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改正生産緑地法の下での 市街化 区域農地の都市計画的課題

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改正生産緑地法の下での 市街化 区域農地の都市計画的課題

静 岡大学法経短期大学部 井 良

I.はしが き

市街化 区域 内農地 については、住宅・ 宅地供給のための素地 としての性格 と 残 された貴重 な緑地・ オープンスペース としての機能の両面か ら捉 えられなけ ればな らない。近年では、 ます ます市街化 区域内農地の希少価値が高 まりつつ ある。た また ま農地 として都市 に残 された貴重な緑地・ オープンスペースをこ の まま農地 としての存続 を目指すか どうかは、都市政策上の重要な検討課題 で ある。いずれにせ よ、都市環境の改善が求められ る今 日において、宅地開発か 農地 としての保全か といった二者択一か ら脱 して、残 された希少な都市農地の 有効利用 についての議論が始 まった ことは、歓迎すべ きことである。

1980年代後半か ら始 まった地価の急騰 と大都市の宅地供給不足が、都市農地 の保全 と開発 にとっての新たな課題 をつ きつけることとなった。開発すべ き農 地 を選定す るとい う課題 が、生産緑地法 の改正 とい う結果 をもた らす ことと なった。 この ことはまた同時に、生産緑地 として保全すべ き農地の選定 を促す 結果 となった。保全 され る都市農地 については、従来 どち らか といえば、宅地 供給阻害要因 と見 なされ る傾向が強かった。 ここに至 って、都市の環境保全 に

とっての新たな役割 を担 うことが期待 されている。

ここに都市計画上、二つの課題が生 まれ ることとなった。一つは、宅地化農 地 について、乱開発や土地投機か ら守 り、街路や区画の整備 を中心 として、い かにして計画的な市街地形成及び宅地化 に誘導するか とい う問題である。区画 整理や地区計画等の既存の様々な都市計画的手法 を駆使 して、いかにしてこの 課題が達成 されるか とい う問題である。

宅地化農地 については、今後、固定資産税・ 相続税等の税制上の軽減措置 を 求 めるための宅地開発が進 められ る可能性が強い。都市施設 を伴 った計画的な (168) 21θ

(2)

宅地化 に向けて誘導す ることは、緊急 を要す る課題である。もう一つの課題 は、

オープンスペース として保全 されることとなった生産緑地 について、都市環境 の保全 に とって最 も有意義 な活用の仕方 を模索す ることである。

自治体 の買い取 りによる公共住宅の建設や市民農園 としての利用等 も、農地 としての永続性や質の高い維持管理 という面か らみて、優先順位の高い政策 目 標 の一つである。問題 は、従来の買い取 り制度の運用 によって この ことが可能 になるか どうか という点である。買い取 り請求 は、様々な理由によって営農が 困難 になるに従 って、 しだいに発生す ることになる。大量 に相続等が発生す る 前 に何 らかの制度上の方策 を講 じておかなければ、市町村 にとって買い取 りが 困難 な土地 は逐次な し崩 し的に開発の対象 となって しまうであろう。 このよう な時 を隔てて行われ る小規模開発 は、計画的な市街地形成 に とって最 も悪影響 が大 きい ものである。

今回の生産緑地法改正 については、バブル形成期のその他の制度 とも共通 し て、宅地供給 を目指 した窮余の一策 としての一面があることは、否定で きない。

都市農地の保全 と開発の両面 における制度上の受 け皿が整備 されないままでの 保全農地 と開発農地 との選別の強化 については、特 に都市農地の保全 を主張す る側か らは、拙速であるとの声 も聞かれ る。改正生産緑地法の実施時期がバ ブ ル経済の崩壊期であつた ことも、批判 を強める結果 となっている。 しか しなが ら、近年 においてしだいに減少 しつつある都市農地 について、開発 と保全の両 面か らの問題が深刻化 して きた ことは、事実である。いずれ提起 しなければな らない問題 について、バ ブルの形成 による地価高騰が加速 したに過 ぎない と考 える方が、 自然な見方であろう。

本論文では、改正生産緑地法の提起 した課題 について、都市農地の保全 と開 発の両面か らの検討 を行いたい。固定資産税および相続税 といった税制の運用 面の改正 にも視点 を当てて、税制や融資面での誘導 を基軸 とした今後の都市計 画の運用面の課題 について も検討 したい。本論文では、 どち らか といえば、計 画的な宅地化 に向けての制度面の検討 を中心 として論 じることとしたい。先進 的な自治体 を中心 とした具体的な施策の運用面の研究 については、別稿 にゆず ることとしたい。

21イ (167)

(3)

.生産 縁地 法改正 の意義

平成3年4月の生産緑地法の改正 に伴 つて、三代都市圏の市街化区域内農地 について、生産緑地 として保全 される農地 と宅地等 としての開発がなされ るベ き宅地化農地 との区別が明確 になった。宅地化す る農地 については、地区計画・

農住組合制度・ 土地区画整理事業の活用 によ り道路・ 公園等の整備 された計画 的な宅地化が図 られることとなった。保全す る農地 については、計画的な保全 が図 られ るように、生産緑地地区の指定や市街化調整 区域への編入が行われ る

こととなった。

生産緑地法 は、都市化の進展 に伴 って、都市農地 について宅地化すべ き農地 と保全すべ き農地の区分 けにせ まられて、制定 された。昭和49年6月の制定後、

様々な改正がなされている。平成3年4月の改正の特徴的な点 は、以下の点 に ある。 まず第一 に、最 も大 きな改正点 は、農地の持つ緑地機能の積極的な評価 がなされている点である。改正前の生産緑地法では、都市農地 を公害又 は災害 の防止等良好 な生活環境の確保及び将来の公共施設等の敷地の適地 と位置づけ ていた。営農 を指定の要件 とはしつつ も、明確 な形で都市計画上都市農業 につ いて位置づけるもの とはなっていなかった1ヽ

改正生産緑地法では、農地の著 しい減少 に直面 して、農地の都市空地 として の意義 を評価する面が、強 く打ち出されている。第2条2で「国及び地方公 共団体の責務」として、「都市 における農地等の適正 な保全 を図ることによ り良 好 な都市環境の形成 に資す るように努 めること」が指示 されている。周辺 の公 園・ 緑地等の現況及び将来の見通 しを勘案 して、 それ らの整備 を補完する役割 を認 めている。将来の生産緑地の買い取 りによる公園・ 緑地等の拡大 を展望す る内容 となっている。

現況の都市農地 について、都市の乏 しい緑地空間の補完機能 を認 めつつ も、

将来の公共空地の候補地 として位置づ けている。営農 を奨励 しつつ も将来の買 い取 りを示唆 している点 は、一見矛盾 しているとも受 け取れ る。 しか し、都市 農地の現状 と避 けて通れない将来の見通 しの双方 を満たす規定 として、評価す べ き内容 となっている。営農 を奨励 している点 は、一方で都市 における農地の 存在意義 を認 める結果 となった反面、都市農家 に とっては、以前 よ り重大 な農 地の管理義務 を背負 うことになる。総 じて、農地の厳正 な区分 けを促進す る内 (166) 215

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容 となっている。

3条に規定 された生産緑地地区の指定の要件 について も、大幅に改正 され ている。第1項では、「農林漁業 と調和 した都市環境 の保全等良好 な生活環境 の 確保 に相当の効用があ り、かつ、公共施設等の敷地の用 に供する土地 として適 している」 ことを要件 としている。農地であ りさえすればすべて保全するとい う姿勢ではな く、 自治体 の都市計画の策定上、生活環境 の向上 に とって必要な 限 りでのみ保全するとい う内容が盛 り込 まれている。 この規定 に従 えば、生産 緑地の指定 に関 しては、農家の意向にのみ左右 され るのではな く、本来 自治体 側 の都市の将来像の策定 プランの方が先行すべ きものである。今回の生産緑地 指定 に際 して、 この趣 旨が十分 に生かされなかった ことは、今後 に大 きな問題

を残す結果 となっている。

現状の生産緑地の指定状況 を見 ると、農家の意向のみが先行 している感があ る。自治体側の対応 を見ていると、飛び地状 に指定 された生産緑地 を前 にして、

事後的 に、極 めて困難 になってしまった整合性のある都市計画の策定の方策 を 模索 しているといった現状である。現行の都市計画制度 を駆使 して、宅地化農 地 を中心 とした残存農地 を含 めた土地 にいかにして秩序ある市街地 を形成す る かが、当面の最大の課題 である。それ と同時 に、現在生産緑地 に指定 された土 地が将来 自治体の買い取 り請求の対象 となった時 に、いかにして買い取 り、公 共用地 として運用するか とい う問題が、将来的な課題 となっている。

3条 2項では、生産緑地の指定面積 の大幅 な緩和がなされている。従来は 第一種生産緑地地区でl ha、 第二種生産緑地地 区で 0.2 haで あった ものが、

500m2へと大幅 に引下 げられている。これは、急速 に進んだ都市農地の狭小化 に 対応 した ものである。500r以上 あれば指定 を認 めるとした ことは、指定の如何 についての農家の選択の余地 を広 げることになった。 この ことは、生産緑地法 改正 に伴 う税制等の面での厳正な運用 を考慮するといた しかたないように思わ れ る。 しか し、飛び地状 の狭小な農地の営農 を認めることは、自治体 による秩 序 ある市街地の形成 を容易な らざるものにする結果 になって しまった。

7条では、「生産緑地 について使用又 は収益 をする権利 を有する者 は、当該 生産緑地 を農地等 として管理 しなければな らない」と規定 している。 この点 は、

改正前 と同様である。農地 を都市計画のなかで どう位置づけるか という問題 は、

引 き継がれ ることとなった。

8条では、生産緑地内での建築物の新築や宅地の造成 については市町村長 21δ (165)

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改正生産緑地法の下での市街化区域農地の都市計画的課題 の許可 を要す ることが定 められている。同条第二項では、例外的に許可 される 施設 について定 め られている。それに関連 して、生産緑地法施行令第4条では、

市民農園に必要な施設 として、農作業の講習の用 に供する施設や管理事務所等 の施設が明記 されている。直接耕作 される土地のみでな く、市民農園等 として 貸与する場合 も、生産緑地 を農地 として管理す る場合の有用な手法であるとし て、市民農園の維持 に必要な一定の施設の設置許可が追加 された。

近年 になって都市の空地が極端 に減少 した ことに伴 って、都市農地が農産物 の供給基地であるか どうか よ りも、その空地 としての意義が重要性 を増 してき た もの と考 えられ る。都市農地 は必ず しも土地所有者本人の耕作地でな くとも 良 くなった。 この ことによって、都市農地 を農産物の供給源 として位置づける か どうか といった従来の議論か ら開放 された もの と考 えられる。残 された希少 な都市農地の新たな活用方法 について、都市住民 による有効利用の途 を開いた 点で、評価 に値するもの と考 えられ る。

10条には、生産緑地の買い取 りの申し出について定 め られている。買い取 り申し出の開始 までの期間 は、従来の5年か ら30年に延期 され ることとなっ た。生産緑地の所有者 は、生産緑地 に指定 されてか ら30年を経過 した とき又 は 農業の主た る従事者が死亡 した り、農業 に従事す ることを不可能 とされる故障

を生 じた ときは、生産緑地 を時価で買い取 るように申 し出ることがで きると定 め られている。「主たる従事者」には、世帯主等の専業従事者のみでな く、建設 省令で定める一定期間農業 に従事する家族等の重要な役割 を担 っている兼業従 事者 をも含んでいる。

今 回の法改正 において、「主たる従事者」の範囲が拡大 されている。生産緑地 法施行規則第2条によれば、主たる従事者が65歳未満の場合 はその従事者が1

年間に従事 した 日数の8割以上、65歳以上 の場合 はその従事者が1年間に従事 した 日数の7割以上従事 してぃる者 も含 まれると規定 している。家族経営等の 共同経営の下では、改正前の「主たる従事者」以外の家族の死亡 または故障に よって も営農が困難 になるとい う事情 を考慮 した ものである。同施行規則第4 条 には、「農林漁業 に従事す ることを不可能 とさせ る故障」について、詳 しく規 定 されている。両 目の失明、精神障害、臓器障害、身体 の一部の喪失・ 機能障 害及 び1年以上の入院等 により農林漁業 に従事で きな くなる故障 として市町村 長が認定 した ものが含 まれ ると規定 されている。

営農期間 を30年に延長 したために、実質的に営農不可能 となつた場合の措置 (164) 217

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について明記せ ざるをえな くなった もの と考 えられ る。医師の診断書の提出義 務があるにして も、運用の仕方によっては様々な抜 け道が考 えられ る。今回の 改正の中で最 も厳格 な運用が困難な箇所であると思われ る。

11条では、 自治体側の生産緑地の買い取 りについて定め られている。「市 町村長 は、申出があった ときは、当該生産緑地 を時価で買い取 るもの とする」

ことが規定 されている。 また市町村長 は、生産緑地の買い取 りの希望があった ときは、買い取 りを希望する地方公共団体等の内か ら買い取 りの相手方 を定め ることもで きるとしている。市町村長 は、 自ら買い取 らない場合で も、都道府 県、住宅供給公社、住宅都市整備公団や他の農業従事者 への斡旋 に努 めること がで きる。「公園、緑地 その他の公共空地の敷地の用 に供す ることを目的 として 買い取 りを希望するものを他の者 に優先 して定めなければな らない」 と規定 し ている。 これ らの条項 は、生産緑地 を将来の公共用地 として位置づ けている点 で、重要な考 え方を示 している。農地 は、30年経過、相続、故障等 により営農 に限 りがあるもの と認識 し、農地 を公共用地の予備地 として位置づけている点 は、評価で きる。ただ し、買い取 りの希望があった場合 にのみ時価で買い取 る ことがで きるとしている点で、土地所有者の裁量 に委ね られてお り、実効性 に ついては疑わ しい。

近年の地価高騰 によって公有地拡大法の下での買い取 りは有名無実化 してい る。バブル崩壊後の市場地価の下落 によって、やや持 ち直 してきた程度である。

市町村 に対 して買い取 りの申し出が実際にどれだけあるかについては、その時 点での地価の市場価格が公的な土地評価 に対 して どの程度の水準 にあるかに左 右 され るもの と考 えられ る。30年後 もし くは相続時 となれば、かな り先の こと であ り、地価の高騰が予測 され る。買い取 り財源 についての制度上の措置が講 じられていなければ、絵 に書いた餅 になる可能性が強い。公有地拡大 について の土地所有者の協力 に期待せ ざるをえないのが現状であろう。

この条項の もう一つの問題点 は、買い取 りの申 し出のあった生産緑地が、必 ず しも市町村 にとって公共用地 として必要な土地 とは限 らない とい うことであ る。幹線道路の拡張のための用地 を考 えると、道路適地 は限 られている。生産 緑地 として点在す る農地の うち道路適地 として位置づ けられ る土地 は、限 られ ている。公園や緑地 を考 えて も、すでに区画整理事業 による交換分合等がなさ れたある程度の規模 と形状 をもった土地でなければ、都市公園 としての機能 は 果たせ ない。近隣住民の 日照 を保 つ程度の小規模空地 に対 して膨大 な公的資金 218 (163)

(7)

を投入することは、困難であろう。

現時点で生産緑地 として保全 されている農地 について、計画的な市街地形成 の一環 として位置づ けて、土地 区画整理事業等 を利用 した基盤整備 を推進 して いかなければt将来の計画的な市街地形成 は困難 さをきわめることになるであ ろう。その場合、基盤整備がなされた農地が必ず将来公共用地 になる とい う保 証が必要であろう。すべての生産緑地 を買い取 りの対象 とするよりは、前 もっ て立案 された土地利用計画 に則 して、公共用地 として必要性 の高い土地利用計 画 に対 して、重点的に財源措置 を講 じるほうが効果的ではないか と考 えられ る。

公共用地 としての適地 にある生産緑地 については、手放 した時期が早 ければ、

買い取 り価格や税制上の措置 において優遇する等の誘導措置 も考 えられ る。

そ もそ も生産緑地法 は、市街化区域内の都市農地 とい うある意味で矛盾 した 存在 に対 して、妥協の産物 として制定 された ものである。都市化 をはかるべ き 市街化区域内に分散的にもう一つの調整 区域が命脈 を保 ち続 けていることは、

都市計画法の理念 に沿 った ものではない。生産緑地の存在 は、都市計画法の理 念か らみれば、妥協 を重ねた産物である。 その後の都市化の進展 に際 して整合 性 を失い、矛盾 を取 り繕 うための制度の改正が繰 り返 されて きた。昭和末期の 地価高騰期 における大都市の宅地不足問題 に直面 して、その矛盾が先鋭化 した ため、今 日の改正 に至 った もの と思われ る。

しか しこの間に、今 日の大都市では、生活環境の悪化 とオープンスペースの 欠如 という新たなより深刻 な問題 を抱 えるに至 っている。三大都市圏 を中心 と して、都市の空地 は希少な存在 となって しまった。かろうじて生 き残 った都市 農地 (生産緑地)について、都市のオープンスペース として永続的に活用すべ きであるとい う点 について、社会的 コンセンサスが形成 されつつあることが、

今回の改正 を導いた もの と思われ る。残 された都市農地 (宅地化農地)につい

ては、住宅の供給 のみな らず空地 を備 えた整序 された市街地形成の予備地 とし て役立てることが求め られている。

近年の都市計画法の改正点 をみると、都市のオープンスペースを浸食 して住 宅 を建設す るよりも、容積率の緩和等 によって高層化 を通 じて住宅供給 を推進 する方向に転換が図 られている。 この点 は、生産緑地法の改正の方向 と呼応 し た もの となっている。

(162) 2Z9

(8)

.市街化 区域 内農地 の税 制 改正 一 ― 計画 的宅地化 の促進 ― ―

(1)固定資産税等

今回の改正生産緑地法の下での農地の区分 けが進 め られた背景 には、土地税 制の厳正 な運用があることは、否定で きない。

これ まで三大都市圏の特定市の市街化区域内農地 に係 る固定資産税 について は、宅地並課税 の対象農地であって も、引 き続 き10年以上営農 を継続するとし て市長村長の認定 を受 けた長期営農継続農地 については、農地課税相当額 を上 回る額 は徴収猶予 を受 け、5年毎 に営農が継続 された ことが確認 された場合 に は、猶予 を受 けた額 の納税義務が免除 され ることとなっていた。

平成3年度 においては、特定市 の市街化 区域 にある約5万2千 haの農地 の うち、約4万 1千 haの農地が宅地並課税の対象農地 となっている。この うち約 3万 5千 haが長期営農継続農地の認定 を受 けていたため、実際 に宅地並課税 が行われた農地 は、宅地並課税対象農地の14%程度 に とどまっていた幼。

生産緑地法の改正 に伴 って、平成4年度以降、土地税制が大幅 に改正 された。

長期営農継続農地制度 は、平成3年度限 りで廃止 された。固定資産税 について は、生産緑地地区内の農地 を除 き、原則 として三大都市圏の特定市のすべての 市街化区域 内農地が、宅地並課税 の対象 となった。昭和58年度以降 に長期営農 継続農地の認定 を受 けた農地 について も、認定の効果が平成3年度限 りで打ち 切 られた。 これ までの宅地並課税の対象 となっていなかった3.3m2当た り評価 額が3万円未満の市街化区域内農地 について も、宅地並課税の対象 となった。

それに伴 って、宅地化す る農地 について、計画的な宅地化 に向けての誘導措 置が導入 された。計画的な宅地化や優良な賃貸住宅供給が行われた場合 には、

固定資産税等の大幅な減額措置が講 じられ ることとなった。平成4年末 までに 事前協議、開発許可申請等 を行い、平成5年末 までに開発許可、地区計画の策 定等が行われた場合 には、平成4年度か ら平成6.年度 までの固定資産税等 につ いては、宅地並税額 の10分1に減額 され ることになった。

平成4〜11年末 までに特定市街化区域農地 を転用 して、基盤整備 を伴 う優良 な賃貸住宅が建設 された場合 には、土地・ 家屋 に対する固定資産税 は、以下の ように減額 されることになった。土地 については、それ までは3年間 につ き2 分の1に減額するとい う制度であった。改正 によって、3分1に減額へ と優  (161)

(9)

遇幅が広が った。平成4〜 6年末 までに建設の場合5年間の減額、平成7‑11

年末 まで に建設の場合3年間 の減額 とな り、早期着工 の方が減額期間が長 く なった。

家屋 については、 これ まで は10年3分1に減額す る とい う制度であっ た。改正 によって、平成4〜 11年に建設 した場合、最初の5年間は4分1に その後の5年間 は3分1に減額することとなった。

優良な賃貸住宅 を建設 した場合 に不動産取得税が3分2に減額 され る特例 については、平成6年3月末 まで に取得 し2年以上賃貸 した場合 に、引 き続 き 認 め られ ることとなった。開発行為が行 われた場合 な ど基盤整備 を行 った農地

に限つて特例が認 められ ることとなっため。

(2)相続税等

これ まで農地 に係 る相続税 については、農地の相続人が農業 を継続する場合 に限 り、農地価格の うち農業投資価格 を超 える部分 に対応す る相続税 について、

担保 の提供 を条件 として納税 を猶予 し、申告期限後20年間農業 を継続 した場合 等 にはこれが免除 され ることとなっていたり。

相続税 の納税猶予制度 については、大都市圏の市街化 区域 を中心 として利用 度が高 く、従来か ら大都市の土地利用 にそ ぐわない との批判があつた。平成3 年度の土地税制の総合的な見直 しの一環 として、三大都市圏の特定市の市街化

区域内農地 についての相続税 の納税猶予制度の改正が行われた。三大都市圏の 特定市 (平3年1月 1日 時点の もの)の市街化 区域内においては、平成4年 1月 1日 以降に生 じた相続 または遺贈 については、生産緑地地区内の農地等 を 除 いて、相続税及び贈与税 の納税猶予・ 免除制度 は適用 されな くなった (平 3年12月 31日までの相続 については、 これ までの相続税 の納税猶予・ 免除制 度 〔20年営農〕が適用 され る)。

ただ し、平成4年12月 31日 までの相続 において取得 した農地等が特定市街 化 区域内農地等である場合 には、相続税 の申告書の提出期限内 (相続 の開始か ら6ヶ 月以内)、かつ平成4年12月 31日 までの間に生産緑地地区の指定又 は市 街化調整 区域への編入があった場合 には、相続税の納税猶予・ 免除制度の適用 が受 けられ ることになっている。 この改正 は、三大都市圏の特定市の市街化区 域 内農地等 について行われた ものであ り、それ以外の地域の農地等 については、

従来 どうりの規定が適用 され ることになる。

α60)221

(10)

法経研究

生産緑地地区内の都市営農農地に限っては、相続税の納税猶予・ 免除制度が 適用される。ただし、猶予期限が死亡の日まで とな り、終身営農を原則 とする 内容に改正された。納税猶予の申告後3年毎に、農業経営に関する事項 を記載 した届出書の提出が義務づけられている。特例の適用を受けている特例農地等 について、農地の譲渡等があった場合は、猶予されている相続税に利子税を付 加 して収めなければならない。特例農地の20%超を譲渡・転用した場合、農業 経営を廃止 した場合、買い取 りの申し出をした場合、都市計画の決定・ 変更に

より生産緑地地区外 となった場合等がこれに該当する。

以上の相続税の納税猶予制度の改正には、経過措置が設けられている。昭和 60年1月 1日前に相続税の納税猶予を受けている農地については、平成4年1

1日から平成6年12月 31日 までに以下のような形態での転用見込みである ことについて税務署長の承認を受けた場合に、この特例が継承される。①特例 農地を地方公共団体、住宅・都市整備公団 (特定法人)に貸付け (1,000ピ以上 の農地を20年以上貸付けること)、 ②農業相続人が賃貸用共同住宅(3階以上、

居住数 15以 上、床面積1,000m2以上、平成6年12月 31日 までに着工)の新築 を行い、特定法人に貸 し付ける場合、③農業相続人が賃貸用共同住宅の敷地の 用に供する場合(居住数 15以 上、床面積 1,000耐以上、公営住宅法に規定する 額以下の家賃、平成6年12月 31日 までに着工)、④特定の農協等の融資を受け て新築する一定額以下の家賃を徴する共同住宅の敷地に供する場合等には、納 税猶予を継続 し、期間経過後免除されることとなった。 また、公団等の公的開 発主体に譲渡 した場合には、20%の譲渡制限は適用されないつ。

計画的な宅地化等に早急に着手 した農地には納税猶予・ 免除を継続するとい う制度は、良好な市街地形成 を誘導する点で、有効性を発揮するものと考えら れる。税制面・金融面等で農家自身による宅地化施策 を援助することは、安価 な賃貸住宅の供給 という視点からみると有意義な方策である。 しかし、大量の 宅地供給による勤労者の持家取得の促進 という政策 目標からすると、限界のあ る施策であることも否定できない。良質な分譲住宅の供給を促すためには、定 期借地権制度の運用 も含めた新たな施策が推進されなければならない。

その他、所得税については、生産緑地地区の農地が地方公共団体等に買い取 られる場合には、譲渡所得に関して 1,500万 円の特別控除がなされる。地価税 は、農地については原則 として非課税 とされている。地価税については、三大 都市圏の特定市において、生産緑地地区内の農地等は非課税 とされている。た

222(159)

(11)

だし、特定市街化区域内農地のうち生産緑地地区以外の「宅地化すべき農地」

については原則 として課税されることとなっている。 しかし経過措置 として、

平成4年から8年までの5年間は課税 されないと規定されている。今後の課税 のあり方について注目されるところである。

以上のように、今回の土地税制の改正については、農地の資産 としての保有 に対 して課税の強化を図った面 と、計画的な宅地化に向けて税を緩和 した面 と の両面から捉えられなければならない。

Ⅳ。生産緑地指定状況 と今後の課題

(1)市街化区域内農地の現状

市街化区域は、都市計画においておおむね 10年 以内に優先的かつ計画的に市 街化を図るべき区域 として定められている。実際には、都市計画上・ 税制上の 様々な特例のために、計画的な市街化形成が滞っている。そのために、いまだ にかなりの農地が残存 している。市街化区域農地は、平成4年1月 1日現在で みると、三大都市圏で約5万 6千ha、地方圏で約9万 2千ha、全国では約 14万

9千 haが存在 している。平成3年における市街化区域面積に占める農地面積 の割合 (農地率)は、三大都市圏で9.5%、 地方圏で12.5%、 全国では11.1%

を占めている。全国の「農地率」は、昭和60年13.9%から平成3年11.1%

へ と、年々着実に減少しつつある。

市街化区域内の農地は年々減少 してきている。平成3年中に、三大都市圏で 2,100 ha(減少率3.7%)、 地方圏で約2,500 ha(同 2.7%)、 全国では約4,700

ha(同3.0%)の減少 となっている。昭和60年から平成4年までの減少率の平 均でみると、全国3.2%、 三大都市圏3.4%、 地方圏3.1%となっている。東京 都全体でみると営農意思の高い農家 しか残っていないため、減少率3.0%に

どまっている。しかし、東京都区部だけを取 り出してみると、4.1%の減少率 と なっている。

バブルの崩壊に伴 う住宅需要の減退を反映 して、近年では減少率がやや低下 しているが、年々コンスタン トに減少を続けていることだけは、確実である。

市街化区域内農地の転用面積 は、昭和48年18.4%をピークとしてその翌 年以降減少傾向にあった。昭和60年 (6.7%)までは減少傾向にあった。 しか し、バブル経済の形成期にあたる昭和62年 (7.7%)か ら増加傾向に転 じてい

(158)勿

(12)

る。平成3年度 には、8.0%に上昇 している。。

(2)生産緑地指定の状況

建設省都市局長通達「生産緑地法の運用について」 には、生産緑地地区指定 にあたっての建設省の基本方針 について示 されている。生産緑地地区の指定作 業 については、平成3年9月 10日 付 け建設省都市局通達「生産緑地法の一部改 正 について」 をもって、遅 くとも平成4年末 までに完了 させ る方針であった こ とが、記 されている。土地区画整理事業の実施 に伴 う市街化区域への編入によ り新たに市街化区域内農地 となった場合のようなやむをえない理由のある場合 にのみ、指定を平成5年以降に行っても差 し支えないと定められている。

生産緑地地区の買い取 りについても指示されている。買い取 られた土地につ いては、生産緑地法の趣旨にかんがみ、公園・緑地その他の公共空地 として用 いることを優先すべきであるが、公園・緑地その他の公共事業の実施により営 農を継続することが困難 となった土地の代替地 として用いることも差 し支えな いとしている。

1表 三大都市圏特定市における市街化区域農地の区分状況

 

平 成 4年

f需鵜 尾 区域 内 農 地

面 積a(ha)

¨¨¨¨∽

宅 地 化 す る農 地 面 積(書』峯やC(ha)(0/0)c/a) 計 画 的 宅 地(書兵鋤皇彙』峯≧d/c) 市 街 化 調 整区 域 編 入 面(ha)

59( 9) 623(91) 128[21]

7,641 1,896(25) 5,745(75) 739[13]

1,091(19) 4.513(81) 2751 6.995 3,983(57) 3,012(43) 329[11

1,382(23) 4,635(77) 323[ 7]

首 都 圏 計 26.951 8,411(31) 18,527(69) 1,794[10]

1愛 知 県 8.598 1,591(19) 7,000(81) 638[ 9]

│三 重 県 270(25) 809(74) 47[6]

中 部 圏 計 1,861(19) 7,809(81) 685[ 9]

1,937 1,063(55) 874(45) 69[ 8]

2,479(41) 3,523(58) 659[19]

616(37) 1,069(63) 312[29]

640(28) 1.555(69) 67[ 4]

近 畿 圏 計 11,924 4,798(40) 7,021(59) 1,107[161 48,563 15,070(31) 33,357(69) 3,586[11 資料:自治省「固定資産の価格等の概要調書」及び建設省調べ。

国土庁『土地白書 (平5年)』 による。

 (157)

(13)

生産緑地地区は、その指定の趣 旨にかんがみ、緑のマスタープランの緑地の配 置計画 において、環境保全系統、防災系統等への位置づ けが可能であることが求 め られるとしている。特 に、防災系統 に位置づけるに当たっては、将来、公園・

緑地等の都市施設の敷地 にす るものについては、明確 にするように求めているの。

三大都市圏 の生産緑地地 区 に指定 された農地 の状 況 をみ る と、首都 圏で 8,400 ha(市街化区域内農地 に占める割合31%)、 中部圏で1,800 ha(同 19%)、

近畿圏で 4,798 ha(同 40%)と、地域的 にかな りのば らつ きが生 じている。近 畿圏・ 首都圏・ 中部圏の順 に指定率が高い ことになる。

V。 三 大都市 圏別 の指定状 況

(1)首都圏

生産緑地地 区の指定状況 を都道府県別 にみると、最 も高いのは東京都の57%

(指定面積4,000 ha)である。東京都では地価水準が突出 して高いので、指定 か らはずれた場合、固定資産税や相続税の負担が著 しく高額 になることが、指 定農地面積の拡大 をもた らす こととなった。東京都 の多摩地区を見 ると、地価 の高い所 ほど生産緑地指定率が高 くなっている。地価水準の相対的に低 い茨城 県での指定率が9%(指定面積59 ha)に過 ぎない ことか らも、 この ことは明白 である。茨城県では、固定資産税が低いので、生産緑地指定のメ リッ トが低 い

ことが、指定件数 を引 き下 げている。

東京都で指定率が高い もう一つの理 由は、かな り以前か ら住宅需要が大 き く、

宅地化傾向が強かつたため、資産保全型の農家 は、すでにかな り淘汰 されてい ることによる。現在 まで残 っている農家 は、営農意欲が強固な農家が多い等の 理 由によるものである。

地価が高い横浜市で指定率が低い理 由は、北部 を中心 とした後背地 に広がっ ている保全すべ き農地の多 くが、既 に市街化調整区域 に編入 されているか らで ある。高度成長期 に、東京のベ ッドタウンとしての乱開発 による住宅開発 を通 じて人 口急増が進んだため、市の北部 を中心 として市街化調整 区域 に編入 され た ものである。他方、市の中心部 には、保全 を目指す農地が少ない。市街化区 域 内での宅地化 は進んでお り、保全すべ き農地 は既 にかな り減少 しているため である。保全区域 と開発 区域の区分 けが進 んでいるいる点 は、都市計画法の本 来のあ り方 に沿った もの と言 えよう。

(156)あ

(14)

1図 生産緑地地区指定率分布図 (首都圏)

Eコ 0〜lo%

m 10〜20%

国翌 20〜30%

 30〜40%

 40〜50%

 50〜60%

 60%〜

(注)建設省資料による。

東京都の市街化区域内農地の総面積 は 8,347 ha(日 比谷公園の521倍相 当)

で、東京都内の市街化区域面積 105,595 haの 7.9%を占めている。市街化区域 内農地の経年変化 をみると、昭和50年か ら昭和63年の間の13年間で約1割 減少 している。地域別の農地面積 は、区部1,452 ha、 多摩地域6,895 haと なう てお り、多摩地域の方が圧倒的に多 くなっている。

区市町村別 に見 ると、区部では練馬区が最 も多 く、次いで世田谷区 となうて いる。両区で区部の農地の半数以上 を占めている。多摩地域では、八王子市が 最 も多 く、以下、町田市、立川市の順 になっている。 また、区市町の市街化 区 域 で農業が占める比率 を見 ると、清瀬、立川、東久留米、五 日市、国分寺の5 市町では20%以上 となっている。

226(155)

(15)

農地の まとまり状況 を区画でみると、0。l ha以 上の集合農地 (住宅、鉄道、

河川等で区切 られた農地)は 12,753区 画である。 この うちの約90%にあた る 11,143区画が、l ha未満の集合農地である。また、これ らの集合農地 は、市街 化 区域農地の約半分 を占めている。一方、2 ha以上の集合農地の占める割合 は 36.4%で、地域別 に見 ると北多摩が48.4%と最 も多 く、以下、南多摩31.8%、

西多摩29.0%、 区部15。7%と なっている。なお、関東農政局が昭和59年に行 っ た調査「市街化区域内残存農地の実態」によって も、東京都 の2 ha以上の集合 農地 の割合 は37.9%で、隣接する神奈川・埼玉・千葉の各県 と比べ ると、10ポ イン ト程度高 くなっている。東京都ではよ くまとまった優良農地が残 されてい ることが、示 されている。

農地の利用状況 は、普通畑が77.8%で最 も多 く、以下果樹13.7%、水 田4.9%

となっている。東京都 の市街化区域内農地では、畑作中心の農業が行われてい ことが分か る8)。

昭和43年6月に公布 された都市計画法の区域 区分 に従 って、東京都では、昭 45年12月 26日に、区域 区分が決定 された。この決定 によって、現在、東京 都 の耕地面積 の98.0%は都市計画区域内にある。しか も市街化 区域 内には市街 化調整区域内の4倍の耕地がある。 この ことは、東京都の最 も大 きな特徴であ る。平成4年11月 に生産緑地地区の指定が行われ、市街化区域内農地7,519 ha 51.4%に当たる 3,983 haが 生産緑地 に指定 された。この結果 は、三大都市圏 の中でみると、全指定面積の4分1強を占め、他府県に比べて、指定面積・

率 ともに最 も多 くなっているの。

平成4年7月 に東京都が行 った農業者の意向調査 によると、東京都では、生 産緑地の指定 を受 けずに宅地並課税 を受 けることになった農地 について も、10 年以上農業 を継続す る意志のある農地面積の比率が21%、 5年以上では56%と なってお り、農業 に対す る意欲が非常 に高い。農業生産の中心 となる中核農家 の比率 は総農家数の24%、 また、農業専従者のいる農家の比率 は同 じく48%で あ り、それぞれ全国や二大都市圏の水準 を大 きく上回っているL

現行 の宅地並課税 の水準では、固定資産税 の強化が必ず しも直 ちに宅地化 を もた らすわけではない。農地の一部 を賃貸アパー トや駐車場 にして固定資産税 を支払 うことによって残 りの農地の維持存続 を図 る傾向 も多 く見 うけられる。

現行水準の宅地並課税では、直ちに大量 の住宅 を供給することにはつなが らな い もの と思われ る。

(154) 227

(16)

東京都の都市公園の都民一人当た りの面積は 4.4m2(『'91東京都緑の倍増計 画』による)に すぎないが、 これに農地を加 えると13.9m2と 3倍になるとの指 摘 もある。農地は東京都の緑の確保に大 きく貢献 しているとの考え方 もある。

これらの面からも、農地は都民のかけがえのない財産であると分析されている のである11ヽ

東京都のように緑地の少ないところでは、残された希少な空地である農地の 宅地化を押 し進めるよりは、都市公園 としての永久保存をめざす方が望 ましい 面 もある。そのためには、東京都の土地開発資金を充実させることや用地の先 行取得のための起債枠を拡大する等の財政的な措置の拡充により農地の公有地 化を図ることが望 まれるところである。

(2)中部圏

中部圏では、全体 として、三大都市圏の中では、生産緑地指定割合が最 も低 い。中部圏で指定割合が低いのは、すでに土地区画整理事業等による都市基盤 整備が完了している地区が多 く、農地 としての存続が困難であること等による ものと考えられる。すでに公共施設が計画的に配備されている地区が多いこと によるものである。とりわけ愛知県では、これまでに区画整理が盛んに行われ、

現在でも都市化の進展により市街化区域の宅地化傾向が極めて強 くはたらいて いるもの と考えられる。

愛知県内で生産緑地法の対象 となる特定市は、愛知県内の30市町村のうち、

豊橋市・豊川市・蒲郡市・新城市を除 く26市である。県内市町村のほとんどが 特定市に指定されているので、一口に市街化区域 といっても様々な様相を呈 し ている。

愛知県内の過去5年 (昭62年〜平成3年)の農地転用の状況 をみると、

市街化区域 内の転用が常 に全体面積の うち60%以上 を占めている。市街化区域 内の農地の農地以外への転用が多 くなっている。特 に、西三河地域 において、

市街化区域内の転用面積が高 く、全体の72%を占めている。尾張地域 において 68%を占めている。市街化区域内の転用の場合 には住宅地への転用が最 も多 く、例年転用面積の約半数 を占めているla。

愛知県内の26特定市の中での生産緑地地区指定状況 をみておきたい。愛知県 内の特定市の市街化区域農地面積 は 9,147 haで ある。その うち生産緑地地区に 指定 された農地面積 は 1,591 haで あ り、全体の17%を占めるにす ぎない。指定      (153)

(17)

2図 生産緑地地区オ旨定率分布図 (中部圏)

0〜10%

10〜20%

20〜30%

30〜40%

(注)建設省資料による。

割合見 る と、全体 として指定率が低 く、30%を超 える市 は一市 もない。高い方 か ら、一宮市 (28%)、 尾西市 (27%)、 津島市 (26%)、 碧南市 (26%)の順 と なっている。後背地 に広大な農村部 をかかえる遠隔地の市町村での指定率が比 較的高いのは、当然の結果である。低 い方では、常滑市(2%)、 半 田市(3%)、

尾張旭市 (4%)、 安城市 (9%)、 春 日井市 (9%)、 瀬戸市 (12%)の順 と なっている。開発が間近 に迫 ってきている地域では、農地の資産 としての保有 動機が強 くな り、指定率が低 くなっている10。

指定面積の最 も多いのは名古屋市 の 410 haで あ り、愛知県内の全指定面積の 4分1を占めている。名古屋市 は、指定率でみて も20%となってお り、県内 で はやや高いほうに属す る。名古屋市では、市街化区域 は30,134 ha、 市街化調 整区域 は2,503 haと なってお り、市内のほ とん どの地域 は市街化区域 に入 って

(152)勿

(18)

法経研究

いる。名古屋市の農地の7割強 は市街化区域 に存在 しているので、市街地の拡 大 に伴 って農地 は年々減少する傾向を示 している14、

名古屋市では、農地 は、都市の自然環境 を維持 し、「緑のオープンスペース」

を提供す るもの として、その保全 に力 を入れている。都市農業の振興 を図るた めに昭和40年に農業セ ンターが開設 された。また平成元年5月には、市民が農 業の技術 を学ぶ ことので きる農業公園が開設 されている1り

名古屋市内での生産緑地地 区指定の受付状況 をみると、市街化区域農地面積

1、 897 ha(平成5年1月 1日 現在)の うち、22.9%にあた る 434 haが 生産緑地 地区指定の申し出を行 っている。指定面積の大 きい順 にあげると、緑区91 ha、

中川区89 ha、 守 山区89 ha、 天 白区66%の順 となっている。市の郊外 に保全 を

求める農地が多 く存在す ることが分か る10。

(3)近畿圏

近畿県では、全体 として、三大都市圏の中での生産緑地指定率が最 も高い。

その中で も京都府 は、生産緑地の指定率が飛び抜 けて高い。おおむね60%以 の指定率 となっている。 これは、京都府北部 を中心 として、 まとまった農地が かな り残 っているためである。 それに対 して、大阪府の中心部の市町村の指定 率 は、30〜40%に留 まっている。大阪府の市街化 区域 内農地 6,000 haの うち、

2,400 ha(41%)が生産緑地 に指定 されている。残 りの 3,600 haが 宅地化農地 である。

大阪府の郊外 を中心 として、 ミニ開発等 を通 じての農地の無秩序な宅地化 に よるスプロール現象が著 し く進んでいる。高度経済成長期 の人 口急増 に際 して、

道路等の都市基盤整備がなされない ままに大量 の住宅 が建設 された結果で あ る。寝屋川市等 を中心 として、大量の木造賃貸住宅が建設 され、再開発が容易 でない状態 にある。大阪府では、宅地化農地が再 び無秩序 に開発 されないよう に、計画的な市街地形成のためのプランを作成す る必要 に迫 られている。

この点では、平成4年度か ら制度化 された「緑住 タウン支援事業」 に期待 さ れ るところが大 きい。 この事業 は、農地所有者 による共同開発 を支援 し、計画 的な街づ くりと良質な賃貸住宅 の建設 を推進す るための ものである。市の同意 を得て知事が行 う事業である。緑住 タウン地区の指定 には、宅地化農地等 を含 l ha以上の一団の区域で、1000m2以 上の住宅開発予定地があ り、30戸以上 の住宅供給の見込みがあることが、必要 とされている。指定地区は、半分以上   (151)

(19)

3図 生産緑地地区指定率分布図 (近畿圏)

0〜10%

10〜20%

20〜30%

30〜40%

40〜50%

50〜60%

60%〜

(注)建設省資料による。

が農地で、その3分1以上が宅地化農地であることも、必要である。 この事 業の一環 として、国の まちなみデザイ ン推進事業 と連携 した「緑住 タウンまち なみデザイン推進事業」がある。農地所有者等 による協議会が行 う計画策定等 の活動費 に対 して、国が市町村 を通 じて地元 に補助 を行 うものである。

また、道路等の整備 に対す る支援 として、「緑住イ ンフラ整備促進事業」が実 施 されている。 この事業 は、地元協議会がつ くった まちづ くり計画 に沿 って道 路整備 を行 う場合 に、築造費及び幅員4mを超 える2m部分 までの用地 につい て、大阪府が市町村 に対 して補助 をす るという内容の大阪府の独 自の制度であ る。市町村道路事業・ 開発許可等 による道路整備 との組 み合わせ によ り、良好 な道路整備への誘導 を目指 した ものである。 また、大都市法の重点供給地域 に 指定 された地 区については、「緑住 タウン大都市農地活用住宅供給整備促進事

(150)貌

(20)

業」によ り、国の補助 もあわせた よ り強力な助成が行われ ることとなっている。

この事業の一環 として、賃貸住宅の建設 に対する援助 も行われている。一般 の住宅建設 と比べて、 より低 い金利 による大阪府の特定賃貸住宅建設資金融資 のあっせん制度が設 けられている。

この制度の特徴 は、地元 におけるまちづ くりの認識の高 まりを前提 として、

地元が計画づ くりを行 い、市町村 と協議す ることを基本 としている。営農希望 の農家の意向にも配慮 し、生産緑地 を集約するな ど、農地活用の視点 も導入 さ れている。地元農協 の協力 によって進め られる計画である。 まちづ くりの事業 段階では、主要 な区画道路 の途中が多少変形 して もか まわない等、地区の状況 に応 じた弾力的な運用が行われ る。計画の策定か ら道路整備、賃貸住宅の建設・

管理・ 運営 までを一環 して総合的に支援す る計画 となっている。

緑住 タウン地区の第1次指定 は、平成4年10月 30日 に実施 されている。平 3年度 に実施 された「緑住 タウン適地調査」で抽出 した候補地区を各市 に示 し、生産緑地の申請状況等 を参考 にして行われた。11市 18地区 83.3 haが 対象 となった。平成5年度 において も随時地 区の指定が行われてお り、現在12市21 地区95.8 haと なっている。第1次指定18地区の うち、地元組織が設立 された 3市 6地区で既 に「緑住 タウンまちなみデザイン推進事業」が実施 されている。

宅地化農地 と生産緑地の整理や、道路整備、住宅供給 の検討等が行われている。

その うち4地区については、農住組合の設立が目指 されている1つ

行政が開発プランを作成 して地元 を説得するとい う従来型の開発か ら脱 した ところに、 この事業の意義が認 め られ る。「規制か ら誘導」への大 きな転換が図 られた点 は、評価 しうるところである。都市の中に散在する小規模 な残存農地 の開発規模 に対応 した現実的な計画であると思われ る。 また、国の補助金や大 阪府の低利融資 を活用 している点 において、実効性の高い誘導措置であると思 われ る。理想 を追い求めるよ りもで きる所か らで きる範囲で実行す るという姿 勢 は、今回の生産緑地法の運用の趣 旨に沿 った ものである。

大阪府で この ような事業 についての合意形成が得 られたのは、あまりにも無 秩序 に拡散 した市街地の下で劣悪な木賃住宅群が林立す るといった過去の市街 地形成 についての苦い反省 に基づ くものである。残存農地 については、計画的 市街地形成 を行 うための絶好 の機会 を提供 しているもの と考 えられ る。残存農 地 は、再開発 による良好 な市街地形成が容易でない木賃住宅群 に比べ ると、良 好 な市街地形成 のための予備地であることは、明 白である。 その利用 について      (149)

参照

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