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− 前 世 紀 よ り 今 世 紀 初 頭 に か け て の 英 国 監 査 事 情 − 森

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(1)

ほ  し  が  き   

近代的な会計監査の流れほ英国に源を発し︑米国及びドイツに大きな影響を与えた︒今日でほ最も発達している  

︵1︶ と称せられる米国の会計監査ほ一八八〇年代の英国の会計士の渡米にその生成の契機を持つと伝えられている︒従  

って米国における生成期の会計監査の発展を解明するためにほ一応その制度に影響を与えたと思われる前世紀末頃  

より今世紀初頭にかけての英国監査制度を取り上げることが必要であると思う︒   

米国における会計監査の初期の発展にふれる時︑多くの者ほそれが単に英国の会計監査の模倣に過ぎず︑そのよ  

ぅな状態が山九三〇年代頃まで続いていたと述べるに留るようである︒そのような場合にほ読者ほ当時の英国の監  

査制度があたかも完成されており︑問題が全くないかのような印象を受けるであろうし︑又米国にそっくりそのま  

1移されて全く同じ監査制度であったかに感じるかも知れないであろう︒しかしながら当時の監査制度についてふ  

へ2︶  れるものほ少な.いが︑英国の監査制度はそれ白身固有の諸条件を持っていたほずであり︑従ってそれ自身の問題に  

苦しんでいたのである︒英国より会計監査を移植された米国では生れた処とは別の諸条件を持つ土壌で育てて行か  

ねばならず︑英国におけるとほ別の問題に苦しんでいたほずである︒そこで英国の監査制度の特徴及びその当時に    第三十二巻 第三・四・五号  

ゝ  

︵五五〇︶三一〇  英国における藍査役の独立性と限定監査報青書  

−前世紀より今世紀初頭にかけての英国監査事情−  

森  実  

(2)

存在した困難な問題を指摘することは米国における土壌の特殊性に応じて英国におけるとほ別の道を辿り︑叉別の  

困難な問題に出会った事情を理解することに役立つであろう︒   

此処でほ米国におけるそれらの問題点にまでふれず︑別の機会に譲ることにする︒本論文でほ監査の主体である  

監査役が自己の義務の遂行として株主に提出する監査報告書の問題と監査役の地位の問題とを関連させて︑監査制  

度の機能と当時の実状とを考察することにする︒  

︵l︶ この点については拙稿↓米国における生成期の監査報告書について﹂香川大学経済論叢第三十二塵界二三ハ三更に簡単に  

ふれた所である︒  

︵2︶ 最近でほ桜井弘蔵稿﹁一九世紀末菓におけるイギリスの監査慣行﹂凝滞理論第四九・五〇号がある︒  

英国における産業革命後の経済発展ほ十九世紀に入り特に顕著なものであって︑多額の資本を集中した大規模経  

営が必要になったので株式会社の形態が非常に多く利用されるようになった︒そとで株式会社の形態が社会的に重  

要な意義を抱くようになり︑且つ叉困難な問題を提出した︒株式会社は多くの株主より資本を集めねばならないが︑  

出資した株主の多くほ会社経営に参加しないのが常である︒更に英国は十八世紀初期に好ける株式投機に伴う詐  

欺の幣害及び十九世紀前半の周期的恐慌によって惹き起された多数の会社の破産によって非常に多数の人々が苦し  

んだ経験を持つので︑株式会社の形態を許す場合会社の首脳者の責任を重くし︑如何にして彼等の不正戎ほ放慢な  

行為を防止するかほ社会的に重要な問題であった︒従っセ株主より委託されて経営を行なう取締役が誠実にその義  

務を遂行していることを監督︑牽制するために株主の代表として監査役を任命して監査を行なぁせて︑株式会社の  

健全な発展を確保することが経営に参加していない多くの株主の保護として必要になったのである︒これは英国に  

︵五五こ一一二 山   英国における監査役の独立性と限定監査報告書  

(3)

第三十二巻 第三・四・五号  ︵五五二︶二二二   ぉいて十六世紀の頃既に荘園及び都市の財政で会計管理の担当者について職務上の誠実を検査することが行なわれ  

︵1︶  ㌻2︶  ていたのが十九世紀に至り株式会社の監査制度の根本精神としてそのま⊥入れられたのである︒   

他方において十九世紀の急激な経済発展に伴って資本主義の典型的矛盾として十年毎の周期で発生した恐慌ほ非   

常に多数の会社を破産させたので︑再三破産法規が制定され︑或ほ改廃せられた︒これに伴ない会計の専門家とし   

て存在していた公共会計士ほ諸種の会計報告書の作成︑破産者の受託者︑或ほ債権者側の管財人として活動する機  ′へ 

苦﹂で株式会社において監査制度が採用され︑株主の代表としての監査役が取締役の作成した諸帳玲及び計算書を  

監査することになったことと会計士制度の成立とが結びつけられることになったのである︒ここに本来は素人監査   

であるものが次第に会計士監査に移行して行くことになったのである︒︵以下会計士とほ公共会計士ないう︒︶  

︵4﹂  デイツキンソンによれば素人監査より会計士監査への移行ほ次のような段階を辿っていったものと見られるC先 つ第仙の段階でほ株主総会が監査役 を選ぶのであるが︑それほ教育も経験もない素人監査役であったので充分に合   

理的な監査ほ行なわれなかったのであり︑通常報酬は小額であったが浪費されてしまったのであろうといわれてい   

る︒次の段階におい・てほ素人監査役によってほ不充分な監査しか行なわれ得ないので株主総会によ?て選出された  

監査役が自分の仕事の補佐をさせるたかに会計士を雇うのである︒この会計士の費用ほ会社によって支払われる︒  

更に第三段階では第二段階のように選出された監査役がその仕事の代行者として会計士を選ぶという二段的手続を  

踏まずに︑株主総会が直接に会計士を監査役に任命するのである︒   

このような諸段階を会社法の規程の変化によヶ跡づけて行けば時代的により明確になるであろう︒仙八四四叶の  

会社法ほ取締役の行為を監督する意図を以て︑取締役に帳簿を作成する義務を課し︑他方この帳簿を取締役以外の   

(4)

第三者によノつて監査させることを定めていた︒この.仙八四四年の会社法は素人監査役を意図していたので専門的知  

識に欠けるため監査は形式的であり︑不徹底に終ることが多く︑当時の監査ほ全くの茶番劇に過ぎないものと評さ  

︵5︶  れたのである︒翌年の山八四五年の会社法でほ同じように監査役ほ素人であることを意図し︑.監査役は会社の株式  

を少くとも︼株以上所有せねほならないと監査役の資格を限定しているが︵一 

ほ専門的知識が必要であることを認識して︑監査役の仕事を補佐させるために会社の費用で監査役が過当と思う会  

計士及びその他の人々を雇うことは合法的であるとしたのである︒この段階では監査のリーダーシップほ株主によ  

り選ばれた監査役が握りハ 監査の実際の仕事で補佐として会計士堅雇うことを認めるのである︒しかし素人監査役  

ほ実際に何も監査を行ない得ないのであるから全てを専門の会計士に任せた方が合理的であることが認識せられる  

ようになると︑株主によって任命された監査役ほ会計士を選ぶだけの機関となる︒とれがデイツキンソンのいう第  

二段階に当るであろう︒  

一八五六年の会社法ほ会計監査を強制していなかったが︑附属定款雛形のTab−e B ︵これほ一八六二年の会社法  

でほTab−e Aとして入れられている︶ を定めていた︒この定款雛形の採用ほ強制されなかったが︑会社が別に自己の  

定款を作成しなかっね場合にほこれに従わねばならないものとされていた︒これにほ監査条項が含まれており︑当  

;ヱ  時の多くの会社ほこの定款雛形を採用するのを常としたので監査は会社で山般的に行われていたといわれている︒  

このようか二八五六年︑一人六二年の規程では監査役ほ株主である必要ほない ︵.仙八五六年法︶︑或は株主であっ  

てもかまわない ︵一八六二年遷 として監査役の資格条件より株式所有条項を削?ているが︑会社の出用で会計士  

を雇うことを認める条項ほそのま1残している︒ここでほデイツキンソンの述べた第三段階としてこの規程により  

株主総会が直接に会討土を監査役として選出することが可能にされたのである︒ここに監査役の任命︑会計士の代行   

︵五五三︶三∵三   英国における監査役の独立性と限定監査報含蓄  

(5)

︵五五四︶三脚四  第三十二巻 第三・四・五号  

という迂回的方法よ 

作られたのである︒   

更に山八七九年の会社法は銀行に対して会計監査を強制する規程をとり入れたがへ この法律では会討士が会社の  

費用で雇入れられることを認める条項ほ削られている︒このことほ会計士が監査役に任命されることがより∵般的  

︵7︶  にな?たことを示すものと解せられている︒あえて会計士雇入れを認める規程を設けて会社に会計士監査を勧める  

必要が薄れたためであろう︒   

会計士監査が普及するに従って素人監査は素人医者と同じように大きな幣害のあるものであり︑通常不完全な監  

査しか行ない得ないから屡々無価値なものに過ぎず︑会計士によって行なわれる時ほじめて合理的な結果を期待す  

ることが出来るものであることが仙般に理解されて来たのである︒そのことを最初に法律が認めたのは一八九四年  

のBui−ding SOCietyActであり︑この法律は監査役の少くとも一人ほ公けに会計士として職業を営んでいるもので  

なければならないことを定めている︒しかし一九〇〇年の会社法によって一般私企業の株式会社に会計監奄が強制  

されるに至ったが︑一九〇八年に制定された会社法ほ監査役の株式所有条項を削っていると同時に会引士を雇入れ  

る条項も削っており︑更に会計士を監査役に含めるぺきことも要求していない︒このことは逆行であると考えられ  

るぺきでほなく︑金融会社のように特に会計監査の重要であるものに対してほ会計士の専門家による監査を強制す  

るが︑仙般の会社に対しては素人監査を採用するか会計士監査を採用するかほ会社内部の問題としてその選択は.各  

会社の事情に任せたのであろう︒それは叉それだけ会計士監査が仙般化し︑素人監査が例外的になっていた実情に  

基づくと考えられる︒   

倫会計士のみが監査役になりうると定めたのは最近の一九四七年の会社法であった︒このように完全に会計士監   

(6)

査に踏み切るに至るのに長年月を要したのは英国の監査制度はあくまで株主保護の意図を当初から保持し続けてい  

るため.に監査役の代行としての会計士監査の意味が強かったためである︒この点米国がほじめから会計士監査とし  

て出発したのとは事情を異にしているのである︒  

︵ト︶ A.C.Litt−et昌−AccOuntin的Eヨ一己iOntO−筈○︸−欝∽−pp・N含〜Nの研・  

︵2︶ Ibidこ p.N苫.  

︵3︶ lbidこ pp・∞ご〜N∞P  

︵4︶ A.L.DickinsOn∵AccOuntingPracticeand PrOCedure︸−翌瓦−pp・NびN〜N鍔  

︵7︶ H.C.Edeyand PrOt Panitpakdi■BritisFCOmpany■AccOunting andtFeLaw−∞会〜−gO−inStu巴e00in崇stOry  

Of AccOunting︸edited by A.C・Litt−etOウand B●S●Yameyu−00宗︸p・当〇・  

ノ         ︑       ︵1︶ 残高と照応するかどうかを確める手続がとられたに過ぎなかった状態が一八七〇年代も続いていたといわれる︒従    ︵尚引用し する︒︶ 

二   

叫八四四年の会社法に始った会計監査は既に述べたように元来が素人監査であり︑一八四五年の会社法以来会討  

士を補助者として雇うことが出来たのであるが︑その当時の会計の専門家と称する老であっても熟練及び経験を欠  

くものが多かったので︑実際に行なわれた監査手続は単純且つ形式的なものであったことは想像するに難くない︒  

リトルトンによれぼ監査が全ての支払について証憑書類が作成されたかどうか︑或は印刷された貸借対照表が元帳  

︵五五五︶三五   英国における監査役の独悪性と限定監査報告書   ︵5︶ A.C↑itt訂tOnけOp● Cit・︶ p・N箋●  ︵6︶ A.L.Dic打insOnu Op−cit.︶p.NひN・  

(7)

ってこのような素朴︑且つ形式的な監査手続の結果としてほ単純で形式的な報告書しか作成することが出来なかっ  

ぼであろう︒例えば当蘭︵山八八三年︶の監査報告書︵以下報告書と略称する︶には﹁有価証券を検査し且つそれ  

が銀行の帳薔及び計算書と一致することを認めた﹂とか︑﹁木賃借対照表における金額を帳忽と比較し︑その叫致す  

ることを認め空とか︑或は﹁本貸借対照表を帳簿及び証憑書類と比較し︑現金︑手形︑貸付金が各々叫致するこ  

︵2︶  とを認めた﹂とかのように記載されたことが多かったのである︒   

法律ほこのような形式的報告書を求めていたのでほなく︑会社の発表する計算書が会社の状態の正確且つ真実の  

表示であ.るかどうかを確めて報告すべきことを要求していたのである︒一八四五年の会社法でほ報告書の内容につ  

いてほ別にノ規程を設けていなかったが︑血八五六年の会社法の附属定款雛形の↓ab−e Bの八四条ほ監査役が株主に  

対して提出する報告書においては取締役の提出した貸借対照表が法規の諸要件に合致し︑会社の状態の真実且つ正  

確な表示であるかどうかについての意見︑及び監査の実施において必要であった情報及び説明を取締役より得たか  

どうかを記載すべきことを定めていた︒仙九〇八年の会社法でも大体同様の規程であったが︑唯この時ほ報告書に  

′ 記載される内容に二つの部分があることを︵a︶︵b︶二つの項目に分けて述べることにより明確にしている︒即ら  

︵a︶では貸借対照表について意見を表明するための前提としての監査切実施が満足的に行なわれたかどうかを表明  

することを︑︵b︶では貸借対照表が真実且つ正確に会社喝状態を表示しているかどうかについて監査役の意見を表  

明することせ定めている︒現代的にいえば監査報告書に範囲区分と意見区分の二つの部分を含むべきことを要求し  

︵8︶  ているといえるであろう︒   

報告讃の二つの部分で完全な承認が与えられるならば︑即ち監査の実施における全ての諸条件が満足され︑且つ  

貸借対偶表が真実且つ正確であると認めた場合は法律の条文に沿って卒直に承諾の意を表明した無限定報告書を作    第三十二巻 第三・四・五号  ︵五五六︶三山六  

(8)

成することが出来る︒しかし各会社の状態は全て満足的に監査が行なわれ︑真実且つ正確な貸借対照表が作成され  

ているとは限らない︒従って範囲区分か或ほ意見区分かで卒直な承認を行ない得ない場合は条件の満されていない  

簡所︑戎ほ承認の与ゝ見られない箇所を示した限定報告書を作成しなければならない︒無限定報告書に対してほ限定  

報告書が存在しなければならないのほ理論的には当然のことであるが︑果して一八四四年の会社法の制定の当初よ  

り限定報告書が作成されていたかどうかほ疑問である︒恐らくはそうでなかったと思われる︒当初は素人監査で形  

式的にしか監査を行なわなかったのであるから︑限定報告書を作成するだけの責任をとり得ず︑又限定報告書を作  

成することほ取締役との間に非常に困難な問題を生ぜしめることになるから殆んど無条件的に無限定報告書を提出  

していたのでほなぃかと思われるのである︒それでほ何時頃から限定報告書が作成されるようになったかといえば  

明らかでほない︒しかし素人監査より会剖士監査へと移行するに従って次第に限定報告書が現われるようになった  

と推測す・るも誤りでほなかろう︒   

次に限定報告書は理論的にはどのような場合に作成されるかを範囲区分における限定より述べて行くことにす  

る︒一八重ハ年の会社法の附属定款雛形のTab−2Bの八二条は﹁各監査役ほ貸借倒照表の写しを与えられ︑そしてそ  

れに関係する諸帳鰭及び証憑によって検査するのが監査役の義務である﹂ど定めている︒更に監査役がその職務な遂  

行するために必要な全ゆる便宜を与えるべく同法八三条は﹁各監査役は会社の作成する全ての帳簿のリストを受優  

し︑且つ彼は合理的な時にほ何時でも会社の帳簿及び計算書を見ることが出来る﹂権利を与えている︒従って監査  

役が監査報告書を提出する場合にほ監査役ほ与えられたこのよづな権限を利用して貸借対照表についての意見を表  

明するために充分な証拠を集めて満足的な監査を実施することが必要である︒従って報告書には監査の実施が満足  

的なものであったかどうか︑どの程度の監査が実施されたかを記載しなければならない︒従って同法八四条は﹁監   

︵五五七︶三脚七   英国における監査役の独立性と限定監査報告書  

(9)

第三十二巻 第三・四・五号  ︵五五八︶三仙八  

査役が取締役より説明及び情報を求めた場合にほ取締役からその説明及び情報が得られたかどうか︑及びそれらが  

満足的であったかどうか﹂を報告書で述べるべきことを定めている︒山九〇八年の会社法も監査役の権限︑及びそ  

の権限が滞されたかどうかについての報告書での表明について腰南棟の規程を持っている︒  

このような監慮役の権限が何らかの理由によって制限され︑或は行使されなかった時には貸借対照表についての  

完全な意見の表明を行なうには不充分なものであるから︑どのような理由で︑どの点において監査役の権限が妨げ  

られ︑或ほ行使出来ずに不満足な監査になったかを表明するために限定報告書が作成されるのである︒法律の規程  

によれば監査役は何時でも自分の望む時に会社の帳簿及び証憑書類を見る権利がある︒従って監査役ほ抜き打ち的  

に検査を行なう権利を持つが︑前もって取締役と監査の日時を取締役と協定するのが通常であったが︑不正の疑い  

︵4し  があるような場合には抜き打ち的に検ぺる権限が行使されるのである︒そしてこの権限において会社の会計記録ば  

︵5︶  かりでほなく法律的︑痍計的書類や諸種の覚書まで監査に必要な書類を検査することが出来る︒監査役ほ監査の実  

施において必要であると思う説明及び情報資料を取締役に求めることが出来る︒しかし取締役がこの要求を拒絶す  

る場合がある︒例えば議事録等ほ仙九〇八年の会社法が通過する前には監査役が見るこ七を拒絶されることが多か  

へ6︶  ったといわれてい竜︒このような場合監査役は彼の権限が取締役によヶて制限されたことを記載した報告書を株主  

に提出することによって取締役に対抗することが出来る︒   

貸借対照表が会社の真実且つ正確な財政状態を表示しているかどうかについて意見を表明するにほどの程度の証  

拠を集めることが必蟄であるかは全く監査役の判断に/任せられている︒それは単に貸借対照表の諸項目と元帳残高  

との比較といった形式的な手続に留るものではなくて︑より実質的に貸借対照表が会社の兵実且つ正確な状態の表  

示であることまでも確めねばならない︒如何にして事実を確めるかについてデイクレーほ二九〇九年の書では次の   

(10)

ように述べている︒﹁それは証拠をふるいにかけることによってである︒主要な証拠は帳簿である︒しかし帳簿に  

\   

一つの記載が行なわれることは外見上の証拠に留るのであって︑それは更に内部的な横断的検査 ︵interna−.crOSS  

﹁−︶ eHaminatiOn︶︑戎ほ文書︵証聾の或は口答︵説明︶の信頼し得る独立的証拠によって検証㌻れねぼならない﹂︒  

このようにして証拠を集める場合専門家でなくては合撃的な結果を期待し得ない︒判決においても監査役は合理的  

︵8︶  な注意と熟練とを発揮しで監査を行わねばならないとしている︒このような場合素人監査よりむしろ会計士監査が  

前提となっていることはいうまでもないであろう︒   

更に監査役が監査を行な㌢会社の会計組職が整備されておらず証憑書類等が不完全である場合には監査の実施に  

必要な説明及び情報を利用出来ないため充分な証拠を得るナ﹂とが出来ない︒このような時にほ報告書にその事実を  

︵9﹂  明示して限定報告書を作成しなけれぼならない 

範囲区分において限定が行なわれるのに当時ほ二つの場合が考えられていた︒第仙の場合ほ監査役が監査の実施  

において集めることが必要であると思う証拠資料を取締役が拒絶する場合である︒第二の場合は会社の会計組織の  

不備によって必要な証拠が入手出来なかった場合である︒前の場合ほ法律が認めた監査役の権限を取締役が制限し  

たことになるが取締役がそのような証拠資料ほ監査の実施に必要ないとして拒絶すれば︑それほ裁判に持ち込まれ  

︵10︶ たにしても︑結局ほ会社の内部問題として株主総会で決定されることになる︒従ってこのような場合限定報告書が  

出されることほ株主の代表としての監査役の権限が取締役によって制限されたことを意味し︑それが株主に報告さ  

れるのであるから敢締役の処置が妥当であるかどうかの責任が追求されることになるであろう︒第二の場合の会計  

組織が不備であったために必要な証拠が得られなかった時の限定報告書も又取締役の責任に関係する︒取締役にほ  

株主より委託された経営責任の遂行として会社の帳簿を管理する責任が会社法により与えられている︒それにも拘   

英国における監査役の独立性と限定監査報告書  ︵五五九︶一三九  

(11)

三   

報告書においては範囲区分の次に意見区分が置れるのが通例である︒この意見表明についてほ山九〇八年の会社  

法は﹁貸借対照表が会社の状態の真実日ち應確な表示をなすように作成され︑そして会社の帳簿に示された通りで  

あるかどうかについての監査役の意見﹂を表明すべきであるとしている︒ここにおいてほ監査役は貸借対照表の正  

確性を﹁証明﹂することを求めているのでほなく︑貸借対照表の正確性についての﹁意見﹂を求められているだけ  

であることが明らかであ牒︒との意見が監査の実施において合理的な注意と熟練とによって必要であるとして集め    第三十二巻︑第三・四孟号  ︵五六〇︶三二〇  

わらず会計組織の不備なために必要な証拠が得られなかったということほ取締役の帳簿の管理者としての責任が充  

分果されていなかったことになる︒そこで上れらの場合における限定報告書が正当に作成され︑且つ報告されてい  

たであろうかということはそれが取締役の責任に大きく関係するものだけに疑問であり︑それは後により詳しくふ  

れる所である︒ 

す甘↑甘言甘す  

言↑  

\−ノ  ) 、一  )   ) \一  )   ) \J  

A.C.Litt︼etOn︸ Op.Cit.も.N箋.  

Hbidこ p.巴亘  

拙稿﹁監査報告沓の機能と機構について﹂香川大学経済論叢第三十一巻第†号  

Spice︻and Peg訂r.Practica−Auditing︶−讐−u p.−澄.  

Hbid.︸ p﹂むデ  

Ibidこ p.−思.  

L.R.Dicksee一Auditing一−宍戸 p.∽当.  

Ibidこ p.∽∽P  

Spice︻and Peg︼eru Op.Citこ P.−警.  

Spice≠and Peg︼er.Practica−Auditing︸−誤A.p﹂票.  

(12)

た情報資料及び説明に基づいたものであるかぎり彼にはそれ以上の責任がない︒そこで﹁彼等︵監査役︶に与えら  

れた最善の情報及び説明に従えば﹂という文言が意見の限定句として一九〇七年の会社法の規程に入れられ︑従っ  

︵1︶ て叉儲告書中にもこの文言が含められるようになったのである︒無限定報告書においてはこれらの文言を用いて率  

盾な承認を示す意見が記載される︒   

しかし実際の監査においてほ貸借対照表の表示或は会計処理について取締役と監査役との意見が食い違うことが  

ある︒このような場合には監査役は株主の利益を保護することを目的としているのであるから報告書においてその  

問題点を明確に指摘して株主の注意を喚起するため限定報告書を作成せねぼならない︒だが監査役が意見の相違或  

は間違を発見した場合にすぐに限定報告書を作成するのは適切ではない︒監査ほ批判的業務であるが会社の健全な  

発展をその日的としているのであるから欠陥を発見すればすぐ取締役に指摘して改善させるのが職務の遂行として  

はより合理的である︒今世紀初頭に向って監査の担当者は素人より会計士へと移行していたが専門家としての会計  

士は貸借対照表の表示︑会計処理について意見の相違がある場合ほ彼ほ取締役に充分説明して納得させて修正させ  

るのが適当である︒取締役としても直接株主に対して報告されるよりも︑その前に悪い箇所の指摘を受ける方が好  

都合である︒というのはその問題が取締役の承服し得るものである場合ほ喜んで改めるであろうから︑報告書作成  

前に問題を指摘され︑納得の行くまで説明を受けることを望むであろう︒それでも両歌締役が自己の意見を固執し︑  

監査役の意見に承服しないならば︑監査役ははじめて限定報告書を作成し︑問題の判定を株主に委ねることになる  のである︒  

意見区分においてどのような限定車項が記載されたか当時の限定報告書の例をスパイサー及びぺグラーの書︵一  

九一一年︶ によって示して見よう︒  

英国における監査役の独立性と限定監査報告書  ︵五六一︶三二一   

(13)

︵六六ニ︶三二二   讐茸惑讐丁四・五骨  ﹁完〇八年の会社法の規程に従い私が要求した全ての情報及び説明を得たことを株主に報告致します︒私は  

上記の貸借対照表を諸帳簿及び諸証憑によって検査致しました︒そして次の諸点について株主の注意を喚起致し度  

く思います︒  Ⅲ 借入れを行なうために五〇〇〇ポンドの価値のある株式を抵当に入れている︒私の意見でほこの事実ほ貸借   

対照表上に表示されねばならない︒   

脚 トン当り取得原価竺五ポンド超過している市場価格で相当最の嗣が棚卸計算されている︒私の意見ではこ   

のような在庫品はそれが未だ売却されていない決算日にほ利益は計上されていない故取得原価で評価されねば   

ならないと思う︒伺在庫品目録ほ経営執行取締役によって正確なものとして証明された︒   

制 債務者の内には二年間未済であるが取締役が良好と考えている債権が含まれている︒与えられた証拠は私が   

このような見解に賛成するにほ充分ではないので︑私ほこのような債権は疑わしいものであり︑且つ引当金が   

それらに対して設定されるぺきであるという意見である︒   

㈲ 家屋︑設備及び機械の減価償却は何等行なわれていないのであるが︑私は取締役が利益の内二〇〇〇ポンドを   

充当すべき決議案を株主総会に提出するものと理解する︒私の意見でほ︵私が二C00ポンドと推定した︶その年   

度の減価償却は配当にあてうふ利益を算出する前に費用として損益勘定にチャーデされるべきであると思う︒   

前記の藷点を除いて︵subjecttOtheabO諾rema旨s︶私は上記の貸借対照表は私に与えられた最善の情報及び  

説明による限り︑会社の状態の轟実且つ正確な表示をなすように作成され︑且つ会社の諸帳簿に示された通りであ  

︵∩こ  るという意見である︒﹂   

ここにあげた例によっても示されるように限定報告書は取締役の会計責任の遂行における疑問の箇所を注意させ   

(14)

ることである︒従って監査役が限定報告書を作成することは取締役の重大な責任と関落する︒そこでこのような場  

合監査役は自己の意見に対して充分な確信を要し︑叉重大な決意が必要であったであろう︒同嘩に取締役は限定報  

告書によって自己の責任遂行に対して否定的評価が下されることを意味するのであるから限定報告書が提出牒れる  

のを好まない︒承服し得る限り監査役の意見に従って問題の箇所を修正したであろうかち実際に限定報告書が作成  

される場合は少なかったと思われる︒   

更に叉当時の会社制度における事実関係として取締役が監査役に強い圧力を加えて報告書に限定車項を記威しな  

いように要求したり︑叉問題の箇所を多少とも叫般的な表現にして特別に表示しないように要求したことが時々あ  

︵3︶  ったといわれている︒勿論監査役がこのような取締役の圧力に屈して限定報告書の代りに無限定報告書を作成する  

ならほ︑監査役ほ監査の根本精神である独立性を欠くエビになり︑監査役は自己の責任の遂行を怠ったことにな  

る︒この監査役の株主に対する責任は会社の定款によっても制限され得ないものであり︑まして取締役にはこのよ  

︵4︶  うな監査俊の責任を制限する権限はない︒又限定は明確に示されねばならず︑曖昧な仙般的表現によって代えるこ  

との出来ないもので釘る︒LOndOnandGene邑Bank事件の判決文中に﹁他人に報告することを義務とするもの  

︵5︶  は︑他人がより多くの情報を求めるよう鱒導くよケな報告をするだけで吋その義務を果したことにはなり得ない﹂  

とあるのはこのことを意味するのである︒   

法律においてほこのように明確且つ厳格に監査役の義務を定めているにも拘わらず︑監査役が取締役の圧力に服  

して限定儲告蕃の代りに無限定報告書を作成するに到るのは血体如何なる事情に基づくるであるかが次に究明され  

ねぼならない︒  

︵1︶ Spicer and Peg︼er﹀ Practica−Auditing﹀−讐−︸ pp.−笥〜−謡.  

英国紅おける監査役の独立性と限定監査報告書  ︵五六三︶三二三   

(15)

四  監査役の資格要件の歴史的経過については素人監査より会計士監査への推移に関連して既に簡単にふれた所であ  る︒しかし会計士監査といっても米国のそれと︑英国のそれとは意味をやゝ異にする︒米国において会計士監査とい  えほ会計士が株主を含めた会社の諸利害関係者より独立した立場に立って公平不偏な監査を行なうことを意味する  が︑英国においては監査役は株主より独立の立場にある必要はない︒むしろ当初のス四四年の会社法でほ株主で  あることが要求されていたのであり︑監査役が株主の代表であるという考え方はそれ以来変っていないものと考え  

︑  ここで英国の制度どの比較に資するために少しく米国における会計士の独立性にふれることにする︒米国でほ一   る︒従って会計士監査といっても米国のそれとは意義を殊にした監査役の会計士による代行と考えるべきであろう︒  

九三三年の有価証券法で独立の公共会計士による監査証明の提出を定め︑一九三四年の証券取引所法も証券取引委  

員会︵SEC︶と上場取引所に提出する監査証明ほ独立の公共会計士によるものであることを定めていた︒会計士  

の独立性については会計連続通牒第二号で監査人は廟被監査会社の役員或は取締役であってほならないこと︑㈲被 ︵1︶  監査会社の全資本金或ほ監査人の全財産の相当部分を会社に投下していないものであることが定められていた︒更  

に時代が進むにつれて独立性に対する証券取引委員会め指示は具体化し︑且つ厳格になっており︑他方会計士協会  

の自治的規則である職業行為規程 ︵→heRu−eO!2rOfessiO邑COnduct︶ の中には独立性の規程が設けられ︑第    第三十二巻 第三︒四・五号  ︵2︶ lbid:pp・−¢¢〜N0〇・  ︵3︶ :bid: p・N0〇・  ︵4︶ Hbid:p・−笥・  ︵5︶ lbid: p・−謡・   ︵五六四︶三二四  

(16)

三者によって監査人の意見が公正不偏ではないと疑われるような立場を種々定めてそのような立場に会計士が立つ  

ことを避けることを要求している︒   

これに対して英国の監査制度においては最初は株主であることが監査役の資格要件であったように株主に対する  

独立性という条件は必要でほない︒そ七で要求せられる監査役の独立性ほ会社の経営執行に対する独立性が主要な  

ものである︒仙八四五年の会社法の一〇二条ほ﹁特別法により他の資格が定められていない場合にほ各監査役はそ  

の企業の株式を少くとも叫株所有しなければならない︒︑そして彼は会社におけるいかなる役職についてはならな  

い︑叉株主として以外その事業に関係してほならない﹂と定めている︒一八五六年の会社法のTab−eBの七三条は  

﹁監査役は会社の株主である必要はない︒会社の取引において株主として以外何らかの方法で利害関係を持つもの  

ほ監査役として適当でほない︒そして会社の取締役或ほ他の役員はその職位に留る間ほ適当でほない﹂と定めてい  

る︒山九〇八年の会社法では山一二条の三項で簡単に﹁会社の取締役或ほ役員は会社の監査役に任命され得ない﹂  

との︑み規定している︒   

このような会計士の資格要件についての一八四五年の規程から二九〇八年の規程への変化は監査の独立性に関し  

てほ本質的な変化を含んでいない︒一入四五年の規程でほ監査役として株主を除く全ての利害関係者を欠格者とし  

ている︒所が一九〇八年の規程ではそれを取締役及び会社の役員にしばり集中的に定めている︒それでほその他の  

利害関係者を監査役とするのを認めようとしているのであろうか︒ここでも素人監査より会計士監査への移行と閑  

適させて解釈せねぼならない︒監査役は株主の代表であるから素人監査である限り株主であることを前提とするの  

が適当であり︑その他の利害関係者偲全て枕除されるのである︒特に会社に職位を持つ者︑取締役及び会社の役眉  

等が監査役になれないことを明示しているのは監倭の目的からそれらの者より独立であることが必要であるからで   

英国における監査役の独滋性と限定監査報告蕃  ︵五六五︶三二五   

(17)

第三十二巻 第一一丁四・五号  ︵五六六︶三二六  

ある︒時代が進むにつれて会計士による代行が行なわれるようになっても始めの頃ほ副業的な会計士も多かったの  

で独立性の規程が重要であり︑多くの利害関係者を監査役より排除する表現がとられていた︒会計士監査が進むに  

っれて会計士協会の権威が高まり能力のない会計士が監査役になる機会が少くされる︒これらの会計士協会ほ会計  

士の資質を向上させるべく努力し︑自治的規則をも持っていたのであるから独立性を保つために至当な注意を払っ  

ていたのであろう︒従って山九〇八年の規程ほ特別の利害関係者にふれず︑取締役及び役員から独立であることを  

要求する規程に常軌たものと考えられる︒   

しかしこのように簡単に取締役或は役員が監査役となり得ないことを規定するのみでほ実際には疑問が生じて来  

る︒︑それほデイクレーが指摘するようにその規程にほ﹁会社の取締役或ほ役員の親類︑パートナー︑従業員︑戎ほ  

他の召使が監査役に任命されるのを阻むものがない﹂︒従って帳簿を記したり︑或はそれを補助するために取締役  

により雇われたものが監査役に任命ぶれうるかどうかが問題になる︒その場合この法律の条文についてほ帳簿係ほ  

多少とも永続的な任命であるからこの法律の意味における﹁役員﹂に当るが︑例外的な或は臨時的な指示によって  

記帳をなすものほ﹁役員﹂にあてはまらないと解釈しうる︒しかしデイクレーほこのような法的関係にとらわれるこ  

となく︑﹁もしも監査役が叔締役より監査役として受取る報酬よりも記帳に関連してより多額の報酬を受け取るの  

であれば監査役の地位の独立性︵independenceOftFeirpOSitiOm︶は非常に侵されており︑且つ法の条文の精神に  

︵き︶  反する﹂ と解されるべきであるとのぺている︒このようなデイクレーの言葉からも一般に独立性は法律の条文に  

現われセ所だけに限られてはおらず︑より広く独立性の根本精神に照して考えられていたことが想像される︒   

更に濫査役の独立性ほその地位が保証されているか否かにより大きく影響される︒それほ常山に監査役が誰によ  

って任命され︑るかに扱存する︒英国では株主が最終的にほ監査役を任命する権限を持つことほ山賞している︒それ   

(18)

は株主の利益保護のために株主の代表による監査の本質より由来する︒一八闇四年の会社法では会社設立当初にお  

いて株主が監査役を任命し︵七条︶︑爾後の監査役は年次総会で任命するへ三八粂︶ ことを定めていた︒側八四五  

年の会社法︑劃八重ハ年の会社瀧のTab−2Bもこれを受け継ぎ︑一八六二年の会社法のT風−eAでは会社の設立当初  

は取締役が選任を行なうが︑爾後ほ株主総会が選任する ︵八四条︶ものと定めている︒これは実際上の便宜に従っ  

たものと思われるが︑設立当初の取締役による監査役の選任は必ずしも株主の意志を反映していない場合がある︒  

このようなことが許されるならば監査は取締役に迎合して行なわれるために監査の意義が失なわれてしまうであろ  

う︒従って監査役の任命権限が最終的には株主にあることを保証するために︑一九〇八年の規程のように設立当初  

に取締役によって任命された監査役は総会における株主の決議によって解任し得る 一二条二項︶ ことを定めて  

いか︒このことほ又監査役は株主に対して責任を負い︑株主のために働いているのであって取締役のために働いて  

いるのではないことを強調するのである′︒   

しかしこれらの規程では未だ充分ではない︒何故なら株主によって選任された監査役が取締役によって自由に解  

任されてほ何にもならないからである?そこでこのようなことが起らないようにするため山九〇八年の会社法には  

次の条項がある︒即ち前に監査役であったもの以外が監査役に任命されるためには年次総会の二週間以上前にその  

ものを監査役に指名する意図を有することを株主が会社に通告し︑且つ会社は解任されるべき監査役及び株主に年  

次総会の二週間以上前にその通知の写しを選付し︑広告し︑或は定款によって認められた方法で通知しなけれぼな  

らない ︵山二鵬条四項︶ と定めてある︒この条項は一九〇七年の会社法によって始めて入れられたのである郁︑そ  

れ以前の事情が法律の欠陥を明らかにしたのである︒   

それ以前の事情に・ついてほスパイサー及びぺグラトの書は次のようであったとしている︒一九〇七年の会社法に   

︵五六七︶三二七   英国紅おける監査役の独立性と限定監査報告轟  

(19)

位を保証し︑株主の利益を守る監査が行なわれるようにするのである︒    は取締役に白紙委任状を与えないであろう︒このよう監皿査役の任免が取締役の自由になることを防ぎ監査役の地   るのでそれが株主の不利益になると考えれほ解任に反対するために総会に出席することを決意するであろうし︑或   役に抗弁の機会を与えるのである︒株主は監査役解任の意図の通知により︑その事の可否の判断の機会が与えられ   凸  すべきことを要求しているが︑これは全株主に報せることなく監査役を変属することを禁じ︑又解任さるべき監査    この監査役の解任に関する規程ほ現監査役以外の人が指名される場合には総会以前にその監査役及び全株主に通知   くなる︒それは当時﹁あまり株主に対する義務を忠実に果した監査役にほ非常に少ない報酬しか与えられないのは 確実であっ短といわれていることから見てもこのようなことが実状であった皇を知りうる︒   締役の意志に迎合するために取締役の受託責任の遂行を公平不偏的に判断し︑株主に全てを報告することは出来な   る監査役ほ解任され︑取締役に従順である監査役が任命されることになる︒従って監査役が留任を考えるならば取   主に忠実でなくてほならないのであるが取締役によって監査役の任免が自由になされる時は取締役の意見に反対す   ︵4︶ 自由監皿査役を任命していたといわれている︒このようなことは株主の一般的利益に反する︒何故なら監査役は株   い人を任命するつもりセあることをいわずに取締役が新しい人を指名し︑且つ株主から得た白紙委任状を利用して   よってこの規程が含められる以前にほ︑取締役と監査役との間に意見の相違があったような場合その監査役に新し   ︵五六八︶三二八  警吏惑第手甲五号  

デイクシーほこの一九〇七拝の会社法の仙九条四項︑山九〇八年の会社法の一二姦四項の規程は﹁監査の真の  独立性﹂の確立への非常な進歩であるが︑伺充分でほないとしている︒もしも取締役が監査役を解任しようと思え  

ば︑株主総会で新しい監査役を指名する代りに解任しようと思う監査役の再選に反対する投票に白紙委任状を使用  

︵¢︶ することによって容易に目的を達することが出来る︒森会では後任者が決定されないために欠員が生じるが︑それ   

(20)

に対して取締役はより人の良い監査役を任命するととが出来るからである︒叉この規程ほ株主の監査役の任命に対  

する関心が薄い時にほ実際的に効果は俺いで届ろう︒   

当時における監査役の立場があまり強固なものではなかったことほ又次のような事情によっでも知り得る︒監査  

役が監査に著手しょうとする時会社の帳簿がバランスされていないことを発見するかも知れないが︑帳簿を修正す  

ることほ彼の責任ではない︒例え帳簿を整理したとしても取締役の特別の指示に基づくものでなければそれに対し  

︵7︶  て報酬を要求することほ出来ない︒従って帳簿がバランスさせられるまで監査を始めることを拒否することも出来  

る︒このような場合他の会計士が雇われて帳簿が修正されてから監査を行なう実務が英国であったのを初期の米国  

︵8︶  会計士ほ不思議に思っていた︒米国でほ当時の会計士ほこのような場合帳簿の整理と監査とを同時に行なっていた  

からである︒しかし英国でも当時このような帳徳整理の仕事を監査役として任命された会計士が行なっていたこと  

ほあったのであり︑そのような仕事を拒否したような場合にはその会計士が次期に再選されることは望めなかった  

︵︶  であろうといわれている︒このよ 

であろちノ︒  

監査役ほ彼が見出した会社の状態について株主に報告すべきことが明らかに法律により定められている︒しかし  

現実の監査役の立場を見れば必らずしも充分に保証されたものでほなく取締役に対して独立性を保ち得ない︒従っ  

て監査役が限定報告書を作成しなければならない場合でも取締役の圧力が加われば無限定報告書になったであろ  

う︒限定報告書を作成することは次期に彼の解任に結果したであろう︒更に監査役が取締役に反対してまで限定報  

告書を作成することは多くないであろう︒ディクレーは次のような事情を示している.︒良心的に義務を遂行したこ  

とによって取締役に邪魔になった監査役は取締役と争うよりもむしろその地位を去るのが普通であったといわれ   

英国蔽おける監査役の独立性と限定監査報告書  ︵五六九︶三二九   

(21)

︵五七〇︶三三〇  第三十二巻 第三・四・五号  

︵10︶  る︒このように良心的な監査役であってもあえて限定報告書を作成するよりは報告書を作成せずに身をひいて責任  

を逃れるのである︒そこで取締役は欠員を満すため自己の意に従う監査役を任命するであろうから限定報告書ほ作  

成されないであろう︒  

︵10︶ Hbidこ p.∽巴.  

む  す  び   

英国監査制度において眈二十世紀初頭は素人監査より会計士監査への移行がかなり進んでいた段階と見られる︒  

素人監査濫お小ては報告書ほかなり形式的なものであるから取締役の茸任を追求する限定報告書が作成されること  

は少なかっノたであろう︒専門家としての会計士が監査を担当するよ㌢になれば理論的には範囲区分び意見区分にお  

いて限定報告書を作成せねばならない場合のあることを会計士は知っていたに違いない︒しかしながら取締役ほ常  

にこのような限定報告書が株主に提出されるのを妨げようとする意志を持っている︒従って監査役の地位の独立性   

︵1︶   ︵2︶   ︵3︶   ︵4︶   ︵5︶   ︵6︶   ︵7︶   ︵8︶   ︵9︶  

R.H.M昌tOgOmery.Auditin閃L澄○﹀ p.−00.  LR.Dicksee.〇p.Cit..−宍戸p.∽Nゴ   Hbid: p●∽N可.  Spicer and Peg︼er︸ Op.Cit..pp.−霊〜−00↓.  

Hbid−−p.−00↓.   

LR−Dicksee.〇p● Cit: p.㌍●  Spiceh and Peg−er−Op.Citこ ppL誤〜−課.  句小BrOaker一Amer叫can AccOuntantS−Man忘︼一−怒可.pp.−笠〜−00ー.  卜.R.Dick詔e.〇p◆ Citこ p.∽∽P  

(22)

が保証されねば限定報告書を提出することは周難である︒法律は株主に監査役の任免の最終権限を与え︑且つ会社  の取締役或は役員が監査役となることを禁じ監査の独立性を保とうとしている︒しかし取締役ほ法の不備に乗じ監  査役の任免を唱由にしてい芸で会計士が監査役の職を得︑且つ保持するためには彼ほ取締役の意志に反する限定  報告書は作成せず︑無限定報告書を提出したであろう︒   英国で数多く設立された会計士協会は既に前世紀後半頃より会計士の資質を向上させるぺく努力していたのであ  るから︑独立性の精神に反して不公正に無限定報告書を作成する会計士は次第に少なくなって行ったのであろうが  ス八〇年頃は未だ悪徳会計十示横行していたといわれるからこのような会計士の完全な排除は今世紀に入って  も不可能であったであろう︒しかし良心的な会計士は取締役の圧力に屈するよりもその地位を放棄することにより  対抗したが︑更に地位を固守して限定報告書な作成すべく努力するものは少なかったようである︒それでほ不正な  会計士が利用される機会が与えられるのであり︑最後的には取締役は素人監査役をも任命し得るのであり報告書を  得るに因ることはない︒監査役が這の資格を有する会計士でなくてほならないとしたのほ完四七年の会社法で  ある︒従ってそれまでは会杜の株主が有名会計士協会の所属会計士による報告書を求め︑会計士の間に独立性が保  持されるにつれて限定報告書が有効に作成されるようになっていったと考えられる︒米国へ伝えられた前世紀末よ  り今世紀初頭にかけての英国の監査制度ほこのような問題に苦しんでいたのである︒  

英国における監査役の独立性と限定監査報告寄  ︵五七一︶三三一   

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