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空間についての2.3の調査と教育とのかかわり

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

空間についての2.3の調査と教育とのかかわり

著者 松原 茂

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

5

ページ 113‑122

発行年 1969‑02‑28

URL http://hdl.handle.net/10105/6178

(2)

空間についての2.3の調査と教育とのかかわ )

松  原   茂

 改定指導要領では空間教育に対する積極さがみられる。ただし、実際の教育は今後の授業を通し て検討しなければならない点がかなり残っているように思われる。なぜならそれは数学という学間 体系から降りてきたものであって、「この程度のことはしなければならないだろう。」「この程度 のことは理解されるであろう。」といったいわば仮説こたっての編成であるからである。したがっ て現場としては一方では授業を通して検討してみる余地は十分あるし、他方ではもっと積極的に子

どもの空間認識の発達の様相を調査し分析してみる必要がある。

 ここでは後者に関して調査した2.3を報告し、あわせて教育とのかかわりを考察してみたい。

§1 縮小されたもの(地図)と実際との関係把握について

1)研究の目的

 視野の広い市街地やその周辺の空間にある場所や建物を地図上に写しとったり、反対に地図」=

の場所や建物が実際にはどれを示しているか関係的にとらえていくことが年令を追rでどのよう に変わっていくかを見ながら、方向や距離(位置)の判断がどうなされるかを調べる。

2)実験1 (1967年2月 奈良教育大付小 全学年 標本調査)

  実験場所(奈良県庁屋上)にて地図(1図)を        1図

㍗磯二幾畿二;工1;

徹練票鷺,1二勝地図と照ら

 確認できると「三笠温泉(郷)」を見させて、

1簑簑;;1;;ll;;;;裏

かをみようとするのである。

(肯卦 ・素

     x

       大蛇ん泉      』

        さ      局

       一  )

    ・校雛Lt

ηlH11

その結果を方向、距離の二面からごくおおまかに分類すると次のようである」、

・指定場所と視点との開きがl O。以内のもの 第1表

1年2年3年4年5年6年

42% 46%.55% 64% 80% 85%

・記入地点の方向的な拡がり

5ポ

第2表

155  34   36    38 ・・。 P

(3)

・距離の保ちぐあい

1 年  2 年  3 軍

よい 25% 23% 45形

ちかい  25 とおい   50

23 54

20 35

4 年 生5%

50

第3表 5 年

45%

25 30

6 年

60%

30

 方向と距離は相互に関係して位置が決定されるから、記入された地点がどんなに分布している かを特殊な事例を省いてその拡がりを示すと次のようである。

     記入された地点の拡がりの傾向(特例除外)    2図

      、・㌧/1/冒

      1」       ._.■

      K      K      K

3)低学年の反応

 低学年児童の実験からわかった2.3の特長を述べておこう。

 地図と実景とが関係づけられないことはr応予 想される。この調査でそれが明らかになつた。た

とえば三笠温泉をr]学(T)、児童の位置、大仏 殿(D)を結ぶ範囲内に記入されてよいはずであ

るが、この範囲よりはみ出させた児童が25名甲 7名(3図×印はその例)

 もう一つの特長は概念的・物的な反応を示した ことである。たとえば家(温泉郷)は道に面しで なければならない・あるいは道のはしっこにある ものだという概念的なとらえ方から地図に出てい る道路に面してや道路のはしに記入した例が3件 あった。つまり、低学年では方向判断や位置関係

⊥1

  ◎

三笠温泉

児童       キ 3図

の判断に先行して物的な判断によって処理されるということである。 (この点については児童心 性としてあとで再度とり上げてみる。)

 他の一つは印象をそのまま行為に移すということも上げられる。「三笠温泉は遠いところにあ る」という日像はそのまま地図の紙面のはじに三笠温泉を記入することになったり、極端に自分 の立っている場所(県庁)の近くに示したりする傾向がある。

4)第1表から第3表、および2図、さらに現地での子どもの反応を見て第1・2学年と第3・畠

(4)

学年との問に発達の飛躍があるように思われた。

 そこで、1・2年生の調査者全員にべ一パ一こよる追試を行ない、どのような判断のもとに位 置を決定しているか文章表現をさせてみた。

 追試

 「あなたは、三笠温泉を地図に記入するとき、どのようにして場所を決めましたか。」

 結果は右のとおりであ札       第4表  ここで、Aはたとえば「三笠温泉は山のところ        A    B    C

にあるから………1(地図には山がない)という  1 年   2    9    11 ように、たしかに実景は観察するが地図と冠くら  2 軍   1   7   2

べた」=で決定しようとしない類。Bは「三笠温泉は大仏殿から少し離れているから、地図でもそ れを伝っていけばよい(地図上の大仏殿をの意)」というように不確かではあるが座標的、それ

も1次元的な見方をしている類。Cは「(1)rコ学(規準I)からだいぶ離れていることを見る。

(2)大仏殿(規準2)からは三笠温泉は近くだということを見る。 (3)地図に書き入れる。」つま り、2次元的に位置を決定しようとしている類を示す。2年生では、Bに入れたr]にも「(1)地 図に書いてある大仏殿の方や五重塔やドリームランドの方の向きを調べる。 (2〕まず(1)に書いて ある場所の向き(位置関係?)をおほえておく。 (3)おほえておいて景色(実景)を見る。 (4〕

大仏殿をさがして……」というように、地図上の位置関係と実景とを結びつけようとしている。

5)実験2 (1967年2月 奈良教育大付小 全学年標本調査)

 前記の地図に、新たに奈良高校を記入して示す。「ここに(地図上に・をうちながら)あなた が見ても見分けがつく鉄筋の建物があります。その建物を指してごらん。」とい〔て指させてみ る。つまり、実験1とは逆に地図上の地点を指し示すことができるかどうかを通して、縮小され たものから拡大されたものがわかるかどうかを見ようとするわけであ乱

 結果は次のとおりである。

       第5表

        1年2年3年4年 5年6年

よし 42% 3I% 70%86% 75% 80%

わるい  58%  69%  30%  1凸%  25%  20%

 低学年の子どもでも・「ドリームランドのそばだから・・…ち」・「ドリームランドはあそこだ から……」と口ごもりながら地図上での位置関係(ただし一次元的)を意識しながらさがすこと ができる。ただし、地図上でのとなりあわせが実際には相当な距離であることがわからず、「そ ば」と直観すれば、それこそドリームランドと隣り合わせの建物、あるいはその一部の建物を指 す子どもざえいた。1・2年生だけについて正誤を分けると第6表のようになる。

       第6表       第7表

よ      い 1O人 1年2年3年4年5年6年

     ひきうつせない1o人①方..向××△△○O

まちがい わからない4人②距 離××△△△O

⑧位置・配置××△△O○

(5)

6)以上の実験を総括して、ごくおおまかにその発達を見ると第7表のようになる。そして、次の ような発達段階が予想される。

I 客観的な座標系をもたず、方向などの意識も少ない。また概念的・印象的にとらえたものを   そのまま半』断としてしまう。

皿 地図と実景とをある程度関係的に見ていこうとする志向がうかがえるようになるが、一元的、

  一意的に処理してしまう。また比例的な見方が不十分であるため、判断が不安定である。

皿 座標系を意識しだし、2次元的・関係的にとらえようとし出す。この段階においてもまだ距  雛の感覚が乏しいといえる。

W 自分の立っている位置、目ぼしい地点との位置関係を意識した上で、対象を観察できるよう

  になる.、

v 客観的に位置を把握するようになる。

§2 2年生の三面角の描写について

 新指導要領では、ようやく立体の「面」を2学年で扱うようになった。どのような扱い方をする、

かは教科書編集者にまたなけれぱわからないし、また今後の現場での実践によって逐次明らかにし ていかなくてはならないであろう・

 ただ従来の教育では、もちろん「面」をま正面から扱おうとしなかった。立体図形の指導も展開 図を媒介にして、つまり平面図形にすりかえた扱いが多かったように思われる。そこでは立体にお ける「辺」や「頂点」も単なる名称として教える域を出なかったし、面と面のつながりも追求させ ずに4学年に唐突として面の平行や垂直の位置関係をとり上げて来た。

 立体を指導する以上、面・や、面と面とのつながりにおいて辺や頂点を扱うことがだいじてある。む しろ展開図をさけて立体を立体そのものとして指導する方途を研究されなくてはならないと思われ

る。

 ただ、平面図形がノートや画用紙上などに自由に描くことができ、図形を考察させやすいのに対 して、立体図形の扱いがしにくかったことは事実である。平面図形の教育がかなり研究されている のに対して立体図形の教育研究が遅れているのは一面ではこのあたりにもあるものと思われる。

 そこで、これからの立体(空間といってもよい)の教育の方法として、一方では実際に立体を構 成させていくとともに、他方立体(空間)を平面に写して面なとのつながりを考えさせるような場 を設定してやることが大事ではないかと考える。本調査は以上のような考えを伏線にもってその一 端を明らかにするためにやってみた。

1)調査の目的

  子どもは壁面の三面角をどのように描写するか。またそのことを通して面のつながりをどのよ  うに把握するか。

2)調査  (1968年5月 奈良教育大学付小 2年3組 34名)

  面には平面と曲面のあること(ねんどによる抽出と構成)、面と面の境目としての辺、頂点(

 しゃがいもを切る)を指導した直後、教室の天井・壁面を含む三面角(凹)を画用紙に描写させ

 る。

3)描写のし方は次の4つに分類することができ飢

(6)

A:天井と2つの壁面でなす三面角が連なって、遠近法的 に正しく描けてある。

B:位相的には正しい2つの壁面のつながりはできている が、2壁面と天丼のつながりが表現されてない。

C:2つの壁面は一応正しく連撮てある。ただし、天井は展  開図式に書かれているため、頂点がはっきIりしてなく、

 したがって三面角の描写が正しく描かれていない。

D:展開図式、もしくは三次元を二次元に写し出すことが  できない。

天井     //

.1、..1

r /

  ノ . 

        壁

4)描写の例

4図   A類 ]B類

         天井

C類

天井 第8表

  A   B   C   D

 50%    23    1 5    12

D類

かべ かべ

\>

(7)

 2年生では第8表からもわかるようにA類、B類を合わせて70%あり、三面角の描写がほぽ できることがわかる。今回の調脊は床面から天井を見上げた場合の描写であるが、これが床と壁 面の描写になるともう少しよくなるのではないかと思われる。

 D頚にあたる12%の子どもに対しては適当な指導を加えないと単に三面角の描写能力に止ま らず、面と面とのつながり・位置関係そのものの理解を伸ばすことはでぎないであろう。

§3 空間にある物の描写

子どもは空間にある物の描写に遠近法をどのように生かすか。また描写の場合に一般に子どもは どんな傾向を示すかを見てみたい。本実験は横地清氏の指導で行ない、すでに数学教育学会で発表 したものである。これになお2.3の追試、観察等を付加して述べる。

I)実験 (1目67年2月 奈.良教育大付小 2年20名、3年21名、4年20名、5律19   名、b年17名 標本調査)

lllll11讐1篶/、 !\\

ように艘でかけとい、て写生をさせたわ /       1

けである。       3m       3m

その結果をまとめると・つぎのよ1であ\     !

㍗ためω場㌔卯棒が平侠等しい 一\舳_/

長さで立ち、その問に旗が同じ大きさに      \

       11。。ノ。

並ぶ。      ノ40       v

b二練二驚練二く二     疋臼

      いす  て許容した。

  両方の棒と族とに遠近法がきいている。手前の棒にくらべ、遠くの棒の足も頂点も、画面の  水平なr]心線3)方へちちこまってしまったようになる、旗も壷くへ行くほど小さくなrてくる。

      第9表

2年1 3年 4年 5年 6年

棋の教12 13 7 9 6 35

a 旗の数12より小

2 1 3 6 12

樽の数12 5 7 3 1 lb

b

旗の数12,より小

1 3 2 3

慎二)教!2 1 2 5 5 7 21

o

棟の数12よつ小

2 1 1 4

2I 20 19 石7 97

(8)

2)

 I

童近法は、筍よそつぎの順で、その発達がなされたとみられる。

 棒や膜の実形、実際の配置を生ノ)ま交画一面に表現しようとする。つまり、3次元にある物の 形や位置関係をそのまま保存して・平面に写そうとす私

 2年、3年、4年と学年が進むにつれて、同じ出の分類ではあるが、6図、7図、8図で代 表されるような場面へうつっていく。つまり、物の形や位置関係を保存しつつ、何とかして立 体感を出そうと努力する。

 棒に遠近法を適用しながら旗には適用しない。つまり主要な大きな部分についてだけ遠近法 を適用する。

1V 全体にわたって、遠近法が適用される。

 実験のa,b Cの分類を上の段階にあてはめれ  ぱつぎのようになる。

   2.3年のaがIの段階、4.5年のaが皿の  段階、bが血の段階・cが丘Vの段階にそれぞれ該  当する。

   第5表を見ると、4〜6年の間に、遠近法の利  用の停滞がみられる。ただし、次の追試や観察か   ら教育への示唆が得られる。

3)描写についての追試および観察

 実験の追試として、2年生11名について9図の ような的あてを斜から見せて絵をかかせた。つまり、

上の旗竿にあたるのが壁の左右のへりにあたる。

 すると、第9表の分類でいえば・aの該当者1名・

 bの該当者がg名、Cの該当者が1名となった。こ れから予想すると、かこうとする対象物が面のっな がりをもった1つの物である限り、・遠近法は生かさ  れるということである。

  この他、図工の時間に「太いものと細いもの」の 教材化として学内にあるえんとつをとり上げた。

 (1O図)太いえんとつも細いえんとつもほほ同じ 高さであることからして、先の旗筆と条件が同じに

、帥,リい。川σ柵利

○図

\ト_

        ・・in■η

7図

㌦1市h=

      /

8図 がかわらずよく遠近法のきいた絵が殆んど描くことができた。

 また、運動場、校舎の一部を含む校地を写生させたところかなり確かな絵を書いている。(11図)

 このことは、1つには子どもたちは(とくに低学年)かこうとする対象が個物としてではなく

(2本の旗竿のように)的あての左右のへりが的あてとして1つのつながりとして存在している ものや、また運動場という平面を介して鉄棒、道路、芝生、左右の建物というように相互に関連 づけられる対象に対しては遠近法はかなり早くから利用しているという事実がうかがえる。

 もう1つは、旗竿のように棒の長さは同じでなくてはならないという先入観と、実際に斜めか

(9)

      /

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〜h〕グ〔

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     L.11コ

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9図 1O図

・へ川川n止四

〃//〃!

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イ)二〃 一

     r¢jプーl    1一「

     1 リ).i   し、._1 rr一Bκ少_二.

丁■一r1 士士1ご1

11図

に対して、先入観のはいらない「えんとつ」のようなものに対してはすなおに表現できるという ことである。

 したがって、こういうことを配慮した上で教育がなされると、前述した4年〜6年の遠近法利 用の停滞が解消されるぱかりでなく、3軍生あたりから遠近法の指導がなし得るということがで きる。

§4 教育とのかかわり

1)教育はかれらが到達しているレディネスに依存してなされなくてばならない一面をもっている。

しかしかれらのレディネスはすべて一路線を順次次の段階へ発達していくものでもない。たとえ ば空間の描写の実験でも明らかになったように空間をへだてた2本の旗竿について遠近法的に描 写されないといっても、1司し段階の子どもが、的あてのように一つの 面でつらなったものであれ ぱそれが容易になされている。したがって、後者を介して前者へ発展させうる可能性は十分考え 得られるのである。

(10)

2)縮小されたもの(地図)と実際との関係把握では2年生から3年生が一つの発達の過渡期であ ることがほぼ明らかになった。方向についての認識、距離判断といった点になお残された問題が あるが、校地の一部の写生にみられたように空間の描写を教育の場にもち込むことによって低学 年から位置表象に関した教育の可能性があるのではなかろうか。

3)位置表象といい、面と面、面と線なとのつながり(位置関係)は現実の空間で学はせると同時 に、それを平面上に写してつかむことがたいせつではなかろうか。運動場は結構平面とみたてら れるし、校舎の壁面は運動場(平面)に垂直

に交わる平面とみたてることができる。      12図      /ノ   実際にこれらを観察し・描写し、一ヵ教室

内では粘土、画用紙等による立体構成や空間 構成を通して空間の認識が深められるであろ

 う。

4〕子どもの発達をうながすものは何といって も授業である。子どもの発達に関した調査は あくまで授業の方法や指導の内容を一般的に つかむ方途であってそういうことから組織さ れた授業の結果をさらに検討して望ましい教 育方法を案出すべきであろう。

口ロロロ〆し

口ロロロロ1コロL ロロロ[ロロロロr

戸      \

n 奈 員

§5 調査でみられた児童心性について(付記)

 認識と発達に関した心理学では児童心性についてよく論議される。一方教育において児童心性を 追求しておくことは授業において子どもの論理形式や行為を分析する上で大事なことである。児童 心性については混同心性、デカラージュ、アニミズム、道具心性等々いくつか上げることができる が、わたしは上の実験をして子どもには次のような心性があ るのではないかと思われたので付記し ておく。(前記のrコでもふれておいたがここでは児童心性として改めてとり上げる)

 第6図と第10図を見られたい。前者は運動場で旗竿を斜めから書かせたときのもの、後者は図 工科で「太いもの・細いもの」を意識化するため教材化したときの「えんとつ」の絵である。2つ の素材に共通しているのはどちらも地面に垂直に2本の棒(管)が立っており、どちらもほば同じ 長さのものである。

 ところが、これらを描かせてみると、その描写が明らかにちがっていることである。ふつう、こ のような場面では遠くのものが小さく、いわゆる遠近法に則した回として描かれなくては実際に見 えたと甫りとはならない。ところが、旗竿の場合には遠近法が用いられず、えんとつの場合にはぎ いている。すなわち、細いえんとつは手前に高く、太いえんとつは向こうに低く描かれている。こ れらのちがいはどうして起こるのだろうか。

 低学年の子どもは物が概念化されていて、それを尺度として対象をわくぐみしてしまうものと思 われる。えんとつの場合には高さが同じだという先入観も、また客観的にそのことをとらえる何も のももっていなかった。そこにあるのは「見えたまま」のえんとつであり、描写に当たって何らの 心的制約を受ける何ものもなかった。ところが旗竿はそうではない。「旗竿の長さは同じはずであ

(11)

る。」、「同じ長さでないとおかしい、」ことを経験から知っている。いま、そこに見える<手前 が長く、向こうが低い旗竿>と、概念化されているそれとがちがっており、描写にあたrてはぎっ とジレンマに落ち入っているにちがいない。それが証拠には第7図・第8図のようなものも現われ ている。概念としてもっている旗竿を如何に画面に保存するか苦心のあとがうかがえる。

 この傾向はプールサイドに立つ子どもの絵にもよくある。プールを展開図式に書き、上、下、右 左にそれぞれ立っている子どもの絵を描く。面面には子どもをさかさに立たせなくてはならないの である。

       13図

 このことは対象によって、知的に進んだ段階にお いても表われる。Y子は2年生の口Fでもすぐれた子 である。かの女は立方体の見取図を書くのにほとん

ど13図のようにかくっ

 あるとき、ビルの模型をかかせたところ、実際で は視点がビルの高さの中ほどにあるから14図のよ

うに見えるはずであるのに視点がビルの上にある13 図のように写生した。かの女は、いつか立体はそう

描くものだと教わったか 判断した経験をもったの   14図      一、。一一・I \_

       、       /

てあろ㌦この既成の概念を新しい対象にそのまま      //

      / あてはめてしまったといえる。

 §1の実験のrコでもふれたが、「家は道のそはに あるものだ」という経験が・地図上への記入に際し てもその位置と関係のない道路わきに記入している       \㌔      。/

子どもがいる。これも一つの例であろうかと思われ      \へ・一一/

る。こういう心性を概念的・物的心性といえないだ ろうか。

 ところで、教育ではこのような子どもの心性を素通りして先に進めることはできないであろう。

概念化されているものと、いま目の前に写る現実との矛盾を介して概念を正しくつくり変えていっ てやることがだいじである。

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