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地方社会運動・労働運動史研究序論 (下)

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地方社会運動・労働運動史研究序論 (下)

著者 橋本 哲哉

雑誌名 金沢大学経済学部論集 = Economic Review of Kanazawa University

6

2

ページ 53‑71

発行年 1986‑03‑26

URL http://hdl.handle.net/2297/18351

(2)

地方社会運動・労働運動史研究序論(下)

橋本哲哉

目次

I地方社会運励・労働運動史研究の課題

Ⅱ地方社会運動・労働運動史研究の概要 1.北海道・東北地方

2.関東地方 3.北陸・甲信越地方

4.東海地方(以上,金沢大学『経済学部論集」第5巻第1号)

5.近畿地方 6.中国地方 7.四国地方

8.九州・沖繩地方(以上,同前,第5巻第2号)

9,補遺(以下,本号)

111諸研究の一応のまとめ

補遺

9.

目次にあるように,これまで2号にわたって地方社会運動・労働運動史研 究の概要を見てきたが,まとめを述べる前に,若干の補足をしておきたい。

対象が広範囲にわたるためゆっくりしたものではあるが,研究は前進しつつ ある。したがって,補遺といってもあくまでも現在筆者が知りえたものに限 定される')。2号にわたる論文を発表したあとに,教示をえた研究などを含め て,それらを概要の地方順に述べることにする。

『長野県史』の該当する部分の資料編が刊行された。第8巻の社会の編は 3分冊になっており,その3冊目にあたるものである。緒言には「明治三十

-53-

(3)

金沢大学経済学部論集第6巻第2号1986.3

七年(1904)から昭和二十年(1945)までの本県における社会運動資料関係 及び明治十四年(1881)から昭和十九年(1944)までの本県の社会政策関係 資料を収録しました」2)とある。第8巻第1分冊は戸口・社会集団・社会生活,

第2分冊は衛生・防災となっているので,1904年以前の社会運動の資料の扱 いが不明である。この第3分冊は社会運動と社会政策の2部に大別されてい るが>1,200頁余の内,約1,000頁分,資料の点数からみても698点の8割強は 社会運動によって占められている。社会運動の部分のみを以下みることにす るが,分量的にも戦前編としては仲々豪華な構成である。これは既述したよ うに,資料編・通史編の合計70冊にものぼる県史の膨大な刊行計画の賜物で あるといえよう。

社会運動は農民運動,労働運動,青年・学生運動,婦人運動,部落解放運 動,プロレタリア文化運動,社会主義運動,国家主義運動の8項目にわかれ ている。これ自体は長野県の運動から考えて妥当とおもわれるが,各運動の なかまでみていくと,少し同意しかねる部分もある。例言によると社会主義 運動では「米騒動,電灯料値下げ運動,消費組合運動,無産者医療運動等も 便宜ここで扱った」とあり,事実,内容もそのようになっているが,社会主 義運動をどうひろく解釈しても,米騒動までは入らない。これらは別項目で

まとめるべきであったし,そうすることは何等不自然ではない。

掲載された資料の分量の割合から考えると,農民運動25%,社会主義運動 22%,労働運動20%で,全体の3分の2をしめ,部落解放運動12%と続いて いる。その地域性から農民運動の比重は当然であるが,部落解放運動に配慮 がなされている感じを受ける。

『長野県社会運動史』(31)と比較して,労働運動の資料収集が大幅に進んだ ことが明瞭である。(通し番号は本論前掲の基本文献目録の中のものである。

以下同)「信濃毎日新聞」・『社会運動通信』などから争議関係の記事が数 多く引用されている。この点だけでもG1)の水準をこえている。これも地域的 特性であるが,争議のなかでは,山一林組をはじめとした製糸関係の資料が 多い。またG1)で欠けていた1910年代以降の資料が収集されていることも意義 がある。後述するが,電灯料値下げ運動については独立させるなどの処置で,

もっと重視してよかった。

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地方社会運動d労働運動史研究序論(下)(橋本)

資料に関しては県史にふさわしく収集されていると思う。本論に関連した ものとしては,次の資料をはじめて知った。『長野県社会運動史』(長野県 特高課昭和14年2月現在),「続長野県社会運動史」(同前),r県下二 於ケル社会運動概要」(長野県特高課昭和5年11月編纂),「長野地方裁 判所管内に於ける社会運動の状況』(長野地方裁判所検事局報告昭和4年 11月9日)で,股後は「米軍没収文書」中の資料でもある。この方面の今後

の調査を新たに必要とする。

『愛知県民衆運動の歴史」㈹の改定版をその著者より送っていただいた。

新著のタイトルは『上を恐れざる者たち」(伊藤英一箸プックショップ「マ イタウン」1983年)となっており,サブタイトルに愛知県民衆運動の歴史と 付されている鋤。旧著は8章の編成で,おおよその内容は紹介したが,「ええ じゃないか」と明治社会主義と名古屋地方の同志たちの2章が付け加えられ て10章の構成となっている。旧著と同様に啓蒙書の体裁には変りがない。愛 知県の初期社会主義についてはすでにいくつか先行の研究があるが,ここで は新たな知見が示されている。筆者は初期社会主義が従来考えられている以 上に各地方色広がりを持った全国的な運動であったことを他の論文で主張 したことがある`)。名古屋は初期社会主義の主要地方のひとつで,より一層 の研究を必要とする。旧著は1980年の刊行であったから,3年間で書き改め られたわけである。高校教員の仕事の傍らの成果であり,その研究努力に敬

意を表したい。

奈良県に関してはすでに61)r奈良県社会運動史年表」を紹介したが,竹末 勤「近代奈良の民衆運動史年表」(「奈良県近代史研究会会鍋第16号~)を 付け加えておく。竹末は61)の蓄種をふまえ,その空白部分を補足する意味も あってこの年表を作成したと述べている。1891年以降5回にわたって連載さ れ,現在は1907年分まで発表されている(同会報第44号1985年3月)。

「日出新聞」,「大阪朝日新聞」等の関連記事をたんねんに拾い出しており,

完成すれば基本的年表としての役割を果たす。なお竹末の指摘によれば『奈 良県同和事業史」(奈良県同和事業史編纂委員会編1970年)と『奈良県水 平運動史』(奈良県水平運動史研究会編部落問題研究所1972年)は社会 運動のなかに,水平運動を位冠付けようとしているとのことであるので,同

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金沢大学経済学部論菓第6巻第2号1986.3

類書と見なしたいが,筆者は未見である.

『讃岐の民衆史」(山下性太郎箸青磁社1985年)を入手した。前述の ように香川県には該当書がなく,和田論文を紹介するにとどめた。その後本 書をみつけたが,運動史の表示はないけれども,内容的には同類とみなして 扱ってよい。お仕事着せの近代化,讃岐の大正デモクラシー,不況下の闘い と文学ゥ15年戦争と讃岐の5章編成となっているが,自由教育運動,小作争 議,高松の電燈紺直下げ運動,高松高商のストなどの叙述が含まれている。

他に適当なものがないので,概説書風であるが寸取り上げておく。

前出の基本文献目録作成の際に見ることができなかった『熊本における戦 前の社会運動』(71と『熊本県労働運動略史』(70の2資料を,ようやく入手で

きた。

『熊本における戦前の社会運動』は熊本社会運動史研究会が資料散逸の状 況を眼前にして「さしあたって,判明した資料,きき書,あるいは部分的な 調査などを体裁にこだわることなく,逐次編集」5)するとして出版されはじめ たものである。第1.2集は刊行ざれ第3集以下は予定となっているが,こ

の体裁では出されていないようである。第1集は座談会・熊本における戦前

の社会運動のほか,熊本で始めてのメーデー,鐘紡ストなどの思い出等の内 容が続き,巻末に解放運動犠牲者名簿と略歴がある。第2集には松橋町社会 運動史覚書,熊本消費組合の思い出などの回顧談がある。社会運動の当事者 の記録として貴重であろう。

『熊本県労働運動略史』は『熊本における戦前の社会運動』の刊行と熊本 社会運動史研究会活動の中心的メンバーである上田穣一が,『熊本県史」に 執筆した論文を転載したものである。第3巻所収の「黎明期の労働問題と労 働者運動」と第4巻所収の「戦前の労働運動」で,前者は『熊本における戦 前の社会運動』の第3集として予告されている論文と同じ題名であるので,

計画が変更されたのであろう.両論文で,一応熊本県における戦前の労働運 動の概要は叙述されているが,調査・研究のより一層のつみ重ねが必要であ る。熊本社会運動史研究会の最近の活動は不明であるが,資料収集の継続が 期待される。

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地方社会運動・労働運動史研究序鎗(下)(橋本)

Ⅲ諸研究の-応のまとめ

地方社会運動・労働運動史の諸研究の概要を紹介してきたが,鼠:後にまと めをかねて,今さしあたって整理しておくべき問題を述べておこう。それは 研究の現状の総括的問題と今後の検討課題のふたつにわかれるが,まず前者

から取りあげる。

地方社会運動・労働運動史に関する諸研究を都道府県別にみてきたわけで あるが,前述してきたようにその研究水準にかなりの差がある。それを研究 動向という形で次頁に整理してみた。とりあえず発行者別に3つにわけ,さ

らにそれぞれを先進(A),中間(B),後進(C)という3段階で評価してみた。

その上で各都道府県の研究状況を総合評価したが,ここでは知りうるかぎり でのその地域の研究活動の有無も勘案した。したがって,あくまでも筆者の 主観的な評価であることをおことわりしなければならない。

いくつかの特徴あるいは傾向を読みとることができるが,まず行政レベル での戦前の労働運動史類の刊行の努力は,きわめて弱体である。それは全部 で17県分しかなく,しかもそのうち6県は評価に値いしない。残る11書はい ずれも県労政課等が発行者であるが,その関係者が執筆しているものと研究 者に任せている場合とに2分される。前者に属するものとして埼玉,山梨,

広島愛媛等があるが,そのうち埼玉,山梨の2書が内容的に評価できる。

埼玉の場合は資料収集時から研究者に援助をあおいでおり,山梨は戦後まも なく作業をおこなったという利点を有しているからであろう。愛媛は涜料収 集に終始しており,大量の資料を公表している。広島のものはすでに指摘し たように独自の内容をほとんど持っていない。後者は青森,神奈川,兵庫,

島根などであるが,島根の水準は全国的に見ても高く,他の3書がそれに続 いていると考える。一定の価値のある研究を公表するためには,島根の例の ように専門研究者を編纂に参加させるなどの配慮が必要である。

したがって個人および団体の地方社会運動・労働運動史研究が全体を支え ているといっても過言ではない。個人の刊行物を有するのは24県におよび,

主に東北,中・四国地方に片寄っている。それは運動の関係者が書きあらわ したものと,研究者が執筆したものと2種類がある。運動関係者の著作は当

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金沢大学経済学部論巣第6巻第2号1986.3

都道府県別社会運動・労働運動史の研究動向

1985年12月現在

H1

賀都阪庫良山取根山島ロ島川媛知岡賀崎本分崎島繩滋京大兵奈和鳥島岡広山徳香愛高福佐長熊大宮鹿沖 賀都阪庫良山取根山島ロ島川媛知岡賀崎本分崎島繩滋京大兵奈和鳥島岡広山徳香愛高福佐長熊大宮鹿沖 BABBBBCAAAccCABBccBCCCB

北宵岩宮秋山福茨栃群埼千束神新富石福山長岐博愛三 道森手城田形島城木馬玉葉京川潟山川井梨野阜岡知璽 AAABABABBAAAABABABBA AABBABABAAABCABABBBABABB ClA ABCB.B

AA AA

AAAA BC

BBBA

AB

BAA

AIB

ABAB CA

I欄は都道府県労政課等の行政レベルの刊行物,Ⅱ欄は個人の刊行物,IⅡ欄は組 合,刊行会等の団体の刊行物の評価,Ⅳ欄はそれらの総合評価をおこなったもので ある。それぞれをA~Cの3段階で評価したが,あくまでも筆者の主観的な判断で ある。総合評価からその地域の研究状況を判断できればと考えている。なお評価対 象がない場合は空欄とした。

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地方社会運動・労働運動史研究序論(下)(橋本)

然のことながら自己の政治的立場,所属した運動を偏重する傾向がある。こ れはある程度やむをえないことで,利用する際に留意すべき点であろう。ま たその内容が研究書というより読み物的なもの,物語風の著作もあるが,何 等かの利用価値のある場合は目録にすべて採用した。これらのなかから優れ たものをもつ県名だけを列挙すると,北海道,青森,秋田,富山,長野,広

島の諸県である。

諸団体の成果は21県にも達する。このうち研究者も参加して刊行会,編纂 委員会などを結成し,運動史などを出版したもの,およびその後も活動を継 続している県を列挙すると秋田,栃木,群馬,埼玉,石川,岐阜,三重,滋 賀,京都,兵庫,和歌山岡山広島,福岡,熊本の15にものぼる。ただし 活動を現在も継続しているのはそのうちの半分にみたない。これらのなかで 水準の高い出版に成功しているのは栃木,群馬,京都,岡山で,京都の「京

都地方労働運動史』《4)はその代表例である。

1970年代迄は諸団体の活動が活発であったが,その後沈滞するなかで,上 述のような個人の執筆の機会が多くなっているように思える。刊行会などの 研究団体の不活発さはいろいろ事`情はあるであろうが,研究者の参加の消極 性,現実の運動の分裂の反映等が主要な原因であるようである。いましばら

く資料収集をふまえた地道な研究を続けなければならない。

団体のもうひとつとして各県の組合組織が編纂,刊行の中心となった例も 少なくない。福島千葉,静岡,岡山,広島がそれにあたる。広島,静岡と それに次ぐ千葉を立派な編纂をしているとして評価したところである。

以上のような状況を前提に総合評価をしてみた。研究の先進地域は16,後 進地域は10,中進地域は21県という結果となった。全体的にみて,関東以北

は進んでおり,四国・九州はおくれているといえる。

とくに顕著な点は,東京の研究が皆無に近いことで,大阪もそれと同類で ある。東京の場合は企業別,争議別等の運動史は叙述しやすく,事実先行の 研究もあるが,ひとつの地域として独立させて把握するのは仲々困難なので あろう。しかし全国の重要拠点であることに相違はなく,またまがりなりに も戦後の研究(例えば,東京地方労働組合評議会編『戦後東京労働運動史』

労働旬報社1980年)があるのであるから,戦前についても刊行の努力がな

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金沢大学経済学部鎗菓第6巻第2号1986.3 地方社会運動・労働運動史目次の対照(1)

卿神奈川県労働運動史 61)広島県労働運動史第1巻

00京都地方労働運動史

第1章日本労働運動の開 孫と県下の労働運動

(~大逆事件)

第2章第1次世界大戦と 県下労働運動

第1縄県労働運動史の黎 明期(~日露戦後期)

第1縄明治時代(労働運 動)

第2綱県労働運動の大正 形成期(~1923年)

第2網組合運動の生成と 発展(1913~25年)

第3章県下労農無産政党 組織の確立(1923~27 年)

第4章恐慌と県下の労働 運動

第3編評議会と労農党の

活動(1925~28年) 第3綱県労働運動の本格

的発展期(~1931年)

第4縄闘争の激化と戦線 の錯綜(1928~32年)

第4綱県労働運動の戦争 期(1932~45年)

第5章戦争と県下の労働 運動(1931~45年)

第5綱戦争と運動の衰退

(1932~45年)

されてよい。さらに埼玉,神奈川を例外として工業地帯の諸地域の研究もお くれている。先進地域も研究が着々と進展しているとはいえず,組織的な研 究の対応がますます必要となっている。

次にもう少し内容に立ち入って論ずることにしたい。これまで社会運動・

労働運動史と一括して取扱ってきたが,基本文献目録を一読してわかるよう に,書名は労働運動史と称する事例が多く,社会運動史,民衆運動史の順に 少なくなっている。課題にもかかわるが,これらの内容的な問題,あるいは 関連についてここで若干論及する。

内容的に見て3つのタイプを指摘することができる。その第1は労働運動 史として,その地域の労働運動だけを取出して叙述しているタイプである。

これが段も多いが,その代表例はやはり「京都地方労働運動史』(M)である。

そのような方法を選択したことの意味についてはすでに述べたが,編者の渡

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(10)

地方社会運動・労働運動史研究序論(下)(橋本)

地方社会運動・労働運動史目次の対照(2)

㈱島根県労働運動史第1巻 (10栃木県労働運動史 石川県社会運動史私案

第1章近代社会の形成

(~自由民権運動)

第2章近代社会の成立と 労働問題

第1章明治期労働運動の 黎明

第1章近代の石川県と黎 明期の社会運動

第2章大正期労働運動の 第3章近代社会の発展と 新発足

民衆運動(大正デモク ラシー~1930年代)

第2章大正デモクラシー 期の社会運動

第3章昭和期の労働運動

第3章戦前高揚期の社会 運動

第4章ファシズム下の石 川県と社会運動 第4章戦時体制下の労働

対策(1920年代末~45 年)

部徹自身がこれを唯一の方法とは考えていないことも付言しておく。第2は 労働運動史と称しながら,その地域の他の社会運動も含めて叙述しているタ イプである。1例として61)『広島県労働運動史」第1巻があるが,第1のタ イプほど数多くはない。初期社会主義,米騒動が入り,別に共産主義運動,

婦人運動の章も置かれている。したがって,これを労働運動史と呼ぶの力適当 かどうかの問題が生ずる。第3のタイプは社会運動史のタイトルの下に,そ の地域の巾広い民衆の運動の動きを把えているものである。この場合は社会 運動における労働運動の位置,民衆運動と社会運動との間の関係,といった 点の検討にせまられるが,それは後述する。全体の内容に限定してみると,

社会運動の名のもとに様々な運動が寄せ集められ,その地域の独自性はある 程度理解できるとしても,とらえどころがなくなってしまう傾向にある。

その意味では歴史書として,科学的な批判にたえうる社会運動史の書は厳密

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金沢大学経済学部篭集第6巻第2号1986.3

にいえばきわめて少ないといえよう。

地方社会運動・労働運動史研究を以上の3つのタイプに区分けして全国を 見わたしたとすると,相当数の県は労働運動だけで労働運動史を叙述しきる ことは困難だと思われる。労働運動が分量的に少ないわけで,第1のタイプ は大工業地帯,工場工業の発達した地域なら可能であろう。しかし第2のタ イプのように労働運動以外の運動史も含めるのであるならば,始めから社会 運動史と名付けたほうが,混乱がないのではなかろうか。この問題を目次に

そって別の角度から検討してみよう。

前の2頁にわたる表は代表的な地方労働運動史の編・章別を対照させたも のである(頭書の番号は前述と同様,基本文献目録のもの)。

京都,広島,神奈川の例は労働運動が量的に多い地域の成果で,(M)は労働 組合運動を主体に叙述されていることは明瞭である。61)の時期区分は妥当だ と紹介したが,(M)と類似していることに気付く。(29の大正形成期という意味 はよくわからない。いずれにせよこのような豊富な運動史は限られた地域で

しか作りにくいといえよう。

労働運動の後進県の中から島根と栃木をピックアップしてみた。石川の項 はもし書くとしたらという筆者の私案である。(10のように労働運動の展開を 明治,大正,昭和という年号で区分する理由はとりたててはない.これはさ けなければならない方法である。60は目次にもその特徴が表われているが,

その地域社会の展開や,そこにおける労働問題とかかわらせて労働運動を論 じている。これは労働運動を広い視野でとらえ,労働者のおかれた状態も含 めて考察しているわけで,島根と同類の地域では参考にすべきであろう。

そこで石川県の場合の私案では,第1章で1920年代までの地域社会の展開 についてふれ,第4章で1930年代以降を取扱うことにしてみた。㈱の変形で,

近代社会の成立・形成とややこまかく述べているのを修正したわけである。

そして石川県では(M),61)と同じように1930年代前後の運動の高揚がみられる ので,1章を独立させた。あくまでも1試案の範囲をでるものではないが,

参考に供したい。

さて地方の場合には社会運動史としてまとめるべきであると主張したが,

自由民権運動以降で対象となる運動はどのようなものとなろうか。全国の運

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地方社会運動・労働運動史研究序論(下)(橋本)

動史を通覧したうえで『日 本労働年鑑』(大原社会問 題研究所編)の項目なども 参照して,左のような項目 例を作成してみた。

1~7は階層別,8~11 は部門別の運動である。12

~18は個別に展開した運動 を歴史的に順に整理した。

19,20は関連した社会運動 である。もちろん他にもま だあるであろうが,1地方 の社会運動の存在を点検す る際のめやす程度の意味は 持っているだろう。ただし 国家主義的な諸運動ははぶ いた。これらを含めると前 述の宮崎のような混乱が生 ずると考えるからである。

このような社会運動がす べての地域に展開するわけ ではない。従来の諸研究を 総括的に検討してみて当面 戦前社会運動の項目例

労働運動(組合運動.争譲史,メーデー,

労働者教育運動等を含む)、

農民運動(農民組合運動,小作争議等)

漁民運動(水利、漁区,汚水問題等)

俸給生活者の運動

市民運動(電灯料・借家人家賃値下げ運動,

消費者運動,反公害・住民運動等)

婦人運動 青年・学生運勅

初期社会主義・社会主義運動 無産政党運動

文化・芸術家の運動 教育運動

自由民権運動

大正デモクラシー運動(普通選挙,反税運 動等も含む)

米騒動 水平運動

反戦・反軍,反帝・反ファシズム運動 悪法反対運動

宗教革新運動 在日朝鮮人の運動 植民地における抵抗運動

1.

■●●●(可巫』(ご一》△何斗。一一皖四》 BG●●●pp06789、nm週

14.

15.

16.

17.

18.

19.

20.

次の点に配慮するべきであると主張しておく。地方社会運動・労働運動史研 究はやはり,その地域的特質を浮き彫りにすることに主要な意義があると考 える。その場合次の研究課題ともかかわるが,全国的運動の展開をどのよう に取り上げるのか,その叙述の仕方,分量といった点が具体的には問題にな

る。

もうひとつは地域的特質の把握の方法といった点も問題となる。もっとも 簡明で説得力のあるのは,その地域における中心的な運動をまず明らかにす

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金沢大学経済学部論染第6巻第2号1986.3

ることで,これは多くの場合,労働・農民運動である。あるいは労働運動が もっと限定されて,主要な企業,工場,組合の運動,ある特定の産業労働者 の運動がその地域の運動のにない手となる事例をしばしば見受る。それらを まず調査・研究する必要があり,その結果,運動が全国的な労働・農民運動 のなかでどのような位置にあったのかも,おのずと明らかにすることができ よう。

さらに中心となった労働・農民運動がその地域において,どのような意味 でリーダーシップを発揮したのかもあわせて検討しなければならない。また 主導的な運動を研究対象とすると同時に未組織で散発的な,目立たないよう な争議・運動にも注目し,これらの動きと主導的な運動との関連にも留意す る必要がある。しかしこの点で従来の研究は総じて並列的,形式的で,大争 議中心であると批判せざるをえない。

さて後者の今後の研究課題について最:後に言及する。ここでは次の3点に それらを整理することにしよう。

まず第1に全国的運動の概要を叙述する方法と,そこにおける地域的特質 を把握する方法に関して若干の提案をしたい。近代以降,全国的運動が各地 方に波及したもの,その支部組織の活動が検出できるもののうち,代表的な 運動は歴史の順序にしたがってあげると次のとおりである。それは自由民権 運動,初期社会主義,大正デモクラシー,友愛会・総同盟の組合運動,米騒 動,電気料値下げ運動,弾圧と反ファシズム,といった運動となる。19世紀 末-1930年代のそれぞれの時代を映し出すような特徴をもった諸社会運動と いってよい。これらは全国的資料のなかにも各地方での動向が記録されてお り,それを手がかりとして未発掘地域の研究を伸張させうる。それぞれの全 国的状況をつないでいくことで,全国的な社会運動の流れも概観することが できるわけである。この7つの運動を共通の指標として各地方間の比較も可 能である。

ところで電気料値下げ運動以外は全国的研究がおこなわれているので,こ の運動が全国化した意義について少し指摘をしておこう。

≦電気料値下げ運動は運動主体別件数内訳にあるように,1926(大正15)年 までは散発的に各地で発生していたが,1927~31年の5年間には約300件と

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地方社会運動・労働運動史研究序論(下)(橋本)

全国電気料値下げ運動d運動主体別件数内訳

市町村会小口電力無産

商工会需要者市民層 鱸… 合計

2345678901234567890111111111222222222233 3131 313101212222025旭鯛、釣田

1212211

11144鯛四 111u5鞘嘔

n羽2鍋、

4236

33 12

吉森涼子(稿)「昭和恐慌期における電気料値下げ運動」(1984 年度金沢大学大学院'1多士論文)より引用。なお原安料は『社会運動 通信」,「無産者新聞」,「労働農民新聞」である。

いった頻発の状況であった。しかし個別の運動・争議の研究はあるが,全国 的視野で体系化された評価はまだなされていない句・

運動の主体別にみると,都市化の進展の中で無産市民層の量的拡大がすす み,それらが恐`院・不況下に運動へと決起した。また小営業者b小口需要者な どの小ブルジョワジーへのしわ寄せも大きく,無産政党もこうした動きに呼 応したことがわかる。したがって恐慌期の主要な社会運動の1つとみなすこ

とができる.

-65-

(15)

金沢大学経済学部譲集第6巻第2号1986.3

全国電気料値下げ運動・府県別件数内訳(1927~31年)

道森手城田形島城木馬玉葉北青岩宮秋山福茨栃群埼千 京川潟山川井梨野皐岡知璽東神新富石福山長岐静愛三

香川 愛媛 高知 福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖繩 合計

賀都阪庫良山取根山鳥ロ島滋京大兵奈和烏島岡広山徳

676382706473

24225142431121 530904346226

3030735568621111

引用資料は前表と同じ。

さらに上掲の府県別の件数をみると,運動が高揚した1927年からの5年間 には佐賀県を除くすべての府県に発生していることもわかる。各地域での研 究がおこなわれれば,もっと多くの件数を確認できると思う。例えば福島が 最多であるのは庄司吉之助の研究(1,があるからである。まさにこの時期を代 表する全国的な運動であったといえよう。

この電気料値下げ運動はひとことでいうならば,小ブルジョワジー・無産 市民・無産政党の3者を軸とした運動で,電気料という独占価格に対する反 独占,生活擁誕の運動であった。しかも治安維持法施行後の初の全国的運動

としても研究対象たりうるのである。

第2の課題は地方社会運動・労働運動の地域的特質に関する問題である。

その地域の主導的運動の検出については,具体的にのべなければならないの で,ここでは次の3点の指摘にとどめる。労働運動が主導的役割を果たす例 は多いが,地方おいて鉱山・炭鉱の労働運動が占める量的比重は高い。前者 の大半は銅山で,地域的には秋田,茨城,栃木,愛媛,大分といった県に偏 在している。後者も北海道,福島,山口,北九州といった地域に限定されて いる。しかも銅山・炭鉱は独自の集落を形成したり,地理的にみて周辺の地域 社会から隔絶されている場合が多い。したがって,その量が多いからといつ

-66-

(16)

地方社会運動・労働運動史研究序論(下)(橋本)

て,単純にそれを主導的な運動であるとするわけにはいかない。

非工業地域を対象とする時,農民運動が主要な位置に立つことはいうまで もない。本論では筆者の能力の関係から農民運動を除外したが,検討の主旨 から考えるとそれは適切ではない。農民運動史研究者のこうした面での研究 を期待する。ただし地方の場合,にない手の面からみると農民の運動が中心 となるが,農民主体であるからといってそれだけで農民運動とはいえない。

1例をあげると,前述の電気料値下げ運動は農民が中心となっておこなわれ た場合農民運動として論じられているものがある。同様に労働運動の中に 入っていることもある。両者は生産点を基本的な対立の場として展開するこ とが特質である。その意味では電気料値下げ運動は生活面での矛盾に起因し ており,市民運動の1列に加えた。足尾鉱毒問題はこの逆で,反公害c住民 運動という意味では市民運動に便宜的には入ってしまうが,市民という範零 ではくくることのできない農民の,地域を基盤とした運動という側面を,軽 視してはならない。市民運動についてはその内容的な吟味を必要とするが,

今後このような観点での社会運動の研究は重要になると思われる。

地方社会運動.労働運動史研究を本論ではとりあえず府県別のまとまりの なかで検討したが,地域的な研究をより深めるためには府県といった行政単 位に拘束されず,また一方ではより狭い地域を対象範囲とした研究が追求さ れるべきである。前者の好例は本論の、の8.でとりあげておいたが,「北九 州地方社会労働年表』である。その外一部に見られる工業地帯の研究のなか での検討も労働運動の立場からは重要である。後者については,これも、の

8で『奄美社会運動史』を例外的に紹介しておいたが,同類書と『て「佐渡

社会運動史」(山本善一郎編佐渡社会問題研究会刊1980年)を入手する ことができた。各地域のこうした研究を調査するためには,本研究に倍する 時間を費やさなければならない。

第3の課題として本論のIにおいて若干ふれたところの社会史研究と人民 闘争史研究との関連性についてごく簡単に私見を述べておきたい。

社会史研究の隆盛をひとつの契機として戦後の歴史学刀の見直しが求めら れ,社会史研究と人民闘争史研究との間の架橋といった認識が形成された町。

ところが社会史研究の側からは,その架橋を断ち切ろうとする角山栄の様な

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金沢大学経済学部論築第6巻第2号1986.3

対応も表われている印。しかしそれを戦後の歴史学の発展過程の問題として 社会史研究の研究蓄積,方法をどのように受とめるかという立場で把握して おきたい。その意味で高橋昌明の「架橋の可能性」を探ろうとする研究意欲 に強い関心をもつ'0)。ここで以下述べようとすることは,社会史研究全体と の関連ではなく,その-分野の民衆運動史・社会運動史研究に限定する'1)。

それは次の2点にいずれもかかわる。

社会史研究が批判するように,戦後の歴史学が社会構成史や階級闘争史を 中心として論じられ,したがって経済史でいえば生産の場を主な舞台として 描かれてきたことは否定できない。もちろん生活の問題を一切抜きにしてき たかというとそれは不正確で,例えば労働者の状態の研究という観点の中に 不十分ながら成果は見られた。しかし労働者の生活状態とそこにおける矛盾 や生活の困窮,あるいはそれとの闘いは分析できたとしても,それが階級闘 争のなかにどのように位冠づけられるのか,その連関についての研究は理論 的にも実証的にも未熟であった。社会史風にいえば平凡な日常生活をおこな う労働者が何故,どのような契機で非日常的な行為にいたるのか,というテ ーマである。角山栄は非日常的行為そのものは特殊で,両者をきびしくわけ ることに重要な意味をもたせる。その際,階級闘争を狭い意味での社会変革 と理解しようとしている点は少し気になる。闘争を非日常的行為と限定し,

特別祝していると思われるが,ともあれ人民闘争史研究が階級闘争を具体的 な争議,社会変革の運動といった闘争それ自身に帰結させて把握しようとし た,あるいはそのような誤解を生む方法をとっていたことを問題とすべきで

あろう。§の誤解は戦後の歴史学が民衆運動を終始脇役にしているという認

識にまで進んでいる。ここでは民衆の日常の生活意識・感情レベルまで研究 対象にしなければ,階級闘争史研究も進化しないと理解しておこう。しかし 一方では日常的な消極的抵抗やサボタージュというものも成立するわけで,

広い意味での階級闘争分析では従来これも研究対象としてきた。ここにひと つの架橋の可能性,接点があるのではなかろうか。

社会史研究者は食糧暴動を題材として社会的結合関係の究明という方法を 好んでとるが,そこにもうひとつの接点があるように思える。近代史の立場 からみると,民衆が新しい社会的結合(それを近代的と呼ぶかどうかは別と

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地方社会運動・労働運動史研究序論(下)(橋本)

して)へ再編成されつつはあるが,なお伝統的な社会的結合(それを共同体 的と呼ぶかどうかは別として)にとどまろうとする部分を残していることを たえず重視するということになろうか。とすると民衆の抵抗とか闘争はそう した社会的結合のなかに身を置きつつ,それとはどうしても相容れない問題 が発生した時に選択するひとつの手段といえる。このような研究はある一定 の地域内において具体的に検証されるべき課題で,日本の社会運動史研究は そうした水準にはまだ残念ながら到達してはいない。

社会史研究の側からの提起をひとつは上記のように受とめるとしても,判 然とはしない問題もある。それは柴田三千雄の問題関心を,より鮮明にして いる近藤和彦の見解について述べたほうがわかりやすい。

近藤は熱っぽく次のように主張する120.従来の労働運動などを扱った歴史 は思想家群の羅列・紹介,出来事の変遷で終っていた。そうではなく時の全 体的連関を問いながら,民衆運動の具体的様相をそのままに明らかにしてい くべきである。そのことを構成する諸要素の間の統一的把握を,時代の社会 経済的構造,政治権力的構造との連関においておこなうべきである,という。

このことは先程,社会的結合関係という言葉でふれた意味内容を深めている わけで,問題意識としては共有しうる。さらに近藤は民衆運動とは何かと問 い,次のように自答する。民衆運動は労働運動,労働組合運動,社会主義運 動その他を包含するより広い概念であるとし,労働組合運動をなかに労働運 動,民衆運動をそれぞれ同心円状に外部に置き,社会主義運動を3者とそれ ぞれかかわりながら同心円外に位置するものとして図示する。そして集団と しての民衆が主体で,体系性,抽象性の乏しい民衆の言葉と行動が社会運動 の全体性を解明していく鍵であると強調するのである。民衆運動と社会運動 との関係がよくわからないが,それはここでは問わない。それぞれがどのよ うに位置しているかの図は示されているが,判然としないのは民衆運動と諸 運動との関係,前者の後者に対する規定性についてである。

従来の階級闘争史論では労働者階級の階級闘争を主軸として把握し,この 点で決定的な相違がある。こうした把握を社会史研究者達は図式的で教条主 義的であると批判するのであるが,一応この問題は棚上げする。しかし労働 者階級の運動が他の運動との間にどのような関係にあり,どのように規定す

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金沢大学経済学部論典第6巻第2号1986.3

るかということは,実は同じように明確にはなっていないのである。筆者は これについて何がしかの考え方は提示したことがあるが13),本論でも述べた ように実証的にはまだ多くの未解決な問題を残している。これはいいかえれ ば両者の社会運動史研究の理論的な課題であって,今後競いあって検討を重 ねていくべきであろう。そうすることで,新たな接点が研究上成立してくる

と予想される。

(1986年1月20日成稿)

(注)

1)社会運動史・労働運1,1史研究において,戦前の活動家の役割の大きいことは本論で も指摘するところであるが,また段近貴重な戦前の活動の体験者を失なった。「物語 青森県労農運動史」の著者である大沢久明氏である。198坪8月11日のことで83歳の 高齢であった。

なお前々号の目録に誤植があったので,ここで訂正をしておく。「富山県戦前社会 運動史」の著者を内藤弘正としたが,内山の誤りである。本文中は内山となっている。

2)長野県編「長野県史」近代史料綱第8巻3(長野県史刊行会1984年10月)。

3)本番のようにサブタイトルを○○県社会運動史とし,別のタイトルを表示している 場合は,目録からは発見しにくい。

4)次の3つの論文である。橋本哲哉「地方における初期社会主義の活動」,金沢大学 経済学会「金沢大学経済鎗巣」第21号(1984年3月)所収,同「日本における初期社 会主義研究の意義」,金沢大学経済学部「経済学部論巣」第4巻2号(1984年3月)

所収,同「初期社会主義と民衆運動」,「講座日本歴史」8近代2(東京大学出版会 1985年6月)所収。

5)上田穣一編「熊本における戦前の社会運動」(熊本社会運動史研究会,1958年11月)

2頁。

6)梅原隆章『1928年の電気争溌」(顕真学苑,1953年)を先駆的研究としていくつか の個別の研究はある。吉森涼子(稿)『昭和恐慌期における遜気料値下げ運動」(1984 年度金沢大学大学院修士稔文)は不十分ではあるが,はじめて全国的な〕運動としての 概観を展望したものである。

7)戦後の歴史学に関する柴田三千雄「近代世界と民衆運動」(岩波書店1983年4月)

の理解に違和感はないが,その内容と評価については遠山茂樹が歴史学研究会の活動 を通じて分析している点(「戦後の歴史学と歴史意識」岩波番店1968年6月)を参照

すること。

8)例えば1982年度歴史学研究会大会全体会報告を参照。

9)例えば,角山栄「比較社会史の試み」「経済評論」1983年10月号(日本評論社)を参

照。

10)高橋昌明「社会史の位inと意義について」r歴史学研究」520号(1983年9月青木

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地方社会遮風b・労働運動史研究序論(下)(橋本)

轡店)。

11)以下,諸研究のなかから柴田前掲番と近藤和彦の3論文「産業革命前夜の民衆連動」

上・下(社会運動史研究会『社会運動史」2.41973.74年).「民衆運動・生活・

意識」(「思想」630号岩波書店1976年12月)「1756~57年の食轍暴動」上・下(「思 想』654.655号)を対象とするが,近藤の最近の研究についてはフォローしていない。

12)近藤前掲論文「産業革命前夜の民衆運動」下を参照。

13)橋本哲哉「日本帝国主義確立過程の労働問題」「歴史学研究」別冊・1971年度大会

報告(青木轡店1971年10月)を参照。

(追肥)

本論執筆後,「大阪社会労働運動史」(波部徹・木村敏男・西村舗通綱,大阪社会運 動協会,全3巻)の刊行計画を知った。戦前繭は2巻分で,目次を見る限りでは本論が掲 げた課題をかなりの程度達成しているようである。別にくわしく検討する機会をもちた

い。

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