26
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究
分担研究報告書(平成 29 年度)
疫学・データーベース作成プロジェクト
(外科的視点から)
研究分担者 福島浩平 東北大学大学院分子病態外科学分野 ・消化管再建医工学分野 教授
研究要旨:研究班の研究体制を改変するに当たって、疫学、データベース作成プロジェクトを立案す る上で、治療体系全体を俯瞰するために外科治療の果たす役割を十分解析できるものとすることの重要 性を指摘した。現在進行中とされる日本炎症性腸疾患学会主体のデータベース作成とタイアップするこ とによって、術後症例のデータベース化も合わせて目指すことが現実的と考えられた。また、班研究で 進行中であるクローン病術後再発危険因子の研究と共同で、共通データベースフォーマットの確立とデ ータベース化の進展を図ることとなった。
共同研究者
西脇 祐司(東邦大学医学部社会医学講座衛生学 分野)
松岡 克善(東京医科歯科大学消化器内科)
鈴木 康夫(東邦大学医療センター佐倉病院内科 学講座)
A. 研究目的
炎症性腸疾患は、1) 長期経過をたどる、2) 内科治療あるいは外科治療のみでは完結しな い、3) 内科と外科で治療成績の評価基準が異 なる場合がある、4) 臨床調査個人票による登 録制度があるなどの特殊性を有する。研究班 の疫学研究では、ともすると食事調査や薬物 治療成績などの内科的な視点が優先されがち であったが、上記の疾患特殊性を鑑み、外科 的な視点をプロジェクト検討課題に反映させ ることを目的とした。
B. 研究方法
従来の炎症性腸疾患長期治療成績の検討で 未検討の問題を抽出し、将来的に疫学研究に 貢献しうるためにどのような方法があるかに
ついて考察を加えた。
(倫理面への配慮)
現段階ではとくに倫理面への配慮は必要な いものと考えられた。
C. 研究結果
1. 潰瘍性大腸炎に関する研究の提案
重症潰瘍性大腸炎の治療方針の決定の際に、
絶対的手術適応は比較的決断が容易である。し かし、内科治療により緩解導入された症例でも 再燃率が高い。再燃緩解を繰り返す難治例の相 対的手術適応では、明瞭な選択基準がない。そ のために、症例や施設ごとの個別性を尊重せざ るを得ない。術前術後の QOL と内科および外科 治療の費用対効果が、相対的手術適応の決定に は重要と考えられるが、内科治療と外科治療の すべてを一括して評価する研究がない。必要と される研究は、内科治療成績で用いられる緩解 導入、緩解維持率と外科治療成績の評価基準で ある周術期合併症発生率や遠隔期パウチ機能 率のすべてを俯瞰し、QOL と費用対効果で前向 きに評価するといった研究である。そのような 検討が可能となるように、臨床調査個人票をど
27 う改定していくのかも合わせて検討したい。
2. クローン病に関する研究の提案
研究班ですでに開始されている術後再発危 険因子同定の試み(前向き試験)において、
術前術後の様々なデータを集約するフォーマ ットが出来上がっている。この共通フォーマ ットをさらに発展させることにより、研究班 における臨床研究の効率化を図る。
また、クローン病直腸肛門部癌早期発見の ためのサーベイランスシステムの確立に関す るプロジェクト研究において、その検査方法 や間隔の有効性について検討を重ねる必要が ある。そのために、直腸肛門病変長期経過例 を登録制にするなどのデータベース化が考え られる。
さらに、クローン病腸管不全症例を全国規模 で把握するために、身体障害者登録制度(小腸 機能不全症例)を利用して実態を調査できない か検討を行なうことも考えられる。
D. 考察
炎症性腸疾患は、若年発症の良性疾患であ る。多くの症例で内科および外科治療の両者 が何度も繰り返し適応されるために、自然史 ともいえる程のきわめて長期にわたる治療経 過の把握と成績評価には困難を伴う。また、
手術という治療手技が腸管切除などにより病 態を劇的に変化させるので、患者本人のみな らず内科医でも外科治療の効果と術後の日常 生活をイメージすることが難しい。一連の評 価には多大な時間と労力を伴うと考えられる が、我が国には難病登録制度がある。登録漏 れや重複、記載内容の正確性などの問題を改 善することによって、「自然史」の解明と各種 治療の総合評価に向けたデータベースとして 臨床調査個人票を活用できるものにすること が一つの現実的なアプローチと考えられる。
E. 結論
研究班の研究体制を改変するに当たって、
疫学、データベース作成プロジェクトに必要 な外科的視点を考察した。現在進行中とされ る日本炎症性腸疾患学会主体のデータベース 作成とタイアップすることによって、術後症 例のデータベース化を目指すことが現実的と 考えられた。また、班研究で進行中であるク ローン病術後再発危険因子の研究と共同で、
共通データベースフォーマットの確立とデー タベース化の進展を図ることとなった。
F. 健康危険情報 とくに無し
G. 研究発表 とくに無し
H. 知的財産権の出願・登録状況
(予定を含む)
とくに無し