審 査 論 文 要 旨(日本文)
論文提出者氏名: 牧野 洋二郎 審査論文
題 名:Repression of Smad3 by Stat3 and c-Ski/SnoN induces gefitinib resistance in lung
adenocarcinoma
(Stat3および
cSki/SnoN
によるSmad3
転写抑制は肺腺癌ゲフィチニブ耐性を誘導 する)著 者:
Yojiro Makino, Jeong-Hwan Yoon, Eunjin Bae, Mitsuyasu Kato, Keiji Miyazawa,
Tatsuo Ohira, Norihiko Ikeda, Masahiko Kuroda, Mizuko Mamura
掲載誌:
Biochemical and Biophysical Research Communications (in press, 2017)
(審査論文要旨:日本語論文の場合
1,000
字以内・英語論文の場合500 words)
背景
癌微小環境での炎症は、上皮成長因子受容体(EGFR)に遺伝子変異を持つ非小細胞肺癌
(
NSCLC
)の上皮成長因子受容体-チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI
)に対する薬剤抵抗性を惹起することが知られている。
Stat3
を介するIL-6
とSmad
を介するTGF-β
のシグナル伝達 経路は癌関連炎症において重要な調節機構を担っている。しかし、IL-6 とTGF-β
のシグナル 伝達機構がどのようにNSCLC
のEGFR-TKI
に対する感受性及び抵抗性を調節するかについて は十分に解明されていない。対象と方法
Stat3
を介するIL-6
とSmad
を介するTGF-β
のシグナル伝達経路がゲフィチニブ感受性及び 抵抗性を調整する機序を解明するため、ゲフィチニブ感受性EGFR
変異(delE746-A750
)を有 する肺腺癌細胞株HCC827
を、IL-6、TGF-β1、ゲフィチニブ(EGFR-TKI)で処理し培養した。結果
Stat3
が、TGF-β シグナル伝達の強力な転写抑制因子であるc-Ski
及びSnoN
と協調してSmad3
転写を抑制し、HCC827
細胞株にゲフィチニブ抵抗性を誘導することを発見した。更に、HCC827
細胞株においては、IL-6
はリン酸化Stat3
を介してSmad3
の転写を抑制しゲフィチニブ抵抗性を誘導する一方、TGF-β は
Smad3
の転写を活性化することでゲフィチニブ感受性を 増強することを発見した。プロモーター解析により、Stat3
はc-Ski/SnoN
と協調してTGF-β
シ グナル伝達分子Smad2/3/4
が誘導するSmad3
遺伝子の転写を抑制することが示された。Smad3
はcaspase-3
等アポトーシス誘導遺伝子発現を誘導する一方でBcl-2
等抗アポトーシ ス遺伝子発現を抑制する、アポトーシス誘導因子であることが判明した。結論
本研究により、ゲフィチニブ感受性
EGFR
変異陽性NSCLC
においては、Smad3
転写抑制 を解除する方法がゲフィチニブ耐性を予防する治療戦略となりうる可能性が示唆された。東 京 医 科 大 学