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論説
≪
労働契約の成立に関わる最近の裁判例の分析 ≫
高 橋 賢 司 一 はじめに
パ ナ ソ ニ ッ ク プ ラ ズ マ デ ィ ス プ レ イ
(パスコ)事 件 ・ 最 二 小 判 平 成 二 一 年 一 二 月 一 八 日
)((
に お い て、 注 文 者 と 労 働 者との間の黙示の労働契約の成立が否定された。 学説では、右の判決以降の裁判例を整理した論稿が数多く存在するとは言い難い状況であ る
)((
。労働者派遣をめぐ る裁判例に関してすでに分析したのであるが、右の最高裁第二小法廷判決以降の裁判例を検討する必要があると考 える。この問題は、労働者派遣と労働者供給の定義、派遣労働契約および労働者派遣契約の有効性の問題と関連性 がある。とりわけ、裁判例では、これらの論点が関連し合っている。そこで、本稿では、労働者派遣と労働者供給 の定義、派遣労働契約および労働者派遣契約の有効性の問題を整理すると同時に、右の最高裁第二小法廷判決以降
立正法学論集第 54 巻第 ( 号((0(0) 96
の近時の裁判例を検討し、解釈上の争点に関するあるべき法理を示したいと考える。 さらに、労働者派遣以外の分野、すなわち、高齢者雇用等の分 野
)((
の訴訟において、明示的な労働契約がない場合 の労働契約の成否が現在でも問題になっている。 特に、会社、代理店主と労働者の間の三者間で、労働契約の成立が問題になってい る
)4(
。当該会社と労働者の二者 を媒介する代理店主の使用人性も問われている。冠婚葬祭互助会員の募集及び冠婚葬祭の請負等を主たる事業とす る 株 式 会 社
(Yとする)は、 代 理 店 主 A と 代 理 店 契 約 を 締 結 し、 A は 地 区 の 営 業 活 動 を 担 当 し た
(「支部長」と呼ばれていた)
。 他 方、 労 働 者 X ら
(原告)は、 A と の 間 で 一 年 の 有 期 労 働 契 約 を 締 結 し た の ち 毎 年 更 新 し て い た。 こ の ようにして、Ⅹは葬儀施行と営業活動を行っていた。YとXらの間に黙示の雇用契約が成立していたかが問題にな り、学説においても注目を浴びてい る
)5(
。 黙示の労働契約が論点になりうるにもかかわらず、原告労働者側が主張しづらいのが課題であると実務ではいわ れている。リーマン ・ ショック時の労働者派遣法違反の場合に、派遣元と派遣労働者との間の派遣労働契約が裁判 所においてはほとんどすべての事例で無効とされず、そのうえ、派遣先と派遣労働者との間の黙示の労働契約が成 立しなかったのが、一因である可能性もある。 明示または黙示の労働契約の成立が労働者派遣の場合に認められなかったことが、他の形態での労働契約の成否 の判断に対して負の影響があるのも望ましい状態ではない。そこで、労働者派遣以外の分野における労働契約の成 否に関する分析も含めて、広く、明示または黙示の労働契約の成否を考えることも重要である。 そこで、以上のような問題を順に論じていくこととする。
97 労働契約の成立に関わる最近の裁判例の分析(高橋賢司)
二 労働契約の成立に関する検討 文言が読み取れる。これによって、労働者派遣法にいう労働者派遣と職安法にいう労働者供給の双方は、概念上は かかる労働者派遣に該当する限り職安法における労働者供給には労働者派遣は含まないという明確な規定内容 ・ るものを含まないものとする」と規定する。 す る 法 律
(昭和六十年法律第八十八号。以下「労働者派遣法」という。)第 二 条 第 一 号 に 規 定 す る 労 働 者 派 遣 に 該 当 す 指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関 職 業 安 定 法 四 条 七 項 に お い て は、 「 こ の 法 律 に お い て『 労 働 者 供 給 』 と は、 供 給 契 約 に 基 づ い て 労 働 者 を 他 人 の 検討する。 と派遣労働者との間の黙示の労働契約の成否を検討する前提として、労働者派遣と労働者供給の定義について、再 派遣と労働者供給の定義、派遣労働契約および労働者派遣契約の有効性の問題と関連する。そこで、まず、派遣先 労働者派遣の分野において、派遣先と派遣労働者との間の黙示の労働契約の成否が問題になる際、それは労働者
1
労働者派遣と労働者供給の意義について(十分とは言い難いが)
区 別 さ れ て い る。 当 該 労 働 者 派 遣 が、 労 働 者 派 遣 法 二 条 一 号 に お け る「 労 働 者 派 遣 」 で あ る場合、その規制は労働者派遣法の規制に委ねられる一方、その限りで職安法四四条における労働者供給に関する 規制によらないことになると解され る
)6(
。 これに対して、違法派遣は労働者派遣法違反と同時に職安法四四条違反にもなり得る、という見解が有力であ る
)7(
。
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有 田 教 授 は、 「 労 働 者 派 遣 は、 一 般 法 で あ る 職 安 法 で 禁 止 さ れ て い る 労 働 者 供 給 事 業 の 中 か ら 特 別 法 で あ る 派 遣 法 の 規 制 の 下 に 行 わ れ る も の に 限 り 適 法 な 業 と し て 行 え る
)8(
」 か ら、 派 遣 法 違 反 の 場 合、 「 労 働 者 供 給 事 業 と し て の 禁止の解除が失効」し、労働者派遣に該当せず、職安法の禁止した労働者供給に該たるとも説かれ る
)9(
。供給元の規 制だけでは効果的な禁止措置がとられないため、こうした構成によって、供給先の責任を問おうとするものであ る
)(1(
。 この説は重畳適用説と呼ばれてい る
)(((
。 こ れ に 対 し て、 本 庄 准 教 授 は、 重 畳 適 用 説 が 派 遣 法 上 の「 『 労 働 者 派 遣 』 を 適 法 な も の だ け に 限 定 」 し、 そ れ 以 外 の 場 合 は 職 安 法 四 四 条 と の 抵 触 を 主 張 す る か ら、 「 論 理 的 に は『 派 遣 法 違 反 の ケ ー ス で 派 遣 法 に よ る 是 正 が 図 れ ない』 」と説 く
)(1(
。 労 働 者 派 遣 法 二 条 一 号 の「 労 働 者 派 遣 」 の 概 念 は、 「 価 値 中 立 的 」 な も の で あ っ て
)(1(
、 適 法 か 違 法 か 否 か で 差 異 を 設けていないと説かれ る
)(1(
。派遣法は、 四条のように、 罰則を予定してお り
)(1((同法五九条一号)
、 同法の「労働者派遣」 の概念に違法なものを含んでいると指摘され る
)(1(
。
そもそも、労働者派遣法の制定時から、労働者派遣と労働者供給の概念を分けて論じられてきた。 中 央 職 業 安 定 審 議 会 労 働 者 派 遣 事 業 等 小 委 員 会「 労 働 者 派 遣 事 業 問 題 に つ い て の 立 法 化 の 構 想 」
(昭和五九年一一月一七日)
に お い て、 労 働 者 派 遣 事 業 は「 労 働 者 派 遣 契 約 に 基 づ き、 自 己 の 雇 用 す る 労 働 者 を 派 遣 し、 他 人 に 使 用 させることを業として行うも の
)(1(
」とし、労働者供給事業を「供給元と労働者との間に雇用関係があるものは労働者 派 遣 事 業
(…)、 供 給 元 と 労 働 者 と の 間 に 雇 用 関 係 が な い も の が 労 働 者 供 給 事 業 」 と な る と 概 念 上 区 別 し て い る
)(1(
。 この限りでは、両概念は重なるところがない。
99 労働契約の成立に関わる最近の裁判例の分析(高橋賢司)
労 働 者 派 遣 法 の 制 定 に 関 わ っ た 高 梨 教 授 は、 右 の 概 念 規 定 を 用 い つ つ、 「 労 働 者 派 遣 」 と「 労 働 者 供 給 事 業 」 と を区分しようとしてい る
)(1(
。 同法制定時、労働者供給、請負、そして、労働者派遣をめぐるあり方に関する議論にかなりの歳月を要しており、 同法制定時指摘されていた問題点は認識している。 しかし、そうであったとしても、労働者派遣法制定時の説明、現行職安法四条七項の文言からして、労働者派遣 法第二条第一号に規定する「労働者派遣」につき適法な派遣のみ、職安法から除かれると解するのは無理な解釈で はないかと思われる。 加えて、重量適用説は、供給元、供給先双方を処罰の対象としてきた職安法四四条の罰則の意義を説いてい る
)11(
。 この点は、確かに、刑事的な制裁の面では、派遣法による派遣先の責任への規制が十分でないというのは、的確な 指摘であ る
)1((
。 し か し、 罪 刑 法 定 主 義 と の 関 係 で は、 労 働 者 供 給 事 業 の 定 義 は 明 確 な も の で な け れ ば な ら な い が、 「 重 畳 適 用 説 はこの要請に十分に応えていな い
)11(
」と本庄准教授は説く。法は、職安法四四条違反に該当する行為の構成要件とし て、派遣法の違反行為を明確に定義するということはしていない。明文上は、職安法上の労働者供給から、かえっ て、労働者派遣にあたるものを除外している。 上の職安法四条七項の文言との乖離、罪刑法定主義との関係など、重畳適用説の抱える疑問を長年ぬぐいされな った、という点に、私が右の説を支持できなかった理由がある。 前 掲 パ ナ ソ ニ ッ ク プ ラ ズ マ デ ィ ス プ レ イ
(パスコ)事 件 で は、 最 高 裁 判 所 第 二 小 法 廷 は、 「 上 記 三 者 間 の 関 係 は、 労働者派遣法二条一号にいう労働者派遣に該当すると解すべきである。そして、このような労働者派遣も、それが
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労 働 者 派 遣 で あ る 以 上 は、 職 業 安 定 法 四 条 六 項
〔当時〕に い う 労 働 者 供 給 に 該 当 す る 余 地 は な い も の と い う べ き で ある」と判断している
(括弧内は筆者が挿入)。
のことだけによっては派遣労働者と派遣元との間の雇用契約が無効になることはない」と説示してい る
11)にかんがみれば、仮に労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても、特段の事情のない限り、そ 日 判 決 に お い て、 「 労 働 者 派 遣 法 の 趣 旨 及 び そ の 取 締 法 規 と し て の 性 質、 さ ら に は 派 遣 労 働 者 を 保 護 す る 必 要 性 等 前 掲 パ ナ ソ ニ ッ ク プ ラ ズ マ デ ィ ス プ レ イ
(パスコ)事 件 に お い て、 最 高 裁 第 二 小 法 廷 は、 平 成 二 一 年 一 二 月 一 八
2
労働者派遣ないし業務請負の分野における労働契約の有効性について(
。 最高裁判例の後の裁判例では、労働者派遣法の趣旨を根本的に潜脱する脱法的な派遣が組織的 ・ 大々的に行われ て い た と い う 法 違 反 の 実 態 等 か ら、
(サポート社員と呼ばれる直接雇用を経験した)派 遣 労 働 者 と 派 遣 元 と の 間 の 派 遣 労働契約を無効として、特段の事情の存在を肯定したものがあ る
)11(
。 この事件では、派遣先が派遣可能期間経過後もサポート社員として派遣労働者を直接雇用していた。厚生労働省 が 制 定 し た
(この事件当時の)「 派 遣 先 が 講 ず べ き 措 置 に 関 す る 指 針 」
(平成一一年労働省告示第一三八号、改正・
平成二一年厚生労働省告示第二四五号)に よ れ ば、 「 労 働 者 派 遣 の 役 務 の 提 供 を 受 け て い た 派 遣 先 が 新 た に 労 働 者 派 遣 の 役務の提供を受ける場合には、当該新たな労働者派遣の開始と当該新たな労働者派遣の役務の受入れの直前に受け 入れていた労働者派遣の終了との間の期間が三月を超えない場合には、当該派遣先は、当該新たな労働者派遣の役 務の受入れの直前に受け入れていた労働者派遣から継続して労働者派遣の役務の提供を受けているものとみなすこ と」とされていた。にもかかわらず、右の事件では、派遣先では、サポート社員として派遣労働者を直接雇用する
(0( 労働契約の成立に関わる最近の裁判例の分析(高橋賢司)
期 間
(以下「サポート期間」という。)が、 当 初 三 か 月 と 一 日
(後に六ヵ月に変更)で あ っ た。 つ ま り、 派 遣 先 で は、 労働者派遣の終了後三ヵ月以内に同じ派遣先で新たな派遣を開始するのを防止する当時の指針との関係で違法とな らないよう、労働者派遣の終了と新たな開始の間の期間を三か月と一日とし、そして、その間は、派遣先が派遣労 働者をサポート社員として直接雇用した。三か月と一日を経過すると、派遣先は、派遣労働者による派遣の提供を 再び派遣元より受けていたのである。つまり、事実上同じ派遣先で長期間派遣労働者に就労をさせていた。しかも、 派遣先において、派遣労働者の地位が、派遣労働者 ・ サポート社員 ・ 派遣労働者という循環を繰り返していた。 そして、派遣可能期間制限違反があったこと、および、派遣先がランク制度に応じた派遣料金を支払うことで派 遣元から派遣労働者に対しそれに応じた給与が支払われるようにさせていたこと等から、派遣元と派遣労働者の労 働契約が無効であると判断された事案であった。 問題は、一定の労働者派遣法違反があった場合に、派遣労働契約および労働者派遣契約を無効にさせるという、 私法上の効果を生じさせるかどうかである。判例も、特段の事情に該当する場合がありうることは認めている。原 則無効となるべきなのか、有効と考えるべきなのかという難しい問題はあるものの、労働法においては、労働者派 遣以外の分野において特段の事情により労働者が救済されるケースは少なくな い
)11(
。 従前の裁判例において労働者派遣につき問題になったケースには、①労働者派遣事業の許可がない場合、あるい は、許可の取消が問題となる場 合
)11(
、②派遣可能期間制限違反の場 合
)11(
、③労働者派遣法四条一項にいう労働者派遣事 業の適用対象外の場 合
)11(
、④偽装請負の場 合
)11(
等がある。 民法学において、かつて、末弘教授は、法令違反の法律的効力について、考察なさってい る
)11(
。その観点は、現代 の労働契約関係においても、重要な観点を提供していると思われる。
立正法学論集第 54 巻第 ( 号((0(0) (0(
末弘教授は、禁止法規が私法上の効果を否認する趣旨を含むかどうかは、第一に、当該法規の目的 ・ 理想を達成 させるのに必要不可欠であるか、あるいは、目的 ・ 理想達成の手段として妥当かどうかを検討すべきであるとす る
)1((
。 第二に、当該規定が行為の私法上の効果を否認する趣旨を含むとしても、これを否認することによって達せられ る 「法律的理想と因つて生ずる当事者相互間の不公正とを較量すること」
(筆者が現代仮名遣いに一部直している)が、 必要なことであると述べてい る
)11(
。 これに続けて、米倉教授は、①規定の趣 旨
)11(
、②取引の安全、③当事者の信義 ・ 公 平
)11(
、④行為の禁止 ・ 制限に対す る公益上の要請の強 さ
)11(
等によって、判断すべきであると述べておられる。 ところで、労働者派遣法では、同法に基づき厚生労働大臣には指導 ・ 助言等の監督行政権限が付与されている。 しかし、取締規定に基づいて国が取り締まるといっても、その規定違反を理由に行政機関が行政指導しただけでは 救済の実効性に乏しい場合もありうる。労働者派遣法違反を理由とした労働局による指導なども、過去にはさまざ まなものでありえた。しかし、労働者派遣法上罰則規定の適用がないこともあり、仮に、罰則規定が設けられてい たとしても、これらの罰則規定の適用や厚生労働大臣による監督行政権限の行使によっては派遣労働者を十分保護 することができない場合もある。そこで、労働者派遣法違反があった場合に、労働契約の私法的な効力を否定し、 派 遣 先 な い し 注 文 者 と
(派遣)労 働 者 と の 間 の 労 働 契 約 の 成 立 を 考 え る こ と な し に、 救 済 の 実 効 性 が あ が ら な い と いう場合はありうる。 そこで、労働者派遣法違反がある場合に、派遣労働契約および労働者派遣契約の有効性を問題にせざるを得ない。 そ し て、 労 働 者 派 遣 法 違 反 が あ る 場 合、 そ の 規 定 の 趣 旨 ・ 目 的 か ら 逸 脱 し、 労 働 市 場 の 需 給 を 調 整 さ せ る と い う 「労働者派遣制度の形態」が濫用されているかどうかが重要であ る
)11(
。当該規定の趣旨 ・ 目的とその逸脱の有無が問
(0( 労働契約の成立に関わる最近の裁判例の分析(高橋賢司)
われる。これらの有効性を判断するにあたり、その前提として、労働者派遣法の各条項の趣旨が問われることにな る。 ま ず、 労 働 者 派 遣 事 業 許 可 を 欠 く ケ ー ス が あ り 得 る が、 労 働 者 派 遣 事 業 を 許 可 制 と す る 趣 旨 は、 「 労 働 者 派 遣 事 業 の 健 全 な 育 成 を 図 る た め、 悪 質 な 事 業 者 を 退 出 さ せ る 仕 組 み を 整 備 す る と と も に、 優 良 な 事 業 者 を 育 成 す る こ と」にあ る
)11(
。 次に、派遣可能期間の制限が問題になり得るが、その制限に関する法の趣旨については次のように説明される。 派遣労働者の雇用の安定やキャリア形成が図られにくく、派遣先の常用労働者との代替が生じないようにするため、 派遣労働を臨時的 ・ 一時的な働き方と位置付けることを原則と し
)11(
、個人単位の派遣制限は、キャリアアップの観点 か ら、 「 同 一 の 組 織 単 位 に お い て 三 年 を 超 え て 継 続 し て 同 一 の 派 遣 労 働 者 を 受 け 入 れ て は な ら な い も の と す る こ と が適当である」とされ た
)11(
。 偽装請負については、例えば、多重派遣は、派遣労働者と最初の派遣先との間では雇用関係がないため、そもそ も「労働者派遣」の定義に該当せず、労働者供給となっており、職安法四四条違反となる余地がある。職安法四四 条は、労働ボス、中間搾取の排除等による封建的な雇用慣習の打破、個人の自由と人格の尊重等基本的人権の尊重 などの憲法ないし法の精神に関わ る
)11(
。 派遣禁止業務に関しては、例えば、医療業務については、医師その他の専門職により形成されるチームにより提 供されるはずのものであり、また、医療の実施が人の生命身体に関わるという理由で、派遣禁止業務とされ る
)1((
。 これらの違反は、労働者派遣や業としての労働者供給事業の禁止の根幹にかかわるものであり、その違反が重大 である。このため、労働契約の申込みみなし規定
(労働者派遣法四〇条の六)が施行された後も、法律関係の清算 ・
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明 確 化
(正確には労働者派遣という三者関係からの派遣元の退出)の た め に、 契 約 関 係 の 無 効 の 判 断 は 必 要 で あ る と 思 われる。 また、これらの違反があった場合の行為態様も重要であろ う
)11(
。労働者派遣法の規定の違反が一度限りの行為で、 ただちにその規定違反を理由として必ず労働契約が無効となるというわけではない。労働者派遣の場合、労働者派 遣法違反の回数、その長さ、違反の規模等が考慮されるべきである。 最高裁判所調査官も、最高裁の前掲の判決は、派遣元と派遣労働者との間の雇用契約を無効と解すべき特段の事 情 が 存 在 す る こ と を 認 め る が、 「 こ れ は、 労 働 局 に よ る 指 導 等 に 対 応 し て 出 現 す べ き 脱 法 的 な 違 法 派 遣 の 態 様 は 今 後も様々なものが想定されることから、その態様によっては派遣元と派遣労働者との間の雇用契約が無効になる可 能性があり得ることをあらかじめ宣明しておくという趣旨」であると説明されてい る
)11(
。 これらの労働者派遣法違反がある場合、労働者派遣契約ないし派遣労働契約の形態を整え、労働者派遣の形式を 仮装しているにすぎず、労働者派遣の形態を潜脱 ・ 濫用しているにすぎないため、これらの場合、労働者派遣法の 趣旨に則して、私法が、労働者派遣の仮装と濫用のない状態に戻すべく、派遣労働契約ないし労働者派遣契約は、 公序に反し
(民法九〇条)、無効と解する余地があ る
)11(
。
三 労働契約の成否について
⒜ 労働者派遣の分野における最近の裁判例
1
労働者派遣の分野における黙示の労働契約の成否(05 労働契約の成立に関わる最近の裁判例の分析(高橋賢司)
冒 頭 で 述 べ た 前 掲 パ ナ ソ ニ ッ ク プ ラ ズ マ デ ィ ス プ レ イ
(パスコ)事 件 ・ 最 二 小 判 平 成 二 一 年 一 二 月 一 八 日 以 来、 個別の事件の評釈を除いて、裁判例を分析したものは必ずしも多くないように思われ る
)11(
。そこで、ここでは、労働 者派遣の分野における黙示の労働契約の成否に関する右の最高裁判例以降の裁判例を分析する。 前 掲 パ ナ ソ ニ ッ ク プ ラ ズ マ デ ィ ス プ レ イ
(パスコ)事 件 ・ 最 二 小 判 平 成 二 一 年 一 二 月 一 八 日 は、 次 の よ う に 説 示 している
(Y:工場での業務を委託した注文者、X:派遣労働者、A:業務委託を受けた会社)。 「XとYとの法律関係についてみると、前記事実関係等によれば、YはAによるXの採用に関与していたとは認 められないというのであり、XがAから支給を受けていた給与等の額をYが事実上決定していたといえるような事 情もうかがわれず、かえって、Aは、Xに本件工場のデバイス部門から他の部門に移るよう打診するなど、配置を 含むXの具体的な就業態様を一定の限度で決定し得る地位にあったものと認められるのであって、前記事実関係等 に現れたその他の事情を総合しても、平成一七年七月二〇日までの間にYとXとの間において雇用契約関係が黙示 的に成立していたものと評価することはできない」と判断され、YとXとの間の黙示の労働契約の成立が否定され た
)11(
。 最高裁は、本件において、a . 派遣元による派遣労働者の採用に派遣先が関与していないこと、b . 派遣先が派 遣労働者の賃金を事実上決定しているような事情がないこと、c . 派遣元が配転を含む派遣労働者の具体的な就業 態様を決定する地位にあったこと、d . その他の事情を派遣先と派遣労働者の間の黙示の労働契約の成立を否定す る事情として挙げた。 前 掲 マ ツ ダ 事 件
(=①事件とする)に お い て は、 既 述 の サ ポ ー ト 社 員 制 度 の 運 用 実 態 に よ る 労 働 者 派 遣 法 違 反 に 加 え て、 派 遣 先 に よ る ラ ン ク 付 け に 応 じ て 賃 金 額 が 実 質 的 に 決 定 さ れ て い た こ と か ら、
(派遣先による直接雇用を経立正法学論集第 54 巻第 ( 号((0(0) (06
験し派遣元との労働契約が無効とされた)
派 遣 労 働 者 と 派 遣 先 と の 間 で 黙 示 の 労 働 契 約 が 成 立 す る と 判 断 さ れ た。 そ の際、派遣先による指揮命令、出退勤管理、早出 ・ 残業 ・ 休日出勤管理、配置換えの実態、派遣先従業員と混在し ての作業、派遣先従業員と同一の作業着の装着、有給休暇の調整、安全研修 ・ 改善作業への参加、派遣先によるパ フ ォ ー マ ン ス 評 価 制 度 ・ 格 付 け
(ランク)に 応 じ た 派 遣 料 金 ・ 賃 金 の 決 定 等 の 事 情 を 裁 判 所 は 考 慮 し て い る。 派 遣 先 で の 直 接 雇 用 を 経 験 し た 派 遣 労 働 者 と 派 遣 先 と の 間 の 黙 示 の 労 働 契 約 の 存 在 を 認 め て い る こ と か ら、 「 本 件 事 案 の 特 殊 性
(労働者派遣と直接雇用が繰り返される脱法的な派遣のなかで派遣先との直接雇用を経験し、その際に労働者の就業と処遇の実態に実質的に変化がなかったこと)
を も 重 視 し て、 派 遣 先 と の 黙 示 の 労 働 契 約 の 存 在 を 肯 定 し た 」 と の 評 価 も あ る
)11(
。 ま た、 「 サ ポ ー ト 社 員 を 経 験 し た 原 告 ら に つ い て は 派 遣 元 と の 間 の 派 遣 労 働 契 約 を 公 序 良 俗 違 反 と して無効としたことが、黙示の労働契約の成立の判断にあたって考慮要素とされ た
)11(
」と評されている。 社 会 福 祉 法 人 恩 賜 財 団 済 生 会 事 件 ・ 大 阪 地 判 平 成 三 〇 年 一 月 三 一 日
(=②事件とする)で は、 派 遣 労 働 者 の 採 用 への派遣先の関与がなく、派遣労働者が「休暇取得について派遣先に事前に連絡をすること自体は、特に不自然な も の と は い え ず 」、 派 遣 先 が 派 遣 労 働 者 に 対 し 指 揮 命 令 権 を 持 っ て い る と は い え な い と さ れ、 ま た、 派 遣 先 が 派 遣 元と派遣労働者との派遣労働契約関係までを終了させる決定権や影響力等を有しておらず、そのうえ、派遣先は給 与を上回る額の派遣料金を派遣元に支払っていたにすぎないことから、雇用契約における給与の額を派遣先が決定 していたとはいえないと判断され た
)11(
。 資生堂
(アンフィニ)事件 ・ 横浜地判平成二六年七月一〇日
(=③事件とする)では、派遣先
(派遣会社と派遣先の間で業務委託契約が締結されている時期もあったため、供給先でもあるが、ここでは派遣先とする)
に よ る 労 働 者 ら の 採 用行為はないとしている。そして、裁判所は、派遣元の独立性、労務管理、労働時間管理、更新手続、教育、人事
(07 労働契約の成立に関わる最近の裁判例の分析(高橋賢司)
権の行使、採用の経緯、指揮命令などを考慮して、派遣先が指揮命令しているとはいえないとした。そのうえで、 派遣労働者が派遣先の従業員から日常的に個別具体的な指揮命令を受けていたとはいえず、派遣元が賃金を支払っ ていたといえる等から、労働者らと派遣先との間において、黙示の労働契約が成立しているとはいえないと判断さ れ た
)11(
。 D N P フ ァ イ ン オ プ ト ロ ニ ク ス ほ か 事 件 ・ 東 京 高 判 平 成 二 七 年 一 一 月 一 一 日
(=④事件)で は、 労 働 者 の 業 務 に 当たり「作業予定表及び製造指示書を参照するほかに逐一指示を要しない」ものであって、従業員の勤怠管理は専 ら 業 務 受 託 者
(派遣会社)が 行 っ て お り、 同 社 が、 現 場 管 理 者、 工 程 リ ー ダ ー 等 を 配 置 し、 独 自 に 教 育 を 行 い、 原 則的な労務の管理をしていたこと、作業着やネームプレートについては同社が指定したものがあり、クリーンルー ム前室やエアシャワーゾーンの使用が業務受託者あるいは委託者の各々の従業員で区別され、業務も両社の従業員 で分けられていたことから、業務委託者がその労働者に対して指揮命令を行っていたとはいえないと判断した。業 務 受 託 者
(派遣会社)が 採 用 手 続 を 行 っ て お り、 業 務 委 託 者 は 関 与 し て い な い。 業 務 受 託 者
(派遣会社)の 労 働 者 の賃金について雇用契約で定めるとともに、業務委託者がこれらの労働者の賃金を決定していたとは言えないと判 断され た
)1((
。 ⒝ 労働者派遣の分野における最近の裁判例の分析 前 掲 パ ナ ソ ニ ッ ク プ ラ ズ マ デ ィ ス プ レ イ
(パスコ)事 件 ・ 最 二 小 判 平 成 二 一 年 一 二 月 一 八 日 は、 a . 派 遣 先 に よ る 派 遣 労 働 者 の
(派遣元での)採 用 へ の 関 与 の 有 無、 b . 派 遣 先 に よ る 派 遣 労 働 者 の 給 与 等 の 額 の 事 実 上 の 決 定 の 有無、c . 派遣元が配置を含む派遣労働者の具体的な就業態様を決定し得る地位にあった否か、d . その他の事情 を総合的に考慮して、派遣先と派遣労働者との間の黙示の労働契約の成否を判断している。
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最高裁による黙示の労働契約の成否の判断にあたって総合考慮する諸要素、a~dの諸要素について、最近の裁 判例において、どのように判断されたかを検討する。 ま ず、 a の 派 遣 先 に よ る 派 遣 労 働 者 の
(派遣元での)採 用 へ の 関 与 に つ い て で あ る。 ②、 ③、 ④ 事 件 で は、 い ず れ も、 派 遣 先 に よ る 派 遣 労 働 者 の 採 用 へ の 関 与 が な い と さ れ た。 ③ 事 件 で は、 従 前 の 業 務 委 託 先
(従前の供給元)に在籍していた口紅製造業務の経験を有する従業員の大部分が、そのまま新たに派遣元と労働契約を締結した事案 で あ り、 派 遣 元 が 従 前 の 業 務 委 託 先
(供給元)の 従 業 員 を そ の ま ま 採 用 し た こ と に つ い て、 派 遣 先 に よ る「 意 向 が 少なからず反映されていたものと推認」できると裁判所は認定した。しかし、派遣元が開催した採用説明会に派遣 労働者らが参加するとともに、派遣元の求めに応じて採用希望申込書及び面接受付表に必要事項を記載して採用を 希望する意思を表明し、そして、派遣元から派遣労働者が内定通知を受け、その後、書面で正式な採用通知を受け たことなどから、派遣先による派遣労働者らの採用行為があったとはいえないと裁判所によって判断された。派遣 元による形式的な採用手続が重視されて判断されているが、派遣先による派遣元へのどの程度の影響力の下に、派 遣労働者の採用が決定されたかを一般的に判断するのが困難である。事業承継の場合に親会社の人事に関わる指示 が子会社の決定にどのように影響を与えたのかを判断するのが困難であるのと同様である。 最 高 裁 が 考 慮 し た 一 要 素、 a . 派 遣 先 に よ る 派 遣 労 働 者 の
(派遣元での)採 用 へ の 関 与 の 有 無 と い う 要 素 は、 多 くの事件において、黙示の労働契約の成立にあたり、派遣先による派遣労働者の特定行為と関わって主張されるこ とがあったが、①事件においては、派遣先による「Sランクの派遣労働者の派遣依頼は、そもそも数に限りのある 選 り す ぐ り の 労 働 者 を 囲 い 込 む も の で あ り 」、 実 質 的 に は「 派 遣 先 が 受 け 入 れ る 派 遣 労 働 者 の 特 定 行 為 」 と 認 め ら れると判断する。
(09 労働契約の成立に関わる最近の裁判例の分析(高橋賢司)
派遣元事業主が労働者派遣の開始前又は開始後に、派遣労働者及び派遣先について職業紹介を行う「紹介予定派 遣」をのぞき、 「派遣労働者を特定することを目的とする行為」 、いわゆる「特定行為」をしないように努めなけれ ば な ら な い
(労働者派遣法二六条六項)。 派 遣 先 が 講 ず べ き 措 置 に 関 す る 指 針
(平成一一年労働省告示第一三八号、最終改正平成三〇年厚生労働省告示第四二八号)に よ れ ば、 「 派 遣 労 働 者 を 特 定 す る 行 為 」 に は、 労 働 者 派 遣 に 先 立 つ 事 前面接、派遣先への履歴書の送付が挙げられる。採用手続において、どの程度の派遣先の関与があれば、労働者と の間で黙示の労働契約を成立させる要素となるかは、かなり困難な問題である
(これについては後述する)。 次 に、 c . 派 遣 元 が 配 置 を 含 む 派 遣 労 働 者 の 具 体 的 な 就 業 態 様 を 決 定 し 得 る 地 位 に あ っ た か 否 か に つ い て、 整 理 ・ 分析する。但し、裁判例では、派遣先による派遣労働者に対する指揮命令等の有無も同時に問われているので、 ここではこの点も検討していく。 ① 事 件 で は、 作 業 上 の 指 揮 命 令 や 出 退 勤 の 管 理、 「 派 遣 元 か ら の 派 遣 を 受 け な い 形 で 雇 入 れ を 拒 否 す る こ と の で きる権限」の事実上の保持、生産効率の高い有能な労働者の派遣を受けることができるように配置換えをする権限 が 派 遣 先 に あ っ た こ と が 認 め ら れ て い る。 こ れ に よ り、 「 使 用 従 属 関 係 及 び 労 務 提 供 関 係 」 が 認 め ら れ て い る。 ③ 事件では、派遣元が労務管理 ・ 人事権を行使し、派遣先から労働者が個別具体的な指揮命令を受けていたとはいえ ないと判断されている。④事件では、従業員の勤怠管理、現場管理者 ・ 工程リーダー等の配置、教育などから、業 務 受 託 者
(派遣会社)が 労 働 者 に 対 し て 指 揮 命 令 を 行 っ て い た と 判 断 し た。 但 し、 こ れ に つ い て は、 業 務 受 託 者
(派遣会社)も 業 務 委 託 者 も 双 方 が 労 働 者 に 対 し て「 何 ら か の 指 揮 命 令 を し て い た と い う
(事実認定からすればごく自然な)
法 的 評 価 の 可 能 性 が 排 除 さ れ 」、 「 ど ち ら か 一 方 の み が 指 揮 命 令 を し、 他 方 は 一 切 指 揮 命 令 を し て い な い と いう形式的な枠組みにむりやりに当てはめるために、ある部分では自然な判断がなされる一方で、他の部分では極
立正法学論集第 54 巻第 ( 号((0(0) ((0
めて不自然な判断がなされるという事態を招いている」という問題点が指摘されてい る
)11(
。 このように、裁判例では、
( . 派遣元による労務管理 ・ 配置の指示 ・ 人事権の行使の有無等、
指揮命令の存否それ自体を黙示の雇用契約の成否のメルクマールとすることは失当であ る
11)濱口氏は、 「労働者派遣法制定以後は、 雇用関係のない派遣先が指揮命令をすることは当然なのであるから、
(…)て判断されている。
((派遣)労働者に対する)具 体 的 な 指 揮 命 令 ・ 勤 怠 管 理 ・ 残 業 ・ 休 日 管 理 等 の 有 無 が、 お そ ら く c の 要 素 に 関 連 し ( . 派遣先による
(
」と指摘する。 し か し、 労 働 者 派 遣 と 偽 装 請 負 の 多 く の ケ ー ス で は、 実 際 派 遣 先
(供給先)が 当 該 労 働 者 に 対 し 指 揮 命 令 を 行 っ ているし、業務遂行 ・ 労働時間等の指示が誰によるものなのかが、労働者派遣 ・ 請負を分ける重要なメルクマール の一つなのであるから、指揮命令という概念構成を用いることが一つの解釈方法であると思われる。また、労働者 派遣法が想定している「派遣先事業主」の責任よりも、派遣先が派遣労働者に対してより広範囲に指揮命令してい る場合もありうる。 さらに、bの派遣先による派遣労働者の給与等の額の事実上の決定の有無についてである。 ① 事 件 で は、 派 遣 先 に よ る 評 価 ・ 格 付 け
(ランク)に 応 じ た 派 遣 料 金 の 決 定 と い う 要 素 が、
(派遣先での直接雇用を経験した派遣労働者らの)黙 示 の 労 働 契 約 の 成 立 に 影 響 し て い る。 派 遣 先 に よ る 評 価 ・ 格 付 け
(ランク)が、 派 遣 料金を決定づけ、そして、それがひいては、賃金に影響していったとみているようである。ここまでの認定があれ ば、派遣先による派遣労働者の給与等の額の事実上の決定というファクターが充足されるといえる。 これに対して、③事件では、派遣元が派遣労働者に対し賃金を支払っていたことが判断要素に入れられている。 派遣元が、労働時間を管理したうえで、労働時間、成績管理を基礎に派遣労働者に対し賃金を支払っていたのに対
((( 労働契約の成立に関わる最近の裁判例の分析(高橋賢司)
し て、 派 遣 先 が 派 遣 元 に 対 し 発 注 量 に 応 じ て 業 務 委 託 料 を 支 払 っ て い た と 判 断 さ れ た。 ④ 事 件 で は、 業 務 委 託 者
(注文者)において労働者の賃金を決定していたとは言えないと判断されている。 労働契約は、明示の合意によって成立するのみならず、黙示の合意によっても成立し得る。労働契約の本質が、 使用者が労働者に指揮命令し賃金を支払い、かつ、労働者が使用者に労務を提供することにあるから、黙示の労働 契約が成立したか否かは、契約の具体的な実態による当事者間に事実上の使用従属関係があるか否か、使用者によ る賃金の実質的な決定 ・ 支払いがあるか否かから、客観的に推認される黙示の意思が認められる否かによって判断 すべきであ る
)11(
。 すでに拙稿において述べたように、表示された行為から意思を探ると、派遣先での黙示の労働契約の成立には、 事実上の使用従属関係、特に、派遣先による指揮命令が必要であると解される。これには、具体的には、派遣先に よる出勤簿の管理、時間外労働や休日労働の命令、有給休暇の管理、作業内容と変更の指示、派遣先の器具や装備 の付与、保護服の装着の指示などの事情が入り得 る
)11(
。 これまで十分には検討したことがなかったが、黙示の労働契約の成立のための補充的な要素として、派遣先によ る 派 遣 労 働 者 の
(派遣元での)採 用 へ の 関 与 も 重 要 で あ ろ う。 通 常、 使 用 者 は、 労 働 者 の 面 接 を 行 い、 そ の 上 で 場 合 に よ っ て は、 労 働 者 の 採 用 の 決 定 を 行 い、 内 々 定 や 内 定 の 通 知 の の ち、 労 働 契 約 の 締 結 が 行 わ れ る
(労働契約の締結すらない場合もありうるが、それは次の節において考察する)
。 労 働 者 派 遣 の 場 合、 労 働 者 の 特 定 行 為 が 禁 止 さ れ るが、いわゆる派遣先による事前面接が行われる場合があり、問題となってきた。派遣先が工場訪問や事前面接に おいて当該派遣労働者による派遣の提供に対し何らかの了承をした場合、かかる行為が特定行為にあたる疑いが強 い。
(派遣先による何らかの了承が派遣元での派遣労働者の採用に影響を与える場合はありえて)そ う し た 場 合 で も、 派
立正法学論集第 54 巻第 ( 号((0(0) (((
遣先による採用への関与が強く疑われる場合がある。
とみることはできないから、XらとYとの間で黙示の労働契約が成立したということはできない」と判断している。 いたのである。そうとすれば、Yが、Xらに対し、労務に関する指揮命令を行い、その対価として報酬を支払った 等の納付、所得税の源泉徴収といった労働者を使用する事業者が行うべき義務をAないし本件合同会社が履行して いてFA職の労務を提供していたとみるべきである。そして、その賃金の計算方法はAが定めており、社会保険料 儀場における一般的準則や葬儀施行の際の個別具体的な指示を除けば、ほぼAが行っており、Xらは、これに基づ こ の 事 件 に お い て、 札 幌 地 裁 は、 「 X ら の 勤 務 時 間、 勤 務 場 所 及 び 勤 務 の 具 体 的 態 様 に つ い て の 指 揮 命 令 は、 葬 険募集等であった。 でⅩらに想定された業務は、葬儀の施行、Yが提供する冠婚葬祭の互助会契約の勧誘等の営業活動、他社の生命保 した合同会社A代理店を設立し、その代表社員となったAの代理店契約はA個人の名義で更新し続けた。労働契約 が成立していたかが問題になった。この事件において、一定の時期にYから受託した業務を遂行することを目的と うえで、毎年更新し、葬儀施行と営業活動を行っていた。そして、この事件では、YとXらの間に黙示の雇用契約 た、 と い う 事 案 で あ っ た
(「支部長」と呼ばれていた)。 X ら
(原告)は、 A と の 間 で 一 年 の 有 期 労 働 契 約 を 締 結 し た 請 負 等 を 主 た る 事 業 と す る 株 式 会 社
(Yとする)が、 A と 代 理 店 契 約 を 締 結 し、 A は 地 区 の 営 業 活 動 を 担 当 し て い 冒頭で引用した前掲ベルコ事件 ・ 札幌地判平成三〇年九月二八日では、冠婚葬祭互助会員の募集及び冠婚葬祭の ⒜ 会社と代理店従業員との間の黙示の労働契約の存否
2
その他の分野における労働契約の成否について((( 労働契約の成立に関わる最近の裁判例の分析(高橋賢司)
そもそも、三者が関わる労働契約関係については、労働契約の本質が、前述のように、使用者が労働者を指揮命 令し賃金支払いをする一方で、労働者が使用者に対し労務を提供することにあるから、契約の具体的な実態により 当事者間に事実上の使用従属関係があるかどうか、使用者による賃金の決定 ・ 支払いがあるかどうか、補充的な要 素として、使用者が採用に関与したかどうかによって、当事者間に客観的に推認される黙示の意思が認められるか どうかが判断されるべきである。 指揮命令については、認定事実によれば、Ⅹらは「葬儀に関連する業務については、葬儀場の館長から作業につ いて具体的な指示があり」 「被告は、FA職に対し、制服の着用を義務付けられ」 、葬儀施行の際のルールが定めら れていた。YよりXらは詳細に指示を受けてい た
)11(
。 賃金の決定 ・ 支払いについては、Yが賃金を決定支払いをしてい る
)11(
。 この限りで、YとXとの間で黙示の労働契約の成立がありうるようにも思われる。但し、その場合、AとYとの 関係をどのように解すべきかが問われる。これは、商法上の問題と関わる。 本件では、Aが商法上の「使用人」かどうかも争われているが、商法上の「使用人」と労基法、労契法上の「労 働者」は概念上重なる面がある。 商法上、使用人は、商人に従属する者で、指揮命令に服する者とされ る
)11(
。この点では、労働法上の使用従属関係 のなかでの指揮命令と類似する。ただ、この場合も、労働法上の労働者といえるためには、これに加えて、時間的 場所的拘束性が不可欠となる。さらに、賃金の支払いについて、報酬の支払方法が問われ る
)11(
。 本 件 判 旨 も、 「 商 人 の 使 用 人 に 該 当 す る か 否 か は、 実 質 的 に 見 て 指 揮 命 令 関 係 に あ る な ど の 事 情 か ら 被 告 に 使 用 さ れ て 労 務 を 提 供 し て い る と み ら れ る か 否 か に よ っ て 判 断 す べ き 」 と す る
(また、本件判旨は、Yが対外的にYの内立正法学論集第 54 巻第 ( 号((0(0) ((4
部組織として表示したか否か、代理店がYの内部組織であるという認識を被告が有していたか否か、Aがいかなる認識を有
し、表示をしていたかは、YのAに対する指揮命令の有無及び程度に影響する事情ではないと判断する)
。 指 揮 命 令 関 係 が あれば、商法上の使用人であるというのであれば、本件においても、YのAに対する指示の有無が問われ る
)11(
。 この点について、商法上の使用人であるといえる可能性がある、という指摘もあ る
)1((
。 ⒝ 高齢者雇用の再雇用等にあたっての労働契約の成否について 定年後労働者が再雇用されるにあたって嘱託の労働者としての労働契約が締結される。原告の多くは、定年まで 期 間 の 定 め の な い 労 働 契 約 を 締 結 し て い た
(正社員や大学の事件では教授であった)者 で あ る。 そ の 者 と 企 業 ま た は 大学との間で、期間の定めのある労働契約が成立しているかどうかが、問題になっている。企業または大学が、労 働者らの定年時に、再雇用のための期間の定めのある労働契約締結を拒否した事件において、労働契約の成否が訴 訟において問題になっている。 定年退職した労働者が、使用者によって再雇用を拒否されたケースにおいて、使用者と労働者との間で締結され る「雇用契約において賃金の額は契約の本質的要素であるから、再雇用契約においても当然に賃金の額が定まって いなければならず、賃金の額が定まっていない再雇用契約の成立は法律上考えられな い
)11(
」と判断された裁判例があ る。 賃 金 の 額 が 不 明 で あ る 以 上、 再 雇 用 契 約 が 成 立 し た と 認 め る こ と は で き な い と い う も の で あ る
(=(
事件とする)
。 また、九州惣菜事件 ・ 福岡高判平成二九年九月七日労働判例一一六七号四九頁では、使用者と労働者との間の交 渉 に お い て、 「 フ ル タ イ ム か パ ー ト タ イ ム か 及 び 賃 金 等 の 個 別 的 労 働 条 件 に つ い て 合 意 に 至 っ て い な い。 そ し て、
(……)定 年 後 再 雇 用 規 程 上、 就 業 条 件 等 は 個 別 に 定 め る、 再 雇 用 に あ た っ て 会 社 が 提 示 す る 労 働 条 件 は 正 社 員 時
((5 労働契約の成立に関わる最近の裁判例の分析(高橋賢司)
の労働内容と異なる場合もある、とだけ定められ、また、就業規則も、基本給及び職務給は、能力 ・ 技能 ・ 作業内 容 ・ 学 識 ・ 経 験 等 を 勘 案 し て、 各 人 ご と に 決 定 す る
(賃金給与規定)、 あ る い は、 基 準 内 賃 金 は、 時 間 給 と し、 職 務 の内容、勤務時間、技能能力等を勘案して各人ごとに定める
(パートタイマー就業規則)と規定するにとどまってい る か ら、 就 業 規 則 等 に よ り 賃 金 等 の 控 訴 人 の 労 働 条 件 が 自 ず か ら 定 ま る こ と は な い。
(……)交 渉 経 緯 等 に 照 ら し、 フルタイムかパートタイムか及び賃金の額を当事者の合理的意思解釈により決定することは困難である。このよう に 労 働 条 件 の 根 幹 に 関 わ る 点 に つ い て 合 意 が な く
(今後、合意が成立する見込みがあると認めることもできない。)、 当 事者の具体的合意以外の規範、基準等によりこれを確定し難い場合に、これらを捨象した抽象的な労働契約関係の 成立を認めることはできないというべきである。賃金の合意がなくても、抽象的に労働の提供と報酬支払の合意が あれば労働契約が成立するとの控訴人の主張は、これが、労働契約の成立につき明示的合意がない本件において、 上記見解を根拠に労働条件の合意がなくても労働契約関係の成立を認めることができるとの趣旨であれば、採用で きない」と説示されている
(=(
事件とする) 11)(
。 賃金額が不確定であるという理由から、労働契約の成立自体は否定されている。 さらに、定年後七〇歳までの再雇用にあたっての労働契約の成否が問われた事件において、労働契約締結時、原 告が大学の担当理事との電話において専任教員の労働条件について質問したが、同理事からの回答を原告が自らの ノ ー ト に 記 載 し、 そ の 定 年 に つ い て の 回 答 内 容 を、 『 定 年 六 五 才。 六 五 才 を 超 え る と、 一 年 毎 の 契 約 で 七 〇 才 ま で O K。 身 分 は 特 任 教 授。 P A Y は 七 割 に な る。 』 と 記 載 し た と い う 事 案 で あ っ た。 こ の 場 合 に 労 働 契 約 の 成 立 が 否 定 さ れ て い る
(=(
事件とする) 11)(
。 こ の 事 件 で は、
( ・
分について、労働契約の内容が確定しているようにも思われる点が指摘できる。その上、七〇歳までの継続雇用の ( 事 件 と は 異 な り、 期 間、 賃 金 額 と い う 労 働 条 件 の 重 要 な 部
立正法学論集第 54 巻第 ( 号((0(0) ((6
ための一年の期間の定めのある労働契約の締結を想定する発言まである。それでも、本件では労働契約の成立が否 定されている。 国際自動車事件 ・ 東京高判平成三一年二月一三日労働判例一一九九号二五頁は、定年退職後の再雇用について、 一 度 も 労 働 契 約 が 更 新 さ れ て い な い 者 に 対 し て、 損 害 賠 償 請 求 権 が 認 め ら れ る に す ぎ な い と し、 再 雇 用 契 約
(有期雇用契約)
の 内 容 の 特 定 が で き な い の で、 こ れ ら 労 働 者 と の 再 雇 用 契 約 の 成 立 を 認 め る こ と は で き な い と 判 断 さ れ た
(=4
事件とする)。損害賠償が認められたのは、再雇用拒否されたことに対する精神的損害についてであっ た
11)(
。 これに対して、外国人研修生の事件で、原告研修生らは、工場において、非実務研修をわずかしか行うことがで きず、技能実習生の作業とほぼ同様の作業に従事しており、かつ、残業等もしており、また、研修生手当を超える 一 か 月 当 た り 六 万 円 な い し 一 〇 万 円 の 金 員 が 支 払 わ れ て い た と い う 事 案 に お い て
(=明示又は黙示の労働契約が成立していたと判断されてい る
11)結 の 有 無 に か か わ ら ず 」、 被 告 会 社 代 表 者 と 原 告 研 修 生 ら と の 間 に は 少 な く と も 黙 示 の 労 働 契 約 が 成 立 し て お り、 社 ら の 指 揮 管 理 下 に お い て 縫 製 作 業 等 に 従 事 し、 研 修 生 が 労 務 の 提 供 を 行 っ て い る か ら、 「 形 式 上 の 労 働 契 約 の 締 5事件とする)、 裁 判 所 は、 会
(
。明示の労働契約なのか、黙示の労働契約なのかは定か ではない。 これらの事案は、労働者派遣とは異なり、労働者の契約の反対当事者が多数の当事者ではなく、主に使用者と労 働者との二者間の労働契約関係の存否のみが問題になっている。労働者派遣とは異なり、他の労働契約関係は認め られていない。 こうした事案では、労働者が使用者の指揮命令下において業務 ・ 作業に従事し、労務の提供を行っていたといえ る限り、形式上の労働契約の締結の有無にかかわらず、労働者と使用者との間の黙示の労働契約が成立していたと
((7 労働契約の成立に関わる最近の裁判例の分析(高橋賢司)
解するべきであるのは明らかである。但し、使用者の指揮命令下において労働者が業務 ・ 作業に従事し、労務の提 供を行っているのが、前提である。定年退職した後、再雇用を拒否された多くの事件では、労働者が使用者の指揮 命令下において新たに業務 ・ 作業に従事しておらず、労務の提供を行っていない。しかし、この場合でも、具体的 な労働条件を提示したうえでの使用者による口頭の採用の返事があれば、労働者と使用者との間で確定的な意思で ある限り、明示の労働契約が成立していたといえる場合もあ る
)11(
。
労 働 契 約 に お い て 賃 金 額 が 定 か で は な い 場 合
(特に重要な部分について、労働契約の内容が確定している場合には、労働契約の成立も可能なのではないかと思われる。 ( 事件のように、期間、賃金額という労働条件の
( ・ できる場合がある。例えば、高齢者の再雇用は、パートや嘱託社員等の名称での非典型雇用の場合が多いことから、 (
事件)、 法 令、 同 業 種 の 協 定 な ど に よ り、 賃 金 額 を 推 認
(労働者が主張する限りで)
最低賃金法に基づく都道府県別の最低賃金の額により労働契約における賃金額が補充さ れる、という解釈も可能であるはずである。労働者が使用者の指揮命令を受けて労務を提供しているが、使用者に よって賃金が支払われていないという事案においては、最低賃金法に基づく都道府県別の最低賃金の額により労働 契約における賃金額が補充され、当該賃金額についての請求が認められ得る。少なくとも、このような場合におい ては、最低賃金額での不法行為の損害賠償は認められる余地があると解される
(民法七〇九条)。 こ れ と は 異 な る 場 合 で、 賃 金、 労 働 時 間、 期 間 の 定 め の 有 無 と 内 容 等、 労 働 条 件 が 確 定 的 で は な い 場 合 に は
(前述の高齢者雇用の再雇用拒否事件においては)
、明示、黙示の労働契約が成立するのかという問題がある。 わ が 国 の 民 法 で は、 雇 用 契 約 の 成 立 に つ い て わ ず か な 規 定 し か 定 め て お ら ず
(民法六二三条等)、 ド イ ツ 民 法 と 比 べても、補充的な契約準則を欠いていることが知られてい る
)11(
。しかし、実際には、高齢者雇用の場合、他の高齢者 が再雇用されていることから、これらの他の労働者の賃金、労働時間、期間の定めの有無から、当該使用者の下で
立正法学論集第 54 巻第 ( 号((0(0) ((8
の就労のための諸条件を労働契約上推定できる場合が少なくない。そこで、高齢者雇用において再雇用拒否が問題 になるケースでは、当該同一の使用者において、他の再雇用された同種の労働者と同一の使用者との間の労働契約 における賃金額、期間から、当該労働者の賃金額、期間を推定できる限りで、労働契約の確定可能性を充足するか を検討し、それが認められる限りで、労働契約の成立が認められる余地があると解される。
約については改正前の法律の期間制限が適用されると説明され た
11)に と も な い、 塩 崎 厚 労 大 臣
(当時)の 説 明 で は、 平 成 二 七 年 改 正 法 施 行 日 時 点 で 既 に 締 結 さ れ て い る 労 働 者 派 遣 契 改正により、従来派遣可能期間を無制限としていた専門二六業務に関する労働者派遣制度が廃止された。この廃止
の二等)の 改 正 と そ れ に 伴 な う 労 働 者 派 遣 事 業 の 適 正 な 運 営 の 確 保 及 び 派 遣 労 働 者 の 保 護 等 に 関 す る 法 律 施 行 令 の 特 別 な 規 制 が 及 ぶ 専 門 二 六 業 務 と い う 旧 法 下 の 労 働 者 派 遣 制 度 が あ っ た が、 平 成 二 七 年 の 労 働 者 派 遣 法
(四〇条3
旧法下の専門二六業務に関する労働者派遣の場合の黙示の労働契約成立の可能性について(
。したがって、拙稿では、かかる派遣可能期間制 限違反に対して、改正後の労働者派遣法四〇条の六に基づく、派遣先による派遣労働者に対する「労働契約の申込 みみなし」は、適用されないことになると指摘し た
)1()(11
(
。 なお、答弁までの経緯と国会内外の論争の内容を説明すると、以下のようなものであった。 塩 崎 厚 労 大 臣
(当時)は、 先 に 述 べ た 答 弁 で は、 「 施 行 日 前 に 締 結 を さ れ た 労 働 者 派 遣 契 約 に つ き ま し て は、 そ の派遣契約が終了するまでは経過措置によって改正前の期間制限の適用を受けるということでございます」と答弁 している。 これは、井坂委員の質問に対する答弁である。
((9 労働契約の成立に関わる最近の裁判例の分析(高橋賢司)
井 坂 氏 は、 「 こ の 委 員 会 で も ず っ と 懸 念 を 野 党 側 か ら 示 さ れ て お り ま す 専 門 二 十 六 業 務 の 方 々。 …… こ の 問 題、 実際に、実社会でも雇いどめあるいは解雇予告というようなものが起こってきているゆゆしき問題だと考えますが、 …… そこで、例えばでありますが、法改正前の今時点で有期の専門二十六業務の方は、特例的に、その業務内容をし っかり確認した上で、何か証明書のようなものでも発行して既存不適格のような扱いにするなど、今後も期限制限 なしに、今行っている派遣先には少なくとも本人と派遣先が望めば行き続けられるようにできないか、このぐらい の手だては私は講じるべきだと考えますが、大臣、いかがでしょうか」と質問している
(途中略・
高橋)。 これは以下のような問題であった。 専門二六業務の場合、平成二七年改正以前は、期間制限なしに、派遣元が派遣先に派遣労働者を派遣できること となっていた。ところが、リーマン ・ ショック時には、専門二六業務を行う派遣労働者について、派遣先から労働 者 派 遣 契 約 を 終 了 す る 旨 を 受 け、 派 遣 元 が 派 遣 労 働 契 約 を 終 了 す る
(雇止め)あ る い は 解 雇 す る と い う 事 態 が 起 こ っ た
(いわゆる派遣切りという)。 こ れ は 質 問 者 の 井 坂 氏 が 指 摘 す る 通 り で あ る。 当 時 の 専 門 二 六 業 務 で は な い 派 遣 可 能 期 間 は、 一 年 な い し
(例外的な要件を満たした場合)三 年 と 規 定 さ れ て い た。 し か し、 専 門 二 六 業 務 に は 該 当 し ないのに、専門二六業務に該当すると主張して、派遣期間を一年ではなく、無期限に派遣するという偽装専門二六 業務派遣という問題が生じていた。専門二六業務には該当しないのに、専門二六業務に該当するとして、派遣期間 を
(原則であるはずの)一 年 で は な く、 無 期 限 に 派 遣 す る と い う 偽 装 専 門 二 六 業 務 派 遣 と い う の は、 専 門 二 六 業 務 に は 該 当 し な い 限 り で、
(当時の法律上の派遣可能期間である、一年の派遣可能期間を超えているので、)派 遣 期 間 を 制 限 す る 労 働 者 派 遣 法 四 〇 条 の 二
(当時)に 対 す る 重 大 な 違 反 で あ る と 考 え ら れ る。 こ の こ と が 問 題 に な っ た 裁 判 例
立正法学論集第 54 巻第 ( 号((0(0) ((0
も存在する が
)11(