロームが虚血性心疾患と脳梗塞双方の危険因子であることが知 られており [7] 、耐糖能異常、脂質異常症、肥満の増加により脳梗塞や虚血性心疾 患の発症率が下がらなかったと報告されている [8] 。
また世界各国において心血管疾患の既往や高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、
喫煙等の動脈硬化危険因子を有する 67,888 例を対象として追跡調査を行い脳心 血管疾患の発症リスクや予後予測因子を大規模に調査した登録研究として Reduction of Atherothrombosis for Continued Health ( REACH ) Registry がある。追 跡結果から、脳心血管疾患の既往を有するアテローム性動脈硬化症患者では
18.3% 、脳心血管疾患の既往のないアテローム性動脈硬化症患者では 12.2% 、危
険因子のみを有する患者では 9.1% に脳卒中を含む心血管イベントが発症するこ とが報告され、虚血性心疾患発症リスクの高い患者は脳梗塞を発症するリスク も高いことが示されている [9] 。
心血管疾患の非侵襲的診断
虚血性心疾患や脳梗塞を含めた心血管疾患の診断には、まずは問診や身体所 見を診ることが重要である。その上で疑わしい場合にはスクリーニング検査を 行うが、診察時は概ね、無症候性であり心電図異常を認めることは少ない。
そのため負荷検査を行い、胸部症状発現の有無や心電図・画像上の虚血性変化の 有無を確認する必要がある。
虚血性心疾患の診断には運動負荷心電図、心臓超音波検査などの基本的な検
査の他に、心臓核医学検査、 CCTA ( coronary computed tomographic angiography ) 、
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心臓 MRI ( magnetic resonance imaging )などの非侵襲的検査が主要であるが、中 でも負荷検査を行うトレッドミル運動負荷試験と心臓核医学検査は虚血性心疾 患のスクリーニング法として定着している。
トレッドミル運動負荷試験
運動負荷試験は心筋虚血の診断、虚血性心疾患の重症度や予後予測、運動誘発 性不整脈の検出を目的として行われる。トレッドミル上を走行することより、被 験者に負荷をかける検査で、ベルトのスピードと傾斜を調整することによって 段階的に負荷量を増加させ、予想最大心拍数( 220 -年齢)の 85% となる目標心 拍数到達をもって検査を終了する。トレッドミル負荷での心電図の陽性基準と して、 ST 低下と ST 上昇がある。最大負荷時に基線から 1mm 以上の水平型の ST 低下、基線から 1mm 以上の下降型の ST 低下、 J 点から 60msec で 1.5mm 以上の 上向き型の ST 低下が陽性基準となる。 ST 上昇は軽度であっても上昇を認めれ ば陽性となり、高度の限局性完璧性虚血もしくは左室壁運動異常によって誘発 される。心筋虚血の診断は、負荷時の胸部症状出現の有無と心電図変化により判 定し、感度、特異度はそれぞれ約 70% 、 75% 程度とされている [10] 。
トレッドミル運動負荷試験から算出される心血管イベント発症の予測指標と して Duke treadmiill score ( DTS )が報告されている [11] 。 DTS はトレッドミルの 運動時間[分]- 5× (最大 ST 下降[ mm ] )- 4× ( Chest Pain Index :胸痛なし = 0 、胸痛あり = 1 、胸痛で負荷中止 = 2 )から算出したものであり、一般に 5 点以 上を低リスク、 4 から -10 点を中等度リスク、 -11 点以下を高リスクとしている。
DTS を用いた心血管イベント発症予測は低リスク群で年間 0.5% 未満、中等度リ
スク群で 0.5 - 5% 未満、高リスク群で 5% 以上とされており、患者の予後予測に
有効な指標として活用されている。しかしながら、高齢者に対する DTS の有用
10
性を検討した研究結果から、 DTS を用いて高齢者の心血管イベント発症予測お よびリスクの層別化を行うことは困難であり、高齢者の予後予測には後述する 心臓核医学検査が有用であると報告された [12] 。
心筋血流 SPECT とは
虚血性心疾患の診断においては、これまで侵襲的検査である心臓カテーテル を用いた冠動脈造影検査が主流であった。しかし、冠動脈造影検査は身体的負担 が大きいことから、非侵襲的検査を第一選択とした上で、侵襲的検査の必要性を 判断することが重要である。心臓核医学検査は非侵襲的画像診断法として位置 づけられており、心筋特異性の高い放射性同位元素( radioisotope: RI )を用いて 行う検査が心筋血流 SPECT ( single photon emission computed tomography ) である。
経静脈的に RI を投与し、 RI が心筋細胞内に取り込まれ、原子核より放出され る放射線エネルギー( γ 線)をシンチカメラで検出し、画像処理を行うことで心 筋血流画像を構築する。心筋血流 SPECT で用いる RI としては、
99mTc と
201Tl が 存在する。
99mTc は血流評価の中心となる薬剤であり、半減期は 6 時間と短く、
高用量投与が可能であり良好な画質が確保できる。
201Tl は半減期が約 3 日と長 く再分布現象を有する核種であることから、虚血の検出に加え、心筋生存能の評 価に用いられる。
99mTc と
201Tl は双方とも心筋血流を評価する上で、虚血診断精 度に関しては同等とされており、心筋特異性も高いとされている [13, 14] 。負荷
心筋血流 SPECT の虚血診断精度は患者単位では感度 80-90% 、特異度 80-95% 、
冠動脈枝単位では感度は 70-90% 、特異度は 80-95% と高い診断精度を示している [15, 16] 。
各製剤の放射線被ばく線量は、
201Tl は 1.7mGy/37MBq ( 5.1mGy/111MBq ) 、
99mTc-
tetrofosmin は 0.14mGy/37MBq ( 2.8mGy/740MBq )であり、本製剤を使用した検
11
査に伴う副作用の発生率は 10 万人に 1.3 人( 0.0013% )と報告されており、極め て安全性の高い検査といえる [17, 18] 。
心筋血流 SPECT 検査プロトコール
日本大学板橋病院で施行している心筋血流 SPECT 検査では、前処置として検 査当日よりカフェインと血管拡張薬の内服を中止し、禁食状態にて検査を行っ ている。後述する薬剤負荷試験ではアデノシンがアデノシン A2 受容体に結合す ることによる冠血管拡張作用を利用しているが、カフェインはアデノシン類似 物質でありアデノシン受容体に結合してしまうと、アデノシンの作用を拮抗阻 害してしまうため、カフェインを検査前に中止している。また、検査前に食事を 摂取すると RI が消化管や肝臓に集簇してしまい、心外集積によるアーチファク トにより画像評価が困難になる可能性があるため禁食としている。
当院の心筋血流 SPECT の検査プロトコールは安静時に
201Tl 、負荷時に
99mTc- tetrofosmin を投与する Dual isotope protocol を用いている [19] 。通常のプロトコー ルは同一核種を使用するため、負荷試験を先行し、負荷時撮像を行った後に安静 時撮像を行うが、その際に 3 - 4 時間の間隔をあけて撮像する必要がある。 Dual isotope protocol では 2 核種を用いることにより、安静時に
201Tl を 111MBq 投与 し安静時撮像を行った後、負荷試験を行い、最大負荷時に
99mTc-tetrofosmin を
740MBq 投与し、負荷終了後 30 分から 60 分後に負荷後撮影を行い、最短 90 分
で検査終了となる。このようにエネルギー分解能の異なる 2 核種を使用するこ とによって検査時間の短縮が可能である(図 3 ) 。
心臓負荷試験は運動負荷または薬剤負荷試験を選択して施行する。当院での
運動負荷試験は自転車エルゴメーター法を採用している。負荷は 25W または
50W から開始し、 3 分ごとに 25W ずつ負荷量が増加する多段階漸増法を用いて
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いる。運動負荷により予想最大心拍数( 220 -年齢)の 85% に到達した時点で
99m
Tc-tetrofosmin を静脈投与し、その後 1 分 30 秒負荷を継続したのち終了とし、
その約 30 分後にシンチカメラで背臥位、腹臥位の撮像を行う。運動負荷禁忌と しては運動耐容能がない症例、安静時の高度高血圧症例、不安定狭心症、大動脈 瘤、完全左脚ブロック、重症心不全症例、重篤な不整脈(心室頻拍、心室細動、
完全房室ブロックなど)、ペースメーカー植え込み後の症例などが挙げられる。
薬剤負荷試験は主に運動負荷が不適な患者に対して行われ、アデノシンを
0.16mg/kg/min の速度で経静脈的に 5 分間持続投与し、投与開始 3 分後に
99mTc-
tetrofosmin を静脈注射し、薬剤投与から約 60 分後にシンチカメラで背臥位、腹
臥位での撮像を行っている。アデノシン投与では冠血管拡張作用に伴う盗血現 象により冠動脈狭窄を有する灌流領域に相対的な血流低下が誘発される。アデ ノシン負荷試験の副作用として、血圧低下作用、房室伝導障害による徐脈、喘息 発作誘発があるため注意を要するが、半減期が極めて短く( 10 数秒程度) 、投与 を終了すれば速やかに副作用は消失する。副作用軽減のためには、薬剤負荷試験 に軽労作の運動負荷を併用する薬剤運動併用負荷試験が有用である。
SPECT 撮像および画像評価方法
当院では、全例 3 検出器型 SPECT 装置( GCA9300A
○R, Canon Medical Systems
Co. Tokyo, Japan )で撮像し、コリメーターは低エネルギー高分解能のものを使用
し、 SPECT 再構成法はフィルター逆投影法を用いている。再構成された心筋血
流 SPECT 画像は、心筋全体を 20 セグメントに分割し視覚的読影を行うことに
より、虚血性心疾患の重症度ならびに冠動脈支配についての診断を行うことが
可能である。虚血定量評価は 20 セグメント 5 段階評価で視覚的に行い、心筋集
積の程度を 0 点から 4 点で評価している。正常心筋血流( normal )を 0 点、軽度
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の血流低下( equivocal )を 1 点、中等度の血流低下( moderate )を 2 点、高度の 血流低下( severe )を 3 点、血流欠損( absence )を 4 点とし、 20 セグメントの合 計スコア( 0-80 点)で評価し、点数が高いほど重症である [20] 。負荷時の血流欠 損スコアの総和を Summed stress score ( SSS )、安静時の欠損スコアの総和を Summed rest score ( SRS )とし、 SSS と SRS の差である Summed difference score
( SDS )を算出している。 SSS は負荷時の血流低下量を、 SRS は梗塞心筋量を、
SDS は負荷により誘発される虚血心筋量を表している(図 4 ) 。左室心機能評価 は 16 分割心電図同期撮像を行い、 Quantitative automated gated SPECT analysis
( QGS ) software
○R( Cedars-Sinai Medical Center, Los Angeles, CA, USA )を用いて 解析し、負荷時と安静時の左室容量、左室収縮能及び拡張能を自動算出し、左室 壁運動異常の有無については視覚的に評価している [21] 。
心筋血流 SPECT の虚血指標と心血管イベントの関係性
虚血性心疾患患者の心血管イベント発症予測おける心筋血流 SPECT の有用性 については多くの報告がある。 Hachamovitch らは早期血行再建を行った患者を 除外した約 5000 例の患者について、 心臓死、 非致死性心筋梗塞を primary endpoint とした予後追跡調査を行い、負荷心筋 SPECT 欠損像と心血管イベント発症との 関係について報告した [22] 。 SPECT 所見を SSS に基づいて正常、軽度異常、中 等度異常、高度異常の 4 群に分けて心血管イベント発症率を検討し、正常群で は心血管イベント発症率は低く( 0.7%/ 年) 、異常が高度になるにつれ心血管イベ ント発症率が有意に高くなることを報告した [22] 。我が国においても、 2000 年か ら西村らにより初の大規模多施設共同の Japanese Assessment of Cardiac Events and
Survival Study ( J-ACCESS )研究が行われ、心臓死、非致死性心筋梗塞、入院を
要する心不全を primary endpoint とした 3 年間の追跡調査により、日本人におい
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ても SSS が正常であれば予後良好であるが、 SSS が大きくなるにつれて心血管 イベント発症リスクは大となり、 SSS の重症度に応じた心血管イベント発症リ スクの層別化が報告された [23] 。また 2 型糖尿病患者を対象とした J-ACCESS2 研究では、心臓死、非致死性心筋梗塞を primary endpoint 、非致死性脳梗塞を
secondary endpoint とした 3 年間の追跡調査により、同様に SSS の重症度に応じ
た非致死性脳梗塞を含む心血管イベント発症リスクの層別化が報告された [24]
これらの研究により明らかとなった心臓核医学を用いた心血管イベント発症 リスクの層別化の有用性は日米のガイドラインにおいて高く評価されている [16,25] 。
以上のように、虚血性心疾患患者の診断、予後予測に豊富なエビデンスを有し、
非侵襲的検査法である心筋血流 SPECT を用いることによって、無症候性に進行 しやすい高齢者の心血管疾患を早期診断し、致死的あるいは要介護の原因とな る心血管イベント発症を未然に防ぐことは、我が国が直面しているストップ CVD の観点から極めて重要であると考えるが、高齢者の予後に強く影響する非 致死性脳梗塞を含めた心血管イベント発症予測に関して、 SPECT を用いて検討 した報告は少なく [24, 26] 、日本人の年代別差異については報告されていない。
このため、高齢者にも安全に施行可能な心筋血流 SPECT を用いて高齢虚血性心
疾患患者の予後予測、年代別差異からみた心血管イベント発症リスクの層別化
についての詳細を明らかにするため、本研究を計画した。
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3. 研究目的
本研究は、人口の高齢化が著しい我が国において、虚血性心疾患の既往または
疑いにて心筋血流 SPECT を施行した患者の予後を調査し、追跡期間中の心血管
イベント発症に関する年代別差異と、心臓核医学に基づくリスクの層別化につ
いて検討するものである。本研究は、日本大学医学部附属板橋病院臨床研究審査
委員会の承認を得て行った(承認番号: RK-150714-9 ) 。
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4. 研究方法
対象と方法
2009 年 4 月から 2013 年 3 月の間に当院にて、虚血性心疾患の既往または疑い にて、安静時
201Tl - 負荷時
99mTc-tetrofosmin dual isotope 心筋血流 SPECT[19] を 施行した 2974 例を対象とし 3 年間の予後追跡を行った。 20 歳未満の患者、肥大 型心筋症もしくは拡張型心筋症の既往のある患者、 New York Heart Association
( NYHA )分類 III 度以上の重症心不全の患者、重症弁膜症を有する患者、急性
心筋梗塞発症後 90 日以内の患者、 SPECT 検査前後 90 日以内に血行再建を行っ た患者は対象から除外した。
対象患者は先行研究 [27] に基づいて、 65 歳未満を若年群、 65 以上 80 歳未満を 高齢群、 80 歳以上を超高齢群と規定し、年代別に 3 群に区分した。
心電図同期心筋血流 SPECT プロトコール
心筋血流 SPECT は全例、 1 日法の安静時
201Tl - 負荷時
99mTc-tetrofosmin dual isotope プロトコールにて行った [19] 。まず安静時に
201Tl ( 111MBq )を経静脈的 に投与し、 10 分後に 16 分割心電図同期 SPECT 撮像を開始した。撮像終了後、
運動または薬剤による心臓負荷試験を行った。負荷種別の内訳は多段階エルゴ
メーター式運動負荷が 20% 、アデノシン低用量運動負荷併用が 46% 、アデノシ
ン負荷が 34% であった。最大負荷時に
99mTc-tetrofosmin ( 740MBq )を経静脈的に
投与し、負荷終了後 30 分から 60 分後に負荷後の 16 分割心電図同期 SPECT 撮
像を行った。心房細動症例はガイドラインに基づいて全例アデノシン負荷を選
択した [16] 。負荷方法の選択については、運動負荷とアデノシン負荷の虚血検出
感度は同等であり [16] 、 J-ACCESS 研究 [23] に基づいて負荷方法の違いは区別せ
ず検討を行った。
17
心筋血流 SPECT 画像の評価方法
SPECT 血流画像は、 20 セグメント 5 段階評価法を用いた視覚的スコアリング
にて SSS 、 SRS 、 SDS を算出し半定量評価を行った [20] 。視覚的スコアリングは、
2 名の読影医師で行った。 16 分割心電図同期 SPECT 画像は QGS ソフトウェア を用いて解析し、負荷時と安静時の左室拡張末期容積( left ventricular end-diastolic volume : LVEDV ) 、左室収縮末期容積( left ventricular end-systolic volume : LVESV ) 、 左室駆出率( left ventricular ejection fraction : LVEF )を自動算出した [21] 。
予後の追跡
全例、心筋血流 SPECT 施行後、 3 年間の予後追跡を行った( 36.0 ± 8.9 月) 。本
研究の primary endpoint は追跡期間中の複合心血管イベント「心血管死、非致死
性心筋梗塞、非致死性脳梗塞」と規定し、 secondary endpoint は「心血管死」および
「非致死性心筋梗塞、非致死性脳梗塞」と規定した。心血管死は心筋梗塞死、心不 全死、心臓突然死と定義し、非致死性脳梗塞は虚血性脳梗塞および心原性脳梗塞 を含む脳梗塞症と定義した。予後の追跡は当院通院中の患者はカルテの記録を 参照し、現在通院していない患者 485 例には個別アンケートを郵送し調査を行 った。 2974 例中、追跡期間内に調査脱落した 98 例を除いた 2876 例 ( 追跡率 97%) を予後解析対象とし、後ろ向きに解析を行った。アンケートの内容は追跡期間内 に医師により診断された心筋梗塞および脳梗塞発症の有無と発症日、治療内容 の詳細、また患者が死亡している場合は、家族に死亡理由として心筋梗塞、心不 全、心臓突然死の有無と死亡日を問うものであり、いずれにおいても明確に心血 管イベントと判断できない場合は、 「非イベント群」とした。
統計学的解析
18
連続変数は平均値と標準偏差で示し、連続変数の 2 群間の比較は独立 t 検定、カ テゴリー変数の 2 群間の比較は χ
2検定を用いて行った。心血管イベント発症予 測因子を検討するため、 Cox 比例ハザードモデルで単変量解析を行った。単変量 解析の結果、有意な因子を変数とし、 Cox 比例ハザードモデル・ステップワイズ 選択法で多変量解析を行った。若年群、高齢群、超高齢群の予後の差異について はカプランマイヤー解析を施行し生存時間分析を行った。心筋血流 SPECT から 算出した SSS の重症度と心血管イベント発症率の年代別比較と超高齢群におけ る多変量解析から求めたリスク因子除去による心血管イベント発症率の比較に
ついては χ
2for trend test を用いて行った。すべての統計学的処理により算出され
た p 値が 0.05 未満の場合を統計学的に有意であると判定した。すべての統計は、
MedCalc Statistical software® Version 17.9.7 (MedCalc Software bvba, Ostend, Belgium; http://www.medcalc.org; 2018) を用いて解析を行った。
5. 結果
心筋血流 SPECT 画像の半定量評価
20 セグメント 5 段階評価法を用いて、 2 名の読影医師で行った視覚的スコアリ ングによる半定量評価は Cohen’s Kappa 係数 0.91 であり、両者の評価はほぼ一 致していた。
心血管イベント発症率と患者背景
対象患者の年代別内訳は 65 歳未満の若年群( n = 829 ) 、 65 歳 以上 80 歳未満
の高齢群( n = 1595 ) 、 80 歳以上の超高齢群( n = 452 )であった。追跡期間内に
全体で 158 例( 5.5% )の心血管イベント発症を認め、その内訳は心血管死が 84
例、非致死的心筋梗塞が 33 例、非致死性脳梗塞が 41 例であり、心血管死の内訳
19
は心筋梗塞死が 25 例、心不全死が 40 例、心臓突然死が 19 例であった。若年群、
高齢群、超高齢群の 3 群間での心血管イベント発症率の比較を表 1 に示す。 3 年 間の心血管イベント全体の発症率は 65 歳未満の若年群が 4.2% 、 65 歳 以上 80 歳未満の高齢群が 5.2% 、 80 歳以上の超高齢群が 8.8% と 3 群間で加齢とともに 有意に上昇する傾向を認めた( p = 0.0013 ) 。心血管死の発症率は若年群が 1.5% 、 高齢群が 2.8% 、超高齢群が 6.0% であり、加齢とともに有意に上昇する傾向を認
め( p < 0.0001 ) 、心血管死の内訳では心不全死が加齢とともに有意に上昇する傾
向を認めた。非致死的心筋梗塞と非致死性脳梗塞の発症率は 3 群間で有意差を 認めなかった。表 2 に若年群、高齢群、超高齢群における心血管イベント発症の 有無での患者背景の比較を示す。いずれの年齢群においても心血管イベント発 症群において、労作時息切れ、心筋梗塞の既往、糖尿病、 β 遮断薬の内服率が有 意に高値であり、推算糸球体濾過率( estimated glomerular filtration rate : eGFR ) は有意に低値であった。高齢群と超高齢群の心血管イベント発症群において冠 血行再建の既往が有意に高値であり、若年群と超高齢群の心血管イベント発症 群において慢性心房細動の比率が有意に高値であった。表 3 に若年群、高齢群、
超高齢群における心血管イベント発症の有無での心電図同期心筋血流 SPECT デ ータの比較を示す。いずれの年齢群においても心血管イベント発症群において、
SSS, SRS は有意に高値であり、安静時と負荷時の LVEF は有意に低値であり、
安静時と負荷時の LVEDV と LVESV が有意に高値であった。
心筋血流 SPECT の重症度と心血管イベント発症率
心筋血流 SPECT から算出した SSS を重症度別に正常( SSS < 4 ) 、軽度異常( 4
≤ SSS < 9 ) 、高度異常 ( SSS ≥ 9 )に 3 区分して、各群での 3 年間の「複合心血管
イベント発症率」、「心血管死発症率」、「非致死性心筋梗塞および脳梗塞発症率」
20
の年代別比較を図 5 に示す。 SPECT 正常例での超高齢群の複合心血管イベント 発症率は 6.1% であり若年群( 2.2%, p = 0.0035 )と高齢群( 3.4%, p = 0.0293 )よ り有意に高値であった。 SPECT 軽度異常例での超高齢群の複合心血管イベント 発症率は若年群より有意に高値であった (11.3 vs. 3.6%, p = 0.0485) 。 SPECT 正常 例と軽度異常例では加齢とともに複合心血管イベント発症率が有意に上昇する ことが示された ( p < 0.05 ) 。 SPECT 高度異常例では超高齢群の複合心血管イベ ント発症率が最も高率であったが、全体的にイベント発症率が高く、 3 群間に有 意差は認めなかった(図 5A ) 。心血管死発症率の比較においては、 SPECT 正常 例での超高齢群の 3 年間の心血管死発症率は若年群( 3.5 vs 0.4%, p = 0.0003 )と 高齢群( 3.5 vs 1.5%, p = 0.0184 )より有意に高値であり、 SPECT 軽度異常例での 超高齢群の心血管死発症率は若年群より有意に高値であった( 7.5 vs 0.9%, p =
0.0203 )。 SPECT 高度異常例での超高齢群の 3 年間の心血管死発症率は若年群
( 13.6 vs 5.1%, p = 0.0167 )と高齢群( 13.6 vs 6.4%, p = 0.0282 )より有意に高値 であり、いずれの SPECT 重症度区分においても加齢とともに心血管死発症率が 有意に上昇することが示された (p < 0.05) (図 5B ) 。また非致死性心筋梗塞およ び脳梗塞発症率の比較においては、いずれの群間にも有意差は認めなかった(図 5C ) 。
心血管イベント発症予測因子
単変量 Cox 比例ハザードモデルを用いて、全患者における心血管イベント発 症予測因子を解析した結果、年齢(連続変数およびカテゴリー) 、労作時息切れ、
アデノシン負荷、慢性心房細動、心筋梗塞の既往、冠血行再建の既往、高血圧症、
糖尿病、 SSS 、 SRS 、 SDS 、安静時および負荷時の LVEF 、安静時および負荷時の
LVEDV と LVESV 、 eGFR が心血管イベント発症予測因子として抽出された(表
21
4 ) 。以上から多変量 Cox 比例ハザードモデルを用いて解析した結果、年齢(カ テゴリー) 、慢性心房細動、糖尿病、 SSS 、 Stress LVEF 、 eGFR が独立した心血管 イベント発症予測因子として抽出された。
超高齢群の心血管イベント発症リスクの層別化
超高齢群における心筋血流 SPECT から算出した SSS の重症度(正常: SSS <
4 、軽度異常 : SSS = 4 - 8 、高度異常: SSS ≥ 9 )別に 3 区分したカプランマイ ヤー解析の結果、 SSS の重症度が高度になるにつれ有意に予後が不良になり、
SSS を用いることにより、超高齢群の心血管イベント発症リスクの層別化が示 された(図 6 ) 。
超高齢群の心血管イベント発症率と独立した予後予測因子との関連
多変量解析から求めた独立した予後予測因子を 1 つずつ除去することによる 超高齢群の 3 年間の心血管イベント発症率の推移を示す(図 7 ) 。前述の如く、
超高齢群の 3 年間の心血管イベント発症率は 8.8% であり、うち SPECT 正常例
( SSS < 4 )では 6.1% であった。さらに慢性心房細動と糖尿病がなく、 Stress LVEF が 45% 以上で eGFR が 60 ml/min/1.73m
2以上である超高齢群の 3 年間の心血管イ ベント発症率は 3.4% に低下し、多変量解析にて抽出されたすべてのリスクを除 去することにより、 3 年間の心血管イベント発症率が有意に低下する可能性が示 唆された( p = 0.0031 ) 。
さらに慢性心房細動、糖尿病、 Stress LVEF 45% 未満、 eGFR60 ml/min/1.73m
2未
満のすべてを有することを multivariate リスクと定義し、 SPECT 正常例において
若年群、高齢群、 multivariate リスクのない超高齢群、 multivariate リスクを有す
る超高齢群に 4 区分したカプランマイヤー解析の結果、 multivariate リスクを有
22
する超高齢群は最も予後不良であるが、 multivariate リスクのない超高齢群の予
後は若年群および高齢群と同等に予後良好であることが示された(図 8 ) 。
23
6. 総合考察
本研究は日本人の虚血性心疾患患者の年齢に着目し、エイジングとともに心 血管イベント発症率が上昇するという前提を証明した上で、日本人の超高齢群 における心血管イベント発症リスクの層別化に関する有用性について心臓核医 学に基づいて検討した報告である。本研究では心筋血流 SPECT から得られた虚 血の重症度を揃えても、超高齢群の予後は若年群や高齢群と比較して不良であ
り、 SPECT 正常であっても 3 年間の複合心血管イベント発症率および心血管死
発症率は有意に高値であった。多変量解析の結果から超高齢群の予後を予測す る上で重要な因子は慢性心房細動、糖尿病、 Stress LVEF 45% 未満、 eGFR60
ml/min/1.73m
2未満であり、これらのリスクを有する場合は SPECT 正常であって
も心血管イベント発症率が上昇するため、慎重な経過観察が必要であと考えら れた。しかし SPECT 正常の超高齢群において、これらすべてのリスクを除去す ることにより、心血管イベント発症率が有意に低下する可能性が示唆された。
超高齢群の心血管イベント発症率
本研究結果では予測通り、超高齢群の 3 年間の心血管イベント発症率は若年
群や高齢群と比較して有意に高率であった。 Nair らは心筋血流 SPECT を施行し
た米国の虚血性心疾患患者を対象とし、患者年齢を 50 歳以上 64 歳未満、 65 歳
以上 80 歳未満、 80 歳以上に 3 区分して 2 年間のフォローアップを行い、心血管
イベント発症率は 80 歳以上では 6.3% 、 65 歳以上 80 歳未満では 2.6% 、 50 歳以
上 64 歳未満では 1.1% であり、心血管イベント発症とエイジングは有意に関連
し、さらに SPECT の虚血重症度を揃えても 80 歳以上の患者は最も予後不良で
あると報告した [27] 。先進国における人口の高齢化と心血管イベントの高い発症
率は共通の課題であり、日本人を対象とした本研究においても同様な結果であ
24
ることから、超高齢群に対して有効な心血管イベント発症リスクの削減やリス ク層別化が今後ますます必要になると考えられる。心臓核医学検査は虚血性心 疾患患者のリスク層別化に豊富なエビデンスを有する [22,23] 。今後、超高齢者を 対象とした、心臓核医学検査に基づく心血管イベント発症リスクを前向きに評 価する多施設共同研究が必要である。
心筋血流 SPECT 正常例における心血管イベント発症率
一般に虚血性心疾患が疑われ心筋血流 SPECT を施行し、正常( SSS < 4 )であ った患者の心血管イベント発症率は年間 1% 未満であり予後良好であると報告 されている [22, 28, 29] 。日本人においては J-ACCESS 研究のサブ解析において 検討され、 SPECT 正常患者の年間の心血管イベント発症率は 0.81% と欧米より 低率であったが、 70 歳以上では 70 歳未満と比較して心血管イベント発症が高 率であったと報告されたが、高齢者にフォーカスした研究 ではない [30] 。
Hachamovitch らは虚血性心疾患の既往もしくは疑いのある高齢者を対象として、
心筋血流 SPECT の予後予測能について検討し、 SPECT が正常であった患者の年
間心臓死発症率は 75 - 84 歳では 1.0% 、 85 歳以上では 3.3% であると報告した
[31] 。過去の研究から高齢者では SPECT が正常であっても低リスクではないこ
とが報告されており、本研究においても SPECT 正常例の超高齢群では 3 年間に
心血管イベント発症を 6.1%, 心血管死を 3.5% に認め、若年群や高齢群より有意
に高い発症が認められた。しかしながら、多変量解析結果で示された multivariate
リスクの除去、すなわち慢性心房細動と糖尿病がなく心機能および腎機能が保
たれている超高齢群の予後は若年群や高齢群と同等に良好となることはこれま
で報告されておらず、超高齢群のマネージメントにおいて極めて有用である。超
高齢群の予後を一概に評価するのではなく、予後を左右するリスクを SPECT 所
25
見に複合的に組み合わせて評価することが重要である。ひいては、エイジングが 進む前に、随伴するリスク管理を厳格に行うことが高齢者の予後改善に導き、健 康寿命の延伸に繋がるマネージメントとなり得る。
心血管イベント発症予測因子
本研究では多変量解析の結果、年齢(カテゴリー)、慢性心房細動、糖尿病、
SSS 、 Steress LVEF 、 eGFR が独立した心血管イベント発症予測因子として抽出さ
れた。心臓核医学的虚血指標としては SDS でなく SSS が抽出されたが、 SSS は
SDS に SRS を加えたものであり、虚血心筋量と梗塞心筋量を合わせ持つ因子で
ある。心血管イベント発症を予測する心臓核医学指標について、 SPECT 検査後
90 日以内の早期血行再建例を対象とした先行研究 [32-34] では、いずれも血行再
建による虚血心筋量の改善が予後に影響すると考えられ、 SDS が有意な予後予
測因子と報告された。一方 J-ACCESS 研究 [23] や本研究では、早期血行再建によ
る治療介入を伴わないため、虚血心筋量に加え梗塞心筋量が予後に影響すると
考えられ、両者を加味した SSS が有意な予後予測因子として抽出された。この
ように早期血行再建術施行例を対象に含むか否かの違いにより、心血管イベン
ト発症を予測する心臓核医学指標に違いが生じることが考えられた。また本研
究では慢性心房細動が有力な心血管イベント発症予測因子であったが、その理
由として本研究では追跡期間内の「心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳梗
塞」の複合心血管イベントを primary endpoint として規定としているため、慢性
心房細動と非致死性の心原性脳梗塞発症との関連が予後に強く影響したことが
考えられた。また症状の内訳では、典型的胸痛や非典型的胸痛と比較し、労作時
息切れがいずれの年齢群においても、心血管イベント発症群で高率であり、単変
量解析において有意な心血管イベント発症予測因子であった。 Abidov らは心筋
26
血流 SPECT 施行後、早期血行再建を行った患者を除外した約 18000 例の患者に
ついて、心臓死を primary endpoint とした 5 年間の予後追跡調査を行い、 SPECT 施行時の症状の内訳と心臓死発症との関係について検討し、労作時息切れを有 する患者は虚血性心疾患の既往にかかわらず、無症候性患者の 4 倍、典型的胸 痛患者の 2 倍の心臓死リスクがあることを報告した [35] 。労作時息切れには心不 全症状として低心機能患者や慢性肺疾患や貧血といった複数の疾患を有する患 者が含まれるため、心血管イベント発症がより高率になることが本研究におい ても示されており、予後不良因子であると考えられた。
本研究の限界
本研究は単一施設で実施した後ろ向き観察研究であることから、以下の研究 限界を含んでいる。第一に、本研究は日本大学医学部附属板橋病院を紹介受診し た患者を対象としていることである。専門機関である大学病院を受診している ことから、陳旧性心筋梗塞や冠血行再建の既往を有している患者が多く、日本人 の安定狭心症患者を対象とした J-ACCESS 研究 [23] と比較し、心血管イベント 発症率が高いことが挙げられる。
第二に本研究では SPECT 検査前後 90 日以内に血行再建を行った患者は対象
から除外していることから、本研究結果をすべての虚血性心疾患患者に適用す
ることが出来ない。心臓核医学の虚血評価と予後との関連については過去の日
米の大規模研究で検討されているが、いずれも早期血行再建が予後に与える影
響を考慮し、 SPECT 検査前後 90 日以内の血行再建例を対象から除外して検討し
たものである [22, 23] 。一方 SPECT 検査後 90 日以降の非早期血行再建例を対象
患者に含めている点については、虚血性心疾患患者の治療選択と予後との関係
を報告した我々の先行研究において、 90 日以降の非早期血行再建例の予後は薬
27
物治療例の予後と同等であり、 SPECT で 5% 以上の虚血がある場合の 90 日以降 の血行再建は予後の改善に寄与せず、 SPECT 検査時の虚血量が予後を規定する と報告しており [36] 、本研究においても SPECT 検査時の虚血量に基づいて検討 を行った。また本研究では SPECT 検査 90 日以内の PCI 施行例は除外している ため、それ以前に PCI の既往がある患者については、 PCI 後慢性期の虚血評価と なり過去の PCI の影響を直接反映していないと考えられるため、 SPECT 検査時 の虚血量が予後を規定するものと考え研究対象とした。
本研究では、上記理由により SSS ≥ 9 の高度異常であっても早期血行再建を行 っていない患者を対象としているが、患者の耐術能、認知機能、腎機能障害を鑑 みて CAG を行わないことや患者の同意が得られないこと、 CAG を行ったが、
冠動脈病変が完全閉塞や瀰慢性であり、 PCI 不適または困難であるため薬物治療 が選択されることは日常診療では経験されることであり、 SSS ≥ 9 の高度異常全 例に血行再建を行うことは現実には困難であったものと考えられる。
第三に、本研究では SPECT 検査を担当する医師の判断で負荷方法が選択され ており、負荷の選択にバイアスが存在する可能性である。第四に心血管イベント 発症を防ぐための内服加療の内容について単施設観察研究であるための施設バ イアスが存在する可能性である。
第五に、当院の心筋血流 SPECT 検査はスループットの向上のため、安静時に
201
Tl 、負荷時に
99mTc-tetrofosmin を使用する 2 核種投与検査を採用しており [19,
22, 29, 34-36] 、単核種で行う検査と比較して、被曝量が多いことが挙げられる。
前述のとおり、本薬剤を使用した検査に伴う副作用の発生率は低く、極めて安全 性の高い検査であるため [17, 18] 、被験者に対する影響は低いと考えられる。
7. 結語
28
SSS < 4 の心筋血流 SPECT 正常の場合でも超高齢者は心血管イベント、心血
管死ともに高値であった。このような患者の予後を推測する上で重要な因子は 慢性心房細動、糖尿病、 Stress LVEF 45% 未満、 eGFR60 ml/min/1.73m
2未満であり、
これらのリスクを有する場合は SSS < 4 であっても心血管イベント発症率が上 昇するため、慎重な経過観察が必要であると考えられた。
8. 謝辞
本論文を作成するにあたり、御指導、御高閲を受け賜りました平山篤志前主任
教授及び廣高史診療教授、奥村恭男主任教授に深く感謝を申し上げます。本論文
作成及び本研究遂行に際し、直接丁寧な御指導、御高配をいただきました依田俊
一准教授に深く感謝を申し上げます。また、実際の検査の際にご協力、ご指導い
ただきました日本大学板橋病院アイソトープ室の皆様にも厚く御礼を申し上げ
ます。
29
9. 図表
表 1 若年群( 65 歳未満) 、高齢群( 65 歳以上 80 歳未満) 、超高齢群( 80 歳以上)の 心血管イベント発症率の比較
全体
(69
± 10歳)(n = 2876)
若年群
(56
± 7歳)(n = 829)
高齢群
(72
± 4歳)(n = 1595)
超高齢群
(83
± 3歳)(n = 452)
P value for trend
n % n % n % n %
心血管死
84 2.9 12 1.5 45 2.8 27 6.0 < 0.0001
心筋梗塞死
25 0.8 3 0.4 16 1.0 6 1.3 0.0540
心不全死
40 1.4 6 0.7 17 1.1 17 3.8 0.0001
心臓突然死
19 0.7 3 0.4 12 0.7 4 0.9 0.2195
非致死的心筋梗塞33 1.1 14 1.7 16 1.0 3 0.7 0.0741
非致死的脳梗塞41 1.5 9 1.1 22 1.4 10 2.2 0.1255
合計
158 5.5 35 4.2 83 5.2 40 8.8 0.0013
30
表 2 若年群、高齢群、超高齢群における心血管イベント発症の有無での患者背景の比較
若年群 高齢群 超高齢群
MCVEs (+) MCVEs (-) P値 MCVEs (+) MCVEs (-) P値 MCVEs (+) MCVEs (-) P 値
n = 35 n = 794 n = 83 n = 1512 n = 40 n = 412
男性 30 86% 578 73% 0.0909 61 73% 993 66% 0.1430 24 60% 231 56% 0.6325 年齢 57 ± 7 56 ± 7 0.4529 73 ± 4 72 ± 4 0.1453 84 ± 3 83 ± 3 0.1513 狭心症 12 34% 126 16% 0.0042 19 23% 237 16% 0.0813 11 28% 100 24% 0.1184 梗塞後狭心症 6 17% 41 5% 0.0027 12 14% 82 5% 0.0007 8 20% 30 7% 0.0057 無症候性心筋虚血 11 31% 169 21% 0.1545 21 25% 297 20% 0.2092 5 13% 50 12% 0.9464 典型的胸痛 5 14% 57 7% 0.1180 3 4% 90 6% 0.3763 2 5% 26 6% 0.7430 非典型的胸痛 3 9% 200 25% 0.0253 8 10% 392 26% 0.0009 11 28% 93 23% 0.4801 労作時息切れ 9 26% 88 11% 0.0084 25 30% 182 12% <0.0001 15 38% 80 19% 0.0074 慢性心房細動 7 20% 35 4% <0.0001 9 11% 116 8% 0.2954 9 23% 33 8% 0.0024 心筋梗塞の既往 17 49% 193 24% 0.0012 30 36% 345 23% 0.0053 16 40% 72 17% 0.0006 冠血行再建の既往 18 51% 285 36% 0.0620 42 51% 575 38% 0.0221 21 53% 129 31% 0.0066 高血圧症 31 89% 558 70% 0.0196 73 88% 1195 79% 0.0501 36 90% 352 85% 0.4299 糖尿病 19 54% 255 32% 0.0064 41 49% 491 32% 0.0015 20 50% 114 28% 0.0032 脂質異常症 24 69% 540 68% 0.9445 42 51% 992 66% 0.0053 28 70% 232 56% 0.0948 アスピリンの内服 29 83% 422 53% 0.0006 61 73% 842 56% 0.0014 28 70% 224 54% 0.0577 スタチンの内服 18 51% 408 51% 0.9960 30 36% 793 52% 0.0038 22 55% 176 43% 0.1354 β遮断薬の内服 21 60% 263 33% 0.0010 39 47% 478 32% 0.0036 24 60% 143 35% 0.0016 Ca拮抗薬の内服 24 69% 396 50% 0.0305 47 57% 865 57% 0.9846 18 45% 243 59% 0.0878 硝酸薬の内服 9 26% 94 12% 0.0149 18 22% 259 17% 0.2861 13 33% 77 19% 0.0370 ARBの内服 19 54% 375 47% 0.4136 42 51% 729 48% 0.9588 16 40% 220 53% 0.1057 ACE阻害薬の内服 3 9% 54 7% 0.6856 10 12% 136 9% 0.3478 8 20% 37 5% 0.0264 eGFR(ml/min/1.73m2) 56.8 ± 30.5 70.4 ± 23.7 0.0011 54.1 ± 56.9 62.2 ± 21.2 0.0034 46.0 ± 19.4 56.2 ± 19.6 0.0017 運動負荷 4 11% 294 37% 0.0020 2 2% 260 17% 0.0011 0 0% 13 3% 0.2548 アデノシン低用量
運動負荷併用 16 46% 360 45% 0.9653 27 33% 763 51% 0.0016 12 30% 148 36% 0.4551 アデノシン負荷 15 43% 140 18% 0.0002 54 65% 489 32% 0.0001 28 70% 251 61% 0.2600 心血管イベント(MCVEs: major cardiovascular event)、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(angiotensin receptor blocker:
ARB)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(angiotensin converting enzyme inhibitor: ACE-I)、推算糸球体濾過率(eGFR:
estimated glomerular filtration rate)
31
表 3 若年群、高齢群、超高齢群における心血管イベント発症の有無での心電図同期心筋血流 SPECT データの比較
若年群 高齢群 超高齢群
MCVEs (+) MCVEs (-) P 値 MCVEs (+) MCVEs (-) P 値 MCVEs (+) MCVEs (-) P 値
n = 35 n = 794 n = 83 n = 1512 n = 40 n = 412
SSS 13.3 ± 12.4 4.5 ± 8.3 <0.0001 9.5 ± 12.1 4.2 ± 8.3 <0.0001 9.0 ± 11.4 4.1 ± 8.1 0.0005 SRS 10.4 ± 11,2 2.7 ± 6.9 <0.0001 6.4 ± 10.5 2.8 ± 6.8 <0.0001 6.4 ± 10.1 2.9 ± 7.2 0.0045 SDS 2.9 ± 4.5 1.8 ± 3.9 0.1134 3.1 ± 5.3 1.5 ± 3.8 0.0002 2.6 ± 4.4 1.3 ± 3.0 0.0106 Rest LVEF 44.2 ± 18.9 60.7 ± 13.1 <0.0001 54.9 ± 17.9 65.1 ± 13.5 <0.0001 56.6 ± 16.5 67.6 ± 14.3 <0.0001 Rest LVEDV 138.7 ± 76.7 89.0 ± 40.1 <0.0001 98.9 ± 65.5 76.1 ± 35.9 <0.0001 87.5 ± 48.3 66.5 ± 29.7 0.0001 Rest LVESV 89.0 ± 74.6 39.0 ± 35.0 <0.0001 53.3 ± 55.5 30.2 ± 28.9 <0.0001 44.1 ± 40.4 24.8 ± 24.6 <0.0001 Stress LVEF 45.0 ± 18.8 61.0 ± 13.7 <0.0001 53.5 ± 17.0 64.1 ± 13.8 <0.0001 53.7 ± 15.9 65.3 ± 14.3 <0.0001 Stress LVEDV 156.1 ± 82.9 101.4 ± 43.4 <0.0001 114.6 ± 69.5 88.0 ± 38.3 <0.0001 101.4 ± 46.4 77.7 ± 31.8 <0.0001 Stress LVESV 99.0 ± 80.1 44.1 ± 38.3 <0.0001 62.6 ± 60.8 35.7 ± 31.9 <0.0001 52.6 ± 41.1 30.4 ± 26.9 <0.0001 心血管イベント(MCVEs: major cardiovascular event)、SSS: summed stress score、SRS: summed rest score、SDS: summed difference score、左室駆出率(left ventricular ejection fraction: LVEF)、左室拡張末期容積(left ventricular end-diastolic volume:
LVEDV)、左室収縮末期容積(left ventricular end-systolic volume: LVESV)
32
表 4 単変量・多変量 Cox 比例ハザードモデルによる心血管イベント予測因子の検討
単変量解析 多変量解析
ハザード比
95% CI P
値 ハザード比95% CI P
値 年齢(連続変数)1.0321 1.0151 - 1.0494 0.0002
年齢(カテゴリー)
1.6441 1.4216 - 1.9014 <0.0001 1.6467 1.2925 - 2.0980 0.0001
男性
1.3581 0.9567 - 1.9279 0.0868
労作時息切れ
2.9878 2.1327 4.1859 <0.0001
アデノシン負荷2.8703 2.2003 - 3.7442 <0.0001
慢性心房細動
2.5346 1.6532 - 3.8860 <0.0001 2.1080 1.3608 - 3.2655 0.0008
心筋梗塞の既往2.2529 1.6384 - 3.0978 <0.0001
冠血行再建の既往
1.8002 1.3178 - 2.4593 0.0002
高血圧症
2.2280 1.3639 - 3.6396 0.0014
糖尿病
2.1810 1.5966 - 2.9793 <0.0001 1.6202 1.1777 - 2.2288 0.0030
脂質異常症
0.7789 0.5669 - 1.0701 0.1231
SSS 1.0520 1.0397 - 1.0645 <0.0001 1.0183 1.0004 - 1.0365 0.0359
SRS 1.0537 1.0399 - 1.0676 <0.0001
SDS 1.0595 1.0334 - 1.0862 <0.0001
Rest LVEF 0.9572 0.9489 - 0.9656 <0.0001
Rest LVEDV 1.0091 1.0070 - 1.0113 <0.0001
Rest LVESV 1.0104 1.0084 - 1.0124 <0.0001
Stress LVEF 0.9552 0.9468 - 0.9637 <0.0001 0.9707 0.9582 - 0.9834 <0.0001
Stress LVEDV 1.0091 1.0071 - 1.0110 <0.0001
Stress LVESV 1.0098 1.0080 - 1.0116 <0.0001
eGFR 0.9800 0.9737 - 0.9863 <0.0001 0.9880 0.9814 - 0.9946 0.0004
信頼区間(Confidence interval: CI)、SSS: summed stress score、SRS: summed rest score、SDS: summed difference score、 左室駆出率(left ventricular ejection fraction: LVEF)、左室拡張末期容積(left ventricular end-diastolic volume: LVEDV)、 左室収縮末期容積(left ventricular end-systolic volume: LVESV)、推算糸球体濾過率(eGFR: estimated glomerular filtration rate)
33
図 1 :年齢階級別死因別死亡数(平成 27 年)
平成27年人口動態調査より引用
34
図 2 :介護が必要となった主な原因構成(平成 25 年)
厚生労働省「平成25年度国民生活基礎調査の概況」より引用
n=7000
35
図 3 :当院の SPECT プロトコール
Tl-201 安静時撮影
負荷試験
(薬剤・運動) 背臥位 腹臥位
0 30 45 60 75
Tl-201 111 MBq投与
90 (分)
15
99m-Tc 740 MBq投与
99m-Tc 負荷後撮影
24(時間)
24時間後撮影
36
図 4 :心筋血流 SPECT 画像の視覚的スコアリング法
37
図 5
A :3年間の複合心血管イベント発症率の年代別比較
B :3年間の心血管死発症率の年代別比較
38
C :3年間の非致死性心筋梗塞および脳梗塞発症率の年代別比較
39
図 6 :超高齢群における心筋血流 SPECT から算出した SSS の重症度別に 3 区分
したカプランマイヤー解析
40
図 7 :独立した予後予測因子の除去による超高齢群の 3 年間の複合心血管イベ
ント発症率の推移
41
図 8 : SPECT 正常例における若年群、高齢群、 multivariate リスクのない超高齢
群、 multivariate リスクを有する超高齢群に 4 区分したカプランマイヤー
解析
42