ブラウン管陰極レンズにおける空間電荷の影響
(昭和50年10月30日 原稿受理)
東北大学大学院大 浦 高資
電子工学教室 隈 本 寛 〃 高 城 洋 明
情報工学教室重松保弘
安 在 弘 幸
Effect of Space Charge on the Cathode Lens of aCathode−Ray Tube
bv Takashi OURA
Yutaka KUMAMOTOHiroaki TAKAJO Yasuhiro SHIGEMATSU Hiroyuki ANZAI
The cathode lens of a cathode−ray tube has been commonly analysed in disregard o臼he existence of space charge for the oonvenienoe of computa目on.
The aim of this paper is to examine how much e∬ect the space charge has on the cham−
cterist輌cs of a oathode lens. Aocordingly, the electric potential distributions in a lells are calculated numerica工1y taking ac¢ount of the e茸ects of space charge and initial velocities oE thermions.
The results reveal that the叩ace charge located near the catllode has a considerable in一 日uence on the properties of a lens even when the beam current int飽sity is鴨ry low.
1、まえがき 2.解析手順
ブラウン管の陰極レンズの解析を行う際にはその電位 解析にあたっては,電流密度と電荷密度は最初陰極レ 分布を求めることが必要である。このため,電解槽n, ンズのモデル全域で零であるとし・モデルには初期値と 抵抗回路網,数学的手法2]−6]および電子計算機による数 してLaplace解による電位分布を与える。ついで・
値解折7}が用いられている。ブラウン管の電手ピームは Laplace解の電位分布に基づく電子軌道を求めて電流 マイクロアンペア程度であるので,電位分布の計算に際 密度・電荷密度を計算する・ この電荷密度を用いて してはLapla¢θ方程式を用い,空間電荷が電位分布に Poisson方1呈式を解き新たな電位分布を計算す』
およぼす影響は無視されてきた。陰極前面の空間におけ 以上の操作を電位分布が収束するまで繰り返すことに
る零電位線が陰極表面に接して鞍点を形成するときを遮 より、空間電荷制限状態におけるPoisson解を求める
断点4)とし,グリッド駆動電圧と陰極の電子放射面租の ことができる。数仙計算においては加速緩和法を用い
関係等が論じられている。最近電子計算機の能力増加と た。図一1に解折手順を示す。なお,電流密度と電荷密
普及により,陰極レンズの解析の精度を増すことができ 度の算出にあたっては,新しい電位によって得られる計
るようになうた。今回,電子放射の初辿度と空間電荷の 算値と1ステップ前の計算値との重み付き相加平均を用
彰暫を考虚した解折を行ったところ,ブラウン管の陰極 いることにより,この繰り返し計算の収束性の向上を計
レンズに亜要な影響を与えていることが判明した。 った。
ったので,
z=」ノ1, r=1A
グ となる。しかし,陰極近傍では解析の精度上,2方向に ッ ッ ついて2占まで〃8間隔でサンプルした。陰極側領域 ド ド
(」≦58)では,空間電荷を考慮するとともに打ち切り 誤差が卍である高近似差分を利用した。陽極側領域
一 図一2電子レンズの構成 (」≧59)で1ま 空間嗣を無視し・打ち切り誤差酬
の差分を利用した。
3.電位計算 図一3・4・5・6に求めた電位分布を示す。図におい _ て,対称軸より上の部分はPoisson解であり、下の部
図一21・醐を行っ縄子レンズを就解 ア1 あた 分はL、p1。,,解である.各図の境界条件である第・グ り・第・グリ・ドの融φ・1を一5°V・第2列ッド @リ。ド電圧は,図_3で一5・V,図_4で一8・V,
醜位φ・・を1°°°V 酬の電位を6°°°Vとした・ @図_5で一9。V,図_6で一95Vである。
また,仮想陽極を設定し,その電位にはLaplace解の
電位分布を用いた。というのは,解折上亜要である陰極 4.差分方程式
近傍蝿位は第1グリ・ドと第2列・ドの印加醍に @ここでは,騨の棚、非同次常紛耀式を例にと よってほぼ決定され源想卿醐 ア差(すなわ りぽ分方程式の誤差を瀦する。
;漂驚㌶麗‡麟‡三㌫まポ次な醐蹴
卿電位との差)にはほとんど影響を受けないと考えら 農一∫ω (3)
れるからである。対称軸から十分離れた場所での境界条
に対応する差分方程式は,
件として平行電界を仮定した。
対象となる空間が㈱称であるため円馳標(r・θ・ 』・即=嘉ω担一1−21び・+甜・+1)一丑吻 (4)
・)を用し・電位を 荷 ア とすると・P° ss°nで与えられる.關こしている区間を・≦・≦N1・と 方程式麟式で劾すことが鷲る・ すれ1まは(4)で劾されるユ次方程式がN−・個で
÷」書+嘉+;魏一一三eキ゜)(1) 嘉尋:鷲誓鷲㌶麗為㍗ ㍉N+1)2票+豊一一{… (・=o) (2) 1・…・(・)
この:㌶當方__くたぬζ鷲蕊㌶霊数蕊に定ま
霊㌶蹴麟驚漂」㌻ 鵬一゜←≧㌃) (5)
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図一3 φ冨1=−50Vでの電位分布 図一4 φピ1=−80Vでの電位分布
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㌣図一5 φg、=−90Vでの電位分布 図一6 φ,1=−95Vでの電位分布
さて.式(4)の2σ。に10(砧)を代入した式を て決まる。そこで、陰極面を出発した電子は電子の谷{こ Fourier変換すると, 達するまでは極板に垂直に進むものとする。電位の谷に
嘉(2一働一F (6)慧三::二1蕪鑑鐡㌶㌫㌫
F(ω)1ノ(エ)のFourier変換 算する。この電位の谷は電子レンズ空間で曲面を形成す が得られる。式(6)により式(5)の条件は, るが,その様子を図一7に示す。
F(ω)=0 (ω≧π昂) (7) ところで,放射される電子流は,電流密度が半径方向 と同等であることが導かれる.次式の条件, の位置に応じて大きく変化するので・そ鍍イヒ丑撫視 できる程度に分割し,それぞれについて解かねばならな
ω」‡〈ユ (8)い。ここでは,(∬,」)座標で1/5の幅をもつ円環A肩,
のもとでTaylor展開を行うと式(6)は,
Jn:0≦1∬1<ユ/10
一ω2[1十〇ω211り11〃==F (9)蠕ける.ところで、式(3)をF。u,i,,変換すると, 』1・:(・告)≦1∫1<丁(・÷÷)[∫≧・]
一ω2γ=F (10) に分割して解折した。
γ(ω):式泊のFourier変換 放射電流密度」は,谷電位γ同を越えることので となる。結局,式(9)と式(10)より, きる初速度をもつ電子で形成されるので,Maxwe11・
γ=[1+0(ω・丑り]W (11) B・1tzm・・nの分布則より・
㌶竃鷲霊鑑隠と霊:;ノ, 属…(一蒜γ・) (12)
周波数以上の麟をもたないという条件下で1ま鋼剛 」・・齪制限電縮度(1・79×1° A/mコ)
で作られた差分耀式は、・(ω胸の誤差を許してその τ・繍鍵(116醜)
徴分方程式と等価である。 となる自
放射電流により空間電荷が決まり,電位が決まり,電
5・放射電流 子軌道が決まるため,この放射電琉の誤差の評価は重 空間電荷制限状態において,陽極に達する電子は電位 要である。平行平板モデルにおいては,L加gmuirが 解折解を求めている。 シミュレーションの値と
陰 極
I Langmuirの解折解とを比絞するζとによって
電 界
! 電罐度の鍵を勅たとζろ汰蹴密度(L8
/ kA/m2)の場合で0.4%,小電流密度(190 A/
/−V・〔V〕 mりの胎で2%であった.このことよりぷ
/ 電子 記のよう蜘手銃のシミ評一シ・ンで得られる 1谷 軌道 讐利用することができると考えてよいであろ
|曲 醐した6っの状態}端搬銃の放鯛流
1 を図一8に示す。また,変数を第1グリッド電圧
1面 φ・・から駆動麺噸翻・換えて示し細 1 が図一9である・
1 .
1 6・む す び
1
1−」一・1 @ 位分布を示した.これらの図より,ピー蝿琉が
図_了 電位の谷曲面 極めて小さい場合でも陰極前面の電位分布は放射
J 陽極電流が400〜0.1μAまでの4状態での電
100 1000
陽 電 極
言妃
P0 匂 電
〔副 流 1μA〕100
・±,。 .,。 .,。 .,。 .,。 101 10 100
第1グリッド1Er1三〔v} 駆三同グリッド電圧(v〕
図一8 隔極電流一第1グリッド電圧特性 図一9 陽極電流一駆動グッド電圧特性
電子の影唇を受けるのでLaplace解とは異っている。 号(1967).
したがって,電子軌道や球面収差の解}斤にあたっては陰 2)K Sch】esinge「:1 R E 528
極前面の空間電荷の影響を十分考慮する必要がある。し 3) 別所順吉:NHIC技術研究・第15巻4号(1963)・
噸極から遠ざかっ御グリ・ド附近まで達すると 4)学鷺漂鵠竺:九州工業大蹴報告(工
空間電荷の縛{ま小さくなる・ 5)G.Li・bm・nn・P・・c.1. R. E.,33(1945).
6) G.Liebmann:Proc.1. R. E.,34(1946).
参考文献 7)隈本寛,廉原俊一:九州工業大学研究報告(工
1)囲本寛,酬工嶽学確鮪( 学工学)、第17)・第18号( 96日)・