望ましい運動部活動 の在り方 (三訂版)
平成25年4月
茨城県教育庁保健体育課
改訂にあたって
県教育委員会では,平成9年3月に,運動部活動の指導が学校教育活動の一環として,効果 的に行われるよう「望ましい運動部活動の在り方」を刊行し,平成14年3月に改訂を行い,平成1 6年7月に策定された「茨城県スポーツ振興基本計画」を受け,平成18年1月に一部改訂を行いま した。
今般,一部の顧問教員による生徒への体罰の状況が把握されたことや柔道の部活動中の重大な 事故が発生していることなどから,今回は,三訂版として「運動部活動における体罰の防止及び 事例に基づく研修資料」や「頭部外傷を主とした運動部活動における安全対策」を中心に改訂を 行いました。
さて,学校における部活動については,平成20・21年の学習指導要領改訂時に,部活動がこれ まで果たしてきた意義や役割などが評価され,「スポーツを通して,学習意欲の向上や責任感,
連帯感の涵養等に資するもの」など,学校教育の一環として教育課程の関連が図られるよう留意 することと中学校と高等学校学習指導要領の総則において教育課程に関連する事項として明確に 示されたところです。
また,平成24年3月に策定された「スポーツ基本計画」では,運動部活動の具体的な施策とし て,「 生徒のスポーツに関する多様なニーズに応えた中学校及び高等学校の運動部活動の充実を促進 し,生徒の運動部活動への参加機会を充実させるため, 複数校による合同実施やシーズン制等によ る複数種目実施,総合型地域スポーツクラブとの連携等運動部活動における先導的な取組を支援 する。」と柔軟な運営等を行う取組を一層促進することをあげております。
各学校におきましては,これらの趣旨を踏まえた運動部活動の充実の推進をお願いするととも に,本指導資料を広く活用して運動部活動についてさらに理解を深められ,先生方の指導によ り,一層充実した運動部活動が展開されることを願っております。
平成25年4月
茨城県教育庁保健体育課長 齋 藤 文 夫
第31集 学校体育指導資料「望ましい運動部活動の在り方(三訂版)」
主な改訂内容 1 改訂内容
ページ
改訂後 改訂前
P 2
中・高等学校学習指導要領 第1章 総則
(中学校H20年9月,高校H21年11月)
小学校学習指導要領 解説 体育編
(H20年8月)
中・高等学校学習指導要領 第1章 総則
(中学校H10年12月,高校H11年3月)
小学校学習指導要領 解説 体育編
(H11年5月)
P6 地域と連携を図る開かれた運動部活動の在 り方
学校週5日制の趣旨をふまえた運動部活動 の在り方
P21 体育活動中の事故防止
死亡・重度の障害事故の概要等
平成15・16年度
本県中・高等学校における事故発生状況 P29 心肺蘇生法の手順
心肺蘇生ガイドライン2010による
心肺蘇生法の手順
心肺蘇生ガイドライン2005による P50 県内の総合型地域スポーツクラブ数と創設
状況を追加
Q19 総合型地域スポーツクラブとはどの ようなものですか。
2 追加内容
ページ
内 容
P 4 中・高等学校の運動部活動参加者数と外部指導者数の推移(平成20年~24年)
P15
<安全指導・安全管理のポイント>
・ 競技団体等の安全マニュアルの確認
・ 屋外では,天気予報の確認と急変に備えた適切な措置の2項目を追加 P27 表「熱中症の症状と重傷度分類」
集団活動における熱中症対応のポイント P32 AED使用の手順
P33 頭部及び頚部の事故 P37 体罰を防止するために
P62 資料8 運動部活動指導中における個人情報等の盗難事故防止について
平成19年1月18日付け 保体第3588号 通知 P63 資料9 運動部活動の実施に伴う適切な運営について
平成19年4月26日付け 保体第3717号 通知 P65 資料10 部活動における適切な指導について
平成25年1月10日付け 保体第1514号 通知 P67 資料11 運動部活動における事故防止について
平成24年12月27日付け 保体第1463号 通知 P69 資料13 「スポーツ基本法」の概要
文部科学省 平成23年8月 施行 P72 資料14 「スポーツ基本計画」の概要
文部科学省 平成24年3月 施行 P69 資料15 体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について
平成25年3月13日付け 24文科初第1269号 通知 P69 資料16 学校等の柔道における安全指導について
平成22年7月14日付け 22文科ス企体第7号 通知
目 次
I
運動部活動の意義と留意点等 --- 1
1 意義 --- 1
2 学習指導要領における運動部活動の位置づけ --- 2
3 運動部活動の現状 --- 4
4 運動部活動の課題 --- 5
II
地域と連携を図る開かれた運動部活動の在り方 --- 6
1 新しい視点に立った運動部活動の展開 --- 6
III
運動部活動の運営 --- 8
1 指導体制の確立 --- 8
2 顧問の役割 --- 8
3 運動部活動運営の配慮事項 --- 9
IV
活動計画の作成と実践指導例 --- 16
1 活動目標の設定 --- 16
2 活動計画の作成 --- 16
V
安全管理と事故防止 --- 21
1 体育活動中の事故防止 --- 21
2 安全管理の方法と内容 --- 23
3 緊急時連絡体制(例) --- 24
4 応急手当(RICE療法,骨折の応急手当,熱中症,心肺蘇生法) --- 25
5 頭部及び頚部の事故 --- 33
6 事故責任 --- 35
7 訴訟例 --- 35
VI
体罰を防止するために --- 37
1 「しない」・「させない」・「許さない」 --- 37
2 運動部活動における体罰の防止 --- 37
3 体罰に関する主な判例 --- 39
4 事例に基づく研修資料 --- 42
VII
運動部活動Q&A --- 43
Q 1 専門的知識や専門的技能をもっていない顧問の場合の指導はどのようにすればよいですか。 --- 43
Q 2 初心者の指導や入門期の指導で留意することはどんなことですか。 --- 43
Q 3 体力や技能の差がある場合の指導はどのようにすればよいですか。 --- 43
Q 4 新年度における「チームづくり」の留意点はどのようなことですか。 --- 43
Q 5 効率的な練習はどのようにすればよいですか。 --- 44
Q 6 長期休業中の練習の進め方はどのようにすればよいですか。 --- 44
Q 7 生徒が多い部の指導はどのようにすればよいですか。 --- 44
Q 8 練習意欲を喚起するにはどのようにすればよいですか。 --- 44
Q 9 会議や出張等で顧問が練習に出られない時はどのようにすればよいですか。 --- 44
Q 10 学校に希望する運動部が設置されていないが,中学校体育連盟・高等学校体育連盟主催大会に参加したいと いう生徒の取り扱いについてはどのようにすればよいですか。 --- 45
Q 11 他校に運動部活動の指導を依頼するにはどのようにすればよいですか。 --- 46
Q 12 対外試合などの引率の時,留意することはどのようなことですか。 --- 46
Q 13 合宿をするときの留意点はどのようなことですか。 --- 47
Q 14 教員特殊業務手当てとはどんなことですか。 --- 47
Q 15 朝の練習はどのようにすればよいですか。 --- 48
Q 16 合同合宿や合同練習の手続き等はどのようにすればよいですか。 --- 48
Q 17 過呼吸への対応はどのようにすればよいですか。 --- 48
Q 18 複数校合同の運動部活動を実施するときに配慮することはどのようなことですか。 --- 49
Q 19 「総合型地域スポーツクラブ」とはどのようなものですか。 --- 50
Q 20 高校入学前の中学校卒業生が出身中学校や進学予定の高校の運動部の練習に参加するにはどのようなことに 留意すればよいのですか。 --- 51
Q 21 運動部活動の外部指導者とはどんな人ですか。 --- 52
Q 22 外部指導者を導入する場合,留意することはどんなことですか。 --- 52
Q 23 顧問と外部指導者との役割分担はどのようにすればよいですか。 --- 52
Q 24 外部指導者との連携はどのように図ればよいですか。 --- 53
VIII
参考資料 --- 54
資 料 1 卒業生及び入学予定者の部活動への参加について --- 54
資 料 2 学校に該当する運動部がない生徒の体育大会参加について --- 56
資 料 3 中学校体育大会の開催に伴う業務に従事する教職員の服務の取扱いについて --- 57
資 料 4 運動部活動等の生徒引率における旅客運送無許可バスの利用禁止について --- 58
資 料 5 自家用車の公務利用に関する取扱要項の運用について --- 58
資 料 6 児童生徒の運動競技について --- 59
資 料 7 中学生の国民体育大会への参加について --- 61
資 料 8 運動部活動指導中における個人情報等の盗難事故防止について --- 62
資 料 9 運動部活動の実施に伴う適切な運営について --- 63
資 料 1 0 部活動における適切な指導について --- 65
資 料 1 1 運動部活動における事故防止について --- 67
資 料 1 2 茨城県スポーツリーダーバンク設置要綱 --- 68
資 料 1 3 「スポーツ基本法」(文部科学省 平成23年8月施行)の概要 --- 69
資 料 1 4 「スポーツ基本計画」(文部科学省 平成24年3月)の概要 --- 72
資 料 1 5 体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について --- 77
資 料 1 6 学校等の柔道における安全指導について --- 79
I I 運 運 動 動 部 部 活 活 動 動 の の 意 意 義 義 と と 留 留 意 意 点 点 等 等
1 意 義
運動部活動は,学校教育活動の一環として行われており,スポーツに興味と関心を持つ同好の生 徒によって自主的に組織され,より高い水準の技能や記録に挑戦する中で,スポーツの楽しさや喜 びを味わい,豊かな学校生活を経験する活動である。
この運動部活動は,生涯にわたってスポーツに親しむ能力や態度を育て,体力の向上や健康の増 進を図るだけでなく,学級や学年を離れて生徒が自発的・自主的に活動を組織し展開することによ り,生徒の自主性,協調性,責任感,連帯感などを育成するとともに,仲間や教師(顧問)との密 接な触れ合いの場として大きな意義を有するものである。
これを学校教育活動に位置付け,顧問をはじめとして学校が関与することにより,生徒のスポー ツ活動と人間形成を適切に支援するとともに,生徒の明るい学校生活を一層保障し,生徒や保護者 の学校への信頼感をより高めることにつながっている。さらには,運動部の取組がその学校の一体 感や愛校心を醸成するということも現に認められる。
生涯スポーツの 推進
体力の向上と 健康の保持増進
運動技能水準の 向上
明るく充実した 学校生活の展開
社会性の育成 豊かな人間性の
育成 個性の伸長
学校教育活動における
運動部活動の意義
2 学 習 指 導 要 領 に お け る 運 動 部 活 動 の 位 置 づ け
学校における部活動は,大きな教育的意義を有しているが,平成20・21年の学習指導要領改訂時 に,部活動がこれまで果たしてきた意義や役割などが評価され,中学校と高等学校学習指導要領の 総則において教育課程に関連する事項として明確に示された。
中学校学習指導要領 第1章総則第4の2(13) 高等学校学習指導要領 第1章総則第5款の5(13)
生徒の自主的,自発的な参加により行われている部活動については,スポーツや文化及び科学 等に親しませ,学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等に資するものであり,学校教育の一環 として,教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際,地域や学校の実態に応じ,地 域の人々の協力,社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を 行うようにすること。
中学校(高等学校)教育において大きな役割を果たしてきている部活動については,前回の改訂 により中学校学習指導要領に言及がなされなくなっていた。これについて,平成20年1月の中央教 育審議会答申においては,「生徒の自発的・自主的な活動として行われている部活動について,学 校教育活動の一環としてこれまで中学校教育において果たしてきた意義や役割を踏まえ,教育課程 に関連する事項として,学習指導要領に記載することが必要である」との指摘がなされたところで ある。
本項は,この指摘を踏まえ,生徒の自主的・自発的な参加により行われる部活動について,
① スポーツや文化及び科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養,互いに協 力し合って友情を深めるといった好ましい人間関係の形成等に資するものであるとの意義,
② 部活動は,教育課程で学習したことなどを,自らの能力・適性,興味・関心等に応じて,日 常的に実践したり,より深く追求したりしていく機会であることから,第2章以下に示す各 教科等の目標及び内容を踏まえて活動を行うとともに,生徒自身が教育課程において学習す る内容について改めてその大切さを認識するよう促すなど学校教育の一環として,教育課程 との関連が図られるようにするとの留意点,
③ 地域や学校の実態に応じ,スポーツや文化及び科学等にわたる指導者など地域の人々の協 力,体育館や公民館などの社会教育施設や地域のスポーツクラブといった社会教育関係団体 等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行うとの配慮事項,
をそれぞれ規定したものである。
各学校が部活動を実施するに当たっては,本項を踏まえ,生徒が参加しやすいよう実施形態など
を適切に工夫するとともに,休養日や活動時間を適切に設定するなど生徒のバランスのとれた生活
や成長に配慮することが必要である。
<運動部の活動>
運動部活動は,スポーツに興味と関心をもつ同好の生徒が,より高い水準の技能や記録に挑戦す る中で,スポーツの楽しさや喜びを味わい,豊かな学校生活を経験する活動であるとともに,体力 の向上や健康の増進にも極めて効果的な活動である。
したがって,生徒が運動部の活動に積極的に参加できるよう配慮することが大切である。また,
生徒の能力等に応じた技能や記録の向上を目指すとともに,互いに協力し合って友情を深めるなど 好ましい人間関係を育てるよう適切な指導を行う必要がある。
運動部の活動は,主として放課後に行われ,特に希望する同好の生徒によって行われる活動であ ることから,生徒の自主性を尊重する必要がある。また,生徒に任せすぎたり,勝つことのみを目 指したりした活動にならないよう留意する必要もある。このため,運動部の活動の意義が十分発揮 されるよう,生徒の個性の尊重と柔軟な運営に留意したり,生徒のバランスのとれた生活や成長の ためにも休養日や練習時間を適切に設定したりするなど,生徒の能力・適性,興味・関心等に応じ つつ,健康・安全に留意し適切な活動が行われるよう配慮して指導することが必要である。
なお,本改訂において,「学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう留意するこ と」と規定されたことは,運動部の活動に関しては,主として保健体育科の目標である「心と体を 一体としてとらえ,健康・安全や運動についての理解と運動の合理的,計画的な実践を通して,生 涯にわたって豊かなスポーツライフを継続する資質や能力を育てるとともに,健康の保持増進のた めの実践力の育成と体力の向上を図り,明るく豊かで活力ある生活を営む態度を育てる」ことを踏 まえた活動を行うことなどを示している。このような活動を通して,生徒自身が保健体育科などに おいて学習する内容について改めてその大切さを認識するように促すことなどによって,相互に関 連させながら学校教育活動全体として,生徒の「生きる力」の育成を図ることが大切である。
※ 下線部は高等学校学習指導要領に記載
<参考>
小学校学習指導要領解説 体育編
<クラブ活動,運動部の活動>
クラブ活動,運動部の活動は,スポーツ等に共通の興味や関心をもつ同好の児童によって行われ る活動であり,体育の授業で学習した内容を発展させたり,異なる学級や学年の児童との交流を深 めたりするなどの成果が期待される。
このうちクラブ活動は,学校において適切な授業時数を充てるものとしており,学校や地域の実 態等を考慮しつつ,児童の興味・関心を踏まえて計画的に実施することが大切である。
また,運動部の活動は,主として放課後を活用し,特に希望する児童によって行われるものであ
るが,児童の能力や適性などを考慮し,教師などの適切な指導の下に,自発的,自主的な活動が適
正に展開されるよう配慮することが大切である。
3 運 動 部 活 動 の 現 状
下表は,平成20年度から平成24年度までの5年間における本県中・高・中等教育学校の運動部の参 加者数,生徒総数,参加率及び外部指導者活用数を示したものである。
少子化に伴い参加者数は減少しているが,参加率については,中学校は横ばいで高等学校は微増し ている。
外部指導者の数は,ここ5年間多少の増減はあるものの,中学校で約600名,高等学校で約100名が 外部指導者として活用されている。
運動部参加者数の推移(平成20年度~平成24年度)
<中学校>
平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度 参加者数 65,684 65,077 64,140 63,992 63,099 生徒総数 88,354 87,946 86,918 86,961 86,526 参加率 74.3% 74.0% 73.8% 73.6% 72.9%
男子 87.2% 87.5% 86.8% 86.4% 85.7%
女子 60.7% 60.4% 60.1% 60.1% 59.5%
外部指導者
活用数 559 622 620 596 582
※ 参加者数は,運動部活動に参加している生徒数(県中体連調査)
<高等学校>
平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度 参加者数 31,578 32,115 31,334 32,720 32,306 生徒総数 81,194 80,593 79,829 79,233 79,213 参加率 38.9% 39.8% 39.3% 41.3% 40.8%
男子 49.9% 51.2% 50.8% 51.6% 52.5%
女子 27.3% 27.9% 27.1% 30.5% 28.5%
外部指導者
活用数 104 103 103 134 119
※ 参加者数は,高体連,高野連の加盟者数(県立,私立高等学校全日制)と加盟者以外の部員
(マネージャー等)の合計(保健体育課調査)
4 運 動 部 活 動 の 課 題
運動部活動は,教育活動の一環として,学級や学年を離れて子供たちが自主的・自発的に活動を組 織し展開されるものであり,児童生徒の心身の発達や仲間つくり,教科を離れた教員との触れ合いの 場として意義を有しているものである。しかし,時代の進行と社会の変化に伴い生徒の意識と価値観 は多様化してきており,運動部活動をとり巻く環境には運動部活動を推進していくための課題となる 要因が多々存在している。
課題
(1)
適切な部活動運営と適正な活動量。(不祥事の防止,スポーツ障害,バーンアウト,ドロップ アウト等の防止)
(2)
顧問の実技指導力の向上。(スポーツ科学に基づいた合理的な指導法の研修)
(3)
今後の部員数や教員(顧問)数の減少,顧問の高齢化等への対応。
(4)
生徒の志向に対応した活動内容。(スポーツニーズへの対応)
(5)
地域スポーツとの連携を図る運動部活動の在り方。
学 校
自己実現努力
学校教育活動
指 導 者体 罰 等
専門的知識を有 した指導者不足
多 様 な 欲 求
経 済 的 負 担
勝利至上主義 楽しみ志向者
学校週5日制 合理的な指導 科学的な指導
適正な活動量
競 技 志 向 者 部 活 離 脱
転 部 ・ 移 籍 バーンアウト
部 活 離 れ
生 徒 数 の 減 少
運 動 部 活 動
顧 問 の 異 動
II I I 地 地 域 域 と と 連 連 携 携 を を 図 図 る る 開 開 か か れ れ た た 運 運 動 動 部 部 活 活 動 動 の の 在 在 り り 方 方
1 新 し い 視 点 に 立 っ た 運 動 部 活 動 の 展 開
(1)
これからの運動部活動
学校教育としての部活動の実施にあたっては,「地域や学校の実態に応じ,スポーツや文化及 び科学等にわたる指導者など地域の人々の協力,体育館や公民館などの社会教育施設や地域のス ポーツクラブといった社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行うように すること」(学習指導要領総則から抜粋)と明記されているように,学校や顧問教員には,地域 をつなぐ橋渡してとしての「コーディネート能力」がより求められている。
これまで,各学校では,地域と連携を図る取り組みとして,外部指導者を導入するなど,地域 の優れた指導者を積極的に活用してきた。前述したように,平成24年度の本県の中学校外部指導 者数は,582人(県中体連調べ)であり,調査を開始した平成8年度(57人)の10倍以上と激増し ている。一方で,外部指導者の増加に伴い,活用校や顧問教員,生徒の間でトラブルになる事象 も少なくない。そこで,茨城県教育委員会では,外部指導者の資質向上を目的とした研修会を行 ったり,中・高等学校に対しては,活用規定の例や連携の在り方を示した「運動部活動外部指導 者活用Q&A」を周知したりしてきた。
また,取り組みの数は少ないが,総合型地域連携スポーツクラブとの連携や民間企業に指導の 支援を要請するケースも全国的にはみられる。いずれにしても,現状を改革する試みである。
これらの試み以外にも,各学校においては,魅力ある運動部活動の実現のために,複数校によ る合同部活動やシーズン制による複数種目実施,総合運動部の設置など,「実態に応じた部活改 革」を考える時期にきている。
(2)
運動部活動と地域社会との連携
ア 外部指導者の活用及び地域スポーツクラブとの連携
平成24年3月に策定された「スポーツ基本計画」では,運動部活動の具体的な施策として,
「国は,生徒のスポーツに関する多様なニーズに応えた中学校及び高等学校の運動部活動の充実 を促進し,生徒の運動部活動への参加機会を充実させるため,複数校による合同実施やシーズン 制等による複数種目実施,総合型地域スポーツクラブ(「総合型クラブ」)との連携等運動部活 動における先導的な取組を支援する。これらを通じて,男子と比較して加入率が低い女子の運動 部活動への参加機会の向上を図る。地方公共団体においては,運動部活動の充実のため,児童生 徒のスポーツに関する多様なニーズに応える柔軟な運営等を行う取組を一層促進することが期待 される。」と学校と地域のスポーツ指導者との連携や総合型クラブ等との連携について述べられ ている。(VIII 資料12 参照)
イ 外部指導者の活用上の留意点
外部指導者を活用する場合には,以下に示すような点に留意し,その指導者と顧問及び学校
側が十分な連携を図りながら,教育の中における運動部活動のねらいがより効果的に達成され るよう配慮しなければならない。(運動部活動外部指導者Q&A 県教育委員会HP 参照)
(ア) 運動部活動における指導の中心となるのは,あくまでも顧問(教師)であることを踏まえ ておく。
(イ) 外部指導者選定の上ではスポーツの専門的技術指導の面だけでなく,人間性や学校教育へ の理解など,多方面の資質について十分検討することが重要。
(ウ) 採用,活用について学校長の承認を得ること。
(エ) 事前にその指導者と十分な打ち合わせを行うこと。
(オ) 活用期間中も定期的に打ち合わせを行い,外部指導者が顧問と一致した方針を持って指導 にあたれるようにする。
〔打ち合わせ内容:例〕 ・生徒の実態 ・部の運営方針
・学校の実情 ・部の練習計画 ・学校の教育方針
・活動場所 ・外部指導者の指導や関わりの範囲 ・指導期間,指導日
・事故防止について ・指導時間 ・謝礼,その他
・ 指導内容
ウ 運動部活動活動への支援措置
茨城県教育委員会では,平成元年度から専門的実技指導者の不足している県内の中・高等学 校の運動部を対象に外部指導者を派遣するとともに,平成4年度から運動部活動指導者研修会 を開催して顧問教員の指導力の向上に努めている。
また,市町村においても外部指導者の活用が事業化されており,今後,校外の運動施設の活 用も含めた学校と地域の連携が一層促進されることが望まれる。
なお,県教育委員会内に,県民のスポーツ活動の普及・発展を図るために有能なスポーツ活
動指導者の登録・紹介等を行う「茨城県スポーツリーダーバンク」(VIII 資料12 参照)が設
置されている。
II I II I 運動 運 動部 部活 活動 動の の運 運営 営
1 指 導 体 制 の 確 立
運動部活動は,生徒の心身の健全な育成と豊かな人間形成を図るうえで,極めて重要な教育活動 であり,生涯スポーツの基礎を培う活動としても重要である。
学校では,教育目標の具現化を図る視点で校務分掌に適切に位置付け,活動目標等を明確にして いくことが大切である。
2 顧 問 の 役 割
部活動は,学級や学年を離れ,生徒と密接に交流できる重要な場である。日々の部活動において 生徒と一緒に汗を流し,話し合い,励まし合い,高め合っていくことで,担任や保護者にはできな い触れ合いが顧問ならできるなど,授業とは異なる人間関係や生徒理解を深めることができる。ま た,卒業生が何年たっても顧問を慕って交流を続けているという話もある。このような部活動を通 して,日々成長していく生徒の充実感あふれる姿に直接触れることができることは,何物にも代え がたい喜びである。
具体的な活動場面では,顧問が最初から最後まで指導することが基本であるが,状況によって は,5分でも10分でも指導し,生徒にその日の活動内容や注意事項を的確に指示し,励ましの声を かけてやるだけでも生徒は喜んで自主的に活動する。また,指導していく上で分からないことがあ れば,その都度身近にいる同じ学校の教員に相談したり,同じ種目を指導している他校の顧問や競 技団体の関係者などと積極的に交流したりして指導力を高めていくこともよい。
一方,最近はスポーツの専門書が数多く出版されている。顧問自ら専門書をひも解きながら,指 校 長
教 頭
生徒指導部・特別活動部等 教務部・保健指導部等
運営委員会 職員会議
運動部活動顧問会議
(連絡・調整) ・運動部活動方針の確認
・運営上の諸問題についての協議および検討
導力を高めていく努力も大切であり,その積極的な姿勢が生徒に及ぼす影響には計り知れないもの がある。また,生徒同士がお互いに教え合い,学び合うシステムづくりも大切である。専門書など を通して練習の仕方や指導法についてある程度の力量を生徒が身に付けていくことは,生涯スポー ツ社会における部活動の大切なねらいの一つでもある。
顧問の役割
・年間活動等の計画の作成 ・広報活動(部活動通信等)
・施設・用具の管理と指導 ・部会の開催・運営
・部予算の確保と管理 ・顧問会議への出席
・部員名簿の作成 ・部員の事故防止と安全指導
・部員の健康管理 ・保健室や医療機関との連携
・実技指導 ・保護者会との連携
・部活動日誌等の活用と整理 ・地域団体との連携
・大会への引率 ・中体連・高体連との調整
3 運 動 部 活 動 運 営 の 配 慮 事 項
運動部活動を適切に運営するためには,次のような事項について配慮することが大切である。
(1) 民主的な運営
(2) 好ましい人間関係の育成 (3) 運動部活動と学習の両立 (4) 科学的合理的な練習方法の工夫 (5) 事故防止
(1)
民主的な運営
生徒が積極的に運動部活動に参加し,楽しく継続的に活動できるようにするために,計画,実 践,評価のすべてに生徒が参加できるようにするとともに,一人一役,役割分担等に配慮し,生 徒一人一人が意欲的に取り組めるような民主的な運営が大切である。
ア 活動組織の例
顧問
部長(主将)
副部長 副部長
救護係 技術係 用具係 練習計画係 記録係 試合計画係
・応急手当
・救急箱の管理
・技術指導
(ポジション)
・用具の点検,管理
・購入希望品を顧問と
・ 大 会 日 程 に 基 づ く 練 習 計 画 の 立
・毎日の練習記録
・試合結果の記録
全体ミーティング
・ 練 習 試 合 の 計画
イ リーダーの位置付けと役割
ウ リーダー養成研修会について
全体のリーダー(部長・主将)
部 全 体 の ま と め
練 習 計 画 と 実 践
他 の 部 ( 長 ) と の 連 携
好 ま し い 人 間 関 係 の 確 立
・チームワークの醸成
・副部長,各係長との連携
試 合 等 の 結 果 報 告
・練習計画の作成,確認,反省
・出欠確認,健康観察,安全配慮
・ミーティングの実施
・部長会議への参加
・部員の悩み等の相談
・試合の反省,課題の設定
種 目 別 ・ ポ ジ シ ョン別リーダー
種目別・ポジション別練習 の計画と実践
部長,他の種目別ポジショ ン別リーダーとの連携
・練習計画の作成,確認,反省
・出欠確認,健康観察,安全配慮
・ミーティングの実施
・技術的なポイントの指導
・練習内容,場所の確認・調整
リ ー ダ ー の 資 質 向 上
各 運 動 部 間 の 共 通 理 解
講 話
実 技
各 部 の 交 流 ・ 情 報 交 換
・リーダーの在り方
・好ましい人間関係の在り方
・自主的運営の在り方
・生理学,栄養学,トレーニング理論
・顧問,外部講師による経験談等
・応急手当,スポーツマッサージ等
・効果的な練習方法の紹介
・不安や悩みについての話し合い等 研 修 会
ね ら い
(2)
好ましい人間関係の育成
好ましい人間関係を育成することは,部活動運営を円滑にする上で大変重要なことである。
ア 生徒と顧問のかかわり
運動部活動において顧問の指導は,生徒の取組に大きく影響し,その成果を左右するもので ある。
指導に当たっては,下の図のような場や機会をとらえて,きめ細かにかかわり合っていくこ とが望ましい。
イ 生徒同士のかかわり
好ましい上級生・下級生の関係
・一人一役の民主的な部活動
・お互いの意見交換ができる部活動
・率先垂範のできる上級生
・上級生から学べる下級生
・悩んだとき助け合うことができる部活動
・互いに競い合える部活動
・よいところを認め合える部活動
信 頼 関 係 の 確 立
生 徒 顧 問
実 態 把 握 ミ ー テ ィ ン グ 部 活 動 日 誌 心 の 交 流
○一人一人を知る
・ 欲 求 , 経 験 , 能 力 , 性 格 , 健 康 面,学習面,生活 態度等
・保護者の願い,要 望
○個に応じたねらい をもたせる
・ 適 正 , 興 味 , 関 心,能力から
・チーム内での役割 から
○顧問の体験談
・失敗談,苦労話,
感動したこと等
○技術アドバイス
・基礎基本。戦術,
作戦,ルール等
○精神面
・忍耐力,集中力,
気 力 , プ レ ッ シ ャー等
○マナー・態度
・あいさつ,チーム ワーク,時間の使 い方等
○励まし,称賛
○部日誌
・活動内容の確認,
健康状態の把握,
課題確認
○個人ノート
・技術的アドバイス
・精神的アドバイス
・悩みのアドバイス
・顧問への質問
○班ノート
・技術的アドバイス
・精神的アドバイス
・悩みのアドバイス
・顧問への質問
○生徒から見た顧問 の存在
・指導者
生き方,考え方を 学び,尊敬される 存在
共に技術を磨き合 い , 目 標 と す る 存 在
・相談相手
悩みや不安を取り 除き,頼れる存在
学 び 合 い 助 け 合 い 認 め 合 い
上級生 下級生
ウ 生徒をとりまく環境とのかかわり
運動部活動に関わる諸問題を解決するに当たっては,生徒をとりまく諸環境に働きかけてい くことが大切である。
(3)
運動部活動と学習の両立
運動部活動と学習の両立については,多くの生徒が悩み,その解決について努力している。両 立のためには,生徒の実態を踏まえた練習を計画し,短時間で効果の上がる方法等を工夫するな どして学習時間の確保に努めることが大切である。
また,入部,転・退部等についても生徒の側に立って適切に対応することが大切である。
ア 両立を阻害する要因と対応
精神的・肉体的な疲労
学 習 時 間 等 の 不 足
○生徒の体力・健康状態に合った練習の内容と量の工夫
○疲労回復のための体操・ストレッチの工夫
○練習計画(年間,月間,週間)での練習量の調整
○定期的な休養の設定(週に1日は活動しない日の設定)
○休養の取り方のアドバイス
○楽しく活動できる雰囲気づくり
○すべての活動において時間を守る習慣をつける
○練習開始と終了の時刻を守る
○下校指導(練習終了後,すぐに下校させる)
○学習計画を立てさせる
〈要 因〉 〈対 応〉 〈顧問・保護者〉
練 習 の 工 夫 援 助 支 援 学 級 担 任
顧 問 保 護 者
生 徒
○入部届け ・健康状態 ・勉強との両立 ・友人関係の悩み
○活動の様子 ・意欲・活躍 ○友人関係 ○活動の様子
・意欲・活躍
○友人関係
励まし
励まし 励まし
○部活動への希望・不安 ○勉強との両立 ○協力・要望
○部の経営方針 ○部活動だより ○援助・協力
○学級生活の様子
・授業態度
・当番活動
・学習との両立
・健康状態
○学校行事への参加
○学年会での話題
○養護教諭から
○本人の悩み
部活動だより 保護者・生徒
○顧問の願い
○生徒の紹介
○保護者へ協力してもらいたいこと
○練習の様子(頑張っている生徒の紹介など)
○練習計画(月間,週間)
○試合日程(公式大会,練習試合)
○試合結果,大会結果の報告
○部活動と勉強の両立についてのアドバイス
○活動についての要望
○悩み,不安
○家庭での様子
○学習との両立
イ 入部と転・退部への対応
運動部活動を行っていく上で,生徒は人間関係のトラブルや技術面の悩みなど多くの問題に 直面することがあるが,このような機会をとらえてよりよい運動部活動と生徒のかかわりを指 導していくことが大切である。
(ア) 入部
(イ) 転部・退部について
保護者・学級担任のアドバイス
自己を知る 選 択 決 定
自 己診 断 部活動紹介 部 活 動 見 学 体 験 入 部 ・ 仮 入 部 正 式 入 部
入 部 届 け
〈生徒が部決定に至るまでの留意事項〉
・過去の経験 ・各部の発表 ・練習の方法,量を見る
・興味・関心 ・PR(展示・掲示) ・部の雰囲気をつかむ
・能力・適正 ・顧問の指導の様子を見る
退 部・ 転部の 申し 出 話 し 合 い 転 ・ 退 部 届 新たな方向
・保護者 悩み
・本 人 問題・障害
・顧問
・学級担任
・友人
・養護教諭
・保護者
・転部先の顧問
・転部先の友人
・継続
・転部
・退部
観察 励まし
充実した学校生活
(ウ) 入部申込書,転・退部届の例
(4)
科学的・合理的な練習方法の工夫
選手やチームの育成を図るためには,部員の体力の向上を図るためのトレーニング論,技術,
戦術を向上させる専門的指導技術,医・科学に関する知識が必要となる。
学校における運動部活動は,生徒の身体的な発育・発達や活動の意識を踏まえて運営されなけ ればならない。このような視点から,練習計画の立案やシステムの開発は大切である。
専門的な指導者が不足している状況下においては,地域における専門的な知識や技術を有した 指導者の活用を図りながら効率的な練習を展開していくことが重要である。
〈留意事項〉
過 熱 指 導
勝利至上主義や極端な精神主義に基づいた指導のことで,旧体質の運営による非 民主的な上下関係や閉鎖性,顧問による体罰,しごき,部の私物化等,社会的な非 難や誤解を招く状態も生まれやすい。
バ ー ン ア ウ ト
「燃えつき症候群」などと俗に言われている部活動への取り組みの一つで,すべ てを投げ打ち一時期に没頭し過ぎるあまり,上級学年や上級の学校へ行ってからも 部活動を続けようとする意欲がなくなってしまうこと。
ド ロ ッ プ ア ウ ト
「離脱」とも言われ,過熱した活動,体力技術的限界や疲労の蓄積,学業成績の 低下,スポーツ観・価値観の相違,教師や部員間の人間関係上のトラブル,親の反 対等を理由に所属していた部をやめること。
ト ラ ン ス フ ァ ー
「転部」や「移籍」とも言われ,志向の変化や新しい価値観の芽生え,新しい友 や仲間の出現,新たな適性の発見等により,所属した部を離れ,他の運動部や文化 部へ移ること。
部活動転部届
年 組 番 生徒氏名 保護者氏名 印 住所
℡ ( )
部⇒ 部
理由
決 裁 中
前顧問 印 学級担任 印
( )部顧問 印 部活動退部届
年 組 番 生徒氏名 保護者氏名 印 住所
℡ ( ) 退部する部
平成 年 月 日
学級担任 殿 担任印 顧問殿 顧問印 理由
部活動入部申込書
年 組 番 生徒氏名 保護者氏名 印 住所
℡ ( ) 入部する部
平成 年 月 日
学級担任 殿 担任印 顧問殿 顧問印 保護者の考え
(5)
事故防止
学校における教育活動が,安全かつ効果的に行われるために,安全指導と安全管理の両面から 教師に注意義務が求められる。
運動部活動の指導にあたっては,安全を最優先課題としてとらえ,事故防止には万全を期さな ければならない。
また,生徒自身が危険を予知し,克服する能力と態度を身につけるよう指導することも大切で ある。
〈安全指導・安全管理のポイント〉
① 生徒の日常の健康度・健康診断の結果の把握
② 緊急時の連絡体制の確立
③ 適切な練習時間・練習量
④ 安全にできる服装・用具
⑤ 競技団体等の安全マニュアルの確認
⑥ 施設設備の整理整頓
⑦ 練習場の広さ,衛生面の配慮
⑧ 屋外では,天気予報の確認と急変に備えた適切な措置
IV I V 活 活 動 動 計 計 画 画 の の 作 作 成 成 と と 実 実 践 践 指 指 導 導 例 例
活動計画を作成するに当たっては,学校教育活動のサイクルと合致するような年間計画,月間計 画,週間計画等を立てて計画的に進めるようにする。競技志向者と楽しみ志向者が共存し楽しく充実 した運動部活動を展開していくためには,練習内容の精選や練習方法を工夫・改善し,生徒の意欲を 引き起こし,一人一人が充実した運動部活動となるように配慮する必要がある。
1 活 動 目 標 の 設 定
学校目標の具現化のための運動部活動の運営方針を策定し,その方針に基づいた各運動部の活動 目標を作成していく必要がある。その際,顧問の指導理念だけでなく,保護者の要望や一人一人の 生徒の適性等を十分に踏まえて立案することが大切である。
2 活 動 計 画 の 作 成
(1)
活動計画作成上の基本的な考え方
ア 学校行事,大会(試合)等の日程等を考慮
イ 練習内容等について生徒理解を踏まえた立案と実施
ウ 環境(施設,用具,人数,地域の立地条件等)を踏まえた立案と実施 エ 生徒の実態(体力,技術,意欲,経験,体調等)を踏まえた立案と実施 オ 保護者,地域との連携を図る
カ 休養日の設定
学 校 教 育 目 標
運 動 部 活 動 運 営 方 針
各 運 動 部 の 活 動 目 標
生 徒 の 実 態
顧 問 の 指 導 理 念 保 護 者 の 願 い
個 人 の 活 動 目 標
競技面 技能面 生活面 体力面 精神面
運 動 部 活 動 の 活 動 目 標 の 立 て 方
(2)
年間計画例
平成○年度 ○ ○ 部 活 動 計 画 目
標
月 行事等 1 年
2 年
3 年 4
入学式
仮入部・見学会 地区春季大会
基 礎 準 備 期
専 門 準 備 期
専 門 鍛 錬 期
完 成 5 関東大会県予選 期
6 全国大会県予選 関東大会
基 礎 鍛 錬 期
基 礎 鍛 錬 期
試 合 期 7
夏季休業 8 全国大会 夏季合宿
9 地区秋季大会
10 秋季大会 各種学校行事
11 新人大会
12 冬季休業 年末 1
年始
2
3 卒業式 春季休業
各期における生徒・顧問の活動概要
期 生徒 顧問
基 礎 準 備 期
一般体力トレーニング ルール,練習法等学習 見学主体の活動 体力養成
意欲の向上
トレーニング計画立案 練習場所等の確保 リーダーの養成 実態の把握
基 礎 鍛 錬 期
練習内容等の理解 基本動作の練習 体力トレーニング
(量の増加)
基本的練習計画の指導 基本的技能の練習計画立案 リーダーの養成
専門的トレーニング計画立 案
専 門 準 備 期
基本的技能の練習
(部分練習)
専門的トレーニング
練習強度の調整 課題練習計画立案 専門的トレーニング指導 リーダーの指導
専 門 鍛 錬 期
専門的技能の練習 専門的トレーニング 総合的練習
戦略的練習計画立案 課題練習指導 リーダーの指導
完 成 期 試 合 期
総合的練習
(戦略的練習)
総合的練習指導 課題指導 全体活動の総括
(3)
月間計画例
剣 道 部(12月)活動計画 今月の活動目標
○やる気・本気・根気の精神で,寒さに負けずに頑張ろう。
○短い活動時間を利用し,効果的な練習方法を工夫しよう。
各週のねらい
1 年 生 2 年 生 第1週 ・基本技能の習得 全体
(正面打ち,手の内)
・基本技能の習得 個別 (しかけ技,返し方)
第2週 ・基本技能の習得 全体 (胴打ち,手首の返し)
・基本技能の習得 個別 (応じ技,返し方)
第3週 ・基本技能の習得 全体 (小手打ち,踏み込み)
・基本技能の習得 個別 (連続技)
第4週 ・基本技能の習得 全体 (二段打ち,体さばき)
・応じ技の研修 個別 (連続応じ技)
活動計画および練習内容
日 曜 行事 活動日 主な練習内容
1年 2年 第1学年 第2学年
1 日 休養日
2 月 期末実力テスト ○ ○
基本技練習
(全体一斉)
個人課題練習
基本技練習
(個別)
個人課題練習
3 火 ○ ○
4 水 ○ ○
5 木 ○ ○
6 金 ○ ○
7 土 ○ ○ 部内リーグ戦
8 日 町親善大会 ○ ○ 町民運動広場
9 月 休養日
10 火 ○ ○
基本技練習
(全体一斉)
個人課題練習
しかけ技練習
(個別)
個人課題練習
11 水 ○ ○
12 木 ○ ○
13 金 ○ ○
14 土 ○ ○
15 日 休養日
16 月 ○ ○
基本技練習
(全体一斉)
個人課題練習
応じ技練習
(個別)
個人課題練習
17 火 ○ ○
18 水 ○ ○
19 木 ○ ○
20 金 ○ ○
21 土 ○ ○ 部内リーグ戦
22 日 休養日
23 月 天皇誕生日 ○ ○
基本技練習
(全体一斉)
個人課題練習
しかけ技練習
(個別)
個人課題練習 24 火 終業式 ○ ○
25 水 冬季休業日開始 ○ ○
26 木 ○ ○
27 金 ○ ○
28 土 ○ ○ 大掃除
29 日 年度末部活休止 30 月 年度末部活休止 31 火 年度末部活休止
連絡事項
2日(月) 第2学期末実力テスト 9~13日(金) 1・2年生三者面談 21日(土) 生徒総会
24日(火) 第2学期終業式
※月別活動計画は,部員と顧問の話し合いにより行事等を考慮し実態に合った計画をする。
※配布は,部員の活動意欲を高めるとともに,保護者にも部活動の活動状況を連絡できるものとした い。
○ねらいの明確化
・顧問と部員の話 し合いで計画を 立てる。
・「どのような姿 で」
・「どのように」
・「どのような場 で」
○実践活動の把握
①活動日
・行事と部の実態 を考えて,活動 日を決定する。
・生徒にゆとりの できる活動計画 が望ましい。
②練習内容
・部員の習熟期を 考慮し,生徒と の話し合いや実 態から短時間で 効果的な練習方 法を工夫してい くことが望まし い。
○家庭との連携
・行事内容などを 詳 し く 説 明 す る。
○課題の明確化
・部活動の実態を 踏まえて具体的 な活動目標を立 てていきたい。
(4)
週間計画例(個人用)
剣 道 部 ○ 月 ○ 週の個人練習計画
私の練習課題
精神面:寒さに負けず,自分に厳しい練習をする。
技術面:前に出て一本取れる技を身につける。
体力面:左手に力がつくような素振りをする。
練習計画
日・曜 3日(月) 4日(火) 5日(水) 6日(木) 7日(金) 8日(土) 9日(日) 午前 午後 午前 午後 午前 午後 午前 午後 午前 午後 午前 午後 午前 午後 全
体
基 本 ○ ○ ○ ○
応 用 ○ ○ ○
試 合 個
人
ト レ ー ニ ン グ
技 術 ○ ○ ○ ○
部内戦・大会 ○ 大会 休養日
個人課題練習内容
曜 重点
練習のねらい(課題) 上達のポイント(実践めあて) 反省・評価月
精神 出ばな面を中心とした 練習をする。
スピードのある人と練習す るようにする。
左足に注意。
A ・ B ・ C
技術
スピードだけではなく打つ強さも注意して練習する。
体力 火
精神 力 強 く 打 つ よ う に す る。
気剣体を一致させる。
左手に注意して練習する。 A ・ B ・ C
技術
ま だ ま だ 打 つ 力 が 弱 い ので,もっと筋力をつける。
体力 水
精神 試合で一本取れるよう な面を打つ。
出ばな面の上手な人と,発 声に注意して練習する。
A ・ B ・ C
技術
発声が合わないので裏声でなく,地声で気合を出す。
体力 木
精神 出ばな小手を中心とし た練習をする。
竹刀をふらないようにすば やく打つ。スピードのある 人との練習。
A ・ B ・ C
技術 もっと相手を誘い出し
て打てるようにする。
体力 金
精神 技を打った次の技を工 夫して練習する。
技を受けるのが上手な人と の練習。
A ・ B ・ C
技術
胴が流れてしまうので,もっと角度をつけて打つ。
体力 土
精神
試合に集中する。
気剣体(声),左手,右足 に注意する。
A ・ B ・ C
技術
技から技というのがなかったので,もっと練習する。
体力 日
精神
休養日
A ・ B ・ C 技術
体力
顧問からのアドバイス
※月の活動計画にそって,週の活動計画を作成し,日々の内容を充実させていく。
※週の活動計画を作成することによって,部員の活動意欲を高めることにも役立つ。
※大会や部内リーグ戦などの試合を通じて,顧問は部員一人一人に応じた計画をアドバイスしていきたい。
(5)
活動日誌例
○ ○ 部 活 動 日 誌
検
印 月 日( 曜日)天候 記入者 参
加 状 況
活 動 人 数 男子 名 女子 名 合計 名
見 学 者 名 名
病 気 欠 席 名
そ の 他 名
活 動 目 標 主 な 行 事 活動状況
時 活 動 内 容 評 価
(反 省 点)
Aグループ Bグループ は じ め
な か
終 わ り
事故報告
場 所 場 所
氏 名 氏 名
状 況 状 況
清掃状況 顧問所見
〈留意事項〉
日々の活動内容の検討・決定に使われているのが,「練習日誌」である。
週の活動計画に比べ活動日誌には,より詳しい活動内容が顧問と部員の話し合いにより書き込ま れる。また,活動日誌のなかには,活動内容についての評価と反省の欄を設け,部員自らが,自分 たちの活動を評価し,良かった点や反省点・改善点を書き込んでいけるようにしたい。また,顧問 からの評価とアドバイスを書き込めるようにしたい。
日誌の活用は,部員の活動内容や状況を意識させることにも役立つとともに,顧問は部員の意識
を知ることができる。
V V 安 安 全 全 管 管 理 理 と と 事 事 故 故 防 防 止 止
1 体 育 活 動 中 の 事 故 防 止
(1)
死亡・重度の障害事故の概要
体育活動中における死亡・重度の障害の事故として,死亡事故では,突然死が70%以上を占 めており,次いで頭部外傷,溺水及び熱中症の順で多く発生している。
突然死の80%は,原因として心臓系が挙げられる。突然死では陸上競技が約1/3 を占め,次 いでバスケットボール及びサッカーである。頭部外傷では,柔道が約1/3 を,溺水では水泳が 3/4 を占めている。
重度の障害では,脊髄損傷がほぼ半数を占め,次いで頭部外傷,心疾患等である。脊髄損傷 ではラグビー,水泳及び体操が,それぞれ約1/4 を占めている。また,頭部外傷では柔道が,
心疾患等では陸上競技が,それぞれ約2/3 を占めている。
(2)
事故件数の年度別推移
事故件数は,年々減少傾向にあり事故の発生頻度は,生徒10 万人当たりでみると,平成10 年度には0.45 件であったが,平成21 年度には0.16 と当初の1/3 に減少している。
減少の要因の一つには,平成7年度から健康診断に心電図検査が義務付けられたことが考え られる。なお,平成12 年度から13 年度にかけて,事故件数が30 件近く減少しているが,その 理由は不明である。
図1 死亡・重度の障害事故 年度別発生件数
(3)事故件数の年度別推移
中学校では運動部活動が58%,保健体育科の授業29%,特別活動10%等,また高等学校では運動 部活動61%,保健体育科の授業26%,特別活動12%等であり,運動部活動の割合が過半数を超えて いる。
図2 死亡・重度の障害事故 教育活動別発生件数
(4)
運動部活動中における死亡・重度の障害事故件数
中学校・高等学校での運動部活動における死亡・重度の障害事故318 件を主な傷病別にみる と,やはり突然死等が約半数を占めていたが,保健体育科の授業等に比べ,頭部外傷や熱中症 の割合が増えていた。
表
中学校・高等学校での運動部活動における死亡・重度の 図3 中学校・高等学校での運動部活動に 障害事故傷病別・学年別発生件数 おける死亡・重度の障害事故の割合運動部活動における死亡・重度の障害事故を競技種目別にみると,柔道が50件(16%)と最 も多く,その他,野球,バスケットボール,ラグビーの割合が多い。それぞれ頭部外傷や突然 死等が主な原因として挙げられる。
表
中学校・高等学校での運動部活動における死亡・重度の障害事故-競技種目別・学年別発生件数-
学校の管理下の体育活動中における死亡・重度の障害事故に対しては,これらの傾向を踏
まえ,人的要因,環境要因及び各スポーツ種目固有の活動要因について原因を分析し危険要
因を見極め,早急に対策を講じていく必要がある。
2 安 全 管 理 の 方 法 と 内 容
(1)
施設・用具の安全点検
計画的に,定期的にそして組織的に安全点検を実施し,生徒が安全に活動できるようにすると ともに,使用後の用具等の収納の仕方等についても安全管理の徹底を図ることが必要である。
施 設 点 検 内 容 ・ 箇 所
体育館 床面(支柱蓋,結露等),壁(突起物,金具等),天井(雨漏り,穴等),その他の施設 運動場 地面の整備(凸凹,水たまり,石,散水栓,木の葉等),防球ネット,ゴール等の施設 プール 水質,本体(底,壁等),プールサイド(コンクリート,タイル等),更衣室,シャワー
等の付帯設備
武道場 床面(畳,床の凸凹),壁(突起物,金具等),窓等
その他 ボール,バット,グローブ,ラケット等の破損(各部によって,専門的な器具)
◎グラウンドが狭かったり,体育館を共用したりする場合などは,特に練習場所の設定等で顧問 間の共通理解を必要とする。
(2)
効果的な練習場所の確保
ア 時間別・曜日別・男女別等の調整(顧問間の共通理解)
イ 学校外の運動施設等の活用(地域連携)
(3)
競技の特性を踏まえた合理的な練習システムの開発
(4)健康管理
生徒・指導者ともに,日常の健康管理には十分注意を払い適切な対応が必要である。特に生徒 の身体は,発育途上の状況にあるため健康状態が流動的であるものと考え,観察を十分に行い,
柔軟に対応しなければならない。
また,定期健康診断の結果やケガをしている生徒,既往症のある生徒については特別な配慮が 必要である。
さらに,精神的な側面にも注意を払い,安定して活動できるように心がけたい。
留 意 点……学級担任,養護教諭,保護者との連絡
長期休業,定期考査,学校行事等の前後での観察
自己管理……無理をせず,自分の健康は自分で守れるように日ごろから指導する。
(5)
安全指導(事故・ケガへの対応)
事故やケガが発生した場合の対応は,迅速かつ正確に行わなければならない。指導者はもちろ ん,生徒にも緊急時等における対応の仕方を日ごろから指導しておく必要がある。(対応図 参 照)
(6)
指導計画と運営(指導者不在時も)
生徒の実態(技能・発達段階),施設用具・他の運動部との関連等を考慮し,計画立案し,生
徒に知らせておく。特に指導者不在時においては,生徒同士でできる範囲の計画でなければなら
ない。
3 緊 急 時 連 絡 体 制 ( 例 )
(1)
対応図
ア 顧問は現場を離れず,事故者の観察及び応急手当を施すとともに,緊急の場合は,すぐに救 急車を呼ぶなど,医療機関への連絡・移送を素早く行う。医療機関に付き添う場合は,残った 生徒への指示をする。
イ 生徒には普段から指導者不在時の対応方法について指導しておく。
ウ 医療機関へ,事故の状況やけがの状態について正確に情報を伝える。
エ 保護者への事故発生の連絡並びに状況説明,さらに事後処理(独立行政法人 日本スポーツ 振興センターの災害共済給付の給付金請求)など,誠意を持って対応する。
(ア) 家庭との連絡を密にし,しかるべき対応後,できるだけ早く保護者のもとへ。
(イ) 医療機関で受診した場合は,独立行政法人 日本スポーツ振興センターの災害共済給付の 対象となるので,事故発生現場に居合わせた者から,事故状況等を詳細に聴取しておき,
「事故発生報告書」に書いて校長に提出する。
(2)