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新監査制度の問題点

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平尾勇

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新監査制度の問題点 385 

I 序 論

監査役の業務監査の本質 会計監査人の監査意見の性格

日本会計研究学会 (34回)での討論をめぐって 暗 号Aif. iinlJ

さ占入

乙).!乙新監査制度とは,昭和49年の商法の一部を改正する法律(以下改正 商法という)ならびに,株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律 (以下監査特例法という)の制定,施行による株式会社の監査制度(以下商 法監査という〉を中心として,更に,証券取引法に基づき公認会計士の行な う財務諸表監査(以下証取法監査という) ならびに, 法律的制度ではない が,大規模企業において一般的に行なわれる内部監査の三つで枯成される監 査制度を云うO 即ち,株式会社をめぐる三つの監査制度...・H・..内部監査,商 法監査,証取法監査...・H・..のうち,商法監査制度の内容が今次の商法改正に よって大きく変容したことにより,商法監査の内部の問題だけでなく,これ と証取法監査と内部監査との関係があらためて問題になっているのであるO

ところで,新商法監査制度は,旧商法が会計監査に限定していた監査役の 権限を業務監査にまで拡張し,それに即応した諸条件の整備を行ったもので ある。

ここにおいて,会計監査と業務監査の区分,業務監査の内容,特に適法性 監査であるか或は適正性,妥当性監査にまで及ぶものであるかどうか,監査 役の行なう業務監査の木質について諸説が分れその確定が望まれているO

次にこの監査役の業務監査と内部監査としての業務監査の関係の明確化の 問題であるO 同じく業務監査という用語を伎っていることで,二つの業務監 査の木質的差兵及びその相互関係の明確化についてよけいな混乱を生ぜしめ

ている。

rr監査制度における最も大きな問題点は,証取法監査における公認会計士 監査と,改正向法と一休のものとして制定された監査特例法による大規松会

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社における会計監査人としての公認会計士監査の実質的一元化に関する問題 であるO 商法監査に公認会計士をとり入れ, u̲正取法監査との一元化をはかる ことが今次商法改正の動機であり,主要な眼目でもあるので,乙の点に最大 の論議が集中していることは当然であろうO

以上新監査制度における問題点を列挙したが,夫々の問題点について順次 その内容を詳述し,私見を開陳してみることにしたい。

監査役の業務監査の本質

今回の改正商法では,監査役は取締役の職務の執行を監査するものとして,

業務監査権を再び監査役に付与することになった。再びというのは,明治32 年商法制定以来,昭和25年改正までの問,監査役は会計監査と業務監査を併 せてその職務権限としていたからであるD 昭和25年改正法は,業務執行の決 定,実行ともに取締役会に帰属するものとした。具体的執行については,取 締役会が代表取締役を選任して,これに委託するという建前をとる。したが って,取締役会は,代表取締役に委託した業務の執行行為が,株主総会の決 議や取締役会の志図するところと合致するよう執行されているか否かの,監 督の権限を有することは当然であり,取締役会の業務監査権は,明文上はそ の規定は存在しないけれども,法理上当然に認められ,か〉る前提の下に,

監査役に従来与えられていた業務監査権を削除し,会計監査のみに限定した のである。た':;.',監査役の会計監査のために必要な限度において1"監査役 ハ其ノ職務ヲ行フ為特ニ必要アノレトキハ会社ノ業務及財産ノ状況ヲ調査スル

コトヲ得J (274条②)とした。

しかし,昭和25年改正前における監査役と,改正法における監査役は必ず しも同じ位置付けではない。それは,改正法のもとでは,取締役会制度がそ のま〉存在しており,代表取締役の職務の執行に対して,監督権限を有して おる。従って,昭和25年の改正に際して,取締役会制度を新設しながら,監 査役に業務監査揺を与えておくことは,屋上屋を主ねるものであるという批 判がなされたと同じ批判が残ることとなる。

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新監査制度の問題点 387 

黒沢教授によれば,改正商法は,監査役の業務監査について,その職務範 囲に関し,殆んど体系的な規定を設けておらず,業務監査への新しい道を拓 くために,その前段階として,監査役の監督権限を強化したものと解すべき 業務監査の体系については, 自主的開発に委ねたものと考えている。

(黒沢清,業務監査の在り方)

監査役の業務監査について,次の問題点は,内部監査の領域としての業務 監査との関係をどのように見るかということであるD

会計監査として発生し発達した内部監査は,次第にその領域を拡大し,会 計財務以外の企業経営の広範な諸業務についての監査に及び,これらを業務 監査 (operational audit)  と称しているO 内部監査は, 経営管理者のため に,その支配下に属する会計及びその他の諸業務の監査を行なうもので,

特に,経営管理統制制度の有効性,能率性を検証し,経営住理者がその経営 管理の貨を高めるように,経営管理者に対してサービスを提供するものであ る。云わば,経営者のための (formanagement)監査であるD

これに対し,監査役の業務監査は1"取締役ノ職務ノ執行ヲ監査ス」るの であり,株主のために経営者を監査する (to  management)  もので,同じ く業務監査という用語を使いながら,その目的,対象を具にする訳であるO

この点,無益な混乱誤解をさけるために,用語を区別し,業務監査は,内部 監査の場合に専ら用い, 監査役監査の行なう業務監五は, これを「職務監 査」と称することを提案するものであるO

勿論これについては次のような具論がでるであろう。即ち,内部監査は,

戦後,証取法監査が実泊されるに当って,それが試五に基づく外部監査なる が故に,その前提条件のーっとして,被監査会社の内部統合JI々皮(内部'AflilJ 々皮と内部監査制度)が相当程度に整備されていることが必裂であるD 内部 監査は,この法定監査発足と共に整備拡充して来たものであるのに対し,監 査役の業務監査は,明治32年商法制定以来,昭和25年まで,兎も灼,制度と しては存在していたもので,監査役の業務監査が先で,内部監五としての業 務監査は,ずっと後のことである。従って,監査役の業務監査を先づ,業務 監査と祢し,後からでて米た内部監査における業務監査の方こそ,他の別の

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名称を付すべきであるという考え方であるD 然しながら,監抗役監査がその 頭初より,会計監査についても殆んど無機能化して来ており,まして業務監 査については,条文上のたてまえに過ぎなかったし,従って,何らその実施 上の業績の積み主ねがなく,監査慣行が存在していない。これに反し,内部 監査としての業務監査は,戦後の二十数年間と期間的には短い間であるが,

内容的にも掘り下げられ,普及範囲の点でも広いひろがりをもって来て,今 や完全に定者していると云えるo従って,今次商法改正によって,監査役に 賦与された「取締役ノ職務ノ執行ヲ監査」する権限を業務監査と云わず,こ れを「職務監査」と称して,内部監査としての業務監査と明確に区別しよう

というものであるO

改正商法による新監査役制度は,その改正;立図に対する正しいlillfa?j{~乙基づ く積極的な迎用がなされれば,企業経営のあり方を新しい時代の要訪に辺応 させる好機となり得るものと考えられるが, 関係者が消極的な態度を固執 し,単に形式的に表面を糊塗するだけに終始すれば,改正前にも増して,形 骸化し,無機能化するばかりでなく,商法監査にとり入れられた会計監査人 としての公認会計士監査をふ無機能化への近づれとし,監査制度を崩壊 し,二度と再び世の信頼をとりもどすことのできない事態をまねく恐れさえ あるのであるO 以下,いくつかの問題点を挙げて分析検討してみることとす

(1)  取締役会と常務会

監査役は, 取締役会に出席し, 志見の陳述ができるが, (260‑3) 日,企業の業務執行に関する会社の怠思決定は,実質的には,常務会や担当 役員会等で行なわれ,取締役会は形骸化される傾向にあるといわれるので,

監査役は,むしろ常務会に出席することが必要となるO 若し,出席できない 場合は,監査役自ら会議の資料を求め,これを閲覧することが必要である口

この点,常務会の決定事項についても,営業の報告を求めるという 2742 項の活用をはかることが必要であるO

(2)  内部監査との監査領域区分

監査役は取締役の職務の執行を監査するが,この取締役の職務の執行には

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新監査制度の問題点 389 

次の両面があるO

①  取締役,取締役会,代表取締役による経営上の決定と執行

②  代表取締役が,下部に権限の委譲を行なう経営業務活動と経営管理活

そこで, 取締役の職務の執行を監査する監査役の「職務監査」は, 上記 の①だけに止まるべきものか,②をも包むべきものかについて説が分れてい る。監査役は,下部領域については,取締役の監督状況を監視することに止 め,上部領域における経営執行の監査をするのをもって,その権限の範囲と するのが一般的考え方であるo

E  会計監査人の監査意見の性格

商法の監査特例法に基づく会計監査人となる公認会計士が,証取法監査の 監査をも担当することによって,二つの会計監査(財務諸表監査〉の一元化 をはかることが,今次商法改正の主眼であるが,か〉る制度上の形式的一元 化は,法律改正によって割合簡単に行えても,その実質的一元化という点に なると色々な点についてその条件整備が必要となり,またそのことによって 新たな問題が生起して来る。これらの条件整備が仲々はかどらず, )~flJD'Lした ことが商法改正が提起されてから約8年間もその成立に期間がかかった大き な原因となったのであるO

監査における立見表明には,佃々の監査人の適否判断の基市として用いる 具体的な判断基準が必要である。そして,監査の対象と監査な見が社会的立 義を持つ;場合には,この判 Itrr~lWI ば,個々の監査人の私的,佃別的なもので なく,一般に公正妥当と認められ,社会的に支持されるものでなければなら ない。証取法監査においては, J1;jJ務諸表が財政状態及び

示しているかどうかについての芯見を表明するのでで、あるが,乙の適否判断の 内容・要素として次の三つがあげられているo(1)財務諸表の項目が一般に公 正妥当と認められる企業会計の基準に従って処理されているかどうか。 (2) 務諸去の項目が前年度と同ーの芯市により処理されているかどうか。 (3)財務

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諸表の表示方法が財務諸表規則の定めるところに従っているかどうか。(財 務諸表の監査証明に関する省令第4条)

そして I一般に公正妥当と認められる企業会計の基司りが具体的に何を 指すかについては明記されていないが,監査証明省令取扱通達の記載からし て,大体において「企業会計原則」を主として指すものであると云える。従 って,企業の会計が,企業会計原則に継続的に準拠して処理され,財‑務諸表 が財務諸表規則(財務諸表等の用語様式及び作成方法lこ関する規則)~乙従 って表示されいるかどうかについて監査を行い,適合していることが確認さ れれば,その財務諸表は迎正であるということになるO 会計処理の実質的内 容から云えば I企業会計原則」という眼鏡を通して,財務諸表の適否が判 断されるわけであるO

これに対し,商法監査における会計監査人の監査志見の表明の中心は,

貸借対照表及損益計算書が法令及定款に従い会社の財産及担益の状況を正し く示しているかどうか,また,利益の配当に関する議案が法令及び定款に適 合するや否ゃについてなされるo(監査特例法13条②及び商法281条の3②), 

かくて,証取法監査は適正性の監査であり,商法監査は適法性監査であるD

前者の判断の基準は全業会計原則であるのに対し後者のそれは法令及び定款 であるO 企業会計原則と法令(商法計算規定)の問に内容の実質的一致がな ければ,両監査制度の真の一元化は実現しない。表示方法についても,証取 法では,財務諸表規則によるのに対し,商法では計算書類規則(株式会社の 貸借対照表,損益計算書及び附属明細書に関する規則)によって記載される ので,両規則の実質的一致がはかられねばならない。

監査制度の実質的一元化をはかることを最大の狙いとした今次の商法改正 に関連しての条件整備として,企業会計原則が商法に合わせる形で修正さ れ,商法もまた第32条第2ζl,公正なる会計慣行を出酌すべしとする条項 を新設し,公正なる会計慣行の内容として, その中心に企業会計原則を考 え,両々相侠って,両監査制度における監査人の判断基準の実質的一元化を はかっているのであるO

現在,会計監査人の監査怠見が適正性について表明されるのか,或は迎法

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新監査制度の問題点 391 

性についてなされるのかという点について議論が分れているが,それは商法 監査と証取法監査の実質的一元化の意味について,共通の理解が存在しない ところに根本的原因があるように思われる。即ち,会計監査人監査が適法監 査であるという主張は,商法ならびに監査特例法の監査報告書の記載事項の 文言……法令及定款に従い………を表面的にうけとり,計算書類の法令迎合 性を監査し報告することであるとするのであるO 法令に機械的に準拠するこ

とにより問題を解決しようとしているO 公認会計士自体その監査に対する法 的責任の配定からこのような結論になり易い傾向がある。

乙のことは,商法上の会計監査人として,公認会計士の職域が拡大した乙 とをただ喜んでばかりはいられない事態を招来する恐れが多分に予見され O それは,両監査の一元化という乙とが,証取法監査の商法への導入,拡 張をそのねらいとして発足しながら, Y公認会計士を商法監査にとり込 み,そしてその会計監査人監査は適法性監査ということで,証取法監査もそ れへの一元化で適法性監査へ限定されることになるのではないだろうか。適 正性監査としての証取法監査も商法監査の適法性監査に一元化され,商法監 査へ埋没し,吸収されてしまうことになるであろう。いわゆる庇を貸して母 屋をとられるというおそれが多分に予想されるO 適法なりや否やを判断する のは公認会計士の仕事ではなく,法律専門家としての弁護士,裁判所の似域 であろうD 会計専門家としての公認会計士を商法の家を改造して,玄関口か ら請じ入れ,監査役室の次の間に軟禁されている聞に,証取法監査の我が家 にくもの巣が張ってしまうという姿にならないのだろうか。

今回の商法改正における会計監査人監査は,これまで証取監査において発 展してきた公認会計士監査の実質的内容も導入することを志図したものであ って,公認会計士という人だけを借りて来て利用するというものではない。

監査特別法における会計監査人の監査報告書の記載事項に関する規定(特例 法13条②)は商法における監査役の監査報告書の記載事項(商法281条の3

②)のなかから会計監査に関するものをそのま〉援用しているにすぎない。

すなわち,監査役の監査報告書の記執事項は,特に専門的能力を要求されな い監査役が,業務監査と会計監査の両国の監査を関連づけて担当するものと

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して規定されているo即ち,会計帳簿は,取締役の職務執行という行為を哀 付ける資料であり,まづ,会計帳簿における記帳過程を追って,記載もれや 不実の記載の有無を監査する。かくて,正しく記帳された会計帳待ーが貸借対 照表および損益計算書と一致するかどうかを監査報告書に記載する。そして 最後に,貸借対照表および損益計算書か法令および定款にしたがって,会社

の財産および損益の状況を正しく示しているかどうかについて報告するO

このような監査役の監査報告書の会計監査に関する記載事項を,そのま弘 会計監査人の監査報告書の記載事項に移されているにすぎない。この点を形 式的に見れば,監査役の会計監査も,会計監査人の会計監査も全く同質のも のとして,資本金5億円以上の大規模会社の場合は,公認会計士の専門的知 識,能力を活用するというものにしかすぎないことになるO 今回の制度改正 の目的は,このような,公認会計士という人を商法の監査制度に借りてくる というような形式的一元化ではなく,過去二十数年,証取法監査として確立 された公正妥当な監査慣行を実質的に商法の中にとり入れようとするところ に,いわゆる実質的一元化の怠味があるものと考える口商法特例法は,会計 監査人監査の内容は別に規定せず,証取法監査の実質的内容を全体としてう

け入れる容器や場所を設けたものであり,あまりに容器の形態についてこだ わりすぎると,これまでに発展して米た公認会計士監査を,その容器の中に

とじ込め,消極的,形骸的なものに抑圧してしまう恐れがあるO

日本会計研究学会 (34回〉での討論をめぐって

日本公認会計士協会の監査委員会は,昭和50415日付で,商法監査に おける監査報告書の文例を示したが,その意見の部分は次の如く表現されて いる r監査の結果,貸借対照表及び損益計算書は法令及び定款に従い会社 の財‑産及び損益の状況を正しく示しており,また,利益金処分案は法令及び 定款に適合しているものと認めるo

これは,監査特例法13条従って商法281条の32項の三号及び六号の文言を そのまま写しただけであり,法令及び、定款への準拠適合即ち適法性を証明す

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新監査制度の問題点 393 

ることになると云われている。会計監査人の監査意見について,適正監査と 適法監査とを対立して議論されることがある。即ち,上の文例に見る如く,

会計監査人の監査意見も,監査役のそれと全く同じく,法定されている監査 報告書の記載事項を充していれば,必要かっ十分であり,それ以外の監査を し,意見をのべることは,権限外のことであるとする立見であるO これに対 し,会計監査人監査は,証取法監査として発達して来た公認会計士監査を実 質的内容としてうけ入れるものであるから,その監査芯見も,中小法人の監 査役の監査報告書の最低基準として示されている意見を全くそのままに形式 的に準用することでは,法改正の基本的精神に副わないこととなり,会計監 査人監査ひいては証取法監査をも無機能化し形骸化するので,会計監査人の 監査報告書は, ii正取法監査と同じく適正性監査でなければならないというの であるo 乙れが,新商法監査制度における会計監査人の監査芯見が,適正監 査であるか,適法監査であるかの議論であるO

本年6月19日より 3日間,本学経済学部を会場として,日;木会計研究学会 の第34回全国大会が行なわれ,統一論題のーっとして I新監査制度と会計 上の諸問題」が掲げられたが,四名の報告者(専修大 桧田信男氏,呑川 大 森 実 氏 , 神 戸 大 高 田 正 淳 氏 , 一 橋 大 中 村 忠 氏 ) が 期 せ ず し て , こ の会計監査人の監査報告1!?の性質について論点が集中していた口

このうち,森氏は,今回のー述の会計規定の改正の結果として,商法の明 文の規定と企業会計原則とが調整され, しかも,商法第32条第2J]1の包括規 定の導入により,企業会計原則が,公正な会計慣行を代表するものとして商 法の規定の解釈指針として明確に位置づけられることになった。その結果と して,適正な企業会計は適法な企業会計と等しくなったとされるD 即ち,企 業会計の基準も一本化され,商法監査も,会社の財産および担益の状況を正 しく示しているかどうかという迎正表示について立見を表明するものである から,適正監査も適法監査も同じであるということができるというD そし て,今回の制度改正のな図が,これまでの証取監査において発反してきた専 門家監査としての公認会計士監査の内容を,そのまま会計監査人監査に導入 することであったと解することが妥当であるとすれば,会計監査人の監査芯

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見の目的は,証取監査と同じように,一般に公正妥当な監査慣行となってい るところの財務諸表の迎正表示に対する監査芯見であると解すべきであると

して,適正意見への統ーを主張されるO

これに対し吉田氏は,殆んど同じような前捉条件に立ちながら,結論と しては,適法の中に適正は十分に含まれており,将来は適法芯見で統一され 得るとされるO 両者とも,適正も適法も同一になるとしながら,一方は迎正 性へ統一し,他方は適法性でもって一元化するという対照的な結論となって

いる。

託収法監査の適正性監査の実質を商法に導入したという点からすれば,森 氏の云う如く商法上の会計監査人監査も適正志見の表明であるとする結論が 一般に受け入れ易いが,監査報告書の記載事項に閃する商法の文言にどうし てもひっかかりがでて来るG 法令の文言といえども弾力性があるといえば,

それでも押し通して行けないこともないが,公認会計士協会の文例も,法令 の文言通りで出されたとなると,個々の公認会計士が,適正22見の文言で監 査報告書を記執することは事実上できないのではないだろうか。

これに対し,高田氏の如く,適法の中に適正は十分に含まれており,将来 は適法怠見で統一されるという説は,その論旨が十分に根拠があり,一般的 説得性があるならば,法令や上記の文例にも副うものであり,まことに好都 合と云うことになるO

高田氏は,怠見表明に2つの類型があり,アメリカのように監査人の判断 基準を法令によって詳細に定めず,一般に認められた会計諸原則とするもの と,西ドイツの如く,それを商法の中で詳細に決めるものとがあるというO

そして,一般に認められた会計原則が判断の中心となり,法令が非完結的で 補足的意味しかない場合には,一般に「財務諸表は,会社の財政状態,経営 成績を適正に表示している」という監査志見が表明されるし,アメリカや我 国の証取法監査の監査;意見はこの類型であるO もう一つの類型に,法令が判 断基準として詳細であり,そのものだけで判断が下せるほど完結している場 合には1"財務諸表が法令に合致している」という監査志見だけでよい。そ して,法令の条文がいかに詳細であっても,その解釈について慣行や公正妥

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新監査制度の問題点 395 

当な会計の基準に従わざるを得ない。このことを十分に配慮し酪酌すること を法令のなかに規定せざるを得ないことになり,そこでは「適法である」と いう意見表明の文言のなかに I公正妥当な会計基準に従って適正であると いう,いわゆる適正意見が含まれることになる」というのであるo

然し乍ら,乙のように法令が判断基準として詳細となり,更にその解釈指 針としてまた補足的慣行として,公正妥当な会計慣行を出酌する旨の規定が 挿入される乙とにより,適法であることの中には,適正意見が含まれ,適法 即適正であるというのは単なる形式論理にすぎないように思われる。

V 2Hλ

そもそも,監査報告吉の目的は,その利用者に対する有用性によって決め られるD 商法による監査報告の本来の目的は,株主総会における決算承認の ための資料を提供することにあるO 会社の取締役が経営者として株主から会 社の経営を受託するかぎり,経営者がその受託した経営の現況と結果を株主 に定期的に報告しなければならない。委託者たる株主に対し,受託者たる取 締役が負うアカウンタピリティを「申し聞く」説明吉が財務諸表であり,そ の申し開きに対し承認を与えられるか否かの判断の資料としての監査報告吉 である。商法は本来,私法であり,株主の私権を株主総会及び監査役という 制度を通じて擁護するところにその本来の性格があるO

ところが,近代的な株式会社では,その大規~{~化 lこ伴って,その利害関係 者が多様化し, その数が臨めて増大し, いわゆる企業の社会性が増して来 た。かくて,商法が私法として,私的限利の保誌という性格ではなく,企業 の社会性の見地から,多岐にわたる利害関係者の利害を調整的に擁護すると いう公法的性格を帯びざるを得なくなるのであるo

近代的な株式会社の利害関係者は企業に対し夫々具なる利害関係をもち,

財:ro諸表及び監査報告苫に対し,ウエイトの兵なる利用目的をもっているの

であるが,共通の要求は,夫々の;立思決定の資料としての信 ~TI性の確保とい

うことであるO 従って,財‑務諸表とその監査も,取締役の株主に対する合法

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性,適法性の申し開きとその承認の可否の判断資料ではなく,多角的な利害 関係者,利用者に対する志思決定資料としての有用性,信頼性の程度を評定

し評価するという適正性の判定をこそ求められるのであるO

高田氏が I適法の中に適正は含まれており,将来は適法志見で統一され 得る」 と云われることは, その将来とは, 商法が常に理念的解釈論ではな く,実態として上述の意味における公法として生れかわった場合の将来とい う意味であれば,肯定できるが,株主総会に出席する株主は,一般投資家屈 をはじめ,利害関係者を代表して財務諸表を判断し,これによって承認を与 える立場にあるとする主観的解釈理念としての公法化という乙とでは,適法 即適正という高田氏の結論は一般的承認を得られ難いであろうO

新商法の監査制度としての会計監査人の監査は,監査特例法という形をと りながらも,今回初めて資本金による会社規校を大中小の三段階に分け,夫 々異なる監査制度を設けた訳で,資本金5倍以上の大規模株式会社にのみ会 計監査人の監査を行なうことを規定したことは,その利害関係者と社会性の 増大に対応しようというものであり,株主のためのアカウンタピリティ解除 のための監査専門家としての公認会計士の利用という性質のものではなく,

すべての利害関係者が夫々の意思決定の資料として,会社の財務諸表を利用 できるようその信頼性を高めようとするものであると解釈されるD 従って,

会計監査人の監査は,監査役の監査の如く,会計帳簿,貸借対照表および損 益計算書の作成業務の過程の法令適合性を監査し,その適法性を表明するこ とにより,計算書類承認の可否の資料とするのではなく,広く利害関係者す べての意思決定資料として信頼に価するか否かという適正J性についての意見 を表明すべきものと考えるo そのためには,このような見地から,監査特例 法の第132項は, 商法第281条の3をそのまま準用するような安易な聞に 合わせ的な規定ではなく,監査役の監査報告書との性格の追いを,的確に文 言にあらわすべく改正される必要がある乙とを力説するものである。そして 更に,公認会計士協会の商法監査における監査報告書の文例も,あのような 表面的な法令準拠で,お茶をにごすものではなく,深い本質理解の上に立っ て,もっと社会指導の理念によって早急に再検討されることを希望するもの

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新監査制度の問題点 397 

であるo

注) 本論文作成にあたって,私見形成の参考として下記の諸氏の著書論文を参考と させて頂きました。特にNに於て,名前をあげて比較論考した森実氏,高田正淳 氏には,学会発表における御見解を私が正しく拝聴できたかどうか心もとないと 乙ろがあり,事前に御諒解を得られなかったことをふくめて,おわびとお礼を申 上げます。

l.  日 下 部 興 市 新 会 計 監 査 詳 説 2. 久 保 田 音 二 郎 適 正 表 示 の 監 査 3. 実 会 計 士 監 査 論 4. 近 沢 弘 治 会 計 士 監 査 の 基 礎 理 論 5.  久保田 音二郎商法監査と会計士監査 6. 桧 田 信 男 監 査 役 に よ る 業 務 監 査 の 方 法 7. 実会計監査人の監査意見の問題について 8. 高 田 正 淳 監 査 芯 見 表 明 の 一 元 化

参照

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