J リーグ・ディビジョン 2 に所属するチームにおける 2 年間の傷害調査
Two-year Injury Epidemiological Survey of Japan Professional Soccer League Division 2 Football Teams
齊藤 和快
1-3)安斎 健太郎
2)岡林 務
2)今城 栄祐
1)五十子 圭佑
2,4)竹内 真太
5)西田 裕介
5)Kazuyoshi SAITO, RPT, MS1–3), Kentaro ANZAI, NATA, AT, AC, BS2), Tsutomu OKABAYASHI, AT, AC2), Eisuke IMAJO, RPT1), Keisuke IRAKO, MD2,4), Shinta TAKEUCHI, RPT, PhD5), Yusuke NISHIDA, RPT, PhD5)
1) Fuji Toranomon Orthopedic Hospital: 1067-1 Kawashimata, Gotemba-shi, Shizuoka 412-0045, Japan TEL +81 550-89-7872 E-mail: [email protected]
2) FC Machida Zelvia
3) Department of Physical Therapy, Graduate School of Health and Welfare Sciences, International University of Health and Welfare
4) Machida Hospital
5) Department of Physical Therapy, School of Health Sciences at Narita, International University of Health and Welfare Rigakuryoho Kagaku 35(1): 33–39, 2020. Submitted Jul. 11, 2019. Accepted Aug. 30, 2019.
ABSTRACT: [Purpose] This study investigated the epidemiology of injuries among professional soccer players in Japan Professional Soccer League Division 2 over a 2-year period, using definitions established by the Fédération Internationale de Football Association. [Participants and Methods] Fifty-eight players were the subjects of this study.
We investigated the injury rate, injury situation, type of injury, location, severity, and days until return to play. [Results]
The incidence rate during practice in 83 cases of injuries occurring in 2 seasons was 3.1/1000 ph, and 10.8/1000 ph during the game. Most injuries were located in the lower extremities, and the most frequent injury was muscle strain.
The number of days until return to competition was severe (more than 29 days). [Conclusion] This study showed that measures should be taken to prevent traumatic injuries during preseason practice and during games. Similarly, preventive measures are needed to reduce overuse injuries during the season. In addition to establishing a preventive program for the prevention of injuries, the results suggest that it is necessary to clarify the criteria for return to competition.
Key words: professional soccer team, injury report, return to competition
要旨:〔目的〕JリーグのDivision 2に所属するサッカーチームで発生した傷害(外傷と障害)の実態を調査し,その
結果を傷害予防の一助とすることを目的とした.〔対象と方法〕対象は2017年から2018年に所属した選手57名で,
傷害発生率,受傷状況,傷害のタイプ,受傷部位,重症度を調査した.〔結果〕2シーズンの傷害発生件数は83件であっ た.練習中の傷害発生率は3.1/1000 phで試合中は10.8/1000 phであった.下肢の傷害が全体の92.8%で,最も多い 傷害部位は大腿部であり,筋損傷が多かった.競技復帰までの日数はsevere(29日以上)が最も多かった.〔結語〕サッ カー競技において下肢の傷害予防は必須であり,特に選手特性に応じた個別の予防プログラムを確立するだけでなく,
競技復帰までの基準を明確化する必要性が示唆された.
キーワード:プロサッカーチーム,傷害調査,競技復帰
1) フジ虎ノ門整形外科病院:静岡県御殿場市川島田1067-1(〒412-0045)TEL 0550-89-7872
2) FC 町田ゼルビア
3) 国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 保健医療学専攻 理学療法学分野
4) 町田病院
5) 国際医療福祉大学 成田保健医療学部 理学療法学科
受付日 2019年7月11日 受理日 2019年8月30日
I
.はじめにサッカーは世界中で最も人気のあるスポーツの一つで あり,日本サッカー協会の競技者登録人数は
90
万人を 超えている1).バスケットボールの登録人数は63
万人,ゴルフは
55
万人,ソフトテニスは45
万人,陸上競技 は41
万人であること2)からも,非常に多くの人が競技 スポーツとしてのサッカーに取り組んでいるといえる.また,競技としてだけではなくレクリエーションとして のサッカーを楽しむ人々も世界の競技人口に伴い増え続 けている1).しかし,サッカーに伴うアクションは,キッ ク,ドリブル,ダッシュ,ジャンプ,ターンなど,単位 時間あたりの下肢の筋力増加率が高い動作(
rate of force development
)が多いことに加えて,接触プレーの 頻度も多いことから,下肢の傷害発生頻度が高い競技と いわれている3,4).特にプロサッカー選手における傷害 の発生は,職業としての試合出場時間の減少や将来のプ レーの質を損なうだけでなく,年俸や契約内容などの経 済的損失にも関わる重要な問題だと考えられる.サッカーにおける傷害発生については,諸外国のプロ サッカー選手を対象に多くの報告がある5-9).これらの 報告は国際サッカー連盟(
Fédération International de Football Association
,以下,FIFA
)の傷害調査方法10) に準じており,比較検討が行いやすいように内容が統一 されている.一方本邦において,FIFA
の傷害調査方法 に準じ,複数年にわたった同一チームの傷害発生に関す る 報 告 は 少 な く, 日 本 プ ロ サ ッ カ ー リ ー グ(Japan Professional Football League
: 以 下,J
リ ー グ ) のDivision 1
(以下,J1
)に所属するチームの傷害の内容 と発生時期の分析を行った報告11)や,大学女子サッカー チームの傷害発生に関する報告12)に留まっている.そこで本研究では,
J
リーグのDivision 2
(以下,J2
) に所属するチームの傷害発生状況に着目した.J2
はJ1
と環境,資金など様々な面で異なっている.2017
年度 のクラブ経営情報の開示ではJ1
の営業収益は平均41
億3700
万円であるのに対し,J2
では平均1
億4050
万円 となっている13).また試合数では,J1
は登録チームが18
チームであり,年間試合数は36
試合とルヴァンカッ プおよび天皇杯のトーナメント戦である.また,J1
で はシーズン中に国際大会開催時の中断期間が設けられ る.さらに,個人では代表招集などが加えられる.一方J2
は登録チームが22
チームであり,年間試合数は42
試合と天皇杯のトーナメント戦である.またJ2
では,J1
のような国際大会開催に伴う中断期間は設けられず,2
月末から11
月末まで継続的に試合が実施されている.J
リーグクラブライセンス制度における施設基準に準 じ14)練習や試合を行う環境条件として,J1
は天然芝お よびクラブハウスの設置が必須条件とされているが,J2
は天然芝のチームグラウンドやクラブハウスを持たないチームもある.さらに選手をサポートするメディカルス タッフの人数においても,著者らが関係者に調査した情 報では,
J1
では1
チームに4
~5
名のメディカルスタッ フが在籍するのに対して,J2
では2
~3
名程度である.またチームにおける理学療法士の登録も,
J1
では全体 で18
名前後であるのに対して,J2
では全体で10
名程 であった.プロチームにおける理学療法士の役割には,選手の競技復帰のためのリハビリテーションだけではな く傷害予防も含まれている.
以上のことから,
J2
に所属するチームの選手は,傷 害発生に影響を与えると考えられるグラウンド条件の違 いや試合日程が多いことだけではなく,メディカルス タッフの人数が少ないことで傷害を未然に防ぐことが困 難な環境におかれ,より傷害が発生しやすい状況でプ レーを行っていると考えられる.しかし,これまでJ2
に所属するチームの傷害発生に関する報告は見当たらな い.そこで本研究では,傷害発生予防策の検討や早期の競 技復帰に関連する要因などを検討するための基礎的デー タを収集することを目的とし,
J2
に所属するチームに おける傷害発生の内容や理由,頻度などの特性を調査し た.II
.対象と方法1
.対象対象チームは
J2
に所属している1
チームとし,2017
~
2018
年の2
年間でチームに在籍していた男子プロ サッカー選手39
名の傷害発生状況について調査した.対象チームの特性として,練習場所は主に人工芝グラウ ンドであり,
2
年間の天然芝グラウンドの使用割合は10
%未満であった.試合はすべて天然芝グラウンドで 実施された.メディカルスタッフの人数は医師が3
名(全て非常勤),理学療法士が
2
名(常勤1
名,非常勤1
名),鍼灸師等と日本体育協会認定アスレティックト レーナーの資格を有する者が2
名(全て常勤)であった.対象選手の特性は
2017
年が29
名(年齢26.1
±4.6
歳,身長
178.3
±7.0 cm
,体重73.1
±5.4 kg
,プロサッカー 選手競技歴6.5
±5.0
年:平均 ±標準偏差)であり,2018
年は28
名(年齢25.6
±5.3
歳,身長177.9
±6.1 cm
,体重73.9
±5.1 kg
,プロサッカー選手競技歴5.8
±
5.9
年)であった.2017
年はゴールキーパー(Goal keeper
: 以 下,GK
) が3
名, デ ィ フ ェ ン ダ ー(
Defender
:以下,DF
)が9
名,ミッドフィールダー(
Mid Fielder
: 以 下,MF
) が9
名, フ ォ ワ ー ド(
Forward
:以下,FW
)が8
名であった.2018
年はGK
が3
名,DF
が9
名,MF
が11
名,FW
が5
名であった.2017
年から2018
年にかけて10
名の選手がチーム間の 移籍および引退で入れ替わった.対象チームの責任者および対象選手には調査の主旨や 方法について口頭および文書で説明し,同意を得た.な お本研究は,国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を 得て実施した(承認番号:
18-Io-166
).2
.方法2017
~2018
年の2
シーズンの記録から,1
日以上練 習を離脱した選手の状況を後方視的に調査した.全体の 曝露時間(以下,Exposure Time
)は,競技を行った時 間(試合時間と練習時間)と人数を掛け合わせて算出し た15).練習試合の時間は練習時間に含んだ.本研究に おける傷害の定義は先行研究におけるFuller
らの定義を 採用し,「サッカーの練習および試合中に発生した傷害 で1
日以上の練習および試合を休まなければならなかっ たもの」10)とした.なお,本研究における傷害とは競技 中に一度の外力によって発生したもの(以下,外傷)と,身体の一部で段階的に症状が悪化し正常に機能しないこ と(以下,障害)を合わせた概念としている10,11,16,17).
調 査 項 目 は 傷 害 の 発 生 件 数, 傷 害 発 生 率(
injury
rate
:以下,IR
)10,11),傷害の重症度,傷害の種類(診断名),傷害の発生状況(接触か非接触か),傷害の部位 とし,分類の方法には
FIFA
によって推奨された定義を 用いた4).IR
は1
人の選手が練習および試合に参加し た1000
時間あたりの傷害発生件数を意味する1000 player-hours
(以下,1000 ph
)の単位を用いて算出した.傷害の重症度は復帰までの日数が
1
~3
日を「minimal
」,4
~7
日を「mild
」,8
~28
日を「moderate
」,29
日以上を「
severe
」に分類した.ここでの復帰については「全ての練習に合流した日」と定義した.傷害の種類は,大 分類として外傷と障害に分け,小分類として診断名で分 類した.
IR
を年ごとに試合中と練習中に分け95
%信頼区間(以下,
95
%CI
)を算出した.また,先行研究4)を参考 に重症度別,傷害の種類別,傷害の部位別,ポジション 別,月ごとの発生件数で傷害発生状況を分類した.95
%CI
の算出には表計算ソフト(Microsoft Office Excel 2011 ver14
®,Microsoft
社製)を用いた.III
.結 果2017
年から2018
年の2
シーズンのExposure Time
は 練習時間が752.7
時間,試合時間が126
時間であり合計878.7
時間であった.この期間の傷害発生件数は83
件であった.傷害の内訳は外傷が
58
件(69.9
%),障害が25
件(30.1
%)であった.試合中の傷害発生件数は15
件(外傷14
件,障害1
件)であり,IR
は13.6
件/1000 ph
(95
%CI
:7.2–19.1
件/1000 ph
)であった.一方,練習中の傷害発生件数は
68
件(外傷44
件,障害24
件)で あ り,
IR
は3.2
件/1000 ph
(95
%CI
:3.1–3.3
件/1000 ph
)と試合中よりも低い値を示した(表1
).傷害の種類と重症度別の発生件数を表
2
に示した.試 合中と練習中を合わせた全体での重症度別傷害発生状況 は,severe
が39.8
%で最も多く,次いでmoderate
が37.3
%,mild
が16.9
%,minimal
が6.0
%であった.試 合中の結果をみると,外傷の発生が多く障害はわずかな 発生率であった.その内訳は全体のsevere
が8.4
%,moderate
とmild
が4.8
%となっており,severe
が最も 多かった.練習中は,外傷と障害の発生頻度に大きな違 いはなく,moderate
,severe
,mild
,minimal
の順に頻 度が多かった.傷害の種類では,筋内と腱の傷害が42
件(50.6
%)で最も多く,次いで関節と靱帯の傷害が25
件(30.1
%)の順であった.筋内と腱の傷害の多く は筋損傷,いわゆる肉離れであり,関節と靱帯の傷害の83
%が捻挫や靱帯損傷であった.傷害の発生状況を表
3
に示した.接触プレーは14
件(
18.1
%),非接触プレーは69
件(81.9
%)で,非接触 プレーでの受傷が多かった.そのうち試合中の接触プ レーは6
件(40.0
%),非接触プレーは9
件(60.0
%)で非接触プレーでの受傷が多かった.練習中は接触プ レーが
8
件(11.8
%),非接触プレーが60
件(88.2
%)で非接触プレーでの受傷が多かった.
部位別の傷害発生件数を表
4
に示した.全ての傷害に おいて下肢の発生件数が77
件(92.8
%)で,その内訳 は大腿部24
件(28.9
%),膝関節19
件(22.9
%),下腿 部17
件(20.5
%)の順であった.試合時は練習時にお ける部位別の結果と同様で大腿部が最も多く,次に膝関 節が多い結果を示した.表1 月別の練習および試合における傷害件数 および傷害発生率
試合 練習 試合時IR
(%)
練習時IR
(%)
1月 0 8 0 3.9
2月 2 5 73.3 0.7
3月 1 9 9.2 4.4
4月 2 8 14.7 3.8
5月 3 4 22.0 4.8
6月 1 5 6.1 2.9
7月 5 6 30.6 5.7
8月 0 5 0 4.7
9月 1 3 7.3 1.2
10月 0 6 0 2.3
11月 0 7 0 4.5
12月 0 2 0 0
合計 15 68
平均 1.3 5.7 13.6 3.2 単位:件.IR:injury rate.
ポジション別の傷害発生件数は,
GK
が3
件,DF
が36
件,MF
が29
件,FW
が15
件であり,GK
で最も少 なく,DF
で最も多かった.シーズンにおける月ごとの傷害発生件数と
IR
を表1
に示した.J2
のシーズンは1
月中旬より全体の練習が 開始され12
月がシーズン終了となる.練習中の傷害発 生件数は3
月~5
月にピークを示し,シーズン後期に向 けて徐々に減少していた.試合中の傷害発生件数は7
月 にピークを示した.IV
.考 察本研究では
J2
の1
チームを対象に,2
年間の傷害発 生状況を調査した.その結果,総傷害発生件数は2
年間 で83
件であり,練習中は63
件であった.練習中のIR
は3.2
件/1000 ph
(95
%CI
:3.1
-3.3
件/1000 ph
)であっ た.J1
の1
チームを対象とした山本ら11)の報告では,練習中の傷害発生件数が
3
年間で130
件(外傷72
件,障害
58
件)であり,IR
は3.2
件/1000 ph
(95
%CI
:2.7
-3.8
件/1000 ph
)であった.これらの結果から,本 研究の対象チームにおける傷害発生件数とIR
は,J1
の 報告結果と比較しても同様な傾向を示していたことがわ かる.またヨーロッパのプロサッカーリーグ22
チーム の5
年間の練習中の平均IR
はおよそ2.06
件/1000 ph
であり,本研究の結果より低い値であった17).また試合中の
IR
は,山本らが対象としたJ1
のチームで25.3
件/1000 ph
(95
%CI
:19.8
-30.7
件/1000 ph
)11),ヨー ロッパの22
チームの5
年間の平均IR
で21.24
件/1000
ph
16,17)であるのに対して,本研究の対象チームでは13.6
件/1000 ph
(95
%CI
:7.2
-19.1
件/1000 ph
)と極 めて低い値であった.しかし傷害の内訳に関しては,山 本が対象としたJ1
のチームおよびヨーロッパの22
チー ムでは外傷が70
~80
%,障害が20
~30
%であり11,16,17), 本研究の結果と同様であった.以上のことから,本研究 の対象チームにおける傷害発生件数とIR
は,J1
および ヨーロッパリーグのチームと比べて低く,また外傷と障 害の比率については同様であることが示唆された.この ことから,プレーする環境やメディカルスタッフの数な どは,傷害発生の件数を増やさず,外傷と障害の発生比 率にも影響を与えないことが考えられた.続いて,傷害の重症度について考察する.本研究では,
発生した傷害のうち
severe
の割合が最も多かった.し かしJ1
のチームやヨーロッパのチームを対象とした先 行研究ではmoderate
の割合が最も多いことが報告されている11,16,17).このことから,本研究の対象チームに
おける傷害は重症度が高いあるいは,遷延しやすいこと が考えられる.このことは,プレーする環境として人工 芝のフィールドが多くなることや,練習時に関わるス タッフ数が限られること,傷害が発生した際に治療に関 わるメディカルスタッフの数が少ないことなどにより,
治療管理の不徹底や診断などの遅延が起こることなども 影響していると考えられる.しかし,重症度の基準は競 技復帰までの日数で定められてはいるが,競技復帰の基 準については統一された見解は見当たらない.本研究で は,全ての練習に合流した日と定義したが,練習に合流 する基準についても,チーム単位の戦術や監督,メディ カルスタッフ,そして選手自身の考え方などにも影響を 受けると推測される.すなわち重症度の判定に用いてい 表2 傷害の種類と重症度
全ての傷害種類 minimal mild moderate severe 合計件数 試合 練習 合計 試合 練習 合計 試合 練習 合計 試合 練習 合計 (%)
骨折および骨損傷 ─ 1 1 2 ─ 2 1 3 4 1 3 4 11(13.3%) 関節と靱帯 ─ 3 3 ─ 3 3 ─ 12 12 2 5 7 25(30.1%)
筋肉と腱 ─ 1 1 2 3 5 3 11 14 4 18 22 42(50.6%)
挫傷 裂傷等 ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
脊柱および末梢神経
障害 ─ ─ ─ ─ 4 4 ─ ─ ─ ─ ─ ─ 4(4.8%) その他 ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ 1 ─ ─ ─ 1(1.2%) 合計件数 ─ 5 5 4 10 14 4 27 31 7 26 33 83(100%)
% ─ 6.0% 6.0% 4.8% 12.0% 16.9% 4.8% 32.5% 37.3% 8.4% 31.3% 39.8%
単位:件.minimal:競技復帰までの日数が1~3日,mild:競技復帰までの日数が4~7日,moderate:競技復帰までの日 数が8~28日,severe:競技復帰までの日数が29日以上.
表3 傷害の発生状況
練習中 試合中 合計 接触プレー 8(11.8%) 6(40.0%) 14(18.1%)
非接触プレー 60(88.2%) 9(60.0%) 69(81.9%)
合計 68 15 83
単位:件.
る競技復帰の定義は,先行研究のなかでも統一されてい ないため,重症度の判定基準も明確となっていない.こ の点が,先行研究と本研究の違いとして表れた可能性も 考えられる.
次に傷害の種類について考察する.調査した
2
年間で 発生した傷害の診断では,「筋と腱」,「関節と靱帯」,「骨 折および骨損傷」の順に多く認められた.さらに「筋と 腱」の傷害のうち83
%が筋損傷や肉離れで,「関節と靱 帯」の傷害のうち約80
%が捻挫や靱帯損傷であった.諸外国のプロサッカー選手を対象にした傷害調査におい ても肉離れが最も多かったという研究18)や,足関節捻 挫が多く認められたという報告19-22)がなされている.
本研究の対象チームにおける傷害の発生状況では,試合 中も練習中も非接触による受傷が多かった.非接触によ る肉離れや捻挫はプロサッカー選手全般に受傷しやすい 疾患であると考えられる.また他の先行研究11,16,17)と 比較して選手にとっての重症疾患である膝前十字靱帯損 傷および第五中足骨骨折の受傷者がいなかった.この点 については,練習実施環境やトレーニング内容との関連 性などについて今後調査が必要だと考えられる.
次に傷害の部位について考察する.様々な年齢層でか つスキルレベルも統一されていない
264
名のサッカー 選手を1
年間追跡した先行研究では,傷害の61
~90
% が下肢に発生し18),大腿部,膝関節および足関節が傷 害を多く受傷した部位であると報告されている7).さら に,試合中と練習中の傷害の受傷部位は同じであったという報告19-23)もみられる.本研究でも傷害の約
92
%が下肢に発生し,大腿部,膝関節,足関節の順に多く,試 合時と練習時の部位も同様な結果であった.
ポジション別の傷害発生件数については,
GK
が他の ポジションと比較して少なかった.GK
は他のポジショ ンの選手と比べて傷害発生率が低いという報告11,20,24,25)があり,本研究も同様の結果を示した.また,フィール ドプレーヤーのみで検討すると,練習中の傷害は
FW
と比べてDF
やMF
が多い結果となった.MF
はフィー ルドプレーヤーのなかで最も多くの傷害を受傷していた という報告19)がある.しかしポジションによって傷害 を受傷する頻度に違いはないことも報告されており3), 一致した見解が得られていない.これは,ポジションご との活動量や動き方などがチームの戦略などによって異 なるため,選手がポジションごとに特性を考慮したト レーニングを行っていることなども影響していると考え られる.加えて登録上のポジションと試合中の役割がGK
以外は流動的であることも影響していると考えられ る.続いてシーズンにおける月ごとの傷害発生件数につい て考察する.公式開幕の
3
月より試合中と練習中におけ る傷害発生件数は上昇し始め,試合期開始から3
ヵ月で ピークに達し,その後シーズンの終盤につれて減少して いくという報告11)がある.本研究においてもシーズン 開始から徐々に練習回数が増加すると共に発生件数が上 昇し,J1
のチームを対象とした山本の研究11)の傾向と 類似していた.この理由として,キャンプ期(1
月)お よびプレシーズン期では,シーズンを通して戦うための 身体および戦術理解を求めるために,運動強度が高い無 酸素運動系のトレーニングを行うことが関連している可 能性がある.さらにシーズン開始直後である1
~3
月は,冬から春への気温変化およびシーズン開始に伴うレギュ 表4 部位別の傷害発生件数
試合 練習
外傷 障害 合計 外傷 障害 合計 合計件数
頭部および頸部 ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
上肢 ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
体幹 6(7.2%)
上部体幹および肋骨 1 ─ 1 1 ─ 1 2(2.4%)
腹筋群 ─ ─ ─ ─ ─ ─
腰部および骨盤帯 ─ ─ ─ ─ 4 4 4(4.8%)
下肢 77(92.8%)
股関節周囲 ─ ─ ─ ─ 4 4 4(21.1%)
大腿部 7 ─ 7 12 5 17 24(28.9%)
膝関節 5 ─ 5 10 4 14 19(22.9%)
下腿およびアキレス腱等 1 1 2 9 6 15 17(20.5%)
足関節 ─ ─ ─ 8 1 9 9(10.8%)
足部~趾 ─ ─ ─ 4 ─ 4 4(4.8%)
合計件数 14 1 15 44 24 68 83(100%)
単位:件.
ラー争いが激化するため,練習中でも激しいプレーが増 えると考えられ,これらのことも原因となると思われ る.これは練習中の運動強度が高くなることによって傷 害発生率が上昇するという報告16,21,23)からも示唆され る.さらに夏は連戦の影響で通常の練習ではコンディ ション回復に重きを置くため,秋期は傷害発生が低くな ると考えられる.また
J2
ではシーズン途中の中断期間 がないため,疲労回復およびコンディショニング再調整 といった期間を設けることが困難となる.そのためシー ズン終盤は疲労の蓄積や,判断能力の低下などが起こり,傷害発生件数が増加したと考えられる.
本研究の限界は
3
点ある.1
点目は対象としたチーム が1
チームであり,J2
全体の結果を反映していない点 である.諸外国の報告を見ると,リーグに所属するほぼ 全てのチームが対象とされている.これは,FIFA
の基 準という統一した見解があることも影響を与えていると 考えられる.今回は,J2
に所属する1
チームを対象に 調査を行ったが,統一された基準を用いることで,リー グ全体の傷害に関する情報が明らかとなると考えられ る.また,それによってトレーニング内容やチームの戦 略,環境などの傷害発生に影響を与えると考えられる要 因がより明確になる.2
点目は,重症度の概念が曖昧となっている点である.先行研究4)では競技復帰を「選手がチームのトレーニ ングに完全に参加し,試合を選択できるようになるま で」としているが,競技復帰に関する統一された基準が ないため,「試合を選択できる」と判断する際に選手,
医師,メディカルスタッフなどの価値観の違いや考え方 の違いが大きな影響を与えると考えられる.本研究の チームでは
severe
の割合が多く,J1
やヨーロッパリー グのチームとは異なる傾向を示したが,競技復帰につい ての判断基準が異なる可能性があることから,提言する までには至っていない.傷害の発生件数を抑えることも 重要であるが,傷害が発生した後に選手がより早く競技 復帰できるようになることもメディカルスタッフとして 重要な目標である.競技復帰の基準が明確となることは,指向性を伴うトレーニングの実施や,選手のモチベー ション維持だけでなくプロサッカー選手としての生活を 支えることに貢献すると考えられる.加えて,傷害発生 の予防という観点から,今後は個々の選手の疲労状況を 把握するための具体的な指標の導入や,心拍計付き
GPS
装置の導入および有効利用が必要と考えられる.これらの指標やデバイスを活用することによって,個々 への負荷の状況が確認され,傷害発生と関連する選手個 人の身体特性や活動特性が明らかとなると考えられる.
3
点目として,本研究では外傷と障害の区別を医師の 診断結果に基づいて行ったが,既往歴や過去の主訴など との関係性を検討していないため,妥当な区別が行えて いない可能性もある点である.この点については個々の選手の傷害発生状況を精査することで今後明らかになる と考えられる.
本研究では,
J2
の1
チームを対象に2
年間の傷害発 生状況を調査した.その結果,J1
のチームを対象とし た先行研究と比較して,J2
では傷害発生件数やIR
は低 いが,重症度が高いという状況が把握できた.また,外 傷と障害の割合や,ポジション別,部位別の傷害発生状 況,傷害の診断名については,J1
や諸外国のサッカー リーグと違いを認めなかった.このことから,環境の違 いは傷害の発生に大きく影響を与えていないが,重症度 には影響を与える可能性が示された.しかし,重症度を 判定するための競技復帰に関する基準が統一されていな いため,今後更なる調査が必要だと考えられた.利益相反 本研究の実施にあたり,開示すべき利益相反 はない.
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