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保育者養成校におけるピアノ指導に関する一考察

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Academic year: 2021

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保育者養成校におけるピアノ指導に関する一考察

福 地 友 子

A Consideration about Piano Instruction in a Caregiver Training School

Tomoko FUKUCHI

Abstract

Children’s voluntary expression and creativity can be developed more wealthy with supporting by childcare persons.

Although piano performance skills are very important elements, through this study, we found obviously that almost all of our school’s students who want to be a childcare person are beginners in terms of piano performance skills.

In this essay, I would like to clarify which kind of situation the students, who study for four years in Caregiver training course, are placed and what kind of problems they have, and consider what effective instruction ought to be and remedies for them for the future.

Ⅰ はじめに

 子どもたちは生活や遊びの中で、「面白い」・「美しい」・「楽しい」などの様々なことに出会い、

心を動かし、そこで感じた思いを様々な方法で表現する。

 保育所保育指針・保育内容「表現」の目標には「感じたことや考えたことを自分なりに表現する ことを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにすること」が示されており、子ど もたちの自発的な表現や創造性は、保育者の援助によって更に豊かなものへと発展させることがで きる。

 そうした中、保育者を目指す学生にとって、子どもの音楽表現におけるピアノの技術は、子ども の「発達」・「遊びの展開」・「豊かな表現」を支えるために必要不可欠の要素となる。

 しかし、本学で保育者を目指す学生のほとんどが、入学時までにピアノなどの鍵盤楽器を学んだ 事がない、もしくは少ないなど、ピアノ技術に関しては、ほぼ初心者という実態が明らかとなった。

 このような初心者の学生たちが卒業までの4年間で、保育を支えるピアノ演奏技術を習得しなけ ればならない。

 今回の調査を通して、保育者養成課程でピアノを履修する学生がどの様な状況にあり、どの様な ことを難しく感じ、そしてどの様な課題を抱えているのかなどを明らかにした上で、今後に繋がる 効果的な指導のあり方やその改善策について考察する。

Ⅱ 調査対象と方法

   調査対象 :保育者養成課程で学ぶ2016年度後期音楽表現授業履修者          音楽表現Ⅰb 1年生46人

   回答者数 :44人

(2)

   調査実施日:2016年10月上旬

   調査方法 :選択方式アンケート(自由記述も含む)

Ⅲ 調査対象者の授業の概要

 本学では保育士や幼稚園教諭などの資格取得を目指す学生を対象に以下の音楽の一斉授業とピア ノの個人レッスンを開講している。

■音楽表現一斉授業

音楽表現Ⅰab:声楽の発声法の基礎、手遊び歌の実践、子どもの歌を教材に、曲解析法、表 現法、音楽理論・読譜基礎(音符・速度・曲想記号など)ついて学習する。

音楽表現Ⅱab:発声法、手遊び歌の実践、子どもの歌表現法の向上、音楽理論・伴奏法基礎

(コードネームなど)、子ども合奏演奏指導法、ボディーパーカッションなど について習得する。

音楽表現Ⅲ :伝承遊び、子ども楽器合奏、リズム遊びなど、より実践的な方法で子どもの 創造性を高める表現法の研究を行う。

音楽表現Ⅳ :主に子どもの歌を教材に、伴奏付け、指導法について学ぶ。

 音楽表現Ⅰab、Ⅱab、Ⅳについては、一斉の授業とピアノ個人レッスン20分の両方の履修で単 位取得となる。音楽表現Ⅰab、Ⅱabは保育士資格・幼稚園教諭免許取得の場合は必修である。

■音楽表現ピアノの実技について

開講年次 科 目 名 時 間 必修・選択 内  容

1年前・後期 音楽表現Ⅰab 45分 必修 音楽基礎理論(楽語、音符、音程)と声楽(発声 法、子どもの歌解析)、手遊びうた、リズム練習 2年前期 音楽表現Ⅱa 45分 必修 音楽基礎理論(コードネーム)と声楽(発声法、

子どもの歌表現法)、手遊びうた、リズム練習 3年前期 音楽表現Ⅲ 90分 選択 ピアノ連弾発表、伴奏法、子ども楽器合奏、伝承

遊びなど

3年後期 音楽表現Ⅱb 45分 必修 ピアノ伴奏法、音楽理論、子ども楽器合奏、合唱 4年前期 音楽表現Ⅳ 90分 選択 子どもの歌伴奏法、指導法など

科 目 名 開講年次 期 間 レッスン内容 試験(履修最終時に1回実施)

音楽表現Ⅰa 1年前期 個人レッスン

(20分×15回) 音階、バイエル、ツェ ルニー等の教則本、

子どもの歌伴奏

音階(ハ,ニ長調+カデンツ)、

バイエル、ツェルニー、小品曲、

子どもの歌伴奏 音楽表現Ⅰb 1年後期 個人レッスン

(20分×15回) 音階、バイエル、ツェ ルニー等の教則本 子どもの歌弾き歌い

音階(ハ,ニ,ヘ,ト長調+カデンツ)、

小品曲(3分程度)

子どもの歌弾き歌い

(提出した5曲の中から1曲指定)

(3)

 音楽表現Ⅰab・音楽表現Ⅱab・音楽表現Ⅳのピアノの個人レッスンでは、各学生のピアノの進 度に基づき、個人指導により学ぶ。

   ・音楽表現Ⅰab:ピアノ教則本・子どもの歌を教材とし、読譜力・基礎奏法の習得を目指す。

   ・音楽表現Ⅱab:保育音楽に必要な演奏技術の向上を図る。

   ・音楽表現Ⅲ :ピアノの連弾演奏を課題とし、授業最終日には発表会を行う。ピアノの個 人レッスンは無く、一斉授業の中でペア毎に4回(譜読み1回、両手弾き 1回、仕上げ2回)レッスンを実施する。

   ・音楽表現Ⅳ :保育音楽に必要なピアノ技術のまとめとして初見試奏・演奏法、子どもの 歌伴奏法・指導法の仕上げを行う。

 ピアノの個人レッスンが、2年前期音楽表現Ⅱa終了後から3年後期の音楽表現Ⅱb開始までの 約1年間開講されないこともあり、全くピアノに触れない学生も数多く見受けられる。3年後期の 11月の幼稚園教育実習ではピアノを弾く機会も多く、臨機応変に対応できずに戸惑う学生も少なく ない。

 音楽表現Ⅲ授業の最終時に開催するピアノの連弾発表会では、そのねらいとして「ピアノを練習 することを習慣付けること」、発表会で演奏する事を目標に友人と共に取り組むことで、「楽しさを 感じてもらうこと」を設定している。

 その結果、苦手意識の強い学生も友人と一緒に練習を重ね、教え合い・高め合い・楽しみながら の取り組みは技術力の向上、意欲的な学びへと繋がり、一定の成果を上げていることも特記してお かなければならない。

1)アンケート結果

 まずは本学学生の実態・状況を知るために以下の質問項目を設定し音楽表現Ⅰbを履修する1年 生46人を対象にアンケートを実施(回答者数:44人)

   Ⅰ 鍵盤楽器の学習歴

音楽表現Ⅱa 2年前期 個人レッスン

(20分×15回) 音階、バイエル、ブ ル グ ミ ュ ラ ー、 ギ ロック等の教則本 子どもの歌弾き歌い

音階(ハ,ニ,ヘ,ト長調、

        ハ短調+カデンツ)

小品曲(3分程度)

子どもの歌弾き歌い

(提出した5曲の中から当日1曲指定)

音楽表現Ⅱb 3年後期 個人レッスン

(20分×15回) 音階、バイエル、ブ ル グ ミ ュ ラ ー、 ギ ロック等の教則本 子どもの歌弾き歌い

小品曲(3分程度)

子どもの歌弾き歌い

(提出した5曲の中から当日1曲指定)

音楽表現Ⅲ 3年前期 一斉授業(15回)

のうち連弾指導 は4回実施

子どもの歌伴奏法、

ピアノ連弾曲、

わらべ歌

ピアノ連弾発表会

音楽表現Ⅳ 4年前期 個人レッスン

(20分×15回) 初見視奏、

伴奏法、小品曲 子どもの歌弾き歌い

初見試奏

小品曲(3分程度)

子どもの歌弾き歌い

(課題曲の中から1曲選曲)

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   Ⅱ 現在の練習頻度    Ⅲ 1回あたりの練習時間    Ⅳ 個人所有の鍵盤楽器の有無    Ⅴ 練習環境 (複数回答有り)

■Ⅰ 入学時までの鍵盤楽器(ピアノ、エレクトーンなど)の学習歴

 毎年入学時には音楽学習歴について簡単なアンケートを行っているが、例年は音楽学習歴が10年 を超える学生は全体のほぼ1割程度に留まる中、今年度の1年生は25%に達しているのが大きな特 徴となっている。しかしアンケート対象者の大半は、5年未満に留まっており、ほぼ初心者である ことがわかった。経験者においても、習った年数や学習内容も差異があることから一概には判断で きず、学習歴と習熟度が必ずしも一致するとは言い切れない。

■Ⅱ 1週間あたりの練習頻度         ■Ⅲ 1回あたりの練習時間

なし 22.7%

1年以内 6.8%

10年以上 25%

4年から5年未満 36.4% 2年〜3年未満 9.1%

5日以上 6.8%

4日〜5日 6.8%

1日〜2日 11.4%

2日〜3日 4.5%

3日〜4日 70.5%

1時間〜2時間 25%

30分〜1時間 41%

2時間以上 0%

30分以内 34%

(5)

 練習回数は「3日〜4日」が70.5%と多く、「4日以上」も含めると84.1%となっている。

 練習時間は「30分〜1時間」が回答者の41%と最も多く、次に多いのが「30分以内」が34%とい う結果となった。学生には、練習状況を毎日記録し「週3回」もしくは「月12回」をノルマとし、

試験時に練習・レッスン記録用紙の提出を義務付け、評価に反映させている。

 このことは練習回数の確保を促し、技術力の向上に繋がっていることが推察できる。

■Ⅳ 個人所有の鍵盤楽器の有無

 練習環境については、アンケートを実施した結果、個人で鍵盤楽器を所有しているのが全体の 81.8%に当たる36人と、意外にも所有者が多いことが分かった。

■Ⅴ 練習環境(複数回答有り)

 アンケート実施前は学生の練習頻度や時間が少ないのではないかと推論していたのだが、ほぼ自 由に使える学内の練習室の使用状況を踏まえ、週に3〜4回取り組んでいる数字も確かに頷ける結 果となった。

 練習量の少ない学生は以下のような理由を上げている。(アンケート結果・自由記述より)

    ・授業、部活、習い事、自動車学校通いなどで十分な練習時間が確保できない。

    ・身近に練習できる楽器がない。

    ・自宅・寮の練習時間の制限がある。

    ・平日は帰宅が遅く、休日しか練習できない。

2)課題-Ⅰ

 保育者を目指す学生にとって、子どもの自発的な創造性や意欲を持って行える表現活動を支え高 めていく為には学生自身の技術力の習得が求められる。

 このことは、子どもたちの音楽表現を豊かに育てるために保育に携わる者として常に念頭に置い ておかなければならない。

 本学の学生において学内や家庭での環境がある程度整った環境にある以上、そうした問題意識を 常に持ち、自らの課題として向き合う必要がある。

 卒業後は更に時間的な制約を受けることは必至であり、学生時代の取り組みが保育現場の実践力 の大きな蓄えとなり今後の大きな支えともなる。指導者は限られた時間の有効活用の必要性を説き、

学生は時を惜しんで取り組んでいくことが何よりも重要となる。

個人所有鍵盤楽器 81.8% 18.2%

場  所 人  数 割  合

◦ 大学 35 79.5%

◦ 大学寮 5 11.4%

◦ 大学・寮 5 11.4%

◦ 自宅 35 79.5%

◦ 自宅・大学 25 56.8%

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Ⅳ 調査対象者の音楽の基礎知識と技能

1)アンケート結果

 ピアノを演奏するための音楽基礎知識・技能についてもアンケートを実施した。

   Ⅰ ト音記号・ヘ音記号について    Ⅱ 音符・休符について

   Ⅲ 音楽記号について    Ⅳ 弾き歌い

■Ⅰ ト音記号・ヘ音記号について

 「ト音記号」・「ヘ音記号」についてはほとんどの学生が理解し弾くことができるが、中には読譜 に必要以上に時間を要したり、憶えないと弾くことができずに全ての音符に音名を書かなければな らない学生も散見される。特に「ヘ音記号」は難解と捉えていることも窺える他、主要三和音を主 に使用する簡易伴奏では、同じ和音を色分けグループ化し視覚として判別できるよう工夫を加える 学生も存在する。

 そして音符の加線が増えてくると、数えながら読む学生がほとんどであることが明らかとなった。

■Ⅱ 音符・休符について

 学生の59.1 %が音符・休符の長さについては理解し弾けるものの、両手で弾くのが難しいと感じ る学生は56.8%、また片手だけでも難しいと思っている学生は13.6%存在する。

 理論の授業では「音符」・「休符」の関係性についても学習するが、拍の均等分割などの要素も加 わることなどから理解は難しいと認識し、さらに演奏に結び付けることについては重荷となってい る。

 「音符」・「休符」の長さについては、「音符」・「休符」の形の違いで長短を理解しながら、それを 感覚として捉え、反射的に結び付け演奏できる技術の習得が求められている。

 読譜力は音楽技術の基礎であり、できるだけ早い時期に音の位置が即座に認識ができるような練 習、問題への取り組みも課題として上げられる。

 4年次のピアノ初見視奏の授業でも学生が最も戸惑うものの中に「リズムの読み取り」があり、

初歩的な「付点のリズム」でさえ、かなり理解していない状況も存在する。

ト 音 記 号 ヘ 音 記 号

◦ 楽譜を見てほとんどの音は弾ける 88.6% 70.5%

◦ 音と鍵盤を結び付けることが難しい 29.5% 34.1%

◦ 階名を記入する 18.2% 18.2%

◦ 五線を数えることで音が判る 43.2% 40.9%

◦ 憶えないと弾けない 11.4% 18.2%

◦ 理解し弾ける 59.1%

◦ 片手は弾けるが、両手は難しい 56.8%

◦ 片手だけでも難しい 13.6%

(7)

 さらに複雑な「リズムパターン」・「シンコペーション」などの感覚を養うためにも、現在授業の 際に毎回実施している「リズム視唱」や学生が楽しみながら取り組む「ボディーパーカッション」、

分かりやすい言葉をリズムに当てはめた「ヴォイスパーカッション」なども積極的に授業に取り入 れ、「リズムパターン」を感覚で覚え再現できる技術の習得が課題として上げられる。

■Ⅲ 音楽記号について

   (forte・フォルテ、crescendo・クレッシェンド、ritardando・リタルダンドなど)

 「音楽記号」については、「crescendo・クレッシェンド」・「ritardando・リタルダンド」など頻 繁に使われている楽語は認識し、演奏にも反映しているものの、それ以外のものは、意味も十分に 理解しないまま気にも留めず、演奏していることも多い。さらに「音高」・「リズム」・「旋律」など 読譜したものをなぞることが精一杯な上、演奏技術が未熟で指での表現が難しい学生もいる。

 「曲解析」を踏まえ、どの様に感じ、どの様に演奏したいか、その曲を通して何を伝えようとし ているかを常に思い描く必要がある。そしてそれらを実現するためにはどの様な表現方法が適切な のかなどを模索する方向付けが求められている。

■Ⅳ 弾き歌い(複数回答可)

 上記は保育現場の音楽活動で最も必要とされる音楽技術の「弾き歌い」についてのアンケート結 果である。この中では「右手・左手で弾きながら歌うことができる」・片手で弾きながら歌うこと については「できる」と答えた学生が目立っている。

 また「右手」は、ほとんどの場合は旋律を弾くことが多く指の動きが慌しいため「少し難解」と 回答している一方、左手は跳躍が少なく、手の動きがほぼ固定される主要三和音による簡易伴奏も 多く、左手の方が「弾きながら歌い易い」と捉えていることが分かる。

 「両手で弾きながら歌うことができる」は、読譜した音と鍵盤の一致で精一杯の学生も多い中、

歌うことが加わり、その上大きな声で歌いながら弾き歌いをすることは、未習熟の学生にとって当 然のことながら難易度が上がることになる。

 「詩の内容を意識しながら弾き歌いができる」については、曲解釈を踏まえた表現となると、技 術力の裏付けも必要なことから、さらにハードルが高くなることは言うまでもない。

 楽譜を読み取り、的確な指使いで弾くことに集中すると、腕や手首、肩などに力が入り、上半身 が硬直し、呼吸が浅くなり、声も出づらくなる傾向が顕著になることから、ピアノを「弾くこと」・

「歌うこと」のどちらも身体の脱力を意識した呼吸法が「弾き歌い」の完成度を高めるポイントと もなっている。

 このようなことから伴奏する際は、簡単なアレンジのものを選択する一方、もしくは自分でアレ ンジ力を向上させる努力も求められる。そのためには、手のポジションを固定し、できるだけ跳躍

◦ 意識して弾いている 54.5%

◦ 時々意識して弾いている 50.0%

◦ 意識せず弾いている 13.6%

◦ 右手で弾きながら歌うことができる 70.5%

◦ 左手で弾きながら歌うことができる 81.8%

◦ 両手で弾きながら歌うことができる 31.8%

◦ 大きな声で弾き歌いができる 15.9%

◦ 詩の内容を意識しながら弾き歌いができる 4.5%

(8)

進行を避ける、主に一小節を1ポジションとなる主要三和音を使用した簡易伴奏法を修得すること も具体的な対応策となり得る。

 またピアノ演奏技術の基本となる「指使い」については、規則性を無視している、とても弾き辛 そうな状態となっていること、そして左右の指番号の把握と読譜した指番号の一致に手間取ってい るのが実態である。まずは楽譜に指番号が示されてあれば必ず守り、基本的な運指の仕方を覚え、

習熟を図ることが先決である。そしてメロディーを予測し、どの指使いが音楽をスムーズに運ぶこ とができるかを考えながらピアノ演奏技術を向上させていくことが肝要である。

 さらに難しい運指の部分練習を繰り返し行い、指に覚えこませることも取り組みとして忘れては ならない。

 詩の内容を意識し演奏するためには、「音読」を繰り返し行うことは、歌詞に込められた思いを 理解することができる重要な練習法である。また子どもの歌は有節歌曲形式も多いため、メロディー を弾きながら歌い、言葉を当て嵌めること、メロディーと歌詞を一致させる弾き方が不可欠の手段 となる。さらに弾き歌いをする際は、子どもたちが心地よく歌えるような歌唱法・発声法を意識し なければならない。保育者は歌詞に込められている情景や思いを理解し、子どもたちがその歌を歌 いたいと思う意欲を引き出せるような表情や声色で表現することは重要なポイントとなる。

 そのためにも保育者は弾くことに余裕を持って取り組むことが望ましく、その上で曲の持つイ メージを具現化するために、リズム感・フレーズ感を大切に正確なメロディーを示すと共に拍子感 のある伴奏を心掛ける必要がある。

 「弾き歌い」の役割は、生き生きとそして伸び伸びと歌う子どもたちの表現を支えること、適切 な速さや音量のバランスなどにおいて配慮できる保育者の技術力、豊かな表現力が重要となる。

2)課題-Ⅱ

 保育者養成校におけるピアノ初心者の学生は、ピアノの技術の向上についてどのように捉えてい るのか現状をまとめ、課題と今後の対応策を考察する。

  ピアノ上達法について(学生アンケートからの抜粋)      

  (調査対象:音楽表現Ⅰb 1年生44人)

      ・練習する時間を増やす。

      ・毎日少しでも時間を作って弾き、音符に指を慣れさせる。

      ・自分の意思をしっかり持った演奏を心掛ける、目標を立てる。

      ・片手練習を強化する。

      ・苦手なところを重点的に繰り返し練習する。部分練習する。

      ・メトロノームを使って練習する。

      ・段々弾けるようになったら強弱や速さを意識して弾く。暗譜する。

      ・沢山の曲に触れて音符に慣れる。

      ・苦手意識を減らす、少しずつできるところを増やし、指に覚えさせる。

      ・歌いながら弾く練習をする。

      ・分からない時はピアノの上手な友達に教えてもらう、先生の指導を受ける。

      ・ユーチューブ等の音源を聞き、曲の特徴や雰囲気を掴み、リズムの分からない所を勉強する。

      ・教えてもらったところや改善点はすぐに練習、メモ化を図る。

      ・毎日努力する、目的意識をもって練習する。

      ・休符の長さを意識してリズムをとる。速くならないようにする。

      ・曲を練習する前にスケールなどで指をならしてから始める。

      ・きれいな音がでるような弾き方を意識する。

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      ・ピアノを弾くことを楽しいこと思いながら取り組む。

      ・やれば出来ると自分自身に言い聞かせる。

      ・人前で弾く機会を数多く設ける。

      

 学生に対するアンケートでは、練習時間の確保、目的意識を持って練習するなどの取り組みに対 しては、意欲的な意見も数多く寄せられた。

 「YouTube」など身近な音源の利用や身近な人に教えて貰うなど問題解決への手段も考えており、

ピアノ技術の向上を目指し臨んでいることは間違いない。

 保育者養成校におけるピアノ初心者の学生に対して今後の課題として、以下の3点に集約される。

   ⑴音楽基礎力・読譜力の向上

      ・ト音記号、ヘ音記号軸となる音を覚え、反射的に音を認識する。

      ・リズムパターンを感覚で覚え、再現する力を付ける。

   ⑵ピアノの演奏技術の向上

      ・指使いの基本的な運びを覚える。

      ・主要三和音など簡易伴奏法の技術を取得する。

   ⑶弾き歌いの向上

      ・子どもたちが心地よく感じられる歌唱法を学ぶ。

      ・リズム感・フレーズ感を大切に、メロディーを演奏する。

      ・詩の解釈を基に表現法に工夫を加える。

Ⅴ 終わりに

 保育者養成校の指導者は学生に対し「子どもたちの音楽表現を豊かに育てるためには、まずは保 育者自身が豊かな表現力を身に付けることが大切であること」を常に意識させ、技術力向上のため のモチベーションを維持・発展させていく取り組みがある。

 ピアノによる音楽表現は、保育者養成課程における保育表現技術で必要不可欠な要素であり、指 導者は保育士を目指す学生たちにその技術を習得させるために、音楽の基礎知識である読譜力や技 術力の向上を図るための学習を進めている。

 しかし、そればかりに捉われてしまうと音楽表現の意義・楽しさなどを理解する前に、学習意欲 そのものが削がれてしまいかねない。

 課題-Ⅰ・課題-Ⅱを踏まえ、今後の対応策として本来の目的を達成させるための具体的な施策 として全体学習だけに留めることなく、個々が置かれている状況に応じた、本学の特徴となってい る「個人レッスン」・「個別の対応」を通して指導者自身が学生と向き合い、より具体的な指導や適 切な方向付けを講じていくことが重要と考える。

 そして、指導者は子どもたちの創造的で個性的な表現力を育成する音楽表現活動、その中でも「弾 き歌い」については、学ぶ時間を確実に担保し、学生に「弾き歌い」が持つ価値・重要性を再確認 させた上で、ピアノの演奏技術を習得・向上させていく必要があることを改めて提起しておきたい。

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《参考文献》

1)諸井サチヨ 保育者養成校での『弾き歌い』指導に関する一考察         〜学生のピアノ技能に関する実態調査を中心に〜

2)桐岡亜由美  寺田陽子  森本麻衣子  難波正明

  保育士および幼稚園・小学校教員養成課程におけるピアノ指導に関する考察        -学生の実態調査を踏まえて-

3)三森桂子  音楽表現  一藝社

参照

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