奈良教育大学学術リポジトリNEAR
器機計画に関する生活空間構成の研究? ―都市住 居における家具空間―
著者 奥谷 多作
雑誌名 奈良学芸大学紀要. 自然科学
巻 11
ページ 63‑71
発行年 1963‑02‑28
その他のタイトル A STUDY ON LIVING SPACE FOR INDUSTIUAI DESIGN (1) ―Especially for interior space of city apartment rooms―
URL http://hdl.handle.net/10105/3483
器機計画に関する生活空間構成の研究1・
1iI言i."r:二・:.:: ここl∴ j 一
奥 谷 多 作 (技 術 科 教 室) (昭和37年9月29日受理)
A STUDY ON LIVING SPACE FOR INDUSTIUAI. DESIGN ( i )
‑Especially for interior space of city apartment rooms.蝣
Tasaku OKUYA
(Depertment of ttGizyutu"‑ Industrial art′s Education)
Abstract
Now we can see our conception of space remarkably developing. This may be more clearly described when we say that the human life going on actively in actual society is making old ideas rapidly change. The chief plot of functionalism seen from its method was formerly considered that we should analyze its object functionally and then construct it again. Lately so important has come the problem of the design of living space, the problem how a human living can be arranged in space, namely, the problem of planning. This study is intended to research how minimum (or maximum) space and function is necessary for ind‑
ividual movement and living, and for the arrangement of furnitures and other equipments.
Also a full study is seen here for what mechanic for human living should be had to say nothing of measurement of human scale.
1.緒 論
いま、私達の空間概念は大きく変りつつある。いや、むしろこの具体的に活動する現実の人間 生活から逆に空間概念を変えさせられようとしているのだというほうがよい。機能主義の主要な 方法的意図は、対象を機能的に分解し、それを再構成することであった。人間はたえず重力の働 いている地球の上で、両足で立って生活している。人間の生活は水平面で展開される。したがっ て人間の生活を空間的に配置するという生活空間のデザインの主要な問題はプランニングとなT, て表れて来る。個々の動作、個々の生活過程のために最小限(または最大限)どれだけの大きさ の空間や機能が必要か、人体の寸法測定を基礎に、生活機器のスケ‑ル、さらにそれらを配置し た空間の寸法が研究されていく。また材料の有効な生産と使用のため、すべての材料や生活空間 の共通尺度となる基準寸法(モデユ‑ル)をみつける研究も大変意義をもって来る。このような 視点のもとに都市住居の室内空間の分析から、生活空間の質的な成長過程の実態をつかむことを 目的として、生活器機のデザインを推進する手がかりを得ようとしたものである。本調査につい
64
奥 谷 多 作
ていろいろ御指導をいただいた東京教育大学工芸建築学教室松原郁二教授、同高山正喜久講師、
建設省建築研究所今野啓一主任研究員に対して心から感謝いたします。なお、この調査を実施す るに当り、日本住宅公団、東京都住宅公社、東京都住宅局の御協力を附記します。
2.訝査の対象
都市における生活空間を代表させるものとして、三事業主体よりなるコンクリート造共同住宅 をとりあげた。その建設地は次のようになる。
住宅公団東京支所 東京都武蔵野市 東京都杉並区荻窪 東京都住宅公社
東京都住宅局
東京都世田谷区祖師ケ谷 東京都港区青山北町 東京都江東区亀戸町 東京都目黒区碑文谷 表1.調査住戸(A)
緑ヶ丘アノヾ−ト 荻窪 アパート 祖師ケ谷アノヾ−ト 青山アノ1−ト 亀戸アパート 碑文谷アノ1−ト
戸型番号
事 業 主 体
1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3
1 1 1 1
戸 型 の 名 称 1調査戸数1建設戸数 社
営 営 社 社 営 営 営 社 団 団 団 団
公 公公 公
宅 宅宅 宅
住 公 公 住 住 公 公 公 住 公 公 公 公
3
0
0
∩
︶
0
0
8
n
U
1
0
3
7
2 2
3
3
1
ユ
l
l
i
3
1
2
2
6 n U 8 4 8 8 0 0 8 2 3 6 4 0 0 8 6 0 0 0 1 3 1 2 6
表2.調査住戸(B)
地
(32)
≡;≡]≡誓;::;;:
表1における、各戸型を次の四種類に分類整理し他の調査との比較検討に便ならしめた。
1DK(またはLK):1個の就寝室(タタミ)とダイニングキッチン或はリビグキッチンをも つもの。
:2個の就寝室と台所をもつもの。
:2個の就寝室とダイニングキッチン或はリビングキッチンをもつもの。
:3個の就寝室と台所を持つもの。
表1において、戸型2DKの調査戸数が 多いのは、最近各事業主体によって計画 されるものの中でこの型が多いので故意 にこの型を多く選び、他の型についても 建設個数の割合になっている。調査住戸 の平面は別表、「調査住戸の平面」を参 照。
表3.調査戸型・単位戸
1DK 2K 2DK 住 宅 公 社
公 営 住 宅 公 団
合 計
3 3 31 10 2 8 6 0 4 0
4 8 2
7 8 6
2
2
3 5 9 110 2 2 2 24
3.調査 の方 法
調査に当って、ランダムに選び出した住戸群の中から、管理者及び居住者の代表と事前の打合 せを重ね調査住戸を決定した。二名のチームで調査票A、Bを用意し、A票には調査者の聞き取 り記入とし、B票は調査戸型の平面図に家具配置及び寸法を記入した。昭和34年4月より始めら れ昭和36年2月に調査を終え整理した。プライバシイにわたる調査内容を持つため訪問した住戸 の全数の約70%の完全な資料が得られた事は大変好結果であった。224戸については、家具容積
・収納内容等についても必要以上具体的に聞取りの出来た完全な資料である。
4.調 査 の 結果
(A)居 住 者
居住者の家族構成は、大体において夫婦と未成年男女子或は、成年男女子を含む単位家族で、
配偶者を欠く欠損家族や、直系以外の親族又は同居の成年男女子で構成される家族は、わずかに 公営アパートに見られるが他にはほとんどない。入居前の住宅は70%以上が独立家屋から転居し 木造の私営アパートや間借り住居よりの入居例が少なく、コンクリート造アパートに入居するた め以前の家具を整理して入居した例が多く見られる。家具に関しての基礎的条件として、家族数 と各戸の専用居住面積を求めた。(表4)家族数及び成人率、居住専用面積は調査戸の平均値でア
表4・家族構成と居住規模の平均値(A)
戸 数 家族数(成人率) 居住専用面積1人当 居住専用面積
4 8 2
7 8 6
3.08人(2.5) 30.08 m2 9.7 m2
4.31(3.7) 38.78 9.0 3.23 (2.8) 33.4 3 10.3
66
奥 谷 多 作
パート全体のものでない。居住専用面積は、アノ1−トの共用面積(階段等)を除き更に家具配置 上有効と思われないベランダ等を除いて居住面積とした。(表4)において、平均家族数は公営、
公団、公社の順になるが、公社の家族年令は最も若い数字を示している。1戸当りの平均居住専 用面積はやはり公営の数字が大きく目だつが、1人当り平均居住面積は、公営アパートが最も小 さく10m2を割りこれは1人当りの居住面積として余裕のあるものでなく、地方自治体の住宅政策 の一面を表わしている。戸型別に住居規模をまとめてみると、(表5)2Kの戸型が家族数が最も 多く、この型は公営のものに多く見られ家族構成も複雑なものはほとんどこの型に集っており、
入居条件等によってこの型は低所得者のみが入居できるような形式になっているためで、1人当 りの居住専用面積も最も小さい。ここで用いた成人率数とは、12才以下を0.5として数えた人数
表5・家族構成と居住規模の平均値
戸 型
戸 数 家族数(成人率) 居住専用面積 1人当り居住専用面積K K D K D K
1 2 2 3 3 9 0 23 5 1 2
1
2.9人(2.3) 28.08m2 9.6m2
3.8 (3.2) 34.43 9.0 3.7 (3.1) 36.95 10.0 3.5 (2.9) 42.39 12.2
である。
(B)所持家具量
所持家具の種類を、収納家具、台家具、坐家具、器具に分類し、これを戸型別に整理してみる と、収納家具の個数が最も多く、器具がこれについで坐・台家具の順になる(表6)収納家具に ついては、戸型2DKにおいて最も多く
なるが、各戸型においても多く持たれて いるものである。収納家具の種類を品目 別にみると、書棚(本立ても含む)が 最も多く、整理ダンス、洋服ダンス、食 器戸棚、和ダンスの順になるが、80%以 上各戸が所持する家具は次のようなもの
表6・家具別一戸当りの平均所持個数
1DK 2K 2DK 3K
1
9
9
1
エ 4
5
7
3 6
3
4
6 4
0
2
4 0 7 7 5 6
3
4
6 3
0
6
1
2 0 n J 1 7 4 5 7 4 7 6 8 5 1 5 7 5 3 2 4 5 4 9 4 4 9 6 2 5 2 4 6
具 具 具 具
家
家家納
収台坐器
がある。
収納家具−整理ダンス、洋服ダンス、食器戸棚、書棚 坐家具一一′J叫、す
器 具−ミシン、鏡台、ストーブ、火鉢、こたつ
コンクリート造アパートの様に従来の住宅と変った生活形式を必要とするものに入居した場合そ の形式に適した家具が今まで所持していた家具に補充されるであろう。入居後購入された家具で 最も多いものは坐家具であり、主なものをあげると次のようになる。(全調査戸数224戸)①小い す(200個)②折たたみいす(65個)③テレビ④洋食卓⑤肱掛いす⑥洗濯機で、小いす等 は、生活様式が立式になったためで、特に戸型では、ダイニングキッチンを持つ2DKに多く見
られるが、意外に洋食卓が少ないのは公団の戸型においては、簡単な洋食卓がビルトインされて いるからで今後の室内空間を計画する場合に大いに参考にしなければならない。現在所持してい る家具に補充又は生活を豊かにするために今後設えたいと思われる家具については次のものが目 立っている。
収納家具−冷蔵庫、整理ダンス 台家具−坐卓
器 具−掃除機、洗濯機
全調査戸の成人率と所持家具数を整理してみると(表7)のようになり、中でも家具面積を広く 占める収納家具のうち、和、整理、洋服、茶ダンスの1戸当りの所有数を成人率別にみると、(表 8)所持家具数は成人率3.0までは、成人率に伴なって大きくなるが、それ以上になるとほとんど が、かえって低くなっている。これは現在のような小規模住宅における居住面積と家具面積の競 合を示しているようにも恩われる。また、このことによっても1人当りの家具面積は予測するこ とが困難なことを物語っていて注意したいことである。
cc)家具空間
所持家具は置かれている室の広さ、
配置すなわち戸型によって異なってく る、各戸型の室位置を、台所の流し台 に近い室から、P、Q、R、の順序に 呼び、家具の配置を見てみると、用途 によっていろいろな配置を工夫してい るが、タタミの室にマットを敷いて立 式の生活を好む戸が多いため、おおよ
表7・成人率と戸当り所持家具数(A)
成人率l 収納家具 台家具 坐家具
4.5 9 2.8 3 5.0 0 2.2 2 5.6 3 3.2 3 5.17 3.4 3
2.6 6 5.0 5 7.13 3.9 4
表8.成人率と戸当り所持家具数(B)(主要家具について)
そ設計者の予想した室の使い方の範囲 個数/戸
2.0 2.5 3.0 3.5 2.80 2.8 3 3.4 8 3.01
で配置され、常識的な線がでている。
それらの室の使われ方の主な点は次の様な方式となる。
1.就寝は、家族数の少ない場合はQ又はRで行なわれるが、家族数が多くなるとP窒までも使 われている。
2.食事は、主としてP室であるが(DK)K室で行なわれるものもある。
3.団らんは、主としてP室であるが、3室ある型ではQ室も利用される。
4.身仕舞は、ほとんどQ室で、R室の場合もある。
表9.家具の室配置(C=押入れ、Ⅴ=ベランダ)
収 納 家 具
和 だ ん す
整理だ んす 洋服だんす 押入だんす
茶 だ ん す 食 器 戸 棚
本 棚(木立)
冷 蔵 庫 茶 ぷ 台 洋 食 卓 机 (坐)
6 6
2
5 2 4 0 2 3 3 n U
5
つ
J
2
2
8
7
4
1
6 5 6
2 4 7
2 C U 1 5
∩
コ
つ
J
O
l
1 1 1 8
3
5 3 5
2 2 5
7 7 5
6 7 4
5 6 1 4 5 2 0 1 04 5 5 1 1 1 6 14 0 3 0 0 9 8
1 6 9 8 7 3 3 0 54 3 4 1 1 0 23 5 37 1 9 6
0 6
2 3
4 1 0
3 5
7 9 8
3 9 8 0
10
0 3 9
3 3 1
8 3 5
2 3 2
2 9 6
4 2 5 0 6 84 20 6 5 0
4 3 1
0 00 5 0
2 8 8
17 23 30 30
23 13 64
68
具
(立)
坐 卓 小 テ ー ブ ル
2 5 0
5 3 2
8 5 n U 4 6 8
奥 谷 多 作
17 43 38 2 12 42 35 11 47 29 18 6
7 7 0
1 3 2
0 7 0
5 2 2
7 6 0
2 4 4
6 0
1
肱 掛 い す
折たたみいす
小 い す
ス ッ 一一 ル
ソファー(ソフ ァーベット)
5
7 3 0 3
3 5 5 5
8 8 5 9
5 3 4 3
4 5 8 23
7
6 852
4 1 28 7 0 13 2 1 16 0 5 24 5 8 8 3
4 0 5 7 1 n U
5 0 1
2 8
0 0 ム 2 0
0 2
2 0
6
0 0
3
4
1 0751
0 5
0 1
1
ン 台 ブ 鉢 ツ 機 ビ 機 機
一
シ タ 音 レ 濯 除
ト
ミ鏡 ス 火 コ 蓄テ洗掃
2 0 41 1
1 4 1 2 4 0 5
6 5 3 6 6 3 1
9 6 7 4 1 0 5
3 4 6 2 2 7 8 8 5
5 6 8 1 3
1 3 3
3 6 2 6 1 2
3 3 1 3 3
n U 3 0 1 0 4 4 5 4 2 3 3 7 0 2 6 3 1 2 1 5 1 3
3 0 5 0 5 0
1 5 6 7 2
5 2 5 0 0 0
4 3 1 2 1 2
2 8 0 5
3 1 2
0 1 0 3 0 n U 1 4 1 1 1 4 0 7
1 76
0
4
0
2
0 0
2 2
1DKを除いた、2K、2DK、3Kについての各戸型の一戸当りの家具面積及び種類別家具面積、戸 型別家具面積を(表10)(表11)に求めると、収納家具の面積が各戸型においていずれの場合も他 の家具より大きく、器具の類は個数の割合に面積を取らず、坐家具はその面積の戸型による差が 大きいという点で立式の室を持った戸型とそうでない戸型とを区別している。
表10・戸型別家具面積(m2) (A)
2K 2DK 3K 所 持 家 具 全 面 積
収 納 家 具 面 積
4.41 5.01 4.9 9 1.8 8 1.7 2 1.7 5
表11・戸型別家兵面積(m2)とその割合(%) (B)
戸
収 納 家具 台 家 具 坐 家 具 器 具 合 計3 2 D K 5 2工)K 6 2 K
8 2K 9 2K lO 2 D K l1 2D K 12 2 D K 13 3 K
1.964(34.8)
ユ.669(31.9)
2.397(38.0)
1.943(45.8)
1.712(43.3)
2.009(35.4)
1.671(35.1)
1.780(40.0)
1.753(35.2)
1・848(32.6)
1・659(31.8)
1.954(31,0)
1.408(32.2)
1.257(31.0)
1・653(29.1)
工.ユ03(23.2)
1.050(23.6)
1.732(34.8)
.953(16.8)
.979(18.7)
1.479(23.6)
・220(51.7)
.459(11.3)
1.083(19.1)
1.254(26.3)
.780(17.5)
.816(16.3)
.892(15.8) 5.657(100)
.913(17.5) 5.120(100)
.502(7.5) 6.308(100)
.700(16.7) 4・261(100)
.629(15.5) 4.057(100)
.945(16.6) 5.690(100)
.740(15.6) 4.768(100)
.840(18.7) 4.450(100)
.687(13.8) 4.988(100)
表12・家具面積と有効室面積との比(%)
更に各戸型の室面積と家具面積の割合を
(表12)(表13)にみると、あまり大きな影 表13.押入れ長さと平均家具面積 響を室面積や、室の構成に受けていないこ 押 入 長 さ(尺)
とが解り、人間の生活空間としての室内空 収納家具面積(m2/戸)
9/ 12/ 157 1.7 2 2.10 1.7 5
問を構成するファクターとして、家族構成 や、家族の生活様式にむしろ関連がみとめられた。
5.結 論
調査住戸の家族構成は単位家族が主で、家族数は平均3.6人1戸成人率2.9である。家具量の 中で収納家具が最も多く、平均1戸当り6.41個であり、成人率が増大するにしたがって家具量は 増加するが、成人率3.0前後で最大値をとり、これから下降する。そこで平均一人当りの家具量 は求めても意味のないものになった。1戸当りの仝家具の中で収納家具の占める面積は全体の3.
5%である。1戸当りの家具面積は、平均室蘭積の23%で、その中の収納家具の面積は8.4%にな る。また、1戸当りの家具面積は戸型によっても異るが、5.39m2である。これらのことから、室 内空間の23%を占める家具空間の二重構造を解決するには、住居の建築計画の当初にビルトイン された家具空間の実際的なデザインが行なわれなければならない。今後、次第に普及るであろす
う、工場組立方式による室内空間のデザインにこそ、室内空間と家具空間の二重構造を解消する 方法を見付けることが可能であろう。現実に多くの生活器機がデザインされ、それは必然的に空 間をうみだした。これらの生活檻器の単位、単位間の距離と、相互間の関係における空間は、そ れぞれ独立しているものであるという誤った観念をともなって、単なる箱型やストリュームデザ インの大量生産となって表れている現在、人間の空間活動のあらゆる機能を抽象化し、ひとつの
≪ユニバーサル・スペース≫にまで溶解してしまう意味での、真の生活空間がそのような方法で 構成されうるという目論見はないだろうか。ひと口に、現代の人間生活における生活空間の性格
をいうならば、それは廃墟のようなものである。ノスタルジーに支えられて古代への憧憬として 語られるような意味でなく単純に物理的な崩壊過程を考えてみるとき表れる性格である。その空 間はあらゆる偶然的な事件のもとに破壊され、風化されつつある。かって完成されてひとつの形 式を持ったものが、その形式をうしないつつある瞬間であり、土に還元されて行くプロセスであ
るとみてよい。私達にとって、それは廃墟の美とか何だとかいう意味づけは必要ない、移行する 状況である。このうどき成長して行く空間は、ある時点で載ってみると、ひとつの状態から次の 状態へ移って行く過程であると考えていい。私達にとって、人間生活における多くの機能空間の 計画が、つねに目標を達成するいとまもなく、つぎつぎに発生してくる新しい要因のために変更 させられ埋めこまれ、ふたたび新しい形態をとりながら、無限に運動をつづけていくために固定
70
奥 谷 多 作
した形態をとったためしがないことをしっている。ひとつの完成された機能空間が存在すること も確かである、しかし、多くの場合それは成長をやめた空間であり、新しい要素が発生しつづけ るのでなくて、逆に細部を観察すると古い形式が解体し埋没していく現象を発見できるだけで ある。それゆえに、現代の生活空間の全域にわたって固定した空間の予測は放棄した方がいいと 思う。人間生活の空間機能は、いわば突発事件の互に無関係に独立した連続的発生によってつぎ つぎとかたちづくられるとみた方が正確である。この自由主義経済を基本とした人間生活におい ては、同一断面においても不確定的要因の集積であることが理解できるのだが、かりにそれが統 一され計画化された経済体制のもとでも、時間的な推移によっては変更と改変が常に加えられて
いくことも自明の理なのである。私達、生活空間の機能の研究にたづさわるものには、常にこの 様に過程的性格をはっきり認識すべきであり、プロセスだけが具体的事実であり、プロセスだけ が信じられるのである。そこには、固定化し動かし難い空間は必要がなく、≪うどき≫≪かさな りあい≫≪からみあい≫≪のび≫ていくような空間こそが求められるべきである。その様な性質 を持った空間の形態はもうこれまでのように箱におさめられるといったものでなく、箱のような 枠をはみだし、のびていき、からみあい、その特性はトポロジー空間に近づくと考えられる。同 一の性格を持った機能をいれる空間が成長することは、位相幾何学の空間特性の問題であろう。
最後にこの調査に協力された、大和宏、服部扶桑、内山隆子さんに感謝する。
○吉武、大坪、北沢、鈴木
○境、川島
○青木
○小原
○境
○市川、伊藤
○池部
OAkerblom,B Oウドソン、青木訳
○倉田、知久
OW、グロピウス、蔵田訳
参 考 文 献
:〝小住宅における生活空間の構成〟 IⅡ 5009.5103 日本建築学会関東支部研究会
:〝M・Cにおける住空間の特性について〝 3062.
日本建築学会論文報告集 63号
:〝住居における行為と空間規模に関する研究〝 338 日本建築学会論文報告集 54号
:〝室内計画の人間工学的研究〝
日本建築学会論文報告集 69号
:〝GMモデュールにおけるスペrススタディの意味〝
:〝共同住宅の家具什器むこついて〝
日本建築学会論文報告集 60号
:〝人体動作のModular Poihts(Module数値論)〝
日本建築学会論文報告集 66号〟
=〝Standing and sitting posture〟
:〝装置設計者のための人間工学〝
:〝人間工学〝工業デザイン全書5巻
:〝生活空間の創造′′
ON.F.カーヴァh、浜口訳:〝日本建築の形と空間′′
○ギーデイオン、太田訳 :〝空間、時間、建築〝1・2 0宮沢 :〝家庭電気器具類の有効な空間処理〝
今日の建築No.8.26・1960.