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Tumor necrosis factor-stimulated gene-6 (TSG-6) の動脈硬化抑制作用

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Academic year: 2021

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氏 名 ( 本 籍 ) 渡部 麗奈 (愛媛県) 学 位 の 種 類 博士(生命科学) 学 位 記 番 号 博 第 114 号 学位授与の日付 平成30年3月14日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当

学 位 論 文 題 目 Tumor necrosis factor-stimulated gene-6 (TSG-6) の動脈硬化抑制 作用 論 文 審 査 委 員 (主査) 渡部 琢也 教授 深見 希代子 教授 山内 淳司 教授 浅野 謙一 教授 論文内容の要旨 【背景・目的】 世界の死因の第 1 位は、虚血性心疾患 (冠動脈疾患 [CAD]) である (2017 年 世界保健機関 [WHO] 発表) 。その代表が急性心筋梗塞であるが、最新の医療を 尽くしても、世界および本邦における主要死亡原因になり続けている。本疾患は 動脈硬化に起因するため、動脈硬化性疾患の有効な予防・治療法の開発が強く望まれ ている。故に本研究では、かつてない血管壁細胞を標的にした新たな治療薬を開 発するため、抗炎症性タンパク質である TSG-6 の動脈硬化抑制作用を検討した。 TSG-6 は、抗炎症作用をもつ糖タンパク質で、ラット動脈傷害後の新生内膜に 局在することが分かっていたが (Circ Res 1997;81:289–296)、動脈硬化形成に対す る作用は明らかにされていなかった。故に本研究は、TSG-6 の動脈硬化抑制作用を 解明するため、ヒト血管内皮細胞 (HEC)、ヒト単球由来マクロファージ (HMDM)、 ヒト大動脈平滑筋細胞 (HASMC) に対する作用を in vitro で、動脈硬化モデルの ApoE 欠損マウスにおける動脈硬化病変の進展に対する作用を in vivo で検討した。更に、 CAD 患者の冠動脈病変と血漿中における TSG-6 発現レベルを解析した。

【方法・結果】

❶ヒト血管壁細胞およびマウス動脈硬化病変における TSG-6 の発現

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の平滑筋細胞の増殖部位に一致して認められた。

❷ヒト血管内皮細胞における炎症反応および増殖に対する TSG-6 の作用

ヒト𦜝𦜝帯静脈内皮細胞(HUVEC)において、LPS 刺激による Interleukin-6、Monocyte Chemotactic Protein-1 (MCP-1)、Tumor Necrosis Factor-α (TNF-α)、Intercellular Adhesion Molecule-1 (ICAM-1)、Vascular Cell Adhesion Molecule-1 (VCAM-1)、E-Selectin の mRNA 発現の増加に対する TSG-6 の抑制作用を RT-PCR を用い検討した。LPS により上記 全ての分子の発現が促進されたが、TSG-6 により MCP-1、ICAM-1、VCAM-1 の発現 が有意に抑制された(図 B)。また、TSG-6 は HEC の増殖を有意に抑制した。 ❸ヒトマクロファージのフェノタイプに対する TSG-6 の制御作用 マクロファージには炎症促進に働くM1と炎症抑制に働くM2の2種類のフェノタイ プが存在し、この発現バランスが動脈硬化病変形成の制御に関わるとされている。 故に、TSG-6がどちらのフェノタイプへの分化誘導に関わるかをWestern Blotで解析し た。初代培養ヒト単球からマクロファージに分化する過程でTSG-6に暴露しておくと、 M1ではなくM2優位に分化誘導された。その際にERK1/2の抑制が関与していた。 ❹ヒトマクロファージの泡沫化に対するTSG-6の抑制作用

HMDM の酸化 LDL による泡沫化を Cholesterol Esterification Assay で検討したと

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また、マウス腹腔より採取した浸出性マクロファージにおいて、炎症マーカーのタ ンパク質発現をWestern Blotで解析した。TSG-6投与によりMCP-1、COX-2、NF-κBの 発 現 お よ び ERK1/2のリン酸化が有意に抑制されていた。同時にM1マーカーの MARCOの発現も有意に抑制されており、マクロファージにおける炎症反応が抑制さ れていた。 生食投与群とTSG-6投与群との間では、体重、収縮期・拡張期血圧、血糖値、血中 Pentraxin-3濃度に有意な差は認められなかった。しかし、TSG-6投与群では血中の総 コレステロール値が有意に減少しており、HDLコレステロール値は増加傾向にあった。 ❽虚血性心疾患患者の冠動脈病変におけるTSG-6の発現

Non-CAD と CAD 患者の冠動脈病変の連続切片を各々TSG-6、CD68、α-SMA の免 疫染色、マッソントリクローム染色を行い比較したところ、TSG-6 は外膜(矢印)の他、 プラーク肩部の平滑筋細胞と Collagen 線維が豊富な Fibrous Cap(矢印)に強く発現し ていた(図 I)。

❾虚血性心疾患のバイオマーカーとしての TSG-6 の可能性

Non-CAD 患者 47 例および CAD 患者 135 例から採取した血漿における TSG-6 濃度 を ELISA にて測定した。血漿 TSG-6 濃度は、Non-CAD 群に比べ、CAD 群では有意 に高値であった(図 J)。また、血漿 TSG-6 濃度と年齢・高感度 CRP との間には相関は 認められなかった。以上から、血漿 TSG-6 濃度が CAD を予測する独立したバイオ マーカーになり得ることが示唆された。

更に、CAD 患者における主要有害心血管イベント(MACE)発症の有無を 4 年間追跡 調査したところ、CAD 患者 135 例中 32 例に心血管死、心不全、急性心筋梗塞、梗塞

後狭心症、脳卒中等の MACE が認められた。MACE を有さない患者と比較して、MACE

を有する患者では血漿 TSG-6 濃度が高値の傾向にあった(図 K)。 【結語】 TSG-6 は血中総コレステロールの減少と、HEC と HMDM の炎症反応の抑制並びに HMDM の泡沫化を抑制し、HASMC の遊走・増殖も抑制することで動脈硬化病変の 進展を抑制することが本研究で明らかになった。加えて、TSG-6 は Collagen 産生を促 進することで、動脈硬化病変の破綻の予防に寄与すると考えられる。TSG-6 の病変内 発現や血中濃度が CAD 患者において増加していたが、プラークの進展を抑え安定化 させるために反応性に TSG-6 が増えていたものと推察される。 従って、TSG-6 はアナログ製剤として動脈硬化症および CAD に対する新しい治療 ターゲットになり得ることや、CAD を診断するバイオマーカーにもなり得ると考え られる。本研究により得られた新知見は、TSG-6 を CAD の診断および治療に役立て るために有用であると考える。 【研究結果の掲載誌】

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JACC Basic to Transl Sci 2016;1(6):494–509.

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(7)

術 的 価 値 が 高 く 、 本 研 究 内 容 は 、 J Am Coll Cardiol (JACC) Basic Transl Sci 2016;1(6):494-509 および Int J Mol Sci 2018;19(2)465 に掲載されている。

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