問題と目的
昨今,高等教育では,キャリア教育による基礎 的,汎用的能力の育成が求められている(中央教 育審議会,2011)。また,大学教育の質保証とい う観点から,学士課程教育の学習成果が求められ るようになっており(中央教育審議会,2012),
専攻学問の学習を通じた,大学教育で培われるべ き力の獲得が望まれている(日本学術会議,2010)。
大学の分野別の学修を通じて大学教育で培われる べき力は,大きく2つに分類することができる。
1つ目は“分野に固有の能力”と言われる,専門 的な知識や理解に関する力である。2つ目は“ジェ ネリックスキル”で,分野に固有の知的訓練を通 じて獲得可能であるが,分野に固有の知識や理解 に依存せず,一般的・汎用的な有用性をもつ何か を行うことができる能力である(日本学術会議,
2010)。
ジェネリックスキルは特に産業界から求められ る能力であり,専攻する学問分野に依存しない,
普遍的な能力であるが,大学は学問の場であるた め,ジェネリックスキル育成に特化した取り組み で育成されるよりも,学問分野の内容を通して育 成されたものが職業場面でも汎用性を持つことが 望ましいとされている(久保田,2013)。つまり,
要旨
昨今,大学教育において,キャリア教育や専攻学問の教育を通じた,大学教育で培われるべき力の獲得が求めら れている。また,大学教育で培われるべき力の獲得を考える上で,専攻学問の学修目標や所属学部の目標を知り,
専攻学問を学ぶことで身に付く力に対して,専攻学問の学修がどのように有効かを学生に伝えることは重要である と考えられる。そこで本研究は,専攻学問とキャリアの関連を考える授業に着目し,授業によって課題価値が影響 を受けるかについて検討した。課題価値とは,学習者が学習内容にどのような価値を求めるのか,現在学んでいる 学習にどのような価値評定をしているかという,学習に対する価値づけであり,授業進行の工夫により変化する可 能性があるとされている。専攻学問に対する課題価値を,授業前,授業直後,授業終了5カ月後の3回,縦断的に 測定した。分析の結果,授業直後には課題価値のうち利用価値,興味価値,私的獲得価値が向上したものの,利用 価値,私的獲得価値では向上した価値得点が5カ月後に維持されないことが示された。授業によって一度向上した 課題価値を,維持させる要因の検討などが今後の課題として示唆された。
キー・ワード:課題価値,大学教育,キャリア教育,専攻学問
専攻学問とキャリアの関連を考える授業が 課題価値に及ぼす効果
松本明日香
*1・小川一美
*2・斎藤和志
*2Theeffectsontaskval ueofacl asswhi chcompel sstudentstothi nk abouttheassoci ati onbetweenmaj orsubj ectandfuturecareer.
AsukaMatsumoto,KazumiOgawaandKazushiSai to
*1愛知淑徳大学大学院心理医療科学研究科
*2愛知淑徳大学心理学部 教授
大学で専攻する学問分野の学修を通じて,専攻学 問の専門知識と同時に,ジェネリックなスキルを 育成することが重要となるのである。日本学術会 議(2010)は,専門教育は大学院の役割が大きく なっており,学士課程教育では,専門分野を学ぶ ための基礎教育や,学問分野の別を超えた普遍的・
基礎的な能力の育成が強調されていることを指摘 している。そしてその上で,大学の教育研究上の 目的に即して,専攻分野の学習を通していかに学 生が学修成果を獲得できるかという観点に立つ必 要性を述べている。つまり,分野固有の特性をもっ た専門知識はもちろん,分野を超えた普遍的な,
いわゆるジェネリックなスキルも含め,大学教育 で培われるべき力は,専攻する学問分野の学修を 通じて得ることこそ重要であるといえる。
専攻学問を通じた,大学教育で培われるべき力 の獲得を考える上で,専攻学問の学修目標や所属 学部の目標を知り専攻学問を学ぶことで身に付く 力に対して,専攻学問の学修がどのように有効か を学生に伝えることは重要だと考えられる。市川
(1993)や村山(2003)は,学習者が実際に学習 方略を使用するには,学習方略の知識に加え,学 習方略の有効性の認知が重要であると述べている。
学習方略の知識をまず得,さらに方略が有効であ るという認知を得ること,つまり,知識と,その 知識がどのように有効なのかを学習者が結びつけ られることが重要なのである。これを,専攻学問 の学修と大学教育で培われるべき力の獲得の関係 に置き換えると,専攻する学問によってどのよう な力が獲得できるかを知り,その獲得する力はど のように有効なのかを知ることが,非常に重要で あると考えられるだろう。つまり,専門的な知識 に加え,学生が,自分の現在行っている学びによっ て,どのような汎用的な力が身に付き,それはど のように活かせるのか,ということを知ることが 大切なのである。大学は,教育の実施や卒業認定・
学位授与に関する基本的な方針であるカリキュラ ム・ポリシーやディプロマ・ポリシーを明確にす る必要があるとされている(中央教育審議会,
2005;中央教育審議会,2008など)。そしてディ プロマ・ポリシー等では,学士課程で身に付けさ せる専門分野を越えた汎用的能力を具体的に示す
必要があると言われている(中央教育審議会,
2012)。つまり大学,学部にポリシーが存在し,
それらを指針として大学の教育が行われているこ とを知り,自分の所属する学部の方針,学修の目 標を学生が自覚する経験が,専攻学問を通じた,
大学教育で培われるべき力の獲得に影響すると考 えられる。
そこで本研究では,専攻学問のカリキュラム・
ポリシーやディプロマ・ポリシーなど,学部の目 標を学生に再確認させる講義形式の授業に着目す る。この授業は,所属する学部での教育を通じて 身に付けるべき力は何か,そのためにはどうすべ きかについて理解し,それらを自身のキャリアに どのように活かしていくことができるのかについ て考えることを目標とした授業である。授業内容 としては,現在社会で求められている力は何かを,
所属学部のカリキュラム・ポリシー,ディプロマ・
ポリシーを踏まえながら考えていき,これからの 自分自身のキャリアや生き方について考えるといっ たものである。学生が,所属する学部で卒業する までに身に付けるべき力を自覚し,それは所属学 部においてどのように身に付くのかを知ることは,
大学教育で培われるべき力を実際に身に付けるきっ かけになる可能性がある。
そして,専攻学問とキャリアの関連を考える授 業を受けることは,専攻する学問をどのように捉 えるかという意識に影響する可能性がある。金子
(2007)は,大学生の学習に対する「かまえ」が 大学教育において重要であり,「かまえ」によっ て学生が大学教育から受ける影響が異なると述べ ている。専攻学問の学修をどのように捉えるかと いう視点は,大学生の「かまえ」の1つであると 考えられ,学修の捉え方の違いによって,大学教 育から受ける影響や,大学教育を通じて獲得すべ き力に影響を与える可能性がある。
本研究では,その「かまえ」を,専攻学問に対 する課題価値という観点から検討する。課題価値 は学習動機づけから派生した概念であり,学習者 が学習内容にどのような価値を求めるのか,現在 学んでいる学習にどのような価値評定をしている かという学習への価値に関する概念のことである
(伊田,2001)。Eccl
es& Wi gfi el d
(1985)は,ある課題に取り組む際の動機づけの価値的側面を 課題価値として概念化し,利用価値,興味価値,
獲得価値という3つの課題価値を挙げている。日 本 で は , 伊 田 (2001) が
Eccl es & Wi gfi el d
(1985)の概念を精緻化し,利用価値と獲得価値 をそれぞれさらに2種類に分け,課題価値を5つ に分類している。利用価値は,“ある内容を学習 することが将来の職業的な目標の達成に寄与する”
と価値づけるもので(伊田,2001),学習内容の 職業的な実践場面における有用性の認識である実 践的利用価値と,ある内容の学習が,就職や進学 の試験で合格することに対し有効であるという認 識である制度的利用価値に分けられている。前者 は“職業実践という予期的活動と内容的に関連し ている場合に認識される価値”であり,後者は
“職業実践との直接的な関連性ではなく,あくま で進路目標を達成するための手段性”を意味する 価値である(伊田,2002)。次に,興味価値とは,
ある課題に従事することによって楽しさや充実感 を得られるという価値である。伊田(2002)は,
興味価値は,従来の動機づけ研究における内発的 動機づけに類似した概念であるが,内発的動機づ けは「楽しいから学ぶ」という学習それ自体を目 的にしており,興味価値は「取り組むことが楽し い」という認識を表し,内発的動機づけとは概念 的に異なることを強調している。そして獲得価値 とは,ある課題に取り組み,そこで成功すること が望ましい自己スキーマの獲得につながるという 価値を指す(伊田,2001)。伊田(2001)は,こ の獲得価値を私的獲得価値と公的獲得価値の2つ に分類している。私的獲得価値は,“ある内容を 学習することが,自分自身が望ましいと考えてい る自己像の獲得につながること”,つまり“その 課題に取り組むことによって,なりたいと思って いる自分に近づくとか,自分自身が成長すると感 じられることを意味する価値”である。一方,公 的獲得価値は,“ある内容を学習することが他者 から見て望ましいと(本人が)認知している”,
つまり“ある課題に取り組むことが他者からの賞 賛に値するとか,その課題に成功したならば周囲に 自慢できるといったことを意味する価値”である。
また,課題価値は,何らかの介入によって変容
が可能なものである。大谷(2013)は,課題価値 には授業者による介入可能性があり,課題価値の 向上支援は,授業進行の工夫によって実現できる と述べている。つまり,授業によって,大学生の 課題価値を変容させることが可能だといえる。し かし,解良・中谷(2014)も指摘しているように,
課題価値を規定する要因についての研究は少ない。
課題価値を,授業に対する評価として捉え,授業 や実習との関連を検討している研究はいくつか存 在するが(前原・平田・小林,2007;三島・斎藤・
森,2009),まだまだ少ないのが現状である。そ のため,どのような要因が課題価値を規定してい くのかという知見を蓄積していくことは極めて重 要である。
なお,伊田(2002)は,利用価値を見出すため には学習者が明確な職業的目標を持っていること が必要であり,また獲得価値を持つためには,獲 得されるべき自己像が明確になっていることが求 められると述べている。本研究で取り上げる授業 は「専攻学問の学びを通じて獲得できる力」と,
「社会で求められる力」について考えさせること によって,自分の学びと職業的目標との繋がりを 作ること,学びを通じて獲得したい・すべきであ る自己像を明確化することが可能になり,それが 課題価値の変容に繋がると考えられる。課題価値 は「キャリア」との関連が深く,専攻学問の学修 目標を自覚し,それらは自身のキャリアにどのよ うに活かしていくことができるかを考えることに よって,影響を受ける可能が高い。
以上より本研究では,専攻学問とキャリアの関 連を考える授業が,専攻学問に対する課題価値に 及ぼす効果を検討する。
方 法
*3 調査対象者(1)授業前調査・授業直後調査
心理学部の3年生201名,4年生3名を対象に 質問紙調査を行った。なお,4年生は,因子分析
*3本研究は,愛知淑徳大学大学院心理医療科学研究 科倫理委員会の承認を受け実施した(承認番号:
2014-004-r01)。
のみ分析対象とし,分散分析の分析対象からは除 外した。
(2)追跡調査
授業を受講した3年生のうち,回答を承諾した 128名を対象に質問紙調査を行った。
授業概要
心理学部が行っている3年生向けの講義形式の 授業を対象とした。3年生向けの授業であるが,
それまで履修していなかった4年生も3名受講し ていた。対象とした授業は,学部のカリキュラム・
ポリシーやディプロマ・ポリシーを明確にした上 で,学部の学修とキャリアの関連を考えさせる,
必修科目の1つであった。授業の目標は,“心理 学部生として身に付けるべき力は何か,そのため にはどうすべきかについて理解すること”であっ た。第1回から第4回までは,心理学部生が身に 付けるべき力,心理学部のカリキュラム・ポリシー,
ディプロマ・ポリシー,社会が心理学部の学生に 求めている力に関する講義形式の授業が,学部の 教員と外部講師により行われた。第5回から第8 回は,心理学部で身に付いた力や,社会で役に立っ た力に関して卒業生の講演を聞き,最後に学部の 教員が授業内容全体のまとめを行った。授業の概 要を表1に示した。授業は2014年5月下旬に2日 に渡って行われ,4時限続きの授業が,1週間空 けて実施された。調査は,授業内に2回行われた。
第1回開始時に授業前調査が,第8回の最後に授 業直後調査が実施された。
調査用紙の構成
(1)学問に対する課題価値の測定
授業前調査,授業直後調査,追跡調査において,
学問に対する課題価値の測定をするため,伊田
(2001)によって作成された4つの下位尺度から 構成される尺度(30項目)を使用した。なお,伊 田(2001)は5つの課題価値を設定し,5因子構 造になることを想定し尺度を作成したが,因子分 析の結果,実践的利用価値と制度的利用価値を想 定して作成された項目が「利用価値」として1つ にまとまり,最終的には4因子構造として下位尺 度得点を算出している。1つ目の下位尺度は,あ る内容を学習することが将来の職業的な目標の達 成に寄与すると価値づける「利用価値」(12項目),
2つ目は,ある課題に従事することによって楽し さや充実感を得られるという価値である「興味価 値」(6項目),3つ目は,その課題に取り組むこ とによって,なりたいと思っている自分に近づく とか,自分自身が成長すると感じられると価値づ ける「私的獲得価値」(6項目),4つ目は,ある 課題に取り組むことが他者からの賞賛に値すると か,その課題に成功したならば周囲に自慢できた りするといったことを意味する価値である「公的 獲得価値」(6項目)であった。伊田(2001)で は,特定の講義に対するの課題価値を測定してい た。しかし本研究では特定の講義ではなく専攻学 問全体に対する課題価値を測定することが目的で あるため,教示文を専攻学問に対する価値を測定 できるものに変更した。各項目について,「あな たが大学で専攻している分野についておたずねし ます。以下の質問が,あなたが大学で専攻してい る分野で扱われてきた内容の記述としてどの程度 あてはまると思うかを,7段階で評定して下さい。」
という問いのもとに,“全くあてはまらない”か ら“非常にあてはまる”の7件法で評定するよう 求めた。
表1 授業概要
回数 授業計画
初 日
第1回 心理学部の学生が身に付けるべき力とは ← 授業前調査 第2回 カリキュラム・ポリシーとディプロマ・ポリシーの確認
第3回 社会が心理学部の学生に求めている力①社会が心理学部の学生に求めている力② ←
外部講師の 話を聞く 第4回
2日目
第5回 心理学部生の卒業後の進路状況など
第6回 心理学部で身に付けることができた力,社会で役立つ力①心理学部で身に付けることができた力,社会で役立つ力② ←
卒業生の 話を聞く 第7回
第8回 まとめ ← 授業直後調査
(2)インターンシップ経験の有無
授業直後調査から追跡調査の間に夏季のインター ンシップ研修が行われた。課題価値はキャリアと の関連が深いため,職業体験というキャリアに大 きく影響する可能性のある,夏季インターンシッ プ経験の効果も確認する必要がある。そこで追跡 調査において,夏季インターンシップの経験につ いて“この夏,インターンシップを経験しました か”という問いのもと,“はい”,“いいえ”で回 答を求めた。
(3)全ての調査において,学籍番号の記載を求 めた。
調査手続き
(1)授業前・授業直後調査
第1回開始時と,第8回の最後にそれぞれ集団 質問紙調査を実施した。調査対象者には,調査へ の依頼とプライバシーの保護に関する説明をし,
承諾を得てから回答を始めてもらった。また,学 籍番号の記載を求めたが,これは後日行う調査と データをマッチングするためであり,個人を特定 するためではないこと,調査内容は授業の成績評 価に影響しないことも重ねて説明をした。授業直 後調査の回答後には,調査目的,プライバシー保 護に関する約束,調査への質問や結果についての 連絡先を記したデブリーフィング用紙を配付した。
所要時間は,授業前・授業直後調査ともに約20分 であった。
(2)追跡調査
授業が終了した5カ月後の2014年10月下旬から 11月中旬にかけて,授業を受講した学生を対象に 追跡調査を行った。追跡調査用紙は所属ゼミごと に,担当の教員に配付を依頼した。調査対象者に はその場で回答するか,もしくは持ち帰ってもら い後日調査用紙回収箱に投函するよう依頼した。
表紙には調査への依頼とプライバシーの保護に関 する説明,学籍番号の記載は以前行った調査とデー タをマッチングするためであり個人を特定するた めではないことが記載された。なお,表紙に書か れた文章内容に同意し,調査に回答する場合はチェッ ク欄にチェックをし,その上で次のページへ進む ように示した文章が最後に記載されていた。調査
用紙配付の際,同時に調査目的,プライバシー保 護に関する約束,調査への質問や結果についての 連絡先を記したデブリーフィング用紙を配付し,
調査用紙回答後に読むよう依頼した。
結 果
課題価値尺度の構成課題価値の因子構造を確認するため,少しでも 多くのサンプル数で分析した方が良いと考え,本 調査のデータに加え,2014年5~7月にかけ大学 生68名に行った調査データも使用し,計272名の データを用いて分析を行った。課題価値尺度につ いて,主因子法,プロマックス回転による因子分 析を行った結果,固有値の減衰状況は11
.
87,4.
07,2
.
16,1.
45
,0. 9
7…であった。固有値の減衰状況や 解釈可能性の点から4因子として解釈することが 適切であると判断し,因子数を4に指定して再度 主因子法・プロマックス回転による因子分析を行っ た。いずれの因子における因子負荷量も.45
未満 であった項目8(将来,社会人として活動する上 で大切な内容),19
(自分の個性を活かすのに役 立つような内容),26(学んでいて知的な刺激が 感じられる内容),28(学んでいることに誇りが 感じられる内容)と,因子負荷量が第1因子と第 3因子両方に.45
以上あった項目5(将来の仕事 に関わる社会的な問題を理解するのに役立つ内容)を削除し,再び主因子法・プロマックス回転によ る因子分析を行った。結果は表2の通りであった。
第1因子には,“希望する職業に就くための試験 に必要な内容”や“自分の希望する職業の中身に 関係するような内容”といった,先行研究におい て実践的利用価値および制度的利用価値に分類さ れている10項目が高く負荷していた。これら10項 目の平均値を利用価値得点とした。この得点が高 いほど,自分の専攻学問は,将来の職業的な目標 の達成に寄与する学問であると価値づけていると いうことである。第2因子には,“学んでいて楽 しいと感じられる内容”,“興味を持って学ぶこと ができるような内容”といった5項目が高く負荷 していた。これら5項目の平均値を興味価値得点 とした。この得点が高いほど,自分の専攻学問は,
充実感や満足感を喚起する学問であると価値づけ ているということである。第3因子には,“知っ ていると周囲からできる人として見られるような 内容”,“学ぶと人よりかしこくなると思えるよう な内容”といった5項目が高く負荷していた。こ れら5項目の平均値を公的獲得価値得点とした。
この得点が高いほど,自分の専攻学問を学修する ことは,他者から見て望ましいと認知されている と価値づけているということである。第4因子に は,“今まで気づかなかった自分の一面を発見で きるような内容”,“学ぶと,自分自身のことがよ りよく理解できるような内容”といった5項目が 高く負荷していた。これら5項目の平均値を私的 獲得価値得点とした。この得点が高いほど,自分 の専攻学問は,自分自身が望ましいと考えている 自己像の獲得に繋がる学問であると価値づけてい るということである。
授業が課題価値に及ぼす効果の検討
専攻学問とキャリアの関連を考える授業が,課 題価値に及ぼす効果を検討するため,調査時期
(授業前調査,授業直後調査,追跡調査)とイン ターンシップ経験(あり,なし)を独立変数,課 題価値(利用価値,興味価値,私的獲得価値,公 的獲得価値)を従属変数とした2要因分散分析
(混合計画)を行った。各群の課題価値得点の記 述統計量を表3に示した。
利用価値を従属変数とした分散分析の結果,
調査時期の主効果が有意であった(F(2,242)=
35
.
835,p<.001,
ηp2=.228;図1)。引き続き多 重比較を行ったところ,授業前調査よりも授業直 後調査のほうが,得点が有意に高く,また授業直 後調査のほうが追跡調査よりも得点が高かった。つまり,授業を受ける前よりも後のほうが,自分 の専攻学問は,将来の職業的な目標の達成に寄与 する学問であると価値づけるようになるが,授業 5カ月後では得点の向上が維持されないことがわ かった。なお,調査時期とインターンシップ経験
Ϩ ϩ Ϫ ϫ
䠘⏝౯್䠚 α=.940
㸰㸵.⮬ศࡢᕼᮃࡍࡿ⫋ᴗࡢ୰㌟㛵ಀࡍࡿࡼ࠺࡞ෆᐜ ..927 -.057 -.128 -.009 㸯㸳.ᕼᮃࡍࡿ⫋ᴗᑵࡃࡓࡵࡢヨ㦂ᚲせ࡞ෆᐜ ..918 .030 -.069 -.187 㸰㸷.ᑵ⫋ࡸ㐍Ꮫࢆࡋࡼ࠺ࡍࡿ㝿ᙺ❧ࡘෆᐜ ..905 -.051 .024 -.015 㸰㸰.⮬ศࡢ㐍㊰┠ᶆࢆᐇ⌧ࡍࡿࡢᚲせ࡞ෆᐜ ..876 .046 -.107 -.039 㸰㸮.ᑵ⫋ࡲࡓࡣ㐍Ꮫࡍࡿ㝿せồࡉࢀࡿᛮ࠺ෆᐜ ..811 -.073 .089 -.002 ࠉ㸴.ᑵ⫋ࡲࡓࡣ㐍Ꮫ࡛ࡁࡿྍ⬟ᛶࡀ㧗ࡲࡿෆᐜ ..795 -.021 .118 -.107 㸯㸴.ᑗ᮶㸪࠾ࡅࡿᐇ㊶࡛⏕ࡍࡇࡀ࡛ࡁࡿෆᐜ ..739 .048 .033 .069 ࠉ㸰.ᑵ⫋ࡸ㐍Ꮫࡢヨ㦂✺◚ࡗ࡚ษ࡞ෆᐜ ..638 .130 .014 -.031 㸰㸳.ᑗ᮶㸪ࡢ୰࡛┤㠃ࡍࡿㄢ㢟ࢆゎỴࡍࡿࡢᙺ❧ࡘෆᐜ ..587 .006 -.001 .223 㸯㸰.⫋ᴗࢆ㏻ࡋ࡚♫㈉⊩ࡋࡼ࠺ࡍࡿࡁᙺ❧ࡘෆᐜ ..526 -.086 .105 .306 䠘⯆౯್䠚㻌α=.912
㸰㸲.Ꮫࢇ࡛࠸࡚㠃ⓑ࠸ឤࡌࡽࢀࡿෆᐜ -.041 ..974 -.021 -.112 ࠉ㸯.Ꮫࢇ࡛࠸࡚ᴦࡋ࠸ឤࡌࡽࢀࡿෆᐜ .145 ..910 -.089 -.102 㸯㸱.⯆ࢆᣢࡗ࡚Ꮫࡪࡇࡀ࡛ࡁࡿࡼ࠺࡞ෆᐜ -.047 ..817 -.003 .052 㸯㸮.Ꮫࢇ࡛࠸࡚‶㊊ឤࡀᚓࡽࢀࡿෆᐜ -.033 ..722 .034 .081 㸯㸶.Ꮫࢇ࡛࠸࡚ዲወᚰࡀࢃ࠸࡚ࡃࡿࡼ࠺࡞ෆᐜ -.070 ..684 .118 .128 䠘බⓗ⋓ᚓ౯್䠚㻌α=.843
㸰㸱.▱ࡗ࡚࠸ࡿ࿘ᅖࡽ࡛ࡁࡿேࡋ࡚ぢࡽࢀࡿࡼ࠺࡞ෆᐜ .072 -.134 ..882 -.110 㸯㸵.Ꮫࡪேࡼࡾࡋࡇࡃ࡞ࡿᛮ࠼ࡿࡼ࠺࡞ෆᐜ -.058 -.071 ..783 -.032 㸯㸲.ヲࡋࡃ▱ࡗ࡚࠸ࡿ⪅ࡽᑛᩗࡉࢀࡿࡼ࠺࡞ෆᐜ -.093 .080 ..771 .023 ࠉ㸵.Ꮫࢇࡔࡇࡀࡢே⮬៏࡛ࡁࡿࡼ࠺࡞ෆᐜ .109 .203 ..579 -.012 ࠉ㸲.㌟ࡘࡅ࡚࠸ࡿ࢝ࢵࢥᛮ࠼ࡿෆᐜ -.004 .113 ..498 .138 䠘⚾ⓗ⋓ᚓ౯್䠚 α=.861
㸯㸯.ࡲ࡛Ẽ࡙࡞ࡗࡓ⮬ศࡢ୍㠃ࢆⓎぢ࡛ࡁࡿࡼ࠺࡞ෆᐜ -.089 -.037 -.065 ..874 ࠉ㸷.Ꮫࡪ㸪⮬ศ⮬㌟ࡢࡇࡀࡼࡾࡼࡃ⌮ゎ࡛ࡁࡿࡼ࠺࡞ࡿෆ -.033 .019 -.075 ..827 㸰㸯.⮬ศ࠸࠺ே㛫ᑐࡋ࡚⯆࣭㛵ᚰࢆࡶࡘࡼ࠺࡞ෆᐜ -.068 -.059 .094 ..767 㸱㸮.Ꮫࡪࡇ࡛ே㛫ⓗᡂ㛗ࡍࡿᛮ࠼ࡿࡼ࠺࡞ෆᐜ .235 .102 .077 ..532 ࠉ㸱.Ꮫࡪࡇࡼࡗ࡚㸪ࡼࡾ⮬ศࡽࡋ࠸⮬ศ㏆࡙ࡃࡇࡀ࡛ࡁ .059 .317 -.100 ..508 ᅉᏊ㛫┦㛵ࠉϨ .387 .368 .378 ϩ .432 .654
Ϫ .530
表2 課題価値尺度の因子分析結果(主因子法・プロマックス回転後)
の交互作用効果 (
F
(2,
242)=0.
007, ns ,η
p2<.
001),およびインターンシップ経験の主効果は 有意でなかった (F
(1,
121)=0.
399, ns ,η
p2=.
003)。興味価値を従属変数とした分散分析の結果,調 査 時 期 の 主 効 果 が 有 意 傾 向 で あ っ た (F(2
,
250)=2.
585, p
=.077,
ηp2=.020;図2)。引き 続き多重比較を行ったところ,授業前調査よりも 授業直後調査のほうが,得点が高い傾向にあった。つまり,授業を受ける前よりも後のほうが,自分 の専攻学問は,充実感や満足感を喚起する学問で あると価値づけることがわかった。なお,調査時 期とインターンシップ経験の交互作用効果 (F
(2
,
250)=0.
432, ns ,
ηp2=.003)およびインター ンシップ経験の主効果は有意ではなかった (F(1
,
125)=0.
100, ns ,
ηp2=.001)。私的獲得価値を従属変数とした分散分析の結果,
調 査 時 期 の 主 効 果 が 有 意 で あ っ た (F(2
,
246)=10.
093, p
<.001,
ηp2=.076;図3)。引き続き多重比較を行ったところ,授業前調査よりも 授業直後調査のほうが得点が有意に高く,また授 業直後調査のほうが追跡調査よりも得点が高かっ た。つまり,授業を受ける前よりも後のほうが,
自分の専攻学問は,自分自身が望ましいと考えて いる自己像の獲得に繋がる学問であると価値づけ るようになるが,授業5カ月後では得点の向上が 維持されないことがわかった。また,私的獲得価 値においてのみ,交互作用効果に有意傾向がみら れた(F(2
,
246)=2.
339, p
=.099,
ηp2=.019)。単純主効果検定の結果,授業直後調査におけるイ ンターンシップ経験の単純主効果の有意傾向がみ られ(F(1
,
123)=2.
97, p
=.087),インターンシッ プ経験あり群のほうがなし群よりも私的獲得価値 得点が高かった。また,インターンシップ経験あ り群,なし群における調査時期の単純主効果が有 意であり,あり群では授業直後調査が授業前調査,追跡調査よりも得点が高く,なし群では授業直後 調査が授業前調査よりも得点が高かった(あり群:
M SD M SD M SD M SD n
࠶ࡾ 4.34 (1.20) 5.01 (1.32) 4.32 (1.25) 4.56 (1.13) 38
࡞ࡋ 4.45 (1.02) 5.13 (1.01) 4.44 (1.06) 4.67 (0.88) 85 ィ 4.42 (1.08) 5.09 (1.11) 4.41 (1.12) 4.64 (0.96) 123
࠶ࡾ 5.98 (0.77) 6.07 (0.80) 5.93 (0.98) 5.99 (0.77) 39
࡞ࡋ 5.88 (0.78) 6.03 (0.71) 5.94 (0.75) 5.95 (0.66) 88 ィ 5.91 (0.78) 6.04 (0.74) 5.93 (0.82) 5.96 (0.69) 127
࠶ࡾ 5.55 (0.85) 5.98 (0.91) 5.55 (1.14) 5.69 (0.86) 38
࡞ࡋ 5.44 (0.90) 5.66 (0.95) 5.57 (0.86) 5.56 (0.78) 87
ྜィ 5.48 (0.88) 5.76 (0.95) 5.56 (0.95) 5.60 (0.81) 125
࠶ࡾ 4.81 (1.08) 4.87 (1.25) 4.80 (1.14) 4.82 (1.09) 39
࡞ࡋ 4.83 (0.91) 4.87 (1.09) 4.89 (0.93) 4.86 (0.88) 87
ྜィ 4.82 (0.96) 4.87 (1.14) 4.86 (1.00) 4.85 (0.94) 126 ㄪᰝᮇ
බⓗ
⋓ᚓ౯್
ࣥࢱ࣮ࣥ
ࢩࢵࣉ⤒㦂
⏝౯್ ࣥࢱ࣮ࣥ
ࢩࢵࣉ⤒㦂
ィ
⯆౯್ ࣥࢱ࣮ࣥ
ࢩࢵࣉ⤒㦂
⚾ⓗ
⋓ᚓ౯್
ࣥࢱ࣮ࣥ
ࢩࢵࣉ⤒㦂
ᤵᴗ๓ ᤵᴗ┤ᚋ ㏣㊧
表3 群ごとの課題価値得点の平均値,標準偏差
4.00 4.40 4.80 5.20 5.60 6.00
ᤵᴗ๓ ᤵᴗ┤ᚋ ㏣㊧
࠶ࡾ
࡞ࡋ
ࣥࢱ࣮ࣥࢩࢵࣉ⤒㦂
⏝ ౯್
0.00
図1 群ごとの利用価値得点
5.70 5.80 5.90 6.00 6.10 6.20
ᤵᴗ๓ ᤵᴗ┤ᚋ ㏣㊧
࠶ࡾ࡞ࡋ
ࣥࢱ࣮ࣥࢩࢵࣉ⤒㦂
⯆
౯್
0.00
図2 群ごとの興味価値得点
F (1 , 246)=7 . 43 , p =. 001,なし群:F (1 , 246)=
3 . 43 , p =. 034)。つまり,授業直後調査時点はイ ンターンシップ実施前ではあるが,後にインター ンシップを経験した学生,しなかった学生ともに,
授業を受ける前よりも後のほうが,自分の専攻学 問は自分自身が望ましいと考えている自己像の獲 得に繋がる学問であると価値づけていることがわ かった。しかし,後にインターンシップを経験し た学生は,授業直後は経験しなかった学生より私 的獲得価値が高くなるものの,5カ月後にはなし 群と同程度まで得点が低くなるということも示さ れた。ただし,交互作用そのものが有意傾向であ るため,結果の解釈には慎重になる必要がある。
なお,インターンシップ経験の主効果は有意では なかった(F (1 , 123)=0 . 761 , ns , η
p2=. 006)。
公的獲得価値においては,分散分析の結果,調 査時期とインターンシップ経験の交互作用効果,
調査時期の主効果,インターンシップ経験の主効 果すべてにおいて,有意な効果が示されなかった
( 順 に F (2 , 248)=0 . 222 , ns , η
p2=. 002; F (2 , 248)=0 . 260 , ns , η
p2=. 002; F (1 , 124)= 0 . 047 , ns , η
p2<. 001;図4)。
考 察
専攻学問とキャリアの関連を考える授業が,課 題価値に及ぼす効果を検討した結果,利用価値,
興味価値,私的獲得価値は,授業前調査よりも授 業直後調査のほうが,得点が高くなることが示さ れた。つまり大学3年時に,専攻学問とキャリア の関連を考える授業を受講することは,一部例外 はあるものの,課題価値の向上に効果をもたらす ということが示唆された。
今回着目した授業では,初めに自らの学部の学 修目標を再確認させ,その上で,社会で求められ ている,専攻学問を通じて身に付けるべき力につ いて講義を行った。その後,それぞれ異なる分野 で働く卒業生が自分の経験をもとに,心理学部で 身に付いた力と,実際に社会で役立つ力を関連付 けながら講演を行うというものだった。学習方略 の文脈において,学習方略の有効性認知が実際の 学習方略使用に重要な影響を持つことが指摘され ている(市川,1993;村山,2003など)。つまり,
学習方略を実際に使用するに至るには,まずその 学習方略が有用であるという認知を持つ必要があ るということである。今回取り上げた授業は,自 分の専攻学問を学ぶことで身に付く力が社会でど う活きるか,どう活かせるかという,専攻学問を 学ぶことの有効性の認知を刺激する内容だといえ る。今回の授業で,得点が向上した課題価値の中 の1つである, 専攻学問に対する利用価値は,
“専攻学問を学ぶことは将来の職業的目標に対し てどの程度有効なのか”と感じている程度と言い 換えることも可能である。そのため,専攻学問の 職業的目標に対する有効性が,直接的に授業にお いて刺激され,利用価値の得点が高くなった可能 性がある。加えて,学習者が明確な職業的目標を 持っていることが利用価値を見出すためには必要 だと言われており(伊田,2002),実際の就業場 面で専攻学問を学んで得た力を使用した卒業生の 例を聞いたことによって,参加者の職業的目標が 刺激され,利用価値の得点が高くなったとも考え られる。
私的獲得価値に関しては,授業を受講する中で,
自身のキャリアや生き方について考えさせたこと
5.20 5.40 5.60 5.80 6.00 6.20
ᤵᴗ๓ ᤵᴗ┤ᚋ ㏣㊧
࠶ࡾ
࡞ࡋ
ࣥࢱ࣮ࣥࢩࢵࣉ⤒㦂
⚾
ⓗ
⋓ ᚓ ౯
್ 0.00
図3 群ごとの私的獲得価値得点
4.40 4.60 4.80 5.00 5.20 5.40
ᤵᴗ๓ ᤵᴗ┤ᚋ ㏣㊧
࠶ࡾ
࡞ࡋ
ࣥࢱ࣮ࣥࢩࢵࣉ⤒㦂
බⓗ
⋓ᚓ ౯್
0.00
図4 群ごとの公的獲得価値得点
が効果を持った可能性がある。学んでいる課題に 対して私的獲得価値を持つためには,獲得される べき自己像が明確になっていることが求められる
(伊田,2002)。授業を通して,獲得されるべき自 己像,つまり,専攻学問を学ぶことで獲得すべき 力は何なのかということを考えることが,私的獲 得価値を高めたと考えられる。
そして興味価値については,授業を通して,自 分の専攻する学問は単純に専門的な知識だけでな く,社会に出た際に求められている力に影響する と気づき,そのことによってより専攻学問を学ぶ ことが楽しいと思うようになり,得点が高まった のかもしれない。
しかし,利用価値,私的獲得価値においては,
授業を受講することによって一度は向上した価値 得点が,5カ月後の調査時点では維持されていな かった。これは,授業が実施された時期が3年生 前期であったことが理由として考えられる。専攻 学問の学修によって身に付く力とは異なるが,村 山(2003)は,学習方略の使用に関する研究で,
直接的な影響を与えているのは短期的な学習方略 の有効性の認知であり,長期的な有効性の認知は 短期的な有効性の認知を介した間接的な影響力の みにとどまることを示している。短期的な有効性 の認知とは,学習方略の使用によって目前に迫る テストで良い点がとれる,という短期的な目標に 対する学習方略の有効性の認知で,長期的な有効 性の認知とは,長期的な学習への取り組みに対す る学習方略の有効性の認知のことである。有効性 の認知を今回の授業で取り上げた題材に置き換え てみると,将来のキャリアへの短期的および長期 的な目標への有効性の認知となる。今回の授業は,
3年生の前期が始まってすぐに行われたが,学生 がキャリアについてリアリティを持って考え始め る就職活動は,4年生になった時点で正式に開始 する。授業では,社会に出た際に求められる力と いう「将来」に関するものを題材にしていたため,
まだ将来というものが意識できておらず,就職活 動でさえ短期的な目標になりえていない可能性が ある3年生においては,授業によって生じた課題 価値の向上が持続しなかったのかもしれない。し かし村山(2003)は,有効性の認知に関して,方
略の長期的な有効性の認知を,介入によって学習 者に強調的に伝えたとしても,短期的な有効性の 認知が伴っていない限り,方略使用が促進されな いと指摘している。つまり,長期的な有効性の認 知を強調的に伝える取り組みは,短期的な有効性 の認知を持って初めて方略使用の促進をもたらす ということである。長期的な視点をもって学習を することは大切な視点であるため,長期的な視点 からの介入は重要であるが,その介入は短期的な 視点からの認知がない限り,その時点では効果を 持たない可能性がある。本研究の授業の効果は,
5カ月後の時点では維持されていなかったものの,
その時点で「長期的な」目標だった将来に関する 視点が,就職活動を開始する時期には「短期的な」
目標に切り替わり,専攻学問とキャリアの関連を 考える授業で学んだことが活かされ,課題価値に 再度影響する可能性は十分に考えられる。そのた め,今後は5カ月後のみではなく,4年次におい ても調査を行うなど,課題価値の変容をより長期 的に検討することが必要であるだろう。
本研究から,専攻学問とキャリアの関連を考え る授業は,学問に対する課題価値を刺激する取り 組みとしてある程度の効果が示されたといえよう。
しかし,5カ月が経った時点では,利用価値,私 的獲得価値において得点の向上が維持されず,公 的獲得価値においては授業直後の効果も示されな かった。そのため,引き続き,どのような授業が 課題価値の各側面の向上に寄与するのか,また,
一度向上した課題価値を,長期的に維持し続ける にはどのような取り組みが必要なのかを検討して いく必要がある。
引用文献
中央教育審議会(2005).我が国の高等教育の将 来像(答申)文部科学省
Retri evedfrom http: //www. mext. go. j p/b_menu/shi ngi / chukyo/chukyo
0/toushi n/attach/
1335581
. htm(20
15年11月5日)中央教育審議会(2008)