長崎医学会雑誌第30集貨11早1509一154】、亘 150注
チフス菌毒素の臨床的研究
長崎大学風土病研究所病理部こ主任:翌倉敷授)
長野康之
なう; の やす■ ゆ壱
本論文の要旨ほJ第6匝ほ漆細菌学会九州地方会・鹿児島,第27回日本細菌学会総会・東京,
第ア回日本細菌学会九州相方会・小倉,第28同日木組菌学会稔会・京都に於いて逐次発表した..
Ⅰ 緒
チフス、死菌の注射を受けた実験動物が兜死 するという事実が初めて見られた時,それを 1種や毒血症(toxaemia)に帰し,チフス菌 も毒素を産生又は含有する・と考えられたのは
,当然のことであって,この想定を基礎づけた 研究ほ,Pfei鮎r(189り,SanareIlli(1894),
CllantemeS5e(1897)・Bmieger(1902),Nei−
s$er&Shiga(1903)等によって創められ、
Pfei鮎r等は休日毒素説を観え,Brieger等 は体外毒素説を支持した.Macfadyen&Row−
l抽d(1901ノ04)は,チフス菌を冷凍状態に おいて磨砕した後に0.1%KOHで抽出し,
家兎には非常に高く,モルモットには僅綾な 毒性を持つことを証明し,Pfei鮎rの体内毒 素説を支持した.Conradi(1906)は,チフス 菌の食塩水自家融解浮湛液を350Cで1/1。量 に濃縮した濾液がモルモットに対して0.2mI の量で毒力があったことを知り,体内毒素で あるとした.然し,Meyerandl】ergell(1907)
は,寒天培養からの菌を弱アルカリ性の蒸増 水に浮辟させて,48時間墓過匿放置した後,
そのシャンベラン濾液の家兎に対する毒 性を証明し,体外毒素説を支持している.
Yamanouchi(1909)は0・5%ペプトン水に増 養したチフス菌濾液が家兎に 0・5〜1.Omlkg の致死量の毒性があった事を報告し,Arima
(1912)は,弱アルカリ性寒天他に培養さ れたチフス菌?食塩水浮酵液を遠やして,
上帝をピべツ1、で帝ったものと,匪遼菌体を
言
3回洗って磨砕し,食塩水で抽出したものと に分け,両劃分とも,家兎に対しては毒性を 示したが,モルモット,マウスに対する毒性 ほ殆ど見ちれなかったと報告しているが,現 在の趨勢に於いては,体内毒素説が有力なも,
のの如く,・Wilson(1・946)等ほ,チフス菌が 体外毒素を産出する事に観いては,田下の所,
結論ほ得られないと述べている.
一方,免疫学的研究に於いては,化学的処 置によって菌体成分を分離して,比較的純粋 な状態で抗原,抗体,毒素等を研究せんとす る傾向が接頭した,召oivinetal・(1933・35)は,
トリクロール酪酸で抽出した後に,アルコ ール沈澱によって劃分を得,Raistmick and Topley(1934)ほ,アセトンで抽出し,トリ
プシンで消化させ,それをアルコ←ルで劃分 沈澱を行っている.彼等の研究によれば,毒 作尉を起こす物質は,燐脂質と結合した複合 多糖体であって,弱酸酸で加熱すると,多糖 体と燐脂質を分離することはできるが,多糖 休も憐脂質も完全に分離された単独の状態で は毒性を失う.Martin(1935)ほ,加水分解
されない毒性物質で,マウスに対して0・5mg の平均致死量を得,Ⅰ砧ivin等によって得ら
.れた物質は僅かにそれより毒性が強かったと 報告している.チフス菌のトリクロール酪酸 分割により,いPoly$aCCharide・!ipidcomplex=
を分離し, 毒性物質ほ細菌体の抗原それ自
・体であるという事が殆ど疑われないように見
1510 長 野 える=と述べているが,体内毒象と体外毒素
との古典的な分業別も 上体内毒素 も抗体を 産生し得ることを確めた此等の研究によって 意義の大半を衷失するに至ったと言えるであ ろう..Freeman(1942)は,免疫学上特異性 を示すの亘ま多糖体であって,それが0血清に 反応すると述べている.Morgan&Partridge は,チフス菌は体外毒素を産生しないが,
1ipid−tarbohydrate−prOtein complex とみ
なされる体内毒素を産生し,就中,多糖体劃 分は,それ単独では毒性がないが,抗体中和 の性質を備えていると言っている.
このように免疫化学的に究明される一方,
毒作用の研究も竝行して進められ,Menten ahd・King(1930)は,鼠チフス菌から単離し た劃分を家兎に注射して,過血糖を起こさ せ・,・Dela6ed(1934)はRaistrickandTopley
(1934)の方法によって純粋に分離された同 菌の.割分によ・つて仔羊に於いて同様の結果を 得,Boivip&Mesrobeanu(1934)によって 確認されている.Morgan(1934)は,チフス 菌体内毒素によって起こる病理変化に関して 詳細に研究し,皮内接種により局所的に浮腫,
紅軌 壊死を認め,静脈注射により,諸臓器
・に充血;溢血,壊死を生じ 肝蔵と骨髄の病
理変化は,致命的なチフス患者の場合と非常 に類似したものが認められ,血管壁はおかさ れて,重症チフス患者に来る血栓を生ずると 述べている.
本邦に於いても,チフス毒素の本態に就い ては,細谷(1936),黒谷(1939),武田(19 42)等の興味ある報告があり,白血球減少,
腸管運動に及ばす作用等の生物学的作月]につ いても多数の観察が行われているが,その病 因論的又は臨床的の意義は今以って充分に把 握されているわけではない.
チフスの症候与しては,遅脈(比較的),
稽肖性熱型,白血球減少,尿量の減少・増加,
子宮出血,腸出血,.薔薇疹,脾腫,悪感戦懐 の紋如,発汗が少いことなどが一般に認めら れているが,著者は,一チフスの臨床症状をチ フス菌の毒作用に帰するという病因論を想定 し,其処に何等かの関連を見出したいと思い,
チフス菌体からトクロール酪酸とアセトンで 分離抽出した多糖体劃分と蛋白劃分とを用い て,家兎,猫,マウスを実験に供し,白血球 減少,発熱件礼血垣及び脈特に対する作用,
子宮及び腸の運動に対する作用,尿排泄作用 を検べ,叉,免疫処置による影響,ACTIl 授与によ・る影響をも検討した.
Ⅰ 毒素の製法・性状
チフス菌の毒素を抽出するためには,化学的方法 とJ物理的方法と,両者を合併,した方法とある.
Morgan(1940)の自家融解,Macradyen&Rowland
(i903)の凍結磨砕,Grasset(1934)の凍結と融解 の交互の反復,黒星(1939)等の金剛砂其他を加え た器械的の蹟砕,Sev瑠(1938)一等の超音波によ る振法政痍,Yen&Kurムtcbtin(19由)■,青木等
(1甲7)の実験に用いられた電気的融菌等の方法が 挙げられる他,食塩水又は蒸溜水で加熱抽出する方 法;化学薬剤による抽出などカミある.
Neisser & Shiga(】903)は,チフス菌を24時間 寒天培養▼し,生理的食塩水に浮滞せしめ,600Cで 1時間加熱し,2日間370Cに保った後,細菌濾過 器で濾過してチフス毒素を得た.小田(1912)は,
即時間寒天斜面埼養の萄苔を掻塀り,彗理食塩水
1.Occ中に菌体1・Omgの割に浮滞液を作り,これを 600Cに1時間加薬殺菌し,1日から10日に亘って 370Cの膵卵器内に納めて自家融解を待ち,水力遠 中2時間の上澄液を採った・宗玄(1920)は,18時 間寒天培養を生理食塩水に浮薄させ,60TCの水溶 申で20分間加熱滅菌し,1⊥2日間膵卵器内に保った 後,遠心沈澱の上澄液を用いた.柴田(1925)は,
チフス菌のブイヨン培養を2週間胛卵器内に保ち,
完全に自家融解を起こさせた後,600Cl時間加熱 遠心沈澱して,其上溝を使用した.島田(1930)は,
寒天培地の44時間培養を滅菌蒸溜水に浮渉させ,■3 時間煮本殺菌し,それを細菌濾過器で濾過した濾液 を重畳煎上で蒸発させた後,長時日乾燥器申に納め て樹脂状物質を得,それから無水アルコ「ルで完全 に着色しなくなるまで抽出し,それを細菌滞廼帯で
チフス菌毒素の臨床的研究 濾過して蒸発させJ酒精抽出毒と称え,アルコ←ル
に溶解しなかった物質の透析液を乾燥させて水性抽 出毒とした.牛島(1930)はJ370Cのブイヨン増 嚢2〜3週間)6肝C/30分殺菌〉遠心沈澱の上清を 探った.高橋,藤野(1930)は,ブイヨン培養18時 間の後,遠心沈澱)上清を探り,Berkereld細菌濾 過器を通した渚液を体外毒素とし〉 残法菌体を生理 的食塩水を以って3回洗源の後J37CC階卵器に24 時間放置して乾燥し,瑠璃の乳鉢で5時間磨砕し,
それに5倍量の水を加えて00OC/30分加熱しJ贈卵 器に2〜3日放置した後Jそれを潟過しないまま で,体内毒素として使用した.斎藤(1932)は,
ブイヨン咤養2〜3週間の後J遠心沈澱の上清の濾 過液を毒素液として用いた.、箭頭(1933),橋本
(1934)は,pH7.2の普通ブイヨンに7日間積 善した後J5伊Cに・1一時間滅菌しJ遠心沈澱の上 清から水酸化アルミニュ←ム吸着法によって精製 毒素を得Jまた〉沈澱物(菌体)より耐熱性有 毒物質として菌体蛋白を得た.細谷(1936)はJ 24時蘭寒天堵養のチフス菌を蒸溜水に浮薄せしめ,
620C−650Cに数時間加温しIトルオ←ルを加えて 時々損塗して数日間室温に放置した後J遠心沈澱卜 濾過I低温濃縮IpH2.0まで塩酸を加えて一夜氷 室に静置して生じた白色架状沈澱を浦別しJ浦波に 3 倍量のアセトンを加え,此際生じた洗顔を遠心沈 澱して採取しJこれを水に浮かべ,NaO‡1を滴下 して溶解しJ牛腸膜に納めて蒸溜水中に透析し,比 透析膜内溶液に再び塩酸を加えて生じた沈澱を濾別 し〉 濾液にアセトンを加えて生じたる沈澱を更に 上述の方法により溶解しJこれに3倍量のアセト ンを ̄加えて生じた沈澱を,アセトン及びコL・「一テ ルで洗源の後,乾燥させて純粋の毒素を得た.・黒 屋(1939〜1943)等は,金剛砂を加えて長時間磨砕 後,蒸溜水に浸出する等の方法により,毒素含有液 を得,それより等電点法によって蛋白質(PF)を 分離し,その上清を透析濃縮後, ̄弱酸性に於いて アルコ←ル又はアセトンに依り沈降させJ多糖体
(CF)を得た.また,弱酸性(pH5.0ノに於いて 600C又は1000C で15〜30分加熱浸出しIアセト ン沈降によつCFを得JこのCF水溶液を硫酸アン モン2/3飽和で沈澱やしめ,この糖蛋白体類似の物 質に最も強い毒性を認め,それをMF(MucoiムーFrak−
tion)と命名し,結局,脱脂乾燥菌を10倍量の蒸 溜水で中性に於いて100DC/卸分加熱浸出すること により,毒素の収量の最大になることを知った.武
1511
田(1943〜1953)とその共同研究者等は0・3%酪酸 水による抽出法を用い,Goebel(1945)は駒%ビリ ヂンによる抽出法を用い,渡辺(1951〜1953)はJ 両法により,0鍋1w株の菌体内毒素を分離精製し,
酪酸加熱及びアルカリ・アルコrル処置によって,
構成成分である多糖体,蛋白,脂質を分離して諸性 状を検討し,沈降反応は毒性因子と関係のない多糖 体に頑いが,生体内抗原性Jシュワルツマン反応準 備能力;感染防禦能,体温及び白血球数,血糖値に 与える変化については,有毒性分劃に活性が強いと 述べている.
1)体内毒鷺抽出法
著者の突験に於いては,上述の先人の業績に鑑みJ チフス菌体の自家融解と加熱抽出によって毒素浸出 液を得〉等電点法により蛋白劃分と多糖体劃分に分 離した.
ツベルクリン探攻用の角型増養喝の普通寒天平板 堵袖に24時間培養した大量のH901W株の菌苔を集 め,秤量後,生理的食塩水で3回洗服・遠心沈澱し,小 硝子球の入った滅菌コルベンでI湿潤菌真の10倍の 滅菌蒸溜水に浮薄させ,充分環塗混和して,訂OC卿 卵器及び氷室に隔日交互に時々振塗しながら1週間 放置した後,600C/部分加熱殺菌,1夜氷室に放置しI 翌日,遠心分離して上帝を採ってISeitz濾過器で 濾過し)帯黄色蛍光性の抽出液を得,それに10%三 塩化酪酸を加えてpH3・8として,蛋白劃分を準降 せしめ,暫時静置して遠心分離し,上帝は別に取−りJ 沈法を蒸溜水に浮かべ,N/5NaOHを滴加して!
pH7.8〜8.0で溶解させ)再度三塩化酵酸を添加し pモi3.8で沈降させる.此様な沈降・・溶解を数回繰 返し,最後の上清に就いてMoliseb反応が殆ど陰 性となった後,この沈降物を無水アルコrルで2回J ェ「テルで1国洗循し,一乾燥して灰白色の粉末を得 た.これを謹白劃分イE−F)とし,用に臨み,0.1
%生理的食塩水溶液として使用した.
叉,上記の上清を総べて集めて中性としJセロフ ァン紙蛮に入れJ流水一軍4時間透析し,次いで凡そ 1/川畳まで低温濃縮(おOC〜400C)し,三塩化酪 酸を加えて沈潜琵を生ずるか否かを検し,沈降を見た 場合は上記の様に精製して蛋白劃分に加えJ最早三 塩化酪酸によって沈澱を生じなくなづた濃縮液は,
酪酸を加えて弱酸性 bH5.0)とし,約5倍量の 純アセトンを加えて沈澱を生ぜしめ,遠心後その沈 澱物を再び弱酸性¢水に溶解し,更にアセ・トシを加 えて沈澱を生ぜしめJこの操作を3固繰返し,最後
1512
長 野の沈澱を無水アルコールとコこt−
テルで洗瀬し,デシケ←タ「で 乾燥,帯黄白色の粉本を得,こ れを多糖体劃分(Z−F)とし,
用に臨み0・1%生理食塩水溶液 として用いた.
一結局,準潤菌量186gより乙ゼ 0・84g・Erざ2・2短を得たので あるが,その抽出及び分劃の過 程を概括すれば次の真のように
なる.
2)毛 性
的15gのマウスを8群に分か ち,E−F,Z−Fを0.05mg,
0・1mg,0.25mg,0.5mgづつ 各3匹に腹脛内注射を行い,24 時間の生死によって抽出劃分の 毒性を検べた.
E−Fは,0,5mgでは′3匹申 3匹,0・25mgでは3匹中2匹.
を発し,草−Fは,0・5町g,0・お mg,0.1mgでは全部,0.05mg で3匹中に2匹を発しているの で,Z−Fの方が毒性が遠かに 強いと言える〉ただし,以上の 結果から見てJ著者の抽出した 劃分の毒性はJマウス致死量の 第1義 春素抽出及び分劃の過程
ト」901W讃渦菌 、
l
浅瀬3【Ⅲ(生理食塩水)
f
】0%薗浮遊液(月計血ム)
1
370c解離畳ご水室 文王lこ78㈲(時々妬盈)
‡
dOOc/30合
I
遺棍
上演 沈連
,
SF−な濾過
10%トリグロー/L西苗酸(pH.‡.8)沈澱
f
遠八2 上
l
透
l
三農
l
:主
ノ声l
析(2ム防風)
絹(火0低温)
伯㌔トリクロール酪酸沈澱
l
遺恨 上溝
1
5倍量
I
遠八医・
アセトン沈澱
「・−ト・・・う
上治
沈連
流週
l
溶解(pH5.0)
l アセトンl通読 l−−∴■・・−−1 上講流速 Iア几コ」L Iエーテル l、乾燥(デシトター)
lZ−F
弟2表抽出劃分の毒性
l
療治
%NαOH l(pH・8・0)溜解 10%トリグロー几酪酸沈澱
l
遺児
r l ・−1
上溝 沈滝
I
アJLコール2皿洗_浪
l
エチル1【Ⅲ洗浪
l
乾燥(.払っ)
l
I
E−Fr
第3表,抽出劃分の化学的性状
劃 分 E− F
Z_ F
反応
∴†・こ≡ニ妄
0.1mg 0.25mg
bi11ret Xantboprotein ninllydrin Millon Hopkins−Cole Sakagucbi 0・5mg sulfosa−icylic acid
E−F Z −F
000 0●●
000
●●●
○●●
●●●
註…○…生存マウス ●…艶死マウス
Moliscb
●●● Bhl
●●●
Febling
Bendict Haines Nylander
+ト
+
+
+
+
+
+ 士
+ 土 士
≠
+
チフス菌毒素の臨床的研究 1513
点で余り強いものではないが〉強毒素を得る事のみ が未研究の目的ではないのであって〉契験に使用し た毒素がマウスに対して斯様な極度の毒性を京した
というに過ぎない.
3)化畢的性状
蛋白劃分(E−F),多糖体劃分「Z−F)の・一般化 学的性状を知るために,それぞれ0・1%溶液を諸種 の試薬によって検査し)第3表に示すような成績を
得た.
Z−下にも蛋白反応が出て屠り,また,E−Fに もMoliscb反応が疑陽性ながら出ているので)敢 哲に言えは,両劃分共に所謂protein−pOlysacharide complexであるが仁ただ,該物質の主体を占めるの はどちらであるかによってJ両劃分は区別されてよ いと考えられる.契際に於いてト契験成置を見ればJ 両劃分の作用の差異は明瞭である.
Ⅲ 脈樽血昼に対する作用
/
、■陽チフズに於ける血行障碍に関しては)諸方面か こら観た論議が行われているが,Morgan,rL R・
・(1942)の研究により,チフス菌毒素によって血行
.器に組織的変化の惹起せられることが証明されたの は,チフス病因論の一馬閑と言ってよい.然しJ所 謂電撃性チフスの虚脱死に於ける心臓麻痺が何等組 織学的変化を呈しない発病早期に発来する事実!ま た,体温の上昇に伴わヂ,比較的遵脈を呈する事実 等を考えると,該疾患に於ける血行障碍は,解剖学 的変化のみを以って説明し得ないものがあって,細 菌毒素の作用に就いてもー層詳細な威察が必要であ
ることが知られる.伽mbeTg(1899)は血行器の解 勧学的変化の他に血管運動神経の麻痺を挙げている が,また,未梢血管運動神経が冒され,次いで心筋 に病的変化が惹起されると説くもの′Ortne),急 性血行障碍の原因は血管麻痺に因る場合もあるけ れども原発性心掠衰琴の場合もあると論ずるもの
(間島),其他諸説が紛糾した.チフス菌毒素の心 膝に対する実験的研究としては,宗玄(1920)がチ フス菌の600C/20分加熱浸出液の副交感神経に対す る作用を見た研究があって,小量では刺戟し,大量 では麻痺させると報告している.岩田(1928)は)
殺菌,百家融解の毒素を家克則出心陣に作用せしめ,
少量毒素は収縮運動を一時促進せしめ,後,漸次に 抑制し,濃厚毒素は促進期を経ず笹最初から抑制的 に作用して拡張期静止に致らしめることを知りJ大 量毒素は,副交感神経を麻痺せしめるのみならず,
直接心筋に麻痺的作用を及ばすものであると報告し ている.島田(1920)は,チフス菌体を3時間煮沸 浸出した濾液から酒精性抽出毒と水性抽出毒を分冊
し,水性抽出毒は摘出家兎心臓に抑制的に作用して 縮高を減少し,大童を用いれば,心棒動停止又は心 繊動を惹起し,冠状血管を拡張するが,大量を作用 させれば,注射直後に心持数の減少及縮高の低下を
生じ,また,犬心肺標本に於いては,水性抽出壷は 心棒数を城小しJ酒精性抽出毒は心持数を著明に増 加㌻ることを見ている.また,血圧に対㌻る作用に 就いては〉水性抽出毒は)犬には殆ど影響なく,家 兎では軽度の上昇を来たし,酒精性抽出毒は家兎及 び犬に対して一過性降下後屈かに上昇して後下降せ しめることを認め,畢茸,.チフス菌の水性抽出毒と 酒精抽出毒とが心隊竝びiこ血管に対して大体相反す
る作用の奉る事を報告してい去..矢田(】930)は,
家兎にチフ◆大筒毒素を静脈内に注射して,血圧の変 化を観ているが,直後碑上昇しJ次いで殆んど零点 に近づくまで急速下降し)漸次快復するけれども,
注射前の痘カに達しないと述べている.
腸チフス蒔愚の場合〉 高体温に比して脈縛の頻数 の増加を伴わないのを常とし(比較的達脈),此点は 未病に固有であって)屡々診断上の標徴になるがI 著者はテ前述の方法で抽出分離した両劃分,E−F 及びZ−Fを用い,家業及び猫実験に供し〉脈樽並 びに血圧に対する作間を検べ,且〉迷売神経と此等 の作周との関係を見た.チフス毒素を分離して,多 糖体劃分と蛋白劃分とに分けJそれを此等の作用に 就いて比較した文献は見当たらない.
1)号 強 材 料
2kg内外の陸常家兎及び3kg内外の健常家猫を 用い,E−F,Z−Fを各ミ0・1%食塩水溶液として 実験に供し,股静脈より注入した.
2)t 験 方 法
実験動物を10%ェチドル・ウレタンをプロ・キロ lOcc皮下に注射して麻酔し,動物固定器に固定し,
頸部毛髪を弟除し,頸部中心線に於いて皮膚を喉頭 から胸骨に至るまで切開しJ迷走神経J交感神経等 に損傷しない様にして頸部動脈を分線露出し,それ に25g/dlの硫酸マグネシウムを満たした血管カニ ニL,−レを挿入し,U字管及びカニこ1・「−レに気泡の
1514 長 野
ないことを確かめて,水銀圧力計に連結し,血圧の 状況をキモグラフィrレンした.尚,実験操作中,
迷走神経の切断を容易ならしめるために,手術の時,
あらかじめ該神経を周囲の組織より分離しておいた・
叉,脈樽測定の際には,描写器の担転速度を成るべ く緩めて,1分間の樽数を測定した.
議4表 E−F O.1%0・5∝の場合
≧深≡匡入前篭注入後・5分 注入後10今
No.1 No.2 No.3 No.4
181 183 207 103
162 163 179 131
89%
89%
・86%
128%
170 ユ76 195 138
94%
96%
94%
134%
鱒十F注入の場合は,No・4の増加した1例を除 けは,注入後5分に於いて鋸%〜縛%に減少し,10 分後には快復して注入前−の数にもどりつゝあるが,
ZニーFの場合は,4例共注入後10分に率いて72%〜
第1図
3)貿 墳 成 積 丹.臓 挿
毒素注入前後の正常家猫の脈樽数と注入後のそれ とをE−F,Z−F別に比較すると,第4表,第5表 に示す如くである:−
葛5表 Z−FO・1%0・5∝の場合
∴ ̄ll∴二
注入前 注入後 5分 注入後10分 No.5
No.6 No.7 No.8
182l 126 203 173
160 120 183 160
87%
95%
9】%
▼92アl
148 110 146 150
81%
87%
72%
84%
82%に減少し,E−Fの場合に比し,効果発現の時 間は多少おくれるが,減少率は稗ミ大であ ̄る.
第1−3図はZ−F注入のNo.6の成績である{
第2図
第3図
チフス菌毒素の臨床的研究
B.血 翳
健常家兎8例に鱒−F・Z−Fの考0†1%生翠的食塩 水溶液を耳静脈より注入し,それによる血圧の変化 を摘記した.Z−Fを0・5∝,1・0∝,2.0∝別に注入し た場合の血圧の変化の1例宛を第5,第6,第7図に 示し,第4図に対照として正常血圧を京した.全例,
毒素注入後一過性に血圧の下降を来たし,暫時にし て快復するという経過を軍るが,毒素注入量が増す に従って血圧下降度は強く,又,0.5∝,1.0∝注入
第4図
二対彿
こ・
第5図
第6図
閂
1515
の場合はI島田(1930)が洒精性抽出毒を家兎に注 入して示した如く,注入後下降して快聾する際笹饉 入前め正常血圧より精々高くなつ七いるが,2.Occ 注入の例では正常値まで快復するのに比較的長い時 間を零した.
E−FO・1%を2・恥じ注入した成績を第8図に京 したがJZ−FO.1%2.0∝注入の第7図に比較する とI血圧降下作用は、Z−Fの方が遠かに大であると 云えるであろう.
、l
固
J
□
j卜百叫焉1亡¢★
1516
長 野募7国
葬8図
C.迷走神経と血脛降下作用
島田(1950)は,家兎及び犬を実験に供しI酒精 性抽出チフス毒素の血圧に対する作用は迷薙神経切 断後に綿々明瞭に示されたと述べている.著者は,
家兎3例に於いて,迷建神経切断によって毒素劃分 の血圧降下の程度が僅かに弱くなるのを認めた.第 9図は迷建神経切断後の家業にE−FO・】%2・0∝
を注入した場合の1例であるが,第8図に比較する 第9園
田
† ○
十 +
■i 一
」 ▲
と,その血圧降下度は或程度抑制されていることは 確実である.このことは,チフス毒素の血圧降下作 用が,未相性のみならず,中枢性の部分をも有する との推定を許すものであると考えられる.
小 結
1)著者の抽出したチフス素素は,家猫の脈縛を 比較的速報とし,家兎の実験に於いて,一過性の血 圧降下作用を表し,その作間は蛋白劃分(E−F)よ
■■■
▼■
▲.1■■」−▲一一▲」_■−
チフス菌毒素の臨床的研究 15Ⅳ
り多糖体劃分(Z−F)に強い.家兎血圧は毒素量大 なる程降下作滞強く.I少畢注射では下降後快復して
≡
正常血圧より・梢高くな:る.が,大量注射の場合略その ようなことはない,
Ⅳ 発.I:熱
所謂非特異的刺戟療法剤のうち〉 チフス・ワクチ ン等の細菌ワ・みチン類が発熱物質を含んでいるとす ることは一般に認められているが,Centanni(1940)
の報告によれは,諸種熱性疾患に於ける発熱誘起を 細菌由来物質に求めようとする研究は18釦年代から 既に始められているのである.Favorite&Mo唱an
(1942)は,チフス菌の精製菌体抗原が発熱性を着 する事を肇告し,Cotui等(19里)は,原索分析)
呈色反応,単離方法の類似性より,発熱物質と菌 体抗原ゐ同一性を推論しているご然し,☆elch等こ
(1943),Mondolof&Hounie(1947)等の緑膿菌,
大腸菌に就いての研究によれは,発熱物質呼抗原と 関係ない■ものと考えられる・.・発熱物質の化学的未;
訊こ就いては,今以って決定的な知見が.ないが,・・
2)迷連神経切断後にはチフス毒素による血圧降 下作用は幾分抑制されるが,完全に抑制されるわけ
竜
kはないので,・それは本楯性並びに中枢性の共同作
▲用によって支配されをも_のであるペと易え_られる.‥
「 \
○
作 用{
Cotui(1944)がチフス菌からとった発熱物質は多 糖甑と見倣され,Robi。Sら。&Fluss。r(1944)のそ れも含水炭素と推定された.八木等(1944)のチフ ス菌増養液より分離した物質もJ化学的性反応の結 果から,含水灰索薫物質に療似すると記載されてい る.横井等(1952)はI家兎は室温が250C又はこ れより幾分高い時に発熱感受性が最大であり)交感 神経興璽が発熱物質の発熱機序に関与していること に疑問の余地はないと報告してい_芦..渡辺(1953)
は,チフス毒素の体温上昇作用ばちいては,使用毒 素の量的関係が支配的要素をなすと並べている.
.・著者は,.上述の文献を参考に=h牒鱒の郵分を家ヽ 兎に揮t、,その発熱作用を比較親察した.
▼l
督験.材料及び方/法
l)t 敬 材 料
被検動物として2kg内外の健常家兎を用いE−F)
Z⊥Fを各々0。1%生理的食塩水溶液として耳療静 脈より注入した.
2)t・地 方 法
文 験 1)絨体温の蓮時世及び迦月性軌
実験に先立ち,健常家業の体温の変動を知るため に,予定実験時間である午前10時より午後7時迄の 体温を測定し,第6.表に見られるように,午前中に 比して夕刻の方が一般特高いことを知ったが,その 差は0.1〜d.伊Cの範囲を出ない.
鹿東森兎体温の逐日性変動は,第7図に示す如く,
前掲逐時性変動よりは著しく,最低,最高の差は 0・2−0・㍗Cであって,0.5つC以上のもの半数以上 を占めている.以上の換査により,■夕刻には体温が 自然に上昇する傾向があるので,発熱作用実験には 体温変動の比較的少い10時〜4時迄を選ぶのが良い
ことが知られた.
供試家兎は豆隣地を主食として飼育し,実験12時 間前より絶食せしめ,体温の変郵を成るべ.く避ける ために〉机上に緊縛することなく側臥せしめて,充 分蕗付いた後I動物検温訂を以って肛門より約5cm の所で直腸温を測った.
嵐 r績
第6表 健常家兎体温の逐時性変動
崇ぎ10時蒜時巨時〜2ヰ讐一ヰ時一7時凛讐零
No.12.39.4CC N{).13 39.65 No.14 39.7 No.15 39.5 No.16 39.55 No.17 40.5.
No.18 39.5
Nol19仁39・5
39.50C 39.75 39.7 39.4 39.4 40.5 39.5 39.5
39.40C 39.9 39.8 39.7 39.2
..40.3
39.7
39.5
39.50Ct・ 0.1 39.5 0.4 39.9 0.2
−39.7 ▼0.3
由.8 0.6
40.1 0.4
39.9 0.4
40.0 0.5
1518 レ長・ .∴ 野
第7本 俸常家兎体温の逐日性変動 ●〜、
日
家兎 No.・12・ No.13
No・14ー
No.15・No.16 Noこ17
No.■・18 No.19◆25/Ⅹ 26/耳 27/又 最低最高の差
40.0 39.4 39.75
0.6
第8表
39.7 39.6 39.9 39.8 39.85 40.3
.0.2 0.ア
39.4 39.7 40.05 0−65
39.6 39.2 39.6 0.4
40.1J 40.3 40.8 0.7
39.6 39.7 39.8 0.2
39.7 39.5 40.1 0.6
体温 家電
■No.13・
副 作 用
注入前
40.】OC
1分後
40.3
5 分後10分後 罰分後 1時間− 2一時間
40.5
2)、Z−F,0・1%,0・5CC/kg泣入の場合(第8表)
注入直後から体温の上昇を認めJ卸分に於いて最 高となりJ上昇度1・4肝CJ漸次下降したが,注入 後より元気なくJ30分後より俸温訂に粘液便を附帯 し始めJ2時間で粘血便附着,㍑時間以内に兜死し た.屍休部換所見として,子宮及び大隠の強度の出 血J小腸,肺臓J脾臓J肝減に軽度の溢血を認め,
腎臓〉 心臓J膀既には著明な変化を認めなかったi 第8喪
家兎琴号 No・15 No.16
E
No.17 体 重 1・4kg】1・2kgil・2kg注 入 前
10m 後
30111 1b 2b 3b 4h 5b
・・ 6l1 7b 24b
39.80C 40.1
、40.55 40.8 40.9 40.9 41.25 41.5
・41.62 41..6 40.8
亡
39.4 3?・7 40.4・
40.5 40.8 41.15 41.0 41.5
41.6 ■
一 40.25
40.2
40.2 40.5 40,7
(申便)
41.0 41.5 41.0 4】.15 40.7 40.85 40.55 40.2
40.7 41.5 41.3 40.6
粘液便l同・ ̄左粘・血便
ー3)Z−F,0.1%,0.1∝/kg泣入の場合(第9衰二 注入量を減じJそれによって試獣の舞死を避けて 3頭について24時間迄体温の変動を鋭察Lたi
No.15,No.16に於いては,6時間目に最高に 達しJ上昇度1・820C及び2.20C,24時間に至って
も注入前の体温に快復していない.No.17は毒勇 往入後卸分にして血便を排出し,2時間にして体渥 最高に達・し,上昇度1・㌘Cを奏し,−24時間後には1
殆ど注入前の体温に快復している.
;
第10本
家兎香号 No.】1
≧■
No.12 No.9
体 重 1・叫1・叫 2・25恒
注入前体温 10m 後
3011I lh 2h 4h 6h 9b
● 24b・
48b−
39.950C 40.0 40.3 41」25・
41.0
(下痢)
41.15 41.17
40こ4 ■
40.1 39.8
39.70C 39.4仁一(
4、0・05l 39・95
40.3 40.4●.
40.3 ・ 40二2
40.8 40.4
4l.0 4●i.2
41.5 41.7
40.7.巨▲_ 4】.0._
41.05 ・41.55
39.6 ● 39.7
チフス菌毒素の臨床的研究 1519 4)Z−F,0・1%,0・05ce/k9注入の場合(第コ0表)
2時間目に下痢便を排出したNo.11の場合は,
1時間で最高値となり(上昇度1.30C),それより 一過性の谷を画き,24時間で大体注入前の温度に快 復し,第9表のNo・17に良く似た経過を示した.
No・12,No・9は共に6時間に至って最高に達し,
第1ト表
各々1.80C及び2.30Cの上昇度を嘉し,・−一旦下降 して)24時間に再度上昇し,48時間に至って漸く注 入前の温度に快復した.・
5)E−F,0.1%,0.1ec/k白注入の場合(第1】衰)
3例とも1時間後に最高に達し)2時間で既に注 入前の体温に快復しJ3時間では却って低下の傾向†
 ̄二:\;\\ニニ 注 入 前 10m後
30m 1h 1.5b 2h 3b
No.14No.18 No.19
39.48l39.83 39.3
39.6
39.7 39.8
40.5 40.3 40.2
を示している.上昇)下降の時間的関係は,Z−F,
0・1%,0・5cc/kg注入後舞死したNo.13の例と非 常に良く似ていると思われる.
許10図
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一:せ
t 41 体 温
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′/・カ・カ\
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N∂.‡4(〔−「)
りolムr〜−F
前10n 川mlh Zh jh 〈h うh dh 24h ___一 丁lme
42.55 40.4 40.5
40.1 40.0 40.2
39.2 39.3
 ̄39.52
38.9 39.0 39.2
6)Z一戸,E−F,各0・1%,0.1ce/kg達入の成 績を比較すると,第10図の如くである;−
小 括
1)チフス毒素の多糖体劃分(Z−F)を家兎に睦 入すると,過量では謝分で発熱の最高を京して動物 の兜死を来たし,.小量使用に於いて,格別の症状を 呈しないような場合は6時間で最高値を京す例が多 かったが)血便又は下痢をおこした個体では1〜2 時間で最高値を示し,上昇度は1.酢セー2.3〔Cであ った.
2)蛋白劃分(E−F)の作用は,Z−Fのそれよ り遠かに軽敏であって,1時間値を頂点として下降 を始め,平温以下に至るような傾向が見られる.
3)チフス毒素の発熱作用の主体は多糖体劃分笹 あるように思われる.−
Ⅴ 白血球に封ナる影響
Halla(1883)が腸チフス患者に白血球減少症を 認めてより,爾来精密な成案が重ねられ,腸チフス の白血球減少は有熱期間持続し)下熱後恒、時増加しI 快復期に入るに従って正常値に復するのであるがJ この場合,中性嗜好白血球の減少を主体とし,エオ ジン嗜好細胞は発熱後速に消失し,快復期に入って 多少正常値を超過するまでに出現することが本症に 固有な所見であって,また,湘巴球は病初の10日位 は減少し,以後漸次増加することが認められている.
Naegeli(1900)は化膿若しくは出血を来たさな いのに重篤となった陽フチス患者の白血球減少
(即00−4朋0)を観察しJ病初多少の増加を京す中
性白血球は白血球減少の−出現と共に減少し,恢復期 に於いて平常■に復するが,湘巴球は白血球の再増加 を見るに及び初めて減少し始め,最後に増加を戻す ことを認めた.StudeT(1908)は,実験的にチタ云 毒素(Protein)を家兎の皮下に注射し;それによつ て白血球減少を起こすことを認め,2−4時間で最 低に達し,次第に快復するが,往々にして注射の翌 日まで継続し)それより注射後2〜3日目に最高に 達する増加を見た後J漸次平常に復すると報告し,
N丘geliの場合と同様に中性白血球の減少は淋巴球 の減少に先んずるけれども,両細胞間に相関的平行 性は見出し得なかったと述べている_
1520 長 野 Lange・(1908)は,チフス菌のFormotoxinの大
量を家兎に静脈注射した結果,(極小真の注射では何 等の変化も認めないが)SほdeTのそれと略々同様 な成置を得たと述べている.以上の他,家兎に就い てチフス毒による血液変化の実験を行ったものに,
Germani(1912),Wod隼e(1920),Knietwitz(1931),
Dennis&HaTatune(1937),丑柄・三浦(1917)J 金井(1917),足利(1932)等ありJ絶じて,陽チ
フス患者の白血球像変化はチフス菌体蛋白たる菌 体内毒素に原因すると考えられた.然るに,白井
(1932)は,菌体成分の壌月旨体も同作矧こ関与する と述べ,箭頭(1933),橋本(1934)は,チフス菌 毒素を精製毒素(易熱性毒素)及び菌体蛋白(耐熱 性毒素)とに分離して家業に注射し,注射直後より 激烈な白血球減少を起こし,次いで増多,再び滅少,
数日にして賂々正常の状態に復帰したと述べ,就中 仮性チオジ㌢嗜好白血球の動揺が最も著しく,湘巴
球のそれが之に次いだ事,尚,精製毒素は菌体蛋白 に比して毒性弱いのにも拘わらず,血液像変化に対 しては却って著明な作用を元したと報告してし1る・
井上(1912)は,黒屋等(1939−1941)の方法によ り,チフス菌体より分離きれた蛋白質劃分(P−F),.
含水炭素劃分(C−F),及びM血oid劃分(M−F)
を家兎静脈に注射し,致死量以下を用いた場合はJ 注射後1〜5時間にして高度の白血球減少を起こし,
引続き増多を来たし,致死量を用いた場合は減少の みで増多しないと述べJこエオジン嗜好細胞は注射直 後より消失し,中毒症状精々軽快して発熱の頂点を 過ぎる頃から再出現し始めるこ.とJ仮性エオジン嗜 好細胞は注射直後より、1〜5時間に捗って著明な減 少を来たし,,早けれは2〜a・時間で路々旧態に復す るが,爾後反って増加し始め,6時間 2日後軽度 に達し,それからは増減一定せずに経過して旧値に 復帰すること,白血球総数の増減と湘巴球の土削由ま 相反するけれども,爾他の細胞は平行すること,家 兎白血球減少作用は毒素の毒性の強弱に比例しJ M−F,P−F,C−F),の順であることJ且,毒素使 用量の多い程J白血球減少の程度著しくJその持続 時間も延長すると報告している.渡辺−(1953)は,
0.3%酪酸法及び50%ビリジン法によって獲得した チフス菌抽出物をそれぞれ酸加熱並びにアルカリ・
アルコ←ル笹よって分暦し,それらの白血球数に与 える変化を見てJ有毒性劃分の活性の特に強いこと を知り,白血球に作用する因子は毒性因子と密接な
関係があると結論している一.
著者は,前述の方法で抽出分離した蛋白劃分
(E−F),多糖体劃分(Z−F)を家兎に注射しI血 液像に対する影響,就中,白血球減少効果について
両劃分の作用を比較検討した.
貿験材料及び方法
.1.)鳶 強 材 料.
被検動物として2庭内外の健常家兎を用い,
E−F,Z−F,各々0.1%生理的食塩水溶液として実 験に供した.
2)鷺 墳 方 法
供試家兎は,実験数日前より豆隣地を主食として
\
飼育し,実験12時間前より絶食せしめて餞鱗状態に 保ち,注射前30分J注射後30分)1時間,その後1 時間毎に5時間までと24時間副こ採血検査した.心・
理的・肉体的不穏による血液像の変動を極力避ける
実 験 1)健儒家兎の白血球級の蓬時的及蓬び巳駒変動 健常家兎4頭を矢験予定時間に検血して,白血球 数の逐時的変動を見たが,動物の個体によって著し い差が認められるけれども,同一個体に於ける変動
ために,家兎は緊縛することなく助手をして安静に 保持せしめ,耳縁の宅を手指を以って丁寧にむしり 取り,耳安静肱に毒素を注射し,反対側の耳殻辺縁 を穿刺して可及的小量づつ採血して検査した.
血球計算は,T甘RE液を以って稀釈し〉 Tboma−
Zeissの血球計算板によりJ検定証明のメランヂ ニLt−ルを用いた.血液塗抹標本は,G相MSA 液を 以って染色し,白色球像の計算は白血球総数に対す
る百分率を以って表示した.
成 経
の幅は,\血球算定の誤差範囲を出ヂ,検査の時刻に よる有意の差は見られなかった.また,対照試験と して食塩水の注射を試みたが,生理的動揺の範囲を 出でず,それによる格別の影響は見られなかった.
チフス菌毒素の臨床的研究 2)健常家兎の白血球俊
英験に供した17匹について採血後査した平均成績 を先人の成績と比較して第㍑表に示す.
2)Z−F■の家兎白血球数に及ほす影響
Z−F,0・1%,0・05cc/kgを家兎耳静脈に注入し,
第13表のような白血球数の変化を見た.
概括して云えば〉注射直後より急激に減少し,2
−3時間でその瞳に達しJ4〜5時間より反動的に 急激に増加を来たす.尚,此際見られた白血球像の 変化はJNo.別を例にとって説明すれば(第14表),
白血球数の減少と共に琳巴球は増加し,仮「ヱ」嗜 好白血球は減少しJ白血球数の増加に伴い,湘巴球 は減少しJ仮「ヱ」は増加しJ白血球減少の極に達 する時と仮「ヱ」の減少と湘巴球増加の極に達する
弟12表 蝕常家兎血液像
1521
時とは一致する.すなわち,箭頭(1933)J井上
(1942)の述べたように,白血球増滅と仮■「ヱ」嗜 好白血球の増減は平行すると云える.
3)E−Fの家鬼白血球に及ぼす影響
E−F,0.1%,0・05cc/kgを注入した場合の白血 球数の変動はJ第15表に示す如くであった:−
E−F申白血球数に及ばす影響は,上記の成績に 見られる如くJZ−Fのそれに較べれは軽微であつ て,2〜4時間後に幾分か減少し4〜5時間後に至 って見られる増加の程度もZ−Fの場合に此して著 明でなく殆んど生理的動揺の範囲を出ていない.
小 指
1).チフス菌体から抽出した毒素を家兎に注射し】
それによる家兎白血球の変動を検査しJ多糖体
各 種 白 血 球 百 分 率
巴球1仮性好鮒l好酸球l塩
瀬
実験者 家兎敬 白血球数
基 性 池 田
多 田 羅 得 田 坂 田
福 .井 大 場 高 森 坂 元 徐
武 藤 箭 頭 菅 原 著 者
38 33 90
20
240
66 39
84
17
弟13.衰
5900
−18650 10900 1000 7299 8250 10400 6500
−15600 9800 5800
−19300 10400
− 9940 11758 10131
14.98
−68.99 57.7 51.9 54.44 44.2 64.1 27.4
−49.3 56.6 62.0 63.74 53.6Z 57.Od 55.84
26.47
−80.38 36.3 39.9 37.28 52.3 30..9・
42.2
−67.7 37.0 33.0 32.09 42.39 37.84 39.8
0
−2.45 0.4 1.6 1.27 1.0
_0.5
0
−0.7 0.2
0.25 0.75 1.18 085
0
−6.86 2.0 2.4 2.27 0.7 1.8 1.3.
−6.9 3.4 2.0 1.95 1.12 2.7】
1.31
大 単 核 移 行 塾
0 15.18
3.4 4.3 4.2】
1・7 3.0
.11
−3.9 2.8 3.0
1・甲
2.12 1.84 2.2
体重!注入前注入箆
家兎番号 2b
3b
4ll5h
−■
24h
No.21 No.22 No.24
22lくg
25 1.75
7400 6020 7800
】070
】200 1400
600 900 1300
3000 2400 700
12000 5000 2200
14000 9600 8400
36000
15000
13600
1522 長 野 第14表
採血時問 1湘 巴 球 仮性好酸球 好 酸 球 塩 基 大単核移行塾 白血球数 注 射 一前
注射後1b
2b 3h
・、4l1 5b
24b_
第15表
52.0 68.0 70.0 87.0 56.0 30.0 48.0
46.0 30.0 28.0
】】.0 43.5 68.5 5p.0
0 0 0 0 0 0 0
1.0 1.0 1.0 0.5
0 0 01.0 1.0 1.0 0.5 0.5 2.0 2.0
7800 1400 1300 700 2200 8400 13600
家兎番号 体 重 注入前 注入後
1h
2ll 3h 411
5b
1 F
24h
No.25 No.26 No.27
2.41瑠.
2。2 1.7
10800 】0700 8100 6000 10400 7500
9200 5600 8400
1000 7800 10000
8800 5400 12000
13400 10200 8000 9600
16000 ′ 12400
(Z−F)劃分に於いては注射直後より激減し,2− 2)チフス毒素多糖体劃分による白血球増減は,
3時間でその極に達し後,急激に増加するがJ蛋白 劃分(E−F)に於いてはその作用は軽放であって,
生理的動揺の範囲を出でず,チフス毒素の白血球減 少作用の主体はZ一打劃分にある事を知った・
仮「ヱ」嗜好性白血球増減と路々平行し,琳巴球の それとは相反することを確認した.⊥般に大挙核球 の増加の憤向が見られる.
Ⅳ 嫡出子官に対する作用 腸チフスの場合,婦女にあっては多量の経血を見
ることあり,また,流産乃至早産の惧もあるとされJ その原因に就いては,子宮覇の高熱による攣縮とい
う説(Range),細菌毒素によるという説(Seitze),
等が挙げられる.洲崎(1926)・は,チフス菌毒素は 家兎摘出子宮に対して,妊,不妊を問わず,興璽的 に作用すると述べ,その襲撃点は一部又は全部が 副交感神経の末端であろうと推論している.島田
(1930).は,海猥摘出子宮について,チフス菌の酒 精性抽出毒,水性抽出毒及び抽出残任は,この順位
l
の強さで,幼苦海猥子宮の緊張性を高めJ収縮力を
1)卓 輸 材 料
強め,攣縮数を増加し,之等作用はアトロピンによ って影響されず,又J酒精性抽出毒は妊娠海猥子宮
の収縮力を顕著に増加するが,経産海猥子宮に対し ては作用が弱く,浜原液を以っても攣弼数を増加す る程度であると述べている.なお)チフス毒素の子 宮に対する作用に就いては〉Sogen(1920),Shibata
(1925)等の笑験成置の奉告が見られるがJチフス 毒素を蛋白劃分及び多糖体劃分に分離して子宮に対 する作用を検討した業績は見ない.
著者は,次に記すように,・E−F及びZ−Fの海 猥摘出子宮に対する作用を知るべき実験を企てた.
賓験材料及び方法
被検動物は同腹の訓Og前後の雌海猥を用いJ著
チフス菌毒素の臨床的研究 】523
者の抽出したE−F,Z−Fの0.1%溶液を用いた.
2)賓・窃 方 法.t
海猥は前日より絶食せしめ,頭部撲殺ノ頸動脈切 断放血,開腹,迅速丁寧に子宮を摘出し,長崎大学 医学部薬理学教室処方のマグヌス用のLocke液中 に保存して(夏期は氷室に入れて),h仏gnus法
賛 歯 1)E−F,0・1%,0・2ccを栄蓉液中に滴下する とJ梢々損幅が拡大されたかに見えるが,決定的に 著明セはない.しかし,これに1.Occを追加して注 入するとJ振幅の波は下降したまゝで抑制され,環 予選動の停止を見るが,漸次快復する(第11図).
2)Z−F,0・】%,0・2ccを滴下すると,第12図
の波動描写による実験に供した.実験中は380C一
▲l・、39UC・の恒温槽に浸しJ絶えず空気を送り,運動が
⊥窪するのを待って毒素を滴下し,その作用を兢察
・した.,又,毒素稀釈溶液は前記食塩水でつくりJ恒 温糟内で加温して使用した.
成 績
に元される如く,俄然著明な緊張克進が見られ,
1・Occの追加注入により,E−Fの場合と同様.振 子運動は停止して横幅下降の状態で上昇せず,又,
13図に見られるように僅かに上昇することもあるが,
環幅周期も延長され,・後には顕子運動もみられなく なるこ
第11図 海猥子宮に対するE−F(0.1%)の作用
第12図 海常子宮に対するZ−lT(0.1%)の作間
15別 長 野
第13田 海現子宮に対するZ−F(8・1%)の作用
小 括 宮元進作用の大部分は,その多糖体劃分に因ると息 1)Z−Fの小量は摘出海猥子宮に対して著明た われる.
緊張克進を来たすが,E一下の小量ではその作用は 2) E−F,Z−F共にその大量は〉一滴闇海瞑子宮 極めて僅かにしか見られないので〉 チフス毒素の子 の運動を抑制する.
Ⅶ 摘出腸管運動に対ナる作用 船摂(1942)は461名の腸チフス患者を観察しI
大多謝早便秘を碍め,・19努は下痢を訴え,下痢患者 の予後は不良であると述べているがI元来,便秘は 初期に東奉り,下痢は第2超以後に来ると言われて・
いる.これをチフス毒素の作用に帰する想定め下 に幾多の爽険が行われたことは当然である.宗玄
(19訓)は,チフス菌体浮源液の加熱上溝を家兎摘 出腸管に作用させ,小量では索張上昇・振子運動を 増強せしめ,.大量では緊張下降,凝子運動滅弱又は 停止を来たすとい述つJEcker&R去dcmaekers(1929)I 島田(1甲0),高橋・藤野(1920・)!宇島(1930)も 同様の成績を得ている−.柴田(1925).は,、チフス菌 の百家融観上溝を用い,小量(2%)が成熟家兎の 摘出暢管に緊張克進,環幅増大の作用をなすが,そ れは幼弱家兎、の場合には弱いキ述べてい.る・斎藤
(1932)はチフス毒素による腸管運動の克進作用
の反応は小腸より大陽に強いと述べている.田上
(19亜)は,Boivh法によって分解したチフス毒 素を,生体家兎腸管に作用させ〉その10q倍−500倍 磨液1.0∝で緊張克進・振幅増大を来たしたと報告 し,11d㌍C/卸分の酸性加熱で亘ウスに対する毒性 を失い,陽に対する作用を消失す−るが;−′同時間のア ルカリ性加熱ではIマウスに対する毒力を幾分滅ず るけれども,尚生体家兎腸管に対−し典薬作用を呈す ると報告んている.以上述べた如く,チフス毒素に 陽作用のあることは確契であり,その作用する量に よって効果の影響されることは大体知られているがI 毒素の劇分による作用の比較を実験した報告はない.
著者は,それゆえ,チフス菌毒素のどの部分に陽作 用の活性因子があるかを知るために,蛋白劃分
(E−F)及び多糖体劃分(Z−F)の家兎及び海猥の 陽に対する作用を比較検討した.
賓験材料及び方法
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ご ̄
毒素は既述のE−甘皮びZ−Fを0・1%溶液に調 育しI実験当日より絶食せしめ,撲殺,■頸動脈切 製したものを用いた.実験動物は,2kg内外の家兎 断款血開腹,廻貰部より鱒10cmの琴ヰり口側に と300ー鱒Ogの海猥を用い,恵腐粕を主食として飼 約5cm切除し,Todくe液で洗推して契験に供した・
チフス菌毒素の臨床的研究 1525
Lock亡液は前記海浜子宮に用いたと同様の処方のも のを使用しJh仏gnus法で煤煙紙上に波動描写し,
宇 検 E−F,Z−FO・1%溶液を家兎摘出腸管に作用さ せると,第14図J第15図に示す如く,E−F O.5cc 注入により稗々振幅を増大しI2・Occの追加注入に より,揖幅減少し,振子運動が滅弱.される.Z−F O.5cc注入の場合は,著明な緊張の先進と摂幅の拡
第14図 E−FO.1%(家兎)
第15図 Z串F乱l%(家兎)
十∴
2)海猥腸管の場合
0・1%のE−F及びZ−Fを海猥摘出腸管に0.5,
腸管運動の一定となるのを待ってI各劃分を滴下注 入した.
成 績
大を来たし,2・Occの追加注入により急激に緊張低 下し)振幅緩慢となりJ規則的に動いていた振子運 動の波がみだれるが,漸次快復して,緊張低下した まゝでJ大きな振幅に移っている.
1・Occづゝ作用せしめると)第16図J第17図に京さ れる如く,0.5ccではE−F,Z−F共に緊張克進〉