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「福祉コミュニティ」概念の展開*

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f/1 [ll大学社会福祉研究所年報 創ll号(1999) 89へ109

「福祉コミュニティ」概念の展開*

稲 葉 … 洋**

1 「福祉コミュニティ」の文脈

 周知のように,コミュニティの意味内容は多義的かつ不明確である このことは福祉につい ても,同様と言わなけれぽならない。そしてこの両者は,今日ともに強い社会的関心を集め,

過度の期待と不安を込めて語られることの多い点でも共通している,,その合成語ともいえる

〈福祉コミュニティ〉も当然のごとく,魅力的な響きと印象を人々にL」iえはするが,その実態 は鮮明さを欠き,輪郭や意味内容も一定していない。福祉コミュニティは立場や視点により,

いくつもの見解や規定を確認できるが,「地域社会1と[社会福祉」の合成語である地域福祉概 念にみられる多様性とも,ある種類似の事情をもつと言ってよいにちがいない,、

 この用語をめぐる多面性や多様性といった事情は,多岐にわたる概念使用にも由来してい る。一般的に言えば,福祉コミュニティは地域で新たに形成される福祉やコミュニティの理念 もしくは期待,目標を示す概念として受けとめられる場合が多いかもしれないttしかしわが国 においては,地域福祉を構成する理論上の概念として登場しているだけでなく,ひとつの社会 状態を意味するものとして,具体的な活動や地域の内実を指す実態概念としても用いられるの である。さらに近年,福祉領域を中心に実践概念や政策概念としての重要性を高め,広く福祉 にかかわる用語として定着をみていると言ってよい。

 しかし用語としての定着化は,その意味内容の明確化を必ずしも意味せず,類似もしくは周 辺の用語との概念」二の区別も曖昧である.そこに福祉コミ=ニティが川いられる文脈やその理 論枠組みを詮索しないならば,1福祉化されたコミュニティ (榎本和子)や「福祉的地域社 会 (前田大作)とも同義語に見えるi 1.L.また幅祉!を冠することなく福祉関連領域で用いら れてきた[コミュ=ティ、1望ましいコミュニティ.「新しいコミュニティ」[真のコミュニ ティ1などと対置しても,その異同を判断するのに苦しみ,むしろ内容やイメージにも項なり 合う部分や場合が多いにちがいない。そして従来より,その形成化を1コミュニティ形成1や

[コミュニティづくり」,あるいは片仮名を用いないなら, 地域づくり1や 福祉のまちづく り、と表現してきたのである。それというのもコミュニティ(地域社会)は本来,福祉の要素

*Development of the Concept of Welfare Community in Japan

**Kazuhiro INABA 立II三大学社会福祉学部社会福祉学科

キーワード:福祉コミュニティ,地域福祉,住民参加,コミュニティ

       ー89

(2)

、ソll人学Z{会福祉研究所イ1報 創lllり〔1999)

を内包するのか望ましいし,またコミュニティの進化したものを福祉コミュニティとする見解 のイ∫:在など, ・般的に両川硫のIi:換性は高い とくに社会福祉分野では,これまでもコミュニ

ティ形成の課題として要援助者を受容し,支援を可能とするような機能の充実を求めてきた し,現在でも福祉コミ. Lニティというタームを改めて用いず,コミュニティ を以前と変わり なく使用する論者も少なくないのである、

 こうして福祉コミュニティの概念は,類似もしくは近似の用語が混在する状況のなかで浸 透・拡人してきたことにより,意味内容の一義性を欠き,その有用性や明確さを損なうかの印 象を与えていることも否めない さらに福祉コミュニティは,その形成化に向けての取り組み を進めても維持発展のプロセスを辿るのみでなく,なんらかの事情による消滅もみられるな ど,いまだ 虚構」であるのか,それとも[事実1であるのか判然としないかのようでもあ る それにもかかわらず福祉コミュニティを,望ましい地域・福祉の状態を表す理念や目標と

して掲げ, 虚構iから[事実1への転化をめざして,全国各地において幅広く多様な実践が展 開蓄積されていることは疑いのない事実といえよう。その概念規定の仕方によっても大きく異 なるであろうが,ノ〉日の段階では虚構であるとともに事実でもある,というのが福祉コミュニ ティをめぐる実相なのかもしれない、、

 この多大な期待とは裏腹に不鮮明さを合せ持つ福祉コミュニティの概念は,1960年代後半に 登場する地域福祉とその歩みと切り離して考えることはできない、、50年代半ぽに始まる高度経 済成長を直接の契機に,日本社会も未曾有の社会変動を経験するなかで,70年には高齢化社会 に突入するなど,福祉対象の拡大化・普遍化も急速に進み,従来の施設ケア中心の福祉サービ スに対する反省・批判とも相まって,新しい福祉のあり方や方向として台頭する地域福祉に,

福祉コミュニティは胚胎しているからである。そして地域福祉が注目されだした数年後には,

早くも福祉コミュニティなる概念がロス(M.G, Ross)のCO理論を摂取した岡村重夫によ り,地域福祉の先駆的な理論枠組みに位置づけられて,1970年代半ばにその姿をみせることに

なるのであるC21。

 日本社会に福祉コミュニティなる概念が登場して,すでに四半世紀を経過している。この用 語は地域福祉の推進展開に大きく影響を受けて今Uに至っているが,とくにクローズアップさ れるのは,社会福祉協議会が積極的な位置づけを始める1980年代以降のことと言ってよい。高 齢化の進展やノーマライゼーション理念の浸透を背景にした,地域や福祉をめぐる状況の推移 は,急速に 福祉コミュニティ、のタームを広めていくが,そこでは最初に提起された概念規 定を踏襲する論者も少なくなかったが,それと異なる意味内容を付与される場合がより一般的 であったといえよう 3.。それというのも福祉コミュニティは,もともと多様な見解を可能とす るような福祉とコミュニティの合成語であるだけでなく,社会福祉と地域性・共同性を積極的 に結びつけ,新たに地域的な課題となっているコミュ=ティや福祉の形成化を図るネーミング としてもすぐれていた点を看過できないだろう。

 このような福祉コミュニティは,現代福祉の重要概念に位置づけられながらも,今なお明確

      一90一

(3)

i福祁コミュニティ 概念の展開(稲葉)

で一義的規定をみない不鮮明な用語でもある1 この稿では,わか国における 福ネ【【コミュニ ティ1の登場以降に力点を置いて,その主要な意味内容や規定を,社会的背景や文脈にも留意

しながらアプローチすることにしたい そうした意味や内容規定をめぐる貝体的な展開を跡イ・1 けることにより,その概括的な流れを把握し,福祉コミュ=一ティの概念を構成する要fノ{や視点 の共通性とともに,そこでの異なる立場や規定にも整理検討を加えることにより,ノ>B的な福 祉コミュニティ諸概念の相bjの布置連関についても,その理解を深めるような作業をすすめる

ことを意図している

2 「福祉コミュニティ」以前

 ひとは一人で生きることができず,他者との生活を共有するが,その共同生活は一一定の地域 的広がりの上で営まれる。この文脈において地域社会は,人類にとって家族とともに普遍的な 集団といわれる所以があるのだろう。戦後の高度経済成長の進行により,日本社会も1960年代 には産業化の進展と表裏して,[都市化社会. を到来させている、,いわゆる都市化(urbanizat ion)は,地域社会(社会・生活・意識の構造)の変化のプロセスを言い表しているが,具体的 には都市人rlの増大や都市の農村への浸食を進め,自家処能力が低く専門的な処理システムに 依拠する都市的生活様式(urbanism)の浸透・拡大を招いていったc,これらの変動過程は同吋 に,全国各地において公害や環境破壊,過疎・過密問題を多発させ,家族の福祉機能や地域的 互助をも大幅に縮小・衰退させ,福祉問題やニーズの大幅な変容と拡人を生みながら,伝統的 な地域社会の解体化をも進展させたのである,

 わが国の地域社会を変容させたいま1つの要因は,急速な高齢者比率の増大による地域高齢 化の進行であったことは言うまでもないttこの事実は全国的な福祉対象の拡大化・普遍化を招

き,いわゆる高齢者問題を噴出させているが,その反面で わが国の場合,コミュニティの必 要性を高める決定的な要因がある、これこそ〈高齢社会の到来〉にほかならない」,51と言われ るように,地域高齢化がコミュニティ形成の契機を孕んでいる点にも,1一分留意しなくてはな らないであろう。未曾有の変動の波は,確実に地域社会とそこに生活する市民の暮らしや意 識,文化にも大きな変貌をもたらしている、、そこにいまや多くの解決を要する課題群のうち,

地域を拠点とした新たな福祉サービスの整備充実とコミュニティ形成も,不可避的に社会的対 応の求められる段階を迎えている.この2つの新たな課題を積極的に関連づけ,一体的に形成 化を図ろうとする意図のもとに地域福祉も構想され,その延長線hにやがて福祉コミュニティ

も登場することになるのであるrt

 こうした社会状況の中で,わが国のコミュニティ政策も,1969年の国民生活審議会答申「コ ミュニティ 生活の場における人間性の回復.」を嗜矢として,やがて広く市民生活にかかわ る国や自治体の政策上・実践上の戦略的用語として定着していくことになる。コミュニティへ

91

(4)

1

fl[ノぐ }f,icl!こWdネllイ研究戊り〒イト報  f言li|1」)」 (1999)

の関心の高まりは,社会福祉分野においてもイギリスの.シーボム委員会報告1(1968年)の強 い影響を受け,盛んに地域福祉や地域ケアの必要性が論じられるようになる コミ.、ニティ と‖、1期を1 」じくして1969年9月には,東京都の社会福祉審議会答申 東京都におけるコミュニ ティ・ケアの進展について1,ついで1971年には中央社会福祉審議会答申1コミュニティ形成 と社会福ネllか出されている、,この1970年を挟んで出された東京都と国の2つの審議会答申で は,コミュニティと社会福祉との関係の噴要性や地域社会を基盤とした福祉施策展開の必要性 か強調され,地域福祉・在宅福祉の推進や議論に多大な影響を及ほしたのは,周知のとおりで ある なおこの両答申では,いまだ福祉コミュニティという新しい用語こそ姿をみせていない か,福祉コミュニティ登場の背景や文脈を形づくることになる地域福祉のあり方や方策が,審 議会答申として初めて本格的に展開されている、

 わが国においてコミュニティケアの川語が公式に登場するのは,上記の東京都の答申におい てである そこでは暫定的と断りつつも,その規定を コミュ= ティにおいて在宅の対象者に 対し,そのコミュニティにおける社会福祉機関・施設により,社会福祉に関心をもつ地域住民 の参加をえて行われる社会福祉の方法 であると捉え,1そしてそこでは,社会福祉の各種サー

ビスがコミュニティ単位に有機的に統合されなければならない1ものと整理されている。この 答申では,コミュ・ニティケアの充実を必要とする一般的条件として,従来社会福祉の対象とな らなかった人びとにも範囲を拡人し,その内容も公害や孤独をも含む多面的なものとされ,さ らに施設からなるべく地域の中での援助をする方がよいことが提起されているu

 この都の答申において,これからの福祉コミュニティの検討をするヒで重要と考えられる点 を若li指摘しておきたい まずコミュニティケアの主体については,30年前の実情を反映して のことでもあろうが,公私の社会福祉機関や施設およびそこで働く人びとを主要な部分,つま り担いf として捉えている そのため地域住民については,コミュニティケアの将来的な充実 のためには,ド川1的な協力者としての住民に転化させなければならない]存在として措定さ れているにすぎない、またコミュニティケアー般において,コミュニティをどう考え規定する かについては,高度に抽象的なものである]として議論に入るのを避けている。その点につい ては,導人して日も浅く理論的,実践的な端緒性によるものとも考えられるが,コミュニティ

ケアか今日に至るまでケアに力点が置かれ,コミュニティへの分析・アプローチの弱さが改 まっていないこととも無縁ではないであろうL6c

 東京都の答申に2年遅れて出された中央社会福祉審議会 コミュ=ティ形成と社会福祉」

は,.1 コミュニティ形成の今日的意義、と;ll コミュニティ形成における社会福祉1の.二 部から構成されている、同答申の前半部分il コミュニティ形成の今日的意義」は,1コ ミ・Lニティ形成の必要性,2コミュニティ形成の基本的論理,3コミュニティ形成の方向((1)

コミュニティの定義,②コミュニティ形成の方向)の3つから成るが,最初の ]コミュニ

ティ形成の必要性一では,コミュニティを必要とする社会的背景を踏まえて,これから形成さ

れるべき新しい地域社会をくコミュニティ〉と呼び,このコミュニティの形成なくして国民の

       一一92

(5)

:福祉コミュニニティ 概念の展開(稲葉)

牛活福祉の向ヒはなしえない,とその必要性を強調している そうした国民の牛活福祉向Eの ために望ましいコミュニティづくりを進めるための12コミ.L=ティ形成の基本的論理 とし て,川生活優先の原則の貫徹,②生活の高密度の確保,(3)生活・地域情報の確保の3点を掲げ て説明している いわばコミュニティ形成のコンセプトと言い換えてもよい内容であり,経済 優先から脱却して人間的に豊かに生き続けるための基本的な拠点,人々の高密度な生活がバラ ンスをもって確保され,そして生活や地域の情報が} 分に確保され.るようなコミュニティの形 成が指向されている

 つづく13コミュニティ形成の方向]では,「〈コミュニティ〉とは,地域社会という生活の 場において,市民としての自主性と主体性と責任とを自覚した住民によ一,て,共通の地域への 帰属意識と共通の目標をもって,共通の行動がとられようとする地域社会の条件であり,また これを支えるその態度のうちに見出されるものである1と定義を行い,「生活環境を等しくし,

かつ,それを中心に生活を向トせしめようとする方向に一致できる人々が作りヒげる地域集団 活動にこそ,コミュニティが醸成される1と言うのである「それが社会学的な地域研究の成果 に立脚していることは明白であり,コミュニティ形成の条件もぴ同一地域に生活している人々 の集群であること(地理的規定),②その人々の生活Lの相ll:関連の体系であること(相口:作用 的規定),③その生活相互行動を一定地域内で果たさしめているところの生活環境諸施設の体 系(施設的規定),④この人々がもつであろう生活利害と行動の共通性を生み出す可能 hfkにみ ちた人々の共通行動体系(態度的規定)の4つが強調されている。

 かように規定されるコミュニティは,重層的で弾力的な存在ではあるが,同時に「現実の存 在概念というよりは,むしろあるべきもの, 自然にできるもの ではなく, 作っていくも の といってよいから,そのための戦略的ポイントとして,一定の範域を想定することもまた 必要である」としている、t以上のようなコミュニティの望ましい形成の方向として特に考慮す べき点として,(1)コミュニティ形成のi二台として地域の①社会資源の総合的開発整備と公私の 分担関係,②住民参加,とくにコミュニティは住民の.主体的エネルギーの誘導と水路づけの場 でなければならないことから,運動や計画的なコミュニティ形成の必要性が説かれている、.同 答申は,これまでの社会学を中心とした地域社会(コミュニティ)研究の成果と到達点を集約 するような内容といってよいだろう.そこでは高度経済成長の生みiHした現実対応として,コ ミュニティ形成を明確な社会目標に設定し,その実現に向けた考え方や方策が明示されてい る。ここではあくまでも,この答申のサブタイトルが示すように[生活の場における人間性の 回復.をめざし,生活福祉を確保する拠点としてのコミュニティー般が捉えられているのであ

る,

 答申の後半部分ほ コミュニティ形成における社会福袖も,1社会福祉とコミュニティ

((1)地域組織化事業と社会福祉協議会,(2)地域福祉施設,(3)コミュニティ・ケア),2地域福祉

施設整備の方向((1)地域福祉施設の体系,(2)地域福祉施設の設置及び運営,(3)地域福祉施設と

住民参加),3おわりに,の三部から構成されている.[1社会福祉とコミュニティ1は,コ

       ・−93

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、ソll人学利会福1{[1研究所イ[報 創lz[P 〉(1999)

ミ.、ニティ問題にアブPl 一一チしてきた社会福祉協議会による地域組織化事業の展開と現状を踏 まえ,その強化発展のための方策が提起されている.そこでは多様な牛活問題の激化や福祉 ニードの多様化か目S/:つなかで,地域組織化活動が重視されるようになってきたとの認識を示 し,その担い千である社会福祉協議会は,組織整備や活動の改善充実に努め,行政などの関連 領域との連携化や協働化の必要性が指摘される、そのためにも住民主体の原則が十分生きるよ

うな組織構成とし,活動の担い子であるコミュニティオーガナイザーの増員と質的な向上を実 現し,各種ボランティアの養成や地域住民との協力を不rl∫欠としているuまたその財政的基盤 についても,自1財源の確保とともに地方自治体の財政的援助が望ましいという、、活動面で は,住民参加を確保して住民ニードの発見と解決を図るとともに,地域福祉計画策定の努力は 今まで以上に要請されるが,その場合[校区 1連合区1など比較的小地域での活動に注目して いる そして.このような地域組織化活動を通して問題を解決し,そして住民の自主性を高 め,その相々+の連帯性を高めることができれば,この活動はコミュニティ形成の重要な役割を 果たすもの1として,地域組織化活動の役割可能性を積極的に評価している.

 つづいて② 地域福祉施設、がコミュニティ活動の核として,コミュニティ形成にとっても 小可欠の条件とされ,その動向や現状を踏まえて,主な施設種類の性格や機能を整理してい る,(3)「コミュニティ・ケア1では,今後社会福祉におけるコミュニティ活動で,とくに重視 すべきものはコミュ=ティケアの展開だといケ、わが国においては,依然として収容施設中心 の傾向にあり,コミュニティケアの発想と,それにもとつく施設の展開は十分ではないが,コ ミュニティ・ケアの発想にもとつく地域の施設,サービスに重点を移す必要があり,さらに

1コミュニティ・ケアの発展のためには,その発想のもつ積極面をIEしく評価し,福祉行政の 基本路線の…つとして確認すると同時に,このための施設,要員,サービスの充実をはかるこ とが何よりも大切であるiとして,明確に社会福祉におけるケア形態の転換を提起している点 で画期的であった、

 .2地域福祉施設整備の方向 では,(1)と(2)のコミュニティ形成の考え方に立って,目的や

形態も多様な地域福祉施設のシステム化を計画的に図るための施設の体系,設置や運営のモデ

ルが示されている.つづく(3)では,タイトルも地域福祉施設と住民参加となっているが,そこ

では地域福祉施設も住民自身のニードや積極的参加に基礎づけられることの必要性を強調す

る、具体的には,住民のニードを明確にするための調査,=一ドを解決するための計画,計画

にもとづき住民の参加・協力による活動展開につながり,地域組織化活動との関連性が指摘さ

れている、またご地域福祉計画1では,住民の参加は当然としつつも, その策定は主として

公私の機関,専門家集団が当たらなければならない など,計画段階からの形式的な参加を思

わせるような記述や,計画への当事者参加が自明視される今日の時点からすると,住民参加の

位置づけも消極的で,かなりの時間的な隔たりを感じるような点もあるc③ コミュニティ意

識の形成」では,1社会福祉における地域福祉諸施設の造成とその機能は,地域住民のコミュニ

ティ意識の形成とか,これらの施設利用を通して,相互:連帯性を強めることを直接には意図す

      94

(7)

福ネdコミュニテnI概念の展開(稲葉)

るものではない1が,地域住民の十分な参加が図られるならぽ,新しいコミ、tニティ形成の一・

翼を担いうるものであると言うのである

 このように答申では,社会福祉と地域社会との関係の重要性が再確認され,コミュ:=ティを 基盤とした福祉サービスや活動の必要性が強調されている.とともに社会福祉分野の取り組み か,今日国民的な課題として提起されている,コミュニティ形成の一翼を担いうることをもよ く示している。そして社会福祉のあり方自体も,収容施設中心}議から脱却して,コミ.、ニ ティケアを核とした方向への転換を提起し,その後の潮流となっていく地域福祉の基本的な枠 組みや内容を素描したものとなっていると言ってよい、,しかしこの答申が,地域福祉概念の形 成化や各地の福祉実践に大きな影響を与えたことは否めないにせよ,多くの指摘があるよう に,答申と同じ年に策定された「社会福祉施設緊急整備五ヵ年計画1により,従来の延長線f:

に福祉施設の大幅な増加が図られるなど,地域福祉への法制度的な転換は1990年の福祉関係8 法の改正を待たねばならなかったのである。また無理のないことではあるが,30年の月日の経 過により,その後の社会状況や政策的な変化,地域福祉にかかわる理論的・実践的な蓄積や経 験を経た今日的地点に立つと,既述のごとく色槌せてみえる点も少なくはない。とはいえ,こ こでの関心事である福祉コミュニティという概念自体を,そこに見出すことはできないが,そ の文脈や発想,方策や抱える課題といった点からは,その概念の登場も時間の問題といってよ いような内容となっていることも事実である。

 そもそも福祉コミュニティと不可分な[地域社会」と1.社会福祉」は,ともに住民の生活課 題の解決において深い相互連関をもち,その一方の展開が他方の抱える課題実現や克服の挺子

として作用するといった,いわば相補的な関係にある。そうした事実や関係性に着目してこの 両者を一体的に合成することにより,現代の拡大・深化する生活問題を解決するべく登場した のが地域福祉である,と言ってよいであろうttこのような発想や文脈で地域社会と社会福祉を つなぎ,コミュニティ形成とコミュニティケアをともに可能にするキイワードこそ,公私協働 化を前提とした住民参加に他ならないし,やがてその延長線Eに福祉コミュニティの登場をみ ることになるのである。

3 福祉コミュニティ概念の登場

 福祉コミュニティを最初に提起した岡村重夫は,1974年に1二‖行されたr地域福祉論』におい て,地域福祉の概念構成上,同用語に重要な位置づけを与えて措定している。そこでは地域福 祉概念の構成要素として,(1)最も直接的具体的援助活動としてのコミュニティ・ケア,(2)コ

ミュニティ・ケアを可能にするための前提条件をつくる地域組織化活動(一般的地域組織化活 動と福祉組織化活動),そして(3)予防的社会福祉の三者から成る理論枠組みを示し,「およそ系 統的・計画的な地域福祉活動は,これら三つの構成要素をそなえなければならない,(62頁)と

している。そして(2)の地域組織化活動は,一般的地域組織化活動と並置された福祉組織化活動

       ・95一

(8)

、ンll人学社会福紺りF究所年報 創刊)」(1999)

の2つに区分されているが,その後者の目標に掲げられたのが,[福祉コミュニティづくり1で

あった/ 1

 岡村重夫によると,地域福祉の中核的概念であるコミュニティケアをrT丁能にするのは,コ ミュニティに他ならない 岡村はコミュニティの基本的機能を,「同一性の感情 にもとつく  それ自身は社会福祉サービスではないけれども,それを支持し,受容し,<血の通ったも の〉にする基盤1(40頁)に求め,それをもって社会福祉がコミュニティ問題に関心をもたざる を得ないGi!iilだとしている.何故ならば,コミュニティがなくても最低の社会福祉サービスは 成立するが,それでは地域住民の支持や受容は期待できないことから,効果的な社会福祉サー

ビスや地域福祉活動にとって,コミュニティの存在は必要不可欠な前提条件になるというので ある、そこで求められるコミュニティは,ムラ的地域共同体ではなく,コミュニティの社会学 的研究の蓄積に依拠した,いわゆるく当為モデル〉のコミュニティ型地域社会の実現や転換が 目指されることになる、こうしたコミュニティ型に発展するように,地域社会構造に働きかけ るのが一般的地域組織化活動であり,それは地域福祉にとって望ましい地域社会構造や人間関 係の形成を課題とするものである,そうした1地域主体的態度]と「普遍丁義的権利意識1に 特色づけられるようなコミュニティは,「コミュ・ニティ・ケアの対象者を自分らの仲間として 受容し,支持し,彼にふさわしい社会的役割を提供し,共同生活者としての満足感をみたして

くれるものである,(67頁)として捉えられ,その積極的な意義が強調されている,t

 しかし同時に,このような一般的な(地域)コミュニティも,社会福祉のためのコミュニ ティ形成としてはなお不十分であり,その限界が指摘される、そこに一般的コミュニティを基 盤として,地域福祉にもっと直接的な関連をもつようなド位コミュニティづくりを指向した福 祉活動の組織化が必要になり,それにく福祉組織化活動〉の名称を与えている,この福祉組織 化活動のN標とするのが,機能的コミュニティとしの福祉コミュニティである、その存在理由 を,岡村は次のように説明している、現代の地域社会は,人々の生活関心や問題意識に応じて 多様なコミュニティ集団,卜『位コミュニティが多数成立している、この多数住民の関心や問題 意識に従って,一般的コミュニティが成立することを考えると,地域における少数者の問題や 要求は,むしろ下位コミュニティを形成する契機となる可能性が高い また少数者の生活一Lの 要求は,…般住民向けのサービスや環境条件の改善だけでは充足できないし,一般的コミュニ ティの自然発生的な相lll援助も,彼らをコミュニティの一員として受容し,支持するものは あっても,それによって何らかの特殊サービスとしての具体的な援助を期待しうるものではな い.(69頁)と,その守備範囲の限界を明示している,ここに地域コミュニティの下位コミュニ ティとして,共通の福祉関心を中心に特別なコミュニティ集団を形成する意義と必然性を見い だし,それを岡村は 福祉コミュニティ、と呼ぶのである,t

 そうした地域コミュニティと福祉コミュニティとの密接な協力関係の望ましさが強調されて

いるが,もしそのいずれか一方が存在しないならば,両コミュニティ間の関係自体もありえな

いことは言うまでもない.、この点について岡村重夫も,一般的コミュニティの重要性をくり返

       一 96

(9)

1福祉コミュニティ 概念の展開(稲葉)

し強調しているが,その存在をかならずしも福祉コミュニティづくりの前提条件としているわ けではないttむしろ一般的コミュニティが存在せず,少数者の問題や生活が無視されるような 状況においてこそ,自分の生活を守るために団結し,かれらの利益を代弁する者と協力して,

生活者としての自己を貫徹するための機構として.(71頁)の福祉コミ、、ニティは,なお.一層必 要不可欠であると明確に述べているのである[/

 このように位置づけられた1〈福祉コミュ=ティ〉は,福祉サービスを必要とする対象者と サービス提供機関・施設・団体との共同討議の場1(70頁)と規定され,そこでは福祉サービス の欠陥や関連制度の改善の必要を指摘したり要求する場であるだけでなく,公共機関が実施し ない福祉サービスを一時的に実施するものとして捉えられている。それはまた,1社会的不利 条件をもつ少数者の特殊条件に関心をもち,これらのひとびとを中心としてく同…性の感情〉

をもって結ばれるド位集団、(87頁)であり,.社会福祉サービスの利用者ないし対象者の真実 の生活要求を充足させるための組織体」(88頁)として福祉コミュニティを性格づけている、,

 こうした規定により福祉コミュニティ組織の構成員も,まず第1に,その中核になるのは現 実的または可能的なサービス受給者ないしは対象者であり,ついで第2に生活困難の当事者と 同じ立場に立つ同調者や利害を代弁する代弁者を,そして第3に各種サービスを提供する機 関・団体・施設を指摘している。この当事者主体の性格づけは,iがんらい福祉コミュニティ は,基本的にはいろいろな社会福祉サービスの現実的または可能的な受給者ないし対象者集団 のインターグループである1(98頁)との認識によく合致し,他にみられるようなサービス提供 者主体の組織化とは,その発想においても対局に位置していることがわかる。そこから福祉コ

ミュニティの遂行する機能としては,第1に社会福祉政策に対する住民参加ないしは対象者参 加(client s participation),第2に福祉情報の収集・整理と提供,第3に地域福祉計画のSZec,

第4に福祉コミュニティ内外にわたるコミュニケーシ。ン,第5に地域社会における社会福祉 サービスの新設と運営をあげている。

 このように岡村によって提起された福祉コミュニティ1は,地域社会のF位集団として一 般的コミュニティとは区別して対置されるが,ロス(M.G, Ross)の地理的コミュニティと福 祉コミュニティの両概念と対比すると,1一般(LFf)一ド位といったコミュニティ枠組みに

も類似性を確認できる。しかしそこで人きく異なるのは,岡村が福祉コミュニティを地域福祉 概念の構成要件に組み入れたことや,当事者中心の組織構成にして,要援助者の福祉追求や生 活欲求を充足する機能を明示している点にあると言ってよいだろう 81「岡村理論における福祉 コミュニティは,当事者中心に地域社会において福祉問題の解決や福祉形成化を進めようとす る,きわめて実践的で運動的色彩の濃い内容になっているだけでなく,氏の地域桔i祉枠組みに 独創的に位置づけて展開されることにより,その理論的特徴ともなっていると言ってよいi9),

97.一

(10)

1㌦ll人学ト|会福祁研究Jり〒年報 創刊り(1999)

4 全社協による福祉コミュニティ

 1971年の審議会答申にもとつくようなコミュニティケアを核にした地域福祉への転換は,新 しい社会福祉の方向として多人な期待を集めはしたが,その政策的な具体化か大きな前進をみ せるのは80年代後半以降のことと言ってよい、、だがその間にも,全国各地で法制度や予算的な 制約を受けながらも,顕在化する福祉ニーズへの対応を迫られ,地方自治体レベルでの施策化 や,社協・住民サイドの取り組みも広がりをみせ,調査研究の蓄積とも相まって,70年代後半 には地域禰ll.も,議論から実践の段階へと移行することになるttそうした状況の推移するなか で岡村の提起した「福祉コミ.、ニティ」も,地域や福祉の実践や方策にかかわる概念として,

氏の地域福祉理論における位置づけを離れて,異なる規定や使い方も登場してくるようにな る とりわけ社会福祉協議会(以下,社協)は,福祉コミュニティという用語に新たな意味内 容を付与して,地域福祉や社協実践の中に明確な形で積極的に位置づけて多用し,とくに社協 特有の組織的展開により,全国的に大きな影響を与えていくことになるのである、

 わか国において在宅福祉の概念規定や方向づけの有力な指針となった全国社会福祉協議会

(以ド,全社協)1在宅福祉サービスの戦略」1(1979年)をみても,福祉コミュニティへの言及 は少ないが,そこにすでに注目すべき内容を確認することができる10)、この報告書では今日,

再建か求められている新しい意味におけるコミュニティについて,住民のニー一ズ充足のための 圏域を意味する機能的コミュニティとコミュニティ意識の意図的な形成の2つの側面に分け,

それぞれ在宅福祉サービス展開との関連で検討しているが,ここでの問題関心に直接的につな がるのは後者に係わる議論においてである、,それによると,効果的な在宅福祉サービスの展開 にとってコミュニティ意識は重要とされ,地域における要援護者の受け入れやボランティアな との参加・協力も,人びとの福祉に対する意識・態度に大きく左右されることから,福祉意識 の意図的な醸成や福祉活動への参加促進の必要性か指摘されている、またそこでの議論を集約 する形で,1在宅福祉サービスの効果的な展開のために,必要なニーズの充足に必要な社会福 祉の施設・サービスが用意され,それに加えて,これらの在宅福祉サービスを地域住民か受け 入れ,なんらかの形でこれらのサービスを支持,協力,参加する態勢がつくられることが重 要!(113頁)だと主張して,仮にこのような条件を整えたものを福祉コミュ=ティと呼ぶなら ば,その形成は在宅福祉サービスの一つの目標であるとともに,在宅福祉サービスの効果的展 開のための必要条件だと結論づけているのであるUじ.

 このL在宅福祉サービスの戦略!において,仮にと断りつつも下した上記の規定が,岡村の 当事者を中心にした福祉コミュニティの捉え方と同一でないことは言うまでもない。やや遅れ てFJ行されているが,この報告書の姉妹編ともいうべきr在宅福祉サービス組織化の手引き』

(全社協,1980年)では,地域福祉の内容との関連で福祉コミュニティは,より一層明確な位

置づけをされていくことになる。そこでは地域福祉の内容を凝縮して,⑦物的,制度的条件改

       一98一

(11)

福刊コミュニティ 概念の展開(稲菓)

善を含む地域福祉の基盤づくりと要援護者に対する援護の確ltL,ぼ予防的,援助的,福祉増進 的活動の推進,③住民参加による 福祉コミュ=ティ 形成,の3点に要約している これを さらに再構成して図示したく地域福祉の内容〉からみると, 在宅福祉サービス (r・防的福祉 サービス,専門的ケア・サービス,在宅ケア・サービス,福祉増進サービス),,環境改善サー

ビス、(物的条件,制度的条件),「組織化活動1(地域組織化,福祉組織化)の3つより構成さ れている。この図(地域福祉の内容)はその後長く社協関係のみでなく,地域福祉分野で広く 使用されることになるが,それを構成する3要素のうち,「組織化活動1の一方の柱である地域 組織化が 住民の福祉への参加・協力,意識,態度の変容をはかり福祉コミュニティづくりを すすめる ための活動とされ,福祉コミュニティ形成の役割を担うものと位置づけられてい る、地域組織化に関する重点事業としては小地域住民福祉活動,ボランティア活動の促進,要 援護者・家族の組織化が挙げられている,

 このr手引き.1 では,福祉コミュニティの形成を地域組織化の目標に位置づけ,いま一力の 福祉組織化を「サービスの組織化・調整・サービス供給体制の整備,効果的運営1をはかるも のとしているf/それは同一のタームを用いながらも,岡村重夫による一般地域組織化が地域コ ミュニティの形成,福祉組織化が福祉コミュニティの形成を意味しているのとは明らかに異 なっているnここではそのことの是非を問うよりも,福祉コミュニティという同一の用語を用 いながらも,その意味内容に一義性を欠き,その理解に混同の生じる一囚となっている点にの み注目しておきたいt/なお『壬引き』では,市町村社協の事業として,いまだ実験段階にある 在宅福祉サービスを根づかせて育て,地域福祉の進展をはかることが全国の社協に課せられた 今日的課題であるとして,コミュニティづくりにおいても社協は,従来の一般コミュニティづ くりから福祉コミュニティづくりに転換することを積極的に奨励している。そこでの「福祉コ ミュニティづくりは,要援護者にしっかり焦点をすえ,これらの人々を受け入れ,4三活を実際 にささえる援助体制をつくることを中心に,地域住民の中に協働と連帯をおしすすめるのであ る (71頁)から,結果的にその取り組みは,意識や行動}tもコミュニティづくりの内容を深め ることになると説明されているu当然のことながら,先にみた全社協の地域組織化の説明文に 従った福祉コミュニティの内容と一致することは言うまでもないが,改めて岡村の当事者}三体 の捉え方と対比するならば,住民の連帯・協働による住民参加をつよく指向した内容であるこ とは疑いない点であろう.

 市区町村社協の法制化の実現にあわせて,1982年には社協の性格や機能を明らかにし,その 基盤整備の確立を意図してr社協基盤強化指針…解説・社協モデルJlが全社協より出されてい

る。この社協基盤強化という実践的色彩の濃い指針は,1978年より4年の歳月をかけ,調査研 究や検討,討論を経て決定されているが,そこでは地域福祉時代に対応した市町村社協の機能

と事業の基本方針として,1.地域福祉の中核的機能をにない専門性を高める,2.活動の焦

点を明確にする,3,福祉コミュニティ形成にとりくむ,以上この3点にまとめているtt本稿の

関心に即して言えば,市町村社協にとって福祉コミュニティの形成が,その目標としてはじめ

       ・ 99一

(12)

tt[1人学判会福トll研究所/ltW 創11」U一日999)

て,公式的かつ明確に掲けられたのである

 このll訓」 村利協の目標として提示された福祖コミュニティかどのような概念,意味内容をも つものとして指針で捉えられているかを確認しておくことにしよう 同指針によると,そもそ

も:福祉コミ:、.ニティの形成は,社協本来の課題であり,創、膓1以来,社協活動の中心課題とし てとりくんできたもの (]3頁)であるといケ,つまり巾町村社協にとって,なんら特別な目新

しいものではなく,新しいとすれば用語それ白体にすぎないということになろう.このことは 指針が,巾町村社協による福祉コミュニティの形成にとってrE要な事業が増えているとしたヒ で,全体的に見直さなければならない課題を以ドのようにまとめていることからも明らかと いってよい そこに整理された5つの課題を列挙してみよう,

 ,1:一般に福祉のまちづくり・風トづくりとして展開されている取り組みには,そのL体とな るべき当 1緒やその抱える問題がなおざりにされるなどの例も少なくないが,要援護者やその 具体的な問題を市民の参加や協力の中で解決していくものでなければならない,:2福制のまち づくり運動を(A型=市区町村の全地域を対象に福祉の風トづくり・E壌づくりをねらいとし て展開,B型=老人や障害者のためのまちづくりなど特定の課題をもとにすすめる, C二小地 域を設定し住民の生活や環境ヒの問題をとりあげる)の3つに類型化し,それらは一般的に包 括的で具体性に欠けるとし,在宅福祉サービスの推進には小地域を単位として当事者を原点 に,福祉コミュニティの形成に焦点をおいてとりくむ必要がある,③福祉コミュニティの形 成,とくに住民の意識や態度は当事者(家族)との間で展開される実践活動によって変容する のであり,そうした試みを地域の中で育て拡大発展させていく中で,地域社会を変容させてい く運動のとりくみが大切である,④福祉コミュニティの形成には福祉施設や学校・公民館など の公共的施設の果たす役割が大きく,それらと市町村社協の 在宅福祉サービス推進協議会1 をつなげ,地域における教育や活動をより具体的にしていくことが必要,⑤コミュニティ形成 においてボランティア活動の果たす役割は大きく,ボランティアの開拓的な活動をrfi民に拡げ ていくことが大事である,以Eの5点に整理して説明されている。

 これら整理された項目をみてみると,各地における福祉問題の解決や福祉システム形成に とって不可欠な取り組みであり,いずれも以前から実現すべき課題として社協に寄せられてき た内容や期待である しかし同時にそれは,つねに理念と実態との乖離を指摘され続け,それ でもなお社協に強く求め続けられている事柄に他ならない.これらの活動や事業を,指針で小 された基本方針の視点から見直し,地域福祉時代に対応する新しいコミュニティ形成を生み だ一(13頁)す方策としているが,それが先にみた.在宅福祉サービス組織化の手引き」,(1980 年)において示された;地域組織化 の事業・活動と,軌を一にしていることは明白である.

それゆえに各市町村社協が進めてきた 福祉のまちづくり、も,ごく自然に福祉コミュニティ の形成,もしくはそれに向けた取り組みと理解されてきたのである、

 福祉コミュニティという用語は,それ以降社協関係において広く採用されるようになってい

く、ちなみに,1984年に刊行される∫地域福祉計画一理論と方法.一』(全社協)でも,1地域福

      一100一

(13)

福ac[iコミユ:・アイ 概念の展開(稲葉、

祉計画とは,<地域福祉♪の推進を〈t3i画〉]三法により,合理的,効率的かつ総合的にはかる ために提起されたもの.(21頁)と規定し,そこで社会福祉の八本的視点とまちづくりの八本 的視点を踏まえて実現をめざす総合的な構想 を構想計画と呼び,そのト伺漂である3つの

.基本目標 として,環境改善サービスや在宅福祉サービスづくりとともに,福祖.コミ1. :一 ティづくりが掲げられているのである

 しかしながら1992年に地方公共団体の策定する地域福祉の6}1}h|を 地域福祉、1 1画 と表ユ見1 整理し,社協をはじめとする民間の活動・そj動計【Ebiを1地域福祉活動i h由l iと命名し、た 地域 福祉活動計画策定指針 基本的な考え方と策定方法 や,この策定指針報告をもとに発行され た『地域福祉活動計画策定の手引、1では,福祉コミュニティ の川語は使わ才1ていない、また 同年の1新・社会福祉協議会基本要項.や翌93年の ふれあいネットワークプラン2121川紀 をめざす社会福祉協議会発展・強化計画 1でも,同様に使川されていない このように1990 年代以降の全社協の新要項や計画関係から,福祉コミュニティのタームを確認することの鄭L いものもあるが,同協議会の刊行する雑誌や報告書の類では相変らずよく川いられている1,

いまや全社協を代表する和田敏明も1社協は福祉コミュー=ティづくりを使命とし,あらゆる活 動・事業をとおして,常にそれをめざすことが必要である IL と至って明快である また

[1997年社会福祉協議会活動実態調査」(全社協, F成10年3月)でも,rlJ区IH」村における多様 な社協事業の取り組みに1社会福祉協議会活動実態調査からみた福祉コミュニティづくりの状 況1というタイトルを付けるなど,福祉コミュニティが社協にとってキイワードであること に,些かも揺らぎはみられない、そして都道府県や市区田∫村レベルの社協における福祉コミュ ニティの用語の浸透と定着も,やはり確実に進展していると言ってよいだろう、

5 90年代の福祉コミュニティ論

 これまでみてきた1970年代半ばから80年代にかけての福祉コミュニティは,岡村重夫によっ て当事者中心の地域コミュニティのド位集団として提唱されたのを皮切りに,やかて:浦文夫 や全社協により,当初と異なる意味内容を意図的に付与されて広く用いられていくことにな る、既述のように,サービス整備と住民の意識・態度形成を要件とする地域福祉のli的に位置 づけられたり,また社協においては地域組織化の目標に据えられもしたし,社協本来の課題と して取り組まれてきた活動・事業に他ならないともされた、だがいずれの場合であっても,福 祉コミュニティが社会福祉を焦点にして,地域福祉の枠組みや推進Eの重要なタームに位置づ けられている点での共通性は,容易に確認することができるようなものであった

 これらの福祉コミュニティの捉え方は,意味内容に一致をみないにせよ,すべて地域福祉と いう枠組みや文脈に沿っての議論や位置づけと言ってよいだろうt/しかし福祉コミュニティ概 念をめぐる関心や視座,用語の使用と規定の広がりは,これらにとどまるものではなかった、

というのも地域福祉や在宅ケア,社協活動や福祉実践といった社会福祉への問題関心を含みつ

       一101

(14)

、㌦Ii人学引会福祉研究所イト報 創1:ij U−(1999)

つも,それと異なる文脈や視点に、1/1脚した新たな福祉コミュー=ティ論が登場してくるからであ る つまりそれは,従来の社会学的なコミュニティ論の延長線1:に位置しながらも,そこに福 祉の内在化や形成化をn〈 U∫欠の要素として追求し,アプローチする福祉コミュニティ論であ

る とくに90年代に人ると,社会的福祉制度の改革も急進展をみせ,市町村を基盤として福祉 ンステム・サービスの形成化が,具体的な行政や地域の重要課題として切迫する状況で,福祉 コミュニティもより一層明確に期待と必要性を高めることになるのである.そうした背景をも つゆえに,同時にまた福祉コミュニティは政策概念としても,その姿を登場させてくることに なるのである

 福祉コミュニティに社会学的なコミュニティ・アブP一チを採るのは,奥田道大,越智昇な どの都市社会学者をその典型とする。この社会学者を中心とする福祉コミュニティ研究の成果 としては,東京都社会福祉協議会「福祉コミュニティ構想1研究委員会(委員長・奥田道大)

の報告書1福祉コミュニティを拓く 大都市における福祉コミュニティの現実と構想一づ

(1991年)がもっとも代表的なものといえよう,13)。この報告書は,東京都社会福祉協議会のなか に設けられた委員会が丸. 年の歳月を費やして,大都市における33の事例調査を中心として,

その前後に福祉コミュニティの視点や背景,推進方策や展望への考察を含めて福祉コミュニ ティの現実と構想が語られている,この研究委員会で実施された事例調査の中心分野は,①長 い歴史と深い経験を拍つコミュニティ形成・まちづくり運動,②21世紀につながる問題群を地 域課題として受けとめようとしている先駆事例,③運動の新しい担い手をさぐることに置かれ ているが,これらの点からしても,従来の地域福祉領域で展開された福祉コミュニティと重複 や交錯する部分も少なくないにせよ,その焦点の違いを十分に示唆しているものといえよう.

 実際,同報告書において奥田道大は,i福祉コミュ=ティのありかたは,コミュニティ自体の ありかたでもある,逆に言えば,福祉コミュニティの発想を欠くコミュニティは,コミュニ ティの内実に値しないことになる (3頁)と言い,また「やや単純化して言えば,コミュニ ティ(the Community)の定義と福祉コミュニティのそれ、とは,相互交替的である1(12頁)と

して,福祉コミュニティは本来的なコミュニティの姿,もしくはあり方に他ならないと言うの であるttそこには「コミュニティ の延長線上,もしくは深化の方向に福祉コミュ=ティが捉 えられていることを確認できる、こうして福祉コミュニティを,コミュニティのあり方や内実 として捉える発想や理解は,社協の委員会報告という形でありながらも,これまでの地域福祉 理論や社協事業を焦点にした福祉コミュニティの位置づけとは,その基底に共鳴する要素を内 在させながらも,およそ異なる意味づけや文脈をもつ点は看過できないものがある,と言わな けれぽならない。

 同研究委員会による大都市各地域のコミュニティ形成・まちづくり,福祉やボランティア活

動の実際から,福祉コミュニティの新しい可能性をさぐる作業を通して,福祉コミュニティ

が共通の地平でとらえられだしたこと1(12頁)を確信し,「各活動・運動ともに,福祉コミュ

ニティを避けては通れない,そのような時代の地平を迎えた.(13頁)ことを確認している。そ

      一一102一

(15)

福祁コミーLニティ 概念の展開〔稲抱

してこのことこそが福祉コミュニティかなぜ,いま問題とされるかの理川だと奥田は1}うが,

いまやコミュニティ論自体が,福ltll.コミュニティ化を視野に人21ざるを得ないことの表明でも ある,事例を学び終えて,福祉コミュニティの 共通の理解としては,川人と人との基本的結 びつき,②地域生活の新しい質を含んでいること だと整理を加え,福祉コミ。ニティの内実 は,〈洗練と成熟〉にある一(227頁)と結論づけているが,その定義をドすことについて奥田 は,一つの立場や視点での定義はないと、「うのが実情だ,と述べて慎IEに回避している  この研究委員会報告において,福祉コミュニティの定義が全くみられなかったわけではな い「委員の一人である越智昇は,1980年代前半に}ftくも,障害児の自k訓練会のようなアソシ エーションを受けとめるコミュニティ,つまり福祉コミュニティとはf,・Jかを問い,1福祉コ ミュニティとは,コミュ=ティの特殊な側面における型を意味するものではない コミュニ ティの本質課題が福祉コミュニティである[ t「1と語っている、その後ほほ1 年を経過しte委員 会報告書において越智は,福祉コミュニティを私的と称しつつも,生活地域を意識した住民 諸階層が,自発的創造的な連帯活動のなかから,共通しあるいは関連した福祉的牛活課題を共 有分担して,長期的展望にむけた学習と実践でとりくむ生活様式をつくり出す この過程は,

単線的ではなく,自我を組みかえる試行錯誤の過程として自覚されねばならない、そうした文 化の形成とそれを基底にした人的物的ネヅトワークが,都市の経済的・政治的・行政的諸施策 を組み変えて,人間的社会環境とく安心と情熱〉を発展的に保たせ,グP一バルな異質性をも 吸収していく そのような新しい共同社会をさす (275頁)と定義している、この越智による 規定は,地域福祉文化の視点から,新しい共同社会として福祉コミュニティを捉えて位置づけ

ようとしている点に特徴がある、そこでの福祉コミュニティは,あくまでもコミュ::ティの成 熟した姿として受けとめられ,空間構造と意味世界を含む概念として,さらにく分担と親睦〉

の文化原理をしてコミュニティの本質だと言うのである.こうした社会学的なコミュニティ論 やコミュニティ形成,もしくはそれに近似した立場や視点からのアプローチも,多様な福祉コ

ミュニティ論の一系譜をなしていると言ってよい「

 こうした.コミュニティ1形成に方向づけられた福祉コミュニティ論の広がりとともに,と くに,90年の福祉関係8法改正により法制度.ヒも地域福祉時代を迎え,福祉コミュニティを福 祉政策上の概念としても登場させることになる.ちなみに1993年4月には,社会福祉事業法第 70条2の第1項の規定に基づき, 国民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための 措置に関する基本的な指針 が策定されているが,そこでは福祉活動への参加の促進に当たっ ての考え方として,⑦自主性の尊重,②公的サービスとの役割分担と連携,C3)地域福祉の総合 的推進,④皆が支え合う福祉コミュニティーづくりの4点が指摘されているttそれらはいずれ

も相互に密接な関連をもつものではあるが,とくに④は実際に,福祉コミュニティというター一 ムを用い,さらにその内容を;地域社会の様々な構成員が互いに助け合い交流するという 広い意味での福祉マインドに基づくコミュニティーづくりを目指す」(傍点筆者)ものと捉え て,その形成化を目標に掲げていることに留意すべきであろうt)

      −103一

(16)

、」

ノll人 }勾i会福祉研究所{ri一報 創日」}J L1999)

 この参加の基本指針を受ける形で同年7月には,中央社会福祉審議会・地域福祉専門分科会  ポランティア活動の中長期的な振興方策についてi(意見具申)が出され,そこでは21世紀の 福祉社会に向けてのボランティア活動の振興策か提piされている この意見具申では, ボラ

ンティア振興のノ〉目的意義1が5つの柱に整理されているが,その2番目に 福祉社会の基礎  福祉コミュニティの形成か指摘されている、ここにも福祉コミュニティというタームが先

の指釧と同様に採川され,その内容については,1そもそも福祉コミュニティとは,福祉という 共通の価値観を共有し,ともに生きるという思想に立って,ともに理解し共感し,地域におい てさまざまな形で福祉を支え合うものである1と説明されている、、またこのような福祉コミュ ニティを支えるのは,地域住民の参加をはじめとして,福祉サービスを利用する当事者,提供 する団体・機関や施設,自治会,商店会,老人クラブ,さらには近年新たに企業,労働組合,

牛活協同組合,農業協同組合,住民相々1が助け合う自主的なサービス団体などを列挙してい る そこにはボランティア振興という文脈に即して,福祉コミュニティが住民の価値観や意識 に深くかかわるものであり,地域における多様な参加を重視して,地域でともに福祉を支え合 うところに形成されるものと捉えられている,これら1993年に出された参加の基本指針と意見 只中は,政策的な理念やあり方が同一の方向性を持つことは周知の事柄であるが,社会福祉の 政策課題を示す戦略的用語として福祉コミュニティ概念をともに採用し,そこでは参加・地 域・福祉をキイワードとする,地域や福祉の今日的形成化が目指されていることを,改めて確 認しておきたい

6 福祉コミュニティの構成要件

 わが国における福祉コミュニティ概念の用いられ方をここまで辿ってきたが,地域や福祉を めぐる状況変化に影響を受けて発展してきただけでなく,それぞれの立場や視点によっても多 様な意味内容が付与されていた。そこに現在の時点においても,福祉コミュニティの意味内容 に見解の一致がみられず,それがこの用語をめぐる混乱や誤解をもたらす一因ともなっている ことは否めない、だが広く用いられる福祉コミュニティに複数の視点や立場,捉え方や規定が あるとはいえ,そこには差異のみでなく,共通の社会的背景や認識,それを構成する要件を見 出すことも可能であろうし,また重要であるにちがいない。というのも福祉コミュニティが,

ときに魅力的な用語として安易に用いられる際であっても,そこには今日的課題として登場し てきた福祉やコミュニティについての,一定の共通する価値や認識とも言うべきものの存在を 否定できないからである。

 福祉コミュニティが, 福祉 と コミュニティ の合成語であることは言うまでもない、こ

の両用語から構成されるがゆえに,福祉コミュ=ティのタームを用いる場合には,その程度に

差はあるにしても,福祉とコミュニティを一体的に,もしくは積極的に関連づけて捉え,今日

人類史的にも重要な課題となっている新たな共同性を培い,地域や福祉の形成化を図ろうとす

      一一104一

(17)

福ネ1【コミュ:=ティ1概念の展開(稲葉)

る点での共通性を持っているといえよう「ここに福祉コミュニティの構成要仲とt、ては,何よ りもまず1福祉1とロミュニティ を指摘することが自然であり,また必要なことであるに ちがいない一その2つの要件を踏まえたトで,福祉コミュニティ形成化の基底もしくは不川欠 の条件となるような要素を析出することになろう,、ただしその第3の要件析出の作業は,複雑 な千順や手続きを必要としない.というのも先の両要件ともに,いずれも人々の問に一一定の共 同性と関係性の再構築をめざしているという単純な」渓に着目するならば,政治・行政過程へ の参加に限定されない,より広い意味での「住民参加1を構成要件の1つに加える,という紀 論に自ずと帰着するからに他ならないtt

 どのような福祉コミュニティであれ,人々の抱く関心や思いを形にしたり,市民相tl:の交流 や協働の積み重ねを必須としているが,その具体的な表れとしての参加のないところに福祁.コ ミュニティが存在したり,形成されることぱありえない。換言すれば,いかなる福祉コミ、、ニ ティ概念であっても,人びととのかかわり・関係性の内実に大きく依拠していることから,そ の形成Eのポイントが住民参加にある,とする点では完全に一致しているとJi ってよいであろ うil°1/このように析出された1福祉」と「コミュニティ1に,「住民参加1を加えた,以ヒ3つ の要件に着目して,それぞれの要件ごとにみられる視点や内容の異同にアブP一チすることに より,混沌と見える多様な福祉コミュニティ概念に一定の整理を加える作業を進めることにし たい。そこで以下,それぞれの要件ごとにポイントと考えられる点を列挙すると,次のとおり であるる。

 (1)福祉.  福祉それ自体が多義的な用語でもあるが,福祉コミュニティの使用される文 脈においてはtいまだ意味内容の一致をみないとされる地域福祉が考えられていると言ってよ いだろう、というのも福祉コミュニティの用語自体,地域福祉の台頭とともにその枠組みに位 置づけられて登場をみているだけでなく,今や社会の福祉化が避けられない状況に直面する中 で,地域福祉が社会福祉の基本的なあり方や方向として定着をみていることによる,=それは単 に福祉領域内の認識にとどまらず,地域アブP一チを採る社会学者などにも広く共通してい るtそうした共通性は,地域福祉推進や在宅サービスの整備充実の必要性を共通の認識として いるが,同時に一定の地域福祉枠組みに福祉コミュニティを位置づけている場合とそうでない 場合があり,その区分が重要である一前者は福祉コミュニティの意味内容も比較的明確なのに 対して,後者では期待される目標もしくはイメージ的に用いられることが多い.いわゆる地域 福祉領域の著書や報告書では両者ともに確認できるが,それ以外の領域の場合は後者の用語法 によって占められている.

 ②;コミュニテ川  福祉コミュニティはその名称の一方を構成し,地域性と共同性を契

機とするコミュニティの理解や内実によっても,大きく左右されている。そこでは単なる地域

性というよりも,人びとの共同性が強調される点に共通性があるし,コミュニティが福祉的要

素を内在させることの必要性をも含意している。そのことは社会学の集団類型で言えば,アソ

シエーションと呼ばれてよいような集団が,機能的コミュニティとして捉えられ,福祉コミュ

       

ー−

105−・・

参照

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