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土木学会論文集の完全版下投稿用

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水工学論文集,第57巻,2013年2月

山間地河川における

物理環境と生息場の多様性についての検討

AN EXAMINATION OF DIVERSITY OF

PHYSICAL ENVIRONMENT AND HABITAT IN A MOUNTAIN STREAM

米倉瑠里子

1

・清野聡子

2

・田井明

3

・中田正人

4

・岸昌仁

5

Ruriko YONEKURA, Satoquo SEINO, Akira TAI, Masato NAKATA and Masahito KISHI

1学生会員 九州大学大学院 工学府海洋システム工学専攻(〒819-0395 福岡県福岡市西区元岡744) 2正会員 博(工) 九州大学大学院准教授 工学研究院環境社会部門(同上)

3正会員 博(工) 九州大学助教 高等研究院(同上)

4正会員 博(工) YSI/Nanotech Inc 応用技術部(〒210-0005 神奈川県川崎市川崎区東田町8番地) 5非会員 YSI/Nanotech Inc 営業技術部(同上).

In mountain streams, it is assumed that microforms create various river regimes and habitat. But, there are not many studies of microforms in mountain streams. In this study, we conducted a survey in the Ohoyama River,a tributary of the Chikugo River. First, we observed the detailed flow regimen by using River Surveyor M9 and gathered algae attached to rocks. Second, we predicted water depth and flow velocity for each flow rate using 2D numerical analysis. As a result of the current analysis, we clarified the relationship of the flow regimen and the amount and species of algae attached to rocks. In addition, we examined the possibilities for applying this type of study to river environment regeneration.

Key Words : Mountain stream, microforms,attached algae, environmental restoration

1.

はじめに

流水力は基質の粒径や性質,水路の形態に影響し1) 河川に多様な物理的環境を形成する2).水生生物は水深, 流速,河床状態の違いで棲み分けを行う3)ので多様な物 理環境が存在する場には多様な生物相が存在する. 河川の物理的環境と生物の関係性解明を目的とした研 究,特に河川中流域の砂河川における河床形状や生物分 布の分析は多くなされており,一定の成果が矢作川や淀 川の河川整備事業に利用されている4),5).一方で山間地 河川においては,従来,河川中流域に見られる砂州に代 表される砂礫河川とは異なる,多様な流れ環境と生息環 境を形成していることが認識されているものの,流況や 生息場の多様性に言及した事例は少ない6).山間地河川 において下流ほど解析が盛んでいない理由として,急峻 な渓谷部での観測の困難さが挙げられるが,今日の観測 技術の発達により克服しつつある. 本研究では,山間地河川の流れ場の多様性および物理 環境と生物環境の関連性を調べるために,筑後川上流を 対象に検討を行った.筑後川上流の流量は,松原ダムに よる発電用取水によって大幅に減少し,流域特産の大型 で香り高い「ひびき鮎」も姿を消したと考えられており, 流域では河川環境の再生が検討されている7).この筑後 川上流における著者らの先行研究で選定した区間におい て,(1)詳細な流況観測と河川の一次生産者である付 着藻類の定量的調査,(2)観測結果をもとに平面二次 元数値シミュレーションにより対象区間の流況および藻 類の分布状況の予測を行い,河川環境再生事業における 活用について検討した.

2.物理環境の現地調査

(1)手法 はじめに,調査区間の詳細な流速・水深分布および河 床形状を計測した.観測には,流速や水深に応じた周波 数,ドップラーモード,セルサイズを自動的に調節し, 浅い水深まで高精度の連続計測が可能である超音波ドッ

(2)

プラー流向流速分布・流量計(River Surveyor M9, SonTek/YSI 社製)を用いた.次に,巨石や岩盤などの 河床材料,植生および瀬や淵の配置といった河床平面地 形を把握するために空中写真を撮影した.空中写真撮影 に際しては,渓谷部でも高解像度の写真を撮影可能なラ ジ コ ン ヘ リ コ プ タ ( Multi Rotor UAV , Draganfly Innovations 社製)を用いた.測定した流速・水深分布と 空中写真を重ね合わせることで,山間地渓流の複雑な流 況を図化した. (2)結果 調査当日の流量は,対象区間の下流端で5.3 m3/sで あった.約1755m2の領域で8932点(観測密度:0.2 m2/ 点)の水深,流速分布を計測した.図-1,2に対象区間 の水深および平均流速の空間分布を示す.水深について は,対象区間では縦断方向に水深の深い区間と浅い区間 が連続している.流速については,平均流速の大きい主 流は,上流で右岸側に存在しているが,河道の最も狭窄 している付近からは左岸側に遷移している.また,巨石 周辺で流速分布が複雑になり,下流側に緩速域が生じて いること,左岸側岩盤周辺は流速,水深ともに大きいこ とが分かった.図-3に対象区間における底層流速のベク トルを示す.底層流速の大きさの分布は,平均流速の分 布と類似性を示した.水深が深い領域と浅い領域を比較 すると,深い領域の方が底層流速は小さい傾向にある. 水深が深い領域では,流向はほぼ一定方向を向いている が,水深の変化する地点や巨石周辺で流向が複雑に変化 していることが確認できた. (3)考察 対象区間は,階段状早瀬と淵の組み合わせが連続して おり,山地渓流に見られる典型的な地形であるといえる 8).平均流速の大きい主流でも,底層付近になると流速 は小さくなり,深さ方向に流れが複雑に変化しているこ とが分かった.また,狭窄部,巨石周辺や階段状早瀬下 の滝壺状の地形になっている箇所では,流向が複雑に変 化し,攪乱度合いが高いことが予測される.岩盤付近は 水衝部になっているため,淵が形成されたと考えられる.

3.付着藻類の調査

(1)手法 対象区間において瀬・淵・よどみなどの生息場スケー ル,巨石などの微生息場スケールの地形類型を参考にし, 28点の調査地点を選定した.各調査地点において自然石 を4個ずつ採取し(アユのはみ跡が確認できる石礫は除 外),上面からブラシを用いて1個につき5cm×5cmずつ 付着物をこすり取った.付着物のうち4分の3はホルマリ ンを用いて固定し,種の同定用のサンプルとした.残り は採取後,冷暗した状態で速やかに解析室へと持ち帰り, ろ紙(GF/C, 1µm,WhatmanJapan Ltd.)で吸引ろ過し, 90%アセトン溶液で24時間抽出した後,吸光光度法によ りクロロフィルa(Chl-a)およびフェオフィチン(Phe) 図-1 水深分布 図-2 水深平均流速分布 図-3 底層流速分布 (m) (m/s) (m/s) 10m 10m 10m flow flow flow

(3)

水工学論文集,第57巻,2013年2月 を測定した. (2)結果 (a)クロロフィルaおよびフェオフィチンについて 図-4に調査地点および地点におけるChl-a量を示す. 図中番号が調査地点のNo.を,地点の色がChl-aの量を表 している.特にChl-aが高かった地点はNo.3,No.8, No.14でありChl-aが低かった地点はNo.17,No.26であっ た.各地点におけるChl-aおよびPheと平均流速,底層流 速,水深の関係を図-5に示す.Chl-aは平均流速では 0.4~0.8m/s,底層流速では0.2~0.4m/s にピーク値を有す 凸 の 分 布 を 示 し , 水 深 と は 比 較 的 弱 い 正 の 相 関 (R=0.37)が確認された.Pheは平均流速,底層流速と は負の相関を示し,水深とは1.0m付近に最少値を有す凹 の分布となった. (b)付着藻類の種組成 28地点中6地点(No.3,No.6,No.17,No.19,No.25, No.26)で種の同定を行った.表-1に各地点における種 類数および総細胞数を示す.総細胞数が最多はNo.19, 最少はNo.17であった.種類数が最も多かったのはNo.3 で,最も少なかったのはNo.25であった.珪藻綱が各地 点で最も多くの種類が確認された.付着藻類の分布と特 に相関が強いと考えられる底層流速および水深と,各種 の比率(藍藻・珪藻・緑藻の細胞数が総細胞数に占める 割合)との関係を図-6に示す.円グラフ中の数字は調査 地点の番号を示す.底層流速0.6m/s ,水深0.7m 付近を 閾値として,水深が深く底層流速が小さい地点では珪藻 が優先し,水深が浅く底層流速が大きい地点で藍藻が優 先していることが確認された.表-2に各点において総細 胞数に占める割合が高かった種名を示す.すべての地点 において確認された種は珪藻綱アクナンテス科ツメケイ ソウ属のAchnanthes convergens と藍藻綱ネンジュモ目ヒ ゲモ科ビロウドランソウのHomoeothrix janthina である. 上記二種の細胞数の合計が各点において総細胞数に占め る割合はNo.3,No.6,No.17,No.19,No.25,No.26の順 に44.5%,60.6%,75.4%,65.6%,72.9%,80.4%であっ た.緑藻綱に関しては,No.26において緑藻綱カエト フォラ目カエトフォラ科スチゲオクロニウム属の Stigeoclonium sp. が1.8%存在し,緑藻綱が占める割合が 比較的高く,他点では1%未満となった. (3)考察 河川付着藻類に関する既往研究において,以下のこと 1 2 3 4 5 6 10 7 8 9 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 図-4 Chl-aの空間分布 表-1 各地点における種の構成 総細胞数※ 種類数 藍藻 珪藻 緑藻 合計 No.3 599,503 3 33 2 38 No.6 946,650 2 25 2 29 No.17 73,616 3 28 0 31 No.19 1,465,981 3 26 2 31 No.25 646,022 2 20 1 23 No.26 832,350 2 24 1 27

※cells and filaments/cm2

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 0 0.4 0.8 1.2 1.6 2 2.4 Ch l-a (μ g /c m 2水深平均流速(m/s) 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 0 0.4 0.8 1.2 1.6 C h l-a (μ g /c m 2底層流速(m/s) 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 0 0.5 1 1.5 2 C h l-a (μ g /c m 2水深(m) 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 0 0.4 0.8 1.2 1.6 2 2.4 P h e (μ g /c m 2水深平均流速(m/s) 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 0 0.4 0.8 1.2 1.6 P h e (μ g /c m 2底層流速(m/s) 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 0 0.5 1 1.5 2 P h e (μ g /c m 2水深(m) 図-5 Chl-aおよびPheと流況の関係 (µg/ml)

(4)

が把握されている.第一に,付着藻類の発達は,成長の ための資源(栄養塩,光,水温),外力(流速,流砂 量),底生動物や魚類等の摂食の三項目に支配される9) 第二に,平常流量時の流速は,その大きさに応じて懸濁 物質の沈積による遮光が付着藻類の成長阻害,新鮮な栄 養塩の連続的な供給が成長促進を引き起こす等,付着藻 類の現存量と密接な関係を有している10).第三に,付 着藻類の付着様式はいくつかのタイプに分類され,付着 様式は藻類の基質への付着力を規定する一因であるため, その場の外力や外力に対する耐性と密接な関係がある 11).第一,第二の条件に関して,流速が増加すると, 河床付着物内部への栄養塩の供給量が増加し,一次生産 速度が増加する12)と同時に,基質からの掃流力も増加 するため,剥離量も増加するといえる.したがって,付 着藻類の現存量が最も高くなる流速のピーク値が存在す ると考えられる.図-5より,死んだ藻類の指標である Pheが流速と負の相関を有しているのは,掃流力が増加 するほど剥離しやすいためと考えられる.生きている藻 類の指標であるChl-aの分布より,付着藻類の現存量が 最も高くなるのは,底層流速が0.2~0.4m/s ,平均流速 が0.4~0.8m/s の環境であると考えられる.水深との相 関は,水温,日射量等に関係があると予測される.また, 種組成においても,藍藻綱の大部分を占めていた Homoeothrix janthinaは付着力が強い糸状伸長型の付着様 式であり,底層流速が大きい早瀬であるNo.17,No.26等 17 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 0.2 0.6 1 1.4 底 層 流速( m /s水深(m) 藍藻 珪藻 緑藻 26 25 19 6 3 17 図-6 各藻類の比率と流況の関係 で藍藻が優先したと考えられる.反対に,珪藻綱の大部 分を占めていたAchnanthes convergensは直立型の付着様 式であり付着力が弱い.したがって,底層流速が小さい 水際や,淵であるNo.3,No.6,No.25等で珪藻が優先し たと考えられる.付着力が弱い付着様式である滑走型の Naviculaも,底層流速が小さいNo.6,No.25で検出割合が 高くなった.

4.数値シミュレーション

(1)概要 対象区間の流況を浅水方程式を用いた平面2次元数値 解析により再現した13).地形データはRiver Surveyor M9 で計測した河床地形と,河道内の巨石や河岸の実測デー タを合成することで詳細に制作したものを使用した.境 界条件は,上流端に上記の流量,下流端に水位を与えた. 流量は,夏季平常流量の5.3m3 /s ,出水流量の20m3/s の 計2通りを採用した.流量20m3/s に関して,当流量は流 域で現在求められている維持流量の候補の一つでもある. 計算格子は一般曲線座標を用い約1m2とした.計算時間 間隔を0.02秒とし,定常となるまで計算を行った. (2)結果 図-7に再現された水深および流速の空間分布を示す流 量5.3m3 /s 時の再現結果は,実測値より水被り域が過大 となっている.水深,流速ともに定性的な分布状況は実 現象と類似性を示すが,全体的に過大な値となっている 出水時の流量20m3/s の再現結果については,左岸側が 水没し,右岸側岩盤に沿うように主流域が存在している. 流量別の流速,水深の面積配分をヒストグラム化した結 果を図-8に示す.割合が高くなるのは,水深は流量 5.3m3/s の予測値,実測値,流量20m3/sの順に0.2~0.4m, 0.4~0.6m,0.6~0.8m,平均流速はすべてのケースで値 が等しく0.2m/s 以下の領域であった. (3)考察 シミュレーション結果は実際の値より多少過大に水深, 流速を算出している傾向にあるが,巨石周辺の緩速域, 早瀬の高速域の分布および水衝部の淵の流況等(図-7 表-2 各点における優先種 1位 2位 3位 4位

No.3 Achnanthes convergens Homoeothrix janthina Melosira varians Gomphonema inaequilongum

No.6 Homoeothrix janthina Achnanthes convergens Navicula cryptotenella Navicula yuraensis

No.17 Homoeothrix janthina Achnanthes convergens Nitzschia inconspicua Chamaesiphon sp.

No.19 Homoeothrix janthina Nitzschia inconspicua Achnanthes convergens Encyonema silesiacum

No.25 Achnanthes convergens Achnanthes convergens Nitzschia inconspicua Navicula cryptotenella

(5)

水工学論文集,第57巻,2013年2月 (a) 水深(Q=5.3 m3/s) (b) 水深平均流速(Q=5.3 m3/s) (c) 水深(Q=20 m3/s) (d) 水深平均流速(Q=20 m3/s) 図-7 数値シミュレーションの結果 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 面積 (%) 水深(m) 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 0 -0 .2 0 .2 -0 .4 0 .4 -0 .6 0 .6 -0 .8 0 .8 -1 .0 1 .0 -1 .2 1 .2 -1 .4 1 .4 -1 .6 1 .6 -1 .8 1 .8 -2 .0 2 .2 -2 .4 2 .4 -2 .6 2 .6 -2 .8 2 .8 -3 .0 3 .0

-グラフ タイトル

系列2 系列3 Q=5.316m3 Q=5.3m3/s(予測値) Q=20m3/s (予測値) Q=5.3m3/s(実測値) 30 25 20 15 10 5 0 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 面積 (%) 平均流速(m/s) 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 0 -0 .2 0 .2 -0 .4 0 .4 -0 .6 0 .6 -0 .8 0 .8 -1 .0 1 .0 -1 .2 1 .2 -1 .4 1 .4 -1 .6 1 .6 -1 .8 1 .8 -2 .0 2 .2 -2 .4 2 .4 -2 .6 2 .6 -2 .8 2 .8 -3 .0 3 .0 -グラフ タイトル 系列2 系列3 Q=5.316m3 Q=5.3m3/s(予測値) Q=20m3/s (予測値) Q=5.3m3/s(実測値) 水深平均流速(m/s) 60 50 40 30 20 10 0 図-8 各ケースにおける面積配分 (b)黒枠内)は精度よく再現されており,ある程度定 量的な流況は再現可能であるといえる.誤差は,地形 データの不足によるものと考えられる.シミュレーショ ンの結果より,20m3/s の出水時に右岸側の岸(図-7 (c)黒枠内)が水没し,水深0.7m 以下,平均流速0.8 ~1.2m/s 付近になることが予測される.この状況はChl-aの値が高く,藍藻の優先する環境といえる.アユは藍 藻を好んで摂食するので11),アユの良好な餌場となる 可能性が高い.流量20m3/s 時の実現象との比較として, 現地写真による両岸の水際線や特徴的な巨石の水没状況 等の比較を行ったところ,対象区間において,20m3 /s の出水時では,シミュレーションとおおよそ同じ領域が 水没することを確認した.また,今年度に数日続いた同 規模の出水後も,黒枠内では特にアユのはみ跡が多く確 認されている. (m) (m) 10m 10m 10m 10m (m/s) (m/s)

(6)

5.おわりに

本研究で得られた知見を以下にまとめる. 1) 山間地河川では多様な付着藻類の分布が存在する. 2) 対象区間において,底層流速0.2m/s~0.4m/s ,平均 流速0.4~0.8m/s の領域で付着藻類の成長が良い傾 向にある. 3) 対象区間において,底層流速0.6m/s 以上,水深 0.7m 以下の領域で藍藻が優先し,底層流速0.6m/s 以下,水深0.7m 以上の領域で珪藻が優先する傾向 にある. 4) 対象区間において,詳細な地形データを使用した 平面二次元数値シミュレーションにより,流況の ある程度定量的な予測が可能である. 本研究において,従来認識されている程度に過ぎな かった山間地河川の物理環境と生息場の多様性が定量的 に示された.現状での中小河川の治水計画においては, 横断面形状の測量後に数値解析を行うことが推奨されて いるが,横断面形状は概略設計時に約100m間隔,詳細 設計時に約20m間隔のものを使用することが多く14),生 息場評価においても,このような治水計画のスケールを 適用している例が多く存在する.本研究において,山間 地河川の20m平方内の空間を,均一の物理環境・生息場 として扱うことの問題点が改めて浮き彫りになったこと は,生息場評価における適切なスケールを検討していく 上で,大変有用であるといえる.また,アユが選好する と言われる藍藻の繁殖しやすい物理環境が本研究で示さ れた.対象区間において平常時で干上がっている右岸側 の岸(図-7(c)黒枠内)は,流量20m3/s 時にアユの良 好な餌場となる可能性が高く,アユをシンボルとして環 境再生の研究がなされている筑後川上流においては維持 流量制定時の科学的根拠となり得る. 山間地河川においては,管理者である自治体の財政面 上の問題から詳細な測量・設計が難しい現状が存在する 14).この問題に対しては,代表区間を設定し,本研究 のように,解析対象区間を短くした上で管理区間内で部 分的に詳細な観測を行うことや,数値シミュレーション を併用することで,対応可能であると考えられる.その 際に,管理区間内の河道特性を代表する区間や,流域に とって景観的・生物学的に重要な区間を,代表区間とし て選定することで,河川整備事業の高度化に貢献できる と考えられる.山間地河川は,ある点を境に河床勾配な どの河道特性が急激に変化することが特徴であるので, 本河川の他領域においても同様の観測を行い,今回の結 果と比較することで,他河川においても適用可能である 代表区間の選定法を検討することを,今後の課題とする. 謝辞:本研究の空中写真撮影は高崎総合コンサルタント, 藻類同定には河川生物研究所,生物的環境調査には大分 県日田市,現地観測には九州大学環境流体力学研究室な らびに生態工学研究室の皆様の御支援を頂いた.ここに 記して謝意を表する. 参考文献

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